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JP4888993B2 - 内接式遊星歯車機構(インボリュート型減速機構) - Google Patents

内接式遊星歯車機構(インボリュート型減速機構) Download PDF

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本発明は、主としてモーター減速機に使われる内接式遊星歯車機構の技術に関するものである。
従来の減速機用の内接式遊星歯車機構としては、固定式太陽内歯車の中に味噌擂り運動をする遊星歯車が噛みあって設けられ、この遊星歯車をクランクで回転させて減速させるものが知られている(例えば、非特許文献1参照。)。
このような従来の減速機用の内接式遊星歯車機構では、側面歯形が干渉をするように設計されており、また、側面干渉する歯形に設計することが一般的に常識とされていた。
また、内接式遊星歯車機構の場合は、最大の減速比を得ることのできる1枚歯数差のものは、歯先の干渉を生じるため実現不可能とされており、現在のところ商品化されているものは見当たらない。
サイクロ減速機6000シリーズ(住友重機械)E−24頁
上述の如く、従来の内接式遊星歯車機構では、内歯車と外歯車との歯数差が少ないほど大きい減速比が得られるが、一般のインボリュート型では歯先の干渉を生じるために、この機構を1枚歯数差で利用することはできないとされていた。
本発明は、従来実現不可能とされていたインボリュート型で1枚歯数差の内接式遊星歯車機構を実現することを目的としている。
本発明者らは、1枚歯数差の内接式遊星歯車機構実現のために、種々のアイデアを出し、工夫をし、試作品を作製して努力した結果、本発明に係る内接式遊星歯車機構(インボリュート型の減速機構)を完成した。
本発明の第1の観点からは、歯数40のインボリュート内歯車と、歯先干渉がない所定の転位係数を有する歯数39のインボリュート外歯車とからなり、前記インボリュート外歯車が偏心運動する内接式遊星歯車機構であって、インボリュート内歯車の転位係数とインボリュート外歯車の転位係数の合計値が1.2とされ、インボリュート内歯車の転位係数が1.0、インボリュート外歯車の転位係数が0.2となされたことを特徴とする内接式遊星歯車機構が提供される。通常の設計においては、インボリュート内歯車と外歯車の転位係数は、歯車の噛み合い効率を考慮して、日本歯車工業会の歯車規格であるJGMA(日本歯車工業会規格)の与えられている許容値の範囲内の値にするのであるが、あえて、許容値の範囲外の値で設計したのである。
すなわち、JGMAの与えられている許容値の範囲内では、通常、インボリュート内歯車の転位係数とインボリュート外歯車の転位係数の合計値が1を越えることはないが、本発明者らは、インボリュート内歯車の転位係数とインボリュート外歯車の転位係数の合計値が、1より大きく1.24より小さい値の範囲であれば、偏心運動することを前提にしてた場合に、歯先の干渉が生じないことを見い出したのである。外歯車が回転運動ではなく偏心運動することを前提にして、歯先の設計を行ったのである。
1枚の歯数差の内歯車と外歯車の歯先が干渉チェックは、コンピューターシミュレーションを用いて実施し、思考錯誤にパラメータを設定し、幾度も繰り返して行った。歯数40のインボリュート内歯車の中に、歯数39のインボリュート外歯車が噛み合わされた内接式遊星歯車機構を実際に試作し、実用化可能であることを確認したのである。
1枚歯数差の歯数40のインボリュート内歯車と歯数39のインボリュート外歯車とからなる内接式遊星歯車機構をコンピューターシミュレーションしたところ、歯数40のインボリュート内歯車の転位係数を1.0となし、歯数39の外歯車のインボリュート外歯車の転位係数を0.2とした場合に、歯先の干渉を防ぐことができ、スムーズに偏心運動できることを知見したのである。実際に試作機も製作し、がたつきが無く極めてスムーズに回転することを確認した。
また、好ましくは、歯数40のインボリュート内歯車の中に、歯数39のインボリュート外歯車1個とバランスウエイトを設けることが良い。このバランスウエイトにより振動が緩和されるからである。
また、歯数40のインボリュート内歯車が固定式となされ、歯数39のインボリュート外歯車が遊動しうるようになされた内接式遊星歯車機構とすることで、小型軽量にできる利点がある。
逆に、歯数40のインボリュート内歯車が遊動しうるようになられ、歯数39のインボリュート外歯車が固定式となされた内接式遊星歯車機構としても良い。
また、本発明の別の観点からは、第1の観点の内接式遊星歯車機構において、インボリュート内歯車2個を所定角度だけずらして対称に重ね合わせて、インボリュート内歯車2個の中に、内歯車2個分の厚みを有するインボリュート外歯車1個が設けられた内接式遊星歯車機構が提供される。
この構成にすることで、インボリュート外歯車1個が、所定角度だけずらして対称に重ね合わせたインボリュート内歯車2個の中を偏心運動することで、バックラッシを無くすことが可能となるのである。
また、本発明のさらに別の観点からは、第1の観点の内接式遊星歯車機構において、インボリュート内歯車2個を対称に重ね合わせ、前記インボリュート内歯車2個の中に、所定角度だけずらして対称に重ね合わせられたインボリュート外歯車2個が設けられた内接式遊星歯車機構が提供される。この場合も、バックラッシを無くすことが可能となるのである。
本発明に係る内接式遊星歯車機構では、1/40の減速が高効率で容易に得られるといった効果を有する。実際に製作し、現在、量産化に向けた開発を行っているところである。
また、本発明に係る内接式遊星歯車機構は、インボリュート型の歯車構造をとっているため、従来から1枚歯数差の内接式遊星歯車機構として採用されてきたサイクロイド型と比較して、歯先に焼きが入れやすく硬度を高めることができ、また、サイクロイド型とは異なり、部品点数も少なくてすみ、また、ピンなどを用いないことから容易にコンパクト化が可能である。
さらに、本発明に係る内接式遊星歯車機構は、インボリュート型の歯車構造をとっているため、サイクロイド型とは異なり、ピンのせん断の心配がなく、同じ材質、同じ歯数で比較した場合に許容トルクが2倍程度大きいといった効果もある。
以下、本発明に係る内接式遊星歯車機構の実施形態について、図面を参照しながら、詳細に説明していく。
図1は、本発明の内接式遊星歯車機構の一実施例を示す図である。ケーシングを兼ねる固定された内歯車1は、歯数が40でモジュール2のインボリュート内歯車(転位係数1.0)であって、この中に、歯数が39でモジュール2のインボリュート外歯車(転位係数0.2)2が噛み合わされて設けられている。歯数差は1で、内歯車の歯10と外歯車の歯20が干渉無く噛み合っている。
ここで、3はローラー付き出力ピンであり、外歯車2の出力孔22の中に配設されている。4は転がり軸受け、5は偏心体である。
上記構造の内接式遊星歯車機構では、偏心体5からの回転入力は、外歯車2に伝達されるが、固定された内歯車1と遊星運動する外歯車2とのインボリュート歯同士の噛み合いで味噌擂り運動し、回転は1/40に減速される。内歯車の歯10と外歯車の歯20が干渉することなく噛み合って回る。
このとき、外歯車2の運動は、出力孔22を介してローラー付き出力ピン3に伝達され、回転力として減速して軸出力されることとなる。
下表1に、試作した本発明の内接式遊星歯車機構の一実施例の寸法等を示す。
なお、上記内歯車1を固定式とせず、外歯車2の方を固定式とし、内歯車1が味噌擂り運動をするようにしても良い。その場合は、偏心体5の動きを内歯車1に伝達する仕組みとすることができる。
次に、本発明の他の実施例を説明する。図2に、本発明の内接式遊星歯車機構の第2の実施例を示す図である。
ケーシングを兼ね、固定された内歯車1は、歯数が40でモジュール2、転位係数1.0のインボリュート内歯車であって、この中に、遊星外歯車2が設けられている。外歯車2は、歯数は39でモジュール2、転位係数0.2のインボリュート外歯車であって、内歯車1と噛み合わされている。内歯車の歯10と外歯車の歯20とは干渉することなく噛み合う。3はローラー付き出力ピンであり、外歯車2の出力孔22の中に配設されている。4は転がり軸受け、5は偏心体である。そして、6はバランスウエイトである。このバランスウエイト6を設けることにより、外歯車が回転時にバランスが良くなり、振動が少なくなるのである。
図3と図4に、本実施例2に係る内接式遊星歯車機構を用いたモーター減速機の平面断面図と側面断面図を示す。モーター減速機のケーシングの内壁に外歯車2が形成されているのであるが、図4のモーター減速機の側面断面図における断面a−a´が、図3に示すもので、本実施例2に係る内接式遊星歯車機構である。外歯車2は、ローラー31が付された出力ピン32によって支えられ、偏心運動できるようになっている。モーター軸35が回転することにより、外歯車2が遊星運動を起こし、固定された内歯車1と遊星運動する外歯車2とのインボリュート歯同士の噛み合いで味噌擂り運動となり、モーター軸35の回転は1/40に減速されて、出力軸33の回転になるのである。
尚、本実施例では、出力ピン32を6本用いているが、これに限定されるものではない。出力軸のトルク負荷により、出力ピン数の増減は可能である。ロボット等の応用を考慮した場合、小型化になることが予想されるが、本発明に係る内接式遊星歯車機構では、部品点数も少なくでき、かつ、トルク負荷のかかる出力ビン数も最小限にできるため、小型化に容易に対応できることが理解できよう。
次に、本発明の内接式遊星歯車機構の第3の実施例を説明する。
先ず、歯数が40で、モジュールが2で、転位係数0.2の一対の同形の固定式のインボリュート内歯車41と42を対称に重ね合わせるように配設される。その中に、歯数39、モジュール2、転位係数0.2のインボリュート外歯車43と44が配設される。外歯車43と44は、所定の角度だけずれて重ね合わせている。この外歯車43と44の歯先のずれは数ミクロン程度である。インボリュート外歯車を所定角度だけずらして対称に重ね合わせることにより、インボリュート外歯車43と44の歯の両側面の干渉が起こり、バックラッシが生じないようにすることができるのである。
図5と図6に、本実施例3に係る内接式遊星歯車機構を用いたモーター減速機の平面断面図と側面断面図を示す。モーター減速機のケーシングの内壁に2つの外歯車4344が形成されているのであるが、図6のモーター減速機の側面断面図における断面b−b´が、図5に示すもので、本実施例3に係る内接式遊星歯車機構である。
図5では、2つの外歯車4344の歯先のずれが最大になる場合を示しているが、実際には、1歯ずれで数ミクロン程度である。
2つの外歯車43と外歯車44は、ローラー48が付された出力ピン47によって支えられ、偏心運動できるようになっている。モーター軸45が回転することにより、2つの外歯車43と外歯車44が各々遊星運動を起こし、固定された内歯車41と内歯車42と、遊星運動する外歯車43と外歯車44とのインボリュート歯同士の噛み合いで味噌擂り運動となり、モーター軸45の回転は1/40に減速されて、出力軸49の回転になるのである。
本発明に係る内接式遊星歯車機構では、1/X減速機として単独もしくは他の歯車と組み合わせて汎用性の高い機械として利用することができ、また、モーターに組み込んでモーター減速機としても有用である。さらに、ロボットのマニュピュレータとして活用が期待できる。
一方で、X倍増速機として風力発電機や波力発電機などにも有用である。
本発明に係る内接式遊星歯車機構の一実施例を示す平面図 本発明に係る内接式遊星歯車機構の他の実施例を示す平面図 実施例2に係る内接式遊星歯車機構を用いたモーター減速機の平面断面図 実施例2に係る内接式遊星歯車機構を用いたモーター減速機の側面断面図 実施例3に係る内接式遊星歯車機構を用いたモーター減速機の平面断面図 実施例3に係る内接式遊星歯車機構を用いたモーター減速機の側面断面図
符号の説明
1 内歯車
2 外歯車
3 ローラー付き出力ピン
4 軸受
5 偏心体
6 バランスウエイト
10 内歯車の歯
20 外歯車の歯
22 出力孔
30 偏心体
31 ローラー
32 出力ピン
33 出力軸
34 出力軸2
35 モーター軸
36 継モーター軸
41 内歯車1
42 内歯車2
43 外歯車1
44 外歯車2
45 モーター軸
46 偏心体
47 出力ピン
48 ローラー
49 出力軸
50 出力軸2

Claims (3)

  1. 歯数40のインボリュート内歯車と、歯先干渉がない所定の転位係数を有する歯数39のインボリュート外歯車とからなり、前記インボリュート外歯車が偏心運動する内接式遊星歯車機構であって、
    インボリュート内歯車の転位係数とインボリュート外歯車の転位係数の合計値が1.2とされ、インボリュート内歯車の転位係数が1.0、インボリュート外歯車の転位係数が0.2となされたことを特徴とする内接式遊星歯車機構。
  2. 前記インボリュート内歯車が固定式となされ、前記インボリュート外歯車が遊動しうるようになされたことを特徴とする請求項1の内接式遊星歯車機構。
  3. 前記インボリュート内歯車が遊動しうるようになされ、前記インボリュート外歯車が固定式となされたことを特徴とする請求項1の内接式遊星歯車機構。
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