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JP4836187B2 - 排ガス浄化用触媒、並びにその製造方法及びその再生方法 - Google Patents

排ガス浄化用触媒、並びにその製造方法及びその再生方法 Download PDF

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Description

本発明は、排ガス浄化用触媒、並びにその製造方法及びその再生方法に関する。
自動車エンジンからの排ガス中の炭化水素ガス(HC)、一酸化炭素(CO)及び窒素酸化物(NO)等の有害成分を除去するために、従来から排ガス浄化用触媒が用いられてきた。このような排ガス浄化用触媒としては、理論空燃比で燃焼された排ガス中のHC、CO及びNOxを同時に浄化する三元触媒が知られており、一般に、コーディエライト、金属箔等からなりハニカム形状に形成された基材(触媒基材)と、基材表面に形成された活性アルミナ粉末、シリカ粉末等からなる担体(触媒担持層)と、この担体に担持された白金等の貴金属からなる触媒成分とから構成されている。
例えば、特開2003−33669号公報には、セリウム塩及びジルコニウム塩を含む水溶液に、熱安定化させた担体材料を加えて懸濁液を作製するステップと、該懸濁液にアルカリ性溶液を加えてセリウム及びジルコニウムの水酸化物である共沈物を生成するステップと、この共沈物を乾燥及び焼成してウォッシュコート用材料を作製するステップと、該ウォッシュコート用材料をスラリー化して担体にウォッシュコートをするステップと、このウォッシュコートをした担体に貴金属を担持するステップとを含んでなる排ガス浄化用触媒の製造方法、並びにかかる方法により製造された排ガス浄化用触媒が開示されている。
しかしながら、特許文献1に記載のような排ガス浄化用触媒においては、高温(特に800℃以上)の排ガスに長時間晒されると、その担体に担持されている白金、ロジウム、パラジウム等の触媒活性をもつ貴金属粒子が凝集し、シンタリング(粒成長)が生じて比表面積が減少することから、触媒活性が低下するという問題があった。
そのため、このように貴金属粒子の粒成長が発生した排ガス浄化用触媒を再生する方法も種々開発されてきている。例えば、特開2000−202309号公報(特許文献2)には、アルカリ土類金属酸化物及び希土類酸化物から選ばれる少なくとも一種を含む担体と該担体に担持された白金とよりなる排ガス浄化用触媒に対して、酸化処理を行い、次いで還元処理を行う方法が開示されている。しかしながら、特許文献2に記載の方法であっても、粒成長した白金粒子を再分散させて触媒活性を再生させる再生処理に要する時間の短縮と温度の低減という点で必ずしも十分なものではなかった。
さらに、実際に車両に搭載する際には上記のような触媒を触媒基材に塗布して触媒層を形成する必要があるが、そのまま塗布したのでは触媒基材表面上の触媒層に剥離が生じる等の問題が発生する。それを回避するために現状ではアルミナ成分を主としたバインダ成分を添加しているが、アルミナ成分を添加することにより、上記のような触媒の耐久性及び再生処理による効果が著しく低下してしまうという問題もあった。
特開2003−33669号公報 特開2000−202309号公報
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、高温の排ガスに長時間晒されても貴金属の粒成長の発生を抑制して触媒活性の低下を十分に抑制できるとともに、高温の排ガスに長時間晒されて粒成長した貴金属を十分に微細な貴金属の粒子に再分散させて触媒活性を再生させることが可能な排ガス浄化用触媒、並びにその排ガス浄化用触媒の製造方法及びその排ガス浄化用触媒の再生方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、アルミナと、特定の元素を含む第1の塩基性酸化物とからなり、前記第1の塩基性酸化物の含有量が5〜50質量%である複合酸化物粒子A、ジルコニアと、特定の元素を含む第2の塩基性酸化物とからなる複合酸化物粒子B、前記複合酸化物粒子Bに担持されている、特定の元素を含む添加成分、並びに、少なくとも前記複合酸化物粒子Bに担持されている貴金属、を備える排ガス浄化用触媒によって、高温の排ガスに長時間晒されても貴金属の粒成長の発生を抑制して触媒活性の低下を十分に抑制できるとともに、高温の排ガスに長時間晒されて粒成長した貴金属を十分に微細な貴金属の粒子に再分散させて触媒活性を再生させることが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の排ガス浄化用触媒は、アルミナと、アルカリ土類金属元素からなる群から選択される少なくとも一つの元素を含む第1の塩基性酸化物とからなり、前記第1の塩基性酸化物の含有量が5〜50質量%である複合酸化物粒子A、
ジルコニアと、希土類元素及び3A族元素からなる群から選択される少なくとも一つの元素を含む第2の塩基性酸化物とからなる複合酸化物粒子B、
前記複合酸化物粒子Bに担持されている、アルカリ土類金属元素、希土類元素及び3A族元素からなる群から選択される少なくとも一つの元素を含む添加成分、並びに、
少なくとも前記複合酸化物粒子Bに担持されている貴金属、
を備えており、
前記複合酸化物粒子Aと前記複合酸化物粒子Bとの質量比が1/20〜1/2(複合酸化物粒子Aの質量/複合酸化物粒子Bの質量)の範囲であることを特徴とするものである。
本発明の排ガス浄化用触媒においては、前記貴金属が前記複合酸化物粒子A及び前記複合酸化物粒子Bに担持されていてもよい。また、本発明の排ガス浄化用触媒においては、前記貴金属が前記複合酸化物粒子Bのみに担持されていてもよい。
さらに、本発明の排ガス浄化用触媒においては、前記貴金属の担持量が、前記複合酸化物粒子B、前記添加成分及び前記貴金属の全質量に対して0.05〜2質量%の範囲であり、且つ、
前記添加成分の担持量が、金属換算で前記貴金属の量に対するモル比(添加成分の量/貴金属の量)が0.5〜20の範囲となる量であること、が好ましい。
本発明の排ガス浄化用触媒の製造方法は、アルミナと、アルカリ土類金属元素からなる群から選択される少なくとも一つの元素を含む第1の塩基性酸化物とからなり、前記第1の塩基性酸化物の含有量が5〜50質量%である複合酸化物粒子Aを準備する工程と、
ジルコニアと、希土類元素及び3A族元素からなる群から選択される少なくとも一つの元素を含む第2の塩基性酸化物とからなる複合酸化物粒子Bを準備する工程と、
前記複合酸化物粒子Bに、アルカリ土類金属元素、希土類元素及び3A族元素からなる群から選択される少なくとも一つの元素を含む添加成分、及び貴金属を担持する工程と、
前記複合酸化物粒子Aと、前記添加成分及び貴金属が担持された複合酸化物粒子Bとを、前記複合酸化物粒子Aと前記複合酸化物粒子Bとの質量比が1/20〜1/2(複合酸化物粒子Aの質量/複合酸化物粒子Bの質量)の範囲となるように混合して排ガス浄化用触媒を得る工程と、
を含むことを特徴とする方法である。
本発明の排ガス浄化用触媒の再生方法は、前記排ガス浄化用触媒に対して、酸素を含む酸化雰囲気中にて加熱する酸化処理、及び還元処理を施すことを特徴とする方法である。
本発明の排ガス浄化用触媒の再生方法においては、前記酸化処理における温度が500〜1000℃であることが好ましい。
また、本発明の排ガス浄化用触媒の再生方法においては、前記酸化雰囲気における酸素濃度が1体積%以上であることが好ましい。
さらに、本発明の排ガス浄化用触媒の再生方法においては、前記排ガス浄化用触媒を内燃機関の排気系に装着した状態で、前記酸化処理及び前記還元処理を施してもよい。
なお、本発明によれば、高温の排ガスに長時間晒されても貴金属の粒成長の発生を抑制して触媒活性の低下を十分に抑制できるとともに、高温の排ガスに長時間晒されて粒成長した貴金属を十分に微細な貴金属の粒子に再分散させて触媒活性を再生させることが可能な排ガス浄化用触媒が得られる理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、本発明の排ガス浄化用触媒においては、ジルコニアと、アルカリ土類金属元素、希土類元素及び3A族元素からなる群から選択される少なくとも一つの元素を含む第2の塩基性酸化物とからなる複合酸化物粒子B(好ましくは、酸素1s軌道の結合エネルギーの値が531eV以下の値を示す、酸素の電子密度が高い複合酸化物)が、貴金属に対して極めて強い相互作用を示す。そして、アルカリ土類金属元素、希土類元素及び3A族元素からなる群から選択される少なくとも一つの添加元素を含有してなる添加物が複合酸化物粒子Bに担持されていることから、複合酸化物粒子Bの塩基性が更に向上するため、複合酸化物粒子Bに担持されている貴金属に対して更に強い相互作用を示すものとなる。そのため、本発明にかかる複合酸化物粒子B上においては、高温の排ガスに長時間晒されても貴金属粒子の粒成長が十分に抑制され、触媒活性の低下を十分に抑制することができる。
さらに、本発明の排ガス浄化用触媒を長期間使用して粒成長が発生した場合には、粒成長した状態で担持されている貴金属の粒子と複合酸化物粒子Bとの界面で強い相互作用が起こる。そのため、酸素を含む酸化雰囲気中にて加熱(好ましくは500〜1000℃で加熱)することによって、貴金属は複合酸化物粒子Bと複合酸化物及び/又は金属酸化物を形成し、次第に複合酸化物粒子B表面上に拡がった状態で分散される。その結果、比較的短時間の酸化処理で複合酸化物粒子B上の貴金属が酸化物の状態で高分散担持された状態となり(再分散)、次いで還元処理を施すことによって酸化物状態の貴金属を金属状態に還元させることとなり(再生処理)、触媒活性が再生するものと本発明者らは推察する。
また、実際に車両に搭載する際には触媒成分を触媒基材に塗布して触媒層を形成する必要があるが、その塗布性の観点から、現状ではアルミナ成分を主としたバインダ成分を添加する必要がある。しかしながら、触媒が800℃以上の高温下に長期間晒された場合には、複合酸化物粒子B上に担持されている貴金属がバインダ成分上に移動する。そして、バインダ成分としてアルミナを添加した場合には、アルミナ上に移動した貴金属は耐久性が低いために、高温の排ガスに晒された場合に貴金属の粒成長が生じやすく、またアルミナ上で粒成長した貴金属は再生処理による効果も低くなる。これに対し、本発明においては、アルミナと特定の塩基性酸化物との複合酸化物を形成させることによって塩基性が高められた複合酸化物粒子Aをバインダ成分として用いている。そして、このようにバインダ成分の塩基性が高まることによって貴金属との相互作用がより強固となるために、複合酸化物粒子B上に担持されている貴金属が複合酸化物粒子A上に移動した場合にも、貴金属の粒成長を十分に抑制することができ、また再生処理による効果の低減を十分に抑制できるものと本発明者らは推察する。
本発明によれば、高温の排ガスに長時間晒されても貴金属の粒成長の発生を抑制して触媒活性の低下を十分に抑制できるとともに、高温の排ガスに長時間晒されて粒成長した貴金属を十分に微細な貴金属の粒子に再分散させて触媒活性を再生させることが可能な排ガス浄化用触媒、並びにその排ガス浄化用触媒の製造方法及びその排ガス浄化用触媒の再生方法を提供することが可能となる。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
<排ガス浄化用触媒>
先ず、本発明の排ガス浄化用触媒について説明する。すなわち、本発明の排ガス浄化用触媒は、アルミナと、アルカリ土類金属元素、希土類元素及び3A族元素からなる群から選択される少なくとも一つの元素を含む第1の塩基性酸化物とからなり、前記第1の塩基性酸化物の含有量が5〜50質量%である複合酸化物粒子A、
ジルコニアと、アルカリ土類金属元素、希土類元素及び3A族元素からなる群から選択される少なくとも一つの元素を含む第2の塩基性酸化物とからなる複合酸化物粒子B、
前記複合酸化物粒子Bに担持されている、アルカリ土類金属元素、希土類元素及び3A族元素からなる群から選択される少なくとも一つの元素を含む添加成分、並びに、
少なくとも前記複合酸化物粒子Bに担持されている貴金属、
を備えることを特徴とするものである。
(複合酸化物粒子A)
本発明にかかる複合酸化物粒子Aは、アルミナと、アルカリ土類金属元素、希土類元素及び3A族元素からなる群から選択される少なくとも一つの元素を含む第1の塩基性酸化物とからなる複合酸化物の粒子である必要がある。このように、アルミナと後述する第1の塩基性酸化物との複合酸化物を形成させることにより、複合酸化物粒子A上に移動した貴金属の粒成長を十分に抑制することができ、また再生処理による効果の低減を十分に抑制することが可能となる。
本発明にかかるアルミナは、非晶質(例えば活性アルミナ)であっても、結晶質であってもよい。
本発明にかかる第1の塩基性酸化物は、アルカリ土類金属元素、希土類元素及び3A族元素からなる群から選択される少なくとも一つの元素を含む酸化物である。このようなアルカリ土類金属元素としては、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、ラジウム(Ra)が挙げられ、中でも、このようなアルカリ土類金属元素としては、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、ラジウム(Ra)が挙げられ、中でも、貴金属及びその酸化物との相互作用が強く、親和性が大きい傾向にあるという観点から、Mg、Ba、Caが好ましい。また、希土類元素及び3A族元素としては、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)等が挙げられ、中でも、貴金属及びその酸化物との相互作用が強く、親和性が大きい傾向にあるという観点から、La、Ce、Nd、Pr、Y、Scが好ましく、La、Ce、Yがより好ましい。
そして、本発明にかかる複合酸化物粒子Aにおいては、前記第1の塩基性酸化物の含有量が5〜50質量%の範囲であることが必要である。第1の塩基性酸化物の含有量が5質量%未満では、複合酸化物粒子A上に移動した貴金属の粒成長を十分に抑制することができず、また再生処理による効果の低減を十分に抑制することができない。他方、50質量%を超えると、得られた粉末状の触媒を触媒基材に塗布して触媒層を形成する際に、触媒基材表面上の触媒層に剥離が生じる等の問題が発生する。また、得られる触媒の性能、及び触媒層を形成する際の塗布性の観点から、前記第1の塩基性酸化物の含有量が、5〜30質量%の範囲であることが好ましい。
(複合酸化物粒子B)
本発明にかかる複合酸化物粒子Bは、ジルコニアと、アルカリ土類金属元素、希土類元素及び3A族元素からなる群から選択される少なくとも一つの元素を含む第2の塩基性酸化物とからなる複合酸化物の粒子である必要がある。
本発明にかかる第2の塩基性酸化物は、アルカリ土類金属元素、希土類元素及び3A族元素からなる群から選択される少なくとも一つの元素を含む酸化物である。このようなアルカリ土類金属元素としては、Mg、Ca、Sr、Ba、Raが挙げられ、中でも、貴金属及びその酸化物との相互作用が強く親和性が大きい傾向にあるという観点からMg、Ca、Baが好ましい。また、希土類元素及び3A族元素としては、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Tb、Dy、Yb、Lu等が挙げられ、中でも、貴金属及びその酸化物との相互作用が強く親和性が大きい傾向にあるという観点からLa、Ce、Nd、Pr、Y、Scが好ましく、La、Ce、Yがより好ましい。
このような複合酸化物粒子Bにおいては、ジルコニアと、アルカリ土類金属元素、希土類元素及び3A族元素からなる群から選択される少なくとも一つの元素とが複合酸化物を形成していることが好ましい。すなわち、ジルコニアと、アルカリ土類金属元素、希土類元素及び3A族元素からなる群から選択される少なくとも一つの元素とが単に共存している状態(例えば、ジルコニア粒子と、アルカリ土類金属酸化物粒子、希土類酸化物粒子及び3A族酸化物粒子からなる群から選択される少なくとも一つの酸化物粒子とが均一分散している状態)では、再生処理を施した場合に担体上の貴金属を十分に再分散できず、触媒活性は十分に再生しない傾向にある。
このような複合酸化物粒子Bを構成するジルコニアと、前記第2の塩基性酸化物との比率(組成比)は特に制限されないが、複合酸化物粒子B中のジルコニアの比率が5〜90質量%であることが好ましく、10〜70質量%であることがより好ましい。前記複合酸化物粒子B中のジルコニアの比率が上記下限未満の場合は比表面積が小さくなり、貴金属粒子の粒成長を十分に抑制することができないばかりか、後述する本発明の再生方法を採用して再生処理を施しても担体上の貴金属粒子は十分に小さくならない傾向にあり、他方、上記上限を超える場合も再生処理を施しても担体上の貴金属粒子は十分に小さくならない傾向にある。
また、このような複合酸化物粒子Bは、酸素1s軌道の結合エネルギーの値が531eV以下の値を示すものであることが好ましく、531〜529eVの値を示すものであることが特に好ましい。前記結合エネルギーの値が531eVを超えている複合酸化物を用いた場合は、貴金属と担体との相互作用が十分に強くならず、再生処理の際に酸化処理を施しても担体上の貴金属が十分に再分散しない傾向にある。他方、前記結合エネルギーの値が529eV未満の複合酸化物を用いた場合は、貴金属と担体との相互作用が強くなり過ぎて、再生処理の際に還元処理を施しても担体上の貴金属が活性な状態に戻りにくくなる傾向にある。
このような条件を満たす複合酸化物としては、例えば以下のもの:
CeO−ZrO−Y:530.04eV
ZrO−La:530.64eV
CeO−ZrO:530eV
CeO−ZrO−La−Pr:529.79eV
が挙げられる。
また、本発明にかかる複合酸化物粒子Bは、他の成分としてアルミナ、ゼオライト等を更に含有していてもよい。その場合、これらの他の成分の比率が50質量%未満であることが好ましい。
(添加成分)
本発明の排ガス浄化用触媒においては、前記複合酸化物粒子Bに添加成分が担持されている必要がある。このように、更に添加成分を前記複合酸化物粒子Bに担持せしめることにより、複合酸化物粒子Bの塩基性を向上させ、複合酸化物粒子Bとそれに担持された貴金属との間に極めて強い相互作用を付与することができ、これによって貴金属の粒成長の発生を更に抑制して触媒活性の低下をより十分に抑制することができる。
このような添加成分に含有される元素としては、アルカリ土類金属元素、希土類元素、3A族元素が挙げられる。これらの中でも、担体の塩基性をより向上させて粒成長の発生をより十分に抑制できるとともに、粒成長が発生した場合においても触媒活性をより容易に再生させることができるという観点から、Mg、Ca、Nd、Pr、Ba、La、Ce、Y、Scが好ましく、Nd、Ba、Y、Scがより好ましい。
また、このような添加成分の担持量は、金属換算で後述する貴金属の量に対するモル比(添加成分の量/貴金属の量)が0.5〜20(より好ましくは1〜10)の範囲となる量であることが好ましい。このようなモル比が前記下限未満では、添加成分の担持量が十分でないため担体の塩基性を十分に向上させることができず、貴金属の粒成長を十分に抑制する効果が得られなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると担体の比表面積を低下させ、貴金属の分散性が低下する傾向にある。
さらに、このような添加成分は、その担持量が少量であるため前記複合酸化物粒子Bの外表面に担持させる量を確実に制御することが好ましく、更にコスト面でも担持量が少ないことが好ましいという観点から、前記複合酸化物粒子Bの外表面近傍に高い密度で担持されていることが好ましい。このような状態としては、前記複合酸化物粒子Bが粉体状のものである場合には、前記添加成分の80%以上が前記複合酸化物粒子Bの外表面から前記担体の中心までの間において前記複合酸化物粒子Bの外表面から30%の領域に担持されていることが好ましい。
(貴金属)
本発明の排ガス浄化用触媒においては、少なくとも前記複合酸化物粒子Bに貴金属が担持されている必要がある。このような貴金属としては、白金、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、金等が挙げられるが、得られる排ガス浄化用触媒がより高い触媒活性を示すという観点からは、白金、ロジウム、パラジウムが好ましく、再生の観点から、白金、パラジウムが好ましい。
また、本発明にかかる複合酸化物粒子Bにおいて、貴金属の担持量は、前記複合酸化物粒子B、前記添加成分及び前記貴金属の全質量に対して0.05〜2質量%(より好ましくは0.1〜0.5質量%)の範囲であることが好ましい。前記貴金属の担持量が前記下限未満では、貴金属により得られる触媒活性が不十分となる傾向にあり、他方、上記上限を超えると、コストが高騰するとともに粒成長を起こし易くなる傾向にある。
また、本発明の排ガス浄化用触媒において、前記貴金属はより細粒化された粒子の状態で前記複合酸化物粒子Bに担持されることが好ましい。このような貴金属の粒子径としては3nm以下であることがより好ましく、2nm以下であることがより好ましい。前記貴金属の粒子径が前記上限を超えると高度な触媒活性が得ることが困難になる傾向にある。
さらに、本発明の排ガス浄化用触媒においては、前記貴金属が前記複合酸化物粒子A及び前記複合酸化物粒子Bに担持されていてもよい。この場合において、前記複合酸化物粒子Aに担持されている貴金属の量は、排ガス浄化用触媒中の貴金属の量に対する質量比が0.3以下となる量であることが好ましい。質量比が前記上限を超えると、貴金属の粒成長が著しく進行し、また再分散の効率も著しく低下する傾向にある。なお、本発明の排ガス浄化用触媒においては、触媒が800℃以上の高温下に長期間晒された場合に、複合酸化物粒子B上に担持されている貴金属が前記複合酸化物粒子A上に移動するため、触媒として使用する前の排ガス浄化用触媒(フレッシュ品)において前記貴金属が前記複合酸化物粒子Aに担持されていない場合であっても、触媒として使用した後の排ガス浄化用触媒(耐久品)おいては、前記貴金属が前記複合酸化物粒子A及び前記複合酸化物粒子Bに担持されているものとなる。
また、本発明の排ガス浄化用触媒においては、前記貴金属が前記複合酸化物粒子Bのみに担持されていてもよい。すなわち、前記フレッシュ品においては、前記貴金属が前記複合酸化物粒子Aに担持されていなくともよい。
(排ガス浄化用触媒)
本発明の排ガス浄化用触媒は、前述した複合酸化物粒子A、複合酸化物粒子B、添加成分、及び貴金属を備えるものである。このような排ガス浄化用触媒における前記複合酸化物粒子Aと複合酸化物粒子Bとの混合比としては、前記複合酸化物粒子Aと複合酸化物粒子Bとの質量比が1/20〜1/2(前記複合酸化物粒子Aの質量/複合酸化物粒子Bの質量)の範囲であることが好ましく、1/20〜1/4の範囲であることがより好ましく、1/10〜1/4の範囲であることが特に好ましい。前記複合酸化物粒子Aと複合酸化物粒子Bとの混合比が前記下限未満では、得られた粉末状の触媒を触媒基材に塗布して触媒層を形成する際に、触媒基材表面上の触媒層に剥離が生じる等の問題が発生する傾向にある。他方、混合比が前記上限を超えると、貴金属の粒成長を十分に抑制することができない傾向にあり、また再生処理による効果が不十分となる傾向にある。
また、本発明の排ガス浄化用触媒の形態は特に制限されず、ハニカム形状のモノリス触媒、ペレット形状のペレット触媒等の形態とすることができる。ここで用いられる触媒基材も特に制限されず、得られる触媒の用途等に応じて適宜選択されるが、DPF基材、モノリス状基材、ペレット状基材、プレート状基材等が好適に採用される。また、このような触媒基材の材質も特に制限されないが、コーディエライト、炭化ケイ素、ムライト等のセラミックスからなる基材や、クロム及びアルミニウムを含むステンレススチール等の金属からなる基材が好適に採用される。
さらに、このような本発明の排ガス浄化用触媒は長期間使用して前記複合酸化物粒子A及び/又は前記複合酸化物粒子Bに担持されている貴金属に粒成長が発生した場合には、後述する本発明の排ガス浄化用触媒の再生方法を施すことで貴金属を再分散させ、触媒活性を十分に再生させることが可能である。
<排ガス浄化用触媒の製造方法>
次に、本発明の排ガス浄化用触媒の製造方法について説明する。すなわち、本発明の排ガス浄化用触媒の製造方法は、アルミナと、アルカリ土類金属元素、希土類元素及び3A族元素からなる群から選択される少なくとも一つの元素を含む第1の塩基性酸化物とからなり、前記第1の塩基性酸化物の含有量が5〜50質量%である複合酸化物粒子Aを準備する工程と、
ジルコニアと、アルカリ土類金属元素、希土類元素及び3A族元素からなる群から選択される少なくとも一つの元素を含む第2の塩基性酸化物とからなる複合酸化物粒子Bを準備する工程と、
前記複合酸化物粒子Bに、アルカリ土類金属元素、希土類元素及び3A族元素からなる群から選択される少なくとも一つの元素を含む添加成分、及び貴金属を担持する工程と、
前記複合酸化物粒子Aと、前記添加成分及び貴金属が担持された複合酸化物粒子Bとを混合して排ガス浄化用触媒を得る工程と、
を含むことを特徴とする方法である。
先ず、前記複合酸化物粒子Aを準備する工程について説明する。本発明にかかる複合酸化物粒子Aは、例えば以下のような方法によって得ることができる。すなわち、複合酸化物粒子Aの原料となる諸金属の塩(例えば、硝酸塩、酢酸塩)と、さらに必要に応じて界面活性剤(例えば、ノニオン系界面活性剤)とを含有する水溶液から、アンモニアの存在下で上記複合酸化物の共沈殿物を生成せしめ、得られた共沈殿物を濾過、洗浄した後に乾燥し、更に焼成することによって本発明にかかる複合酸化物粒子Aを得ることができる。
次に、前記複合酸化物粒子Bを準備する工程について説明する。本発明にかかる複合酸化物粒子Bは、例えば以下のような方法によって得ることができる。すなわち、複合酸化物粒子Bの原料となる諸金属の塩(例えば、硝酸塩)と、更に必要に応じて界面活性剤(例えば、ノニオン系界面活性剤)とを含有する水溶液から、アンモニアの存在下で上記複合酸化物の共沈殿物を生成せしめ、得られた共沈殿物を濾過、洗浄した後に乾燥し、更に焼成することによって本発明にかかる複合酸化物粒子Bを得ることができる。
次に、前記複合酸化物粒子Bに前記添加成分及び前記貴金属を担持する工程について説明する。前記複合酸化物粒子Bに添加成分を担持する方法としては特に制限されず、例えば、前記添加成分に含まれる元素の塩(例えば、炭酸塩、硝酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、硫酸塩)や錯体を含有する水溶液を前記複合酸化物粒子Bに接触させた後に乾燥し、更に焼成する方法を採用することができる。また、必要に応じて前記複合酸化物粒子Bを予め熱処理して安定化させた後に、前記添加成分を担持させてもよい。
また、前記複合酸化物粒子Bに前記貴金属を担持する方法としては特に制限されず、例えば、貴金属の塩(例えば、ジニトロジアミン塩)や錯体(例えば、テトラアンミン錯体)を含有する水溶液を前記複合酸化物粒子Bに接触させた後に乾燥し、更に焼成する方法を採用することができる。なお、本発明において、前記複合酸化物粒子Bに前記添加成分と前記貴金属とを担持させる順序は特に制限されないが、貴金属表面の露出量という観点から、貴金属を後で担持させることがより好ましい。
次いで、前記複合酸化物粒子Aと、前記添加成分及び貴金属が担持された複合酸化物粒子Bとを混合して排ガス浄化用触媒を得る工程について説明する。このような工程においては、前記複合酸化物粒子Aと、前記添加成分及び貴金属が担持された複合酸化物粒子Bとを混合することによって、粉末状の排ガス浄化触媒を得ることができる。そして、このような粉末状の排ガス浄化触媒を用いて、ハニカム形状のモノリス触媒、ペレット形状のペレット触媒等を得ることができる。このような触媒を製造する方法は特に制限されず、例えば、モノリス触媒を製造する場合は、コーディエライトや金属箔から形成されたハニカム形状の触媒基材に、粉末状の排ガス浄化用触媒を含有するスラリーを用いて触媒層を形成する方法が好適に採用される。なお、本発明の排ガス浄化用触媒の製造方法においては、前記複合酸化物粒子Aがバインダ成分としての働きをすることによって触媒基材への塗布性が向上しているため、このような方法を好適に採用することができる。
<排ガス浄化用触媒の再生方法>
次いで、本発明の排ガス浄化用触媒の再生方法について説明する。すなわち、本発明の排ガス浄化用触媒の再生方法は、前述した本発明の排ガス浄化用触媒に対して、酸素を含む酸化雰囲気中にて加熱する酸化処理、及び還元処理を施すことを特徴とする方法である。
本発明にかかる酸化処理が行われる酸化雰囲気としては、酸素が少しでも含まれていればそれに相当するモル数の貴金属を酸化することができるが、酸素の濃度が1体積%以上であることが好ましく、1〜20体積%であることがより好ましい。酸素の濃度が前記下限未満では、担体上の貴金属の再分散が十分に進行しない傾向にあり、他方、酸素の濃度は高ければ高いほど酸化という観点からは良いが、空気中の酸素濃度を超える20体積%超とするためには酸素ボンベ等の特別な装置が必要となりコストが高騰する傾向にある。また、本発明にかかる酸化雰囲気中の酸素以外のガスとしては、還元性ガスを含まないことが好ましく、窒素ガス又は不活性ガスを用いることが好ましい。
本発明にかかる酸化処理における加熱温度は、担持されている貴金属が酸化される温度であればよいが、500〜1000℃の範囲の温度とすることが好ましい。酸化処理温度が500℃未満では、担体上の貴金属が再分散する速度が極端に遅くなって十分に進行しない傾向にあり、他方、1000℃を超えると担体自体の熱収縮が起こり易くなり、触媒活性が低下する傾向にある。
また、本発明にかかる酸化処理に要する時間は、酸化処理温度等に応じて適宜選択され、温度が低ければ長時間必要となり、温度が高ければ短時間でよい傾向にある。酸化処理温度が500〜1000℃であれば、酸化処理一工程あたりの時間は2秒〜1時間程度であることが好ましい。酸化処理時間が2秒未満では担体上の貴金属の再分散が十分に進行しない傾向にあり、他方、1時間を超えると貴金属の再分散作用が飽和する傾向にある。
本発明にかかる酸化処理は、排ガス浄化用触媒を排気系から取り出して所定の処理装置内で行ってもよいが、内燃機関の排気系に装着した状態で実施することが好ましい。それによって酸化処理工数を大きく低減することができ、しかも酸化処理後に排ガスを流通させることによって貴金属の酸化物を還元させることが可能となる。このように排気系に排ガス浄化用触媒を装着した状態で酸化処理する場合、例えば触媒の上流側に設けられた空気弁から空気を多量に導入したり、混合気の空燃比(A/F)を高くしたり、その逆に燃料の供給量を大幅に減らしたりして、混合気の空燃比(A/F)を高くすることによって実施することができる。また、加熱手段としては、特定の加熱装置によって触媒を加熱してもよいし、触媒上における反応熱を利用して加熱してもよい。
上記のように排気系に装着した状態で酸化処理を実行すれば、触媒性能の劣化の程度に対応してリアルタイムで酸化処理を施すことも可能となる。例えば、自動車の運転時間や走行距離に応じて定期的に酸化処理を行ってもよいし、触媒の下流にNOxセンサーやCOセンサーを設けて触媒性能を検出し、その値が基準値を超えた場合に酸化処理を行うようにしてもよい。
本発明にかかる還元処理は、水素、一酸化炭素等の還元性ガスが存在する雰囲気下で前記触媒を加熱することによって実施することができる。よって、エンジン排気は全体としてストイキ雰囲気であっても還元性ガスを含むことから、貴金属を十分に還元処理できる。さらに、還元処理においては、還元性ガスが少しでも含まれていればよいが、還元性ガスの濃度が0.1体積%以上であることが好ましい。還元性ガスの濃度が前記下限未満では、担体上の貴金属が活性な状態に戻りにくくなる傾向にある。また、本発明にかかる還元性雰囲気中の還元性ガス以外のガスとしては、酸化性ガスを含まないことが好ましく、窒素ガス又は不活性ガスを用いることが好ましい。
本発明にかかる還元処理における加熱温度は、前記酸化処理により酸化された貴金属の酸化物が還元される温度であればよいが、200℃以上であることが好ましく、400〜1000℃の範囲の温度とすることが好ましい。還元処理温度が200℃未満では、担体上の貴金属の酸化物が十分に還元されない傾向にあり、他方、前記上限を超えると担体自体の熱収縮が起こり易くなり、触媒活性が低下する傾向にある。
また、本発明にかかる還元処理に要する時間は、還元処理温度等に応じて適宜選択され、温度が低ければ長時間必要となり、温度が高ければ短時間でよい傾向にある。還元処理温度が200℃以上であれば、還元処理一工程あたりの時間は2秒〜5分程度であることが好ましい。還元処理時間が前記下限未満では担体上の貴金属の酸化物が十分に還元されない傾向にあり、他方、前記上限を超えると貴金属の酸化物の還元作用が飽和してしまう傾向にある。
本発明にかかる還元処理も、排ガス浄化用触媒を排気系から取り出して所定の処理装置内で行ってもよいが、内燃機関の排気系に装着した状態で実施することが好ましい。それによって還元処理工数を大きく低減することができ、しかも前記酸化処理後に単に排ガスを流通させることによって貴金属の酸化物を還元させることが可能となる。このように排気系に排ガス浄化用触媒を装着した状態で還元処理する場合、例えば、自動車の排ガス浄化用触媒の場合には、化学量論的に等量比にあるストイキ雰囲気或いは酸素が不足するリッチ雰囲気の排ガスを排ガス浄化用触媒に接触させることによって実施することが好ましい。これにより排ガス浄化用触媒を排気系に装着したまま酸化処理と還元処理を施すことができ、空燃比制御の一環として本発明の再生処理を実施することが可能となる。また、加熱手段としては、特定の加熱装置によって触媒を加熱してもよいし、排ガスの熱を利用して加熱してもよい。
なお、前記酸化処理と前記還元処理とがそれぞれ一工程の場合は酸化処理の後に還元処理が施されるが、本発明の再生方法においては前記酸化処理と前記還元処理とを交互に繰り返してもよく、その場合は酸化処理が先であっても還元処理が先であってもよい。また、前記酸化処理と前記還元処理とを交互に繰り返す場合、前者の処理の合計時間と後者の処理の合計時間はいずれも特に制限されない。
そして、このような本発明の再生処理を施すことで、粒成長した貴金属の粒子径を微細化させることが可能となり、触媒活性をより十分に再生させることが可能となる。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
<複合酸化物粒子の作製>
(調製例1)
硝酸アルミニウム九水和物375gをイオン交換水800gに溶解させた水溶液と、酢酸マグネシウム四水和物107gをイオン交換水800gに溶解させた水溶液とを3リットルのガラス製ビーカの中で混合し、回転数100rpmのロータリスターラを用いて撹拌して混合水溶液を得た。その後、混合水溶液中にpH値12の25%アンモニア水650gを一気に添加し、さらに15分間撹拌した。得られた白色沈殿物と上澄み液をビーカに入れたまま、乾燥器の中で100℃/時間の昇温速度で400℃まで昇温し、400℃で5時間加熱して白色粉末を得た。得られた白色粉末をアルミナ坩堝に移し、さらに850℃で5時間加熱焼成することにより、複合酸化物粒子A1を得た。得られた複合酸化物粒子A1は、Mg:Al=1:2(モル比)のMgAlスピネル粉末であった。
(調製例2)
硝酸アルミニウム九水和物375gをイオン交換水800gに溶解させた水溶液と、硝酸バリウム131gをイオン交換水800gに溶解させた水溶液とを3リットルのガラス製ビーカの中で混合し、回転数100rpmのロータリスターラを用いて撹拌して混合水溶液を得た。その後、混合水溶液中にpH値12の25%アンモニア水650gを一気に添加し、さらに15分間撹拌した。得られた白色沈殿物と上澄み液をビーカに入れたまま、乾燥器の中で100℃/時間の昇温速度で400℃まで昇温し、400℃で5時間加熱して白色粉末を得た。得られた白色粉末をアルミナ坩堝に移し、さらに850℃で5時間加熱焼成することにより、複合酸化物粒子A2を得た。得られた複合酸化物粒子A2は、Ba:Al=1:2(モル比)のBaAlスピネル粉末であった。
(調製例3)
硝酸セリウム水溶液(CeOとして28質量%含む)233g、オキシ硝酸ジルコニウム水溶液(ZrOとして18質量%含む)152g、硝酸イットリウム14g及びノニオン系界面活性剤(ライオン社製、商品名:レオコン)10gを含有する混合水溶液2000gに25質量%濃度のアンモニア水200gを添加し、室温で10分間撹拌して共沈殿物を得た。次いで、得られた共沈殿物を濾過・洗浄した後に110℃で乾燥し、さらに1000℃で5時間大気中にて焼成してセリウム−ジルコニウム−イットリウム複合酸化物(CeO−ZrO−Y)からなる複合酸化物粒子B1を得た。なお、得られた複合酸化物(CZY)の組成比は、68質量%CeO、28質量%ZrO、4質量%Yであった。
<排ガス浄化用触媒の作製>
(実施例1)
先ず、調製例1で得られた複合酸化物粒子A1(100g)を所定量のジニトロジアミン白金の硝酸水溶液(白金濃度:4重量%)を水で希釈した水溶液に浸漬し、濾過・洗浄した後に110℃で乾燥し、さらに500℃で3時間大気中にて焼成してアルミナ系粉末(Pt/MgAl)を得た。得られたアルミナ系粉末におけるPt担持量は0.1質量%であった。
次に、調製例3で得られた複合酸化物粒子B1(100g)をイオン交換水中に投入して攪拌し、そこに硝酸バリウムを3.38g加えて混合溶液を得た。そして、得られた混合溶液を加熱し、蒸発乾固させた後に110℃の温度条件で乾燥させ、更に大気中にて500℃の温度条件で5時間焼成し、複合酸化物粒子B1にBaを含有する添加成分を担持せしめ、添加成分担持担体を得た。
その後、得られた添加成分担持担体を所定量のジニトロジアミン白金の硝酸水溶液(白金濃度:4重量%)を水で希釈した水溶液に浸漬し、濾過及び洗浄した後に、110℃の温度条件で乾燥し、更に大気中にて500℃の温度条件で3時間焼成してジルコニア系粉末(Pt/Ba/CZY)を得た。得られた触媒粒子におけるPt担持量は0.5質量%であり、添加成分中のBaの担持量は前記複合酸化物粒子1gあたり0.000128molであり、Ptの量と添加成分中のBaの量のモル比(Ba/Pt)は5であった。
次いで、得られたアルミナ系粉末及びジルコニア系粉末を質量比が1:5(アルミナ系粉末:ジルコニア系粉末)となるように混合して、粉末状の本発明の排ガス浄化用触媒を得た。
(実施例2)
アルミナ系粉末におけるPt担持量を0.05質量%とし、ジルコニア系粉末におけるPt担持量を0.51質量%とした以外は実施例1と同様にして、粉末状の本発明の排ガス浄化用触媒を得た。
(実施例3)
ジルコニア系粉末における添加成分の担持量をPtの量と添加成分中のBaの量のモル比(Ba/Pt)が2となる量とした以外は実施例1と同様にして粉末状の本発明の排ガス浄化用触媒を得た。
(実施例4)
ジルコニア系粉末におけるPt担持量を0.25質量%とし、添加成分の担持量をPtの量と添加成分中のBaの量のモル比(Ba/Pt)が10となる量とし、アルミナ系粉末及びジルコニア系粉末を質量比が1:10(アルミナ系粉末:ジルコニア系粉末)となるように混合した以外は実施例1と同様にして、粉末状の本発明の排ガス浄化用触媒を得た。
(実施例5)
ジルコニア系粉末における添加成分として、Baを含有する添加成分に代えてNdを含有する添加成分を用いた以外は実施例1と同様にして、粉末状の本発明の排ガス浄化用触媒を得た。
(実施例6)
調製例1で得られた複合酸化物粒子A1に代えて調製例2で得られた複合酸化物粒子A2を用いた以外は実施例1と同様にして粉末状の本発明の排ガス浄化用触媒を得た。
(実施例7)
アルミナ系粉末におけるPt担持量を0.8質量%とし、ジルコニア系粉末におけるPt担持量を0.36質量%とした以外は実施例1と同様にして、粉末状の本発明の排ガス浄化用触媒を得た。
(実施例8)
アルミナ系粉末として調製例1で得られた複合酸化物粒子A1を用い、ジルコニア系粉末におけるPt担持量を1質量%とした以外は実施例1と同様にして、粉末状の本発明の排ガス浄化用触媒を得た。
(実施例9)
アルミナ系粉末として調製例1で得られた複合酸化物粒子A1を用いた以外は実施例1と同様にして粉末状の本発明の排ガス浄化用触媒を得た。
(実施例10)
アルミナ系粉末として調製例1で得られた複合酸化物粒子A1を用い、ジルコニア系粉末における添加成分の担持量をPtの量と添加成分中のBaの量のモル比(Ba/Pt)が2となる量とした以外は実施例1と同様にして、粉末状の本発明の排ガス浄化用触媒を得た。
(実施例11)
アルミナ系粉末として調製例1で得られた複合酸化物粒子A1を用い、アルミナ系粉末及びジルコニア系粉末を質量比が1:10(アルミナ系粉末:ジルコニア系粉末)となるように混合した以外は実施例1と同様にして、粉末状の本発明の排ガス浄化用触媒を得た。
(実施例12)
アルミナ系粉末として調製例1で得られた複合酸化物粒子A1を用い、ジルコニア系粉末における添加成分として、Baを含有する添加成分に代えてNdを含有する添加成分を用いた以外は実施例1と同様にして、粉末状の本発明の排ガス浄化用触媒を得た。
(実施例13)
アルミナ系粉末として調製例2で得られた複合酸化物粒子A2を用いた以外は実施例1と同様にして粉末状の本発明の排ガス浄化用触媒を得た。
(比較例1)
実施例1で用いた複合酸化物粒子A1に代えて市販のγ−Al粉末(グレース社製)を用いた以外は実施例1と同様にして粉末状の比較用の排ガス浄化用触媒を得た。
(比較例2)
実施例2で用いた複合酸化物粒子A1に代えて市販のγ−Al粉末(グレース社製)を用いた以外は実施例2と同様にして粉末状の比較用の排ガス浄化用触媒を得た。
(比較例3)
複合酸化物粒子B1に添加成分を担持しなかった以外は実施例1と同様にして粉末状の比較用の排ガス浄化用触媒を得た。
(比較例4)
アルミナ系粉末におけるPt担持量を2.6質量%とし、複合酸化物粒子B1にPtを担持しなかった以外は実施例1と同様にして粉末状の比較用の排ガス浄化用触媒を得た。
(比較例5)
アルミナ系粉末として市販のγ−Al粉末(グレース社製)を用いた以外は実施例1と同様にして粉末状の比較用の排ガス浄化用触媒を得た。
<触媒基材への塗布性の評価>
実施例1〜13及び比較例1〜5で得られた粉末状の排ガス浄化用触媒を水に分散して、排ガス浄化用触媒を含有するスラリーを得た。次に、得られたスラリーを、排ガス浄化用触媒のコート密度が150g/Lとなるように、ウォッシュコート法を用いてコージェライト基材表面上にコートして触媒層を形成せしめた。そして、コージェライト基材表面上の触媒層をマイクロスコープにて観察したところ、本発明の排ガス浄化用触媒(実施例1〜13)を用いた場合には、コージェライト基材表面上に触媒層が均一に形成されており、触媒基材への塗布性が良好であることが確認された。
<触媒活性の評価>
(i)評価方法
先ず、実施例1〜13及び比較例1〜5で得られた粉末状の排ガス浄化用触媒を、冷間等方圧加圧法(CIP法)を採用して1t/cmの圧力で圧粉成形した後、0.5〜1mmの大きさに粉砕し、ペレット状の触媒とした。
次に、ペレット状の触媒をそれぞれ用いて耐久試験を行った。すなわち、反応容器に触媒を仕込み、反応容器中に触媒3gあたりの流量が500cc/分となるようにして表1に示すリッチガスとリーンガスとを5分おきに交互に流入させて950℃の温度条件で5時間処理することによって担体上の貴金属を粒成長させた(耐久試験)。そして、このような耐久試験後の触媒における貴金属の平均粒子径を測定した。なお、貴金属の平均粒子径は、特開2004−340637号公報に記載されているCO化学吸着法によって求めた。また、このような耐久試験後の触媒に関してEPMAによる分析を行ったところ、白金が担持されていないアルミナ系粉末を用いた触媒(実施例8〜13、比較例5)においては、耐久試験によって複合酸化物粒子B上の貴金属が複合酸化物粒子A上或いはアルミナ上に移動したことが確認された。
Figure 0004836187
次いで、前記耐久試験後の触媒に対してそれぞれ、20容量%のOと80容量%のNとからなる酸化雰囲気中において750℃で30分間酸化処理(再分散処理)を施し、貴金属の再分散を試みた。そして、このような再分散処理後の触媒における貴金属の平均粒子径を測定した。なお、貴金属の平均粒子径は、特開2004−340637号公報に記載されているCO化学吸着法によって求めた。このような再分散処理及びCO化学吸着法の還元前処理をもって、各排ガス浄化用触媒に対する酸化処理と還元処理を実現し、これを再生処理とした。
(ii)評価結果
先ず、実施例1〜7及び比較例1〜4で得られた排ガス浄化用触媒における、耐久試験後及び再分散処理後の貴金属の平均粒子径の測定値を表2に示す。また、実施例1〜7及び比較例1〜4で得られた排ガス浄化用触媒(フレッシュ品)における、アルミナ系粉末中の複合酸化物粒子Aの種類及びPt担持量、ジルコニア系粉末中の複合酸化物粒子Bの種類、添加成分の元素種とその担持量、及びPt担持量を表2に示す。さらに、実施例1〜7及び比較例1〜4で得られた排ガス浄化用触媒(フレッシュ品)における、アルミナ系粉末とジルコニア系粉末との混合比、並びに排ガス浄化用触媒中の貴金属の量に対する複合酸化物粒子A上の貴金属の量の質量比を表2に示す。
Figure 0004836187
表2に示す結果からも明らかなように、本発明の排ガス浄化用触媒(実施例1〜7)においては、貴金属の粒成長が抑制され、再生処理による効果も高いことが確認された。したがって、本発明によれば、高温の排ガスに長時間晒されても貴金属の粒成長の発生を抑制して触媒活性の低下を十分に抑制できるとともに、高温の排ガスに長時間晒されて粒成長した貴金属を十分に微細な貴金属の粒子に再分散させて触媒活性を再生させることが可能な排ガス浄化用触媒を得ることができることが確認された。
次に、実施例8〜13及び比較例5で得られた排ガス浄化用触媒における、耐久試験後及び再分散処理後の貴金属の平均粒子径の測定値を表3に示す。また、実施例8〜13及び比較例5で得られた排ガス浄化用触媒(フレッシュ品)における、アルミナ系粉末中の複合酸化物粒子Aの種類及びPt担持量、ジルコニア系粉末中の複合酸化物粒子Bの種類、添加成分の元素種とその担持量、及びPt担持量を表3に示す。さらに、実施例8〜13及び比較例5で得られた排ガス浄化用触媒(フレッシュ品)における、アルミナ系粉末とジルコニア系粉末との混合比を表3に示す。
Figure 0004836187
表3に示す結果からも明らかなように、バインダ成分として複合酸化物粒子Aを用いている本発明の排ガス浄化用触媒(実施例9)においては、バインダ成分としてγ−Al粉末を用いている排ガス浄化用触媒(比較例5)と比較して貴金属の粒成長が抑制され、再生処理による効果も高いことが確認された。また、本発明の排ガス浄化用触媒においても、一般的な触媒と同様にバインダ成分が少ないほど貴金属の粒成長が抑制できること、並びに貴金属の担持量が少ないほど貴金属の粒成長が抑制できることが確認された(実施例8、9、11)。したがって、本発明によれば、高温の排ガスに長時間晒されても貴金属の粒成長の発生を抑制して触媒活性の低下を十分に抑制できるとともに、高温の排ガスに長時間晒されて粒成長した貴金属を十分に微細な貴金属の粒子に再分散させて触媒活性を再生させることが可能な排ガス浄化用触媒を得ることができることが確認された。
以上説明したように、本発明によれば、高温の排ガスに長時間晒されても貴金属の粒成長の発生を抑制して触媒活性の低下を十分に抑制できるとともに、高温の排ガスに長時間晒されて粒成長した貴金属を十分に微細な貴金属の粒子に再分散させて触媒活性を再生させることが可能な排ガス浄化用触媒、並びにその排ガス浄化用触媒の製造方法及びその排ガス浄化用触媒の再生方法を提供することが可能となる。
したがって、本発明は、自動車エンジンから排出される排ガス中のHC、CO、NOx等の有害成分を除去するための排ガス浄化用触媒を長時間にわたって触媒活性の劣化を招くことなく使用するための技術として非常に有用である。

Claims (9)

  1. アルミナと、アルカリ土類金属元素からなる群から選択される少なくとも一つの元素を含む第1の塩基性酸化物とからなり、前記第1の塩基性酸化物の含有量が5〜50質量%である複合酸化物粒子A、
    ジルコニアと、希土類元素及び3A族元素からなる群から選択される少なくとも一つの元素を含む第2の塩基性酸化物とからなる複合酸化物粒子B、
    前記複合酸化物粒子Bに担持されている、アルカリ土類金属元素、希土類元素及び3A族元素からなる群から選択される少なくとも一つの元素を含む添加成分、並びに、
    少なくとも前記複合酸化物粒子Bに担持されている貴金属、
    を備えており、
    前記複合酸化物粒子Aと前記複合酸化物粒子Bとの質量比が1/20〜1/2(複合酸化物粒子Aの質量/複合酸化物粒子Bの質量)の範囲であることを特徴とする排ガス浄化用触媒。
  2. 前記貴金属が前記複合酸化物粒子A及び前記複合酸化物粒子Bに担持されていることを特徴とする請求項1に記載の排ガス浄化用触媒。
  3. 前記貴金属が前記複合酸化物粒子Bのみに担持されていることを特徴とする請求項1に記載の排ガス浄化用触媒。
  4. 前記貴金属の担持量が、前記複合酸化物粒子B、前記添加成分及び前記貴金属の全質量に対して0.05〜2質量%の範囲であり、且つ、
    前記添加成分の担持量が、金属換算で前記貴金属の量に対するモル比(添加成分の量/貴金属の量)が0.5〜20の範囲となる量であること、
    を特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の排ガス浄化用触媒。
  5. アルミナと、アルカリ土類金属元素からなる群から選択される少なくとも一つの元素を含む第1の塩基性酸化物とからなり、前記第1の塩基性酸化物の含有量が5〜50質量%である複合酸化物粒子Aを準備する工程と、
    ジルコニアと、希土類元素及び3A族元素からなる群から選択される少なくとも一つの元素を含む第2の塩基性酸化物とからなる複合酸化物粒子Bを準備する工程と、
    前記複合酸化物粒子Bに、アルカリ土類金属元素、希土類元素及び3A族元素からなる群から選択される少なくとも一つの元素を含む添加成分、及び貴金属を担持する工程と、
    前記複合酸化物粒子Aと、前記添加成分及び貴金属が担持された複合酸化物粒子Bとを、前記複合酸化物粒子Aと前記複合酸化物粒子Bとの質量比が1/20〜1/2(複合酸化物粒子Aの質量/複合酸化物粒子Bの質量)の範囲となるように混合して排ガス浄化用触媒を得る工程と、
    を含むことを特徴とする排ガス浄化用触媒の製造方法。
  6. 請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の排ガス浄化用触媒に対して、酸素を含む酸化雰囲気中にて加熱する酸化処理、及び還元処理を施すことを特徴とする排ガス浄化用触媒の再生方法。
  7. 前記酸化処理における温度が500〜1000℃であることを特徴とする請求項6に記載の排ガス浄化用触媒の再生方法。
  8. 前記酸化雰囲気における酸素濃度が1体積%以上であることを特徴とする請求項6又は7に記載の排ガス浄化用触媒の再生方法。
  9. 前記排ガス浄化用触媒を内燃機関の排気系に装着した状態で、前記酸化処理及び前記還元処理を施すことを特徴とする請求項6〜8のうちのいずれか一項に記載の排ガス浄化用触媒の再生方法。
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