JP4803324B2 - 車両のモータトラクション制御装置 - Google Patents
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Description
前記モータトラクション制御手段は、
部品保護のための第1トルクダウン量を演算する部品保護制御部と、車両挙動を安定させるための第2トルクダウン量を演算するスタビリティ制御部と、を有し、前記部品保護制御部による第1トルクダウン量と前記スタビリティ制御部による第2トルクダウン量のうち、トルクダウン量が大きい方を制御目標トルクダウン量として選択すると共に、
前記部品保護制御部と前記スタビリティ制御部との一方を優先して選択する優先選択手段を有し、前記優先選択手段により前記部品保護制御部が優先して選択されているとき、前記部品保護制御部による第1トルクダウン量が前記スタビリティ制御部による第2トルクダウン量以上の場合には、優先順位のとおり前記部品保護制御部による第1トルクダウン量を制御目標トルクダウン量として選択し、前記スタビリティ制御部による第2トルクダウン量の方が前記部品保護制御部による第1トルクダウン量よりも大きい場合には、優先順位を無視して前記スタビリティ制御部による第2トルクダウン量を制御目標トルクダウン量として選択することを特徴とする。
まず、ハイブリッド車の駆動系構成を説明する。
図1は参考例1のモータトラクション制御装置が適用されたハイブリッド車の駆動系を示す全体システム図である。参考例1におけるハイブリッド車の駆動系は、図1に示すように、エンジンEと、第1モータジェネレータMG1と、第2モータジェネレータMG2(モータ)と、出力スプロケットOS、動力分割機構TMと、を有する。
前記両モータジェネレータMG1,MG2は、バッテリ4からの電力の供給を受けて回転駆動する電動機として動作することもできるし(以下、この状態を「力行」と呼ぶ)、ロータが外力により回転している場合には、ステータコイルの両端に起電力を生じさせる発電機として機能してバッテリ4を充電することもできる(以下、この状態を「回生」と呼ぶ)。
ここで、「共線図」とは、差動歯車のギヤ比を考える場合、式により求める方法に代え、より簡単で分かりやすい作図により求める方法で用いられる速度線図であり、縦軸に各回転要素の回転数(回転速度)をとり、横軸に各回転要素をとり、各回転要素の間隔をサンギヤSとリングギヤRの歯数比λに基づく共線図レバー比(1:λ)になるように配置したものである。
参考例1におけるハイブリッド車の制御系は、図1に示すように、エンジンコントローラ1と、モータコントローラ2と、パワーコントロールユニット3(強電ユニット)と、バッテリ4(二次電池)と、ブレーキコントローラ5と、統合コントローラ6と、を有して構成されている。
このブレーキコントローラ5には、各車輪速センサ12,13,14,15からの車輪速情報や、操舵角センサ16からの操舵角情報や、マスタシリンダ圧センサ17やブレーキストロークセンサ18からの制動操作量情報や、ヨーレイトセンサ27からのヨーレイト情報や、横加速度センサ28からの横加速度情報が入力される。
そして、これらの入力情報に基づいて、所定の演算処理を実行し、その処理結果による制御指令を統合コントローラ6とブレーキ液圧ユニット19へ出力する。なお、前記ブレーキ液圧ユニット19には、前左車輪ホイールシリンダ20と、前右車輪ホイールシリンダ21と、後左車輪ホイールシリンダ22と、後右車輪ホイールシリンダ23と、が接続されている。
この統合コントローラ6には、各センサ7,8,9,10,11からのアクセル開度APと車速VSPとエンジン回転数Neと第1モータジェネレータ回転数N1と第2モータジェネレータ回転数N2とが入力される。
そして、これらの入力情報に基づいて、所定の演算処理を実行し、その処理結果による制御指令をエンジンコントローラ1とモータコントローラ2へ出力する。なお、統合コントローラ6とエンジンコントローラ1、統合コントローラ6とモータコントローラ2、統合コントローラ6とブレーキコントローラ5は、情報交換のためにそれぞれ双方向通信線24,25,26により接続されている。
参考例1のハイブリッド車の駆動力は、図2(b)に示すように、エンジン直接駆動力(エンジン総駆動力から発電機駆動分を差し引いた駆動力)とモータ駆動力(両モータジェネレータMG1,MG2の総和による駆動力)との合計で示される。その最大駆動力の構成は、図2(a)に示すように、低い車速ほどモータ駆動力が多くを占める。このように、変速機を持たず、エンジンEの直接駆動力と電気変換したモータ駆動力を加えて走行させることから、低速から高速まで、定常運転のパワーの少ない状態からアクセルペダル全開のフルパワーまで、ドライバの要求駆動力に対しシームレスに応答良く駆動力をコントロールすることができる(トルク・オン・デマンド)。
そして、参考例1のハイブリッド車では、動力分割機構TMを介し、エンジンEと両モータジェネレータMG1,MG2と左右前輪の駆動輪とがクラッチ無しで繋がっている。また、上記のように、エンジンパワーの大部分を発電機で電気エネルギに変換し、高出力かつ高応答のモータで車両を走らせている。このため、例えば、アイスバーン等の滑りやすい路面での走行時において、駆動輪のスリップやブレーキ時の駆動輪のロック等で車両の駆動力が急変する場合、過剰電流からのパワーコントロールユニット3の部品保護、あるいは、動力分割機構TMのピニオン過回転からの部品保護を行う必要がある。これに対し、高出力・高応答のモータ特性を活かし、部品保護の機能から発展させて、駆動輪の駆動スリップを瞬時に検出し、そのグリップを回復させ、車両を安全に走らせるためのモータトラクション制御を採用している。
参考例1のハイブリッド車では、エンジンブレーキやフットブレーキによる制動時には、モータとして作動している第2モータジェネレータMG2を、ジェネレータ(発電機)として作動させることにより、車両の運動エネルギを電気エネルギに変換してバッテリ4に回収し、再利用する回生ブレーキシステムを採用している。
この回生ブレーキシステムでの一般的な回生ブレーキ協調制御は、図3(a)に示すように、ブレーキペダル踏み込み量に対し要求制動力を算出し、要求制動力の大きさにかかわらず、算出された要求制動力を回生分と油圧分とで分担することで行われる。
これに対し、参考例1のハイブリッド車で採用している回生ブレーキ協調制御は、図3(b)に示すように、ブレーキペダル踏み込み量に対し要求制動力を算出し、算出された要求制動力に対し回生ブレーキを優先し、回生分で賄える限りは油圧分を用いることなく、最大限まで回生分の領域を拡大している。これにより、特に加減速を繰り返す走行パターンにおいて、エネルギ回収効率が高く、より低い車速まで回生制動によるエネルギの回収を実現している。
参考例1のハイブリッド車での車両モードとしては、図4の共線図に示すように、「停車モード」、「発進モード」、「エンジン始動モード」、「定常走行モード」、「加速モード」を有する。
「停車モード」では、図4(1)に示すように、エンジンEと発電機MG1とモータMG2は止まっている。「発進モード」では、図4(2)に示すように、モータMG2のみの駆動で発進する。「エンジン始動モード」では、図4(3)に示すように、エンジンスタータとしての機能を持つ発電機MG1によって、サンギヤSが回ってエンジンEを始動する。「定常走行モード」では、図4(4)に示すように、主にエンジンEにて走行し、効率を高めるために発電を最小にする。「加速モード」では、図4(5)に示すように、エンジンEの回転数を上げると共に、発電機MG1による発電を開始し、その電力とバッテリ4の電力を使ってモータMG2の駆動力を加え、加速する。
なお、後退走行は、図4(4)に示す「定常走行モード」において、エンジンEの回転数上昇を抑えたままで、発電機MG1の回転数を上げると、モータMG2の回転数が負側に移行し、後退走行を達成することができる。
[モータトラクション制御処理]
図6は参考例1の統合コントローラ6にて実行されるモータトラクション制御処理の流れを示すフローチャートで、以下、各ステップについて説明する(モータトラクション制御手段)。
なお、第2モータジェネレータMG2のみを駆動源とする走行時には、エンジン分担トルクはゼロとなり、また、第2モータジェネレータMG2とエンジンEとを駆動源とする走行時には、エンジン分担トルクはエンジン直接駆動力(図2参照)となる。
ここで、「角加速度ω'」の算出は、角速度(=第2モータジェネレータ回転数)を時間微分することで算出することができる。微分演算の手法としては、例えば、サンプリングタイムが10msecの場合、現在の第2モータジェネレータ回転数計測値と10msec前の第2モータジェネレータ回転数計測値の偏差をとることで、微分値を算出することができる。
ここで、第1トルクダウン量の演算は、例えば、図7に示すように、角加速度ω'がゼロから第1設定値ω1'まではトルクダウン量=0とし、角加速度ω'が第1設定値ω1'から第2設定値ω2'までは角加速度ω'の増大に比例して増大するトルクダウン量を与え、角加速度ω'が第2設定値ω2'を超えると一定の最大トルクダウン量MAXを与える。
ここで、「スリップ率ρ」の算出は、左右後輪の平均車輪速を車体速Vbとし、左右前輪の平均車速を駆動輪速Vwとした場合、
ρ=(Vw−Vb)/Vw
の式により算出される。なお、このスリップ率ρに代え、駆動輪速Vwから車体速Vbを差し引いたスリップ量を用いても良い。
ここで、第2トルクダウン量の演算は、例えば、図8に示すように、スリップ率ρが20%前後のTCS制御領域に入るようにトルクダウン量を与える。すなわち、スリップ率ρが大きくなると前後力の駆動力係数μdも横力Fyも共に減少する。特に横力Fyの減少は駆動輪の横滑り摩擦力を失わせ、操向安定性に悪影響を及ぼす。モータトラクションのスタビリティ制御は、このように走行安定性の低下を防止しつつ、駆動力を確保して加速性能を向上させるために、スリップ率ρを適正な範囲に制限する制御システムである。
すなわち、第1目標モータトルクTM1*と第2目標モータトルクTM2*とのセレクトローにより、制御目標であるモータトルク指令値を選択することは、ステップS3による第1トルクダウン量とステップS6による第2トルクダウン量のうち、トルクダウン量が大きい方を制御目標トルクダウン量として選択することと同義である。
[トラクション制御の背景技術について]
特開平6−229264号公報や特開平5−312061号公報等を含め、駆動輪に駆動スリップが発生したとき、当該駆動輪へ付与する駆動トルクを駆動スリップ状態に応じて調整するトルク低減制御を実施する車両用トラクション制御装置は、多数発表されている。
発進時には運転者が過度なアクセル操作を行った場合に生じる駆動スリップを低く抑えるためには、できるだけ早期にトラクション制御を開始することが望ましく、そのためにはスリップ基準値(スリップ目標値またはスリップ閾値、以下同様)を低い値に設定して、できるだけ早期に当該駆動スリップを検出する必要があり、特に、低車速時においては、エンジンやトランスミッション等の作動遅れ時間が大きいため、早期の駆動スリップの検出が駆動スリップを抑制する上で有効である。
しかし、低車速時にスリップ基準値を低く設定すると、駆動トルクを低下させすぎて、場合によってはエンジン回転数が極めて低くなってエンジン振動が大きくなる結果、運転フィーリングが良好にならず、さらに、エンジン回転数が低下し過ぎた場合、エンジンがストールしてしまう(エンストする)おそれがある。その結果、スリップ初期のスリップ基準値は高い値に設定する必要がある。
また、特開平5−312061号公報のように、駆動トルク調整手段による駆動トルク調整の開始以降に、スリップ基準値を当初設定した値より高い値に変更することで、運転フィーリング向上やエンジンストールを防止する技術が開示されている。しかし、これらの従来技術では、電力や電流について考慮されているわけではない。
仮にモータトラクション制御装置が無くて駆動スリップした場合には、エンジンの発電が追いつかず、モータはバッテリからどんどん電流を持ち出す。よって、モータ駆動回路に過電流が発生し、回路上の素子等にダメージを与えることになる。例えば、参考例1のパワーコントロールユニット3において、図5の矢印に示すように、コンデンサ3eを介して過電流が流れると、ジョイントボックス3aのヒューズや昇圧コンバータ3bのスイッチング回路がダメージを受けてしまう場合がある。しかも、ハイブリッド車や燃料電池車では、二次電池に対してモータ出力(モータ出力比)が大きければ大きいほど過電流が流れやすい。また、二次電池に対してエンジン、燃料電池の出力(エンジン出力比)が大きければ大きいほど過電圧、過電流が流れやすい。という関係がある。
したがって、確実に部品保護を図るためには、滑ったらトルク制限をかけるという「角加速度制御」により駆動スリップを応答良く収束させるモータトラクション制御が必要となる。
上記背景技術に対し、参考例1のハイブリッド車のモータトラクション制御装置では、モータトラクション制御として、部品保護のための第1トルクダウン量を演算する「角加速度制御」と、車両挙動を安定させるための第2トルクダウン量を演算する「スリップ率制御」と、を組み合わせ、かつ、「角加速度制御」による第1トルクダウン量と「スリップ率制御」による第2トルクダウン量のうち、トルクダウン量が大きい方を制御目標トルクダウン量として選択することで、モータトラクション制御時、部品保護とスタビリティの確保との両立を図るようにした。
参考例1の車両のモータトラクション制御装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
参考例2は、スタビリティ制御部において第2トルクダウン量を演算する際、推定される路面摩擦係数が低摩擦係数を示すほど大きな位相遅れを与えるようにした例である。
参考例2の車両のモータトラクション制御装置にあっては、参考例1の(1),(2),(3)の効果に加え、下記の効果を得ることができる。
参考例3は、スタビリティ制御部において第2トルクダウン量を演算する際、推定される路面摩擦係数が低摩擦係数を示すほど大きな位相遅れを与えると共に、所定値以下の極低摩擦係数領域では位相遅れ上限値を設定するようにした例である。
参考例3の車両のモータトラクション制御装置にあっては、参考例1の(1),(2),(3)および参考例2の(4)の効果に加え、下記の効果を得ることができる。
実施例1は、部品保護制御がスタビリティ制御(VDCシステム等でのTCS制御分)よりも優先されていても、スタビリティ制御の方がトルクダウン量が大きい場合は、優先順位を無視してスタビリティ制御を選択するようにした例である。なお、構成は参考例1と同様であるので、図示並びに説明を省略する。
[モータトラクション制御処理]
図15は実施例1のブレーキコントローラ5及び統合コントローラ6にて実行されるモータトラクション制御処理の流れを示すフローチャートで、以下、各ステップについて説明する(モータトラクション制御手段)。
ここで、「部品保護優先フラグ」は、部品保護が必要と思われるときにセットされるフラグであり、例えば、駆動輪の角加速度が所定値以上である場合、ある車両状態において出力電力が所定電力以上であるために過電流が流れるおそれがある場合、等において、部品保護優先フラグがセットされる(優先選択手段)。
部品保護制御は、例えば、雪道やアイスバーン等の低μ路で、発進時や走行時の駆動輪スリップや駆動輪ロック等により駆動力(トラクション)が急変した場合、高精度の回転センサ(図16に示すレゾルバ)が駆動軸の回転状況を瞬時に検出し、統合コントローラ6に信号を送り、その後、統合コントローラ6はモータコントローラ2への指令により第2モータジェネレータMG2の駆動力を低減制御することにより行われる。つまり、駆動輪のグリップを回復させて運転者のアクセル操作に応じた駆動力を路面に伝達するというトラクション制御を実施する。併せて、モータコントローラ2が前記レゾルバからの信号に基づき算出した角加速度が大きいと、モータトルクを制限することで、急激な電流変動や動力分割機構TMのギヤ回転急上昇を防止し、十分に部品保護機能を果たす。
VDCシステムは、車両の旋回方向の安定性を確保するシステムである。通常、車両はステアリング操作に従い安定的に旋回するが、緊急旋回時等の不測の状況、または、外的要因等によっては、強い後輪横滑りや前輪横滑り傾向になる。VDCシステムでは、このような場合に安定性を確保させるべくエンジン・モータの出力制御と各車輪のブレーキ制御を自動的に行い、強い前輪横滑りや前輪横滑りを緩和する制御が行われる。本システムは、ヨーレイトセンサ27や横加速度センサ28等の各種センサからの信号により、車両の状態を感知し、ブレーキアクチュエータであるハイドロユニット19に制御信号を出力することによるブレーキ液圧制御と、エンジンコントローラ1とモータコントローラ2に制御信号を出力することによるエンジン・モータ出力トルク制御と、から構成される。
例えば、駆動輪が横方向のグリップ限界を超える状況として、下記の2つの例が挙げられる。
(1) 後輪が前輪に対して相対的にグリップを失いつつある場合(強い後輪横滑り状態)。
(2) 前輪が後輪に対して相対的にグリップを失いつつある場合(強い前輪横滑り状態)。
従来、部品保護制御としては、例えば、特開平10−304514号公報に「角加速度制御」が記載されているし、上記VDCシステムも実車に搭載されているように周知である。そこで、例えば、駆動輪の角加速度が所定値以上であり、部品保護が必要であることから部品保護優先フラグがセットされていて、図19(a)に示すように、「角加速度制御」が実行されている時に、VDCシステムでのモータトルクダウン制御が介入してきた場合、図19(b)の時刻t1から時刻t3までの部品保護優先フラグがセット中においては、優先順位にしたがって「角加速度制御」が優先されるため、第1トルクダウン量が選択されることになる。したがって、第1トルクダウン量がゼロとなる時刻t3の時点で部品保護優先フラグがリセットされると、その瞬間、VDCシステムでの第2トルクダウン量に切り替わり、図19(c)に示すように、トルクダウン量がゼロから第2トルクダウン量まで変動する。よって、優先順位にしたがって「角加速度制御」からVDCシステムでの「スタビリティ制御」へ切り替えると、切り替え時、急激なトルク変動や非線形なトルクが生じてしまうのでドライバビリティ性能を損なうばかりか、車両挙動に悪影響(例えば、前後G変動)を及ぼしてしまうという問題がある。
実施例1の車両のモータトラクション制御装置にあっては、参考例1の(1),(2),(3)の効果に加え、下記の効果を得ることができる。
実施例2は、実施例1と同様に、スタビリティ制御の方がトルクダウン量が大きい場合は、優先順位を無視してスタビリティ制御を選択すると共に、部品保護制御とスタビリティ制御との切り替え領域でよりシームレスなトルク変化にする例である。なお、構成は参考例1と同様であるので、図示並びに説明を省略する。
[モータトラクション制御処理]
図20は実施例2のブレーキコントローラ5及び統合コントローラ6にて実行されるモータトラクション制御処理の流れを示すフローチャートで、以下、各ステップについて説明する(モータトラクション制御手段)。なお、ステップS61〜ステップS71のそれぞれのステップは、図15のステップS41〜ステップS51のそれぞれのステップと同じ処理を行うので、説明を省略する。
ここで、条件成立時のトルクダウン量を緩やかな勾配にて変化させる場合、操舵角が大きいほどトルクダウン量の変化速度を低下させる。
ここで、条件成立時のトルクダウン量を緩やかな勾配にて変化させる場合、ステップS74と同様に、操舵角が大きいほどトルクダウン量の変化速度を低下させる。
部品保護優先フラグがセット中であって、部品保護制御を実行している時にVDCシステムでのスタビリティ制御が介入してきた場合の作用を図21に基づき説明する。
実施例2の車両のモータトラクション制御装置にあっては、参考例1の(1),(2),(3)および実施例1の(6)の効果に加え、下記に列挙する効果を得ることができる。
・各車輪速および単位車輪荷重当たりの制駆動力の組み合わせを表す車輪毎の点を2次元座標上に表記し、これらの点を代表する直線を求めて路面摩擦係数を推定する手段
・駆動スリップ中の制限されたモータトルク出力値を路面摩擦係数相当値とする手段
・スリップ開始時のモータトルク出力値を路面摩擦係数相当値とする手段
・インフラからの路面μ情報の読み込み手段
等を用いても良い。
実施例1,2では、1つのエンジンと2つのモータジェネレータと動力分割機構を備えたハイブリッド車への適用例を示したが、本発明のモータトラクション制御装置は、他のパワーユニット構造を備えたハイブリッド車や電気自動車や燃料電池車やモータ4WD車等、要するに、駆動輪を駆動する動力源に少なくとも1つのモータが装備された車両であれば適用することができる。
MG1 第1モータジェネレータ
MG2 第2モータジェネレータ(モータ)
OS 出力スプロケット
TM 動力分割機構
1 エンジンコントローラ
2 モータコントローラ
3 パワーコントロールユニット
4 バッテリ
5 ブレーキコントローラ
6 統合コントローラ
7 アクセル開度センサ
8 車速センサ
9 エンジン回転数センサ
10 第1モータジェネレータ回転数センサ
11 第2モータジェネレータ回転数センサ
12 前左車輪速センサ
13 前右車輪速センサ
14 後左車輪速センサ
15 後右車輪速センサ
16 操舵角センサ
17 マスタシリンダ圧センサ
18 ブレーキストロークセンサ
19 ブレーキ液圧ユニット
20 前左車輪ホイールシリンダ
21 前右車輪ホイールシリンダ
22 後左車輪ホイールシリンダ
23 後右車輪ホイールシリンダ
24,25,26 双方向通信線
27 ヨーレートセンサ
28 横加速度センサ
Claims (8)
- 駆動輪を駆動する動力源に装備された少なくとも1つのモータと、駆動輪の駆動スリップを検出し、モータトルクダウン制御により駆動輪のグリップを回復させるモータトラクション制御手段と、を備えた車両のモータトラクション制御装置において、
前記モータトラクション制御手段は、
部品保護のための第1トルクダウン量を演算する部品保護制御部と、車両挙動を安定させるための第2トルクダウン量を演算するスタビリティ制御部と、を有し、前記部品保護制御部による第1トルクダウン量と前記スタビリティ制御部による第2トルクダウン量のうち、トルクダウン量が大きい方を制御目標トルクダウン量として選択すると共に、
前記部品保護制御部と前記スタビリティ制御部との一方を優先して選択する優先選択手段を有し、前記優先選択手段により前記部品保護制御部が優先して選択されているとき、前記部品保護制御部による第1トルクダウン量が前記スタビリティ制御部による第2トルクダウン量以上の場合には、優先順位のとおり前記部品保護制御部による第1トルクダウン量を制御目標トルクダウン量として選択し、前記スタビリティ制御部による第2トルクダウン量の方が前記部品保護制御部による第1トルクダウン量よりも大きい場合には、優先順位を無視して前記スタビリティ制御部による第2トルクダウン量を制御目標トルクダウン量として選択する
ことを特徴とする車両のモータトラクション制御装置。 - 請求項1に記載された車両のモータトラクション制御装置において、
前記部品保護制御部は、前記モータが連結された駆動輪の角加速度により駆動スリップを検出し、角加速度が設定閾値を超えるとモータトルクダウン制御を行う角加速度制御部であることを特徴とする車両のモータトラクション制御装置。 - 請求項1または請求項2に記載された車両のモータトラクション制御装置において、
前記スタビリティ制御部は、前記モータが連結された駆動輪のスリップ率またはスリップ量により駆動スリップを検出し、前記スリップ率またはスリップ量が駆動輪の路面グリップを確保する適正範囲に収まるようにモータトルクダウン制御を行うことを特徴とする車両のモータトラクション制御装置。 - 請求項1乃至3の何れか1項に記載された車両のモータトラクション制御装置において、
前記モータトラクション制御手段は、前記優先選択手段により前記部品保護制御部が優先して選択されているとき、前記部品保護制御部による第1トルクダウン量が前記スタビリティ制御部による第2トルクダウン量以上の場合であり、前記部品保護制御部による第1トルクダウン量が減少傾向、かつ、前記スタビリティ制御部による第2トルクダウン量が増加傾向であるときには、制御目標トルクダウン量を条件成立時の値に保持することを特徴とする車両のモータトラクション制御装置。 - 請求項1乃至3の何れか1項に記載された車両のモータトラクション制御装置において、
前記モータトラクション制御手段は、前記優先選択手段により前記部品保護制御部が優先して選択されているとき、前記部品保護制御部による第1トルクダウン量が前記スタビリティ制御部による第2トルクダウン量以上の場合であり、前記部品保護制御部による第1トルクダウン量が減少傾向、かつ、前記スタビリティ制御部による第2トルクダウン量が増加傾向であるときには、制御目標トルクダウン量を、条件成立時の値から、前記部品保護制御部による第1トルクダウン量よりも緩やかな勾配にて減少変化させることを特徴とする車両のモータトラクション制御装置。 - 請求項1乃至5の何れか1項に記載された車両のモータトラクション制御装置において、
前記モータトラクション制御手段は、前記優先選択手段により前記部品保護制御部が優先して選択されているとき、前記部品保護制御部による第1トルクダウン量よりも前記スタビリティ制御部による第2トルクダウン量の方が大きい場合であり、前記部品保護制御部による第1トルクダウン量が増加傾向、かつ、前記スタビリティ制御部による第2トルクダウン量が減少傾向であるときには、制御目標トルクダウン量を条件成立時の値に保持することを特徴とする車両のモータトラクション制御装置。 - 請求項1乃至5の何れか1項に記載された車両のモータトラクション制御装置において、
前記モータトラクション制御手段は、前記優先選択手段により前記部品保護制御部が優先して選択されているとき、前記部品保護制御部による第1トルクダウン量よりも前記スタビリティ制御部による第2トルクダウン量の方が大きい場合であり、前記部品保護制御部による第1トルクダウン量が増加傾向、かつ、前記スタビリティ制御部による第2トルクダウン量が減少傾向であるときには、制御目標トルクダウン量を、条件成立時の値から、前記スタビリティ制御部による第2トルクダウン量よりも緩やかな勾配にて減少変化させることを特徴とする車両のモータトラクション制御装置。 - 請求項5または請求項7に記載された車両のモータトラクション制御装置において、
操舵角を検出する操舵角検出手段を設け、
前記モータトラクション制御手段は、操舵角が大きいほど制御目標トルクダウン量の変化速度を低下させることを特徴とする車両のモータトラクション制御装置。
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