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JP4838888B2 - ガスタービン燃焼器 - Google Patents

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Description

本発明は、ガスタービンや航空機用ジェットエンジンの燃焼器(以下、ガスタービン燃焼器という)に関するものである。
この種のガスタービン燃焼器には、アニュラー型のものが広く採用されており、このアニュラー型燃焼器として、図7に示すような構造を有するものが知られている(非特許文献1参照)。このアニュラー型燃焼器は、環状のアウタライナ9およびインナライナ10とこれらの頭部のカウリング20とにより、内部に燃焼室11を形成する燃焼筒8が構成され、前記カウリング20の後部に形成された支持体21に、この支持体21を燃焼室11内の燃焼ガスから遮熱するためのヒートシールド23が取り付けられている。ヒートシールド23の平板状のシールド本体23aの中央部に、前方(上流側)へ向かって突出する円筒部23bが形成されており、この円筒部23bの中間部がドーム21に固定され、この円筒部23bの前端の開口縁部に、燃焼用の圧縮空気CAに旋回を与えて安定燃焼を図るためのスワーラ14が支持され、燃料を噴射する燃料噴射弁13が、カウリング20の開口20aを挿通した状態で前記スワーラ14の内側に嵌合して取り付けられている。スワーラ14の下流側には、このスワーラ14からの圧縮空気CAの旋回流を燃焼室11内に導く筒状のガイド体34が突設されている。このガイド体34は、燃料噴射弁13と同心であり、かつヒートシールド23の円筒部23bに対し内周側で同心状に配置されている。
「ターボファンエンジンの高性能化技術」、八島聰著、防衛技術’92.8,Vol.12,No.8(ISSN 0285-0893),P31-40, 図8
前記ガスタービン燃焼器では、スワーラ14の燃焼筒下流側端壁25とヒートシールド23の円筒部23bとガイド体34とで形成される環状空間39が下流側の燃焼室11に向けて開口しており、この環状空間39に、燃料噴射弁13から噴射された燃料と圧縮空気CAとの混合気Mまたは圧縮空気CAが淀むために、この環状空間39に煤60が堆積し易く、この堆積した煤60が燃焼ガスで加熱されてスワーラ14のガイド体34やヒートシールド23の円筒部23bの一部に焼損が生じることがある。
また、一般に、ガスタービン燃焼器では燃焼領域Sにスワーラにより安定した空気の再循環領域を形成し、その領域に混合気Mを供給することが、着火性および安定燃焼性の面から望ましいとされる。一方、図7のガスタービン燃焼器では、スワーラ14で旋回流を与えられて燃焼室11内に供給された圧縮空気CAが、燃焼筒11内で径方向に大きく広がるために、スワーラ14の軸中心部に生じる負圧によって、燃料噴射弁13に戻ってくる逆流が強くなり過ぎる。その結果、燃料噴射弁13から供給された混合気Mが、強い逆流により押し戻されて燃焼室11内の燃焼領域Sに到達しにくくなり、着火性および安定燃焼性を低下させる。さらに、このガスタービン燃焼器では、燃料噴射弁13から燃焼室11内に噴射された混合気Mが、ヒートシールド23の内面23eに沿って流れる圧縮空気CAに導かれる際に、混合気M中の燃料が前記内面23eに付着して大きな液滴となり、そのまま炭化してヒートシールド内面23eに付着したり、運良く圧縮空気CAに乗って燃焼室11内に供給されても、微粒化されにくいので、着火性や安定燃焼性の低下を招く。
本発明は、煤の堆積や焼損の発生を防止することができ、かつ優れた着火性および安定燃焼性を有するガスタービン燃焼器を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明のガスタービン燃焼器は、圧縮機からの圧縮空気を燃焼させてタービンへ供給するガスタービン燃焼器であって、燃焼室を形成する燃焼筒と、前記燃焼筒に燃料を供給する燃料噴射装置と、前記燃料噴射装置を前記燃焼筒に支持する支持体とを備え、前記燃料噴射装置は、燃料を噴射する燃料噴射弁と、この燃料噴射弁から噴射された燃料に圧縮空気を旋回させながら供給する半径流型のスワーラと、前記スワーラからの旋回空気を前記燃焼室に導く筒状のガイド体とを備え、さらに、前記ガイド体よりも外周側に位置し前記燃料噴射装置を前記燃焼筒に支持する支持体を前記燃焼室内の燃焼ガスから遮熱するヒートシールドと、前記スワーラの後側端壁と前記ガイド体と前記ヒートシールドとの間に形成されて下流にのみ開口する環状空間に空気を導入するパージ孔と、前記ガイド体の下流端に設けられ、下流側に向かって前記燃料噴射装置の径方向外方へ傾斜した末広がり状のフレアとを備え、前記燃焼筒はアニュラー形であり、環状のアウターライナおよびインナーライナと、これらの頭部のカウリングとを有し、前記カウリングの頂部に、前記燃料噴射弁を挿入させ、かつ圧縮空気を前記燃焼筒内に導入する開口が形成され、前記ヒートシールドの内周縁部に、前記燃料噴射装置の上流側へ突出する円筒部が設けられ、前記円筒部が前記支持体に支持されており、前記円筒部に、この円筒部を径方向に貫通する前記パージ孔が形成されている
このガスタービン燃焼器によれば、ガイド体とヒートシールドとの間の環状空間にパージ孔から導入された圧縮空気が、環状空間に入り込もうとする燃料や混合気或いは火炎を燃焼室内に押し戻すように作用するので、ガイド体への煤の堆積および付着した煤が加熱されることによるガイド体の焼損の発生を効果的に防止することができる。また、環状空間内に流入した圧縮空気は、ガイド体の下流端から燃料燃焼装置の径方向外方へ傾斜した末広がり状に延びるフレアに沿って燃焼室内の径方向斜め外方へ向けて適度な広がりで流れるように導かれるので、この圧縮空気がスワーラからの圧縮空気が過度に広がり過ぎるのを防止しながら、混合気を包み込むように作用するから、混合気の径方向への広がりが抑制される結果、軸心部分に適度な大きさの混合気の逆流領域が形成されて、良好な保炎性を確保することができる。しかも、フレアに沿って径方向斜め外方に流れる圧縮空気により、ヒートシールドの内面に混合気中の燃料が再付着して燃料の液滴サイズが大きくなるのを阻止できるので、燃焼性能の低下を抑制することができる。さらに、アニュラー型に好適に適用できるものとなるうえに、パージ孔をヒートシールドの円筒部に機械加工によって容易に形成することができる。
本発明において、前記パージ孔は前記ガイド体と同心上に10〜30個設けられていることが好ましい。パージ孔が10個未満の場合には、ガイド体とヒートシールドとの間の環状空間に圧縮空気が周方向に均一に導入されにくくなるので、この環状空間に入り込もうとする燃料や混合気或いは火炎を燃焼室内に押し戻す効果が低い。パージ孔が30個を超えても、煤の堆積を防止する効果が殆ど増大しない一方で、加工工数が多くなってコストアップを招く。
本発明において、前記ガイド体の軸心に対する前記フレアの傾斜角度が40〜60゜に設定されていることが好ましい。傾斜角度が40°未満の場合には、スワーラからの圧縮空気の旋回流を径方向に十分に広げて燃焼室内に送給できないので、十分な広がりを持った逆流領域を形成しにくくなる。一方、傾斜角度を60°よりも大きくすると、スワーラからの圧縮空気の流れがフレアの内面から剥離してしまい、やはり所要の広がりを持った逆流領域を形成できない。したがって、傾斜角度を40°〜60°の範囲に設定すれば、スワーラからの圧縮空気の旋回流を高い燃焼効率が得られる適正な角度に広げながら燃焼室内に流入させて、良好な保炎性が得られる混合気の逆流領域を形成することができる。
本発明のガスタービン燃焼器によれば、ガイド体とヒートシールドとの間の環状空間に入り込もうとする燃料や混合気或いは火炎を、パージ孔から導入した圧縮空気によって燃焼室に押し戻させて、ガイド体への煤の堆積および煤が加熱されることによるガイド体の焼損の発生を効果的に防止できる。また、前記環状空間内に流入した圧縮空気を、フレアに沿って燃焼室内の径方向斜め外方へ導くことにより、適度な大きさの混合気の逆流領域を形成して、良好な保炎性を確保することができ、しかも、フレアに沿って径方向斜め外方に流れる圧縮空気により、ヒートシールドの内面に混合気中の燃料が付着するのを防止して、燃料の液滴サイズが大きくなるのを防止して燃焼性能の低下を抑制することができる。
本発明の一実施形態に係るガスタービン燃焼器を示す概略横断面図である。 図1のII−II線に沿った拡大断面図である。 図2の要部の拡大縦断面図である。 図2の要部を拡大した分解斜視図である。 (a),(b)は同上のガスタービン燃焼器の燃焼室内での圧縮空気の流動パターンおよび混合気の分散分布を示す縦断面図、(c),(d)は比較のために示した従来の燃焼器の圧縮空気の流動パターンおよび混合気の分散分布を示す縦断面図、(e),(f)は比較のために示した、フレアを設けずにパージ孔のみを設けた燃焼器の圧縮空気の流動パターンおよび混合気の分散分布を示す縦断面図である。 空気流量と全体空燃比に対する吹き消え、着火および不着火の発生を実測した結果を示す特性図である。 従来のガスタービン燃焼器の要部を示す縦断面図である。
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るガスタービン燃焼器1を示す概略横断面図である。この燃焼器1は、例えばガスタービンエンジンの図示しない圧縮機から供給される圧縮空気に燃料を混合して生成した混合気を燃焼させて、その燃焼により発生する高温・高圧の燃焼ガスをタービンに送ってこれを駆動させるものである。
この燃焼器1は、ガスタービンエンジンの軸心C1と同心のアニュラー型であり、環状のアウタケーシング3の内側に環状のインナケーシング4が同心状に配置されて、環状の内部空間を有するハウジング2を構成している。このハウジング2の環状の内部空間には、環状のアウタライナ9の内側に環状のインナライナ10が同心状に配置されてなる燃焼筒8が、ハウジング2と同心状に配置されている。燃焼筒8は内部に環状の燃焼室11を形成しており、この燃焼筒8に、燃焼室11内に燃料を噴射する複数(例えば、14〜20個)の燃料噴射装置12が、燃焼筒8と同心の単一の円上で、周方向に等間隔に並んで配設されている。各燃料噴射装置12は、燃料を噴射する燃料噴射弁13と、この燃料噴射弁13の外周を囲むように燃料噴射弁13に同心状に設けられて、圧縮空気を旋回流として燃焼室11内に導入する半径流型のメインスワーラ14とを備えている。燃焼器1の下部には2本の点火栓18が配置されている。
図2に示すように、ハウジング2の環状の内部空間には、図示しない圧縮機から送給される圧縮空気CAが、環状のディフューザ19を介して燃料噴射装置12の上流側から導入される。燃焼筒8のアウタライナ9およびインナライナ10の頭部にはそれぞれ、環状のカウリングアウタ20Aおよびカウリングインナ20Bが溶接により固定されており、このカウリングアウタ20Aとカウリングインナ20Bとでカウリング20が構成される。環状の燃焼筒8は、カウリングアウタ20Aに一体形成された保持筒体29に、アウタケーシング3に外側から挿通された固定ピン30が嵌入されることにより、アウタライナ9に固定されている。
カウリングアウタ20Aおよびカウリングインナ20Bは、各々の下流側の端部間を互いに連結するように一体形成された環状の支持体(以下、ドームという)21により一体化されている。このドーム21に、ドーム21をを燃焼室11内の燃焼ガスGから遮熱するためのヒートシールド23が取り付けられている。
燃料噴射装置12は、内部に燃料配管が通ったステム15を有し、このステム15の先端に前記燃料噴射弁13が設けられている。メインスワーラ14は、圧縮空気CAを径方向の外側から内側に導入する半径流型であり、保持プレート24を介してヒートシールド23に支持されている。この支持構造については後述する。燃料噴射装置12は、燃料噴射弁13を、カウリング20の頂部におけるカウリングアウタ20Aとカウリングインナ20Bとの隙間によって形成された開口20aから挿通して、メインスワーラ14の内側に嵌合した状態で、ステム15が取付板28を介してアウタケーシング3に固定されている。燃焼筒8内には、カウリング20の開口20aの周縁と燃料噴射弁13との間の環状の間隙から圧縮空気CAが導入される。燃焼筒8の下流端部には、燃焼ガスGが供給されるタービンの第1段ノズルTNが接続される。
図2の要部を拡大した図3において、燃料噴射装置12の燃料噴射弁13は、中央部の軸流型のインナスワーラ31と外周側の軸流型のアウタスワーラ32とを有する。これらスワーラ31,32は、燃料噴射装置12の軸心C2に対して同心状に配置されており、両スワーラ31,32の空気流路の間に、ステム15内の燃料配管から送給される燃料Fを燃焼室11内に導く環状の燃料流路33が設けられている。この燃料流路33の先端近傍に形成されて軸心C2と同心状に並ぶ複数の噴射孔33aから、燃料Fが噴射されて燃料流路33の先端から燃焼室11内へフィルム状に供給される。この噴射孔33aから噴射された燃料Fは、内外のスワーラ31,32からの圧縮空気CAの旋回流によって小さな粒径に微粒化され、混合気Mとなって燃焼室11内に供給される。したがって、この燃料噴射装置12はエアブラスト式である。
図4に示すように、ヒートシールド23は、メインスワーラ14に対向して、その後方に配置され、燃料噴射装置12の軸心C2(図3)方向から見て台形状のシールド本体23aに、燃料噴射装置12の上流側へ突出する円筒部23bが一体形成により設けられている。この円筒部23bが、その中空部により、ヒートシールド23の中央貫通孔27を形成している。ヒートシールド23は、各シールド本体23aが所定の間隙(例えば1mm)を存して環状に配置されている。ヒートシールド23の円筒部23bがドーム21の保持孔21aに対し燃料噴射装置12の下流側から挿通されて、円筒部23bの外周面に形成された大径段部23cがドーム21の保持孔21aの孔縁部に当接された状態で、その当接箇所を互いに溶接することにより、ドーム21に固定されている。ヒートシールド23の円筒部23bの開口縁部に形成された小径段部23dに、リング状の保持プレート24の内周縁部が当接されて、その当接箇所を互いに溶接することにより、保持プレート24がヒートシールド23に固定されている。
また、燃料噴射装置12のメインスワーラ14の後側(燃焼筒下流側)端壁25には、このメインスワーラ14からの圧縮空気CAの旋回流を燃焼室11内へ導く筒状のガイド体34が一体的に突設されている。このガイド体34は、燃料噴射弁13と同心、つまり軸心C2を共有しており、かつヒートシールド23の円筒部23bに対しその内周側に同心状に配置されている。ガイド体34の下流端に、下流側に向かって燃料噴射弁13の径方向外方へ傾斜した末広がり状のフレア38が接続されている。ガイド体34とフレア38は一体形成してもよい。メインスワーラ14からの圧縮空気CAの旋回流は、混合気Mの逆流領域のサイズや位置を調整して燃焼領域S(図2)を設定するものである。
一方、メインスワーラ14の後側端壁25は径方向外方へ延出されて取付プレート26を形成しており、この取付プレート26における180°対向した2箇所の位置にピン孔26aがそれぞれ形成されている。保持プレート24には、外周縁に開口した一対の凹所24aが形成され、各凹所24aに挿通された取付ピン41が、ピン孔26aに嵌合されて溶接により固定されている。保持プレート24の凹所24aは取付ピン41の外径よりも大きな周方向幅を有しており、したがって、メインスワーラ14は、保持プレート24に対し周方向および径方向に変位可能に支持されている。これにより、高温の燃焼ガスによる熱膨張率の差および組立時のメインスワーラ14とヒートシールド23との寸法差が吸収される。
メインスワーラ14の後側端壁25と、ヒートシールド23の円筒部23bと、その径方向内側のガイド体34とにより、下流側に開口した、燃料噴射装置12の軸心C2と同心の環状空間39が形成されている。円筒部23bにおけるドーム21の固定箇所に対し圧縮空気CAの流れ方向の上流側近傍箇所に、径方向外側から前記環状空間39内に圧縮空気CAを導入するパージ孔40が、円筒部23bの周方向に等間隔で複数個形成されている。パージ孔40は円筒部23bを径方向に貫通して延びている。パージ孔40から環状空間39内に導入された圧縮空気CAは、環状空間39の下流端の出口39aから燃焼室11内へ流出するので、これによって環状空間39に入り込もうとする燃料Fや混合気Mまたは火炎を燃焼室11内に押し戻す。
パージ孔40は、円筒部23bの周方向に等間隔で10〜30個設けられる。パージ孔40が10個未満の場合には、ガイド体34とヒートシールド23との間の環状空間39に圧縮空気CAが周方向に均一に導入されにくくなるので、この環状空間39に入り込もうとする燃料Fや混合気M或いは火炎を燃焼室11内に押し戻す効果が低い。パージ孔40が30個を越えても、煤の堆積を防止する効果が殆ど増大しない一方で、加工工数が多くなってコストアップを招く。また、パージ孔40は直径1±0.3mm程度の大きさに形成するのが好ましく、さらに、パージ孔40から導入する圧縮空気CAの流量は、メインスワーラ14からの圧縮空気CAの流量の10±5%程度に少なくして、その流量分だけメインスワーラ14からの流量を減少しておけば、燃焼室11内に導入される圧縮空気CAの総量がパージ孔40無しの場合と同一になるので、予め設定された燃焼性能をそのまま維持できる。
上記構成において、従来の燃焼器において煤が堆積し易い空間、つまりメインスワーラ14の下流側に設けた筒状のガイド体34とその外周側のヒートシールド23の円筒部23bとの間の環状空間39にパージ孔40から圧縮空気CAを導入しているので、この環状空間39に流入した圧縮空気CAが、環状空間39に入り込もうとする燃料Fや混合気M或いは火炎を燃焼室11内に押し戻すように作用する。したがって、メインスワーラ14のガイド体34の外周面への煤の堆積、および堆積した煤が加熱されることによるメインスワーラ14の焼損の発生が効果的に防止される。
つぎに、燃焼室11内での圧縮空気CAの流動パターンと混合気Mの分散分布について、図5を参照しながら説明する。まず、図7の従来のガスタービン燃焼器では、スワーラ14から供給された圧縮空気CAが、図5(c)に示すように、ヒートシールド23の内面23eに沿って燃焼筒11内を燃料噴射装置12の径方向に向かって流れるとともに、燃焼室11の軸心方向に流れるので、全体として、径方向に大きく広がりながら流れたのちに燃焼筒11の軸心部分に向けて強く逆流する循環流P1を形成する。この循環流P1により、燃料噴射弁13から供給された混合気Mが押し戻されて、図5(d)に示すように、燃焼室11内における燃料噴射弁13の近傍箇所に多量に分布し、燃焼領域Sに十分到達しにくくなるので、着火性および安定燃焼性が十分ではない。また、図5(c)の圧縮空気CAに導かれてヒートシールド23の内面23eに沿って流れる混合気M中の燃料は、ヒートシールド23の内面23eに付着して液滴となり、大きな液滴のまま燃焼室11の燃焼領域に供給され、微粒化が不十分となるので、着火性および安定燃焼性がさらに低下する。
一方、図5(e)に示すガスタービン燃焼器のように、前記ガスタービン燃焼器1と同様のパージ孔40を有するが、フレア38を設けない場合には、パージ孔40から環状空間39に流入した圧縮空気CAの大部分がそのまま燃料噴射装置12の軸心C2方向に沿って直進するので、スワーラ14から供給された圧縮空気CAが燃焼室11内で径方向へ十分に広がることなく逆流する循環流P2を形成する。その結果、循環流P2による燃焼室11の軸心部分での逆流が弱くなり、図5(f)に示すように、混合気Mが燃焼領域Sに高速で供給されるので、着火性および安定燃焼性が低い。
本発明のガスタービン燃焼器1では、図5(a)に示すように、ガイド体34の下流端に、下流側へ向かって径方向外方へ傾斜した末広がり状のフレア38を延設することにより、環状空間39内に流入した圧縮空気CAを、フレア38に沿って燃焼室11内の径方向斜め外方へ向け適度な広がりで流れるように導いている。この径方向斜め外方へ流れる圧縮空気CAがメインスワーラ14からの圧縮空気CAを径方向の外側から包む形となって、圧縮空気CAが過度に広がるのを防止する。これにより、燃焼室11の軸心部分に適度な強さの逆流を持つ循環流P3が形成されるので、図5(b)に示すように、燃焼領域Sに適切な速度で混合気Mが供給されて、良好な保炎性を確保することができる。しかも、図5(a)に示すフレア38に沿って径方向斜め外方に流れる圧縮空気CAにより、ヒートシールド23の内面23eに混合気M中の燃料が付着するのが防止される。これにより、図5(b)の混合気M中の燃料Fの液滴サイズが大きくなるのを防止して燃焼性能の低下を抑制する。
メインスワーラ14からの圧縮空気CAの旋回流は、混合気Mの逆流領域のサイズや位置を調整して燃焼領域Sを設定するものであるから、末広がり状のフレア38のガイド体34の軸心、つまり燃料噴射装置12の軸心C2に対する傾斜角度の設定により、メインスワーラ14からの圧縮空気CAの旋回流を高い燃焼効率が得られる適正な角度に広げながら燃焼室内12に流入させて、良好な逆流領域を形成することが可能である。
フレア38のガイド体34の軸心に対する傾斜角度は、40°〜60°の範囲に設定するのが好ましい。傾斜角度が40°未満の場合には、メインスワーラ14からの圧縮空気CAの旋回流を径方向に十分に広げて燃焼室11内に送給できないので、十分な広がりを持った逆流領域を形成しにくくなる。一方、傾斜角度を60°よりも大きくすると、メインスワーラ14からの圧縮空気CAの流れがフレア38の内面から剥離してしまい、やはり所要の広がりを持った逆流領域を形成できない。フレア38の傾斜角度を45°に設定すると、最も高い燃焼効率を得ることができる圧縮空気CAの旋回流を形成することができる。
以上のように、このガスタービン燃焼器1は、パージ孔40から環状空間39へ圧縮空気CAを導入することにより、煤の堆積や焼損の発生を防止できるだけでなく、燃料Fの液滴サイズが小さくなって燃焼性能が向上する。さらに、ガイド体34の下流端に設けたフレア38により、メインスワーラ14を通った圧縮空気CAの流れおよび燃料噴射弁13から噴射された燃料Fの分散分布を最適にコントロールすることができるので、着火性および安定燃焼性が著しく向上する。このことを、図6に示す実測結果により確認することができた。
図6において、横軸は燃焼器1の空気流量、縦軸は燃焼器1全体の空燃比である。白丸印は火炎の吹き消えを、黒丸印は着火をそれぞれ示す。また、実線の特性曲線A,Bは本発明のガスタービン燃焼器1の実測結果であり、破線の特性曲線C,Dは図7の従来のガスタービン燃焼器の実測結果であり、二点鎖線の特性曲線E,Fはフレア38を設けずにパージ孔40のみを設けた、図5(e),(f)に示すガスタービン燃焼器の実測結果である。×印は本発明のガスタービン燃焼器1の不着火を、△印は従来のガスタービン燃焼器の不着火をそれぞれ示す。
本発明のガスタービン燃焼器1では、特性曲線AとCとの比較から明らかなように、火炎の吹き消えが発生する空燃比が従来の燃焼器に比べて相当に高く、特性曲線BとDとの比較から明らかなように、着火できる空燃比が従来の燃焼器に比べて相当に高く、×印と△印との比較から明らかなように、不着火が発生する空燃比が従来の燃焼器に比べて相当に高い。したがって、本発明のガスタービン燃焼器1は、高い空燃比、つまり少ない燃料Fでも確実に着火するとともに、空燃比が高くなっても火炎の吹き消えおよび不着火が発生しにくい。
このように、本発明のガスタービン燃焼器1は、高い空燃比で安定燃焼させることができ、燃焼効率も向上することから、CO2 の発生が減少する。図2のフレア38を設けずにパージ孔40のみを設けた場合には、特性曲線EとC(従来)との比較から明らかなように、吹き消えが従来の燃焼器に比べて高い空燃比で発生する利点はあるが、特性曲線FとD(従来)との比較から明らかなように、着火性が従来の燃焼器よりも悪くなる。
さらに、本発明のガスタービン燃焼器1は、実験により、燃焼器1内における圧力損失、燃焼筒8の出口温度分布、燃焼効率、スモーク量およびNOx排出量のいずれにおいても、図7の従来の燃焼器と同等であることが確認された。
また、本発明のガスタービン燃焼器1は、同一または相当するものに同一の符号を付した図2と図7との比較から明らかなように、従来の燃焼器に対し、パージ孔40を形成し、かつガイド体34の下流端にフレア38を設けるだけの簡単な改良を行うだけで済む利点がある。
なお、前記実施形態では、アニュラー型の燃焼器を例示して説明したが、本発明は逆流缶型の燃焼器にも適用することができる。また、本発明は、以上の実施形態で示した内容に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能であり、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。
1 ガスタービン燃焼器
8 燃焼筒
9 アウタライナ
10 インナライナ
11 燃焼室
12 燃料噴射装置
13 燃料噴射弁
14 メインスワーラ(スワーラ)
20 カウリング
20a 開口
21 ドーム(支持体)
23 ヒートシールド
23b 円筒部
34 ガイド体
38 フレア
39 環状空間
40 パージ孔
CA 圧縮空気
C2 燃料噴射装置の軸心
F 燃料
G 燃焼ガス
M 混合気
TN タービン

Claims (5)

  1. 圧縮機からの圧縮空気を燃焼させてタービンへ供給するガスタービン燃焼器であって、
    燃焼室を形成する燃焼筒と、前記燃焼筒に燃料を供給する燃料噴射装置と、前記燃料噴射装置を前記燃焼筒に支持する支持体とを備え、
    前記燃料噴射装置は、燃料を噴射する燃料噴射弁と、この燃料噴射弁から噴射された燃料に圧縮空気を旋回させながら供給する半径流型のスワーラと、前記スワーラからの旋回空気を前記燃焼室に導く筒状のガイド体とを備え、
    さらに、前記ガイド体よりも外周側に位置し前記燃料噴射装置を前記燃焼筒に支持する支持体を前記燃焼室内の燃焼ガスから遮熱するヒートシールドと、
    前記スワーラの後側端壁と前記ガイド体と前記ヒートシールドとの間に形成されて下流にのみ開口する環状空間に空気を導入するパージ孔と、
    前記ガイド体の下流端に設けられ、下流側に向かって前記燃料噴射装置の径方向外方へ傾斜した末広がり状のフレアと、
    を備え、
    前記燃焼筒はアニュラー形であり、環状のアウターライナおよびインナーライナと、これらの頭部のカウリングとを有し、前記カウリングの頂部に、前記燃料噴射弁を挿入させ、かつ圧縮空気を前記燃焼筒内に導入する開口が形成され、
    前記ヒートシールドの内周縁部に、前記燃料噴射装置の上流側へ突出する円筒部が設けられ、前記円筒部が前記支持体に支持されており、
    前記円筒部に、この円筒部を径方向に貫通する前記パージ孔が形成されているガスタービン燃焼器。
  2. 請求項1において、前記パージ孔は前記ガイド体と同心上に10〜30個設けられているガスタービン燃焼器。
  3. 請求項1または2において、前記ガイド体の軸心に対する前記フレアの傾斜角度が40〜60゜に設定されているガスタービン燃焼器。
  4. 請求項1,2または3において、前記パージ孔は、前記円筒部における前記支持体の前記上流側に形成されているガスタービン燃焼器。
  5. 請求項1から4のいずれか一項において、前記ヒートシールドは、前記燃料噴射装置の径方向に延びる平板状のシールド本体に、前記円筒部が、前記上流側に突出して設けられているガスタービン燃焼器。
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