JP4867319B2 - 熱間プレス用テーラードブランク材ならびに熱間プレス部材およびその製造方法 - Google Patents
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Description
これらの本発明にかかる熱間プレス用テーラードブランク材では、複数枚の鋼板のうち少なくとも一の鋼板が、さらに、(i)B:0.01%以下を含有すること、(ii)Ni:2%以下および/またはCu:1%以下を含有すること、(iii)Nb:1.0%以下、Ti:1.0%以下、Mo:1.0%以下およびV:1.0%以下からなる群から選ばれた1種または2種以上を含有することの少なくとも一を満足することが望ましい。
C:0.08%以上0.45%以下
Cは、焼入れ性を高め、かつ焼入れ後の強度を決定する非常に重要な元素である。この効果を得るために、少なくとも0.08%以上含有させる。一方、C含有量が0.45%を超えると、強度が高くなり過ぎるために熱間プレス部材として要求される靱性が劣化する。そこで、本発明では、C含有量を0.08%以上0.45%以下と限定する。より望ましいC含有量の下限は0.15%であり、上限は0.33%である。
MnおよびCrは、いずれも、焼入れ性を高め、かつ焼入れ後の強度を安定して確保するために非常に有効な元素である。MnおよびCrの合計含有量(以下、「(Mn+Cr)含有量」ともいう。)が0.5%未満ではこの効果が十分ではなく、一方、(Mn+Cr)含有量が3.0%を超えるとこの効果は飽和して、逆に安定した強度確保が困難となる。そこで、本発明では(Mn+Cr)含有量は0.5%以上3.0%以下と限定する。より望ましい(Mn+Cr)含有量の下限は0.8%であり、上限は2.0%である。
Si、Al、Nは、焼入れ性を高め、かつ焼入れ後の強度の安定確保に有効な元素である。しかし、上述した上限値を超えて含有させてもその効果はかわらず、コストの増加を招くこととなる。そこで、本発明では、Si:0.5%以下、Al:1%以下、N:0.01%以下と限定する。
P、Sは、上述した上限値を超えると熱間プレス部材の靱性を大きく劣化させる。そこで、本発明では、P:0.05%以下、S:0.05%以下と限定する。
Bは、焼入れ性を大幅に高め、かつ焼入れ後の強度を安定して確保することをさらに高めるのに有効な任意添加元素である。また、粒界に偏析して粒界強度を高め、熱間プレス部材の靱性を改善させる点でも有効な元素である。しかし、B含有量が0.01%を超えるとその効果は飽和し、かつコストの増加を招く。そこで、Bを添加する場合には、その含有量は0.01%以下とすることが望ましい。より望ましいB含有量の下限は0.001%であり、上限は0.0030%である。
Ni、Cuは、焼入れ性を高め、かつ焼入れ後の強度の安定確保に有効な任意添加元素であるので、1種または2種を含有させることができる。しかし、Ni、Cuを上述した上限値を超えて含有させてもその効果は小さく、かつコストの増加を招く。そこで、Ni、Cuを添加する場合には、その含有量はNi:2%以下、Cu:1%以下と限定することが望ましい。より望ましい含有量は、Ni:0.01%以上1%以下、Cu:0.01%以上0.5%以下である。
これらの元素は、焼入れ性を高め、かつ焼入れ後の強度の安定確保に有効な任意添加元素であるので、1種または2種以上を含有させることができる。しかし、それぞれの元素の含有量が1.0%を超えるとその効果は飽和し、コストの増加を招くだけとなる。そこで、Nb、Ti、Mo、Vを添加する場合には、その含有量はNb:1.0%以下、Ti:1.0%以下、Mo:1.0%以下、V:1.0%以下とすることが望ましい。
例えばレーザ溶接部またはマッシュシーム溶接部により接合される、熱間プレス用テーラードブランク材を構成する複数枚の鋼板の組成は、上述した組成を満足するものであればよく、各鋼板の組成が同一であっても構わないし、または相違していても構わない。また、後加工等の観点から、熱間プレス用テーラードブランク材に意図的に焼きが入らない部位を形成する場合や、部材強度等の観点から焼入れを要しない部位のコスト低減を図る場合に、上述した複数枚の鋼板にさらに、焼入れ性を有しない鋼板や焼入れ性が劣る鋼板等の他の鋼板を接合することがあるが、このような場合には、当該他の鋼板が、上述した組成を満足する必要がないことはいうまでもない。
酸素含有量:0.005%以下、熱間プレス後の組織:旧オーステナイト平均粒径が2.0μm以上のマルテンサイト
上述したように、テーラードブランクを製造する際に用いられる溶接方法は、主に、レーザ溶接、マッシュシーム溶接、プラズマ溶接部またはスポット溶接であり、本実施の形態でもいずれかの溶接方法を用いた例について説明する。これらの溶接法を用いると、大気中で溶接が行われることや冷却速度が速いことに起因して、溶接部には、溶接される鋼板に含まれるよりも多量の酸素が過飽和に固溶する。すなわち、一般的に溶接では、溶接部への酸素の混入をできるだけ阻止するための各種対策が講じられることは周知であるが、テーラードブランクの製造時の溶接は、接合強度、その寸法や作業効率、さらには作業コスト等の観点から、事実上レーザ溶接、マッシュシーム溶接、プラズマ溶接部またはスポット溶接に限られており、これらの溶接法を用いると、大気中で溶接が行われることや冷却速度が速いことから不可避的に、溶接部に多量の酸素が過飽和に固溶する。しかし現状では、テーラードブランクの溶接部に関し、上述した溶接部への酸素の混入をできるだけ阻止するという観点からは、各種対策が取られていない。
レーザ溶接部、マッシュシーム溶接部、プラズマ溶接部またはスポット溶接の酸素含有量を0.005%以下に抑制するには、例えば、溶接速度を通常の溶接速度よりも高く設定したり、アシストガスやシールドガス中の酸素濃度を低下させるといった、周知慣用の手段によればよいので、これ以上の説明は省略する。
本実施の形態では、上述した本発明にかかる熱間プレス用テーラードブランク材を、複数枚の鋼板のうちすべての鋼板についてのAc3点以上の温度とした後に熱間プレスを施し、これら複数枚の鋼板のうちすべての鋼板についての上部臨界冷却速度以上の冷却速度で冷却する焼入れ処理を施すことにより、所望のマルテンサイト組織とする。
表1に示す化学組成を有する鋼板(板厚:2.0mm)を素地鋼板とした。これらの鋼板は、実験室で溶製したスラブを、熱間圧延または熱間圧延後に酸洗を行い冷間圧延により製造した鋼板である。さらに、めっきシミュレータを用いて、鋼種No.3には溶融亜鉛めっき(片面あたりのめっき付着量は60g/m2)、鋼種No.4にはAlめっき(片面あたりのめっき付着量は120g/m2)を施した。さらに、鋼種No.3には合金化処理(めっき皮膜中のFe含有量は15質量%)を行った。めっきシミュレータにおける焼鈍温度は800℃であり、800℃からMs点までの平均冷却速度は5℃/sとした。これ以外の鋼板は、熱間圧延及び酸洗したもの、または冷間圧延まま(フルハード)で試験に供した。
Claims (7)
- 質量%で、酸素含有量が0.005%以下である溶接部を備え、該溶接部により接合された複数枚の鋼板が、いずれも、C:0.08〜0.45%、Si:0.5%以下、Mn+Cr:0.5〜3.0%、P:0.05%以下、S:0.05%以下、Al:1%以下、N:0.01%以下、残部Feおよび不純物からなる鋼組成を有することを特徴とする熱間プレス用テーラードブランク材。
- 前記溶接部は、レーザ溶接部、マッシュシーム溶接部、プラズマ溶接部、スポット溶接部のうち、いずれかの溶接部である請求項1に記載された熱間プレス用テーラードブランク材。
- 前記複数枚の鋼板のうち少なくとも一の鋼板が、さらに、B:0.01質量%以下を含有する請求項1または請求項2に記載された熱間プレス用テーラードブランク材。
- 前記複数枚の鋼板のうち少なくとも一の鋼板が、さらに、Ni:2質量%以下および/またはCu:1質量%以下を含有する請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載された熱間プレス用テーラードブランク材。
- 前記複数枚の鋼板のうち少なくとも一の鋼板が、さらに、質量%で、Nb:1.0%以下、Ti:1.0%以下、Mo:1.0%以下およびV:1.0%以下からなる群から選ばれた1種または2種以上を含有する請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載された熱間プレス用テーラードブランク材。
- 請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載された熱間プレス用テーラードブランク材を、前記複数枚の鋼板のうちすべての鋼板についてのAc3点以上の温度とした後に熱間プレスを施し、該複数枚の鋼板のうちすべての鋼板についての上部臨界冷却速度以上の冷却速度で冷却する焼入れ処理を施すことを特徴とする熱間プレス部材の製造方法。
- 請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載された熱間プレス用テーラードブランク材が熱間プレスされた熱間プレス部材であって、前記溶接部の組織が2.0μm以上の旧オーステナイト平均粒径のマルテンサイトであることを特徴とする熱間プレス部材。
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