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JP4818682B2 - 樹脂積層体の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ディスプレー前面板等の用途に好適な、透明性、帯電防止性、耐擦傷性に優れた板状等の形状の樹脂積層体の製造方法に関する。
アクリル樹脂は、透明性、耐衝撃性、易成形性等が良好である点に特徴を有しており、工業用資材、建築用資材等として広く使用されている。近年では、その透明性と耐衝撃性から、CRTや液晶テレビ等の各種ディスプレーの前面板として使用されるに至っている。しかし、他の樹脂と同様に、アクリル樹脂はガラスと比較して柔らかいため、引掻き等による傷が発生し易い場合がある。また、アクリル樹脂は表面固有抵抗が高いため、静電気による埃の付着に起因して、透明性が低下し易い場合がある。
耐擦傷性を向上する方法としては、多官能(メタ)アクリレート等の多官能性単量体を用い、架橋被膜を基材表面に形成することが公知技術として知られている。しかし、従来の架橋被膜は、帯電防止能を全く示さないか、不十分な場合が多い。
そこで、耐擦傷性に加えて、帯電防止性を付与する方法も提案されている。例えば特許文献1や特許文献2には酸化錫を主成分とする導電性粉末を含有する塗膜を積層する方法が開示されているが、酸化錫等の導電性粉末を含有する塗膜の場合、良好な耐擦傷性が得られるまで膜厚を大きくすると、導電性粉末による着色が発生したり、表面の凹凸等により透明性が低下してしまう場合がある。また、導電性粉末を含有する塗膜を連続的に形成する事が出来ないため、生産性が低いという問題があった。
一方、帯電防止性を示すと共に、耐擦傷性に優れた表面層を有する樹脂成形体を、高い生産性で製造する方法が知られている。例えば特許文献3には、フィルム転写による樹脂成形体の製造方法が開示されているが、透明性が損なわれ易く、さらなる改良が求められている。
特開昭60−181177号公報 特開昭62−206709号公報 特開2003−326538号公報
本発明の目的は、帯電防止性、耐擦傷性、透明性に優れた表面層を有する樹脂積層体を高生産性で製造することにある。
本発明は、帯電防止成分と、重量平均分子量5000〜1000000の重合物とを含む帯電防止膜を少なくとも一表面に有するフィルムの該帯電防止膜を型側とし、紫外線硬化性塗料(A)を介在させて、前記フィルムを型に貼り付ける第1の工程、前記フィルムを介して紫外線を照射し、紫外線硬化性塗料(A)を硬化する第2の工程、型上に紫外線硬化性塗料(A)が硬化した塗膜および該塗膜上に積層された帯電防止膜を残して前記フィルムを剥がす第3の工程、紫外線硬化性塗料(A)が硬化した塗膜および該塗膜上に積層された帯電防止膜を有する前記型を用いて鋳型を作製する第4の工程、前記鋳型に樹脂原料を注入し注型重合を行う第5の工程、および、重合終了後、該重合により形成された樹脂成形体と、帯電防止膜と、硬化塗膜とが順次積層された樹脂積層体を鋳型から剥離する第6の工程、を含む樹脂積層体の製造方法である。帯電防止成分は導電性微粒子からなることが好ましい。
本発明によれば、型面を転写したものなので異物等による欠陥が無い優れた表面を有し、かつ十分な帯電防止性を示すと共に耐擦傷性および透明性にも優れた表面層(硬化塗膜)を有する樹脂積層体を高い生産性で製造できる。
本発明における帯電防止膜を少なくとも一表面に有するフィルムについて説明する。
本発明で使用する帯電防止成分として、導電性微粒子、界面活性剤、導電性高分子等が挙げられるが、帯電防止性能、透明性の観点から、導電性微粒子が好ましい。
導電性微粒子としては、例えば、酸化スズあるいは酸化スズにアンチモン、リン、フッ素、亜鉛、テルル、ビスマス、カドミウム等の1種もしくは2種以上の元素をドープした微粒子、または、酸化インジウムあるいは酸化インジウムにスズ、フッ素、リン、アンチモン等の元素をドープした微粒子、5酸化アンチモン微粒子等が用いられる。導電性微粒子の平均粒子径は、良好な透明性を得るために100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることが更に好ましい。また、安定な分散性を得るために1nm以上であることが好ましい。
本発明で使用するフィルムは、後述の硬化に使用する紫外線を透過し、紫外線硬化性塗料(A)により膨潤しない耐溶剤性を有し、酸素の透過率が低いものが好ましい。その様なフィルムの例としては、ポリエチレンテレフタレートの2軸延伸フィルムが挙げられる。フィルムの厚みは、フィルム強度を維持する点で1μm以上であることが好ましく、取り扱い性やコスト等の点で200μm以下であることが好ましい。
帯電防止膜を構成する重合物は、帯電防止成分を担持し膜を形成し得るバインダー成分として用いられ、例えば、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂等の合成樹脂が挙げられる。透明性、紫外線硬化性塗料(A)への転写性の観点から、アクリル樹脂が好ましい。この重合物は、一種類の単量体からなる単独重合物でもよいし、複数の単量体からなる共重合物でもよい。
重合物の分子量としては、重量平均分子量5000〜1000000が好ましい。重量平均分子量が5000以上であると、注型重合時のモノマーによる過度な膨潤が抑制され、導電性微粒子同士の接触により電子伝導経路となるネットワーク構造が維持でき、帯電防止性能が発現する。また、重量平均分子量が1000000以下であると、紫外線硬化性塗料(A)により重合物が膨潤し良好な転写性が得られる。また、高湿度環境下でも後述する硬化塗膜と帯電防止膜との密着性が良好である。
重合物には、導電性微粒子の分散安定性を向上する目的で、極性モノマー、界面活性剤、アミン類等の分散安定剤を添加してもよい。
本発明において帯電防止膜をフィルムの少なくとも一表面に形成する方法は特に制限されないが、重合物と帯電防止成分を溶剤に溶解、分散させたものをフィルムに塗布し、溶剤を蒸発させて形成する方法が好ましい。
溶剤は、重合物と帯電防止成分を希釈により低粘度化し、フィルムへの塗布が容易な粘度とする目的や、導電性微粒子の分散安定性を向上する目的で使用される。溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、2−ブタノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン、酢酸メチル、酢酸エチル、水等が挙げられる。
帯電防止膜としては、膜厚が0.05μm〜5μmであることが好ましい。かかる範囲においては、外観が良好で帯電防止性能も良好となる。帯電防止膜の表面抵抗値は1010Ω/□以下が好ましく、10Ω/□以下がより好ましい。かかる表面抵抗値の領域であると、樹脂積層体における帯電防止性能が十分となる。表面抵抗値は、帯電防止成分の添加量を適宜選択することにより調整でき、導電性微粒子の場合、その添加量としては、バインダー成分である重合物100質量部に対して50質量部以上であることが好ましい。また基材との密着性の観点から90質量部以下であることが好ましい。
フィルムに重合物と帯電防止成分の希釈液を塗布する方法は特に限定されず、例えば、刷毛塗り、バーコート、流し塗り、スプレーコート、ナイフコート、ロールコート、ダイコート等を適用できる。
本発明において、第1の工程として少なくともフィルムの一表面にある前記帯電防止膜を型側として、かつ紫外線硬化性塗料(A)を介在させて、そのフィルムを型に貼り付ける。
この紫外線硬化性塗料(A)としては、分子中に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物、及び光開始剤からなるものが好ましい。
分子中に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物の主な例としては、1モルの多価アルコールと2モル以上の(メタ)アクリル酸またはその誘導体とから得られるエステル化物、多価アルコールと多価カルボン酸またはその無水物と(メタ)アクリル酸またはその誘導体とから得られる線状のエステル化物等が挙げられる。
1モルの多価アルコールと2モル以上の(メタ)アクリル酸またはその誘導体とから得られるエステル化物の具体例としては、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリエチレングリコールのジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタグリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
多価アルコールと多価カルボン酸またはその無水物と(メタ)アクリル酸またはその誘導体とから得られる線状のエステル化物において、多価アルコールと多価カルボン酸またはその無水物と(メタ)アクリル酸の好ましい組合わせとしては、例えば、マロン酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、マロン酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、マロン酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、マロン酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、コハク酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、コハク酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、コハク酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、コハク酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、アジピン酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、アジピン酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、アジピン酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、アジピン酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、グルタル酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、グルタル酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、グルタル酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、グルタル酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、セバシン酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、セバシン酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、セバシン酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、セバシン酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、フマル酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、フマル酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、フマル酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、フマル酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、イタコン酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、イタコン酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、イタコン酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、イタコン酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸等が挙げられる。
紫外線硬化性塗料(A)のその他の例としては、トリメチロールプロパントルイレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、4,4'−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等のジイソシアネートの3量化により得られるポリイソシアネート1モル当たり、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−メトキシプロピル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、1,2,3−プロパントリオール−1,3−ジ(メタ)アクリレート、3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の活性水素を有するアクリル系モノマー3モル以上を反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート;トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸のジ(メタ)アクリレートまたはトリ(メタ)アクリレート等のポリ[(メタ)アクリロイルオキシエチレン]イソシアヌレート;エポキシポリ(メタ)アクリレート;ウレタンポリ(メタ)アクリレート;などが挙げられる。ここで「(メタ)アクリ」とは、「メタクリ」または「アクリ」を意味する。
光開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトイン、ブチロイン、トルオイン、ベンジル、ベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、α,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノン、メチルフェニルグリオキシレート、エチルフェニルグリオキシレート、4,4'−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等のカルボニル化合物;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド等の硫黄化合物;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ベンゾイルジエトキシフォスフィンオキサイド等が挙げられる。
光開始剤の添加量は、紫外線硬化性塗料(A)を構成する全成分中、紫外線による硬化性の観点から0.1質量%以上が好ましく、塗膜の良好な色調を維持する観点から10質量%以下が好ましい。
紫外線硬化性塗料(A)には、必要に応じて、分子中に1つの官能基を有する単量体、レベリング剤、導電性無機微粒子、導電性を有さない無機微粒子、紫外線吸収剤、光安定剤等の各種成分をさらに添加できる。その添加量は10質量%以下が好ましい。
本発明においては、第1の工程でフィルムを型に貼り付ける方法としては、例えば、型もしくはフィルムに紫外線硬化性塗料(A)を塗布し、ゴムロールで圧着する方法が挙げられる。特に、貼り合わせる際のエアーの巻き込みを防ぐためには、型上に過剰量の紫外線硬化性塗料(A)を塗布し、フィルムを介してゴムロールで過剰な塗料をしごき出しながら貼り付ける方法が好ましい。
紫外線硬化性塗料(A)層の厚みに関しては、硬化後の厚みで5μm〜100μmとすることが好ましい。5μm以上では十分な表面硬度が発現し、100μm以下では膜固有の着色等が問題とならず外観が良好となるとともに、帯電防止性能が良好となる。
本発明においては、第1の工程でフィルムを型に貼り付けた後、第2の工程として、フィルムを介して紫外線を照射し、紫外線硬化性塗料(A)を硬化する。この紫外線照射には、紫外線ランプを使用すればよい。紫外線ランプとしては、例えば、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、蛍光紫外線ランプ等が挙げられる。紫外線照射による硬化は、フィルムを介して1段階で行っても良いし、例えば、フィルムを介して前硬化し(第2の工程)、フィルムを剥離し(第3の工程)、その後更に紫外線を照射して硬化するなど、2段階に分けて硬化を実施しても良い。
本発明においては、第2の工程の硬化の後、第3の工程として型上に紫外線硬化性塗料(A)が硬化した塗膜(以下、「硬化塗膜」という。)および硬化塗膜上に積層された帯電防止膜を残してフィルムを剥がす。すなわちフィルムに塗布した帯電防止膜は、型上の硬化塗膜に転写されたものとなる。尚、硬化塗膜と、硬化塗膜上に積層された帯電防止膜とを併せて以下、「積層膜」という。
第4の工程として紫外線硬化性塗料(A)が硬化した塗膜(硬化塗膜)および該塗膜上に積層された帯電防止膜(積層膜)を有する前記型を用いて鋳型を作製する。
型を構成する部材としては、例えば、鏡面を有するステンレス板、ガラス板もしくは表面に凹凸を有するステンレス板、ガラス板等を使用できる。鋳型の作製は、例えば、2枚の型の間に、軟質ポリ塩化ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合物、ポリエチレン、エチレン−メタクリル酸メチル共重合物等からなる中空形状物をガスケットとしてはさみ込み、クランプで固定して、成形型から構成される鋳型を組立てる等の工程により行うことができる。また、連続的に注型重合(キャスト重合)する方法として、図1に示すような対向して走行する2枚のステンレス製エンドレスベルトを型として、それらエンドレスベルトの間で樹脂原料を注型重合して樹脂板を製造する方法が知られており、これは生産性の点で最も好ましい方法である。この場合においてはステンレス製エンドレスベルト表面に、例えば硬化塗膜等を予め形成することにより、当該膜からなる層を有する樹脂積層体を高い生産性で製造することができる。
さらに第5の工程として前記鋳型に樹脂原料を注入し注型重合を行う。
作製した鋳型内部にて、基材となる樹脂原料の注型重合を行なう際、その樹脂原料としては、従来より知られる各種の原料を使用できる。例えば、アクリル系樹脂成形体を注型重合で製造する場合は、その樹脂原料として、(メタ)アクリル酸のエステル類単独の単量体、またはこれを主成分とする単量体、あるいは、この単量体とこの単量体からなる重合物の混合物を含有するシロップ等を挙げることができる。また、このようなアクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル酸のエステル類の単独重合物、あるいはこれを主な単量体成分とする、共重合物を例示することができる。(メタ)アクリル酸のエステル類としては、メタクリル酸メチルを例示することができる。例えば、メタクリル酸メチルを主な単量体成分として共重合する場合、その他の単量体成分としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2エチルヘキシル等のアクリル酸エステル;メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル等のメタクリル酸メチル以外のメタクリル酸エステル;スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物;等が挙げられる。
メタクリル酸メチルに一部重合物を含む場合は、メタクリル酸メチルに重合物を溶解させてもよいし、あるいはメタクリル酸メチルを一部重合させてもよい。アクリル系樹脂原料を重合するための開始剤としては一般的に用いられるアゾ系の開始剤、パーオキサイド系開始剤が挙げられ、これらの開始剤を用いて公知の方法により注型重合を行う。アクリル系樹脂原料には、その他目的に応じ、離型剤、紫外線吸収剤、染顔料等を添加することが出来る。
重合終了後、第6の工程として、樹脂成形体と、帯電防止膜と、硬化塗膜とが順次積層された樹脂積層体を鋳型から剥離する。このようにして得られる樹脂積層体は、型面を転写したものなので異物等による欠陥が無い優れた表面を有し、かつ耐擦傷性や帯電防止性に優れている。
また、この樹脂積層体には、必要に応じて表面に反射防止膜などの他の機能薄膜を設けることもできる。例えば反射防止膜を形成する場合、その方法は特に限定されないが、例えば、市販の反射防止用塗料を使用する方法;蒸着法やスパッタリング法などの物理気相堆積法;などが挙げられる。
以下、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。ここで、製造例、実施例、比較例で使用した化合物の略称は以下の通りである。
「MMA」 :メタクリル酸メチル
「BA」 :アクリル酸ブチル
「MA」 :アクリル酸メチル
「AIBN」 :2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)
「n−OM」 :n−オクチルメルカプタン
「S100A」:グリセリンモノステアレート(理研ビタミン(株)
社製、リケマールS−100A)
「C6DA」 :1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(大阪有機
化学工業(株)社製)
「TAS」 :コハク酸/トリメチロールエタン/アクリル酸のモ
ル比1:2:4の縮合混合物(大阪有機化学工業(株)
社製)
「BEE」 :ベンゾインエチルエーテル(精工化学(株)社製)
なお、実施例における物性の評価は下記の方法に基づいて行った。
(ア)表面抵抗値
超絶縁抵抗計(TOA製、ULTRA MEGOHMMETER
MODEL SM−10E)を使用し、測定温度23℃、50%相対湿度の条件で、樹脂積層体の積層膜側について印加電圧500Vで1分後の表面抵抗値(Ω/□)を測定した。測定用の試料としては、予め23℃、50%相対湿度で1日間調湿したものを用いた。
(イ)灰付着性試験
樹脂積層体の積層膜を有する面を乾いた面布で10回摩擦した後、積層膜を有する面を、平面上のたばこの灰に一定の距離を隔てて近づけた際の、灰の付着性の評価を行った。
○:10mmの距離まで近づけても灰が付着しない。
△:50mmから10mmまで近づけた時、その途中で灰が付着する。
×:50mmの距離で灰が付着する。
(ウ)帯電防止膜の紫外線硬化性塗料(A)への転写性
第3の工程(ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と称す。)フィルムを剥離する工程)後の、PETフィルムの表層の表面状態の目視観察結果から判断した。
○:帯電防止膜がPETフィルム上に残存していない。
×:帯電防止膜がPETフィルム上に残存している。
(エ)耐湿試験後の密着性評価
サンプルを65℃、95%相対湿度の雰囲気下に7日放置した後、クロスカット試験(JIS K5600−5−6)により評価した。
○:膜の基材からの剥離無し
×:膜の基材からの剥離有り
(オ)全光線透過率およびヘーズ
日本電色製HAZE METER NDH2000を用いてJIS K7136に示される測定法に準拠して、全光線透過率およびヘーズを測定した。
(カ)耐擦傷性
擦傷試験の前後におけるヘーズの変化(△ヘーズ)をもって評価した。即ち、#000のスチールウールを装着した直径25.4mmの円形パッドをサンプルの積層膜側表面上に置き、9.8Nの荷重下で、20mmの距離を100回往復擦傷し、擦傷前と擦傷後のヘーズ値の差を下式(1)より求めた。
[△ヘーズ(%)]=[擦傷後ヘーズ値(%)]−[擦傷前ヘーズ値(%)]
(1)
(キ)重量平均分子量
ゲルパーミエーションクロマトグラフイー法(以下、「GPC法」という。)にて測定した。GPC法の測定は、重合物をテトラヒドロフラン(THF)に溶解させた後、東ソー(株)製 液体クロマトグラフィーHLC−8020型を用いて行った。使用した分離カラムはTSK-GelのGMHXL2本直列とした。溶媒はTHF(テトラヒドロフラン)、流量1.0ml/minで、検出器は示差屈折計、測定温度40℃、注入量0.1mlとし、標準ポリマーとしてポリスチレン樹脂を使用した。
[製造例1]
攪拌機を備えた重合装置に、メタクリル酸2−スルホエチルナトリウム58質量部、メタクリル酸カリウム水溶液(メタクリル酸カリウム分30質量%)31質量部、メタクリル酸メチル11質量部からなる単量体混合物と、脱イオン水900質量部を加えて攪拌溶解させた。その後、窒素雰囲気下で混合物を攪拌しながら60℃まで昇温し、6時間攪拌しつつ60℃で保持させてアニオン系高分子化合物水溶液を得た。この際、温度が50℃に到達した後、重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.1質量部を添加し、更に別に計量したメタクリル酸メチル11質量部を75分間かけて、上記の反応系に連続的に滴下した。上記した製造方法により得られたアニオン系高分子化合物水溶液を、(A1)とする。
攪拌機が備わった内容量20リットルの容器に、MMA90質量部、BA9質量部、MA1質量部からなる単量体混合物に、重合開始剤としてAIBN0.1質量部、連鎖移動剤としてn−OM0.22質量部、離型剤としてS100A0.2質量部を投入し攪拌混合した。また、別の攪拌機が備わった内容量20リットルの容器に、脱イオン水150部、分散安定剤として製造例1で得たアニオン系高分子化合物水溶液(A1)0.3質量部、分散安定助剤として硫酸ナトリウム0.35質量部を投入し攪拌混合した。
攪拌機が備わった内容量40リットルの重合用容器に、前記内容量20リットルの容器それぞれの内容物を投入し、窒素置換後、80℃に昇温した。重合発熱ピーク終了後、115℃で20分間保持した後、30℃に冷却し重合を完結した。その後、洗浄脱水処理、乾燥してビーズ状の共重合物(B1)を得た。得られたビーズ状の共重合物(B1)の重量平均分子量は約100000であった。
[実施例1]
得られた共重合物10質量部と、トリエチルアミン1質量部、平均粒径20nmのアンチモンドープの酸化錫微粒子(商品名FSS−10M、石原産業(株)製)7質量部をイソプロパノール82質量部に溶解、分散させて得た帯電防止塗料を、平滑な表面を有する厚さ24μmのPETフィルムに、バーコーターを用いて1.1μmの厚みになるように塗布した。次いで、このフィルム上の塗膜を、70℃の熱風乾燥炉で5分間乾燥し厚み0.2μmの帯電防止膜を片面に有する帯電防止膜付PETフィルムを得た。この表面抵抗値は、3×10Ω/□であった。
次いで型となるステンレス(SUS304)板上に、TAS50質量部、C6DA50質量部、BEE1.5質量部からなる紫外線硬化性塗料(A)を塗布した。
ステンレス板の紫外線硬化性塗料(A)の塗膜上に、前記帯電防止膜付PETフィルムの帯電防止膜を有する面を型側に向けてそのPETフィルムを重ね、JIS硬度40°のゴムロールを用い、紫外線硬化性塗料(A)を15μmの厚みとなるように過剰な塗料をしごき出しながら、気泡を含まないように圧着させた。尚、紫外線硬化性塗料(A)の厚みは、この塗料(A)の供給量および展開面積から算出した。次いで、このPETフィルムを介して出力40Wの蛍光紫外線ランプ(東芝(株)製FL40BL)の下20cmの位置を0.3m/minのスピードで通過させて、硬化を行い硬化塗膜およびそれに積層された帯電防止膜(積層膜)を得た。
その後、型上に前記積層膜を残して、PETフィルムを剥離した。帯電防止膜は全て、硬化塗膜へ転写していた。次いで、ステンレス板の前記積層膜のある面を上にして、出力30W/cmの高圧水銀灯の下20cmの位置を0.3m/minのスピードで通過させて、塗膜をさらに硬化させ膜厚13μmの積層膜を得た。尚、積層膜の膜厚は、得られた製品の断面の微分干渉顕微鏡写真から測定して求めた。
この様にして形成した積層膜を有するステンレス板を2枚用意し、積層膜が内側になるように対向させ、周囲を軟質ポリ塩化ビニル製のガスケットで封じ、注型重合用の鋳型を作製した。この鋳型内に、重量平均分子量220000のMMA重合物20質量部とMMA単量体80質量部の混合物100質量部、AIBN0.05質量部、ジオクチルスルフォサクシネートのナトリウム塩0.005質量部からなる樹脂原料を注入し、対向するステンレス板の間隔を2.5mmに調整し、80℃の水浴中で1時間、次いで130℃の空気炉で1時間重合した。その後、冷却して、ステンレス板から、得られた樹脂板を剥離することにより、両面に積層膜、すなわち表面に硬化塗膜を、内部に帯電防止膜を有する板厚2mmのアクリル樹脂積層体を得た。
得られたアクリル樹脂積層体の全光線透過率は92%、ヘーズは0.2%であり、透明性に優れていた。さらに、異物による外観欠陥も無く、良好な外観を有するものであった。また、表面抵抗値は8×1013Ω/□であり、灰付着性試験を行った結果、灰は樹脂板表面に付着しなかった。擦傷後のヘーズ増分は0.0%であり、帯電防止性、耐擦傷性に優れるものであった。
[実施例2]
まず、実施例1と同様にして帯電防止膜付PETフィルムを得た。次いで、実施例1と同様にして紫外線硬化性塗料(A)を調製した。この紫外線硬化性塗料(A)に、相対して同一方向へ同一速度(2.5m/min)で走行する幅1200mm、厚さ1mmの鏡面仕上げしたステンレス(SUS304)製エンドレスベルトの下側のベルト上へ、実施例1と同様の方法で塗布し、ゴムロールを用いて帯電防止膜付PETフィルムを圧着させた。次いで、実施例1と同様の方法で紫外線硬化し、PETフィルムを剥離してステンレス製エンドレスベルト上に帯電防止膜と硬化塗膜からなる積層膜を得た。フィルム面の帯電防止膜は全て、硬化塗膜へ転写していた。次いで、実施例1と同様の方法で、前記塗膜をさらに硬化させた。図2にこれら工程を実施するための装置の断面図を示す。
以上のようにして片面に積層膜を形成したエンドレスベルトと、他のエンドレスベルトとを相対させ、その相対する面側の両端部において両エンドレスベルトと同一速度で走行する軟質ポリ塩化ビニル製ガスケットとで鋳型を構成し、2枚のエンドレスベルトの間隙をあらかじめ2.5mmの厚みになるように設定した。この型内に実施例1と同じ基材樹脂原料を一定流量で注入し、ベルトの移動と共に78℃の温水シャワーで30分間重合硬化させ、遠赤外線ヒーターで135℃の熱処理を20分間行い、送風により10分間かけて100℃に冷却し、エンドレスベルトから得られた樹脂板を剥離し、片方の表面に積層膜すなわち硬化被膜および帯電防止膜を有する板厚2mmのアクリル樹脂積層体を得た。
得られた樹脂板の全光線透過率は92%、ヘーズは0.2%であり、透明性に優れていた。さらに、異物による外観欠陥も無く、良好な外観を有するものであった。また、表面抵抗値は8×1013Ω/□であり、灰付着性試験を行った結果、灰は樹脂板表面に付着しなかった。擦傷後のヘーズ増分は0.0%であり、帯電防止性、耐擦傷性に優れるものであった。
本実施例の共重合物の重合平均分子量と評価結果を表1に示す。
Figure 0004818682
[実施例3〜8、比較例1〜4]
本製造例のn−OM、AIBNの添加量及び重合温度を表2のように変化させ、バインダー成分として用いる重合物の重量平均分子量の異なるビーズ状共重合物(B2、B3、B4、B5、B6、B7)を得た。重合物の種類、重量平均分子量を表1、3に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にしてアクリル樹脂積層体を製造し評価した。結果を表1、3に示す。
実施例3〜8では、重量平均分子量5000〜1000000の重合物を用いているので、良好な性能を有していた。
比較例1では、重合物の重量平均分子量が5000未満なので、注型重合時のモノマーによる過度な膨潤が発生し、導電性微粒子同士のネットワーク構造が破壊され、帯電防止性能が不良であった。比較例2では、重合物の重量平均分子量が1000000より大きいので、紫外線硬化性塗料(A)による帯電防止膜を構成する重合物の膨潤が不十分であり転写性が不良であった。比較例3では、重量平均分子量が5000未満の非重合物を使用しているため、白濁し外観が不良となった。比較例4では、PETフィルムに帯電防止層を形成せずに使用したため、硬化塗膜のみからなる樹脂積層体となり帯電防止性能が発現しなかった。
Figure 0004818682
Figure 0004818682
本発明によれば、型面を転写したものなので異物等による欠陥が無い優れた表面を有し、かつ十分な帯電防止性を示すと共に耐擦傷性および透明性にも優れた表面層(積層膜)を有する樹脂積層体を高い生産性で製造できる。
このような優れた樹脂積層体は、各種電気機器の銘板、間仕切り等の各種グレージング、CRT、液晶テレビ、プロジェクションテレビ等の各種ディスプレーの前面板、情報端末の液晶等情報表示部の前面板等に好適に使用できる。
本発明の方法に使用可能なベルト式連続キャスト製板装置を例示する模式的断面図である。 本発明の方法に使用可能な積層膜の形成装置を例示する模式的断面図である。
符号の説明
1、2 エンドレスベルト
3、4、5、6 主プーリ
7 キャリアロール
8 第一重合ゾーン
9 温水スプレー
10 第二重合ゾーン
11 冷却ゾーン
12 ガスケット
13 樹脂積層体の取り出し方向
14 重合性原料注入装置
15 帯電防止膜付PETフィルム
16 紫外線硬化性塗料(A)
17 ゴムロール
18 蛍光紫外線ランプ
19 高圧水銀灯
20 積層膜

Claims (3)

  1. 帯電防止成分と、重量平均分子量5000〜1000000の重合物とを含む帯電防止膜を少なくとも一表面に有するフィルムの該帯電防止膜を型側とし、紫外線硬化性塗料(A)を介在させて、前記フィルムを型に貼り付ける第1の工程、前記フィルムを介して紫外線を照射し、紫外線硬化性塗料(A)を硬化する第2の工程、型上に紫外線硬化性塗料(A)が硬化した塗膜および該塗膜上に積層された帯電防止膜を残して前記フィルムを剥がす第3の工程、紫外線硬化性塗料(A)が硬化した塗膜および該塗膜上に積層された帯電防止膜を有する前記型を用いて鋳型を作製する第4の工程、前記鋳型に樹脂原料を注入し注型重合を行う第5の工程、および、重合終了後、該重合により形成された樹脂成形体と、帯電防止膜と、硬化塗膜とが順次積層された樹脂積層体を鋳型から剥離する第6の工程、を含む樹脂積層体の製造方法。
  2. 帯電防止成分が導電性微粒子からなる請求項1に記載の樹脂積層体の製造方法。
  3. 樹脂成形体がアクリル系樹脂成形体である請求項1または2に記載の樹脂積層体の製造方法。
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