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JP4813577B2 - β型サイアロン蛍光体の製造方法 - Google Patents

β型サイアロン蛍光体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、青色発光ダイオード(青色LED(Light Emitting Diode))又は紫外発光ダイオード(紫外LED)を用いた白色発光ダイオード(白色LED)等を初めとするいろいろな発光装置に利用可能な蛍光体の製造方法に関する。
特許文献1には、青色から紫色の短波長の可視光を発光する半導体発光素子と蛍光体とを組み合わせることにより、半導体発光素子の発光と蛍光体により波長変換された光との混色により白色光を得る白色LEDが開示されている。
一方、蛍光体としては、母体材料にケイ酸塩、リン酸塩、アルミン酸塩、硫化物を用い、発光中心に遷移金属もしくは希土類金属を用いたものが広く知られている。
白色LEDの高出力化に伴い、蛍光体の耐熱性、耐久性に対する要求が益々高まっている。しかし、上述の従来公知の蛍光体を使用した場合、使用環境温度上昇に伴う蛍光体の輝度低下や、長時間青色光や紫外線の励起源に曝されることによる蛍光体の劣化に起因して、白色LEDとしての輝度低下や色ズレが発生するという問題が生じている。
温度上昇に伴う輝度低下が小さく、耐久性に優れた蛍光体として、最近、共有結合性の強い窒化物や酸窒化物母体材料とした蛍光体が注目されている。
窒化物、酸窒化物蛍光体の代表的なものとして、窒化ケイ素の固溶体であるサイアロンが挙げられる。窒化ケイ素と同様にサイアロンには、α型、β型の二種類の結晶系が存在する。例えば、発光中心として二価のEuイオンを付活したα型サイアロンは、紫外〜青色の幅広い波長域で励起され、発光ピーク波長が550〜600nmの黄色光を発する蛍光体となることが報告されている(特許文献2)。
また、β型サイアロンにおいても、発光中心として、Mn、Ce、Euを添加することにより、蛍光特性を発現することが見出されている(特許文献3)。
β型サイアロンは、β型窒化ケイ素の固溶体であり、β型窒化ケイ素結晶のSi位置にAlが、N位置にOが置換固溶したものである。単位胞(単位格子)に2式量の原子が存在するので、一般式はSi6−zAl8−zと表される。ここで、組成zは0〜4.2であり、固溶範囲は非常に広く、また(Si、Al)/(N、O)のモル比は、3/4を維持する必要がある。一般的に、窒化ケイ素の他に、酸化ケイ素と窒化アルミニウムとを、或いは酸化アルミニウムと窒化アルミニウムとを加えて加熱することでβ型サイアロンが得られる。
β型サイアロンの結晶内にEu2+を含有させると、紫外から青色の光で励起され、520〜550nmの緑色発光を示す蛍光体となり、白色LED等の発光装置の緑色発光成分として使用できる。このEu2+付活β型サイアロンは、Eu2+で付活される蛍光体の中でも、発光スペクトルは比較的シャープであり、特に青、緑、赤の狭帯域発光が要求される液晶ディスプレイパネルのバックライト光源の緑色発光成分に好適な蛍光体である。
高温での焼成により合成されたβ型サイアロン蛍光体は、所定の条件での熱処理及び酸処理等の組み合わせた後処理により、結晶欠陥を低減でき、蛍光特性を著しく向上することが報告されている(特許文献4)。しかしながら、この場合は発光効率の向上に伴い、蛍光ピークの長波長化やブロード化が起こる。
特許文献5では、β型サイアロン結晶内の酸素固溶量を減らすことにより、蛍光発光が狭帯域化することが報告されており、酸素固溶量の低いβ型サイアロンを合成する方法として、構成元素の金属粉末を窒化する方法や窒化物、酸化物原料を還元窒化雰囲気で加熱する方法が挙げられている。しかしながら、この場合はβ型サイアロン蛍光体の発光効率が極めて低く、実用に供することに難がある。
特許第2927279号公報 特許第3668770号公報 特開2005−255895号公報 国際公開第2008/062781号パンフレット 国際公開第2007/066733号パンフレット
従来のEu付活β型サイアロン蛍光体は、蛍光発光効率とスペクトル幅にトレードオフの関係があり、それを用いた白色LEDは、狭帯域化した場合には十分な輝度が得られず、また発光効率を高めた場合には色再現範囲が狭くなり、特に液晶ディスプレイのバックライト光源等の用途において、実用に供することに難がある。
本発明は、上述の課題に鑑み、高蛍光発光効率で蛍光ピーク波長が短く、狭帯域発光を実現できるEu付活β型サイアロン蛍光体の製造方法を提供することを目的としている。
本発明者は、β型サイアロンのz値、結晶構造、組成及び蛍光特性について鋭意研究を重ねた結果、β型サイアロンの結晶格子サイズからz値だけでなく、結晶内のEu2+固溶量の大小を推定できることを見い出した。その結果、従来の方法で製造されたβ型サイアロン蛍光体はz値が低くなると、実際にβ型サイアロン結晶に固溶するEu2+量が減少し、発光効率が低くなることを見い出した。更に、β型サイアロンの主原料である窒化ケイ素粉末の結晶系や不純物の適正化及び合成した蛍光体を所定の条件で後処理することにより、低いz値においてもEu2+固溶量を増大させ、高い発光効率を維持し、狭帯域化発光を実現できるとの知見を得て、本発明に至ったものである。
本発明は、β型サイアロン蛍光体の製造方法であり、この製造方法は、一般式:Si6−zAl8−zで示されるβ型サイアロンが母体材料であり、発光中心としてEu2+を固溶したβサイアロン蛍光体の製造方法であって、Alを含有する窒化ケイ素粉末と、Euを含有する無機化合物とを含む原料混合粉末を窒素雰囲気中、1850〜2050℃の温度範囲で焼成する焼成工程と、焼成工程後に、希ガス雰囲気中、1300〜1500℃×1〜100時間保持する熱処理工程と、60℃以上のフッ化水素酸と硝酸の混酸内に0.5時間以上浸けられる酸処理工程を有するβ型サイアロン蛍光体の製造方法である。
本製造方法にあっては、窒化ケイ素粉末を、金属シリコン窒化法により合成した第一遷移金属含有量が10ppm以下であり、かつ、Alを0.1〜2wt%含有したものであることが好ましい。
本製造方法にあっては、窒化ケイ素粉末を、β率50%以上であり、金属シリコン含有量10質量%以下とすることが好ましい。
本発明の製造方法によって得られた蛍光体は、紫外線から可視光の幅広い波長域で励起され、高蛍光発光効率で狭帯域の緑色発光し、緑色の蛍光体として優れている。この蛍光体は、使用環境の変化に対する輝度変化が少なく、単独もしくは他の蛍光体と組み合わせて種々の発光素子、特に紫外LEDと青色LEDを光源とする白色LEDに使用できる。
実施例1〜3及び比較例2における波長455nmの外部励起光による蛍光スペクトルを示す図
次に、本発明の蛍光体を得る製造方法について説明する。
本発明に係るβ型サイアロン蛍光体の製造方法では、金属ケイ素窒化法により合成されたβ型サイアロン結晶のz値に応じたAlを含有する窒化ケイ素粉末を用いることが好ましい。本発明の窒化ケイ素粉末は、Si、Al、N以外の不純物元素を極力減らすことが好ましく、特に第一遷移金属含有量を10ppm以下にすることが好ましい。低z組成のβ型サイアロンにおいて、過剰な酸素は異相の生成を促進することから、窒化ケイ素原料の不純物酸素量の低減も必要となる。この様な観点から、高純度で且つ不純物酸素量の少ないシリコン粉末の直接窒化により得られる窒化ケイ素原料粉末が好ましい。直接窒化法による窒化ケイ素粉末は公知の方法により合成される。例えば、シリコン粉末を窒素含有雰囲気において、1200℃以上の温度で加熱し、窒化させた後、得られた窒化物を解砕、粉砕、分級や酸処理等の粉体化工程を経て窒化ケイ素粉末を作製することができる。従来の直接窒化法により得られる窒化ケイ素粉末は、多くが焼結用に用いられるため、平均粒径がサブミクロン〜数ミクロンの微粉であるが、本発明の蛍光体用途では、必ずしも微粉である必要はなく、平均粒径は5〜100μm程度で構わなく、むしろ過度の粉砕などによる粉体化工程での不純物混入を極力抑制することが肝要である。
更に、本発明の製造方法によって得られる蛍光体におけるβ型サイアロンはAl固溶量が少ないことから、シリコン粉末の窒化段階で所定量のAlを含有させておくことで、最終的な焼成工程で少量のAlが均一に固溶した、つまり組成が均一な固溶体となる。Alの添加方法は、アルミニウム粉末や窒化アルミニウム粉末及び酸化アルミニウム粉末などを直接窒化前のケイ素粉末に添加する方法や直接窒化原料として、ケイ素とアルミニウムの合金粉末を使用する方法などが挙げられる。蛍光体原料であるAl含有窒化ケイ素粉末におけるAlの存在形態に関しては、均一に分散していれば窒化ケイ素に固溶していない異相として存在していても構わない。本発明の窒化ケイ素粉末におけるAl含有量に関しては、最終的に得られるβサイアロン格子定数を前記範囲内とするために、0.5〜2質量%とすることが好ましい。
本発明の窒化ケイ素粉末では、未反応のシリコンが10質量%以下であれば残存していても構わない。遊離シリコンが10質量%を越えると、蛍光体を合成する高温での処理でもシリコンが残存してしまう。シリコンは紫外〜可視の幅広い波長域の光を吸収するため、蛍光体中に存在すると輝度を大幅に低下させてしまう。
本発明者の検討によれば、本発明の窒化ケイ素粉末は、二種類存在する結晶系(α、β)のうち、β相含有量の比率(β率=β量/(α量+β量))を高めることにより、β型サイアロン合成時にEu2+をβ型サイアロン結晶内に効果的に固溶させることができることから、β率は50%以上であることが好ましい。
β率を高めることにより、Eu2+の固溶を促進できる理由は、次の通りと考える。
Eu2+のβ型サイアロン結晶内への固溶は、蛍光体合成工程の高温下で、原料中に微量存在する酸化物を主成分とする液相を介したβ型サイアロンの粒成長に付随して進行する。窒化ケイ素のα相はこの液相への溶解速度がβ相に比べ、著しく大きく、粒成長速度が速い。元来、Eu2+はβ型サイアロン結晶内には固溶しがたく、粒成長速度が速すぎると、十分に固溶できないと考えられる。そこで、β相の比率を高め、粒成長速度を下げることにより、Eu2+の固溶を促進することができたと考えられる。
本発明の製造方法によって得られるβ型サイアロン蛍光体は、上述のAl含有窒化ケイ素粉末とEuを含有する化合物とからなる原料混合粉末を窒素雰囲気中で加熱することにより合成される。加熱温度については、1850〜2050℃の範囲が好ましい。加熱温度が1850℃以上であればEu2+がβ型サイアロン結晶中に入り込むことができ、十分な輝度を有する蛍光体が得られる。また、加熱温度が2050℃以下であれば、非常に高い窒素圧力をかけてβ型サイアロンの分解を抑制する必要がなく、その為に特殊な装置を必要とすることもないので工業的に好ましい。
β型サイアロン蛍光体を製造した際、その合成物は粒状又は塊状となる。これを解砕、粉砕及び/又は分級操作と組み合わせて所定のサイズの粉末にする。LED用の蛍光体として好適に使用するためには、上述の通り、所定のD10、D90にする必要がある。
具体的な処理例としては、合成物を目開き20〜45μmの篩分級処理し、篩を通過した粉末を得る方法、或いは合成物をボールミルや振動ミル、ジェットミル等の一般的な粉砕機を使用して所定の粒度に粉砕する方法が挙げられる。後者の方法において、過度の粉砕は、光を散乱しやすい微粒子を生成するだけでなく、粒子表面に結晶欠陥を生成し、発光効率の低下を引き起こす。本発明者らの検討によれば、粉砕処理を行わずに篩分級のみによる処理及びジェットミル粉砕機による解砕処理により得られた粉末が最終的に高い発光効率を示した。
上述の方法により得られた蛍光体を更に、次の処理を行うことにより、蛍光特性が向上する。
即ち、上述の方法により得られたβ型サイアロン蛍光体を希ガス雰囲気中で熱処理した後、フッ化水素酸と硝酸の混酸で加熱処理する。本発明者の検討によれば、蛍光体の熱処理は、蛍光体中の低結晶性部分を更に不安定にするために行うためであり、その構成元素である窒素と酸素を極力含まない雰囲気が有効であり、希ガス雰囲気が選択される。熱処理は不安定化相を生成するのみであり、この相を除去することにより蛍光特性が著しく向上する。熱処理温度は、1300〜1500℃の範囲が好ましい。1300℃以上であれば、低結晶性部の不安定化が可能であり、1500℃以下であれば、β型サイアロンの分解を抑制できる。不安定化相の除去は、酸やアルカリによる溶解除去など公知の技術を採用することができる。中でもフッ素水素酸と硝酸の混合物により60℃以上で5分以上加熱して行う溶解処理が効果的で好ましい。
本発明の製造方法によって得られるβ型サイアロン蛍光体は、発光光源と蛍光体から構成される発光装置に使用され、特に240〜480nmの波長を含有している紫外光や可視光を励起源として照射することにより、緑色の狭帯化発光するので、紫外LED又は青色LEDと、必要に応じて赤色蛍光体及び/又は青色蛍光体と組み合わせることで、容易に白色光が得られる。
また、β型サイアロン蛍光体は高温での輝度低下が少ないので、これを用いた発光装置はその輝度低下及び色度ズレが小さく、高温にさらしても劣化せず、更に耐熱性に優れており酸化雰囲気及び水分環境下における長期間の安定性にも優れているので、これらを反映して当該発光装置が高輝度で長寿命になるという特徴を有する。
次に、実施例を、表、図を用いつつ、比較例と比較しながら詳細に説明する。図1は、実施例1〜3及び比較例2の励起波長が455nmの場合の蛍光スペクトルを示したグラフ図である。
<Al含有窒化ケイ素粉末の合成及び評価>
高純度化学社製シリコン粉末(純度99.999%以上、−75μm)98.81質量%とトクヤマ社製窒化アルミニウム粉末(Eグレード)1.19質量%を、V型混合機(筒井理化学器械社製「S−3」)を用い混合し、更に目開き250μmの篩を全通させ凝集を取り除き、原料混合粉末を得た。
原料混合粉末を直径60mm×高さ30mmの蓋付きの円筒型窒化ホウ素製容器(電気化学工業社製、「N−1」グレード)に充填し、カーボンヒーターの電気炉で0.5MPaの加圧窒素雰囲気中、1500℃で8時間の加熱処理を行った。加熱処理の際の加熱時の昇温速度は、室温〜1200℃を20℃/分で、1200〜1500℃を0.5℃/分とした。
得られた生成物は塊状であり、これを高速スタンプミル(日陶科学社製、ANS−143PL、うす及びハンマーはアルミナ製)により粉砕した。粉砕した粉末を目開き45μmの篩で分級し、45μm以下の粉末を蛍光体合成用の窒化ケイ素粉末とした。尚、目開き45μmの篩通過率は約40%であった。
得られた窒化ケイ素粉末は、X線回折装置(株式会社リガク製、ULTIMA IV)を用い、粉末X線回折測定(XRD)を行った。存在する結晶相は、β型窒化ケイ素、α型窒化ケイ素及び金属シリコンの三相であった。得られた粉末X線回折パターンを株式会社リガク製解析プログラムJADEにより、リートベルト解析を行った結果、β率(窒化ケイ素結晶中のβ相の示す割合)が90.2%で金属シリコンが0.8質量%であった。
次いで、Al含有量に関しては、アルカリ融解法により、不純物含有量に関しては加圧酸分解法により粉末を溶解させた後、ICP発光分光分析装置(株式会社リガク製、CIROS−120)により、分析を行った。この粉末のAl含有量は0.52質量%であり、第一遷移金属含有量は8ppmであった。
<β型サイアロン蛍光体の合成及び評価>
前記Al含有窒化ケイ素粉末98.03質量%と信越化学工業社製酸化ユーロピウム粉末(RUグレード)1.97質量%をアルミナ乳鉢により乾式混合し、更に目開き250μmの篩を全通させ、β型サイアロン蛍光体用原料混合粉末を得た。この原料混合粉末を直径60mm×高さ30mmの蓋付きの円筒型窒化ホウ素製容器(電気化学工業株式会社製、「N−1」グレード)に充填し、カーボンヒーターの電気炉で0.8MPaの加圧窒素雰囲気中、2000℃で8時間の加熱処理を行った。得られた生成物は緑色の緩く凝集した塊状物であり、清浄なゴム手袋を着用した人手で軽く解すことが出来た。こうして、軽度の解砕を行った後、目開き45μmの篩を通過させた。この状態での目開き45μmの篩通過率は約90%であった。
上記粉末を直径60mm×高さ30mmの蓋付きの円筒型窒化ホウ素製容器(電気化学工業株式会社製、「N−1」グレード)に充填し、カーボンヒーターの電気炉で大気圧アルゴン雰囲気中、1400℃で8時間の加熱処理を行った。得られた粉末の色は処理前の緑色から深緑色へ変化した。得られた粉末は、焼結等に伴う収縮は全くなく、目開き45μmの篩を全て通過した。こうして得られた粉末を50%フッ化水素酸と70%硝酸の1:1混酸中、75℃での加熱処理を行った。処理中に懸濁液は深緑色から鮮やかな緑色に変化した。その後、ろ過、水洗及び乾燥して蛍光体粉末を得た。
この蛍光体に対して、XRD測定を行った結果、結晶相はβ型サイアロン単相であった。β型サイアロンの格子定数は、a=0.7608nm、c=0.2908nmであった。ICP発光分光分析法により求めたAl及びEu含有量は、それぞれ0.49、0.77質量%であり、第一遷移金属含有量は5ppm未満であった。
次に、粒度分布測定装置(ベックマン・コールター株式会社製、LS−230型)を用い、レーザー回折・散乱法による粒子径分布測定を行った結果、体積基準の積算分率における10%径(D10)は6.7μm、90%径(D90)は38.4μmであった。この粒子径分布測定用試料の調整は、原則JIS R 1629−1997解説付表1の窒化けい素の測定条件に従った。
蛍光体の発光特性は次の様に評価した。蛍光体粉末を凹型のセルを表面が平滑になる様に充填し、積分球を取り付けた。この積分球に、発光光源(Xeランプ)から所定の波長に分光した単色光を、光ファイバーを用いて導入した。この単色光を励起源として、蛍光体試料に照射し、分光光度計(大塚電子社製、MCPD−7000)を用いて、試料の蛍光及び反射光のスペクトル測定を行った。本実施例では、単色光は、波長405nmの近紫外光と波長455nmの青色光を用いた。
得られた蛍光スペクトルにおいて、励起波長が405nm及び455nmに対して、それぞれ415〜780nm及び465〜780nm範囲の波長域のデータからJIS Z 8724に準じた方法で、JIS Z 8701で規定されるXYZ表色系における色度座標CIExとCIEyを算出した。励起波長405nmの場合の色度CIEx、CIEyはそれぞれ0.312、0.655で、励起波長455nmの場合の色度CIEx、CIEyはそれぞれ0.318、0.651であった。
発光効率は次の様にして求めた。まず試料部に反射率が99%の標準反射板(Labsphere社製、スペクトラロン)をセットし、励起光のスペクトルを測定し、励起波長が405nmの場合は、400〜415nmの波長範囲で、励起波長が455nmの場合は450〜465nmの波長範囲のスペクトルから励起光フォトン数(Qex)を算出した。次いで、試料部に蛍光体をセットし、得られたスペクトルデータから励起反射光フォトン数(Qref)及び蛍光フォトン数(Qem)を算出した。尚、励起反射光フォトン数は、励起光フォトン数と同じ波長範囲で、蛍光フォトン数は、励起波長が405nmの場合は、415〜800nmの波長範囲で、励起光が455nmの場合は、465〜800nmの範囲で算出した。得られた三種類のフォトン数から外部量子効率(=Qem/Qex×100)、吸収率(=(Qex−Qref)×100)、内部量子効率(=Qem/(Qex−Qref)×100)を求めた。波長405nmの近紫外光で励起した場合の、吸収率、内部量子効率、外部量子効率はそれぞれ83.2%、59.2%、49.3%であり、波長455nmの青色光で励起した場合は、それぞれ73.1%、56.6%、41.3%であった。
〔比較例1〕
宇部興産社製α型窒化ケイ素粉末(SN−E10グレード)、トクヤマ社製窒化アルミニウム粉末(Fグレード)と信越化学工業社製酸化ユーロピウム粉末(RUグレード)を実施例1の蛍光体とSi:Al:Eu比が同一になる配合とし、実施例1と同様の方法によりβ型サイアロン合成した。得られた生成物は、緑色の硬い凝集塊であり、その表面に赤褐色の析出物が生じていた。この生成物は比較例1の場合の様に軽度な解砕での粉体化は困難であった。そこでアルミナ乳鉢により、目開き150μmの篩を全通するまで粉砕し、それを更に目開き45μmの篩で分級した。篩を通過した粉末を実施例1と同様な方法で加熱処理及び酸処理を行い、β型サイアロン蛍光体を得た。
この蛍光体に対して、XRD測定を行った結果、結晶相はβ型サイアロン単相であった。β型サイアロンの格子定数は、a=0.7604nm、c=0.2909nmであった。ICP発光分光分析法により求めたAl及びEu含有量は、それぞれ0.46、0.22質量%であり、第一遷移金属含有量は5ppm未満であった。実施例1に比べ、特にEu含有率が共に低下した。
この蛍光体に対して、粒子径分布測定を行った結果、体積基準の積算分率における10%径(D10)は4.3μm、90%径(D90)は43.3μmであった。
この蛍光体の波長405nmの近紫外光で励起した場合の、吸収率、内部量子効率、外部量子効率、CIEx及びCIEyはそれぞれ56.4%、69.5%、39.2%、0.304、0.655で、波長455nmの青色光で励起した場合が45.1%、68.4%、30.9%、0.314、0.650であった。実施例1に比べ、β型サイアロンに固溶しているEu量が少なく、吸収率が低いために外部量子効率が低くなった。
〔実施例2〜4、比較例2〜4〕
シリコン粉末と窒化アルミニウム粉末の混合比及び原料ケイ素粉末の純度、更に窒化ケイ素合成温度を表1に示す様にした以外は、実施例1と同様の方法により、窒化ケイ素粉末の合成及びβ型サイアロンの焼成及び後処理(加熱処理及び酸処理)を行い、β型サイアロン蛍光体を得た。尚、実施例3、4及び比較例3では、酸化アルミニウム粉末も添加し、β型サイアロン結晶の酸素量を調整した。
表1には、窒化ケイ素粉末のXRDにより算出したβ率、金属シリコン量及びICPにより求めたAl含有量及び第一遷移金属含有量を示した。表2には得られたβ型サイアロン蛍光体の格子定数、組成、不純物含有量及び粒度分布を示し、表3には励起波長を示した。
実施例1〜3及び比較例3を比べると、窒化ケイ素原料粉末中のAl量の増加とともに、β型サイアロン蛍光体の格子定数cが増大するとともに、図1に示す様に蛍光スペクトルが広がり、色度が赤色側にシフトすることが分かった。
比較例4で示されるように、第一遷移金属不純物量が多い原料粉末を使用した場合、あるいは比較例5の様に金属シリコンが多い窒化ケイ素原料を使用した場合にあっては、酸処理等の高純度化処理を行っても、蛍光体中にある程度第一遷移金属不純物や金属シリコンが残留し、発光特性を低下させることが分かった。
得られた蛍光体の結晶相は、表1に示すように、XRD測定の結果、比較例4で若干量の金属シリコンが検出された以外は、β型サイアロン相のみであった。
本発明の製造方法によって得られるβ型サイアロン蛍光体は、紫外から青色光の幅広い波長で励起され、高輝度かつ狭帯化された緑色発光を示すことから、青色又は紫外光を光源とする白色LEDの蛍光体として好適に使用できるものであり、特に、画像表示装置に好適に使用できる。
更に、本発明の製造方法によって得られる蛍光体は、高温での輝度低下が少なく、また耐熱性や耐湿性に優れることから、上述の画像表示装置分野に適用すれば、使用環境温度の変化に対する輝度および発光色の変化が小さく、長期間の安定性にも優れる特性が発揮できる。

Claims (3)

  1. 一般式:Si 6−z Al 8−z で示されるβ型サイアロンが母体材料であり、発光中心としてEu 2+ を固溶したβサイアロン蛍光体の製造方法であって、Alを含有する窒化ケイ素粉末と、Euを含有する無機化合物とを含む原料混合粉末を窒素雰囲気中、1850〜2050℃の温度範囲で焼成する焼成工程と、焼成工程後に、希ガス雰囲気中、1300〜1500℃×1〜100時間保持する熱処理工程と、60℃以上のフッ化水素酸と硝酸の混酸内に0.5時間以上浸けられる酸処理工程を有するβ型サイアロン蛍光体の製造方法。
  2. 窒化ケイ素粉末が、金属シリコン窒化法により合成した第一遷移金属含有量が10ppm以下であり、かつ、Alを0.1〜2wt%含有した窒化ケイ素粉末である請求項1記載のβ型サイアロン蛍光体の製造方法。
  3. 窒化ケイ素粉末が、β率50%以上であり、金属シリコン含有量10質量%以下であることを特徴とする請求項1記載のβ型サイアロン蛍光体の製造方法。
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