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JP4835342B2 - トナーの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、電子写真方式の画像形成に用いられるトナーの製造方法に関し、特に、その形状が球形のものと非球形のものが混在してなるトナーの製造方法に関する。
複写機やプリンタなどの電子写真方式による画像形成技術の分野では、デジタル技術の進展に伴い、タンデム方式に代表されるフルカラーの画像形成装置が登場し、写真の様な高画質、高精細な画像の作成が可能になってきた(例えば、特許文献1参照)。その結果、従来では印刷でしか対応できなかったレベルのカラー画像が得られる様になり、電子写真方式の画像形成装置が高解像度、広い色再現領域、高速のプリント作成が求められる印刷業界でも電子写真方式の画像形成装置が使用される様になってきた。
また、1200dpi(dpi;1インチ(2.54cm)あたりのドット数)レベルの微小なドット画像の再現の様な高精細な画像形成も検討され、微小なドット画像を正確に再現させるための手段の1つとしてトナーの小径化が種々検討されていた。その中でも、粒子の形状や大きさを制御により所望のトナーを形成することが可能な重合トナーが注目される様になった(例えば、特許文献2参照)。
この様に、カラー画像形成装置やトナーの小径化技術により、高画質、高精細なフルカラー画像を電子写真方式で作成する技術が市場で普及しつつある。
ところで、地球環境への配慮、あるいは、ユーザサイドのコスト削減等の視点から、画像形成装置の電力消費量の低減化が求められる傾向があり、その対応の1つとして、現状よりも更に低い定着温度で画像形成を行ういわゆる低温定着の技術が注目されている。この課題を解消する手段として、例えば、低融点のワックスを用いることにより、低い温度での定着を可能にする重合トナーが検討されている(例えば、特許文献3参照)。
低温定着を実現するトナーを設計する際、前述した低融点のワックスを選択することで実現させる方法の他に、樹脂を選択することにより定着温度の低いトナーを得る方法も挙げられる。すなわち、ガラス転移温度を低くしたり分子量を小さくすることで溶融粘度の低い樹脂が得られ、この様な樹脂を用いることにより定着温度の低いトナーが得られる。
溶融粘度の低い樹脂で形成されたトナーは、作製時の温度の影響等により、真球に近い形状のものが得られ易い。そして、真球に近い形状のトナーは、微細なドット画像を精度よく再現するので、デジタル画像等の高精細なトナー画像形成に好都合なものである。
特開平10−20598号公報 特開2000−214629号公報 特開2001−42564号公報
しかしながら、トナー粒子が球形に近くなるとそれだけ転がり易くなるため、ブレードを用いてクリーニングを行うと、エッジにうまく引っかからずにすり抜けてしまう傾向があり、ブレードによるクリーニングがスムーズに行えない問題を発生させていた。この様に、球形に近いトナーは、高精細な画像形成に有利なものであるが、ブレードからのすり抜けによるクリーニング不良が発生し易いものであった。
本発明は、球形に近いトナーを用いて画像形成を行った時に、感光体や転写ベルト上の残存トナーをブレードでスムーズにクリーニングすることのできる静電荷像現像用トナーの製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、ブレードによるクリーニングが円滑に行え、しかも、高精細な画像形成が可能な低温定着対応のトナーの製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、下記構成を採ることにより達成される。
1.
樹脂と着色剤を含有してなる体積基準におけるメディアン径(D50)が3μm以上8μm以下のトナーを、
少なくとも、
樹脂微粒子A分散液の作製工程、
樹脂微粒子B分散液の作製工程、
樹脂微粒子の凝集・融着工程
を有するトナーの製造方法において、
前記樹脂微粒子の凝集・融着工程で、樹脂微粒子Aよりなる凝集物の大きさがトナーの体積基準におけるメディアン径(D 50 )の30%乃至50%の大きさになった時に樹脂微粒子Bを添加し、さらに、凝集を継続させ、
平均円形度が0.940以上0.980以下のトナーを作製することを特徴とするトナーの製造方法。
本発明では、球形のトナーとピーナツ形状に代表される非球形のトナーとを混在させたトナーにより、感光体や転写ベルト上に球形トナーが残存していてもブレードによるクリーニングをスムーズに行える様になった。すなわち、本発明では、非球形トナーを存在させることで、非球形のトナーが球形トナーの転がりを抑えてその動きを止めて、球形トナーのブレードからのすり抜けを防止し、球形トナーのクリーニングを円滑に行える様にしたものと推測される。
この様に、本発明によれば、従来より懸念されていた球形トナーのブレードクリーニング性の問題が解消され、高精細なトナー画像を安定して形成できる様になった。また、球形をとり易い低温定着対応のトナーが積極的に使用できる様になり、電力消費量を低減させ、かつ、高精細なトナー画像形成が安定して行える様になった。
本発明は、球形のトナーとピーナツ形状に代表される非球形のトナーとを混在させてなるトナーの製造方法に関する発明である。
本発明の製造方法により得られるトナー(以下、本発明に係るトナーまたは単にトナーとも記す)を用いて画像形成を行うと、クリーニング工程においてブレードを用いて像担持体上の残留トナーを除去することができる様になった。この様に、球形トナーが存在していてもブレードによるクリーニングがスムーズに行える様になった理由は、前述した様に、非球形のトナーが球形トナーを転がさない様に動きを止めることにより、球形トナーのブレードからのすり抜けを防止するためと推測される。すなわち、本発明は、クリーニング時に起こる球形トナーの転がりを非球形のトナーで防ぐ様にした発明で、球形トナーのブレードからのすり抜けを非球形トナーを混在させることにより解消したものである。
また、本発明に係るトナーは、100nmレベルの樹脂微粒子を凝集、融着させて樹脂粒子を作製する工程を経て得られるもので、凝集、融着により、球形の粒子とピーナツ形状等の非球形の粒子を同時に形成することが可能なものである。この様に、1つの凝集・融着環境下で、形状の異なる粒子を同時に形成することができる理由は、明らかではないが、おそらく、以下の様なしくみで実現されるものと推測される。
先ず、樹脂微粒子の凝集初期段階で非常にランダムな凝集が行われ、粒径分布が非常に広い粒子形成が行われるものと推測される。すなわち、形成される粒子は大きさにばらつきがあり、大きな粒子と小さな粒子とが混在する状態になるものと推測される。
本発明では、凝集工程の途中段階で最初に添加した樹脂微粒子よりも高いガラス転移温度の樹脂微粒子が反応系に添加され、新たに添加された樹脂微粒子は初期段階で形成された粒子表面に融着する過程を経て、その後も凝集が行える環境が維持される。このとき、小さな粒子同士の凝集が優位に起こるため、大きな粒子と同じくらいの大きさになるが、小さな粒子の凝集物は、粒子表面に付着した高いガラス転移温度の樹脂の影響でまるい形状になりにくく、ピーナツ形状等の非球形が形成されるものと推測される。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明に係るトナーは、球形のトナーとピーナツ形状等の非球形のトナーとが混在してなるものである。本発明に係るトナーの採り得る形状を図1を用いて説明する。
図1は、電子顕微鏡撮影等により本発明に係るトナーTを投影したときに得られる粒子の形状を示す模式図で、(a)乃至(d)に示すものが非球形のトナーTの例であり、(e)に示すものが球形のトナーTである。また、図中、本発明でいう「長軸」をL、「トナー外縁」をf、「トナー外縁上の凸部」をp、及び、「凸部を通過する垂線」をrで示す。尚、垂線に番号がついたものがあるが、これは複数個の垂線を意味するものである。
図に示す様に、「トナーの外縁(f)」はトナーを投影したときに得られる輪郭部分をいい、「長軸(L)」はトナー粒子外縁上の2点を結んで形成される線分のうち、2点間の距離が最も長いものである。また、「トナー外縁上の凸部(p)」は外縁上の湾曲部分のことをいい、粒子の外側に湾曲したものに加え、粒子の内側に湾曲したものも含む。さらに、「凸部を通過する垂線(r)」は、湾曲部分においてその曲線上で微分値が0となる地点、すなわち、湾曲部分先端を通過し、長軸と直交する線分のことをいうものである。
先ず、図1(a)と(b)に示すトナーTは非球形トナーの一例で、本発明でいう「トナーを投影した時に得られる長軸の0.5倍以上で1.0倍よりも小さい長さを有し、かつ、トナー外縁上の凸部を通過する垂線を有するトナー」に該当するものである。図1(a)に示すトナーTは、非球形トナーのうちでも比較的球形に近い形状を有するもので、長軸の長さのだいたい0.8倍以上で1.0倍に満たない長さを有する垂線rがトナー外縁f上の凸部pを通過するものである。また、図1(b)に示すトナーTは(a)よりも細長い形状を有し、長軸Lのだいたい0.5倍以上で0.8倍未満の長さを有する垂線rがトナー外縁f上の凸部pを通過するものである。
次に、図1(c)と(d)に示すトナーTは、(a)または(b)に示す非球形トナーの中でも、「トナーの長軸に対し、トナー外縁上の凸部を通過する垂線を少なくとも3本有するトナー」に該当するものである。本発明でいう「トナーの長軸に対し、トナー外縁上の凸部を通過する垂線を少なくとも3本有するトナー」は、図1(c)に示すピーナツの様な形状を有するものや、図1(d)に示す細長い形状を有するものが挙げられる。尚、図1(d)に示す形状のトナーTは、外縁f上に無数の凸部pが連続的に形成されてなるもので、一見、たわらの様な形状を有するものである。
また、図1(e)に示すトナーTは、いわゆる「球形トナー」と呼ばれるもので、本発明でいう「トナー外縁上の凸部を通過する垂線が長軸と同じ長さを有するトナー」を示すものである。
この様に、本発明に係るトナーは、図1(a)〜(d)に示す非球形トナーTと、図1(e)に示す球形トナーTとを混在してなるもので、非球形トナーを30%以上50%以下、球形トナーを50以上70%以下含有するものである。
本発明では、トナーの形状を長軸とトナー外縁上の凸部を通過する垂線により特定し、各々の形状を有するトナーの含有量を特定するものであるが、これらはトナーを投影し、その投影画像より特定することが可能である。この投影画像を得る方法としては、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)により得られる顕微鏡写真が挙げられ、顕微鏡写真の解析により、前述した事項を特定することが可能である。
トナー粒子の長軸と短軸、及び、長短軸比は、トナー粒子の形状より確認することが可能であり、具体的には、走査型電子顕微鏡(SEM)により得られる顕微鏡写真から求めることが可能である。トナーの形状、及び、各形状を有するトナーの含有量を走査型電子顕微鏡(SEM)により得られる顕微鏡写真から特定する方法は、以下の手順により行われる。
(1)試料作成条件
トナーの形状を走査型電子顕微鏡(SEM)で特定できるようにトナーをセッティングする。具体的には、薬包紙の上にトナーを広げ、試料台に導電性両面テープを貼り、試料台についている面の反対側の面を薬包紙上のトナーに軽く押し付け、導電性両面テープに付かなかったトナーをブロアーで吹き飛ばし、試料台上にトナーをセッティングする。このとき、ランダムに配置されたトナーが100個以上撮影される様に、試料台上にトナーをセットする。
その後、スパッタコーター「EmscopeSC500(Emitech社製)」を用い、減圧下、コーティング電流10〜15mAにてトナー上にAu−Pdコート(層厚7nm)を行い試料作成を行う。
(2)走査型電子顕微鏡の設定条件
走査型電子顕微鏡「JSM−6400F(日本電子社製)」を用い、加速電圧5kVにて観察する。
(3)走査型電子顕微鏡によるトナーの形状特定方法
倍率2000倍で電子顕微鏡写真を撮影する。撮影により得られた写真画像をスキャナーに取り込み、画像処理解析装置「LUZEX AP((株)ニレコ社製)」を用いて、各トナーの長軸、外縁上の凸部、及び、凸部を通過する垂線を演算処理により算出する。この様に、画像処理解析装置による演算処理を経て、長軸や凸部を通過する垂線等のデータから含有されるトナーの形状と、各形状を有するトナーの含有量を個数基準に基づいて算出する。
本発明に係るトナーは、体積基準におけるメディアン径(D50)が、3μm以上8μm以下のものである。体積基準におけるメディアン径(D50)を上記範囲とすることにより、例えば、1200dpi(dpi;1インチ(2.54cm)あたりのドット数)レベルの非常に小さなドット画像を忠実に再現するとともに、球形トナーによるクリーニング不良も解消される。したがって、クリーニングが十分になされた像担持体上にトナー画像が形成されるので、汚れのない美しい高精細なトナー画像形成が可能になり、印刷画像と同じレベルのプリント物が版を起こす手間をかけずに得られる様になった。特に、オンデマンド印刷と呼ばれる数千枚レベルのプリント注文に対応する印刷分野では、高画質画像に加え商品の迅速な納品が可能等のメリットから高い評価を得ている。
尚、トナーの体積基準におけるメディアン径(D50)は、「マルチサイザー3(ベックマン・コールター社製)」に、データ処理用のコンピューターシステムを接続した装置を用いて測定、算出することができる。
測定手順としては、トナー0.02gを、界面活性剤溶液20ml(トナーの分散を目的として、例えば界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈した界面活性剤溶液)で馴染ませた後、超音波分散を1分間行い、トナー分散液を作製する。このトナー分散液を、サンプルスタンド内のISOTONII(ベックマン・コールター社製)の入ったビーカーに、測定濃度5〜10%になるまでピペットにて注入し、測定機カウントを2500個に設定して測定する。尚、マルチサイザー3のアパチャ−径は50μmのものを使用する。
本発明に係るトナーは、その体積基準におけるメディアン径(D50)の変動係数(CV値)が、2%以上21%以下のものが好ましく、5%以上15%以下のものがより好ましい。
体積基準におけるメディアン径(D50)の変動係数(CV値)とは、トナー粒子の粒度分布における分散度を体積基準で表したもので、以下の式によって定義される。このCV値の値が小さい程、粒度分布がシャープであることを示し、それだけトナー粒子の大きさがそろっていることを意味する。すなわち、大きさの揃ったトナーが得られるので、デジタル画像形成時での微細なドット画像や細線をより高精度に再現させることが可能である。
CV値(%)=(体積基準の粒度分布における標準偏差)/(体積基準におけるメディアン径(D50))×100
体積基準におけるメディアン径(D50)の変動係数は、「マルチサイザー3(ベックマン・コールター社製)」に、データ処理用のコンピューターシステムを接続した装置を用いて測定、算出することができる。
本発明に係るトナーは、その平均円形度が0.940以上0.980以下であることが好ましく、0.945以上0.965以下であることがより好ましい。
。平均円形度が上記範囲にあるとき、球形トナーのもつ流動性がほどよく発現され、画像形成装置内で長期にわたり機械的な負荷を受ける状態が続いてもトナーの劣化進行が防止される。その結果、高耐久のトナーにより高精細画像形成を長期にわたり、安定して行うことを可能にする。
トナーの平均円形度は、下記式で定義されるトナーの円形度を足し合わせた値を全トナー数で除して算出した値である。
円形度=(トナー像と同じ投影面積を有する円の周囲長)/(トナー投影像の周囲長)
トナーの平均円形度は、例えば「FPIA−2100(Sysmex社製)」に代表されるフロー式粒子像分析装置を用いて算出することができる。
具体的には、トナーを界面活性剤入り水溶液にてなじませ、超音波分散を1分行い分散した後、「FPIA−2100」を用い、測定条件HPF(高倍率撮像)モードにて、HPF検出数3000〜10000個の適正濃度で測定を行う。この範囲であれば、再現性のある同一測定値が得られる。
また、本発明に係るトナーは、その平均円形度の標準偏差(円形度SD)を0.035以上0.050以下、好ましくは、0.042以上0.048以下とするものである。本発明では、トナーの平均円形度の標準偏差を上記範囲とすること、すなわち、トナーの形状にばらつきをもたせることで、ブレードによるクリーニング性能を向上させている。すなわち、球形トナーのみでトナー画像形成を行うと、形状の揃ったトナーのみで形成される分、像担持体上のトナーの充填性はとても高くなり、ブレードの負荷も大きなものになる。この様なトナーに円形度の低いトナーを混在させて画像形成を行うと、像担持体上におけるトナーの充填状態が緩和され、不揃いのトナーにより充填性が低減する分、像担持体からのトナー除去が行い易くなるものと推測される。
平均円形度の標準偏差は、各トナーの円形度と前述の式により算出される平均円形度との差の2乗和を求め、これを全トナー数で除して、その値の平方根をとったものである。
この様に、球形トナーに非球形トナーを混在させ、平均円形度とその標準偏差を特定することで、球形トナーの転がりを抑止してすり抜け発生を防止し、かつ、像担持体上でのトナー充填性を緩和させることで、クリーニング性を向上させるものと推測される。
本発明に係るトナーのガラス転移点(Tg)は、低温定着性を確保するため10℃以上40℃以下が好ましい。
前記凝集を行っている途中で添加される樹脂微粒子は、最初に添加された樹脂微粒子よりも高いガラス転移温度を有するものを用いる。
最初に添加された樹脂微粒子のガラス転移温度は、10℃以上40℃以下が好ましい。途中で添加される樹脂微粒子のガラス転移温度は、40℃以上60℃以下が好ましい。
ガラス転移温度の測定は、示差熱量分析装置(DSC)による測定が代表的であり、具体的な測定装置として「DSC−7示差走査カロリメーター(パーキンエルマー製)」、「TAC7/DX熱分析装置コントローラー(パーキンエルマー製)」が挙げられる。
示差熱量分析装置によるガラス転移温度の具体的な測定方法は、例えば、昇温・冷却条件として、−30℃で1分間放置後、10℃/minの条件で100℃まで昇温し(第一の昇温過程)、次いで100℃で1分間放置後、10℃/minの条件で0℃まで冷却する(第一の冷却過程)。この操作により前履歴を消去する。次いで、0℃で1分間放置後、10℃/minの条件で100℃まで昇温する(第二の昇温過程)。そして、セカンドヒート(第二の昇温)の吸熱ピーク温度を求め、Tgとする方法が挙げられる。
尚、ガラス転移温度Tgは、測定時、ガラス転移領域におけるDSCサーモグラムのガラス転移点以下のベースラインの延長線と、ピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの間での最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度と定める。
示差熱量分析装置によるガラス転移温度の具体的な測定手順としては、トナー4.5mg〜5.0mgを小数点以下2桁まで精秤しアルミニウム製パン(KITNo.0219−0041)に封入し、装置のサンプルホルダーにセットする。リファレンスは空のアルミニウム製パンを使用する。測定条件は、測定温度0℃〜200℃、昇温速度10℃/分、降温速度10℃/分で、Heat−cool−Heatの温度制御を行い、その2nd.Heatにおけるデータをもとに解析を行う。
また、ガラス転移温度は、原子間力顕微鏡を用いて測定することも可能である。即ち、原子間力顕微鏡のステージを0〜60℃まで加熱し、トナー切片やブロックの硬さが変化する温度をガラス転移温度Tgとしてよい。
ガラス転移温度の算出方法として、以下のような理論ガラス転移温度より算出する方法もある。ここで、理論ガラス転移温度とは、共重合体樹脂を構成するそれぞれの成分がホモポリマーを形成した場合に得られるガラス転移温度と組成質量分率を乗じた値を求め、これらの値を用いて算出したものである。
即ち、理論ガラス転移温度Tg(絶対温度Tg′とする)は、共重合体樹脂を構成する成分のホモポリマーのガラス転移温度を用いて下記式(1)から算出される。
式(1)
1/Tg′=W1/Tg1+W2/Tg2+・・・+Wn/Tgn
(式中、W1、W2、・・・Wnは共重合体樹脂を構成する全重合性単量体に対する各重合性単量体の質量分率、Tg1、Tg2・・・Tgnは各重合性単量体を用いて形成されるホモポリマーのガラス転移温度(絶対温度)を示す。)
尚、ガラス転移温度は、ビニル系共重合体を構成する単量体の組成比を変えることにより制御することが可能であり、例えば、スチレンとメタクリル酸ブチルを用いて形成された共重合体樹脂では、スチレンの組成比を増大させ、メタクリル酸ブチルの組成比を減少させることによりガラス転移温度の値が上昇することが確認されている。
尚、本発明に係るトナーでは、理論ガラス転移温度の値や示差熱量分析装置で得られる測定結果、或いは原子間力顕微鏡での結果に多少の差異を生ずることもあるが、この件については本発明の技術思想を否定したり結果に影響を与えるものではない。
本発明に係るトナーの軟化点(Tsp)は、低温定着性を確保するため、90℃以上120℃以下が好ましく、70℃以上100℃以下がより好ましい。
この場合、転写材表面の温度が125℃以下でも定着することが可能である。これは、本発明に係るトナーでは、軟化点が低いコア部(樹脂微粒子Aで構成される部)の領域比率をトナー粒子に対して質量ベースで70%程度とし、軟化点の高いシェル部(樹脂微粒子Bで構成される部)を構成する樹脂の量を少なく設定することにより、トナー全体の軟化点を低くでき、トナーの耐熱保管性や耐久性は高軟化点のシェル部で確保することが可能になっている。したがって、本発明に係るトナーは、トナーの軟化点温度を90℃以上120℃以下に設定することで良好な低温定着性を得ることができる。
トナーの軟化点の制御は、例えば、樹脂微粒子の形成に用いる樹脂を構成する単量体の種類や共重合体の単量体組成比をコントロールする方法や、連鎖移動剤の量をコントロールして重合度を制御する方法、或いはトナーに添加するワックス(離型剤)等、定着助剤の種類や量を調整する方法等が挙げられ、これらを組み合わせることにより目的の軟化点を有するトナーが得られる。一例を示すと、特定の樹脂において分子量と軟化点の関係をプロットして軟化点を制御する方法が挙げられる。一般的に分子量を大きくすれば軟化点は上昇する。
トナーの軟化点温度の測定方法は、具体的には「フローテスターCFT−500(島津製作所社製)」を用い、高さ10mmの円柱形状に成形し、昇温速度6℃/分で加熱しながらプランジャーより200kPaの荷重を加え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出すようにし、これにより当該フローテスターのプランジャー降下量−温度間の曲線(軟化流動曲線)を描き、最初に流出する温度を溶融開始温度、降下量5mmに対する温度を軟化点温度とするものが挙げられる。
本発明に係るトナーは、少なくとも樹脂と着色剤を含有してなるもので、前述した様に、非球形トナーと球形トナーとを混在させてなるものである。また、本発明に係るトナーは、前述した範囲の体積基準におけるメディアン径(D50)を有し、微小なドット画像を忠実に再現させる小径トナーは、その製造工程で粒径や形状を制御する操作を加えることが可能な重合法で作製することが好ましい。その中でも、乳化重合法や懸濁重合法により予め120nm前後の樹脂微粒子を形成しておき、この樹脂微粒子を凝集させる工程を経て前述の大きさの粒子を形成する工程を経てトナーを作製する乳化会合法は有効な作製方法の1つであるといえる。
本発明では、トナーを乳化会合法で作製する場合、樹脂微粒子の凝集工程で以下の操作を行うと、球形トナーと前述した非球形の形状を有するトナーとを同時に形成されることを見出している。すなわち、樹脂微粒子の凝集を行っている途中で新たに樹脂微粒子を添加し、引き続き凝集を継続させる操作である。具体的には、樹脂微粒子を凝集している途中で、最初に添加した樹脂微粒子と異なるガラス転移温度を有する樹脂微粒子を添加し、さらに、凝集を継続させるもので、後から添加する樹脂微粒子のガラス転移温度が最初の樹脂微粒子よりも高いものが好ましい。
以下に、本発明トナーの製造方法の一例を説明する。トナーの作製は以下の様な工程を経て行われる。
(1)樹脂微粒子A分散液の作製工程
(2)樹脂微粒子B分散液の作製工程
(3)着色剤微粒子分散液の作製工程
(4)樹脂微粒子の凝集・融着工程
(5)熟成工程
(6)冷却工程
(7)洗浄工程
(8)乾燥工程
(9)外添剤処理工程
以下、各工程について説明する。
(1)樹脂微粒子A分散液の作製工程
樹脂微粒子Aは、後述する凝集工程で最初に反応系に添加する樹脂微粒子のことで、この工程は、樹脂微粒子Aを形成する重合性単量体を水系媒体中に投入して重合を行うことにより120nm程度の大きさの樹脂微粒子を形成する工程である。樹脂微粒子Aはワックスを含有させたものを形成することも可能で、この場合、ワックスを重合性単量体に溶解あるいは分散させておき、これを水系媒体中で重合させることにより、ワックスを含有してなる樹脂微粒子が形成される。
(2)樹脂微粒子B分散液の作製工程
樹脂微粒子Bは、後述する凝集工程で最初に反応系に添加した樹脂微粒子Aを凝集させている途中で添加する樹脂微粒子のことである。樹脂微粒子Bの作製方法は基本的には樹脂微粒子Aの作製方法と同じものであるが、樹脂微粒子Aのガラス転移温度と異なる値を有する樹脂微粒子を形成するものである。樹脂微粒子Bの作製法定では、樹脂微粒子Aのガラス転移温度よりも高い値を有する樹脂微粒子を形成することが好ましい。
(3)着色剤微粒子分散液の作製工程
水系媒体中に着色剤を分散させ、110nm程度の大きさの着色剤微粒子分散液を作製する工程である。
(4)樹脂微粒子の凝集・融着工程
この工程は、水系媒体中で樹脂微粒子と着色剤粒子を凝集させ、凝集させたこれらの粒子を融着させて粒子を得る工程であり、本発明でいう「樹脂微粒子を凝集させる工程」に該当する工程である。
この工程では、樹脂微粒子と着色剤粒子とが存在している水系媒体中に、アルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩等を凝集剤として添加し、次いで、前記樹脂微粒子のガラス転移点以上であって、かつ前記混合物の融解ピーク温度(℃)以上の温度に加熱することで凝集を進行させると同時に樹脂微粒子同士の融着を行う。
この工程では、以下の手順で粒子形成を行うことにより、球形トナーと非球形トナーとが混在してなる本発明に係るトナーを作製することができる。
すなわち、最初に前述の手順で作製した樹脂微粒子Aと着色剤粒子とを反応系に添加し、塩化マグネシウム等の凝集剤を添加して、樹脂微粒子Aを凝集させて粒子形成を行う。そして、樹脂微粒子Aの凝集途中で、最初に添加した樹脂微粒子Aとガラス転移温度の異なる樹脂微粒子Bを添加し、さらに、樹脂微粒子の凝集を継続させる。
また、樹脂微粒子を添加する時期は、最初に添加した樹脂微粒子Aよりなる凝集物の大きさが、最終目標とするトナーの体積基準におけるメディアン径(D50)の30%乃至50%の大きさになった時が好ましい。
そして、粒子の粒径が目標の大きさになった時に、食塩等の塩を添加することにより、凝集を停止させる。なお、樹脂微粒子Bの添加量は、樹脂微粒子Aに対して2〜90質量%が好ましい。
(5)熟成工程
この工程は、上記凝集・融着工程に引き続き、反応系を加熱処理することにより粒子の形状が所望の平均円形度になるまで熟成を行う工程である。
(6)冷却工程
この工程は、前記粒子の分散液を冷却処理(急冷処理)する工程である。冷却処理条件としては、1〜20℃/minの冷却速度で冷却する。冷却処理方法としては特に限定されるものではなく、反応容器の外部より冷媒を導入して冷却する方法や、冷水を直接反応系に投入して冷却する方法を例示することができる。
(7)洗浄工程
この工程は、上記工程で所定温度まで冷却された粒子分散液から粒子を固液分離する工程と、固液分離されてウェットのケーキ状集合体にした粒子から界面活性剤や凝集剤等の付着物を除去するための洗浄工程からなる。
洗浄処理は、濾液の電気伝導度が10μS/cmになるまで水洗浄する。濾過処理方法としては、遠心分離法、ヌッチェ等を使用して行う減圧濾過法、フィルタープレス等を使用して行う濾過法などがあり、特に限定されるものではない。
(8)乾燥工程
この工程は、洗浄処理された粒子を乾燥処理し、乾燥された粒子を得る工程である。この工程で使用される乾燥機としては、スプレードライヤー、真空凍結乾燥機、減圧乾燥機などを挙げることができ、静置棚乾燥機、移動式棚乾燥機、流動層乾燥機、回転式乾燥機、撹拌式乾燥機などを使用することが好ましい。
また、乾燥された粒子の水分は、5質量%以下であることが好ましく、更に好ましくは2質量%以下とされる。尚、乾燥処理された粒子同士が、弱い粒子間引力で凝集している場合には、当該凝集体を解砕処理してもよい。ここに、解砕処理装置としては、ジェットミル、ヘンシェルミキサー、コーヒーミル、フードプロセッサー等の機械式の解砕装置を使用することができる。
(9)外添剤処理工程
この工程は、乾燥された粒子に必要に応じ外添剤を混合し、トナーを作製する工程である。外添剤の混合装置としては、ヘンシェルミキサー、コーヒーミル等の機械式の混合装置を使用することができる。
次に、本発明に係るトナーを構成する樹脂、着色剤、ワックス等について、具体例を挙げて説明する。
先ず、本発明に係るトナーに使用可能な樹脂は、下記に記載のような重合性単量体を重合して得られた重合体を用いることができる。
本発明に係る樹脂は少なくとも1種の重合性単量体を重合して得られた重合体を構成成分として含むものであるが、前記重合性単量体としては、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−クロロスチレン、3,4−ジクロロスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレンの様なスチレンあるいはスチレン誘導体、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル等のメタクリル酸エステル誘導体、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸フェニル等の、アクリル酸エステル誘導体、エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン類、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル等のビニルエステル類、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等のビニルエーテル類、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルヘキシルケトン等のビニルケトン類、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物、ビニルナフタレン、ビニルピリジン等のビニル化合物類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等のアクリル酸あるいはメタクリル酸誘導体がある。これらビニル系単量体は単独あるいは組み合わせて使用することができる。
また、樹脂を構成する重合性単量体としてイオン性解離基を有するものを組み合わせて用いることも可能である。例えば、カルボキシル基、スルフォン酸基、リン酸基等の置換基を単量体の構成基として有するもので、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、フマル酸、マレイン酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステル、スチレンスルフォン酸、アリルスルフォコハク酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルフォン酸、アシドホスホオキシエチルメタクリレート、3−クロロ−2−アシッドホスホオキシプロピルメタクリレート等が挙げられる。
さらに、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート等の多官能性ビニル類を使用して架橋構造の樹脂とすることもできる。
本発明に係るトナーに使用可能な着色剤としては公知のものが挙げられる。具体的な着色剤を以下に示す。
黒色の着色剤としては、例えば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等のカーボンブラック、更にマグネタイト、フェライト等の磁性粉も用いられる。
マゼンタもしくはレッド用の着色剤としては、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48;1、C.I.ピグメントレッド53;1、C.I.ピグメントレッド57;1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222等が挙げられる。
また、オレンジもしくはイエロー用の着色剤としては、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー138等が挙げられる。
さらに、グリーンもしくはシアン用の着色剤としては、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15;2、C.I.ピグメントブルー15;3、C.I.ピグメントブルー15;4、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントブルー62、C.I.ピグメントブルー66、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
これらの着色剤は必要に応じて単独もしくは2つ以上を選択併用することも可能である。また、着色剤の添加量はトナー全体に対して1〜30質量%、好ましくは2〜20質量%の範囲に設定するのが良い。
本発明に係るトナーに使用可能なワックスとしては、従来公知のものが挙げられる。具体的には、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなどのポリオレフィンワックス、パラフィンワックス、サゾールワックスなどの長鎖炭化水素系ワックス、ジステアリルケトンなどのジアルキルケトン系ワックス、カルナウバワックス、モンタンワックス、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラミリステート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18−オクタデカンジオールジステアレート、トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエートなどのエステル系ワックス、エチレンジアミンジベヘニルアミド、トリメリット酸トリステアリルアミドなどのアミド系ワックスなどが挙げられる。
ワックスの融点は、通常40〜160℃であり、好ましくは50〜120℃、さらに好ましくは60〜90℃である。融点を上記範囲内にすることにより、トナーの耐熱保存性が確保されるとともに、低温で定着を行う場合でもコールドオフセットなどを起こさずに安定したトナー画像形成が行える。また、トナー中のワックス含有量は、1質量%〜30質量%が好ましく、さらに好ましくは5質量%〜20質量%である。
次に、本発明に係るトナーを用いて画像形成が可能な画像形成装置について説明する。
本発明では、球形トナーと特定形状を有する非球形トナーとを混在させてなるトナーを用いることにより、球形トナーを用いた画像形成では球形トナーがブレードからすり抜けを起こすことなく像担持体上からトナーの除去が行える様になった。特に、球形を採ることの多い定温定着対応のトナーを用いた画像形成方法では、良好なクリーニング性能が発現されるとともに、従来よりも低い定着温度下で十分な強度を有するトナー画像の定着が行える様になった。また、球形トナーを用いてスムーズな画像形成が行える様になるので、球形トナーのもつ高精細な画像形成性能を十分発現することができる様になった。
図2は、本発明に係るトナーが使用可能な画像形成装置の一例を示す概略図である。
図2において、1Y、1M、1C、1Kは感光体、4Y、4M、4C、4Kは現像手段、5Y、5M、5C、5Kは1次転写手段としての1次転写ロール、5Aは2次転写手段としての2次転写ロール、6Y、6M、6C、6Kはクリーニング手段、7は中間転写体ユニット、24は熱ロール式定着装置、70は中間転写体を示す。
この画像形成装置は、タンデム型カラー画像形成装置と称せられるもので、複数組の画像形成部10Y、10M、10C、10Kと、転写部としての無端ベルト状中間転写体ユニット7と、記録部材Pを搬送する無端ベルト状の給紙搬送手段21及び定着手段としての熱ロール式定着装置24とを有する。画像形成装置の本体Aの上部には、原稿画像読み取り装置SCが配置されている。
各感光体に形成される異なる色のトナー像の1つとして、イエロー色の画像を形成する画像形成部10Yは、第1の感光体としてのドラム状の感光体1Y、該感光体1Yの周囲に配置された帯電手段2Y、露光手段3Y、現像手段4Y、1次転写手段としての1次転写ロール5Y、クリーニング手段6Yを有する。また、別の異なる色のトナー像の1つとして、マゼンタ色の画像を形成する画像形成部10Mは、第1の感光体としてのドラム状の感光体1M、該感光体1Mの周囲に配置された帯電手段2M、露光手段3M、現像手段4M、1次転写手段としての1次転写ロール5M、クリーニング手段6Mを有する。また、更に別の異なる色のトナー像の1つとして、シアン色の画像を形成する画像形成部10Cは、第1の感光体としてのドラム状の感光体1C、該感光体1Cの周囲に配置された帯電手段2C、露光手段3C、現像手段4C、1次転写手段としての1次転写ロール5C、クリーニング手段6Cを有する。また、更に他の異なる色のトナー像の1つとして、黒色画像を形成する画像形成部10Kは、第1の感光体としてのドラム状の感光体1K、該感光体1Kの周囲に配置された帯電手段2K、露光手段3K、現像手段4K、1次転写手段としての1次転写ロール5K、クリーニング手段6Kを有する。
無端ベルト状中間転写体ユニット7は、複数のロールにより巻回され、回動可能に支持された中間転写エンドレスベルト状の第2の像担持体としての無端ベルト状中間転写体70を有する。
画像形成部10Y、10M、10C、10Kより形成された各色の画像は、1次転写ロール5Y、5M、5C、5Kにより、回動する無端ベルト状中間転写体70上に逐次転写されて、合成されたカラー画像が形成される。給紙カセット20内に収容された転写材として用紙等の記録部材Pは、給紙搬送手段21により給紙され、複数の中間ロール22A、22B、22C、22D、レジストロール23を経て、2次転写手段としての2次転写ロール5Aに搬送され、記録部材P上にカラー画像が一括転写される。カラー画像が転写された記録部材Pは、熱ロール式定着装置24により定着処理され、排紙ロール25に挟持されて機外の排紙トレイ26上に載置される。
一方、2次転写ロール5Aにより記録部材Pにカラー画像を転写した後、記録部材Pを曲率分離した無端ベルト状中間転写体70は、クリーニング手段6Aにより残留トナーが除去される。
画像形成処理中、1次転写ロール5Kは常時、感光体1Kに圧接している。他の1次転写ロール5Y、5M、5Cはカラー画像形成時にのみ、それぞれ対応する感光体1Y、1M、1Cに圧接する。
2次転写ロール5Aは、ここを記録部材Pが通過して2次転写が行われるときにのみ、無端ベルト状中間転写体70に圧接する。
また、装置本体Aから筐体8を支持レール82L、82Rを介して引き出し可能にしてある。
筐体8は、画像形成部10Y、10M、10C、10Kと、無端ベルト状中間転写体ユニット7とを有する。
画像形成部10Y、10M、10C、10Kは、垂直方向に縦列配置されている。感光体1Y、1M、1C、1Kの図示左側方には無端ベルト状中間転写体ユニット7が配置されている。無端ベルト状中間転写体ユニット7は、ロール71、72、73、74、76を巻回して回動可能な無端ベルト状中間転写体70、1次転写ロール5Y、5M、5C、5K及びクリーニング手段6Aとからなる。
筐体8の引き出し操作により、画像形成部10Y、10M、10C、10Kと、無端ベルト状中間転写体ユニット7とは、一体となって、本体Aから引き出される。
このように感光体1Y、1M、1C、1K上に帯電、露光、現像によりトナー像を形成し、無端ベルト状中間転写体70上で各色のトナー像を重ね合わせ、一括して記録部材Pに転写し、熱ロール式定着装置24で加圧及び加熱により固定して定着する。トナー像を記録部材Pに転移させた後の感光体1Y、1M、1C、1Kは、クリーニング装置6Aで転写時に感光体に残されたトナーを清掃した後、上記の帯電、露光、現像のサイクルに入り、次の像形成が行われる。
本発明においては、像担持体(感光体及び無端ベルト状中間転写体)上に残留するトナーを除去するのにクリーニングブレードを用いる。
以下、クリーニングブレードに弾性体ゴムブレードを用い、転写されず感光体上に残留するトナーをクリーニングする手段について説明する。
弾性体ゴムブレードの感光体に対する当接条件は、クリーニング性を向上させる観点から線圧5〜50N/mの圧接力で当接することが好ましい。圧接力を前記範囲とすることによりトナーのすり抜けが発生しにくくなり、ブレードメクレも発生もしにくくなる。圧接の方法としては予めブレードの当接位置を決めてブレードを固定する方法、重りにより荷重を調節する方法、ばねを利用する方法等があるが、圧接力のばらつきを低減させるには重り荷重方式が好ましい。
尚クリーニング工程の前段階においては、クリーニングを容易にするために感光体表面を除電する除電工程を付加することが好ましい。この除電工程は、例えば交流コロナ放電を生じさせる除電器により行われる。
図3は、クリーニングブレードを用いるクリーニング装置の一例を示す概略図である。
図3において、電子写真感光体は1、ブレード当接角はθで表される。また、前記クリーニングブレード2の自由長Lは図3に示すようにホルダー3(ブレードホルダー)の端部Bから変形前のブレードの先端点の長さを表す。hはブレードの厚さを示す。またブレード当接角θは感光体の当接点Aにおける接線Xと変形前のブレード(図面では点線で示した)とのなす角を表す。また食い込み量aは図3に示すように感光体外周S0の半径r0と変形前のブレード(図面では点線で示した)の位置A′を一点とする感光体と同一中心軸Cを中心とした円S1の半径r1との差である。該クリーニングブレードの感光体への当接角θの好ましい値としてはθ=5〜35°である。また、前記クリーニングブレードの自由長Lは図3に示すように支持部材191の端部から変形前のブレードの先端点の長さを表す。該自由長の好ましい値としてはL=6〜15mm、である。前記クリーニングブレードの厚さは0.5〜10mmが好ましい。
前記弾性体ゴムブレードの材質としてはウレタンゴム、シリコンゴム、フッソゴム、クロロピレンゴム、ブタジエンゴム等が知られているが、これらの内、ウレタンゴムは他のゴムに比して摩耗特性が優れている点で特に好ましい。例えば、特開昭59−30574号に記載のポリカプロラクトンエステルとポリイソシアネートとを反応硬化せしめて得られるウレタンゴム等が好ましい。
前述した様に、本発明に係るトナーは現状よりも更に低い温度でトナー画像を定着するいわゆる低温定着対応のものである。すなわち、本発明に係るトナーで形成されたトナー画像を有する転写材を、加熱ローラ表面温度を90℃〜150℃とする条件下で処理した時に、折り目定着強度が強く、転写材を折り曲げた個所からのトナー剥離を起こさない性能を有するものである。
図4は、加熱ローラを用いた定着装置の一例を示す概略図である。
図4に示す定着装置10は、加熱ロール71と、これに当接する加圧ロール72とを備えている。尚、図4において、90は分離爪、17は転写材(転写紙)P上に形成されたトナー像である。
加熱ロール71は、フッ素樹脂または弾性体からなる被覆層82が芯金81の表面に形成されてなり、線状ヒーターよりなる加熱部材75を内包している。
芯金81は、金属から構成され、その内径は10〜70mmとされる。芯金81を構成する金属としては特に限定されるものではないが、例えば鉄、アルミニウム、銅等の金属或いはこれらの合金を挙げることができる。
芯金81の肉厚は0.1〜15mmとされ、省エネの要請(薄肉化)と、強度(構成材料に依存)とのバランスを考慮して決定される。例えば、0.57mmの鉄よりなる芯金と同等の強度を、アルミニウムよりなる芯金で保持するためには、その肉厚を0.8mmとする必要がある。
被覆層82の表面を構成するフッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)及びテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)などを例示することができる。
フッ素樹脂からなる被覆層82の厚みは10〜500μmとされ、好ましくは20〜400μmとされる。
フッ素樹脂からなる被覆層82の厚みが10μm未満であると、被覆層としての機能を十分に発揮することができず、定着装置としての耐久性を確保することができない。一方、500μmを超える被覆層の表面には紙粉によるキズがつき易く、当該キズ部にトナーなどが付着し、これに起因する画像汚れを発生する問題がある。
また、被覆層82を構成する弾性体としては、LTV、RTV、HTVなどの耐熱性の良好なシリコンゴム及びシリコンスポンジゴムなどを用いることが好ましい。
被覆層82を構成する弾性体のアスカーC硬度は、80°未満とされ、好ましくは60°未満とされる。
また、弾性体からなる被覆層82の厚みは0.1〜30mmが好ましく、0.1〜20mmがより好ましい。
加熱部材75としては、ハロゲンヒーターを好適に使用することができる。
加圧ロール72は、弾性体からなる被覆層84が芯金83の表面に形成されてなる。被覆層84を構成する弾性体としては特に限定されるものではなく、ウレタンゴム、シリコンゴムなどの各種軟質ゴム及びスポンジゴムを挙げることができ、被覆層84を構成するものとして例示したシリコンゴム及びシリコンスポンジゴムを用いることが好ましい。
また、被覆層84の厚みは0.1〜30mmが好ましく、0.1〜20mmがより好ましい。
また、定着温度(加熱ロール10の表面温度)は70〜180℃、定着線速は80〜640mm/secが好ましい。また、加熱ロールのニップ幅は8〜40mm、好ましくは11〜30mmに設定する。
尚、分離爪90は、加熱ロールに熱定着された転写材が、加熱ロールに巻き付くのを防止するため設けられている。
尚、加熱ロールは、シリコンオイルを1プリント当たり0.3mg以下塗布して用いても良いが、オイルレスで用いても良い。
以下、実施例を挙げて本発明の実施態様を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
1.トナー1〜6の作製
以下のようにしてトナーを作製した。
(1)トナー1の作製
(樹脂微粒子Aの製造)
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、ドデシル硫酸ナトリウム8質量部とイオン交換水3000質量部を添加し、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら内温を80℃に昇温した。昇温後、過硫酸カリウム10質量部をイオン交換水200質量部に溶解させてなる重合開始剤溶液を添加して、液温を80℃に調整した。
次に、下記に示す化合物を含有してなる重合性単量体混合液を反応容器に1時間かけて滴下後、80℃にて2時間加熱、撹拌して重合を行い、樹脂微粒子を調製した。これを「樹脂微粒子(1H)」とする。
スチレン 480質量部
n−ブチルアクリレート 250質量部
メタクリル酸 68質量部
n−オクチル−3−メルカプトプロピオネート 16質量部
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、ポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム7質量部をイオン交換水800質量部に溶解させた溶液を添加した。反応容器を、98℃に加熱後、前記「樹脂微粒子(1H)」を260質量部と、下記に示す化合物を含有してなる重合性単量体混合液をそのまま添加し、循環経路を有する機械式分散機「CLEAMIX(エム・テクニック(株)製)」を用いて1時間混合分散させて乳化粒子(油滴)を含有する分散液を調製した。
スチレン 245質量部
n−ブチルアクリレート 120質量部
n−オクチル−3−メルカプトプロピオネート 1.5質量部
ポリエチレンワックス(融点81℃) 190質量部
次いで、この分散液に、過硫酸カリウム6質量部をイオン交換水200質量部に溶解させてなる重合開始剤溶液を添加し、82℃の温度下で1時間加熱撹拌して重合を行い、樹脂微粒子を得た。これを「樹脂微粒子(1HM)」とする。
更に、過硫酸カリウム11質量部をイオン交換水400質量部に溶解させてなる重合開始剤溶液を添加し、82℃の温度下で下記に示す化合物を含有してなる重合性単量体溶液を、1時間かけて滴下した。滴下終了後、2時間にわたり加熱撹拌することにより重合を行った後、28℃まで冷却し樹脂微粒子を得た。これを「樹脂微粒子A」とする。得られた「樹脂微粒子A」のガラス転移温度は、28℃であった。
スチレン 435質量部
n−ブチルアクリレート 130質量部
メタクリル酸 33質量部
n−オクチル−3−メルカプトプロピオネート 8質量部
(樹脂微粒子Bの製造)
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、ドデシル硫酸ナトリウム2.3質量部とイオン交換水3000質量部を添加し、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら、内温を80℃に昇温させた。昇温後、過硫酸カリウム10質量部をイオン交換水200質量部に溶解させたものを添加し、再度液温80℃とし、下記に示す化合物を含有してなる重合性単量体混合液を1時間かけて滴下した。滴下終了後、80℃にて2時間にわたり加熱、撹拌することにより重合を行った後、28℃まで冷却し樹脂微粒子を得た。これを「樹脂微粒子B」とする。得られた「樹脂微粒子B」のガラス転移温度は、48℃であった。
スチレン 520質量部
n−ブチルアクリレート 210質量部
メタクリル酸 68質量部
n−オクチル−3−メルカプトプロピオネート 16質量部
(着色剤分散液の作製)
ドデシル硫酸ナトリウム90質量部をイオン交換水1600質量部に添加した。この溶液を撹拌しながら、カーボンブラック(リーガル330R:キャボット社製)420質量部を徐々に添加し、次いで、撹拌装置「クレアミックス(エム・テクニック(株)製)」を用いて分散処理することにより、着色剤粒子の分散液を調製した。これを、「着色剤分散液1」とする。この「着色剤分散液1」における着色剤粒子の粒子径を、電気泳動光散乱光度計「ELS−800(大塚電子社製)」を用いて測定したところ、110nmであった。
(凝集・融着工程)
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、下記物質を添加し、液温を30℃に調整した。
「樹脂微粒子A」 300質量部(固形分換算)
イオン交換水 1400質量部
「着色剤分散液1」 120質量部
ポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム3質量部をイオン交換水120質量部に添加した水溶液
次に、5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを10に調整し、塩化マグネシウム35質量部をイオン交換水35質量部に溶解させた30℃の水溶液を、撹拌状態にある反応系中に10分間かけて添加した。そして、添加後3分経過してから昇温を開始し、反応系を60分間かけて90℃まで昇温し、凝集を進行させた。凝集により形成される粒子の大きさは「マルチサイザー3」で観察した。
体積基準におけるメディアン径(D50)が3.1μmになった時、「樹脂微粒子B」260質量部(固形分換算)を添加し、さらに、凝集を継続させ、体積基準におけるメディアン径(D50)が6.5μmになった時、20%塩化ナトリウム水溶液750質量部を添加して凝集を停止させた。
20%塩化ナトリウム水溶液添加後、液温を98℃にして撹拌を継続し、フロー式粒子像分析装置「FPIA−2100」で粒子の平均円形度を観察しながら、凝集した樹脂微粒子の融着を進行させた。平均円形度が0.965になった時、液温を30℃まで冷却し、塩酸を添加してpHを4.0に調整し、撹拌を停止した。
(洗浄・乾燥工程)
凝集・融着工程にて生成した粒子をバスケット型遠心分離機「MARKIII型式番号60×40(松本機械(株)製)」で固液分離し、粒子のウェットケーキを形成した。該ウェットケーキを、前記バスケット型遠心分離機で濾液の電気伝導度が5μS/cmになるまで45℃のイオン交換水で洗浄し、その後「フラッシュジェットドライヤー(セイシン企業社製)」に移し、水分量が0.5質量%となるまで乾燥して粒子を作製した。
(トナーの作製)
上記で得られた粒子に、疎水性シリカ(数平均1次粒子径=12nm)を1質量%、疎水性チタニア(数平均1次粒子径=20nm)を0.3質量%添加し、ヘンシェルミキサーにより混合して、「トナー1」を作製した。
表1に示すように得られたトナー1の体積基準におけるメディアン径(D50)は、6.5μm、平均円形度は0.965であった。尚、体積基準におけるメディアン径(D50)、平均円形度は前記の方法で測定して得られた値である。
(2)トナー2の作製
「トナー1」の作製工程で、最初の凝集、融着で粒子の体積基準におけるメディアン径(D50)が1.2μmになった時に「樹脂微粒子B」を添加し、さらに、体積基準におけるメディアン径(D50)が2.9μmになった時に凝集を停止させた。そして、平均円形度が0.980になるまで融着を継続させた他は同様の操作を行って「トナー2」を作製した。
(3)トナー3の作製
「トナー1」の作製工程で、最初の凝集、融着で粒子の体積基準におけるメディアン径(D50)が3.0μmになった時に「樹脂微粒子B」を添加し、さらに、体積基準におけるメディアン径(D50)が7.8μmになった時に凝集を停止させた。そして、平均円形度が0.938になるまで融着を継続させた他は同様の操作を行って「トナー3」を作製した。
(4)トナー4の作製
「トナー1」の作製工程で、「樹脂微粒子B」を凝集・融着工程の最初の段階から添加して粒子の形成を行う様に変更した。そして、「トナー1」と同じ体積基準におけるメディアン径(D50)になった時に20%食塩水を添加し、平均円形度が0.965になった時に液温を30℃に冷却することにより「トナー4」を作製した。
(5)トナー5の作製
「トナー1」の作製工程で、「樹脂微粒子A」の添加量を480質量部(固形分換算)に、及び、「樹脂微粒子B」の添加量を60質量部(固形分換算)に変更した他は同様の手順で粒子形成を行った。粒子の体積基準におけるメディアン径(D50)が6.5μmの時に20%食塩水を添加し、このときすでに平均円形度が0.990となっており、融着を継続しても平均円形度は変わらなかった。この手順で作製したトナーを「トナー5」とした。
(6)トナー6の作製
「トナー1」の作製工程で、「樹脂微粒子A」の添加量を130質量部(固形分換算)に、及び、「樹脂微粒子B」の添加量を420質量部(固形分換算)に変更した他は同様の手順で粒子形成を行った。粒子の体積基準におけるメディアン径(D50)が6.5μmの時に20%食塩水を添加し、さらに融着を継続したところ平均円形度が0.935よりも大きくならなかった。トナー1で行った融着の3倍の時間をかけて融着を継続させたが、平均円形度に変化が見られなかった。この手順で作製したトナーを「トナー6」とした。
表1に、上記で作製した「トナー1〜6」の球形トナー及び非球形トナーの個数%、平均円形度、体積基準におけるメディアン径(D50)の値を示す。
Figure 0004835342
尚、各値は、前記の方法で測定して得られた値である。
2.評価実験
評価装置として、図2の画像形成装置に対応する市販の複合プリンタ「bizhub Pro C500(コニカミノルタビジネステクノロジー(株)製)」に、上記現像剤を投入した現像装置を装填して評価を行った。
尚、上記プリンタの定着装置に搭載される加熱ローラの表面材質、表面温度は以下のようにした。
定着速度:230mm/sec
加熱ローラの表面材質:ポリテトラフロオロエチレン(PTFE)
加熱ローラの表面温度:125℃(但し、織り目定着強度評価時は以下の様に設定)
また、上記プリンタの感光体ドラム表面の残留トナーを除去するクリーニング手段として、図3に示すクリーニングユニットを上記装置に搭載した。クリーニングブレードは、材質がウレタンゴム製、自由長9mm、厚さ2mmのものを用意した。尚、ブレード先端部の感光体ドラムへの当接力を13.7N/mにした。
評価は、上記評価装置に上記で作製したトナーを順番に装填し、常温常湿(20℃、55%RH)の環境下で、以下の項目について評価を行った。
プリントは、常温常湿(25℃、55%RH)環境下にて、画像濃度0.4のハーフトーン画像、白地ベタ画像、画像濃度0.8のべた黒画像、及び、細線画像がそれぞれ1/4等分となるA4サイズのプリント画像を連続3000枚行った。
〈ハーフトーン画像評価〉
3000枚目のプリント上に出力された画像濃度0.4のハーフトーン画像のざらつき感を目視で評価した。画像を10点満点で評価し、数値が高いものほどざらつきがなくきめ細かな画像が得られたものとして評価した。6点以上を合格とした。
10〜9点:ざらつきがなく、ムラのないきめ細かな画像が得られた
8〜6点 :若干のざらつき感を感じるが、ムラは確認されなかった
5点以下 :ざらつきが目立ち、しかも、ムラの発生が確認された。
〈残留トナー確認〉
3000枚の連続プリント実施後の感光体ドラム表面を倍率10倍のルーペで目視観察し、残留トナーの有無を評価した。B以上を合格とした。
A:残留トナーが確認されなかった
B:残留トナーがルーペ観察によりわずかに観察されたが、後述する画像評価で問題なかったレベル
C:残留トナーの存在が確認され、後述する画像評価でも欠陥が確認された。
〈トナーすり抜け〉
トナーすり抜けの評価は、3000枚の連続プリントのラスト3枚のプリント画像上の黒すじ発生の有無から評価し、連続プリントを通して黒すじが発生しなかったものを合格とした。
〈画像汚れ〉
画像汚れは、3000枚連続プリント後に作成したプリント画像上の白地部分の反射濃度(カブリ濃度)が0.01未満であるものを合格とした。白地部分の反射濃度測定は、反射濃度計「RD−918(マクベス社製)」を用いて行った。
〈折り目定着強度〉
折り目定着強度は、加熱ローラ表面温度を90℃、105℃、125℃にした時の用紙上の折り目におけるトナー画像の定着率を評価した。具体的には、トナーの定着画像を内面に向けて折り曲げた時、折り曲げ部分におけるトナー剥がれの程度を定着率として評価した。
測定方法は、べた画像部(画像濃度が0.8)を画像面を内側にして折り、3回指で擦った後、画像を開いて「JKワイパー(株式会社クレシア製)」で3回ふき取り、べた画像の折り目個所の折り曲げ前後の画像濃度から下記式により算出した値である。
定着率(%)=(折り曲げ後画像濃度)/(折り曲げ前画像濃度)×100
得られた定着率から、下記の様に折り目定着強度を評価し、○以上を合格とした。
評価基準
◎:各温度で折り目の定着率が90〜100%となった
○:各温度で折り目の定着率が80〜90%未満となった
×:折り目の定着率が80%未満となるものがあった。
結果を表2に示す。
Figure 0004835342
表2に示す様に、本発明に係るトナーに該当するトナーを用いた実施例1〜3は、いずれも上記評価項目が良好な結果が得られ、本発明の効果が発現されていることを示す結果が得られた。一方、本発明外のトナーを用いた比較例1〜3では、上記評価項目に対し実施例で得られた様な結果が得られず、本発明の効果が発現されていないことが確認された。
上記実施例の結果からも確認される様に、本発明に係るトナーによれば、感光体等の像担持体上に球形トナーが残存していてもブレードによるクリーニングがスムーズに行える様になり、球形トナーによる高精細な画像形成が安定して行える様になった。
また、本発明に係るトナーにより、球形をとり易い低温定着対応のトナーを用いた画像形成で高精細なトナー画像が得られるとともに、電力消費量を低減した環境に優しい画像形成が安定して行える様になった。
電子顕微鏡撮影等により本発明に係るトナーTを投影したときに得られる粒子の形状を示す模式図である。 本発明に係るトナーが使用可能な画像形成装置の一例を示す概略図である。 クリーニングブレードを用いるクリーニング装置の一例を示す概略図である。 加熱ローラを用いた定着装置の一例を示す概略図である。
符号の説明
T トナー
L 長軸
r 垂線
f トナー外縁
p 凸部

Claims (1)

  1. 樹脂と着色剤を含有してなる体積基準におけるメディアン径(D50)が3μm以上8μm以下のトナーを、
    少なくとも、
    樹脂微粒子A分散液の作製工程、
    樹脂微粒子B分散液の作製工程、
    樹脂微粒子の凝集・融着工程
    を有するトナーの製造方法において、
    前記樹脂微粒子の凝集・融着工程で、樹脂微粒子Aよりなる凝集物の大きさがトナーの体積基準におけるメディアン径(D50)の30%乃至50%の大きさになった時に樹脂微粒子Bを添加し、さらに、凝集を継続させ、
    平均円形度が0.940以上0.980以下のトナーを作製することを特徴とするトナーの製造方法。
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