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JP4888578B2 - ニッケル酸化鉱石の湿式精錬プラント及びその操業方法 - Google Patents

ニッケル酸化鉱石の湿式精錬プラント及びその操業方法 Download PDF

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Description

本発明は、ニッケル酸化鉱石の湿式精錬プラント及びその操業方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、複数系列の処理設備を有するニッケル酸化鉱石の湿式精錬プラントにおいて、処理設備の一部を運転停止しなければならないトラブル(以下、単に「重大トラブル」ともいう)が発生した場合でも、この重大トラブルによる処理量の減少を最小限にすることのできるニッケル酸化鉱石の湿式精錬プラント及びその操業方法に関する。
近年、ニッケル酸化鉱石の湿式精錬法として、硫酸を用いた高圧酸浸出法(High Pressure Acid Leach)が注目されている。この方法は、乾燥及び焙焼工程等の乾式処理工程を含まず、一貫した湿式工程からなるので、エネルギー的及びコスト的に有利であるとともに、ニッケル品位を50〜60重量%程度まで向上させたニッケル・コバルト混合硫化物が得られる利点を有する。
上記ニッケル・コバルト混合硫化物を得るための高圧酸浸出法は、例えば、図3に示すように、前処理工程(1)と、浸出工程(2)と、固液分離工程(3)と、中和工程(4)と、脱亜鉛工程(5)と、硫化工程(6)と、無害化工程(7)とを含む。
図3に示す前処理工程(1)では、ニッケル酸化鉱石を解砕分級してスラリーとする。浸出工程(2)では、前処理工程(1)で得られたスラリーに硫酸を添加し、220〜280℃で攪拌して高温加圧酸浸出し、浸出スラリーを得る。固液分離工程(3)では、浸出工程(2)で得られた浸出スラリーを固液分離して、ニッケル及びコバルトを含む浸出液(以下、「粗硫酸ニッケル水溶液」という。)と浸出残渣とを得る。中和工程(4)では、固液分離工程(3)で得られた粗硫酸ニッケル水溶液を中和する。脱亜鉛工程(5)では、中和工程(4)で中和した粗硫酸ニッケル水溶液に硫化水素ガスを添加して亜鉛を硫化亜鉛として沈殿除去する。硫化工程(6)では、脱亜鉛工程(5)で得られた脱亜鉛終液に硫化水素ガスを添加してニッケル・コバルト複合硫化物とニッケル貧液を得る。無害化工程(7)では、固液分離工程(3)で発生した浸出残渣と、硫化工程(6)で発生したニッケル貧液とを無害化する(例えば、特許文献1を参照)。
図4、図5に示すように、ニッケル酸化鉱の湿式精錬プラント100(以下、単に「湿式精錬プラント」という)は、例えば、2系列の処理設備、すなわち、I系列の処理設備と、II系列の処理設備とを有する。これら2系列の処理設備は、前処理工程(1)を実行する前処理部(1a、1b)と、浸出工程(2)を実行する浸出部(2a、2b)と、固液分離工程(3)を実行する固液分離部(3a、3b)と、中和工程(4)を実行する中和部(4a、4b)と、脱亜鉛工程(5)を実行する脱亜鉛部(5a、5b)と、硫化工程(6)を実行する硫化部(6a、6b)と、無害化工程(7)を実行する無害化部(7a、7b)とを有する工程処理設備を有する。
また、2系列の処理設備は、上述した工程処理設備以外に、図4に示すように、ボイラーと、用水設備と、電力設備とからなるユーティリティー供給設備8a、8bを備える。また、2系列の処理設備は、図5に示すように、硫化水素供給設備10a、10bと、中和剤供給設備12a、12bと、凝集剤供給設備14a、14bと、各工程を順次連結する送液パイプなどの配管設備とから構成されている。以下、ユーティリティー供給設備8a、8b、硫化水素供給設備10a、10b、中和剤供給設備12a、12b及び凝集剤供給設備14a、14bをそれぞれ単に供給設備とも言う。
図4、図5に示すように、ユーティリティー供給設備8aからの蒸気、用水及び電力は、I系列の工程処理設備に、ユーティリティー供給設備8bからの蒸気、用水及び電力は、II系列の工程処理設備に供給される。硫化水素供給設備10a、10bで得られる硫化水素は、脱亜鉛部5a、5b及び硫化部6a、6bに供給される。中和剤供給設備12a、12bからは、中和部4a、4b及び無害化部7a、7bに中和剤が供給される。凝集剤供給設備14a、14bからは、固液分離部3a、3b及び中和部4a、4bに凝集剤が供給される。また、配管設備は、ユーティリティー供給配管9a、9bと、硫化水素供給配管11a、11bと、中和剤供給配管13a、13bと、凝集剤供給配管15a、15bとから構成される。
このような湿式精錬プラント100の操業においては、主要な中間生成物が液体またはスラリー状である。そのため、湿式精錬プラント100の操業においては、例えば、ボイラーの重大トラブルによって蒸気、用水、電力、硫化水素、凝集剤及び中和剤のうち、何れか一つでも供給されなくなると、湿式精錬プラント100全体を停止させ、重大トラブルを解消させ或いは補修した後に、湿式精錬プラント100全体を再立上げするのが一般的である。したがって、湿式精錬プラント100において、プラント全体を連続的に、かつ高い稼働率で運転するためには、ユーティリティー供給設備8a、8bと、硫化水素供給設備10a、10bと、ケミカル供給設備(中和剤供給設備12a、12b及び凝集剤供給設備14a、14b)とを常にトラブルの無い状態で稼動させる必要がある。
このため、実際の湿式精錬プラント100においては、できるだけ各工程処理設備やその他の設備に一定の負荷がかかるような操業として、この負荷が変動することを避けるようにしている。また、湿式精錬プラント100においては、定期休転(定期点検)の頻度を高くしたり、休転期間を延長したりして設備の点検や、必要に応じて設備の修理を行い、重大トラブルの突発的な発生を防止している。
また、上述した湿式精錬プラント100において、工程(プロセス)のいずれかでトラブルが発生し、一時的にその工程以降の負荷を低く(ランプダウン)しなければならない事態が発生することは避けられない。そのため、湿式精錬プラント100は、ランプダウンした場合に処理量を下げないようにするために、通常、緊急用貯槽を設けている。
このように緊急用貯槽を設けることにより、トラブルが発生した工程より前の工程の負荷をそのまま、あるいは負荷を低減し、過剰となるプロセス液を緊急用貯槽に貯液する。また、トラブルが解消された後に、工程の負荷を高く(ランプアップ)して、通常の負荷と共に緊急用貯槽に貯液したプロセス液を繰り返し処理する。これにより、四半期毎、或いは年間の処理目標量を達成することが可能となる。
ところで、こうした緊急避難的な対応は、緊急用貯槽の大きさにもよるが、湿式精錬プラント100の復旧に必要な時間が、例えば、通常8時間以内の場合には有効である。しかし、湿式精錬プラント100の復旧に必要な時間が8時間を超えると、プロセス液が緊急用貯槽の限界まで貯液され、操業を停止せざるを得なくなる。
図4、図5に示す実際の湿式精錬プラント100の前処理部1a、1bで発生しやすい重大なトラブルの一つとして、次のような問題がある。すなわち、ドラムとトロンメルとが連結して構成されるドラムウオッシャーで採掘されたニッケル酸化鉱石を解砕分級する際に、トロンメル内でニッケル酸化鉱石がショートパスし、そのまま系外に払い出され、所定の操業実績が得られなくなる。
この問題に対して、ドラムウオッシャーのトロンメルの内面で、トロンメルの回転軸に対して垂直断面となる同一円周上に、円周上の断面形状が略長方形であり、特定の要件を満足する突起を、トロンメルの目開きの4倍程度の間隔で配置した突起列を形成することにより、トラブル発生を防止する方法が提案されている(特許文献2を参照)。
また、図4、図5に示す硫化部6a、6bで発生しやすい重大なトラブルの一つとして、硫化部6a、6bで生成したニッケル・コバルト混合硫化物が、反応容器内面に付着しスケールとして成長し、装置が機能しなくなったり破壊されたりするという問題がある。
この問題に対して、硫化部6a、6bでは、脱亜鉛部5a、5bからの脱亜鉛終液中のニッケル量の4〜6倍のニッケル量に当たるニッケル硫化物を種晶として循環使用することにより、スケールの成長を防止する方法が提案されている(特許文献3を参照)。
このように、湿式精錬プラント100では、硬い鉱石粒子をスラリーとして用いることや、反応容器内面に付着しやすいニッケル・コバルト混合硫化物を生成させるというプロセス特有の理由から、上記トラブルを代表例として、様々なトラブルが多発する。そのため、実際の湿式精錬プラント100の稼働率は、さほど高いものとなっていないのが一般的である。
特に、図4、図5に示す浸出部2a、2bでは、上述した各供給設備に重大トラブルが発生した際に、一般的には、まず、常温まで降温、常圧まで降圧してからでなければ、湿式精錬プラント100全体を停止させることができない。また、浸出部2a、2bでは、重大トラブルが解消した後も、所定の温度および圧力に昇温、昇圧してからでなければ、湿式精錬プラント100全体の稼動を再開させることができない。
通常、浸出部2a、2bにおいて、常温まで降温、常圧まで降圧するために要する時間と、所定の温度および圧力まで昇温、昇圧するために要する時間とを合計すると、1日から2日の時間(以下、「準備時間」という)を要するのが一般的である。すなわち、浸出部2a、2bにおいては、処理設備を停止する際に、処理設備を立ち下げ、その後処理設備を再び立ち上げるのに多大な準備時間を要する。浸出部2a、2bにおいては、準備時間が月に1回発生しただけで、不具合無く連続操業できた場合に比べて月間30日稼動日の単純計算で約5%の減産となる。このような減産は、実操業上で大きな問題である。
また、近年、ニッケル酸化鉱の処理量を増加してニッケル・コバルト混合硫化物の生産量を増加させるという強い要請がある。この要請を満足させるために、上述した各工程の工程処理設備を複数系列とすることが行われている。
しかしながら、上述した工程処理設備を複数系列としても、それぞれの系列で上述したトラブルが同様な頻度で起こる。したがって、例えば、上述した工程処理設備を2系列とした場合に、重大トラブルの発生により2系列としたメリットが出るどころか、処理能力が1系列のフル操業に満たない場合すらある。
特開2005−350766号公報 特開2009−173967号公報 特開2008−231470号公報
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、2系列以上の処理設備を有する湿式精錬プラントにおいて、ある系列の処理設備のユーティリティー供給設備、硫化水素供給設備、中和剤供給設備及び凝集剤供給設備のうち少なくとも1つに重大トラブルが発生した場合でも、処理量の減少を最小限にすることができるニッケル酸化鉱石の湿式精錬プラント及びその操業方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために、種々の検討を行った結果、各系列の処理設備のうち、ユーティリティー供給設備、硫化水素供給設備及びケミカル供給設備を連結することにより上記課題を解決できることを見出して本発明に至った。
すなわち、本発明に係るニッケル酸化鉱石の湿式精錬プラントは、前処理部、浸出部、固液分離部、中和部、脱亜鉛部、硫化部及び無害化部を有する工程処理設備と、前記前処理部、前記浸出部、前記固液分離部、前記中和部、前記脱亜鉛部、前記硫化部及び前記無害化部に、蒸気、用水及び電力を含むユーティリティーを供給するユーティリティー供給設備と、前記脱亜鉛部及び前記硫化部に硫化水素を供給する硫化水素供給設備と、前記固液分離部及び前記中和部に凝集剤を供給する凝集剤供給設備と、前記中和部及び前記無害化部に中和剤を供給する中和剤供給設備とを含む一連の処理設備を2系列以上有するニッケル酸化鉱の湿式精錬プラントにおいて、各系列における前記ユーティリティー供給設備同士、前記硫化水素供給設備同士、前記凝集剤供給設備同士及び前記中和剤供給設備同士は、各々前記ユーティリティー、前記硫化水素、前記凝集剤及び前記中和剤を共有可能に連結する連結設備をさらに備えることを特徴とする。
また、前記各連結設備は、前記供給設備が前記ユーティリティー、前記硫化水素、前記凝集剤及び前記中和剤を供給する最上流部分で、該各供給設備を連結することを特徴とする。また、前記2系列以上の処理設備は、それぞれ同程度の処理能力を有することを特徴とする。さらに、前記系列の数は、2系列であることを特徴とする。また、前記連結設備は、開閉機構を有することを特徴とする。
本発明に係るニッケル酸化鉱石の湿式精錬プラントの操業方法は、前記ニッケル酸化鉱石の湿式精錬プラントを使用することを特徴とする。
本発明に係るニッケル酸化鉱石の湿式精錬プラントの操業方法は、各系列における前記ユーティリティー供給設備、前記硫化水素供給設備、前記凝集剤供給設備及び前記中和剤供給設備のうち、少なくともいずれか1つの運転が停止した場合には、前記各系列の処理設備の操業度を下げることを特徴とする。
本発明では、湿式精錬プラントにおいて、各供給設備が各々連結設備により連結されているため、ある系列の処理設備の少なくとも1つの供給設備に重大トラブルが発生した場合でも、処理設備の停止を最小限にして、処理量の減少を最小限にすることができる。したがって、本発明では、各系列の処理設備の同じ供給設備に同時に重大トラブルが発生しない限り、浸出部を停止させることなく湿式精錬プラントの操業を継続することができるため、浸出工程での処理量の減少を最小限にすることができる。
本発明の湿式精錬プラントを模式的に示す概略図である。 本発明の湿式精錬プラントを模式的に示す概略図である。 高圧酸浸出法の概略工程を示すフローチャートである。 従来の湿式精錬プラントを模式的に示す概略図である。 従来の湿式精錬プラントを模式的に示す概略図である。
以下、本発明を適用した湿式精錬プラントの具体的な実施の形態の一例について、図面を参照しながら以下の順序で説明する。
1.湿式精錬プラント
1−1.工程処理設備
1−2.供給設備
2.重大トラブルが発生した場合の湿式精錬プラントの操業(運転)方法
3.他の実施の形態
4.実施例
<1.湿式精錬プラント>
本発明に係る湿式精錬プラントは、前処理工程、浸出工程、固液分離工程、中和工程、脱亜鉛工程、硫化工程及び無害化工程を実行する一連の処理設備を2系列以上有する。このように湿式精錬プラントが一連の処理設備を2系列以上有することにより、例えば、原料であるニッケル酸化鉱の処理量を増加してニッケル・コバルト混合硫化物の生産量を増加させることができる。
以下、一連の処理設備を2系列有する湿式精錬プラントを例に挙げて説明する。
図1、図2に示すように、本発明に係る湿式精錬プラント20は、2系列の処理設備、すなわち、I系列の処理設備と、II系列の処理設備とを有する。これらの処理設備は、前処理部(1a、1b)と、浸出部(2a、2b)と、固液分離部(3a、3b)と、中和部(4a、4b)と、脱亜鉛部(5a、5b)と、硫化部(6a、6b)と、無害化部(7a、7b)とを有する工程処理設備を備える。以下、工程処理設備において、各系列の処理設備を個別に説明する場合を除いて、前処理部1、浸出部2、固液分離部3、中和部4、脱亜鉛部5、硫化部6又は無害化部7という。
<1−1.工程処理設備>
前処理部1は、例えば粉砕機等の前処理設備で構成され、原料となるニッケル酸化鉱石を解砕分級してスラリーとする前処理工程を実行する。ニッケル酸化鉱石としては、例えば、リモナイト鉱やサプロライト鉱等のいわゆるラテライト鉱が用いられる。
浸出部2は、前処理部1で得られたスラリーに硫酸を添加し、220〜280℃で攪拌して高温加圧で酸浸出し、浸出残渣と浸出液とからなる浸出スラリーを得る浸出工程を実行する。浸出部2は、例えば、浸出設備として高温加圧容器(オートクレーブ)が用いられる。具体的に、浸出部2においては、例えば、下記の式(1)〜(5)で表される浸出反応と高温熱加水分解反応によって、ニッケル、コバルト等の硫酸塩としての浸出と、浸出された硫酸鉄のヘマタイトとしての固定化が行われる。しかしながら、鉄イオンの固定化は、完全には進行しないので、得られる浸出スラリーの液部分には、通常ニッケル、コバルト等のほか、2価と3価の鉄イオンが含まれる。
「浸出反応」
MO+HSO→MSO+HO (1)
(式中Mは、Ni、Co、Fe、Zn、Cu、Mg、Cr、Mn等を表す。)
2Fe(OH)+3HSO→Fe(SO+6HO (2)
FeO+HSO→FeSO+HO (3)
「高温熱加水分解反応」
2FeSO+HSO+(1/2)O→Fe(SO+HO (4)
Fe(SO+3HO→Fe+3HSO (5)
固液分離部3は、浸出部2で得た浸出スラリーを固液分離し、ニッケル及びコバルトを含む浸出液(粗硫酸ニッケル水溶液)と浸出残渣とを得る固液分離工程を実行する。固液分離工程は、浸出部2で形成される浸出スラリーから、浸出残渣に付着して廃棄されるニッケル等を粗硫酸ニッケル水溶液中に分離回収するため有効である。例えば、固液分離部3は、浸出スラリーを洗浄液と混合した後、後述する凝集剤供給設備14a、14bから供給される凝集剤を用いて、固液分離設備であるシックナーで固液分離を行う。これにより、スラリーが洗浄液により希釈され、浸出残渣がシックナーの沈降物として濃縮されるので、浸出残渣に付着するニッケル分をその希釈の度合に応じて減少させることができる。凝集剤としては、例えばアニオン系の凝集剤が用いられる。
中和部4は、例えば中和槽等の中和設備で構成され、固液分離部3で得られた粗硫酸ニッケル水溶液を中和する中和工程を実行する。具体的に、中和部4では、粗硫酸ニッケル水溶液の酸化を抑制しながら、凝集剤供給設備14a、14bから供給される凝集剤と、後述する中和剤供給設備12a、12bから供給される中和剤とを添加し、3価の鉄を含む中和澱物スラリーと、ニッケル回収用母液とを形成する。これにより、中和部4では、過剰の酸の中和を行うとともに、溶液中に残留する3価の鉄イオンの除去を行うことができる。中和剤としては、例えば、炭酸カルシウムが用いられる。また、中和部4では、中和工程でのpHを3.2〜3.8とするのが好ましい。このようなpHの範囲にすることにより、ニッケルの水酸化物の発生が多くなるのを防止することができる。中和部4では、中和工程での温度を50〜80℃とするのが好ましい。50℃未満とすると、澱物が微細となり、固液分離工程へ悪影響を及ぼし、80℃を超えると、装置材料の耐食性の低下や加熱のためのエネルギーコストの増大を招くためである。
脱亜鉛部5は、中和部4で中和した粗硫酸ニッケル水溶液に硫化水素供給設備10a、10bから供給される硫化水素ガスを添加して、亜鉛を硫化亜鉛として沈殿除去し、脱亜鉛溶液を得る脱亜鉛工程を実行する。
硫化部6は、脱亜鉛部5で得られた脱亜鉛溶液に、硫化水素供給設備10a、10bから供給される硫化水素ガスを添加してニッケル・コバルト混合硫化物とニッケル貧液とを得る硫化工程を実行する。このニッケル貧液は、硫化されずに含まれる鉄、マグネシウム、マンガン等の不純物の他に、回収ロスであるニッケル及びコバルトを僅かに含む。
無害化部7は、固液分離部3で発生した浸出残渣と、硫化部6で発生したニッケル貧液とを、中和剤供給設備12a、12bから供給される中和剤により無害化する無害化工程を実行する。以上のような工程処理設備により、湿式精錬プラント20では、高いニッケル収率を達成することができる。
<1−2.供給設備>
湿式精錬プラント20は、図1、図2に示すように、ユーティリティー供給設備8a、8bと、硫化水素供給設備10a、10bと、中和剤供給設備12a、12bと、凝集剤供給設備14a、14bとを有する。以下、これらの供給設備は、各系列の処理設備を個別に説明する場合を除いて、ユーティリティー供給設備8、硫化水素供給設備10、中和剤供給設備12及び凝集剤供給設備14という。
ユーティリティー供給設備8は、例えば、ボイラーと、用水設備と、電力設備とからなる。ボイラーは、各工程処理設備の反応温度制御をするための蒸気を得るものである。ボイラーから得られる蒸気は、必要に応じて上述した工程処理設備に供給される。用水設備は、各工程処理設備で用いられる用水を供給するための設備である。用水設備で得られる用水は、必要に応じて上述した工程処理設備に供給される。電力設備は、各工程処理設備で用いられる電力を供給するための設備である。電力設備で得られる電力は、必要に応じて上述した工程処理設備に供給される。
ユーティリティー供給設備8aと、I系列の工程処理設備とは、ユーティリティー供給配管9aによって連結されている。また、ユーティリティー供給設備8bと、II系列の工程処理設備とは、ユーティリティー供給配管9bによって連結されている。さらに、ユーティリティー供給配管9aと、ユーティリティー供給配管9bとは、ユーティリティー連結設備16によって連結されている。
ユーティリティー連結設備16は、例えば、ユーティリティー供給配管9a、9bと同様に構成される。ユーティリティー連結設備16は、ユーティリティー(蒸気、用水及び電力)の供給の最上流部分でユーティリティー供給配管9aと、ユーティリティー供給配管9bとを連結する。すなわち、ユーティリティー連結設備16は、例えば、ユーティリティー供給配管9aと、ユーティリティー供給設備8aとの接続部付近と、ユーティリティー供給配管9bと、ユーティリティー供給設備8bとの接続部付近とを連結する。このように、各系列のユーティリティー供給設備をユーティリティー連結設備16で連結して供給物を互いに共有可能とすることで、例えばユーティリティー供給設備8aに重大トラブルが発生した場合においても、ユーティリティー供給設備8bからのユーティリティーを各系列の工程処理設備に効率的に供給することができる。
硫化水素供給設備10は、硫化水素ガスを製造し、製造した硫化水素ガスを必要に応じて脱亜鉛部5及び硫化部6に供給する。硫化水素供給設備10aと、脱亜鉛部5a及び硫化部6aとは、硫化水素供給配管11aによって連結されている。また、硫化水素供給設備10bと、脱亜鉛部5b及び硫化部6bとは、硫化水素供給配管11bによって連結されている。さらに、硫化水素供給配管11aと、硫化水素供給配管11bとは、硫化水素連結設備17によって連結されている。
硫化水素連結設備17は、例えば硫化水素供給配管11と同様に構成されている。また、硫化水素連結設備17は、硫化水素の供給の最上流部分で硫化水素供給配管11aと、硫化水素供給配管11bとを連結することで、各系列の工程処理設備で硫化水素を互いに共有可能とする。すなわち、硫化水素連結設備17は、例えば、硫化水素供給設備10aと硫化水素供給配管11aとの接続部付近と、硫化水素供給設備10bと硫化水素供給配管11bとの接続部付近とを連結する。これにより、例えば、硫化水素供給設備10a(10b)に重大トラブルが発生した場合においても、硫化水素連結設備17を介して硫化水素供給設備10b(10a)から各系列の工程処理設備に硫化水素を効率的に供給することができる。
中和剤供給設備12は、必要に応じて中和部4及び無害化部に上述した中和剤を供給する。中和剤供給設備12aと、中和部4a及び無害化部7aとは、中和剤供給配管13aによって連結されている。また、中和剤供給設備12bと、中和部4b及び無害化部7bとは、中和剤供給配管13bによって連結されている。さらに、中和剤供給配管13aと、中和剤供給配管13bとは、中和剤連結設備18によって連結されている。
中和剤連結設備18は、例えば中和剤供給配管13と同様に構成されている。中和剤連結設備18は、中和剤の供給の最上流部分でこれら中和剤供給配管13aと、中和剤供給配管13bとを連結することで、各系列の工程処理設備で中和剤を互いに共有可能とする。すなわち、中和剤連結設備18は、例えば、中和剤供給設備12aと中和剤供給配管13aとの接続部付近と、中和剤供給設備12bと中和剤供給配管13bとの接続部付近とを連結する。これにより、例えば、中和剤供給設備12aに重大トラブルが発生した場合においても、中和剤連結設備18を介して中和剤供給設備12bから各系列の工程処理設備に中和剤を効率的に供給することができる。
凝集剤供給設備14は、必要に応じて上述した凝集剤を、固液分離部3と、中和部4とに供給する。凝集剤供給設備14aと、固液分離部3a及び中和部4aとは、凝集剤供給配管15aによって連結されている。また、凝集剤供給設備14bと、固液分離部3b及び中和部4bとは、凝集剤供給配管15bによって連結されている。さらに、凝集剤供給配管15aと、凝集剤供給配管15bとは、凝集剤連結設備19によって連結されている。
凝集剤連結設備19は、例えば凝集剤供給配管15と同様に構成されている。凝集剤連結設備19は、凝集剤の供給の最上流部分で凝集剤供給配管15aと、凝集剤供給配管15bとを連結することで、各系列の工程処理設備で凝集剤を互いに共有可能とする。すなわち、凝集剤連結設備19は、例えば、凝集剤供給設備14aと凝集剤供給配管15aとの接続部付近と、凝集剤供給設備14aと凝集剤供給配管15aとの接続部付近とを連結する。これにより、例えば、凝集剤供給設備14aに重大トラブルが発生した場合においても、凝集剤連結設備19を介して凝集剤供給設備14bから各系列の工程処理設備に凝集剤を効率的に供給することができる。
また、上述した連結設備は、移動する供給物の量を遮断、調整等するための開閉機構(遮断機構)を有することが好ましい。例えば、ユーティリティー連結設備16には、蒸気、用水であればコントロールバルブ、電気であれば開閉器を設けることが好ましい。また、硫化水素連結設備17、中和剤連結設備18及び凝集剤連結設備19には、例えば、コントロールバルブを設けることが好ましい。
各連結設備は、必要に応じてこの開閉機構を作動させて、連結を解除することにより、2系列の処理設備を有する湿式精錬プラント20を独立した1系列の処理設備としても稼動させることができる。
このように、湿式精錬プラント20は、開閉機構を有する連結設備を備えることにより、組成の異なる原料を処理する必要がある場合や、同じ組成の原料でも処理条件を変更させる必要がある場合に、好ましく対応することが可能となる。また、湿式精錬プラント20は、開閉機構で移動する供給物の量を調整することにより、重大トラブル発生による処理量の減少を最小限にして操業を継続できるため、重大トラブル解消後の立ち上げも早くすることができる。
また、湿式精錬プラント20においては、複数系列の一連の処理設備を、ほぼ同じ位置に設置するのが好ましい。これにより、ニッケル酸化鉱(原料)の運搬、ニッケル・コバルト混合硫化物(製品)搬出などを、より効率的に操業することができる。
また、湿式精錬プラント20では、ニッケル酸化鉱の採掘可能年数、操業に欠かせない水の供給能力、プラント敷地の余裕など考慮すべき事項は多々あるものの、条件が許せば、各系列の処理設備が同程度の処理能力を有することが好ましい。これにより、後に詳述するように湿式精錬プラント20で重大トラブルが発生した場合に、各系列の供給処理設備や各系列の工程処理設備の制御を容易に行うことができる。また、各個別設備における実操業上の運転・操作マニュアルが、別系列であっても実質的に同じものとすることができるため、作業員の教育コストを低減することができる。さらに、各処理設備が同程度の処理能力を有することにより、別系列の処理設備における処理能力を勘違いするポカミス・ヒューマンエラーを低減することができ、作業員の勤務構成の組み方に余裕をもたせることができる。
以上説明したように、湿式精錬プラント20では、各供給設備が連結設備により連結されているため、例えば、ある系列の処理設備の少なくとも1つの供給設備に重大トラブルが発生した場合でも、連結設備を介して供給物を他の系列の工程処理設備に供給することで、浸出部2の運転停止を防止することができる。したがって、湿式精錬プラント20では、各系列の同じ供給設備に同時に重大トラブルが発生しない限り、浸出部2を停止させることなく操業を継続することができるため、浸出工程での処理量の減少を最小限にすることができる。
<2.重大トラブルが発生した場合の湿式精錬プラントの操業方法>
次に、重大トラブルが発生した場合の湿式精錬プラント20の操業方法の一例について説明する。以下の説明では、便宜的に上述した図1及び図2に示す湿式精錬プラント20を用いた場合を例にして説明する。
例えば、湿式精錬プラント20のユーティリティー供給設備8a、ユーティリティー供給設備8bのいずれか一方で、上述した重大トラブル(処理設備の一部を運転停止しなければならないトラブル)が発生して、蒸気の供給設備が停止した場合を想定する。この場合には、湿式精錬プラント20では、重大トラブルが発生していないユーティリティー供給設備の稼働能力を通常操業時よりも上昇させる。
例えば、湿式精錬プラント20では、ユーティリティー供給設備8aに重大トラブルが発生して蒸気の供給設備が停止したため、片肺運転となったユーティリティー供給設備8bの稼働能力(操業負荷)を通常操業時以上に上昇させる。湿式精錬プラント20では、片肺運転となったユーティリティー供給設備8bの稼働能力を通常操業時よりも120%上昇させることが好ましい。湿式精錬プラント20では、ユーティリティー供給設備8bの稼働能力を通常操業時よりも120%上昇させることにより、ユーティリティー供給設備8bに負荷をかけすぎずに、必要な量の蒸気を各工程処理設備に安定して供給することができる。
また、湿式精錬プラント20では、各系列の一連の処理設備の稼働能力の合計を120%とし、かつ、少なくとも浸出部2の稼働能力の下限がそれぞれ50%となるように設定する。これにより、湿式精錬プラント20では、少なくとも浸出部2の稼働率を通常時の50%で維持することができる。したがって、湿式精錬プラント20では、従来であれば停止を余儀なくされていた浸出部2を停止させずに、実操業上の大きな問題の原因である上述した準備時間の発生を防止することができる。
ここで、各系列の処理設備の稼働能力の合計が120%とは、各系列の一連の処理設備の通常時の稼働能力をそれぞれ100%としたときに、これらの稼働能力を合計した値が120%であることをいう。例えば、湿式精錬プラント20において、I系列の処理設備及びII系列の処理設備の稼働能力をそれぞれ通常時の60%とする場合が挙げられる。また、I系列の処理設備の稼働能力を50%、かつ、II系列の処理設備の稼働能力を70%としたり、I系列の処理設備の稼働能力を70%、かつ、II系列の処理設備の稼働能力を50%としてもよい。
また、湿式精錬プラント20では、上記した蒸気以外の他の供給物である、用水、電気、硫化水素、凝集剤及び中和剤の場合も、蒸気の場合と同様にして、浸出部2における準備時間の発生を防止することができる。
以上説明したように、本実施の形態に係る湿式精錬プラント20では、各系列の同じ供給設備に、同時に重大トラブルが発生しない限り、浸出部2の運転停止を防ぐことができるため、浸出部2を停止させることなく操業を継続することができる。したがって、本実施の形態に係る湿式精錬プラント20では、浸出工程での処理量の減少を最小限にすることができる。なお、湿式精錬プラント20において、全系列の同じ供給設備に、同時に重大トラブルが発生する可能性は低いと理解されるため、実質的に重大トラブルによる処理設備の停止を防止することができる。
<3.他の実施の形態>
上記説明では、一連の処理設備を2系列有する湿式精錬プラント20を例にして説明したが、一連の処理設備を3系列以上有する湿式精錬プラントを本発明に適用してもよい。例えば、一連の処理設備を3系列有する湿式精錬プラントの場合には、各供給物の供給設備のうち、1系列しか稼動していなくても、稼働率を33%とすることで、約1/3の稼動を継続することが可能であり、2系列が稼動している場合は、稼働率を66%にすればよいことになる。このように、系列数を多くすることにより、増産しなければならない工程領域の設備にかかる1設備あたりの過剰負荷分を小さくすることができる。
また、上述したニッケル酸化鉱石の湿式精錬プラントは、緊急用貯槽(例えば、8時間分は貯留できるタンク)を併用するようにしてもよい。これにより、より複雑な調整が可能となる。例えば、上述した湿式精錬プラント20において、ユーティリティー供給設備8aに重大トラブルが発生し、ユーティリティー供給設備8bの稼働能力を140%に上昇させた場合には、ユーティリティー供給設備8bの稼働能力を通常時のまま(100%)とし、緊急用貯槽に貯留されているユーティリティーを併用するようにしてもよい。
また、湿式精錬プラント20では、上述した片肺運転となったユーティリティー供給設備8bの稼働能力を通常操業時のまま(100%)とし、各系列の一連の処理設備の稼働能力の合計を100%とし、かつ、少なくとも浸出部2の稼働能力の下限がそれぞれ50%となるように設定してもよい。例えば、各系列の一連の処理設備の稼働能力をそれぞれ50%の合計を100%とし、上述した緊急用貯槽に貯留されているユーティリティーを併用するようにしてもよい。
さらに、上述した湿式精錬プラント20における各供給設備の稼働能力の上限は、可能であれば120%よりも大きい値、例えば140%としてもよい。例えば、ユーティリティー供給設備8aに重大トラブルが発生し、ユーティリティー供給設備8bの稼働能力を140%に上昇させた場合には、各系列の処理設備の稼働能力の合計を140%とし、かつ、浸出部2の稼働能力の下限が50%となるように設定すればよい。
また、本発明に係る湿式精錬プラント20は、上述した各供給設備における重大トラブルを検出する検出部と、この検出部で重大トラブルを検出した場合に各供給設備の稼働能力や連結設備の開閉機構を制御する制御部とを備えてもよい。すなわち、湿式精錬プラントにおいて、検出部は、上述した各供給設備にそれぞれ接続されている。また、制御部は、上述した各検出部、各供給設備及び各連結設備の開閉機構にそれぞれ接続されている。
このような湿式精錬プラントにおいて、検出部は、例えば、ユーティリティー供給設備8aに重大トラブルが発生して蒸気の供給設備が停止したかどうかを検出する。検出部は、蒸気の供給設備が停止したことを検出した場合には、その旨の検出信号を制御部に供給する。制御部は、検出部から供給された検出信号に応じて、片肺運転となったユーティリティー供給設備8bの稼働能力が、通常操業時よりも120%上昇するように制御する。また、制御部は、上述したI系列の処理設備及びII系列の処理設備の稼働能力が、それぞれ通常時の60%となるように、工程処理設備の稼働能力を制御するとともに、各連結設備の開閉機構の作動を制御する。これにより、ある系列の処理設備の少なくとも1つの供給設備に重大トラブルが発生した場合にも、処理設備の停止を最小限にして、処理量の減少を最小限にすることができる。
<4.実施例>
以下、本発明の具体的な実施例について説明する。なお、下記のいずれかの実施例に本発明の範囲が限定されるものではない。
(実施例1)
<操業条件>
実施例1では、図1、2に示す本発明の湿式精錬プラント20を使用し、7ヶ月間の操業を実施した。
実施例1で用いた湿式精錬プラント20は、前処理部1と、浸出部2と、固液分離部3と、中和部4と、脱亜鉛部5と、硫化部6と、無害化部7とを含む2系列の工程処理設備を備える。また、本発明の湿式精錬プラント20は、ユーティリティー供給設備8と、硫化水素供給設備10と、中和剤供給設備12と、凝集剤供給設備14とを有する。また、湿式精錬プラント20は、各供給手段の供給の最上流部分にユーティリティー連結設備16、硫化水素連結設備17、中和剤連結設備18及び凝集剤連結設備19を設けて、各系列の供給設備を連結して操業を実施した。
実施例1では、湿式精錬プラント20の供給設備において、上述した重大トラブルが発生した場合には、重大トラブルが発生していない供給設備の稼働能力を120%に上昇させ、各系列の一連の処理設備の稼働能力の合計を120%とし、かつ、下限がそれぞれ50%以上となるように設定した。
<操業結果>
ユーティリティーについては、ユーティリティー供給設備8に合計4回のトラブルが発生した。その結果、浸出部2の停止時間は、ゼロであった。硫化水素については、硫化水素供給設備10に34回のトラブルが発生した。その結果、浸出部2の停止時間はゼロであった。中和剤については、中和剤供給設備12に1回のトラブルが発生した。その結果、浸出部2の停止時間は、ゼロであった。凝集剤については、凝集剤供給設備14にトラブルは発生しなかった。なお、いずれのトラブルでも、I系列の処理設備と、II系列の処理設備との双方に同時に重大トラブルが発生することはなかった。
(比較例1)
<操業条件>
比較例1では、本発明を適用しない湿式精錬プラント、すなわち、図4、図5に示す湿式精錬プラントを使用し、7ヶ月間の操業を実施した。すなわち、比較例1では、ユーティリティー供給設備8と、硫化水素供給設備10と、中和剤供給設備12と、凝集剤供給設備14とについては、実施例1のように供給の最上流部分で供給物を互いに共有可能に連結する連結設備を設けず、各系列の供給設備を連結することなく操業を実施した。
<操業結果>
ユーティリティー(蒸気、用水、電気)については、ユーティリティー供給設備8に合計3回のトラブルが発生した。その結果、浸出部2の停止時間は、235時間であった。硫化水素については、硫化水素供給設備10に30回のトラブルが発生した。その結果、浸出部2の停止時間は、98時間であった。中和剤については、中和剤供給設備12に1回のトラブルが発生した。その結果、浸出部2の停止時間は、4時間であった。凝集剤については、凝集剤供給設備14にトラブルは発生しなかった。なお、いずれのトラブルでも、I系列、II系列の双方に同時にトラブルが発生することはなかった。
以上の結果から、実施例1では、湿式精錬プラント20の各系列における全ての供給設備が、上述した連結設備を有するため、供給設備に重大トラブルが発生した場合においても、他の系列の同じ供給設備を操業することができた。これにより、浸出部2を停止させることなく操業を継続できるため、浸出工程での処理量の減少を最小限にできることが確認できた。
一方、比較例1では、湿式精錬プラントの各系列における全ての供給設備が、実施例1のように連結設備を有しないため、供給設備に重大トラブルが発生した場合において、浸出部2を停止させずに操業を継続することができなかった。また、浸出部2の停止時間の合計は、237時間であった。
本発明は、ニッケル酸化鉱石の湿式精錬プラントに限定されず、硬い粒子を含むスラリーや装置表面に付着しやすい沈殿の生成を伴うプラントに対して適用可能であり、その工業的価値は高い。
1a I系列の前処理部、1b II系列の前処理部、2a I系列の浸出部、2b II系列の浸出部、3a I系列の固液分離部、3b II系列の固液分離部、4a I系列の中和部、4b II系列の中和部、5a I系列の脱亜鉛部、5b II系列の脱亜鉛部、6a I系列の硫化部、6b II系列の硫化部、7a I系列の無害化部、7b II系列の無害化部、8a I系列のユーティリティー供給設備、8b II系列のユーティリティー供給設備、9a I系列のユーティリティー供給配管、9b II系列のユーティリティー供給配管、10a I系列の硫化水素供給設備、10b II系列の硫化水素供給設備、11a I系列の硫化水素供給配管、11b II系列の硫化水素供給配管、12a I系列の中和剤供給設備、12b II系列の中和剤供給設備、13a I系列の中和剤供給配管、13b II系列の中和剤供給配管、14a I系列の凝集剤供給設備、14b II系列の凝集剤供給設備、15a I系列の凝集剤供給配管、15b II系列の凝集剤供給配管、16 ユーティリティー連結設備、17 硫化水素連結設備、18 中和剤連結設備、19 凝集剤連結設備 20 湿式精錬プラント

Claims (7)

  1. 前処理部、浸出部、固液分離部、中和部、脱亜鉛部、硫化部及び無害化部を有する工程処理設備と、
    前記前処理部、前記浸出部、前記固液分離部、前記中和部、前記脱亜鉛部、前記硫化部及び前記無害化部に、蒸気、用水及び電力を含むユーティリティーを供給するユーティリティー供給設備と、
    前記脱亜鉛部及び前記硫化部に硫化水素を供給する硫化水素供給設備と、
    前記固液分離部及び前記中和部に凝集剤を供給する凝集剤供給設備と、
    前記中和部及び前記無害化部に中和剤を供給する中和剤供給設備と
    を含む一連の処理設備を2系列以上有するニッケル酸化鉱の湿式精錬プラントにおいて、
    各系列における前記ユーティリティー供給設備同士、前記硫化水素供給設備同士、前記凝集剤供給設備同士及び前記中和剤供給設備同士は、各々前記ユーティリティー、前記硫化水素、前記凝集剤及び前記中和剤を共有可能に連結する連結設備をさらに備えることを特徴とするニッケル酸化鉱石の湿式精錬プラント。
  2. 前記連結設備は、前記各供給設備が前記ユーティリティー、前記硫化水素、前記凝集剤及び前記中和剤を供給する最上流部分で、該各供給設備を連結することを特徴とする請求項1記載のニッケル酸化鉱石の湿式精錬プラント。
  3. 前記2系列以上の処理設備は、それぞれ同程度の処理能力を有することを特徴とする請求項1又は2記載のニッケル酸化鉱石の湿式精錬プラント。
  4. 前記系列の数は、2系列であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のニッケル酸化鉱石の湿式精錬プラント。
  5. 前記連結設備は、開閉機構を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載のニッケル酸化鉱石の湿式精錬プラント。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項記載のニッケル酸化鉱石の湿式精錬プラントを使用することを特徴とするニッケル酸化鉱石の湿式精錬プラントの操業方法。
  7. 各系列における前記ユーティリティー供給設備、前記硫化水素供給設備、前記凝集剤供給設備及び前記中和剤供給設備のうち、少なくともいずれか1つの運転が停止した場合には、他の系列の該供給設備を通常の操業度以上で操業し、前記各系列の処理設備の操業度を下げることを特徴とする請求項6記載のニッケル酸化鉱石の湿式精錬プラントの操業方法。
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