JP4830667B2 - 調速装置及びそれを用いた発電装置、機器 - Google Patents
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Description
電子制御式調速機は、蓄積されたエネルギで回転する発電機を設け、その回転を電子的に制御することで回転速度を調速するものであり、高精度の調速が可能なため、例えば、時計の時分秒針の駆動を制御する場合などに利用される(例えば特許文献1参照)。
(1−1)固体摩擦によるブレーキ式調速機
1568図、1569図:遠心力で回転半径方向のフランジ内周に摩擦部材を押し付ける調速機。
1571図:遠心力で、てこを利用し軸に固定された円板の縁に摩擦材を押し付ける調速機。
1572図、1574図、1575図:遠心力で振動錘の摩擦材をフランジ内周に押し付ける調速機。
1581図、1583図:遠心力でバネやリンクを曲げ、回転軸方向に摩擦部材を押し付ける調速機。
1596図、1597図:羽根を回転させて空気抵抗を生じさせる調速機。
1598図、1599図:羽根を半径方向にずらしたり、取付角度を変えて制動作用を変える調速機。
1601図:遠心力で羽根の半径を自動的に調整する調速機。
1603図、1604図:遠心力と風圧で調整する調速機。
1606図:導体円板を磁束に直交する方向に回転させる調速機。
(2−1)固有振動を持つエスケープ式調速機
1607図、1608図:重力振り子、バネ力振り子を持つ調速機。
(2−2)固有振動のないエスケープ式調速機
1613図、1616図、1617図:アンクルの慣性モーメントを利用する調速機。
例えば、音が発生してもよい玩具等には、(1−1)固体摩擦によるブレーキ式調速機や、(2−2)固有振動のないエスケープ式調速機が用いられる。
また、小型・廉価なオルゴール等には、(1−2)空気摩擦によるブレーキ式調速機が用いられ、電力計等には、(1−3)渦電流作用によるブレーキ式調速機等が用いられる。
非特許文献2は、前記(1−1)固体摩擦によるブレーキ式調速機の実用例で、時計のリピータ(引き打ち)機構やソネリ(ソヌリとも言う、時打ち)機構の調速機として利用されている。
従って、リピータやソネリには、前記(1−1)のような調速機が搭載され、打ち間隔をゼンマイの巻き数によらず一定に保つようにしている。
これらの動作を繰り返し、微視的には細かな変動はあるが、ロータは概ね一定の速度で回転する。
すなわち、非特許文献1の(1−1)固体摩擦によるブレーキ式調速機は、固体摩擦のため、摩耗紛、音・熱が発生し、寿命も短い。
(1−2)空気摩擦によるブレーキ式調速機は、大きなスペースが必要となる。
(1−3)渦電流作用によるブレーキ式調速機は、漏れ磁束が周囲に影響を与える。
(2−1)固有振動を持つエスケープ式調速機は、振り子式の場合、姿勢変化に対応できず、携帯機器には使用できず、かつ、打刻音が発生する。バネ力振り子の場合、ヒゲゼンマイ、テンプ、ガンギ、アンクルなど高精度の部品が必要でコストが高くなり、大きな配置スペースが必要となり、脱進機から打刻音が発生する。
(2−2)固有振動のないエスケープ式調速機は、脱進機からの音、振動が大きく、摩耗が発生し寿命が短い。
しかし、特に寸法に余裕のない腕時計の場合、ケース内での反響効果も期待できず、懐中時計に比較して雑音に対するゴング音が小さく、S/N比が悪いので、音質面での高級感に欠けるという課題がある。
加えて、作動の度に錘やレバーがロータを取り囲む円筒状ケースの内壁に接触するため、摩耗が発生する。摩耗が発生すれば、周囲に摩耗紛が散らばり、見栄えが悪く、他の機構の摺動部に摩耗紛が付着すると、そこで新たな摩耗の原因にもなる。そのため、短期間でのオーバーホールと調整が必要である。
また、摩耗すれば接触部の面積や面状態が変化するため、摩耗係数が変化する。摩耗を押さえるために接触部に注油したり、潤滑処理をしても油の量の変化(揮発・拡散)や変質、潤滑処理膜面の汚れなどにより、摩耗係数が大きく変わる。これにより、使用を繰り返すうちに設定した速度から外れてしまい、ゴング等の打ち間隔が変化してしまうという課題もある。
翼がロータの半径方向外周側に移動すると、翼には移動量に応じた流体粘性抵抗が加わる。すなわち、ロータ速度がある速度に達すると、速度に応じた遠心力を受けた翼が対向物と平面的に重なる。翼平面と対向物の対向面との距離を周囲の部材と翼平面との距離よりも小さい所定寸法に設定しておけば、翼が対向物と平面的に重なると、翼と対向物の間に翼と対向物が重なる前に翼の周囲に発生していた粘性抵抗より大きな粘性抵抗が働く。従って、粘性抵抗は翼と対向物が重なり始める速度を境に大きく変化する。つまり、翼は対向物の境界線(内周縁)付近で、ロータ速度増→翼移動量増→翼と対向物が重なり、粘性抵抗増→ロータ速度低下→翼引き戻される→翼と対向物の重なり無くなり、粘性負荷減→ロータ速度上昇、といった現象を繰り返す。
よって、エネルギ蓄積手段からロータまでの動力伝達経路中、またはロータ以降、もしくはロータへの動力伝達経路とは別経路でエネルギ蓄積手段から動力を受けるアクチュエータ、発電機などを配置した場合、前記調速装置によってロータ速度つまりはエネルギ蓄積手段におけるエネルギ供給速度(例えばゼンマイが解ける速度)が一定となるため、短期的に見ればアクチュエータや発電機の動作速度は変動するものの、一定期間中の回転総数は平均化され、アクチュエータや発電機の動作を一定速度に制御できる。
すなわち、本発明の調速装置によれば、電子制御ではなく、機械的な制御によってエネルギ蓄積手段で駆動されるアクチュエータの作動速度をほぼ一定にできるので、制御回路やセンサ類を不要にでき、低コスト及び省スペース化を実現できる。また、機械式のため、電源が不要であり、リピータやソネリ機構搭載の機械式時計やオルゴールなど電源を持たない商品にも搭載できる。さらに、機械式で電源が不要なので、特許文献1のような電子制御式機械時計に搭載した場合、発電調速機が発電した電力を使用する必要が無く、電力消費増大によって電子制御式機械時計の持続時間が短縮してしまうことを防止できる。
さらに、流体粘性抵抗を利用する非接触式調速機のため、雑音発生を防止できる。そのため、オルゴールやリピータ、ソネリ機構搭載の時計など、音色を楽しむための商品に搭載した場合、雑音発生が無いため、純粋に音源の音色を鑑賞できる。
また、調速装置全体を薄型化でき、腕時計等の携帯機器にも容易に搭載できる。
粘性流体として空気を利用することもでき、空気を利用している場合には、粘性流体を密封するためのハウジングなどを設けなくてよいので、容易に小型化でき、ハウジングと軸とのシール構造によるロスも防止できる。
すなわち、ゼンマイなどのエネルギ蓄積手段(ゼンマイのトルク特性)や、輪列等の動力伝達手段(増速比)の仕様を同じにしても、個々に個体差があり、調速装置の速度は目標通りにならない。この場合、前記隙間寸法調整手段によって隙間寸法を調整すれば、調速装置の速度を微調整することができ、機器の作動速度を設定値に容易に合わせることができる。
また、前記隙間寸法調整手段としては、例えば、対向板間に断面寸法の異なるスペーサを交換して配置することで対向板間の間隔を調整するようにしたものなどが利用できる。このような複数種類のスペーサを用意しておき、対向板間に配置するスペーサを選択するだけで隙間寸法を調整するようにすれば、構造が単純でかつ安価な部品のみを用意すればよいため、コストを低減できる。
従って、前記平面距離調整手段によって隙間寸法を調整すれば、前記隙間寸法調整手段を用いた場合と同様に、調速装置の速度を微調整することができ、機器の作動速度を設定値に合わせることができる。さらに、前記隙間寸法調整手段および平面距離調整手段の両方を用いれば、機器の作動速度の調整範囲を拡大でき、様々な機器に利用可能となる。
また、前記平面距離調整手段としては、例えば、対向物を平面的に2分割し、偏心ピン、ばね、ネジなどを用いて各対向物を互いに近付けたり、遠ざけることで、対向物内周縁とロータ回転中心との距離を調整するものなどが利用できる。このようなピン、ばね、ネジなどを用いて距離を調整するようにすれば、構造が単純でかつ安価な部品のみを用意すればよいため、コストを低減できる。
また、流体が空気であれば、流体を密閉するためのハウジングなども不要にでき、スペース効率を向上できる。さらにハウジングの密閉を確保するためのシール構造を不要にでき、低コストにできる。また、シール構造での損失が無く、一定速度に保てる範囲を広げることができる。その分、持続時間を延長したり、ハンマーばねのばね力を強くして音を大きくすることができる。さらに、ハウジングが不要なため、翼やロータの動きを視覚的に見せることができ、オルゴールや時計では機構を見せるモデルのポイントにすることもできる。
その上、翼平面と対向面の距離を僅かに変化させるだけで粘性抵抗を大きく変化させることができるので、調整しろのためのスペースを大きくとらずにすみ、ロータや対向物周辺をコンパクトにできる。
例えば、対向物を翼の両面に配置された2枚の対向板で構成したり、対向物に溝を形成してその溝内に翼を配置する構成とすればよい。
これに対し、翼の両面に対向物が設けられていれば、あがきによって翼が一方の対向面側に寄って、他方の対向面との距離が広がっても、その分、一方の対向面との隙間寸法は小さくなるため、トータルでの粘性抵抗の変化は少なくなり、調速装置の速度は安定し、機器の作動速度も略一定に維持できる。
ここで、翼飛び出し過多防止手段としては、翼が回転によって外側に移動するタイプであれば、その回転角度を一定範囲内に規制するものであればよく、例えば、翼が所定角度回転した際に当接してそれ以上回転することを規制するピンや凸構造をロータに設けることで構成できる。
また、翼がスライドして外側に移動するタイプであれば、その移動量を一定範囲内に規制するものであればよく、例えば、翼がスライド移動した際に当接してそれ以上の移動を規制するピンや凸構造をロータに設けることで構成できる。
このため、翼の摩耗や破壊、音や振動の発生を防止できる。さらに、翼飛び出し過多防止手段は、ロータにピンや凸構造を設ければよいため、シンプルでかつ軽量、安価な構成にできる。特に、翼引き戻し手段などの他の部材をロータに固定するためのピンなどを兼用すれば、より安価でシンプルな構造にできる。
例えば、1つのロータに対して2枚の翼が設けられる場合、各翼はロータの回転軸に対して点対称の位置に配置すればよい。また、1つのロータに対して3枚の翼が設けられる場合、各翼はロータの回転軸を中心とする同心円上であって、かつ、互いに120度等間隔で配置すればよい。
この際、翼引き戻し手段として、梁状の板ばねで必要な撓み量とばね力を確保しようとすると、限界応力が許容応力を越えてしまう。また、コイルばねを用いると、スペース、特に高さ方向のスペースが大きくなり、腕時計のような薄型の機器内に収めることが困難になる。
一方、板状のジグザグばねを用いれば、板ばねなどと同じ材料でも撓み量、バネ力を確保しながら、限界応力を許容応力内に収めることができる。その上、ばねの薄さと撓み量の大きさを両立でき、ロータを薄く、調速装置も薄く形成できる。従って、翼と重ねて配置しても全体を薄くでき、平面レイアウトの自由度を増すことができる。さらに、翼材料とばねを一体にすることもでき、部品コスト、組立コストを削減できる。
ジグザグばねは、プレス、ワイヤー放電加工、電気鋳造、エッチング、フォトレジスト、転写電気めっきなどの様々な加工方法で製造できる。
しかしながら、プレスは型が必要で初期コストが嵩むという問題がある。ワイヤー放電加工は、プログラムの変更のみで少量多品種の部品を製造できるが、加工面が粗く、応力集中が起きたり、見栄えが悪いという問題がある。エッチングの場合、ワイヤー放電面のような面の粗さも無く、外観がよく、応力集中による折れもないが、材料の幅や厚さの比に制約があるうえ、矩形断面が正確にできないという問題がある。
例えば、2枚の翼が設けられている場合、翼引き戻し手段は、各翼に一端が接続される2つのジグザグばね部と、各ジグザグばね部の他端同士が接続されるばね位置決め部とを備えて形成された1つの板ばねで構成すればよい。この際、ばね位置決め部の中心にはロータかなに挿入される穴が形成され、ばね位置決め部の前記穴を挟んだ位置には、ロータに設けられた突起やピンに対応した穴が形成されていてもよい。このように構成すれば、各穴をロータかなや突起などに放り込むだけで、翼引き戻し手段の平面方向の回転を防止でき、位置決めを行うことができる。
さらに、ばね位置決め部の中心にロータかなに挿入される穴を設けることもできるので、組立時にばねを翼に係止する際の位置決めもし易く、その分、組立も容易になる。
従って、翼がロータ半径方向に平行移動する場合に比べ、回転軸を中心に翼が回転するため、翼の保持構造による摩擦抵抗が小さく、翼はスムースに動くので調速装置の回転速度は安定する。特に、回転軸を硬石等のリング(時計に用いるルビー等で作った穴石等)にし、軸を焼き入れした鋼の棒材(時計の輪列歯車のホゾ等)にすれば、安価でかつスムースな回転と耐摩耗性を実現できる。
一方、翼がロータ半径方向に平行移動する場合、ロータの回転により翼が斜めになってコジリが生じ、スムースな動きができない上、摩耗も生じてしまう。また、スライダやガイド等が必要となり、それらの構造は大きくなるため、調速装置の小型化を阻害する。さらに、重量も大きく、ロータの回転軸の回転負荷、摩耗、調速機構の落下時の衝撃などの面でも不利になる。
例えば、翼引き戻し手段がジグザグばねで構成されている場合、ジグザグばねが翼に取り付けられる位置を、翼重心よりも回転軸側に設ければよい。
ここで、前記発電機は、2極の磁石などを有するロータと、ロータ周囲に設けられたステータと、このステータに巻回されたコイルとを備える通常の構成の発電機が利用できる。そして、発電機は、例えば、エネルギ蓄積手段と調速装置間に設けられた動力伝達手段によって駆動されるものでもよいし、調速装置からさらに動力を伝達する動力伝達手段を設けて発電機を駆動してもよい。さらには、前記動力伝達手段から分岐したり、前記動力伝達手段とは別にエネルギ蓄積手段から機械的エネルギを伝える動力伝達手段を設けて発電機を駆動してもよい。
また、例えば、発電機に電磁ブレーキを掛けて調速する場合のように、制御回路を設ける必要がないため、ICや水晶振動子等の電子素子や基板が不要であり、安価な発電システムを実現できる。さらに、制御回路が不要であって、その回路用に発電電力の一部を供給する必要が無いため、エネルギ効率を向上できる。そのため、発電装置の持続時間を延長できたり、小型化することが可能となる。
この際、前記機器としては、前記調速装置と、この調速装置で調速される発電機とを有するものでもよい。
この際、前記機械的エネルギ源およびエネルギ蓄積手段は、共に、ゼンマイを内蔵する香箱車などで構成できる。
また、電子制御式機械時計に搭載した場合、発電調速が発電した電力を使用せず、電子制御式機械時計の持続時間の短縮を防止できる。その上、雑音が発生しないため、リピータやソネリ機構の調速装置として、前記調速装置を電子制御式機械時計に搭載すると、機械式時計のように、脱進機のノイズもないことから、より純粋に音源の音色を聞くことができる。さらに、ラジオ、懐中電灯など緊急使用の際も性能劣化なく使用できる。
次に、本発明の第1実施形態について説明する。
図1は、第1実施形態の時計1を示す平面図である。時計1は、ベースとなる時計の文字板側にソネリ機構3が搭載されたものであり、このソネリ機構の動作に本発明の調速装置2が利用されたものである。
次に、調速装置2の構成について説明する。
調速装置2は、図2,3に示すように、ロータ200と、2枚の翼210と、翼引き戻し手段であるジグザグばね220と、対向物230とを備えて構成されている。
ロータかな202は小歯車であり、焼き入れした鋼製のものである。このロータかな202には、動力伝達手段である動力伝達輪列4の歯車が噛み合っている。動力伝達輪列4は、増速輪列であり、ゼンマイが内蔵された香箱車31に噛み合っている。このため、ロータ200は香箱車31から動力伝達輪列4を介して伝達される機械的エネルギによって回転される。
各翼案内板203には、ルビーなどの硬石製の翼軸穴石204が圧入固定されているとともに、鋼製の翼ロック軸205、鋼製のばね掛け軸206の両端がそれぞれ圧入固定されている。翼軸穴石204は、ロータかな202を中心に点対称の位置に設けられている。
ばね掛け軸206には、前記ジグザグばね220が固定されている。
ジグザグばね220は、ステンレス薄板を加工して形成されたものであり、中央に設けられたばね位置決め部221と、このばね位置決め部221の各端部から延長され、ジグザグ状に形成されたジグザグばね部222とを備えて構成されている。
そして、ジグザグばね220は、ばね位置決め部221に形成された2つの穴を前記ばね掛け軸206に差し込むことで翼案内板203間に回り止めされて取り付けられている。なお、ばね位置決め部221の中央の穴には、ロータかな202が貫通されている。
このため、ロータ200が停止している場合には、図2(A)に示すように、翼210は、ジグザグばね220のばね力によってロータ200の中心側に引き寄せられ、先端が翼ロック軸205に押し付けられている。
この際、翼210には、翼軸211の近傍に係止突起213が形成されており、翼210の外側への移動は、係止突起213が前記ばね掛け軸206に当接する位置(角度)までに規制されている。従って、本実施形態では、係止突起213およびばね掛け軸206によって翼飛び出し過多防止手段が構成されている。
また、ロータ200の回転が下がると、翼210に働く遠心力も回転数の低下に応じて小さくなり、その分だけ翼210はジグザグばね220に引き戻される。
なお、翼210は、ロータかな202を中心に点対称位置に配置された翼軸穴石204に軸支されているので、ロータ200に対して重量バランスが保たれた位置に取り付けられている。
各対向板233間の寸法は、その間に介在されるスペーサ232の厚さ寸法によって設定される。従って、本実施形態では、厚さ寸法の異なる複数種類のスペーサ232を用意しておき、スペーサ232を選択して取り付けたり、後から交換することで、前記対向板233間の寸法を適切な寸法に設定している。
また、前記翼210が遠心力で外側に移動した際には、各対向板233間の隙間部分に配置されるように構成されている。この際、翼210は、各対向板233間の隙間の略中央に配置され、翼210と各対向板233間の隙間がそれぞれ略同一となるように構成されている。
さらに、遠心力で翼210が外側に移動し、翼210の係止突起213がばね掛け軸206に当接する最外周位置まで移動した場合に、翼210の外周形状の一部が穴233Aと同心円となるように形成されている。すなわち、図2(B)に示すように、穴233Aと同心円の点線235に、翼210の外周の一部が重なるような形状とされている。
このような構成の調速装置2では、次のように動作して速度を制御する。
すなわち、動力伝達輪列4を介してロータ200が回転すると、翼210に遠心力が働き、翼210が翼案内板203の外側に飛び出して、対向板233間に入り込む。翼210の翼平面と対向板233の対向面間の隙間は小さいため、翼210は対向板233間に入る前に比べて大きな空気粘性抵抗を受ける。その空気粘性抵抗でロータ200の速度が低下すると遠心力が弱くなり、翼案内板203の外に飛び出していた翼210は、ジグザグばね220によって引き戻される。
そして、ロータ200の速度が低下し、翼210が対向板233間から翼案内板203側に引き込まれると、翼210に働いていた空気粘性抵抗も小さくなるため、再びロータ200の速度は上昇し、翼210が翼案内板203の外に飛び出して翼案内板203間に入り込む。このような挙動を微少に繰り返すことで、ロータ200はある一定の回転速度に保たれる。
次に、本実施形態の調速装置2によって作動速度が調速されるソネリ機構3について説明する。
なお、ソネリ機構3の概略構成は、従来から知られているものと同様なので、説明を省略あるいは簡略する。
従来のソネリ機構の構成は、例えば、Francois Lecoultre著、「A guide to complicated watches」、159〜179頁に開示されている。
ゴング33は、焼き入れ鋼のCリングからなり、ソネリ機構3の外周(時計のムーブメントの外周)に沿って配置され、一端が地板5に固定されている。
これらの構成のうち、アワーリピーティングラック70と、センターホイール80とは、従来のソネリ機構から改良された部分があるため、その点は詳細に述べるが、他の部分は従来の機構と同様のものであるため、説明を簡略する。
すなわち、筒かな7の外周には角取り部が形成され、中心に角穴のあいたスクリューナット40が文字板側から挿入されている。このため、スクリューナット40は、筒かな7(2番車=分針)と一体的に回転する。
スクリューナット40の外周部の突起41は、ベースのムーブメントが正時を指す(分針が12時位置を指す)少し前にリリースレバー60に接触し、リリースレバー60を図1中反時計回りに回転させる。
さらに、スクリューナット40の円板部にはピン42が突設されている。
すなわち、各側面52Aの長さを、短い方向から順にL1〜L12とすると、Ln(nは1〜12)=L1+(n−1)×ΔLであり、ΔL毎、順次加算された長さに設定されている。
この数取り車50は、前記スクリューナット40のピン42が星形歯車51の歯51Aに係合することによって、1時間に1/12毎回転する。
このリリースレバー60は、回転軸65によって地板5に回動自在に取り付けられ、前記スクリューナット40の回転に伴い、図1中反時計回りに回転される。
一方、例えば、竜頭36の操作で分針を反時計回りに移動した場合など、ビーク62に図4中時計回り(B方向)の力が加わった場合には、ビーク62がB方向に回動し、その後、リリースレバーばね64の付勢力で元の位置に戻るようになっている。これにより、ビーク62つまりはリリースレバー60の破損を防止できる。
そして、リリースレバー60が反時計回りに回転された際には、リリースレバークリック63はリリースラチェット82の三角歯821を押し、リリースラチェット82を反時計回りに回転させる。
HRR70は、図5にも示すように、地板5および輪列受け6間に回転自在に支持された回転軸71と、この回転軸71に圧入固定されたラック本体72と、ラック本体72に回転自在に取り付けられHRRクリック73と、回転軸71に案内されて前記HRRクリック73を付勢するHRRクリックばね74とを備えている。
HRRクリック73は、略T字形に形成され、前記数取り車50の各側面52Aに当接可能な端子部(時刻読み取り端子)731と、前記HRRクリックばね74に係合可能な2つの係止部732とを備えている。そして、HRRクリック73は、HRRクリック73に形成された長穴(トラック穴)733をラック本体72に圧入されたピンに挿入することでラック本体72に回転自在に取り付けられている。
そして、HRRクリック73が前記数取り車50の側面52Aに接触している状態で、針合わせ操作を行い、数取り車50が回転して数取り板52がHRRクリック73の側面にぶつかった場合には、前記係止部732が凹部742から外れてHRRクリック73が回転できるので、HRRクリック73が破損することがない。
また、数取り車50のHRRクリック73への接触状態が解除されると、前記係止部732が三角歯741の斜面に案内され、係止部732が凹部742に嵌合する静止位置まで自動的に戻る。
リリースラチェット82は、ドライビングローラ81の地板5側に配置され、前記軸812に回転自在に挿入されている。このリリースラチェット82は略円板状に形成され、その外周面には前記リリースレバー60のリリースレバークリック63が噛み合う三角歯821が形成されている。
リリースピン84は、リリースラチェット82に圧入され、ドライビングローラ81の円板811に形成された穴813に貫通して配置されている。なお、穴813は円板811の円周方向に所定長さを有する長穴とされている。
CWリリースクリックばね86は、ピン861でドライビングローラ81の円板811上に固定されている。このCWリリースクリックばね86の先端は、前記CWリリースクリック85に係合し、CWリリースクリック85をツバピン851を軸として時計回りに回転する方向に付勢している。
さらに、アワーラチェット90には、ソネリ機構3が停止状態の際にハンマー34が動作することを禁止するハンマー鳴り止め用の突起902が形成されている。
次に、このような構成のソネリ機構3の動作に関し、簡単に説明する。
通常の状態では、香箱車31の回転力(トルク)は増速輪列32を介してセンターホイール80に伝達され、CW80は図1中反時計回り方向に回転力を受けている。しかし、GRP87の無歯形部871とHRR70の規制部76とが押し付けられているので、CW50は回転せずに停止している。
これにより、ドライビングラチェット89の三角歯891に噛み合っていたCWリリースクリック85の爪部853が三角歯891から外れる。
このときGRP87に固定されているアワーラチェット90は、外周の三角歯901でハンマー34の軸に回転自在に取り付けられたハンマートリップ341を弾きながら、時計回りに回転する。
すなわち、数取り車50は数取り板52の下側に12本の歯51Aを持つ星形歯車51を有する。スクリューナット40は、筒かな(分針)7と一体になって1時間に1回転する際に、ビーク62に突起41が接触する前に、円板に圧入されたピン42が数取り車50の星形歯車51に係合し、数取り車50を1時間分(1/12回転=30度)だけ回転させる。このとき、星形歯車51は、三角歯のクリックが押し付けられているため、数取り車50はクリック感をもって回転し、位置決めされる。
このドライビングローラ81の回転速度は、香箱車31の回転速度で設定され、香箱車31の回転速度は、前述したように調速装置2で調速され、非常にゆっくりした速度で回転する。
これによりギャザリングラックピニオン87は、CWリリースクリック85に拘束され、ドライビングローラ81と一体になって反時計回り方向に回転する。
このゴング33を打つ動作は、センターホイール80が回転してアワーラチェット90の三角歯901がハンマートリップ341に当たる度に行われるので、数取り車50の回転位置つまり数取り車50から読み取った時刻の時数分だけゴング33が鳴らされる。従って、利用者は、鳴らされた音の数で時刻を知ることができる。
この際、図1に示すように、アワーラチェット90の突起902がハンマートリップ341に当接し、ハンマートリップ341が反時計回り方向に回転することを防止している。このとき、ハンマートリップ341はハンマー34のピン343に当接し、ハンマー34をゴング33から離れた位置に静止させている。このため、腕時計を携帯中に拍手したり、腕を強く振るなどした場合でも、ソネリ機構3が作動していない場合にゴング33が鳴ることはない。
リリースレバー60は、筒かな7の回転により、ビーク62がスクリューナット40の突起41から外れると、ばね力によって時計回り方向に回転し、初期位置に戻る。
以上が、ソネリ(時打ち)機構3の一連の動作である。
以上のような構成の本実施形態によれば、次のような効果がある。
(1)本実施形態の調速装置2は、機械的な制御によって香箱車31で駆動されるソネリ機構3の作動速度をほぼ一定にできるので、制御回路やセンサ類を不要にでき、低コスト及び省スペース化を実現できる。また、調速装置2は、機械式で電源が不要なので、電子制御式機械時計1に搭載した場合、発電調速機が発電した電力を使用する必要が無く、電力消費増大によって電子制御式機械時計1の持続時間が短縮することを防止できる。
さらに、流体粘性抵抗を利用する非接触式調速機のため、雑音発生を防止できる。そのため、ソネリ機構搭載の時計1において、雑音発生が無いため、純粋に音源の音色を鑑賞できる。
また、翼210を利用した調速装置2であるため、調速装置2全体を薄型化でき、腕時計1にも容易に搭載できる。
また、翼210の両面に対向板233が設けられているので、あがきによって翼210が一方の対向板233側に寄ってその隙間寸法が小さくなっても、他方の対向板233との隙間寸法は大きくなるため、トータルでの粘性抵抗の変化は少なくなり、調速装置2の速度は安定し、機器の作動速度も略一定に維持できる。
その上、ジグザグばね220は、2つの翼210に対応する2つのジグザグばね部222と、これらを連結するばね位置決め部221とで一体に形成されているので、位置決め用の部位が一組でよく、全体をコンパクトにでき、バネ製造の工数も減るため、組立や取扱いも容易になる。
次に、本発明の第2実施形態について、図9に基づいて説明する。第2実施形態は、第1実施形態の調速装置2において、翼210の外周形状を多少変更したものであり、その他の構成は第1実施形態と同一であるため、説明を省略する。
すなわち、第2実施形態の翼210Aは、対向板233の穴233Aの内周縁に沿った形状とされている。具体的には、図9(B)に示すように、翼210Aの外周形状の一部、より具体的には翼210Aの先端から翼軸211の近傍までの外周形状は、対向板233の穴233Aの内周縁に沿った形状とされている。
さらに、翼210Aの外周形状が穴233Aの内周縁に沿っているので、遠心力で翼210Aが図9(B)の状態から図9(C)の状態に移動した際に、対向板233間に入る際の翼210Aの面積が大きくなり、翼210Aの一部が対向板233間に入った場合の空気粘性抵抗を第1実施形態よりも大きくできる。これにより、翼210Aが対向物230と重なる前後の粘性抵抗力の差を大きくでき、ロータ200の速度をより設定速度に安定させることができる。
第3実施形態は、図10,11に示すように、対向物として、調速装置2の上下の対向板233を一体とした形状の対向物300を用いたものである。すなわち、対向物300は、遠心力で外側に移動した翼210が入る溝301が形成されている。
本実施形態では、前記溝301がCリング状に形成された2つの対向物300を組み合わせることで、円周状の溝301を構成している。
この各対向物300は、対向物300に形成された長穴に挿入された案内ピン302で直線移動可能に案内されている。さらに、対向物300に一体に設けられたばね303により、各対向物300は、互いに離れる方向つまりロータ200の回転軸から遠のく方向に付勢されている。
これにより翼210と対向物300の平面方向の重なり面積を変化させ、ロータ200の回転速度つまりソネリ機構3の動作速度を微調整できるようにされている。
なお、この速度調整は、時計1の組立時のみに行えばよいので、位置調整された対向物300は、固定ねじ305によって、その調整された位置に固定される。
そして、本実施形態では、案内ピン302、ばね303、調整ねじ304、固定ねじ305によって、各対向物300の内周縁300Aと、ロータ回転中心との距離を調整する平面距離調整手段が構成されている。
さらに、翼210の外周側への飛び出し量は、遠心力つまりロータ速度に応じて変化するので、ロータ200の静止時の翼位置と対向物300の間に前記ロータ200の半径方向の隙間を設けることで、ロータ200に働く粘性抵抗を、翼210が対向物300と平面的に重なり始める速度を境に大きく変化できる。よって、翼210は対向物300の境界線(内周縁300A)付近で微小な変動を繰り返すことになる。従って、増速比、増速段数、エネルギ源の出力トルクのほか、平面距離調整手段で前記半径方向の隙間寸法を調整することでロータ200の速度を容易に調整できる。
これに対し、本実施形態では、対向物300をスライド移動させるだけで調整できるので、ロータ200の回転速度の調整作業を簡単に行うことができる。
第4実施形態は、図12に示すように、翼210を回転軸方向に複数層設けたものである。対向物は、各層の翼210がそれぞれ対向板400間に配置されるように設ければよい。また、図12に示すように、地板5の一部を対向板5Aとして利用している。
その他の構成は、前記実施形態と同一であるため、説明を省略する。
また、翼210を複数層設けることにより、調速装置2の平面寸法を変えることなく、制動力を増すことができる。
特に、翼210や対向板400をそれぞれ共通化し、仕様(調速に必要な制動力)に応じて重ね合わせる数を選択するように構成すれば、コストを低減でき、かつ必要な制動力が異なる様々な機器に利用できる。
前記各実施形態は、ソネリ機構3の作動速度の調速に、本発明の調速装置2を利用していたが、第5実施形態は、図13に示すように、ゼンマイで駆動される発電機の発電ロータの調速に、本発明の調速装置を利用したものである。
本実施形態では、前記実施形態と同様に、香箱車31に対して動力伝達輪列(増速輪列)4を介して調速装置2が設けられている。さらに、この動力伝達輪列4の途中に発電機500が設けられている。
発電機500は、動力伝達輪列4の途中の歯車が噛合されて回転される発電ロータ501と、発電ロータ501を囲んで配置された2体のステータ502と、各ステータ502に巻回されたコイル503を備えている。コイル503は、整流回路504を介してコンデンサ505に接続され、さらに電力が供給される負荷としての各種電子機器506に接続されている。
負荷となる電子機器506は、例えば、防災用発電機付きラジオや、LED等を利用した発電機付き懐中電灯などである。すなわち、発電機500は、香箱車31のゼンマイを巻き上げることで発電でき、電池等が不要なので、特に、防災用あるいは携帯用の各種電子機器に電力を供給する用途に適している。
しかしながら、負荷となる電子機器506で使用される電力の他、制御用ICや水晶振動子を駆動する電力も発電する必要があり、発電された電力を負荷に供給できる割合が低下するという問題もある。
例えば、スペーサ232の交換により対向板233の間隔を調整する場合に、輪列受け6を外さずに行えるようにしてもよい。例えば、輪列受け6をロータ200を軸支する部分と、それ以外の輪列の受け部分とに分離し、ロータ200を軸支するロータ受けを片持ち構造とする。そして、対向板の翼210と対向する対向部分はロータ受けを平面的に避けたC字形状とし、ロータ受けを分解しなくても対向板のみを取り外してスペーサ232を容易に変更できる構造としてもよい。
さらに、翼210はロータ200に回転自在に取り付けられ、遠心力で回転して外側に移動するものに限らず、遠心力で平行に移動するものでもよい。
対向物230,300は、翼210の両面に設けられるものに限らず、片面のみに設けられるものでもよいが、両面に設けた方が、制動力を倍増でき、その分、サイズを小型化できる利点がある。
図14,15に示すグラフ1,2の実線601,602は、ゼンマイ巻数を変化させ、ロータ200に伝達されるトルクを変えた際のロータ200の回転速度を測定した結果を示す。ちなみに、これらの結果は第1実施形態のハンマー34等の負荷の変動はない状態で行った実験結果である。
香箱車からロータまでの増速比:176400倍
香箱車からロータまでの輪列の噛み合い段数:8段
ロータの翼案内板の直径:4mm
翼材料:ステンレス
翼厚み:0.1mm
翼重量(1枚):0.0031g
対向板と翼の距離:上板と翼の隙間 下板と翼の隙間
翼引き戻しばね(ジグザグばね)のばね定数:0.00874(kgf/mm)≒0.08571(N/mm)
対向板の穴233Aの直径:4.5mm
翼の最外周(対向板の溝部分の外径):6.0mm
この結果から、ハンマー34の駆動という負荷の変動が合った場合でも、ゼンマイ巻数4巻程度まではハンマー34の打ち間隔はゼンマイ巻数つまりゼンマイトルクに影響されず、おおよそ一定に保たれることが判る。
なお、隙間寸法があまりにも小さいと、ロータ、翼のアガキ、ホゾと穴石のガタなどによる傾きによって翼と対向板とが接触してしまうおそれがあり、その接触を防止するための調整が非常に煩雑になる。このため、隙間寸法は0.03mm以上に設定した方が、調整を容易にできる利点がある。
但し、例えば、懐中時計や置き時計などのよりサイズの大きな機器内に組み込まれ、翼210のサイズもより大きくできる場合には、翼210と対向板233との隙間寸法は0.15mm以上でもよく、必要な制動力を考慮して設定すればよい。
香箱車からロータまでの増速比:95653倍
香箱車からロータまでの輪列の噛み合い段数:8段
ロータの翼案内板の直径:4mm
翼重量(1枚):0.0031g
翼枚数:2枚
翼形状:第1実施形態の形状(図2に示す翼形状)
対向板と翼の距離:上板と翼の隙間=下板と翼の隙間=0.05mm
翼引き戻しばね(ジグザグばね)のばね定数:58.52N/m
対向板の穴の直径:4.5mm
ゼンマイの最大出力トルク:0.0123N・m(≒125gcm)
ゼンマイの最大巻数:8.4巻
なお、本シミュレーションにおいては、ハンマー等の負荷は考慮していない。また、香箱車からロータまでの摩擦抵抗、軸受の潤滑油による粘性抵抗も考慮していない。これらは考慮しなくても影響が小さいためである。
さらに、香箱車からロータの手前の歯車までの空気粘性抵抗も考慮していない。歯車はロータに比べて速度が遅く、殆ど影響しないためである。
一方、翼が対向板間に入り込んでからは、円筒と仮定したロータ表面に働く空気粘性抵抗と、翼および対向板間に働く空気粘性抵抗とを合計してロータに働く空気粘性抵抗とした。
すなわち、まず、ゼンマイから加わるトルクをゼンマイの巻数に基づいて設定し、そのトルクとロータの慣性モーメントとでロータの回転速度を算出する。ロータの回転速度に基づいて翼に働く遠心力を求め、この遠心力と翼引き戻しばねのばね力とから翼の変位(位置)を算出し、翼が対向板間にあれば、翼において対向板間に配置される部分の面積を求め、その面積に対応する空気粘性抵抗を算出する。さらに、空気粘性抵抗が働く翼部分のロータ中心からの距離と空気粘性抵抗値からロータに加わる粘性ブレーキトルクとロータの角速度とを求める。
ゼンマイが解けた際のゼンマイトルクをゼンマイの特性から順次算出し、その算出したゼンマイトルクに基づいて前記計算を順次繰り返すことでシミュレーションした。その結果を図19に示す。
これらの結果から分かるように、本発明の調速装置は、翼が対向板間に入り込むまでは、翼が無い場合と同じ結果であるが、ロータ角速度が高くなって翼が対向板間に入り込むと、粘性ブレーキトルクが急激に高くなる。
従って、翼無しの場合、実線621に示すように、粘性ブレーキトルクは最大でも0.005N・m以下となってしまい最大ゼンマイトルクの約半分以下と小さいため、十分なブレーキトルクを加えることができず、ロータの回転を一定速度に調速できない。
これに対し、可変翼を有する場合には、ゼンマイの最大出力トルク程度の粘性ブレーキトルクを得ることもできるため、ロータの回転を確実に一定速度に調速できる。
その上、図19の矢印623に示すように、例えばゼンマイの巻数が7.5巻から2.0巻まで5.5巻分ほどけて、ゼンマイトルクが約0.0118N・mから0.00785N・mまで変化した場合、実線622で示す翼無しロータでは、矢印624に示すように、ロータの回転速度は372s-1(=372rps)から303s-1まで約18.5%変動する。これに対し、本発明では、矢印625に示すように、ロータの回転速度は386s-1から362s-1まで約6.2%の変動に抑えることができる。
Claims (15)
- 動力伝達手段を介して供給されるエネルギ蓄積手段のエネルギにより回転するロータと、
前記ロータの回転軸に直交する翼平面を備えるとともに、ロータの回転による遠心力でロータの半径方向外周側に移動可能に設けられた翼と、
前記ロータおよび翼間に配置されるとともに、前記翼をロータの半径方向内周側に引き戻す翼引き戻し手段と、
前記ロータの外周に設けられ、かつ、前記翼がロータの半径方向外周側に移動した際に、その翼平面に対して所定の隙間寸法だけ離れて対向配置される対向面を備える対向物と、
を備え、
前記ロータの静止時の翼位置と前記対向物の間には前記ロータの半径方向の隙間が設けられていることを特徴とする調速装置。 - 請求項1に記載の調速装置において、
前記翼平面と対向物の対向面との隙間寸法を調整する隙間寸法調整手段を備えることを特徴とする調速装置。 - 請求項1または請求項2に記載の調速装置において、
前記対向物の内周縁とロータ回転中心との距離を調整する平面距離調整手段を備えることを特徴とする調速装置。 - 請求項1から請求項3までのいずれかに記載の調速装置において、
前記翼平面と対向物の対向面との間の隙間寸法は0.15mm以下であり、翼平面および対向面間に介在される粘性流体は空気であることを特徴とする調速装置。 - 請求項1から請求項4までのいずれかに記載の調速装置において、
前記対向物は、前記翼を、ロータの回転軸方向の両側から挟むように配置されることを特徴とする調速装置。 - 請求項1から請求項5までのいずれかに記載の調速装置において、
前記ロータには、翼が設定位置以上外側に飛び出すことを防止する翼飛び出し過多防止手段を備えることを特徴とする調速装置。 - 請求項1から請求項6までのいずれかに記載の調速装置において、
前記翼はロータに対して複数設けられ、かつ、各翼はロータの回転軸に対して重量バランスが保たれる位置に配置されていることを特徴とする調速装置。 - 請求項1から請求項7までのいずれかに記載の調速装置において、
前記翼の外周形状の一部は、翼が最も外側に位置した状態でロータ回転軸に同心の円周に重なる形状とされていることを特徴とする調速装置。 - 請求項1から請求項7までのいずれかに記載の調速装置において、
前記対向物の内周縁形状はロータの回転軸に同心の円周状とされ、前記翼の外周形状の一部は、対向物の内周縁形状と同じ形状とされていることを特徴とする調速装置。 - 請求項1から請求項9までのいずれかに記載の調速装置において、
前記翼引き戻し手段は、板状のジグザグばねであることを特徴とする調速装置。 - 請求項10に記載の調速装置において、
前記翼はロータに対して複数設けられ、前記翼引き戻し手段は翼毎に設けられた複数のジグザグばねを有する一体構造のものであることを特徴とする調速装置。 - 請求項1から請求項11までのいずれかに記載の調速装置において、
前記翼は略半月状であり、かつ、ロータに対して回転軸を介して回転自在に軸支され、前記回転軸は翼重心位置よりも翼の一方の端部側に形成されていることを特徴とする調速装置。 - 請求項12に記載の調速装置において、
前記翼引き戻し手段の翼との接点は、翼の重心よりも回転軸側に設けられていることを特徴とする調速装置。 - 請求項1から請求項13までのいずれかに記載の調速装置と、
機械的エネルギを蓄積するエネルギ蓄積手段と、
前記エネルギ蓄積手段からの機械的エネルギを前記調速装置に伝達する動力伝達手段と、
前記エネルギ蓄積手段から供給される機械的エネルギで駆動される発電機と、
を備えることを特徴とする発電装置。 - 請求項1から請求項13までのいずれかに記載の調速装置と、
この調速装置で調速される作動部と、を備えることを特徴とする機器。
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