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JP4867826B2 - 内燃機関のノッキング判定装置 - Google Patents

内燃機関のノッキング判定装置 Download PDF

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JP4867826B2 JP2007182076A JP2007182076A JP4867826B2 JP 4867826 B2 JP4867826 B2 JP 4867826B2 JP 2007182076 A JP2007182076 A JP 2007182076A JP 2007182076 A JP2007182076 A JP 2007182076A JP 4867826 B2 JP4867826 B2 JP 4867826B2
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Description

本発明は、内燃機関のノッキング判定装置に関し、特に、内燃機関の振動の波形に基づいてノッキングの有無を判定する技術に関する。
従来より、内燃機関において発生するノッキング(ノック)を検出する様々な方法が提案されている。たとえば、内燃機関の振動の強度がしきい値よりも高いとノッキングが発生したと判定する技術がある。ところが、ノッキングが発生していなくても、たとえば吸気バルブや排気バルブが閉じる際に発生する振動などのノイズの強度がしきい値よりも高い場合がある。この場合、ノッキングが発生していないにもかかわらず、ノッキングが発生したと誤判定し得る。そこで、振動が発生するクランク角や減衰率など、強度以外の特性も考慮するために振動の波形に基づいてノッキングの有無を判定する技術が提案されている。
特開2005−330954号公報(特許文献1)は、振動の波形を用いることによりノッキングが発生したか否かを精度よく判定する内燃機関のノッキング判定装置を開示する。特許文献1に記載のノッキング判定装置は、内燃機関のクランク角を検出するためのクランク角検出部と、内燃機関の振動の強度に関する値を検出するための振動検出部と、振動の強度に関する値に基づいて、予め定められたクランク角の間における内燃機関の振動の波形を検出するための波形検出部と、内燃機関の振動の波形を予め記憶するための記憶部と、検出された波形と記憶された波形とを比較した結果に基づいて、内燃機関にノッキングが発生したか否かを判定するための判定部とを含む。判定部は、検出された波形および記憶された波形の偏差を表わす値と振動の強度を表わす値との積であるノック強度が判定値よりも大きいか否かによりノッキングが発生したか否かを判別する。
この公報に記載のノッキング判定装置によれば、クランク角検出部が、内燃機関のクランク角を検出し、振動検出部が振動の強度に関する値を検出し、波形検出部が、振動の強度(大きさ)に関する値に基づいて、予め定められたクランク角の間における内燃機関の振動の波形を検出する。記憶部が、内燃機関の振動の波形を予め記憶し、判定部が、検出された波形と記憶された波形とを比較した結果に基づいて、内燃機関にノッキングが発生したか否かを判定する。これにより、たとえば実験などにより、ノッキングが発生した場合の振動の波形であるノック波形モデルを予め作成して記憶しておき、このノック波形モデルと検出された波形とを比較して、ノッキングが発生したか否かを判定することができる。そのため、エンジンの振動がノッキングに起因した振動であるか否かをより詳細に分析することができる。さらに、振動の波形に加えて、振動の強度に基づいてノッキングが発生したか否かが判定される。その結果、精度よくノッキングが発生したか否かを判定することができる。
特開2005−330954号公報
ところで、内燃機関で発生する振動には、ノッキングに起因する振動の他、内燃機関の運転時に定常的に発生する機械振動または突発的に検出されるノイズが含まれ得る。ノッキングに起因する振動の強度は、機械振動の強度に応じて変化する。機械振動の強度は、内燃機関の個体毎に異なる。したがって、ノッキングが発生したか否かを精度よく判定するためには、ノッキングが発生したか否かを判定するために用いる判定値を機械振動に応じて補正することが望ましい。しかしながら、特開2005−330954号公報には、このような課題に関する記載は何等ない。
本発明は、上述の問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、ノッキングが発生したか否かを精度よく判定することができる内燃機関のノッキング判定装置を提供することである。
第1の発明に係る内燃機関のノッキング判定装置においては、内燃機関のクランク角を検出するための手段と、クランク角に対応させて、内燃機関の振動の強度を検出するための手段と、内燃機関の振動の強度に基づいて、クランク角についての予め定められた間隔における振動の波形を検出するための手段と、検出された波形における強度に応じた第1の値を算出するための手段と、第1の値が第1のしきい値よりも大きい場合、内燃機関の振動の波形の基準として定められる波形モデルの形状および検出された波形の形状の差に応じた第2の値を算出するための手段と、第2の値が第2のしきい値よりも小さい場合、内燃機関にノッキングが発生したと判定するための手段と、検出された波形における強度の点火サイクル間での変化量を検出するための検出手段と、強度の変化量がより大きいクランク角を予め定められた数だけ特定するための手段と、第1の値が第1のしきい値よりも小さい場合および第2の値が第2のしきい値よりも大きい場合のうちのいずれか一方の場合、特定されたクランク角における強度の変化量が小さくなるように、検出された振動の波形を補正するための補正手段と、補正された波形における強度に応じて第1のしきい値を設定するための設定手段とを備える。
この構成によると、内燃機関のクランク角が検出される。クランク角に対応させて、内燃機関の振動の強度が検出される。内燃機関の振動の強度に基づいて、クランク角についての予め定められた間隔における振動の波形が検出される。検出された波形における強度に応じた第1の値が算出される。第1の値が第1のしきい値よりも大きい場合、内燃機関の振動の波形の基準として定められる波形モデルの形状および検出された波形の形状の差に応じた第2の値が算出される。第2の値が第2のしきい値よりも小さい場合、すなわち、波形モデルの形状と検出された波形の形状とが似ている場合、内燃機関にノッキングが発生したと判定される。これにより、内燃機関で発生した振動の強度が大きく、かつ振動の波形が波形モデルと似ている場合には、ノッキングが発生したと判定することができる。ところで、内燃機関で発生する振動には、ノッキングに起因する振動の他、内燃機関の運転時に必然的かつ定常的に発生する機械振動および突発的に検出されるノイズが含まれ得る。ノッキングに起因する振動の強度は、機械振動の強度に応じて変化する。機械振動の強度は、内燃機関の個体毎に異なる。したがって、ノッキングが発生したか否かを精度よく判定するために、検出された波形における強度に応じた第1の値と比較する第1のしきい値を、機械振動に応じて設定することが望ましい。機械振動を得るためには、検出された波形からノイズを除去することが必要である。そこで、検出された波形における強度の点火サイクル間での変化量が検出される。強度の変化量がより大きいクランク角が予め定められた数だけ特定される。これにより、内燃機関において突発的に検出されるノイズの可能性がある振動を特定することができる。第1の値が第1のしきい値よりも小さい場合および第2の値が第2のしきい値よりも大きい場合のうちのいずれか一方の場合、特定されたクランク角における強度の変化量が小さくなるように、検出された振動の波形が補正される。これにより、検出された波形を機械振動の波形に近づけることができる。補正された波形における強度に応じて第1のしきい値が設定される。そのため、内燃機関の個体毎の特性に応じた第1のしきい値を得ることができる。また、検出された波形の強度に応じた第1の値を算出した後に、検出された波形が補正される。そのため、ノッキングが発生した場合には、ノッキングに起因する強度を正確に反映した第1の値を得ることができる。第1のしきい値と、検出された波形における強度に応じた第1の値とを比較した結果に基づいてノッキングが発生したか否かが判定される。その結果、ノッキングが発生したか否かを精度よく判定することができる内燃機関のノッキング判定装置を提供することができる。
第2の発明に係る内燃機関のノッキング判定装置は、第1の発明の構成に加え、特定されたクランク角を基準にして定められる範囲での、波形モデルの形状および検出された波形の形状の差に応じた第3の値を算出するための手段と、第1の値が第1のしきい値よりも小さい場合および第2の値が第2のしきい値よりも大きい場合のうちのいずれか一方の場合、第3の値が第3のしきい値よりも小さいか否かを判定するための手段とをさらに備える。補正手段は、第3の値が第3のしきい値よりも大きい場合、特定されたクランク角における強度の変化量が小さくなるように、検出された振動の波形を補正するための手段を含む。
この構成によると、特定されたクランク角を基準にして定められる範囲での、波形モデルの形状および検出された波形の形状の差に応じた第3の値が算出される。第1の値が第1のしきい値よりも小さい場合および第2の値が第2のしきい値よりも大きい場合のうちのいずれか一方の場合、第3の値が第3のしきい値よりも小さいか否かが判定される。これにより、突発的に検出された振動が、ノイズであるかノッキングに起因する振動であるかを判定することができる。波形モデルの形状および検出された波形の形状の差に応じた第3の値が第3のしきい値よりも大きい場合、突発的に検出された振動は、ノイズであるといえる。この場合、特定されたクランク角における強度の変化量が小さくなるように、検出された振動の波形が補正される。これにより、検出された波形に含まれるノイズを小さくすることができる。そのため、検出された波形を、内燃機関の運転により必然的かつ定常的に発生する機械振動の波形に近づけることができる。
第3の発明に係る内燃機関のノッキング判定装置においては、第2の発明の構成に加え、第3の値が第3のしきい値よりも小さい場合、第1の値および第4のしきい値を比較した結果に基づいて内燃機関にノッキングが発生したか否かを判定するための判定手段をさらに備える。
この構成によると、第3の値が第3のしきい値よりも小さい場合、第1の値および第4のしきい値を比較した結果に基づいて内燃機関にノッキングが発生したか否かが判定される。これにより、突発的に検出された振動の形状が波形モデルの形状に似ている場合、すなわち突発的に検出された振動がノッキングに起因した振動である可能性が高い場合、検出された振動の強度を用いてノッキングが発生したか否かを再度判定することができる。その結果、ノッキングが発生したか否かを精度よく判定することができる。
第4の発明に係る内燃機関のノッキング判定装置においては、第3の発明の構成に加え、判定手段は、第1の値が第4のしきい値よりも大きい場合にノッキングが発生したと判定するための手段と、第1の値が第4のしきい値よりも小さい場合にノッキングが発生していないと判定するための手段とを含む。
この構成によると、第1の値が第4のしきい値よりも大きい場合、ノッキングが発生したと判定される。第1の値が第4のしきい値よりも小さい場合、ノッキングが発生していないと判定される。これにより、検出された波形の強度が大きい場合にはノッキングが発生したと判定することができる。検出された波形の強度が小さい場合にはノッキングが発生していないと判定することができる。
第5の発明に係る内燃機関のノッキング判定装置は、第1の発明の構成に加え、第1の値が第1のしきい値よりも小さい場合および第2の値が第2のしきい値よりも大きい場合のうちのいずれか一方の場合、特定されたクランク角が予め定められた領域外にあるか否かを判定するための手段をさらに備える。補正手段は、特定されたクランク角が予め定められた領域外にある場合、特定されたクランク角における強度の変化量が小さくなるように、検出された振動の波形を補正するための手段を含む。
この構成によると、第1の値が第1のしきい値よりも小さい場合および第2の値が第2のしきい値よりも大きい場合のうちのいずれか一方の場合、特定されたクランク角が予め定められた領域外にあるか否かが判定される。一般的に、ノッキングは上死点付近で発生する。したがって、特定されたクランク角が予め定められた領域外にある場合、突発的に検出された振動はノイズであるといえる。この場合、特定されたクランク角における強度の変化量が小さくなるように、検出された振動の波形が補正される。これにより、検出された波形に含まれるノイズを小さくすることができる。そのため、検出された波形を内燃機関の機械振動の波形に近づけることができる。
第6の発明に係る内燃機関のノッキング判定装置においては、第1〜5のいずれかの発明の構成に加え、補正手段は、特定されたクランク角における強度を前回の点火サイクルにおける強度と同じ値にすることにより、強度の変化量が小さくなるように、検出された波形を補正するための手段を含む。
この構成によると、特定されたクランク角における強度を前回の点火サイクルにおける強度と同じ値にすることにより、検出された波形を内燃機関の機械振動の波形に近づけることができる。
第7の発明に係る内燃機関のノッキング判定装置においては、第6の発明の構成に加え、検出手段は、連続する点火サイクル間の強度の差により、強度の変化量を検出するため手段を含む。
この構成によると、連続する点火サイクル間の強度の差により、強度の変化量を検出することができる。
第8の発明に係る内燃機関のノッキング判定装置は、第1〜5のいずれかの発明の構成に加え、強度をクランク角毎に平滑化した演算値を算出するための手段をさらに備える。補正手段は、特定されたクランク角における強度を演算値と同じ値にすることにより、強度の変化量が小さくなるように、検出された波形を補正するための手段を含む。
この構成によると、強度をクランク角毎に平滑化した演算値が算出される。特定されたクランク角における強度を演算値と同じ値にすることにより、検出された波形を内燃機関の機械振動の波形に近づけることができる。
第9の発明に係る内燃機関のノッキング判定装置においては、第8の発明の構成に加え、検出手段は、強度と演算値との差により、強度の変化量を検出するため手段を含む。
この構成によると、強度と演算値との差により、強度の変化量を検出することができる。
第10の発明に係る内燃機関のノッキング判定装置においては、第1〜9のいずれかの発明の構成に加え、設定手段は、補正された波形における強度の合計が大きいほど、第1のしきい値が大きくなるように設定するための手段を含む。
この構成によると、補正された波形における強度の合計が大きいほど、第1のしきい値が大きくなるように設定される。これにより、内燃機関の機械振動の強度が大きいほど、ノッキングが発生したと判定するために用いられる第1のしきい値を大きくすることができる。そのため、検出された波形における強度が小さい場合、すなわちノッキングが発生していない場合にはノッキングが発生していないと正しく判定することができる。
第11の発明に係る内燃機関のノッキング判定装置においては、第1〜10のいずれかの発明の構成に加え、第1の値は、検出された波形における強度の合計である。第2の値は、波形モデルにおける強度および検出された波形における強度のクランク角毎の差の合計である。第3の値は、特定されたクランク角を基準に定められる範囲での、波形モデルにおける強度および検出された波形における強度のクランク角毎の差の合計である。
この構成によると、検出された波形における強度の合計、波形モデルにおける強度および検出された波形における強度のクランク角毎の差の合計および特定されたクランク角を基準に定められる範囲での、波形モデルにおける強度および検出された波形における強度のクランク角毎の差の合計を用いて、ノッキングが発生したか否かを判定することができる。
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
図1を参照して、本発明の実施の形態に係るノッキング判定装置を搭載した車両のエンジン100について説明する。このエンジン100には複数の気筒が設けられる。本実施の形態に係るノッキング判定装置は、たとえばエンジンECU(Electronic Control Unit)200が実行するプログラムにより実現される。なお、エンジンECU200により実行されるプログラムをCD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)などの記録媒体に記録して市場に流通させてもよい。
エンジン100は、エアクリーナ102から吸入された空気とインジェクタ104から噴射される燃料との混合気を、燃焼室内で点火プラグ106により点火して燃焼させる内燃機関である。点火時期は、出力トルクが最大になるMBT(Minimum advance for Best Torque)になるように制御されるが、ノッキングが発生した場合など、エンジン100の運転状態に応じて遅角されたり、進角されたりする。
混合気が燃焼すると、燃焼圧によりピストン108が押し下げられ、クランクシャフト110が回転する。燃焼後の混合気(排気ガス)は、三元触媒112により浄化された後、車外に排出される。エンジン100に吸入される空気の量は、スロットルバルブ114により調整される。
エンジン100は、エンジンECU200により制御される。エンジンECU200には、ノックセンサ300と、水温センサ302と、タイミングロータ304に対向して設けられたクランクポジションセンサ306と、スロットル開度センサ308と、車速センサ310と、イグニッションスイッチ312と、エアフローメータ314とが接続されている。
ノックセンサ300は、エンジン100のシリンダブロックに設けられる。ノックセンサ300は、圧電素子により構成されている。ノックセンサ300は、エンジン100の振動により電圧を発生する。電圧の大きさは、振動の大きさと対応した大きさとなる。ノックセンサ300は、電圧を表わす信号をエンジンECU200に送信する。水温センサ302は、エンジン100のウォータージャケット内の冷却水の温度を検出し、検出結果を表わす信号を、エンジンECU200に送信する。
タイミングロータ304は、クランクシャフト110に設けられており、クランクシャフト110と共に回転する。タイミングロータ304の外周には、予め定められた間隔で複数の突起が設けられている。クランクポジションセンサ306は、タイミングロータ304の突起に対向して設けられている。タイミングロータ304が回転すると、タイミングロータ304の突起と、クランクポジションセンサ306とのエアギャップが変化するため、クランクポジションセンサ306のコイル部を通過する磁束が増減し、コイル部に起電力が発生する。クランクポジションセンサ306は、起電力を表わす信号を、エンジンECU200に送信する。エンジンECU200は、クランクポジションセンサ306から送信された信号に基づいて、クランク角およびクランクシャフト110の回転数を検出する。
スロットル開度センサ308は、スロットル開度を検出し、検出結果を表わす信号をエンジンECU200に送信する。車速センサ310は、車輪(図示せず)の回転数を検出し、検出結果を表わす信号をエンジンECU200に送信する。エンジンECU200は、車輪の回転数から、車速を算出する。イグニッションスイッチ312は、エンジン100を始動させる際に、運転者によりオン操作される。エアフローメータ314は、エンジン100に吸入される空気量を検出し、検出結果を表わす信号をエンジンECU200に送信する。
エンジンECU200は、電源である補機バッテリ320から供給された電力により作動する。エンジンECU200は、各センサおよびイグニッションスイッチ312から送信された信号、ROM(Read Only Memory)202に記憶されたマップおよびプログラムに基づいて演算処理を行ない、エンジン100が所望の運転状態となるように、機器類を制御する。
本実施の形態において、エンジンECU200は、ノックセンサ300から送信された信号およびクランク角に基づいて、予め定められたノック検出ゲート(予め定められた第1クランク角から予め定められた第2クランク角までの区間)におけるエンジン100の振動の波形(以下、振動波形と記載する)を検出し、検出された振動波形に基づいて、エンジン100にノッキングが発生したか否かを判定する。本実施の形態におけるノック検出ゲートは、燃焼行程において上死点(0度)から90度までである。なお、ノック検出ゲートはこれに限らない。
ノッキングが発生した場合、図2に示すように、エンジン100には、周波数帯A〜Cに含まれるの周波数の振動が発生する。そこで、本実施の形態においては、周波数帯A〜Cを含む広域の周波数帯Dにおける振動が検出される。
図3に示すように、エンジンECU200は、A/D(アナログ/デジタル)変換部400と、バンドパスフィルタ410と、積算部420とを含む。
A/D変換部400は、アナログ信号をデジタル信号に変換する。バンドパスフィルタ410は、ノックセンサ300から送信された信号のうち、周波数帯Dの信号のみを通過させる。すなわち、バンドパスフィルタ410により、ノックセンサ300が検出した振動から、周波数帯Dの振動のみが抽出される。
積算部420は、バンドパスフィルタ410により選別された信号、すなわち振動の強度を、クランク角度で5度分づつ積算した積算値(以下、5度積算値とも記載する)を算出する。5度積算値の算出は、周波数帯ごとに行なわれる。これにより、図4に示すように、周波数帯Dの振動波形が検出される。
検出された振動波形は、図5に示すように、隣接するクランク角における強度(5度積算値)に比べて強度が大きいクランク角以降のクランク角の範囲において、ノック波形モデルと比較される。ノック波形モデルは、ノッキングが発生した場合のエンジン100の振動波形の基準として定められる。本実施の形態において、ノック波形モデルの強度は、振動波形と比較する度に設定される。より具体的には、ノック波形モデルにおける強度の最大値が、隣接する強度に比べて大きい強度と同じになるように設定される。
一方、最大値以外の強度は、エンジン回転数NEおよびエンジン100の負荷に応じて設定される。より具体的には、隣接するクランク角における強度の減衰率が、エンジン回転数NEおよびエンジン100の負荷をパラメータに有するマップに従って設定される。
たとえば、25%の減衰率で、クランク角で20度分の強度を設定する場合、図6に示すように、25%ずつ強度が減少する。なお、ノック波形モデルの強度を設定する方法はこれに限らない。
本実施の形態において、エンジンECU200は、振動波形がノック波形モデルに類似する度合を表わす(振動波形の形状とノック波形モデルの形状との差を表わす)相関係数Kを算出する。振動波形における強度とノック波形モデルにおける強度との差の絶対値(ズレ量)をクランク角ごと(5度ごと)に算出することにより、相関係数Kが算出される。なお、5度以外のクランク角ごとに振動波形における強度とノック波形モデルにおける強度との差の絶対値を算出するようにしてもよい。
ここで、振動波形における強度とノック波形モデルにおける強度とのクランク角ごとの差の絶対値をΔS(I)(Iは自然数)とおく。図7において斜線で示すように、ノック波形モデルの振動の強度を合計した値、すなわち、ノック波形モデルの面積をSとおく。相関係数Kは、下記の式(1)を用いて算出される。
K=(S−ΣΔS(I))/S・・・(1)
ΣΔS(I)は、ΔS(I)の総和である。なお、相関係数Kの算出方法はこれに限らない。
さらに、エンジンECU200は、図8において斜線で示すように、振動波形における強度(5度積算値)の合計を用いて、ノック強度Nを算出する。振動波形における強度の合計をPとし、エンジン100にノッキングが発生していない状態におけるエンジン100の振動の強度を表わす値をBGL(Back Ground Level)とおくと、ノック強度Nは、N=P/BGLという方程式で算出される。ノック強度Nを算出する際、振動波形における強度の合計Pは対数変換して用いられる。BGLは、たとえばシミュレーションや実験などに基づいて予め定められ、ROM202に記憶される。なお、ノック強度Nの算出方法はこれに限らない。
本実施の形態において、エンジンECU200は、算出されたノック強度NとROM202またはRAM(Random Access Memory)204に記憶されたしきい値NTRとを比較し、さらに相関係数KとROM202またはRAM204に記憶されたしきい値KTRとを比較して、エンジン100にノッキングが発生したか否かを1点火サイクルごとに判定する。図9に示すように、しきい値NTRと、しきい値KTRとの組合せによりに従ってノッキングが発生したか否かが判定される。
エンジン100もしくは車両の出荷時において、ROM202に記憶されるしきい値NTR(出荷時におけるしきい値NTRの初期値)には、予め実験などにより定められる値が用いられる。ところが、ノックセンサ300の出力値のばらつきや劣化などにより、エンジン100で同じ振動が生じた場合であっても、検出される強度が変化し得る。したがって、実際に検出される強度に応じたしきい値NTRを用いてノッキングが発生したか否かを判定する必要がある。
そこで、本実施の形態においては、ノッキングが発生していないと判定された場合の振動波形における強度の合計Pを用いて、しきい値NTRが設定される。より具体的には、図10に示すように、強度の合計Pを対数変換した値である強度値LOG(P)と、各強度値LOG(P)が検出された頻度(回数、確率ともいう)との関係を示す頻度分布に基づいて、しきい値NTRが設定される。
しきい値NTRを設定するために、強度値LOG(P)の頻度を最小値から累積して50%になる中央値VMEDが算出される。また、強度値LOG(P)の標準偏差σが算出される。たとえば、本実施の形態においては、複数(200サイクル)の強度値LOG(P)に基づいて算出される中央値および標準偏差に近似した中央値VMEDおよび標準偏差σが、以下の算出方法により1点火サイクルごとに算出される。
今回検出された強度値LOG(P)が前回算出された中央値VMEDよりも大きい場合、前回算出された中央値VMEDに予め定められた値C(1)を加算した値が、今回の中央値VMEDとして算出される。逆に、今回検出された強度値LOG(P)が前回算出された中央値VMEDよりも小さい場合、前回算出された中央値VMEDから予め定められた値C(2)(たとえばC(2)はC(1)と同じ値)を減算した値が、今回の中央値VMEDとして算出される。
今回検出された強度値LOG(P)が、前回算出された中央値VMEDよりも小さく、かつ前回算出された中央値VMEDから前回算出された標準偏差σを減算した値よりも大きい場合、前回算出された標準偏差σから予め定められた値C(3)を2倍した値を減算した値が、今回の標準偏差σとして算出される。逆に、今回検出された強度値LOG(P)が、前回算出された中央値VMEDよりも大きい場合、または前回算出された中央値VMEDから前回算出された標準偏差σを減算した値よりも小さい場合、前回算出された標準偏差σに予め定められた値C(4)(たとえばC(4)はC(3)と同じ値)を加算した値が、今回の標準偏差σとして算出される。なお、中央値VMEDおよび標準偏差σの算出方法はこれに限定されない。また、中央値VMEDおよび標準偏差σの初期値は、予め設定された値であってもよいし、「0」であってもよい。
図10に示すように、中央値VMEDに標準偏差σと係数U(1)(たとえばU(1)=5)との積を加算した値が、しきい値NTR(1)に設定される。中央値VMEDに標準偏差σと係数U(2)(U(2)<U(1)であって、たとえばU(2)=3)との積を加算した値が、しきい値NTR(2)に設定される。したがって、ノッキングが発生していないと判定された場合の振動波形における強度の合計Pが大きいほど、しきい値NTRが大きくなるように設定される。設定されたしきい値NTRは、RAM204に記憶される。なお、しきい値NTRの設定方法はこれに限らない。係数U(1)に「5」以外の値を用いるようにしてもよい。係数U(2)に「3」以外の値を用いるようにしてもよい。
図11を参照して、本実施の形態に係るノッキング判定装置であるエンジンECU200の機能について説明する。なお、以下に説明する機能はソフトウェアにより実現するようにしてもよく、ハードウェアにより実現するようにしてもよい。
エンジンECU200は、クランク角検出部210と、強度検出部212と、波形検出部214と、ノック強度算出部216と、ノック強度判断部218と、第1係数算出部220と、第1ノッキング判定部222と、変化量検出部224と、特定部226と、第2係数算出部228と、係数判定部230と、領域判定部234と、第2ノッキング判定部232と、補正部236と、設定部238とを含む。
クランク角検出部210は、クランクポジションセンサ306から送信された信号に基づいて、クランク角を検出する。
強度検出部212は、ノックセンサ300から送信された信号に基づいて、ノック検出ゲートにおける振動の強度を検出する。振動の強度は、クランク角に対応させて検出される。また、振動の強度は、ノックセンサ300の出力電圧値で表される。なお、ノックセンサ300の出力電圧値と対応した値で振動の強度を表してもよい。
波形検出部214は、振動の強度をクランク角で5度分づつ積算することにより、ノック検出ゲートにおける振動波形を検出する。
ノック強度算出部216は、検出された振動波形における強度の合計Pを用いてノック強度Nを算出する。ノック強度判断部218は、ノック強度Nがしきい値NTR(1)以上であるか否かを判断する。ノック強度Nは、P/BGLである。したがって、ノック強度Nがしきい値NTR(1)より大きいことは、検出された振動波形における強度の合計Pがしきい値NTR(1)とBGLとの積を逆対数変換した値よりも大きいことと同じである。
第1係数算出部220は、ノック強度Nがしきい値NTR(1)以上である場合、図12に示すように、振動波形における最大の強度とノック波形モデルにおける最大の強度とを一致させた状態で相関係数K(1)を算出する。
第1ノッキング判定部222は、相関係数K(1)がしきい値KTR(1)以上である場合、レベル2のノッキングが発生したと判定する。また、第1ノッキング判定部222は、相関係数K(1)がしきい値K(2)(K(2)<K(1))以上である場合、レベル1のノッキングが発生したと判定する。なお、ノッキングのレベルは、ノッキングに起因する振動の強度を示す。レベル2のノッキングに起因する振動の強度は、レベル1のノッキングに起因する振動の強度に比べて大きい。
ここで、前述した式(1)は、
K=1−ΣΔS(I)/S・・・(2)
と変形できる。
さらに式(2)は、
ΣΔS(I)/S=1−K・・・(3)
と変形できる。したがって、相関係数Kがしきい値KTRよりも大きいということは、ΣΔS(I)が(1−TRK)×Sよりも小さいということと同じである。
変化量検出部224は、図13に示すように、ノック検出ゲートを6等分した領域ごとに、すなわち、クランク角で15度分だけ強度(3つの5度積算値)を積算した15度積算値の点火サイクル間での変化量ΔV(1)〜ΔV(6)を検出する。
15度積算値は、複数の点火サイクルごとに算出される。今回の点火サイクルの15度積算値と前回(1つ前)の点火サイクルの15度積算値との差より、図13において斜線で示す15度積算値の変化量ΔV(1)〜ΔV(6)が検出される。
なお、領域の数は6つに限らず、その他、複数であればいくつでもよい。5度積算値の点火サイクル間での変化量を検出するようにしてもよい。クランク角で1度ごとに強度の変化量を検出するようにしてもよい。
また、今回の点火サイクルの15度積算値と、指数平滑法と呼ばれる平滑化手法を用いて過去の15度積算値から算出される演算値、すなわち15度積算値が平滑化された演算値との差より、15度積算値の変化量ΔV(1)〜ΔV(6)を検出するようにしてもよい。
演算値(平滑化された15度積算値)VNは、下記の式(4)を用いて算出される。下記の式(1)において、VN(i)は、今回の点火サイクルにおいて算出される演算値VNを示す。VN(i−1)は、前回の点火サイクルにおいて算出された演算値VNを示す。V15(i−1)は、前回の点火サイクルにおける15度積算値を示す。Zは定数である。
VN(i)=VN(i−1)+Z×(V15(i−1)−VN(i−1)・・・(4)
演算値VNは、複数のクランク角の領域ごとに算出される。
特定部226は、15度積算値の変化量ΔV(1)〜ΔV(6)が検出された6つの領域のうち、15度積算値の変化量がより大きい領域を2つ特定する。すなわち、変化量が大きい上位2つの領域が特定される。なお、特定する領域は2つに限らない。
第2係数算出部228は、図14に示すように、特定された領域を基準にして定められる探索領域内において、隣接するクランク角の強度(5度積算値)に比べて大きく、かつそのような強度の中で最大の強度とノック波形モデルにおける最大の強度とを一致させた状態で相関係数K(2)を算出する。すなわち、特定された領域を基準にして定められる範囲での、ノック波形モデルの形状および振動波形の形状の差に応じた相関係数K(2)が算出される。相関係数K(2)を算出するために、特定された領域を基準にして定められる範囲は、ノック波形モデルと振動波形とが重複する範囲である。
本実施の形態においては、15度積算値の変化量がより大きい領域として特定された領域と、探索領域とは同じである。なお、図15に示すように、15度積算値の変化量がより大きい領域として特定された領域を含み、かつ特定された領域よりも広い領域を探索領域として定めるようにしてもよい。
係数判定部230は、相関係数K(2)がしきい値KTR(1)以上であるか否かを判定する。なお、相関係数K(2)がしきい値KTR(2)以上であるか否かを判定するようにしてもよい。
第2ノッキング判定部232は、相関係数K(2)がしきい値KTR(1)以上である場合、ノック強度Nとしきい値NTR(2)とを比較した結果に基づいて、ノッキングが発生したか否かを判定する。ノック強度Nがしきい値NTR(2)以上である場合、ノッキングが発生したと判定される。ノック強度Nがしきい値NTR(2)より小さい場合、ノッキングが発生していないと判定される。なお、ノック強度Nとしきい値NTR(1)とを比較するようにしてもよい。
領域判定部234は、15度積算値の変化量がより大きい領域として特定された領域(クランク角)が、ノック検出ゲートを2等分した領域のうち、遅角側の領域内にあるか否かを判定する。図16において斜線で示すように、ノック検出ゲートを2等分した領域のうち、遅角側の領域内に、15度積算値の変化量がより大きい領域として特定された領域がある場合、ノイズが検出されたと判定される。エンジン100において、ノッキングは上死点付近で発生するからである。
補正部236は、相関係数K(2)がしきい値KTR(1)より小さい場合、または15度積算値の変化量がより大きい領域として特定された領域(クランク角)が、ノック検出ゲートを2等分した領域のうち、遅角側の領域内にある場合、強度(15度積算値)の変化量が小さくなるように、検出された振動波形を補正する。より具体的には、15度積算値が前回の点火サイクルにおいて算出された15度積算値と同じ値にされる。すなわち、図17において斜線で示す部分が取り除かれる。その結果、図18に示すような振動波形が得られる。
なお、特定された2つの領域のうちのいずれか一方のみの領域の強度の変化量が小さくなるように振動波形を補正するようにしてもよい。たとえば、ノック検出ゲートを2等分した領域のうちの遅角側にある領域のみの強度の変化量が小さくなるように補正してもよい。また、15度積算値を、平滑化手法を用いて過去の15度積算値から算出される演算値と同じ値になるように、検出された振動波形を補正するようにしてもよい。
設定部238は、補正された振動波形、すなわち、ノッキングが発生していないと判定された場合の振動波形における強度の合計Pの頻度分布を用いて、しきい値NTRを設定する。
図19および図20を参照して、エンジンECU200が実行するプログラムの制御構造について説明する。なお、以下に説明するプログラムは、予め定められた周期で(たとえば1点火サイクル毎に)繰り返し実行される。
ステップ(以下、ステップをSと略す)100にて、エンジンECU200は、クランクポジションセンサ306から送信された信号に基づいて、クランク角を検出する。
S102にて、エンジンECU200は、ノックセンサ300から送信された信号に基づいて、クランク角に対応させて、エンジン100の振動の強度を検出する。
S104にて、エンジンECU200は、ノックセンサ300の出力電圧値(振動の強度を表わす値)を、クランク角で5度ごとに(5度分だけ)積算した5度積算値を算出することにより、エンジン100の振動波形を検出する。
S106にて、エンジンECU200は、検出された振動波形における強度の合計Pを用いてノック強度Nを算出する。
S108にて、エンジンECU200は、ノック強度Nがしきい値NTR(1)以上であるか否かを判定する。ノック強度Nがしきい値NTR(1)以上であると(S108にてYES)、処理はS110に移される。もしそうでないと(S108にてNO)、処理はS200に移される。
S110にて、エンジンECU200は、振動波形における最大の強度とノック波形モデルにおける最大の強度とを一致させた状態で相関係数K(1)を算出する。
S112にて、エンジンECU200は、相関係数K(1)がしきい値KTR(1)以上であるか否かを判定する。相関係数K(1)がしきい値KTR(1)以上であると(S112にてYES)、処理はS300に移される。もしそうでないと(S112にてNO)、処理はS114に移される。
S114にて、エンジンECU200は、相関係数K(1)がしきい値K(2)以上であるか否かを判定する。相関係数K(1)がしきい値K(2)以上であると(S114にてYES)、処理はS300に移される。もしそうでないと(S114にてNO)、処理はS200に移される。
S200にて、エンジンECU200は、ノック検出ゲートを6等分した領域ごとに、15度積算値の点火サイクル間での変化量ΔV(1)〜ΔV(6)を検出する。
S202にて、エンジンECU200は、15度積算値の変化量ΔV(1)〜ΔV(6)が検出された6つの領域のうち、15度積算値の変化量がより大きい領域を2つ特定する。
S204にて、エンジンECU200は、15度積算値の変化量がより大きい領域として特定された領域が、ノック検出ゲートを2等分した領域のうち、遅角側の領域内にあるか否かを判定する。特定された領域が、ノック検出ゲートを2等分した領域のうち、遅角側の領域内にあると(S204にてYES)、処理はS212に移される。もしそうでないと(S204にてNO)、処理はS206に移される。
S206にて、エンジンECU200は、特定された領域を基準にして定められる探索領域内において、隣接するクランク角の強度(5度積算値)に比べて大きく、かつそのような強度の中で最大の強度とノック波形モデルにおける最大の強度とを一致させた状態で相関係数K(2)を算出する。
S208にて、エンジンECU200は、相関係数K(2)がしきい値KTR(1)以上であるか否かを判定する。相関係数K(2)がしきい値KTR(1)以上であると(S208にてYES)、処理はS210に移される。もしそうでないと(S208にてNO)、処理はS212に移される。
S210にて、エンジンECU200は、ノック強度Nがしきい値NTR(2)以上であるか否かを判定する。ノック強度Nがしきい値NTR(2)以上であると(S210にてYES)、処理はS300に移される。もしそうでないと(S210にてNO)、処理はS304に移される。
S212にて、エンジンECU200は、15度積算値の変化量がより大きい領域として特定された領域の強度(15度積算値)の変化量が小さくなるように、検出された振動波形を補正する。S214にて、エンジンECU200は、補正された振動波形における強度の合計Pの頻度分布を用いて、しきい値NTRを設定する。
S300にて、エンジンECU200は、ノッキングが発生したと判定する。S302にて、エンジンECU200は、点火時期を遅角する。
S304にて、エンジンECU200は、ノッキングが発生していないと判定する。S306にて、エンジンECU200は、点火時期を進角する。
以上のような構造およびフローチャートに基づく、本実施の形態に係るノッキング判定装置であるエンジンECU200の動作について説明する。
エンジン100の運転中、クランクポジションセンサ306から送信された信号に基づいて、クランク角が検出される(S100)。ノックセンサ300から送信された信号に基づいて、クランク角に対応させて、エンジン100の振動の強度が検出される(S102)。5度積算値を算出することにより、エンジン100の振動波形が検出される(S104)。
検出された振動波形における強度の合計Pを用いてノック強度Nが算出される(S106)。ノック強度Nがしきい値NTR(1)以上であると(S108にてYES)、ノッキングが発生した可能性が高い。この場合、振動波形における最大の強度とノック波形モデルにおける最大の強度とを一致させた状態で相関係数K(1)が算出される(S110)。
相関係数K(1)がしきい値KTR(1)以上であると(S112にてYES)、ノッキングが発生したと判定される(S300)。この場合、点火時期が遅角される(S302)。
相関係数K(1)がしきい値KTR(1)より小さいと(S112にてNO)、相関係数K(1)がしきい値K(2)以上であるか否かが判定される(S114)。相関係数K(1)がしきい値K(2)以上であると(S114にてYES)。ノッキングが発生した可能性がある。この場合も、ノッキングが発生したと判定される(S300)。したがって、点火時期が遅角される(S302)。
なお、相関係数K(1)がしきい値KTR(1)より小さく、しきい値K(2)以上である場合は、相関係数K(1)がしきい値KTR(1)以上である場合に比べて、点火時期を遅角する量を小さくすることが望ましい。
ノック強度Nがしきい値NTR(1)より小さい場合(S108にてNO)、または相関係数K(1)がしきい値KTR(2)より小さい場合(S114にてNO)、ノック検出ゲートを6等分した領域ごとに、15度積算値の点火サイクル間での変化量ΔV(1)〜ΔV(6)が検出される(S200)。
15度積算値の変化量ΔV(1)〜ΔV(6)が検出された6つの領域のうち、15度積算値の変化量がより大きい領域が2つ特定される(S202)。特定された領域が、ノック検出ゲートを2等分した領域のうち、遅角側の領域内にあると(S204にてYES)、検出された振動波形にノイズが混在しているといえる。この場合、検出された振動からノイズを除去するために、15度積算値の変化量がより大きい領域として特定された領域の強度の変化量が小さくなるように、検出された振動波形が補正される(S212)。
これにより、エンジン100の作動により必然的かつ定常的に発生する振動の波形を得ることができる。補正された振動波形における強度の合計Pの頻度分布を用いて、しきい値NTRが設定される(S214)。すなわち、しきい値NTR(1)およびしきい値NR(2)が更新される。これにより、エンジン100の個体毎の特性が反映されたしきい値NTRを得ることができる。
さらに、ノッキングが発生していないと判定される(S304)。この場合、点火時期が進角される(S306)。
一方、15度積算値の変化量がより大きい領域として特定された領域が、ノック検出ゲートを2等分した領域のうち、進角側の領域内にあると(S204にてNO)、特定された領域を基準にして定められる探索領域内において、隣接するクランク角の強度(5度積算値)に比べて大きく、かつそのような強度の中で最大の強度とノック波形モデルにおける最大の強度とを一致させた状態で相関係数K(2)が算出される(S206)。
相関係数K(2)がしきい値KTR(1)以上であると(S208にてYES)、ノッキングが発生した可能性があるといえる。この場合、ノック強度Nがしきい値NTR(2)以上であるか否かが判定される(S210)。ノック強度Nがしきい値NTR(2)以上であると(S210にてYES)、ノッキングが発生したと判定される(S300)。
相関係数K(2)がしきい値KTR(1)より小さいと(S208にてNO)、検出された振動波形にノイズが混在しているといえる。この場合、15度積算値の変化量がより大きい領域として特定された領域の強度の変化量が小さくなるように、検出された振動波形が補正される(S212)。補正された振動波形における強度の合計Pの頻度分布を用いて、しきい値NTRが設定される(S214)。
以上のように、本実施の形態に係るノッキング判定装置によれば、ノック強度Nがしきい値NTR(1)以上であると、相関係数K(1)が算出される。相関係数K(1)がしきい値KTR(2)以上であると、ノッキングが発生したと判定される。ノック強度Nがしきい値NTR(1)より小さい場合、または相関係数K(1)がしきい値KTR(2)より小さい場合、ノック検出ゲートを6等分した領域ごとに、15度積算値の点火サイクル間での変化量ΔV(1)〜ΔV(6)が検出される。15度積算値の変化量ΔV(1)〜ΔV(6)が検出された6つの領域のうち、15度積算値の変化量がより大きい領域が2つ特定される。検出された振動波形にノイズが混在している場合、15度積算値の変化量がより大きい領域として特定された領域の強度の変化量が小さくなるように、検出された振動波形が補正される。これにより、検出された波形を、内燃機関の運転により必然的かつ定常的に発生する機械振動の波形に近づけることができる。補正された振動波形における強度の合計Pの頻度分布を用いて、しきい値NTRが設定される。そのため、内燃機関の個体毎の特性に応じたしきい値NTRを得ることができる。また、ノック強度Nを算出した後に、振動波形が補正される。そのため、ノッキングが発生した場合には、ノッキングに起因する強度を正確に反映したノック強度Nを得ることができる。しきい値NTRと、ノック強度Nとを比較した結果に基づいてノッキングが発生したか否かが判定される。その結果、ノッキングが発生したか否かを精度よく判定することができる。
なお、振動波形における最大の強度とノック波形モデルにおける最大の強度とを一致させた状態で相関係数K(1)を算出する前に、15度積算値の変化量がより大きい領域を特定するようにしてもよい。この場合、相関係数K(2)を算出する方法と同じ方法で相関刑すK(1)を算出するようにしてもよい。
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
エンジンを示す概略構成図である。 ノッキング時にエンジンで発生する振動の周波数帯を示す図である。 エンジンECUを示す制御ブロック図である。 エンジンの振動波形を示す図(その1)である。 振動波形とノック波形モデルとを比較した図(その1)である。 ノック波形モデルを示す図である。 ノック波形モデルの面積Sを示す図である。 振動波形の強度の合計を示す図である。 しきい値NTRおよびしきい値KTRを示す図である。 強度値LOG(P)の頻度分布を示す図である。 エンジンECUの機能ブロック図である。 振動波形とノック波形モデルとを比較した図(その2)である。 強度の変化量を示す図(その1)である。 振動波形とノック波形モデルとを比較した図(その3)である。 探索領域を示す図である。 強度の変化量を示す図(その2)である。 補正前の振動波形を示す図である。 補正後の振動波形を示す図である。 エンジンECUが実行するプログラムの制御構造を示すフローチャートである。 エンジンECUが実行するプログラムの制御構造を示すフローチャートである。
符号の説明
100 エンジン、104 インジェクタ、106 点火プラグ、110 クランクシャフト、116 吸気バルブ、118 排気バルブ、120 ポンプ、200 エンジンECU、202 ROM、204 RAM、210 クランク角検出部、212 強度検出部、214 波形検出部、216 ノック強度算出部、218 ノック強度判断部、220 第1係数算出部、222 第1ノッキング判定部、224 変化量検出部、226 特定部、228 第2係数算出部、230 係数判定部、232 第2ノッキング判定部、234 領域判定部、236 補正部、238 設定部、300 ノックセンサ、302 水温センサ、304 タイミングロータ、306 クランクポジションセンサ、308 スロットル開度センサ、314 エアフローメータ、320 補機バッテリ。

Claims (11)

  1. 内燃機関のクランク角を検出するための手段と、
    クランク角に対応させて、前記内燃機関の振動の強度を検出するための手段と、
    前記内燃機関の振動の強度に基づいて、クランク角についての予め定められた間隔における振動の波形を検出するための手段と、
    前記検出された波形における強度に応じた第1の値を算出するための手段と、
    前記第1の値が第1のしきい値よりも大きい場合、前記内燃機関の振動の波形の基準として定められる波形モデルの形状および前記検出された波形の形状の差に応じた第2の値を算出するための手段と、
    前記第2の値が第2のしきい値よりも小さい場合、前記内燃機関にノッキングが発生したと判定するための手段と、
    前記検出された波形における強度の点火サイクル間での変化量を検出するための検出手段と、
    強度の変化量がより大きいクランク角を予め定められた数だけ特定するための手段と、
    前記第1の値が前記第1のしきい値よりも小さい場合および前記第2の値が前記第2のしきい値よりも大きい場合のうちのいずれか一方の場合、前記特定されたクランク角における強度の変化量が小さくなるように、前記検出された振動の波形を補正するための補正手段と、
    前記補正された波形における強度に応じて前記第1のしきい値を設定するための設定手段とを備える、内燃機関のノッキング判定装置。
  2. 前記特定されたクランク角を基準にして定められる範囲での、前記波形モデルの形状および前記検出された波形の形状の差に応じた第3の値を算出するための手段と、
    前記第1の値が前記第1のしきい値よりも小さい場合および前記第2の値が前記第2のしきい値よりも大きい場合のうちのいずれか一方の場合、前記第3の値が第3のしきい値よりも小さいか否かを判定するための手段とをさらに備え、
    前記補正手段は、前記第3の値が前記第3のしきい値よりも大きい場合、前記特定されたクランク角における強度の変化量が小さくなるように、前記検出された振動の波形を補正するための手段を含む、請求項1に記載の内燃機関のノッキング判定装置。
  3. 前記第3の値が前記第3のしきい値よりも小さい場合、前記第1の値および、前記第1の値よりも小さい第4のしきい値を比較した結果に基づいて前記内燃機関にノッキングが発生したか否かを判定するための判定手段をさらに備える、請求項2に記載の内燃機関のノッキング判定装置。
  4. 前記判定手段は、
    前記第1の値が前記第4のしきい値よりも大きい場合にノッキングが発生したと判定するための手段と、
    前記第1の値が前記第4のしきい値よりも小さい場合にノッキングが発生していないと判定するための手段とを含む、請求項3に記載の内燃機関のノッキング判定装置。
  5. 前記第1の値が前記第1のしきい値よりも小さい場合および前記第2の値が前記第2のしきい値よりも大きい場合のうちのいずれか一方の場合、前記特定されたクランク角が予め定められた領域外にあるか否かを判定するための手段をさらに備え、
    前記補正手段は、前記特定されたクランク角が前記予め定められた領域外にある場合、前記特定されたクランク角における強度の変化量が小さくなるように、前記検出された振動の波形を補正するための手段を含む、請求項1に記載の内燃機関のノッキング判定装置。
  6. 前記補正手段は、前記特定されたクランク角における強度を前回の点火サイクルにおける強度と同じ値にすることにより、強度の変化量が小さくなるように、前記検出された波形を補正するための手段を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の内燃機関のノッキング判定装置。
  7. 前記検出手段は、連続する点火サイクル間の強度の差により、強度の変化量を検出するため手段を含む、請求項6に記載の内燃機関のノッキング判定装置。
  8. 強度をクランク角毎に平滑化した演算値を算出するための手段をさらに備え、
    前記補正手段は、前記特定されたクランク角における強度を前記演算値と同じ値にすることにより、強度の変化量が小さくなるように、前記検出された波形を補正するための手段を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の内燃機関のノッキング判定装置。
  9. 前記検出手段は、強度と前記演算値との差により、前記強度の変化量を検出するため手段を含む、請求項8に記載の内燃機関のノッキング判定装置。
  10. 前記設定手段は、前記補正された波形における強度の合計が大きいほど、前記第1のしきい値が大きくなるように設定するための手段を含む、請求項1〜9のいずれかに記載の内燃機関のノッキング判定装置。
  11. 前記第1の値は、前記検出された波形における強度の合計であり、
    前記第2の値は、前記波形モデルにおける強度および前記検出された波形における強度のクランク角毎の差の合計であり、
    前記第3の値は、前記特定されたクランク角を基準に定められる範囲での、前記波形モデルにおける強度および前記検出された波形における強度のクランク角毎の差の合計である、請求項1〜10のいずれかに記載の内燃機関のノッキング判定装置。
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