以下、添付図を参照して本発明の好適な実施形態を説明する。
図1に、本発明の塗布方法および塗布装置の適用可能な構成例としての塗布現像処理システムを示す。この塗布現像処理システムは、クリーンルーム内に設置され、たとえばLCD基板を被処理基板とし、LCD製造プロセスにおいてフォトリソグラフィー工程の中の洗浄、レジスト塗布、プリベーク、現像およびポストベークの各処理を行うものである。露光処理は、このシステムに隣接して設置される外部の露光装置(図示せず)で行われる。
この塗布現像処理システムは、大きく分けて、カセットステーション(C/S)10と、プロセスステーション(P/S)12と、インタフェース部(I/F)14とで構成される。
システムの一端部に設置されるカセットステーション(C/S)10は、複数の基板Gを収容するカセットCを所定数たとえば4個まで載置可能なカセットステージ16と、このカセットステージ16上の側方でかつカセットCの配列方向と平行に設けられた搬送路17と、この搬送路17上で移動自在でステージ16上のカセットCについて基板Gの出し入れを行う搬送機構20とを備えている。この搬送機構20は、基板Gを保持できる手段たとえば搬送アームを有し、X,Y,Z,θの4軸で動作可能であり、後述するプロセスステーション(P/S)12側の搬送装置38と基板Gの受け渡しを行えるようになっている。
プロセスステーション(P/S)12は、上記カセットステーション(C/S)10側から順に洗浄プロセス部22と、塗布プロセス部24と、現像プロセス部26とを基板中継部23、薬液供給ユニット25およびスペース27を介して(挟んで)横一列に設けている。
洗浄プロセス部22は、2つのスクラバ洗浄ユニット(SCR)28と、上下2段の紫外線照射/冷却ユニット(UV/COL)30と、加熱ユニット(HP)32と、冷却ユニット(COL)34とを含んでいる。
塗布プロセス部24は、スピンレス方式のレジスト塗布ユニット(CT)40と、減圧乾燥ユニット(VD)42と、上下2段型アドヒージョン/冷却ユニット(AD/COL)46と、上下2段型加熱/冷却ユニット(HP/COL)48と、加熱ユニット(HP)50とを含んでいる。
現像プロセス部26は、3つの現像ユニット(DEV)52と、2つの上下2段型加熱/冷却ユニット(HP/COL)53と、加熱ユニット(HP)55とを含んでいる。
各プロセス部22,24,26の中央部には長手方向に搬送路36,51,58が設けられ、搬送装置38,54,60がそれぞれ搬送路36,51,58に沿って移動して各プロセス部内の各ユニットにアクセスし、基板Gの搬入/搬出または搬送を行うようになっている。なお、このシステムでは、各プロセス部22,24,26において、搬送路36,51,58の一方の側に液処理系のユニット(SCR,CT,DEV等)が配置され、他方の側に熱処理系のユニット(HP,COL等)が配置されている。
システムの他端部に設置されるインタフェース部(I/F)14は、プロセスステーション12と隣接する側にイクステンション(基板受け渡し部)56およびバッファステージ57を設け、露光装置と隣接する側に搬送機構59を設けている。この搬送機構59は、Y方向に延在する搬送路19上で移動自在であり、バッファステージ57に対して基板Gの出し入れを行なうほか、イクステンション(基板受け渡し部)56や隣の露光装置と基板Gの受け渡しを行うようになっている。
図2に、この塗布現像処理システムにおける処理の手順を示す。先ず、カセットステーション(C/S)10において、搬送機構20が、カセットステージ16上の所定のカセットCの中から1つの基板Gを取り出し、プロセスステーション(P/S)12の洗浄プロセス部22の搬送装置38に渡す(ステップS1)。
洗浄プロセス部22において、基板Gは、先ず紫外線照射/冷却ユニット(UV/COL)30に順次搬入され、最初の紫外線照射ユニット(UV)では紫外線照射による乾式洗浄を施され、次の冷却ユニット(COL)では所定温度まで冷却される(ステップS2)。この紫外線洗浄では主として基板表面の有機物が除去される。
次に、基板Gはスクラバ洗浄ユニット(SCR)28の1つでスクラビング洗浄処理を受け、基板表面から粒子状の汚れが除去される(ステップS3)。スクラビング洗浄の後、基板Gは、加熱ユニット(HP)32で加熱による脱水処理を受け(ステップS4)、次いで冷却ユニット(COL)34で一定の基板温度まで冷却される(ステップS5)。これで洗浄プロセス部22における前処理が終了し、基板Gは、搬送装置38により基板受け渡し部23を介して塗布プロセス部24へ搬送される。
塗布プロセス部24において、基板Gは、先ずアドヒージョン/冷却ユニット(AD/COL)46に順次搬入され、最初のアドヒージョンユニット(AD)では疎水化処理(HMDS)を受け(ステップS6)、次の冷却ユニット(COL)で一定の基板温度まで冷却される(ステップS7)。
その後、基板Gは、レジスト塗布ユニット(CT)40でスピンレス法によりレジスト液を塗布され、次いで減圧乾燥ユニット(VD)42で減圧による乾燥処理を受ける(ステップS8)。
次に、基板Gは、加熱/冷却ユニット(HP/COL)48に順次搬入され、最初の加熱ユニット(HP)では塗布後のベーキング(プリベーク)が行われ(ステップS9)、次に冷却ユニット(COL)で一定の基板温度まで冷却される(ステップS10)。なお、この塗布後のベーキングに加熱ユニット(HP)50を用いることもできる。
上記塗布処理の後、基板Gは、塗布プロセス部24の搬送装置54と現像プロセス部26の搬送装置60とによってインタフェース部(I/F)14へ搬送され、そこから露光装置に渡される(ステップS11)。露光装置では基板G上のレジストに所定の回路パターンを露光される。そして、パターン露光を終えた基板Gは、露光装置からインタフェース部(I/F)14に戻される。インタフェース部(I/F)14の搬送機構59は、露光装置から受け取った基板Gをイクステンション56を介してプロセスステーション(P/S)12の現像プロセス部26に渡す(ステップS11)。
現像プロセス部26において、基板Gは、現像ユニット(DEV)52のいずれか1つで現像処理を受け(ステップS12)、次いで加熱/冷却ユニット(HP/COL)53の1つに順次搬入され、最初の加熱ユニット(HP)ではポストベーキングが行われ(ステップS13)、次に冷却ユニット(COL)で一定の基板温度まで冷却される(ステップS14)。このポストベーキングに加熱ユニット(HP)55を用いることもできる。
現像プロセス部26での一連の処理が済んだ基板Gは、プロセスステーション(P/S)24内の搬送装置60,54,38によりカセットステーション(C/S)10まで戻され、そこで搬送機構20によりいずれか1つのカセットCに収容される(ステップS1)。
この塗布現像処理システムにおいては、たとえば塗布プロセス部24のレジスト塗布ユニット(CT)40に本発明を適用することができる。以下、図3〜図25につき本発明をレジスト塗布ユニット(CT)40に適用した一実施形態を説明する。
図3に、この実施形態におけるレジスト塗布ユニット(CT)40および減圧乾燥ユニット(VD)42の全体構成を示す。
図3に示すように、支持台または支持フレーム70の上にレジスト塗布ユニット(CT)40と減圧乾燥ユニット(VD)42とがX方向に横一列に配置されている。塗布処理を受けるべき新たな基板Gは、搬送路51側の搬送装置54(図1)により矢印FAで示すようにレジスト塗布ユニット(CT)40に搬入される。レジスト塗布ユニット(CT)40で塗布処理の済んだ基板Gは、支持台70上のガイドレール72に案内されるX方向に移動可能な搬送アーム74により、矢印FBで示すように減圧乾燥ユニット(VD)42に転送される。減圧乾燥ユニット(VD)42で乾燥処理を終えた基板Gは、搬送路51側の搬送装置54(図1)により矢印FCで示すように引き取られる。
レジスト塗布ユニット(CT)40は、X方向に長く延びるステージ76を有し、このステージ76上で基板Gを同方向に平流しで搬送しながら、ステージ76の上方に配置された長尺形のレジストノズル78より基板G上にレジスト液を供給して、スピンレス法で基板上面(被処理面)に一定膜厚のレジスト塗布膜を形成するように構成されている。ユニット(CT)40内の各部の構成および作用は後に詳述する。
減圧乾燥ユニット(VD)42は、上面が開口しているトレーまたは底浅容器型の下部チャンバ80と、この下部チャンバ80の上面に気密に密着または嵌合可能に構成された蓋状の上部チャンバ(図示せず)とを有している。下部チャンバ80はほぼ四角形で、中心部には基板Gを水平に載置して支持するためのステージ82が配設され、底面の四隅には排気口83が設けられている。各排気口83は排気管(図示せず)を介して真空ポンプ(図示せず)に通じている。下部チャンバ80に上部チャンバを被せた状態で、両チャンバ内の密閉された処理空間を該真空ポンプにより所定の真空度まで減圧できるようになっている。
図4および図5に、本発明の一実施形態におけるレジスト塗布ユニット(CT)40内のより詳細な全体構成を示す。
この実施形態のレジスト塗布ユニット(CT)40においては、ステージ76が、従来のように基板Gを固定保持する載置台として機能するのではなく、基板Gを空気圧の力で空中に浮かせるための基板浮上台として機能する。そして、ステージ76の両サイドに配置されている直進運動型の基板搬送部84が、ステージ76上で浮いている基板Gの両側縁部をそれぞれ着脱可能に保持してステージ長手方向(X方向)に基板Gを搬送するようになっている。
詳細には、ステージ76は、その長手方向(X方向)において5つの領域M1,M2,M3,M4,M5に分割されている(図5)。左端の領域M1は搬入領域であり、塗布処理を受けるべき新規の基板Gはこの領域M1内の所定位置に搬入される。この搬入領域M1には、搬送装置54(図1)の搬送アームから基板Gを受け取ってステージ76上にローディングするためにステージ下方の原位置とステージ上方の往動位置との間で昇降移動可能な複数本のリフトピン86が所定の間隔を置いて設けられている。これらのリフトピン86は、たとえばエアシリンダ(図示せず)を駆動源に用いる搬入用のリフトピン昇降部85(図14)によって昇降駆動される。
この搬入領域M1は浮上式の基板搬送が開始される領域でもあり、この領域内のステージ上面には基板Gを搬入用の浮上高さまたは浮上量Haで浮かせるために高圧または正圧の圧縮空気を噴き出す噴出口88が一定の密度で多数設けられている。ここで、搬入領域M1における基板Gの浮上量Haは、特に高い精度を必要とせず、たとえば250〜350μmの範囲内に保たれればよい。また、搬送方向(X方向)において、搬入領域M1のサイズは基板Gのサイズを上回っているのが好ましい。さらに搬入領域M1には、基板Gをステージ76上で位置合わせするためのアライメント部(図示せず)も設けられてよい。
ステージ76の中心部に設定された領域M3はレジスト液供給領域または塗布領域であり、基板Gはこの塗布領域M3を通過する際に上方のレジストノズル78からレジスト液Rの供給を受ける。塗布領域M3における基板浮上量Hbはノズル78の下端(吐出口)と基板上面(被処理面)との間の塗布ギャップS(たとえば240μm)を規定する。この塗布ギャップSはレジスト塗布膜の膜厚やレジスト消費量を左右する重要なパラメータであり、高い精度で一定に維持される必要がある。このことから、塗布領域M3のステージ上面には、たとえば図6に示すような配列または分布パターンで、基板Gを所望の浮上量Hbで浮かせるために高圧または正圧の圧縮空気を噴き出す噴出口88と負圧で空気を吸い込む吸引口90とを混在させて設けている。そして、基板Gの塗布領域M3内を通過している部分に対して、噴出口88から圧縮空気による垂直上向きの力を加えると同時に、吸引口90より負圧吸引力による垂直下向きの力を加えて、相対抗する双方向の力のバランスを制御することで、塗布用の浮上量Hbを設定値HS(たとえば50μm)付近に維持するようにしている。搬送方向(X方向)における塗布領域M3のサイズは、レジストノズル78直下に上記のような狭い塗布ギャップSを安定に形成できるほどの余裕があればよく、通常は基板Gのサイズよりも小さくてよく、たとえば1/3〜1/4程度でよい。
図6に示すように、塗布領域M3においては、基板搬送方向(X方向)に対して一定の傾斜した角度をなす直線C上に噴出口88と吸引口90とを交互に配し、隣接する各列の間で直線C上のピッチに適当なオフセットαを設けている。かかる配置パターンによれば、噴出口88および吸引口90の混在密度を均一にしてステージ上の基板浮上力を均一化できるだけでなく、基板Gが搬送方向(X方向)に移動する際に噴出口88および吸引口90と対向する時間の割合を基板各部で均一化することも可能であり、これによって基板G上に形成される塗布膜に噴出口88または吸引口90のトレースまたは転写跡が付くのを防止することができる。塗布領域M3の入口では、基板Gの先端部が搬送方向と直交する方向(Y方向)で均一な浮上力を安定に受けるように、同方向(直線J上)に配列する噴出口88および吸引口90の密度を高くするのが好ましい。また、塗布領域M3においても、ステージ76の両側縁部(直線K上)には、基板Gの両側縁部が垂れるのを防止するために、噴出口88のみを配置するのが好ましい。
再び図5において、搬入領域M1と塗布領域M3との間に設定された中間の領域M2は、搬送中に基板Gの浮上高さ位置を搬入領域M1における浮上量Haから塗布領域M3における浮上量Hbへ変化または遷移させるための遷移領域である。この遷移領域M2内でもステージ76の上面に噴出口88と吸引口90とを混在させて配置することができる。その場合は、吸引口90の密度を搬送方向に沿って次第に大きくし、これによって搬送中に基板Gの浮上量が漸次的にHaからHbに移るようにしてよい。あるいは、この遷移領域M2においては、吸引口90を含まずに噴出口88だけを設ける構成も可能である。
塗布領域M3の下流側隣の領域M4は、搬送中に基板Gの浮上量を塗布用の浮上量Hbから搬出用の浮上量Hc(たとえば250〜350μm)に変えるための遷移領域である。この遷移領域M4でも、ステージ76の上面に噴出口88と吸引口90とを混在させて配置してもよく、その場合は吸引口90の密度を搬送方向に沿って次第に小さくするのがよい。あるいは、吸引口90を含まずに噴出口88だけを設ける構成も可能である。また、図6に示すように、塗布領域M3と同様に遷移領域M4でも、基板G上に形成されたレジスト塗布膜に転写跡が付くのを防止するために、吸引口90(および噴出口88)を基板搬送方向(X方向)に対して一定の傾斜した角度をなす直線E上に配置し、隣接する各列間で配列ピッチに適当なオフセットβを設ける構成が好ましい。
ステージ76の下流端(右端)の領域M5は搬出領域である。レジスト塗布ユニット(CT)40で塗布処理を受けた基板Gは、この搬出領域M5内の所定位置または搬出位置から搬送アーム74(図3)によって下流側隣の減圧乾燥ユニット(VD)42(図3)へ搬出される。この搬出領域M5には、基板Gを搬出用の浮上量Hcで浮かせるための噴出口88がステージ上面に一定の密度で多数設けられているとともに、基板Gをステージ76上からアンローディングして搬送アーム74(図3)へ受け渡すためにステージ下方の原位置とステージ上方の往動位置との間で昇降移動可能な複数本のリフトピン92が所定の間隔を置いて設けられている。これらのリフトピン92は、たとえばエアシリンダ(図示せず)を駆動源に用いる搬出用のリフトピン昇降部91(図13)によって昇降駆動される。
レジストノズル78は、ステージ76上の基板Gを一端から他端までカバーできる長さで搬送方向と直交する水平方向(Y方向)に延びる長尺状のノズル本体の下端にスリット状の吐出口78aを有し、門形または逆さコ字形のノズル支持体130に昇降可能に取り付けられ、レジスト液供給機構95(図12、図14)からのレジスト液供給管94(図4)に接続されている。
図4、図7および図8に示すように、基板搬送部84は、ステージ76の左右両サイドに平行に配置された一対のガイドレール96と、各ガイドレール96上に軸方向(X方向)に移動可能に取り付けられたスライダ98と、各ガイドレール96上でスライダ98を直進移動させる搬送駆動部100と、各スライダ98からステージ76の中心部に向かって延びて基板Gの左右両側縁部を着脱可能に保持する保持部102とをそれぞれ有している。
ここで、搬送駆動部100は、直進型の駆動機構たとえばリニアモータによって構成されている。また、保持部102は、基板Gの左右両側縁部の下面に真空吸着力で結合する吸着パッド104と、先端部で吸着パッド104を支持し、スライダ98側の基端部を支点として先端部の高さ位置を変えられるように弾性変形可能な板バネ型のパッド支持部106とをそれぞれ有している。吸着パッド104は一定のピッチで一列に配置され、パッド支持部106は各々の吸着パッド104を独立に支持している。これにより、個々の吸着パッド104およびパッド支持部106が独立した高さ位置で(異なる高さ位置でも)基板Gを安定に保持できるようになっている。
図7および図8に示すように、この実施形態におけるパッド支持部106は、スライダ98の内側面に昇降可能に取り付けられた板状のパッド昇降部材108に取り付けられている。スライダ98に搭載されているたとえばエアシリンダからなるパッドアクチエータ109(図14)が、パッド昇降部材108を基板Gの浮上高さ位置よりも低い原位置(退避位置)と基板Gの浮上高さ位置に対応する往動位置(結合位置)との間で昇降移動させるようになっている。
図9に示すように、各々の吸着パッド104は、たとえば合成ゴム製で直方体形状のパッド本体110の上面に複数個の吸引口112を設けている。これらの吸引口112はスリット状の長穴であるが、丸や矩形の小孔でもよい。吸着パッド104には、たとえば合成ゴムからなる帯状のバキューム管114が接続されている。これらのバキューム管114の管路116はパッド吸着制御部115(図14)の真空源にそれぞれ通じている。
保持部102においては、図4に示すように、片側一列の真空吸着パッド104およびパッド支持部106が1組毎に分離している分離型または完全独立型の構成が好ましい。しかし、図10に示すように、切欠き部118を設けた一枚の板バネで片側一列分のパッド支持部120を形成してその上に片側一列の真空吸着パッド104を配置する一体型の構成も可能である。
基板搬送部84は、スライダ98の移動速度を測定するために、図8に示すように、たとえばリニアエンコーダからなる速度センサ115を備えている。この構成例の速度センサ115は、スライダ98に取り付けられた搬送方向(X方向)に延びるスリット型のスケール117と、このスケール117を挟んで対向する投光部119Aおよび受光部119Bと、受光部119Bの出力信号に基づいて信号処理(演算)によりスライダ98の移動速度を求める信号処理部121とを有している。信号処理部121の出力信号(速度計測値)は、速度フィードバック制御のために基板搬送部84内の局所コントローラ(図示せず)に送られるとともに、後述する走査速度制御波形設定のためにメインコントローラ200(図14)にも与えられる。
上記のように、ステージ76の上面に形成された多数の噴出口88およびそれらに浮上力発生用の圧縮空気を供給する圧縮空気供給機構122(図11)、さらにはステージ76の塗布領域M3内に噴出口88と混在して形成された多数の吸引口90およびそれらに真空の圧力を供給するバキューム供給機構124(図11)により、搬入領域M1や搬出領域M5では基板Gを搬入出や高速搬送に適した浮上量で浮かせ、塗布領域M3では基板Gを安定かつ正確なレジスト塗布走査に適した設定浮上量HSで浮かせるためのステージ基板浮上部145(図14)が構成されている。
図11に、ノズル昇降機構75、圧縮空気供給機構122およびバキューム供給機構124の構成を示す。ノズル昇降機構75は、塗布領域M3の上を搬送方向(X方向)と直交する水平方向(Y方向)に跨ぐように架設された門形フレーム130と、この門形フレーム130に取り付けられた左右一対の鉛直運動機構132L,132Rと、これらの鉛直運動機構132L,132Rの間に跨る移動体(昇降体)のノズル支持体134とを有する。各鉛直運動機構132L,132Rの駆動部は、たとえばパルスモータからなる電動モータ138L、138R、ボールネジ140L,140Rおよびガイド部材142L,142Rを有している。パルスモータ138L、138Rの回転力がボールネジ機構(140L,142L)、(140R,142R)によって鉛直方向の直線運動に変換され、昇降体のノズル支持体134と一体にレジストノズル78が鉛直方向に昇降移動する。パルスモータ138L,138Rの回転量および回転停止位置によってレジストノズル78の左右両側の昇降移動量および高さ位置を任意に制御できるようになっている。ノズル支持体134は、たとえば角柱の剛体からなり、その下面または側面にレジストノズル78をフランジ、ボルト等を介して着脱可能に取り付けている。
圧縮空気供給機構122は、ステージ76上面で分割された複数のエリア別に噴出口88に接続された正圧マニホールド144と、それら正圧マニホールド144にたとえば工場用力の圧縮空気供給源146からの圧縮空気を送り込む圧縮空気供給管148と、この圧縮空気供給管148の途中に設けられるレギュレータ150とを有している。バキューム供給機構124は、ステージ76上面で分割された複数のエリア別に吸引口90に接続された負圧マニホールド152と、それらの負圧マニホールド152にたとえば工場用力の真空源154からのバキュームを送り込むバキューム管156と、このバキューム管156の途中に設けられる絞り弁158とを有している。
図12に、レジスト液供給機構170の構成を示す。このレジスト液供給機構170は、レジスト液Rを貯留するボトル172より吸入管174を介して少なくとも塗布処理1回分(基板1枚分)のレジスト液Rをレジストポンプ176に予め充填しておき、塗布処理時にレジストポンプ176よりレジスト液Rを吐出管またはレジスト液供給管94を介してレジストノズル78に所定の圧力で圧送し、レジストノズル78から基板G上にレジスト液Rを所定の流量で吐出するようになっている。
ボトル172は密閉されており、ボトル内の液面に向けてガス管178より圧送ガスたとえばN2ガスが一定の圧力で供給されるようになっている。ガス管178には、たとえばエアオペレートバルブからなる開閉弁180が設けられている。
吸入管174の途中には、フィルタ182、脱気モジュール184および開閉弁186が設けられている。フィルタ182はボトル172から送られてくるレジスト液R中の異物(ごみ類)を除去し、脱気モジュール184はレジスト液中の気泡を除去する。開閉弁186は、たとえばエアオペレートバルブからなり、吸入管174におけるレジスト液Rの流れをオン(全開導通)またはオフ(遮断)する。
レジスト液供給管94の途中には、開閉弁188が設けられている。フィルタやサックバックバルブは設けられていない。この開閉弁188は、たとえばエアオペレートバルブからなり、レジスト液供給管94におけるレジスト液Rの流れをオン(全開導通)またはオフ(遮断)する。さらに、レジスト液供給管94には圧力センサ195も取り付けられている。この圧力センサ195は、ゲージ圧力計からなり、大気圧を基準としてセンサ取付位置におけるレジスト液供給管94内のレジスト液Rの圧力を計測、圧力計測値をゲージ圧力で現す電気信号(圧力計測信号)を出力する。この圧力センサ195より出力される圧力計測信号は、フィードバック制御等のためにレジスト液供給制御部196に与えられるとともに、後述する吐出圧力波形設定のためにメインコントローラ200(図14)にも送られる。
レジストポンプ176は、たとえばシリンジポンプからなり、ポンプ室を有するポンプ本体190と、ポンプ室の容積を任意に変えるためのピストンまたはプランジャ192と、このプランジャ192を往復運動させるためのポンプ駆動部194とを有している。
レジスト液供給制御部196は、局所コントローラであり、メインコントローラ200(図14)からの指令に応じてレジスト液供給機構170内の各部、特にレジストポンプ176のポンプ駆動部194や各開閉弁180,186,188等を制御する。
このレジスト塗布ユニット(CT)40は、図3および図5に示すように、基板搬送方向(X方向)においてレジストノズル78よりも少し下流側の上方にノズルリフレッシュ部210を設置している。このノズルリフレッシュ部210は、X方向に延びるガイドレール(図示せず)に沿って図5の実線で示す待機位置と仮想線(一点鎖線)210'で示す往動位置との間で水平方向に移動できるようになっている。塗布処理の合間やしばらく塗布処理を行わないときに、レジストノズル78をノズルリフレッシュ部210に移す。このために、レジストノズル78をいったん上方へ持ち上げて、ノズルリフレッシュ部210をレジストノズル78の直下に移動させ(潜らせ)、次いでレジストノズル78を所定の高さ位置まで降ろしてノズルリフレッシュ部210に着かせるようにしている。
図13に、ノズルリフレッシュ部210内の構成を示す。図示のように、ノズルリフレッシュ部210は、プライミング処理部212と溶剤雰囲気室214と洗浄部216とをX方向で横一列に配置している。レジストノズル78の上下移動とノズルリフレッシュ部210のX方向の水平移動とを組み合わせることで、レジストノズル78を各部212,214,216に移送ないし位置決めできるようになっている。
洗浄部216は、所定位置に位置決めされたレジストノズル78の下を長手方向(Y方向)に移動またはスキャンするノズル洗浄ヘッド218を有している。このノズル洗浄ヘッド218には、レジストノズル78の下端部および吐出口78aに向けて洗浄液(たとえばシンナー)および乾燥用のガス(たとえばN2ガス)をそれぞれ噴き付ける洗浄ノズル220およびガスノズル222が搭載されるとともに、レジストノズル78に当たって落下した洗浄液をバキュームで受け集めて回収するドレイン部224が設けられている。
溶剤雰囲気室214は、レジストノズル78の全長をカバーする長さでノズル長手方向(Y方向)と平行に延びており、室内には溶剤たとえばシンナーが入っている。溶剤雰囲気室214の上面には、長手方向(Y方向)に延びるスリット状の開口226aを設けた断面V状の蓋体226が取り付けられている。レジストノズル78のノズル部を蓋体226に上方から合わせると、吐出口78aとテーパ形状のノズル下端部だけが開口226aを介して室内に立ち篭もる溶剤の蒸気に曝されるようになっている。ステージ76上でしばらく塗布処理が行われない間に、レジストノズル78は、洗浄部216で吐出口78aおよびノズル部の洗浄を施され、それから溶剤雰囲気室214で待機する。
プライミング処理部212は、レジストノズル78の全長をカバーする長さで水平方向(Y方向)に延びる円柱状のプライミングローラ228を溶剤浴室230の中に配置している。溶剤浴室230内には、プライミングローラ228の下部が浸かる程度の液面レベルで溶剤または洗浄液たとえばシンナーが収容されている。溶剤浴室230の外に配置された回転支持機構232が、プライミングローラ228の回転軸を支持し、プライミングローラ228を回転駆動する。また、溶剤浴室230内には、洗浄液溜りよりも上方の位置でプライミングローラ228の外周面に新液の溶剤を噴きつける溶剤ノズル234およびプライミングローラ228の外周面に擦接するワイパ236が設けられている。
図14に、この実施形態のレジスト塗布ユニット(CT)40における制御系の主要な構成を示す。メインコントローラ200は、マイクロコンピュータからなり、ユニット内の各部、特にレジスト液供給機構170、ノズル昇降機構75、ステージ基板浮上部145、基板搬送部84(搬送駆動部100、パッド吸着制御部115、パッドアクチエータ109)、搬入用リフトピン昇降部85、搬出用リフトピン昇降部91、ノズルリフレッシュ部210等の個々の動作と全体の動作(シーケンス)を制御する。
次に、この実施形態のレジスト塗布ユニット(CT)40における塗布処理動作を説明する。
メインコントローラ200は、たとえば光ディスク等の記憶媒体に格納されている塗布処理プログラムを主メモリに取り込んで実行し、プログラムされた一連の塗布処理動作を制御する。
搬送装置54(図1)より未処理の新たな基板Gがステージ76の搬入領域M1に搬入されると、リフトピン86が往動位置で該基板Gを受け取る。搬送装置54が退出した後、リフトピン86が下降して基板Gを搬送用の高さ位置つまり浮上位置Ha(図5)まで降ろす。次いで、アライメント部(図示せず)が作動し、浮上状態の基板Gに四方から押圧部材(図示せず)を押し付けて、基板Gをステージ76上で位置合わせする。アライメント動作が完了すると、その直後に基板搬送部84においてパッドアクチエータ109が作動し、吸着パッド104を原位置(退避位置)から往動位置(結合位置)へ上昇(UP)させる。吸着パッド104は、その前からバキュームがオンしており、浮上状態の基板Gの側縁部に接触するや否や真空吸着力で結合する。吸着パッド104が基板Gの側縁部に結合した直後に、アライメント部は押圧部材を所定位置へ退避させる。
次に、基板搬送部84は、保持部102で基板Gの側縁部を保持したままスライダ98を搬送始点位置から搬送方向(X方向)へ比較的高速の一定速度で直進移動させる。こうして基板Gがステージ76上を浮いた状態で搬送方向(X方向)へ直進移動し、基板Gの前端部が塗布領域M3内の設定位置または塗布走査開始位置に着いたところで、基板搬送部84が第1段階の基板搬送を停止する。この時、レジストノズル78は既にノズルリフレッシュ部210のプライミング処理部212でプライミング処理を終えており、図15に示すように吐出口78aおよび背面78bの下部に所定量のレジスト液膜RFを付けた状態で塗布位置の上方に設定された所定の退避位置で待機している。
上記のように基板Gが塗布領域M3内の設定位置つまり塗布走査開始位置に到着しそこで停止すると、メインコントローラ200の制御の下でノズル昇降機構75が作動して、レジストノズル78を垂直下方に降ろし、ノズルの吐出口と基板Gとの距離間隔または塗布ギャップを初期値(たとえば60μm)に合わせる。そうすると、図16に示すように、レジストノズル78の吐出口および背面下端部に付着していたレジスト液膜RFが設定サイズdの塗布ギャップをビード状に塞ぐようにして基板Gに付着(着液)する。そして、レジスト液供給機構95(図14)がレジスト液Rの吐出を開始すると同時に基板搬送部84も第2段階の基板搬送を開始し、一方でノズル昇降機構75がレジストノズル78を塗布ギャップが設定値(たとえば240μm)になるまで一瞬に上昇させ、その後はそのまま基板Gを水平移動させる。この第2段階つまり塗布時の基板搬送は塗布走査用の比較的低い速度で行われる。
こうして、塗布領域M3内において、基板Gが水平姿勢で搬送方向(X方向)に一定速度で移動するのと同時に、長尺形のレジストノズル78が直下の基板Gに向けてレジスト液Rを帯状に吐出することにより、図17に示すように基板Gの前端側から後端側に向かってレジスト液の塗布膜RMが形成されていく。上記のように塗布処理の開始直前に塗布ギャップSをレジスト液のビードで隙間なく塞いでおくことにより、塗布走査においてレジストノズル78の背面78b下部に形成されるレジスト液のメニスカスRQを水平一直線に揃え、塗布ムラのない平坦なレジスト塗布膜RMを形成することができる。
塗布領域M3で上記のような塗布処理が済むと、つまり基板Gの後端部がレジストノズル78の直下を過ぎると、レジスト液供給機構95がレジストノズル78からのレジスト液Rの吐出を終了させる。これと同時に、基板搬送部84は第2段階の基板搬送(走査)を停止する。直後に、ノズル昇降機構75がレジストノズル78を垂直上方に持ち上げて基板Gから退避させる。次いで、基板搬送部84は搬送速度の比較的大きい第3段階の基板搬送を開始する。そして、基板Gが搬出領域M5内の搬送終点位置に着くと、基板搬送部84は第3段階の基板搬送を停止する。この直後に、パッド吸着制御部115が吸着パッド104に対するバキュームの供給を止め、これと同時にパッドアクチエータ109が吸着パッド104を往動位置(結合位置)から原位置(退避位置)へ下ろし、基板Gの両側端部から吸着パッド104を分離させる。この時、パッド吸着制御部115は吸着パッド104に正圧(圧縮空気)を供給し、基板Gからの分離を速める。代わって、リフトピン92が基板Gをアンローディングするためにステージ下方の原位置からステージ上方の往動位置へ上昇する。
しかる後、搬出領域M5に搬出機つまり搬送アーム74がアクセスし、リフトピン92から基板Gを受け取ってステージ76の外へ搬出する。基板搬送部84は、基板Gをリフトピン92に渡したなら直ちに搬入領域M1へ高速度で引き返す。搬出領域M5で上記のように処理済の基板Gが搬出される頃に、搬入領域M1では次に塗布処理を受けるべき新たな基板Gについて搬入、アライメントないし搬送開始が行われる。一方、レジストノズル78はノズルリフレッシュ部210のプライミング処理部212へ移され、そこでプライミング処理を受ける。
上記の塗布処理に際して、コントローラ200は、レジスト液供給機構170を通じてレジストノズル78の吐出圧力を基準の吐出圧力制御波形《SP(t)》に倣わせると同時に、基板搬送部84を通じて基板Gの搬送速度つまり走査速度を基準の走査速度制御波形《SV(t)》に倣わせる。より詳細には、レジスト液供給機構170においては、コントローラ200からの基準の吐出圧力制御波形《SP(t)》にしたがってレジスト液供給処理部196の制御の下でレジストポンプ176のポンプ駆動部194がプランジャ192を往動運動させる。また、基板搬送部84においては、コントローラ200からの基準の走査速度制御波形《SV(t)》にしたがって図示しない局所コントローラの制御の下で搬送駆動部100がスライダ98を直進運動させる。こうして、基板G上に形成されるレジスト塗布膜RMの膜厚特性(特に搬送方向の膜厚均一性)は、基準の吐出圧力制御波形《SP(t)》および走査速度制御波形《SV(t)》の波形形状およびタイミングに依存することになる。
以下、図18〜図28を参照して、この実施形態の塗布処理に用いる基準の吐出圧力制御波形《SP(t)》および基準の走査速度制御波形《SV(t)》の設定方法を説明する。
この実施形態において、基板G上に形成されるレジスト塗布膜RMの膜厚は、理論的には、レジストノズル78の吐出流量(正確には吐出口78aにおけるレジスト液Rの流量)に比例し、レジストノズル78の直下を通過する基板Gの搬送速度(走査速度)に反比例する。したがって、レジストノズル78の吐出流量および走査速度の時間関数または波形をそれぞれF(t),V(t)とすると、レジスト塗布膜RMの膜厚の時間関数D(t)は次式で表される。
D(t)=Ka・F(t)/V(t) ・・・・・・・・(1)
ここで、Kaは比例定数である。
上記の式(1)から、塗布走査の開始から終了までレジスト塗布膜RMの膜厚D(t)を均一にするには、塗布走査の各時点または各位置でレジストノズル78の吐出流量波形F(t)と走査速度波形V(t)との比(F(t)/V(t))が一定になればよい。つまり、両波形F(t),V(t)をピーク値または定常値を基準として正規化したときにそれぞれの正規化波形が同一時間軸上でぴったり重なり合う(一致する)関係にあれば、塗布走査の各時点または各位置で両者の比F(t)/V(t)は一定であり、ひいては膜厚D(t)は一定に保たれる。
しかしながら、吐出流量波形F(t)を直接制御することは非常に難しいため、代わりにそれと比例関係にある吐出圧力の波形P(t)を制御するのが常法となっており、通常は図12に示すように圧力センサ195をレジスト液供給管94に取り付けて、そのセンサ出力信号から得られる波形を吐出圧力計測波形P(t)としている。ただし、圧力センサ195より得られる吐出圧力計測波形P(t)とレジストノズル78の吐出口78aにおける吐出圧力波形P'(t)との間には、一定の時間差δがある。この時間遅れδは、レジスト液供給管94に取り付けられる圧力センサ195とレジストノズル78の吐出口78aとの距離が大きいほどそれに比例して大きくなる。
したがって、上記の式(1)において吐出流量波形F(t)を吐出圧力計測波形P(t)に置き換える場合は、次式(2)のように時間遅れδを考慮しなければならない。
D(t)=Kb・P(t-δ)/V(t) ・・・・・・・・(2)
ここで、Kbは比例定数である。
上記の式(2)から、塗布走査の全時間または全区間を通じてレジスト塗布膜RMの膜厚D(t)を均一にするには、圧力センサ115より得られる吐出圧力計測波形P(t)と走査速度計測波形V(t)との間に、同一時間軸上で吐出圧力計測波形P(t)を時間遅れδだけ後へずらして両波形P(t),V(t)をそれぞれ正規化したときにそれぞれの正規化波形が略ぴったり重なり合うという関係を持たせればよいことがわかる。
図18に、圧力センサ115より得られる吐出圧力計測波形P(t)、レジストノズル78における仮想の吐出流量波形F(t)、速度センサ115より得られる走査速度計測波形V(t)およびそれぞれの正規化波形NP(t),NF(t)、NV(t)の理想的な波形形状およびタイミング関係の一例を示す。ここで、吐出圧力計測波形P(t)は、メインコントローラ200よりレジスト液供給機構170に与えられる基準の吐出圧力制御波形SP(t)に追従または依存する。また、走査速度計測波形V(t)は、メインコントローラ200より基板搬送部84に与えられる基準の走査速度制御波形SV(t)に追従または依存する。したがって、計測可能な吐出圧力計測波形P(t)と走査速度計測波形V(t)との間に図18に示すような理想的な相対的波形形状およびタイミングが得られるように、基準の吐出圧力制御波形SP(t)および走査速度制御波形SV(t)の波形形状およびタイミング関係を設定すれば、レジスト塗布膜RMの膜厚均一性を改善できることになる。
この点、基板搬送部84においては、搬送駆動部100が基準の走査速度制御波形SV(t)に倣って殆どその波形通りの速度でスライダ96を移動させる。また、制御の応答速度も高く、閉ループ制御またはフィードバック制御方式を使える。したがって、後述する仮の走査速度制御波形SV(t)の波形形状を設定ないし補正するに際しては、特に計測を伴うトライアンドエラーは不要であり、通常は計算で済む。
一方、レジスト液供給機構170においては、プランジャ192の動きに対するポンプ本体190ないしレジスト液供給管94内の吐出圧力の応答速度および応答線形性が低く、閉ループのフィードバック制御を採用するのが難しい。このため、通常はオープンループ制御を使用することになる。その場合、レジストポンプ176のプランジャ192を理想的な台形形状の吐出圧力制御波形SP(t)で駆動すると、図19に示すように、レジスト液供給管94内の吐出圧力は立ち上がりおよび立ち下がりの鈍った略台形形状の波形P(t)になる。むしろ、図20に示すように、プランジャ192をオーバーシュート気味な略台形形状の吐出圧力制御波形SP(t)で駆動制御した方が、結果としてレジスト液供給管94内の圧力ひいてはノズル吐出口78aの圧力を理想的な台形形状の波形P(t)にすることができる。
図20に示すような理想的な略台形形状の吐出圧力制御波形SP(t)は計算で確定または設定できるものではなく、実際にレジスト液供給機構170にレジスト吐出動作を行わせ、圧力センサ195を通じたモニタリングにより実際の吐出圧力測定波形P(t)が理想の台形波になっているかどうかを検証する外ない。
このことから、この実施形態では、メインコントローラ200の統括制御の下で、レジストノズル78を図13に示すようにノズルリフレッシュ部210の洗浄部216に着かせ、そこでレジスト液供給機構170およびレジストノズル78にレジスト液吐出動作を行わせ、理想の台形形状を有する吐出圧力計測波形P(t)が得られるときの吐出圧力制御波形SP(t)をトライアンドエラーで割り出し、その割り出した吐出圧力制御波形SP(t)を仮の吐出圧力制御波形<SP(t)>として確定ないし設定し、メモリに保存する。なお、ノズルリフレッシュ部210の洗浄部216は、レジストノズル78より吐出されたレジスト液をドレイン部224で受け集めて回収し、後処理で洗浄ノズル220やガスノズル222を稼動させてよい。
一方、基板搬送部84側はこの段階でのトライアンドエラーは不要であり、メインコントローラ200において理想の台形形状を有する仮の走査速度制御波形<SV(t)>を計算で設定し、メモリに保存する。その際、仮の走査速度制御波形<SV(t) >の波形形状は、それを正規化して得られる正規化波形<NV(t) >が理想の台形形状を有する吐出圧力計測波形P(t)を正規化して得られる正規化波形<NP(t)>と略一致するように設定されてよい。
上記のようにして仮の吐出圧力制御波形<SP(t)>および仮の走査速度制御波形<SV(t) >が揃ったところで、図21に示すような模擬塗布走査を実施する。この模擬塗布走査において、メインコントローラ200は、レジスト液供給機構170および基板搬送部84にそれぞれ仮の吐出圧力制御波形<SP(t)>および仮の走査速度制御波形<SV(t) >を与えて、レジストノズル78にレジスト液を吐出させると同時に搬送駆動部100に走査運動を行わせ、圧力センサ195および速度センサ115よりそれぞれ得られる圧力計測値および走査速度測定値を同時に取り込んで、同一の時間上で吐出圧力計測波形P(t)および走査速度計測波形V(t)を取得する。
その際、レジスト液供給機構170におけるレジスト塗布動作は、上記のように仮の吐出圧力制御波形<SP(t)>を設定したときと同様に、レジストノズル78をノズルリフレッシュ部210の洗浄部216に着けて行わせる。したがって、レジストノズル78より吐出されたレジスト液がステージ76に落ちるようなことはない。一方、基板搬送部84における走査運動は、ステージ76上で基板Gを浮上搬送してもよいが、ステージ76上に基板Gを搬入せずにスライダ98のみを運動させても略同じ測定結果つまり走査速度計測波形V(t)が得られる。なお、タイミングに関しては、仮の吐出圧力制御波形<SP(t)>と仮の走査速度制御波形<SV(t) >との間に適当な初期値の時間差が設定されてよい。
図22に、上記のような模擬塗布走査において得られる吐出圧力計測波形P(t)および走査速度計測波形V(t)の例を示す。メインコントローラ200は、これら吐出圧力計測波形P(t)および走査速度計測波形V(t)についてそれぞれのピーク値または設定値Ps,Vsを基準値として正規化し、正規化された吐出圧力計測波形NP(t)と正規化された走査速度計測波形NV(t)とを同一時間軸上で比較する。
この正規化波形同士の比較では、特に、両正規化波形NP(t) ,NV(t)の立ち上がりの傾斜度の一致性(図23)および立ち下がりの傾斜度の一致性(図示省略)に注目する。すなわち、両正規化波形NP(t) ,NV(t)の間で立ち上がりの傾斜度が一致し、かつ立ち下がりの傾斜度も一致するのが理想であり、一致していなければ両者を一致させるように、通常は図23に示すように走査速度側のNV(t)の傾斜度を吐出圧力側のNP(t)の傾斜度に合わせるように、計算で仮の走査速度制御波形<SV(t)>の波形形状を補正する。もっとも、仮の吐出圧力制御波形<SP(t)>に補正をかけることも可能である。また、時間差または時間遅れについては、吐出圧力計測波形P(t)に対する吐出流量波形F(t)の時間遅れδ(図18)が既知であれば、両計測波形P(t),V(t)間の時間差あるいは両正規化波形NP(t) ,NV(t)間の時間差がδの値になるように仮の吐出圧力制御波形<SP(t)>に対する仮の走査速度制御波形<SV(t) >の時間遅れを補正する。
次に、上記のような波形形状の補正および時間遅れの補正を施した仮の走査速度制御波形<SV(t) >と仮の吐出圧力制御波形<SP(t)>とを用いて上記のような模擬塗布走査を再度実施する。そして、上記1回目と同様に、この2回目の模擬塗布走査で得られた吐出圧力計測波形P(t)および走査速度計測波形V(t)をそれぞれ正規化し、両正規化波形NP(t),NV(t)を同一時間軸上で比較する。その比較の結果、両正規化波形NP(t),NV(t)の間で立ち上がりおよび立ち下がりの傾斜度あるいは時間遅れに誤差(差異)があれば、上記と同様に適当な補正をかけてから、3回目の模擬塗布走査を実施する。
こうして、模擬塗布走査を繰り返すたび毎に、傾斜度および時間遅れの誤差は小さくなり、吐出圧力計測波形P(t)と走査速度計測波形V(t)とが波形形状の上でも時間差の上でもたとえば図18に示すような理想的な関係に近づき、ひいては仮の吐出圧力制御波形<SP(t)>と仮の走査速度制御波形<SV(t) >との間でも相対的な波形形状および時間差が理想に近づく。そして、傾斜度および時間遅れの誤差(差異)が所定の許容値内になったところで模擬塗布走査を打ち切り、最後の模擬塗布走査に用いた仮の吐出圧力制御波形<SP(t)>および仮の走査速度制御波形<SV(t) >を基に実際の塗布処理に用いる基準の吐出圧力制御波形《SP(t)》および基準の走査速度制御波形《V(t) 》を設定する。つまり、最後の模擬塗布走査に用いた仮の吐出圧力制御波形<SP(t)>および仮の走査速度制御波形<SV(t) >の波形形状をそのまま(あるいは適宜補正して)基準の吐出圧力制御波形《SP(t)》および基準の走査速度制御波形《SV(t) 》の波形形状とし、当該仮の吐出圧力制御波形<SP(t)>に対する当該仮の走査速度制御波形<SV(t) >の時間遅れをそのまま(あるいは適宜補正して)基準の吐出圧力制御波形《SP(t)》に対する基準の走査速度制御波形《SV(t) 》の時間遅れとしてよい。
ここで、図24および図25につき、この実施形態において吐出圧力計測波形P(t)に対する吐出流量波形F(t)の時間遅れδを実測で求めるための装置構成および方法の一例を説明する。
図24に示すように、この装置構成例は、レジスト液供給機構170においてレジストノズル78の吐出口78aよりレジスト液が実際に出始めるタイミングを光学的に検出するための実吐出開始検出部240をたとえばノズルリフレッシュ部210の洗浄部216に備える。
この実吐出開始検出部240は、洗浄部216のドレイン部224の適当な箇所に、たとえば発光ダイオードまたはレーザダイオードからなる投光部242と、たとえばフォトダイオードからなる受光部244とを水平に相対向させて取り付ける。レジストノズル78を洗浄部216内で位置決めすると、投光部242より出射された光線LBがレジストノズル78の吐出口78の下をぎりぎりかすめるように通って真向かいの受光部244に入射するように構成する。この場合、レジストノズル78を最初は光線LBを遮るほどの低い位置まで下ろし、そこからゆっくり上昇させて、光線LBの遮光が解除された瞬間にノズル上昇移動を止めてよい。信号処理部246は、投光部242に光線LBを出射させながら受光部244の出力信号を取り込むことでノズル吐出口78近傍における光線LBの透過(非遮光)/遮光状態をモニタし、たとえば透過(非遮光)状態のときはHレベル、遮光状態のときはLレベルの論理値を有する2値信号を吐出開始検出信号MSとしてメインコントローラ200に送る。
メインコントローラ200は、図24に示すようにレジストノズル78を洗浄部216内に位置決めした状態で、レジスト液供給機構170にたとえば仮の吐出圧力制御波形<SP(t)>を与えてレジスト吐出動作を行わせ、圧力センサ195より圧力計測値P(t)を受け取るとともに、実吐出開始検出部240の信号処理部246より吐出開始検出信号MSを受け取る。そうすると、図25に示すようにレジストノズル78の吐出口78aよりレジスト液Rが出始めた瞬間に、そのレジスト液Rで投光部242からの光線LBが遮られ、吐出開始検出信号MSがそれまでのHレベルからLレベルに変わる。
このように吐出開始検出信号MSがHレベルからLレベルに変わったタイミング、つまりレジストノズル78の吐出口78aよりレジスト液Rが出始めたタイミングをもって、ノズル吐出口78aにおける吐出流量波形F(t)の立ち上がり開始のタイミングとみなすことができる。
メインコントローラ200は、図26に示すように吐出圧力計測波形P(t)の立ち上がり開始の時点taから吐出開始検出信号MSがHレベルからLレベルに変わった時点tbまでの時間差Δtを求め、この時間差Δtを吐出圧力計測波形P(t)に対する吐出流量波形F(t)の時間遅れδとする。
別の実施例として、模擬塗布走査では基準の吐出圧力制御波形《SP(t)》および基準の走査速度制御波形《SV(t) 》の波形形状のみを決定ないし設定し、後述する試験塗布処理を通じて膜厚の実測値データから両基準制御波形《SP(t)》,《SV(t) 》間の最適な時間差または基準の時間遅れを求めることも可能である。
この試験塗布処理において、メインコントローラ200は、両制御波形《SP(t)》,《SV(t) 》間の時間差または時間遅れをパラメータとして、レジスト液供給機構170および基板搬送部84にそれぞれ基準の吐出圧力制御波形《SP(t)》および基準の走査速度制御波形《SV(t) 》を与えて、レジストノズル78にレジスト液を吐出させると同時に試験用の基板Gをステージ76上で浮上搬送させ、正規の塗布処理に準じた塗布処理を実施する。もっとも、基板Gの端から端まで塗布走査を行う必要はなく、たとえば吐出圧力および走査速度が定常値に達して間もないうちに塗布走査を停止してもよい。この試験塗布処理の結果として、基板G上にパラメータ(時間遅れ)の候補値の数に等しい複数(n個)の試験用塗布膜RM1,RM2,・・RMnが形成される。
この場合、パラメータ(時間遅れ)の値を大きくするにしたがって、図27に示すように正規化波形NP(t)に対する正規化波形NV(t)の時間遅れΔT1,ΔT2,・・ΔTnが増大し、つまり吐出圧力計測波形P(t) ,P(t),・・P(t)に対する走査速度計測波形V(t)の時間遅れが増大し、図28に示すように試験用塗布膜RM1,RM2,・・RMnにおいて塗布開始部の膜厚および塗布終端部(図示省略)の膜厚が相対的に増大する。
上記のような試験塗布処理を終了した後、試験用基板Gに正規の塗布処理の場合と同じ後処理つまり減圧乾燥処理とベーキング処理を順次施す。もちろん、それらの後処理に減圧乾燥ユニット(VD)42や加熱ユニット(HP)48を使用することができる。
次に、ベーキングを終えた試験用基板G上の塗布膜RM1,RM2,・・RMnについてそれぞれの膜厚をたとえば光学式または接触針式の膜厚測定器によって測定し、特に塗布走査方向(X方向)における膜厚分布特性ないし膜厚均一性を計測し、その中で最も膜厚均一性に優れた試験用塗布膜RMsを決定する。そして、その塗布膜RMsに係る試験塗布処理に用いたパラメータ(時間遅れ)の値を最適値とし、このパラメータ最適値に基づいて正規の塗布処理に用いる基準の時間遅れを設定する。通常は、パラメータ最適値をそのまま基準の時間遅れとしてよい。あるいは、甲乙つけがたい2つのパラメータ最適値を選んでその中間値を基準の時間遅れとしてもよい。
なお、膜厚測定器をレジスト塗布ユニット(CT)40内に備えることも可能であり、それによってメインコントローラ200の制御の下で上記のような試験塗布処理からパラメータ最適値の決定ないし基準の時間遅れの設定までの全工程を全自動で行うことも可能である。
以上本発明を好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その技術思想の範囲内で種々の変形が可能である。たとえば、上記した実施形態は浮上搬送式のスピンレス塗布法に係るものであったが、本発明は吸着固定型のステージ上に基板を水平に載置定して、基板上方で長尺形レジストノズルをノズル長手方向と直交する水平方向に移動させながら基板上の端から端までレジスト液を塗布する方式のスピンレス塗布法にも適用可能である。その場合、本発明における模擬塗布走査を実施するに当たっては、たとえば図29に示すように、レジストノズル78より吐出されるレジスト液を受けて回収するためのドレインパン250をノスル支持部252に着脱可能に取り付けてよく、これによってステージ254にレジスト液が落ちるのを回避することができる。図示の装置構成例では、吸着固定型ステージ254の上方に搬送方向(X方向)に延びるガイドレール256を架設し、レジストノズル78を昇降可能に支持するノズル支持部252をガイドレール256に沿って水平移動させるようにしている。ガイドレール256をステージ254の両側に設ける構成も可能である。
本発明における処理液としては、レジスト液以外にも、たとえば層間絶縁材料、誘電体材料、配線材料等の塗布液も可能であり、現像液やリンス液等も可能である。本発明における被処理基板はLCD基板に限らず、他のフラットパネルディスプレイ用基板、半導体ウエハ、CD基板、フォトマスク、プリント基板等も可能である。