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JP4861998B2 - 流体封入式防振装置 - Google Patents

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Description

本発明は、内部の流体室に封入された非圧縮性流体の流動作用に基づき防振効果を得るようにした流体封入式防振装置に係り、特に、流体室のキャビテーションを防止する短絡機構を備えた流体封入式防振装置に関するものである。
従来から、振動伝達系を構成する部材間に介装される防振連結体や防振支持体等の防振装置の一種として、流体封入式防振装置が知られている。流体封入式防振装置の構造においては、例えば、第一の取付部材と第二の取付部材が本体ゴム弾性体で連結されて、第二の取付部材の内側に仕切部材が配設されている。更に、仕切部材を挟んだ両側に、壁部の一部が本体ゴム弾性体で構成されて非圧縮性流体が封入された受圧室と、壁部の一部が変形容易な可撓性膜で構成されて非圧縮性流体が封入された平衡室が形成されており、それら両室がオリフィス通路を通じて相互に連通せしめられている。このような構造によれば、振動入力に伴い受圧室と平衡室の間に相対的な圧力変動が生じて、オリフィス通路を通じて流動せしめられる流体の共振作用等の流動作用に基づき防振効果が得られる。かくの如き流体封入式防振装置では、例えば、自動車用のエンジンマウントやボデーマウント、デフマウント、サスペンションメンバマウント等への適用が検討されている。
ところで、上述の流体封入式防振装置において、第一の取付部材と第二の取付部材の間に過大な振動が入力されると、衝撃的な異音や振動が発せられることがある。この発生原因は、主として、受圧室にキャビテーション気泡が生ぜしめられることによるものと考えられる。即ち、第一及び第二の取付部材の間の大振幅振動の入力に伴い受圧室が過大な負圧状態になると、受圧室の流体中に溶存していた空気が液相分離をし、キャビテーション気泡を形成する。そして、気泡の崩壊に伴う水撃圧が第一の取付部材や第二の取付部材に伝播して、自動車ボデー等の振動伝達系を構成する部材に伝達されることによって、前述の如き問題となる異音や振動が生ぜしめられるものと考えられる。
そこで、このような問題に対処するために、本出願人は、先の出願である特許文献1(特開2007−107712号公報)において、仕切部材に短絡路を形成して、オリフィス通路を通じて連通された受圧室と平衡室が短絡路を通じて短絡されるようにし、更に、仕切部材における短絡路の受圧室側の開口部にゴム弁体を配設すると共に、ゴム弁体に対して受圧室側から金属板ばねを重ね合わせて設け、仕切部材における短絡路の受圧室側への開口部に向けてゴム弁体を押し付けて短絡路を閉塞状態に保持せしめた構造を提案した。かかる構造によれば、受圧室の過負圧状態で、金属板ばねのゴム弁体を短絡路の受圧室側の開口部に押し付けるばね作用(押し付け力)に抗してゴム弁体が変位して、短絡路が開口せしめられ、この短絡路を通じて受圧室と平衡室が短絡せしめられる。これにより、受圧室の過負圧状態が解消されて、キャビテーション気泡の発生が抑えられることから、問題となる異音や振動の防止が図られる。
しかしながら、本発明者が更なる検討を加えたところ、特許文献1に係る流体封入式防振装置では、金属板ばねや仕切部材、第二の取付部材等の寸法誤差や金属板ばねの特性誤差等に起因して、金属板ばねの仕切部材への対向面と仕切部材の金属板ばねへの対向面が互いに平行な状態とされ難くなることがあり、そのため、ゴム弁体と仕切部材の短絡路の開口部の間に隙間が生じて、短絡路のシール性能が十分に発揮され難くなる可能性があることが判明した。特に、金属板ばねにおけるバネ部分の有効自由長を大きく設定すると、寸法誤差や特性誤差のバラツキによるシール特性への影響が一層大きくなることも懸念される。その結果、要求される短絡路の閉塞時に短絡路を通じての受圧室の液圧漏れが生じて、所期の防振効果が得られ難くなる可能性があった。
特開2007−107712号公報
ここにおいて、本発明は、上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、金属板ばねの弾性変形を利用した開閉式のゴム弁体において、ゴム弁体による短絡路のシール性能が、高い信頼性をもって実現され得る、新規な構造の流体封入式防振装置を提供することにある。
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意な組み合わせで採用可能である。また、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに限定されることなく、明細書全体および図面に記載されたもの、或いはそれらの記載から当業者が把握することの出来る発明思想に基づいて認識されるものであることが理解されるべきである。
すなわち、本発明の特徴とするところは、第一の取付部材と第二の取付部材を本体ゴム弾性体で連結すると共に、第二の取付部材で仕切部材を支持せしめて、本体ゴム弾性体で壁部の一部が構成されて非圧縮性流体が封入された受圧室と、壁部の一部が可撓性膜で構成されて非圧縮性流体が封入された平衡室を、仕切部材を挟んだ両側に形成すると共に、それら受圧室と平衡室を相互に連通するオリフィス通路を仕切部材を利用して形成する一方、仕切部材に短絡路を形成して、オリフィス通路を通じて連通された受圧室と平衡室が短絡路を通じて短絡されるようにし、更に、仕切部材における短絡路の受圧室側への開口部にゴム弁体を配設すると共に、ゴム弁体に対して受圧室側から金属板ばねを重ね合わせて設け、仕切部材における短絡路の受圧室側への開口部に向けてゴム弁体を押し付けて短絡路を閉塞状態に保持せしめた流体封入式防振装置において、ゴム弁体における仕切部材への対向面には外周部分を周方向に連続して延びる環状当接突起を形成する一方、ゴム弁体と金属板ばねとの対向面間には環状当接突起よりも内周側において押圧突部を形成することにより、金属板ばねによる仕切部材への押し付け力が及ぼされていない状態下では押圧突部よりも外周側においてゴム弁体と金属板ばねとの対向面間に隙間が形成されるようにした流体封入式防振装置にある。
このような本発明に従う構造とされた流体封入式防振装置においては、金属板ばねによる仕切部材への押し付け力がゴム弁体の押圧突部を介して環状当接突起に及ぼされ、かかる環状当接突起が仕切部材の短絡路の受圧室側への開口部周りに押し付けられることによって、短絡路がシールされる。これにより、オリフィス通路のチューニング周波数域の振動入力時には、短絡路からの受圧室の圧力漏れが抑えられて、オリフィス通路を通じての流体流動量が十分に確保されることから、流体の共振作用等の流動作用に基づく防振効果であるオリフィス効果が有効に発揮され得る。一方、衝撃荷重等の振動入力に伴い受圧室に過大な負圧が生じると、金属板ばねの押し付け力に抗して金属板ばねが弾性変形することに基づきゴム弁体が仕切部材から離隔する。その結果、受圧室と平衡室が短絡路を通じて短絡せしめられて、受圧室の過大負圧が回避されることにより、キャビテーションによる異音や振動の発生が防止される。
ここで、金属板ばねによる仕切部材への押し付け力が及ぼされていない状態下では、ゴム弁体の押圧突部よりも外周側においてゴム弁体と金属板ばねとの対向面間に隙間が形成される。従って、金属板ばねによる仕切部材への押し付け力が及ぼされた際に、例えば、金属板ばねや仕切部材、第二の取付部材等の寸法誤差や金属板ばねの特性誤差等に起因して、金属板ばねの仕切部材への対向面が仕切部材の金属板ばねへの対向面に対して傾斜せしめられることとなっても、かかる金属板ばねの傾斜に伴うゴム弁体の外周部分の変位が、隙間により吸収される。その結果、ゴム弁体の外周部分における環状当接突起が、仕切部材の短絡路の開口部に全周に亘って安定して押し付けられる。
それ故、金属板ばねの寸法誤差や特性誤差等による金属板ばねと仕切部材の組み付け状態への影響を特別に考慮せずとも、短絡路のシール性能が効果的に発揮されて、所期のオリフィス効果が安定して得られるのである。
また、本発明に係る流体封入式防振装置では、ゴム弁体が円板形状を有しており、環状当接突起が円環形状とされていると共に、環状当接突起と同心的な円周上に延びる外周縁部を有する形状をもって押圧突部が形成されている構造が、採用されても良い。このような構造によれば、金属板ばねの仕切部材への押し付け力が、押圧突部から環状当接突起に及ぼされ易くなって、短絡路のシール性能が一層向上され得る。
また、本発明に係る流体封入式防振装置では、押圧突部が、ゴム弁体において金属板ばねに向かって突出形成されている構造が、採用されても良い。このような構造によれば、ゴム弁体を金属板ばねに配設する前の段階で、押圧突部をゴム弁体における環状当接突起よりも内周側に位置せしめることも可能となり、それによって、押圧突部と環状当接突起の位置決めに際しての製造が容易になる。
また、本発明に係る流体封入式防振装置では、ゴム弁体の中央部分には、金属板ばねとの対向面側に突出する中央突部が形成されており、中央突部の形成領域を外周側に外れた位置に環状当接突起が形成されていることにより、中央突部によって押圧突部が構成されている構造が、採用されても良い。このような構造によれば、中央突部の外周側において、ゴム弁体と金属板ばねの対向面間における隙間の形成スペースが全周に亘って確保されることから、隙間の設計自由度が大きくされて、短絡路のシール性能の更なる向上が図られ得る。
また、本発明に係る流体封入式防振装置では、押圧突部が、金属板ばねにおいてゴム弁体に向かって突出形成されている構造が、採用されても良い。このような構造によれば、押圧突部が硬質の金属部材で形成されて、押圧突部の耐久性が向上され得る。
また、本発明に係る流体封入式防振装置では、金属板ばねには装着孔が貫通形成されている一方、ゴム弁体の中央部分には環状当接突起と反対側に向かって突出する係止突部が一体形成されており、係止突部が装着孔に挿通されて抜け止め係止されることによって、ゴム弁体が金属板ばねに取り付けられている構造が、採用されても良い。このような構造によれば、ゴム弁体の金属板ばねに対する組み付け作業が簡単化されて、製造効率が向上され得る。また、かかる係止突部を前述の押圧突部を構成する中央突部として用いることも可能であり、それによって、部品点数の増加が抑えられて、コンパクト化や低コスト化が達成され得る。
また、本発明に係る流体封入式防振装置では、ゴム弁体の中央部分には、環状当接突起の内周側に位置して仕切部材に向かって開口するドーム形の中央凹所が形成されている構造が、採用されても良い。このような構造によれば、ゴム弁体の環状当接突起が仕切部材に一層確実に押し付けられて、シール性能の安定性と信頼性向上が図られ得る。しかも、中央凹所によりゴム弁体の表面積が増大されて、応力緩和とそれに伴う耐久性向上が図られ得る。
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について説明する。先ず、図1には、本発明の流体封入式防振装置に係る第一の実施形態としての自動車用エンジンマウント10が示されている。自動車用エンジンマウント10では、第一の取付部材としての第一の取付金具12と第二の取付部材としての第二の取付金具14が本体ゴム弾性体16によって弾性的に連結されている。第一の取付金具12がパワーユニット側に取り付けられると共に、第二の取付金具14が車両ボデー側に取り付けられることにより、パワーユニットが車両ボデーに対して防振支持されるようになっている。
なお、図1では、自動車に装着する前の自動車用エンジンマウント10の単体での状態が示されているが、本実施形態では、装着状態において、パワーユニットの分担支持荷重がマウント軸方向(図1中、上下方向に対して所定の角度で傾斜する方向)に入力される。従って、マウント装着状態下では、本体ゴム弾性体16の弾性変形に基づき第一の取付金具12と第二の取付金具14が軸方向で互いに接近する方向に変位する。また、かかる装着状態下、防振すべき主たる振動は、略マウント軸方向に入力されることとなる。以下の説明において、特に断りのない限り、上下方向は、図1中の上下方向をいう。
より詳細には、第一の取付金具12が、略円柱形状乃至は円錐台形状を呈していると共に、その軸直角方向中間部分には上端面に開口する螺子穴18が設けられている。第一の取付金具12は、螺子穴18を介して図示しないパワーユニット側の取付部材に螺着固定されるようになっている。
一方、第二の取付金具14が、大径の略円筒形状を有しており、その軸方向一方の開口部側(図1中、上)には、かかる開口部から軸方向内方に向かって径寸法が次第に小さくなるテーパ状部20が形成されている。また、第二の取付金具14の軸方向他方の開口部側には、外フランジ状の段部22を介して軸方向下方に延びる大径筒状のかしめ筒部24が形成されている。更に、第二の取付金具14のかしめ筒部24には、カップ形状のブラケット金具26がかしめ固定されており、ブラケット金具26に突設された固定ボルト28が図示しない車両ボデーに螺着固定されることによって、第二の取付金具14が車両ボデーに固定されるようになっている。
このような第二の取付金具14のテーパ状部20を備えた開口部側に第一の取付金具12が離隔配置されて、両金具12,14の中心軸が略同一線上に位置せしめられている。これら第一の取付金具12と第二の取付金具14の間には、本体ゴム弾性体16が配されている。
本体ゴム弾性体16は、略円錐台形状を有しており、その大径側端面には、下方に開口する略逆すり鉢形状の大径凹所30が設けられている。本体ゴム弾性体16の小径側端面には、第一の取付金具12の軸方向中間部分から下端部にかけての略全体が埋設された状態で加硫接着されている。本体ゴム弾性体16の大径側端部外周面には、第二の取付金具14のテーパ状部20の内周面が加硫接着されている。
また、本体ゴム弾性体16と一体形成された薄肉のシールゴム層32が、第二の取付金具14の軸方向中間部分から段部22にかけての内周面の略全体に亘って被着形成されている。更に、第二の取付金具14の軸方向中間部分に位置する本体ゴム弾性体16とシールゴム層32の境界部分、換言すると本体ゴム弾性体16の大径凹所30の開口周縁部には、シールゴム層32よりも軸直角方向内方に延び出して周方向に延びる段差部34が、本体ゴム弾性体16により構成されている。
すなわち、本体ゴム弾性体16は、第一の取付金具12と第二の取付金具14を備えた一体加硫成形品として形成されており、それによって、第一の取付金具12と第二の取付金具14が、本体ゴム弾性体16で相互に弾性的に連結されていると共に、第二の取付金具14の一方(図1中、上)の開口部が本体ゴム弾性体16によって流体密に閉塞されている。
また、第二の取付金具14には、仕切部材36が、他方(図1中、下)の開口部側から内挿された形態で配設されている。仕切部材36は、図2〜6にも示されているように、略円形ブロック状を呈していると共に、硬質で、望ましくは軽量で且つ成形が容易な材料を用いて形成されており、例えば、ポリプロピレンやアルミニウム軽合金等が好適に用いられる。
仕切部材36の径方向中央部分には、軸方向中間部分から下方に開口する円形凹状の中央空所38が形成されている。中央空所38の軸方向中間部分には、軸直角方向外方に広がる円環形状の中央段部40が形成されており、この中央段部40に対して、略円板形状を有する弾性ゴム膜42の外周縁部が軸方向で重ね合わされている。また、中央空所38の開口部側から略円環板形状の支持金具44が嵌め込まれて、支持金具44の内周部分と中央段部40の間において、弾性ゴム膜42の外周縁部が軸方向に挟圧固定されている。それによって、弾性ゴム膜42が、仕切部材36の軸方向下側を軸直角方向に広がるように配設されて、中央空所38の開口部を覆蓋せしめている。なお、支持金具44の外周縁部は、仕切部材36の下方において仕切部材36の外周縁部よりも径方向外方に突出している。
仕切部材36の径方向中間部分において中央空所38の周壁部の周りには、中間凹所46が形成されている。中間凹所46は、仕切部材36の軸方向中間部分から上端面に開口しており、本実施形態では、二つの中間凹所46,46が、それぞれ仕切部材36の径方向中間部分を半周弱の長さで延びて、周方向に所定距離を隔てて設けられている。
仕切部材36の中間凹所46よりも径方向外方の外周部分には、周溝48が形成されている。周溝48は、仕切部材36の外周面に開口する凹状断面で、周方向に所定の長さ(本実施形態では仕切部材36の略一周)で螺旋状に延びている。周溝48の一方の端部が、仕切部材36の一方(図2中、左)の中間凹所46の側壁部に貫通形成された連通窓50を通じて仕切部材36の上方に開口していると共に、周溝48の他方の端部が、仕切部材36の下端部および該下端部と軸方向で対向位置せしめられる支持金具44の径方向中間部分乃至は外周部分に貫通形成された連通窓52を通じて仕切部材36の下方に開口している。
仕切部材36における中央空所38の上底部の略径方向中央部分には、短絡路54が貫設されて、仕切部材36の上端面と中央空所38の底面が短絡路54を通じて接続されている。本実施形態では、短絡路54が円孔形状とされているが、例えば、短絡路54の周壁部が、周方向で交互に径方向外方または内方に向かって湾曲乃至は屈曲せしめられる等の各種の形状が採用可能である。
また、仕切部材36における一対の中間凹所46,46の周方向間には、係止突起56が上方に向かって突設されている。更に、短絡路54と係止突起56の径方向間には、位置決め突起58が上方に向かって突設されている。これら短絡路54や位置決め突起58、係止突起56は、仕切部材36の径方向一方向(図2中、上下)の線上に位置せしめられている。また、仕切部材36の中心軸を挟んだかかる径方向一方向で係止突起56と反対側に位置せしめられる仕切部材36の上端部分の外周側には、かかる径方向一方向と直交する一軸直角方向(図2中、左右)に所定距離を隔てて、一対の幅方向突起60,60が突設されている。
このような仕切部材36には、装着金具62が装着されている。装着金具62は、図7,8にも示されているように、薄肉のステンレス鋼板やばね鋼板等からなる金属製の板ばね部材からなり、長手状の略矩形平板形状を有している。特に、装着金具62の長手寸法が仕切部材36の直径と略同じとされていると共に、装着金具62の長手方向(図7,8中、左右)の両端縁部が、仕切部材36の半径と略同じ大きさの曲率半径で湾曲している。また、装着金具62の長手方向両端部側には、長手方向両側から中央に立ち上がるようにして曲げ部64が設けられていることにより、装着金具62が水平な状態で、装着金具62の長手方向中間部分が長手方向両端部よりも上方に位置せしめられる。
装着金具62には、長手方向の略中央部分から一方(図7,8中、左)の側に開くような略U字状の切込み部66が、板厚方向(図8中、上下)に貫設されている。これにより、装着金具62の切込み部66の内側において、長手方向一方から中央に向かって突出するような略舌状の金属板ばね68が構成されている。
この金属板ばね68は、装着金具62の長手方向一方の側(図7,8中、左)に位置する基端部分を備えた傾斜部70と、傾斜部70よりも装着金具62の長手方向中央の側に位置して略円弧状の突出先端部分を備えた弁板部72とを含んで構成されている。金属板ばね68が仕切部材36に装着される前の状態下、傾斜部70が、装着金具62の長手方向一方の端部よりも僅かに立ち上がるようにして装着金具62に対して傾斜せしめられていると共に、弁板部72が、装着金具62から下方に離隔するようにして装着金具62に対して傾斜せしめられている。
また、装着金具62の長手方向他方の側には、略円形状の係止用孔74が貫設されている。特に、係止用孔74の縁部には、複数の切れ込み部が等間隔に形成されていると共に、それら切れ込み部の各周方向間が立ち上がるようにして傾斜せしめられていることによって、係止用孔74が一方向の抜け止め構造とされている。
また、金属板ばね68の弁板部72の略中央部分には、円形状の装着孔76が貫通形成されていると共に、かかる装着孔76にゴム弁体78が取り付けられている。ゴム弁体78は、図9にも示されているように、ゴム弾性体からなり、金属板ばね68の装着孔76や仕切部材36の短絡路54よりも大きな略円板形状を有している。
ゴム弁体78の径方向中央部分には、略裁頭円錐台形状を有する係止突部80が一体形成されて、上方に向かって突出されている。係止突部80の基端部分の外径寸法が装着孔76の内径寸法に比して大きくされている。係止突部80の基端部分とゴム弁体78の中央部分の間には、装着孔76の内径寸法よりも小さな外径寸法を有するくびれ部82が一体形成されている。くびれ部82の軸方向寸法と装着孔76の軸方向寸法が略同じとされている。かかる係止突部80が金属板ばね68の弁板部72の下方から装着孔76に弾性変形しつつ軸方向で挿通されて、くびれ部82が装着孔76の内側に位置せしめられると共に、金属板ばね68を挟んで係止突部80が上方に位置せしめられ、且つゴム弁体78が下方に位置せしめられることによって、係止突部80が金属板ばね68に抜け止め係止されて、ゴム弁体78が金属板ばね68に取り付けられている。
このようなゴム弁体78が取り付けられた金属板ばね68を備えてなる装着金具62が、仕切部材36の上方から重ね合わされて、仕切部材36の位置決め突起58が、装着金具62における切込み部66の周壁部と金属板ばね68の弁板部72の突出先端部の間の隙間に挿通されていると共に、仕切部材36の一対の幅方向突起60,60の間に装着金具62の幅方向両端部が位置せしめられている。また、仕切部材36の係止突起56が装着金具62の係止用孔74に挿通されて、係止用孔74の縁部に形成された複数の立ち上がり片が弾性変形しつつ、各立ち上がり片の先端部分が係止突起56の周壁部に重ね合わされることによって、係止突起56が係止用孔74に対して仕切部材36と装着金具62の重ね合わせ方向で相互に離隔する方向に抜け止め係止されている。これにより、装着金具62が仕切部材36の径方向一方向線上に位置せしめられると共に、装着金具62の長手方向両端部が仕切部材の外周側の上端部分に重ね合わされた形態で、金属板ばね68を備えた装着金具62が仕切部材36に装着されている。なお、仕切部材36の中間凹所46は、その一部が装着金具62により覆蓋せしめられているが、全部が覆蓋されているのでなく、中間凹所46の側壁部に貫設された連通窓50は、中間凹所46を通じて仕切部材36の上方に開口せしめられている。
また、装着金具62の仕切部材36への装着に基づき、金属板ばね68の弁板部72の下端面が仕切部材36の短絡路54周りの上端面と略平行となるように金属板ばね68が弾性変形しつつ、弁板部72がゴム弁体を介して仕切部材36の短絡路54周りの上端部分に重ね合わされている。この金属板ばね68の弾性変形に基づく押し付け力がゴム弁体78に及ぼされて、ゴム弁体78が仕切部材36の短絡路54の開口部周りに対して上方から押し付けられている。
かくの如き装着金具62が装着された仕切部材36が、第二の取付金具14のかしめ筒部24を備えた下側開口部から軸方向に内挿されて、仕切部材36の外周側の上端部および装着金具62の長手方向両端部が、本体ゴム弾性体16の段差部34と軸方向で重ね合わされていると共に、仕切部材36の下端部に装着されて仕切部材36よりも軸直角方向外方に突出する支持金具44の外周縁部が、第二の取付金具14の段部22と軸方向で重ね合わされている。
さらに、第二の取付金具14の下側開口部には、可撓性膜としてのダイヤフラム84が配設されている。ダイヤフラム84は、変形容易な薄肉のゴム膜からなり、軸方向に弛んだ略円板形状を有している。ダイヤフラム84の外周縁部には、大径の略円環板形状を有する固定金具86の内周縁部が加硫接着されている。また、固定金具86の上端面や下端面等には、ダイヤフラム84と一体形成されたシールゴム層88が被着形成されている。かかる固定金具86が、第二の取付金具14の下側開口部から軸方向に内挿されて、第二の取付金具14のかしめ筒部24内に位置せしめられていると共に、シールゴム層88を介して支持金具44の外周縁部と第二の取付金具14の段部22に軸方向で重ね合わされている。また、固定金具86には、下方からブラケット金具26の外フランジ状の外周縁部がシールゴム層88を介して重ね合わされて、かかる外周縁部がかしめ筒部24内に位置せしめられている。
そして、第二の取付金具14に八方絞り等の縮径加工が施されていると共に、第二の取付金具14のかしめ筒部24にかしめ加工が施されていることによって、仕切部材36が、軸直角方向に圧縮変形せしめられたシールゴム層32を介して第二の取付金具14に嵌着固定されていると共に、ダイヤフラム84およびブラケット金具26が、軸方向等に圧縮変形されたシールゴム層88を介して第二の取付金具14にかしめ固定されて、第二の取付金具14の下側開口部が流体密に閉塞されている。これにより、第二の取付金具14の内側における本体ゴム弾性体16とダイヤフラム84の軸方向対向面間が外部に対して流体密に仕切られていると共に、この軸方向対向面間の中間部分に仕切部材36が支持されて、該対向面間を二分している。
第二の取付金具14の内側における本体ゴム弾性体16とダイヤフラム34の軸方向対向面間において、仕切部材36を挟んだ一方(図1中、上)の側には、壁部の一部が本体ゴム弾性体16で構成されて、本体ゴム弾性体16の弾性変形に基づき圧力変動が生ぜしめられる受圧室90が形成されている。また、仕切部材36を挟んだ他方(図1中、下)の側には、壁部の一部がダイヤフラム84で構成されて、ダイヤフラム84の弾性変形に基づき容積変化が容易に許容される平衡室92が形成されている。これら受圧室90や平衡室92には、非圧縮性流体が封入されている。封入流体としては、例えば水やアルキレングリコール, ポリアルキレングリコール, シリコーン油等が採用されるが、特に流体の共振作用等の流動作用に基づく防振効果を有効に得るためには、0.1Pa・s以下の低粘性流体を採用することが望ましい。受圧室90や平衡室92への非圧縮性流体の封入は、例えば、第一及び第二の取付金具12,14を備えた本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品に対する仕切部材36やダイヤフラム84の組み付けを非圧縮性流体中で行うことによって、好適に実現される。
また、仕切部材36の周溝48がシールゴム層32を介して第二の取付金具14で流体密に覆蓋されることにより、周溝48の底壁部および側壁部と第二の取付金具14が協働して、仕切部材36の外周部分を周方向に所定の長さで延びるオリフィス通路94が形成されている。オリフィス通路94の一方の端部が、仕切部材36の中間凹所46の側壁部に貫設された連通窓50を通じて受圧室90に接続されていると共に、オリフィス通路94の他方の端部が、仕切部材36の下端部および支持金具44に貫設された連通窓52を通じて平衡室92に接続されている。これにより、受圧室90と平衡室92がオリフィス通路94を通じて相互に連通せしめられて、それら両室90,92間でオリフィス通路94を通じての流体流動が許容されるようになっている。このオリフィス通路94を通じて流動せしめられる流体の共振周波数は、問題となる振動に対して有効な防振効果が発揮されるようにチューニングされている。具体的に、例えば、受圧室90や平衡室92の各壁ばね剛性、即ちそれら各室90,92を単位容積だけ変化させるのに必要な圧力変化量に対応する本体ゴム弾性体16やダイヤフラム84等の各弾性変形量に基づく特性値を考慮しつつ、オリフィス通路94の通路長さと通路断面積を調節することによって、オリフィス通路94を通じて流動せしめられる流体の共振周波数をチューニングすることが可能である。
また、本実施形態では、受圧室90への非圧縮性流体の封入に際して、短絡路54を通じて、仕切部材36の中央空所38にも受圧室90や平衡室92と同様に非圧縮性流体が封入されている。即ち、短絡路54が開口せしめられて受圧室90と中央空所38が連通せしめられた状態下、弾性ゴム膜42の一方の面には、中央空所38の非圧縮性流体を介して受圧室90の圧力が及ぼされるようになっている。また、弾性ゴム膜42の他方の面には、平衡室92の圧力が及ぼされるようになっている。これら受圧室90と平衡室92の圧力差に基づき、弾性ゴム膜42が弾性変形せしめられる。
特に本実施形態では、オリフィス通路94のチューニング周波数域の振動入力時に、金属板ばね68の弾性変形に基づく仕切部材36への押し付け作用(付勢力)により、ゴム弁体78が仕切部材36の短絡路54の受圧室90側の開口部の周りに押し付けられて、短絡路54の閉塞状態が維持されるように、金属板ばね68のばね特性が設定されている。即ち、オリフィス通路94のチューニング周波数域の振動入力時において、短絡路54の閉塞状態が維持されるようになっており、それによって、短絡孔54を通じての受圧室90の圧力漏れが抑えられることから、オリフィス通路94を通じての流体の流動量が十分に確保されて、かかる流体の共振作用等の流動作用に基づく所期の防振効果が安定して得られる。
一方、第一の取付金具12と第二の取付金具14の間に過大な振動乃至は荷重が入力されて、問題となる大きな負圧が受圧室90に発生する状態では、金属板ばね68に過負圧が及ぼされて、金属板ばね68の弾性変形に基づく仕切部材36への押し付け力に抗して金属板ばね68が立ち上がるようにして仕切部材36から離隔するように、金属板ばね68のばね特性が設定されている。これに基づき、ゴム弁体78が仕切部材36の短絡路54の受圧室90側の開口部から離隔せしめられて、短絡路54が開口せしめられる。
そこにおいて、ゴム弁体78における仕切部材36への対向面には、外周部分を周方向に連続して延びる環状当接突起96が一体形成されている。環状当接突起96は、ゴム弁体78の外周部分と同心的な円周上に延びる円環形状とされており、ゴム弁体78から仕切部材36に向かって幅寸法が次第に小さくなる略三角状や半球状等の先細り状の断面形状で、全周に亘って連続している。かかる環状当接突起96の内周縁部の外径寸法が短絡路54の内径寸法に比して大きくされている。また、環状当接突起96の外周縁部がゴム弁体78の外周縁部と略同一円周上に位置せしめられている。
さらに、ゴム弁体78における金属板ばね68の弁板部72への対向面において、くびれ部82よりも外周側で且つ環状当接突起96よりも内周側には、押圧突部98が一体形成されている。即ち、押圧突部98が、ゴム弁体78において金属板ばね68の弁板部72に向かって突出形成されている。押圧突部98は、ゴム弁体78から弁板部72に向かって幅寸法が次第に小さくなる略三角状や半球状等の先細り状の断面形状で、周方向に連続して延びている。この押圧突部98の内周縁部の外径寸法が弁板部72の装着孔76の内径寸法に比して大きくされている。また、押圧突部98の外周縁部がゴム弁体78における環状当接突起96の内周縁部と略同一円周上に位置せしめられている。
なお、上述の説明からも明らかなように、本実施形態では、ゴム弁体78における金属板ばね68との対向面側に突出する中央突部がくびれ部82により構成されており、このくびれ部82の形成領域を外周側に外れた位置に環状当接突起96が形成されていることにより、くびれ部82が押圧突部としても機能する。
これら環状当接突起96および押圧突部98を備えたゴム弁体78が、前述の如き係止突部80の装着孔76への抜け止め係止により、金属板ばね68の弁板部72に取り付けられると、図8に示されているように、押圧突部98が、ゴム弁体78と金属板ばね68の間に介装されて、ゴム弁体78の外周部分が金属板ばね68から下方に離隔するように、ゴム弁体78を弾性変形せしめる。
これにより、押圧突部98よりも外周側においてゴム弁体78と金属板ばね68の弁板部72との対向面間には、隙間100が形成されている。本実施形態では、隙間100が全周に亘って連続して延びているが、例えば、ゴム弁体78と金属板ばね68との対向面の一部が互いに当接することにより、隙間が周上の一箇所または複数箇所で部分的に形成されるようにしても良い。
金属板ばね68が仕切部材36に装着されて金属板ばね68による仕切部材36への押し付け力がゴム弁体78に及ぼされた状態下では、ゴム弁体78の環状当接突起96が、押圧突部98を介した金属板ばね68(弁板部72)と仕切部材36の間で弾性変形せしめられつつ、環状当接突起96の突出先端面が仕切部材36の短絡路54の受圧室90側の開口部の周りに押し付けられている。これにより、金属板ばね68がゴム弁体78を挟んで仕切部材36の短絡路54の受圧室90側の開口部に重ね合わされて、短絡路54がゴム弁体78でシールされている。また、環状当接突起96の内側が、仕切部材36の短絡路54の受圧室90側の開口部とマウント軸方向に所定距離を隔てて対向位置せしめられている。なお、金属板ばね68の仕切部材36への装着に際して、ゴム弁体78を挟んで軸方向で対向位置せしめられる金属板ばね68の弁板部72における仕切部材36の上端部への対向面と仕切部材36の上端部の弁板部72への対向面は、互いに略平行に延びている。
特に本実施形態では、図8に示されているように、ゴム弁体78が金属板ばね68に取り付けられて、金属板ばね68による仕切部材36への押し付け力(付勢力)がゴム弁体78に及ぼされていない状態下と、図1,10にも示されているように、装着金具62が仕切部材36に装着されて、金属板ばね68の弾性変形に基づく仕切部材36への押し付け力がゴム弁体78に及ぼされた状態下の、何れの状態においても、隙間100が形成されている。しかし、本実施形態はこれに限定されるものでなく、例えば、金属板ばね68の弾性変形に基づく仕切部材36への押し付け力がゴム弁体78に及ぼされた状態で、金属板ばね68と仕切部材36の間に介装されるゴム弁体78や環状当接突起96、押圧突部98の弾性変形によって、押圧突部98よりも外周側においてゴム弁体78と金属板ばね68との対向面の一部又は全部が互いに当接することにより、全周に亘って連続して延びていた隙間100の一部又は全てを消失させることも可能である。なお、環状当接突起96を備えたゴム弁体78と仕切部材36の当接状態では、金属板ばね68の付勢力が及ぼされることによって、例えば、図示されていないが、環状当接突起96が弾性変形して略完全に押しつぶされた状態でも、環状当接突起96が仕切部材36に当接する前の環状当接突起96の突出部分の弾性によって安定したシール性能が発揮される。また、例えば、環状当接突起96の弾性変形によって、ゴム弁体78の外周部分が金属板ばね68に対して密接状態とされて、金属板ばね68とゴム弁体78の対向面間に隙間100が存在しない状態でも、当接前の環状当接突起96の突出部分の弾性と、ゴム弁体78の外周部分の金属板ばね68との対向面間における隙間100によって許容されるゴム弁体78の弾性変形量とによって、安定したシール性能が発揮される。
また、押圧突部98における金属板ばね68とゴム弁体78の間への介装により、ゴム弁体78の外周部分が金属板ばね68から下方に離隔するように弾性変形せしめられると、ゴム弁体78の中央部分には、環状当接突起96の内周側に位置して下方に開口する略円形ドーム形の中央凹所102が形成されている。かかる中央凹所102は、金属板ばね68が仕切部材36に装着されて金属板ばね68による仕切部材36への押し付け力によりゴム弁体78が弾性変形した状態下においても、仕切部材36に向かって円形ドーム形に開口する形態が維持されているが(図10参照。)、例えばゴム弁体78が平坦な板形状に弾性変形すること等に伴い、中央凹所が消失されるようにしても良い。また、ゴム弁体78の弾性変形に際して、中央凹所が仕切部材36の短絡路54の開口端面等に当接されるようにしても良い。
上述の如き構造とされた自動車用エンジンマウント10においては、オリフィス通路94のチューニング周波数域の振動入力時に、金属板ばね68による仕切部材36への押し付け力で弁板部72がゴム弁体78を介して仕切部材36の短絡路54の受圧室90側の開口部周りに当接する状態が維持せしめられて、短絡路54が閉塞状態に維持されるようになっている。
特に、ゴム弁体78の外周部分に突設された環状当接突起96が、金属板ばね68とゴム弁体78の間に押圧突部98が介装されることに伴い仕切部材36に向かって変位せしめられた形態で、仕切部材36の短絡路54の受圧室90側の開口部周りに当接されていることから、金属板ばね68とゴム弁体78の間における環状当接突起96の弾性変形量が大きく確保されて、環状当接突起96を備えたゴム弁体78による短絡路54のシール性能が向上され得る。しかも、ゴム弁体78における環状当接突起96の内周側には、仕切部材36に向かって円形凹状に開口する中央凹所102が形成されていることから、環状当接突起96だけを仕切部材36に対して確実に押し付けることが可能となり、シール性能の安定性と信頼性向上が図られ得る。
その結果、オリフィス通路94の振動入力時に、短絡路54を通じての圧力漏れが確実に阻止されて、受圧室90と平衡室92の相対的な圧力差に基づいてオリフィス通路94を通じての流体の共振作用等の流動作用が有効に生ぜしめられることとなり、かかる流動作用に基づく防振効果が有効に発揮され得る。
ところで、パワーユニットと車両ボデーの間に介装される自動車用エンジンマウントにおいては、一般に、自動車が段差乗り越えをしたり凹凸の大きな路面等を走行して、第一の取付金具12と第二の取付金具14の間に衝撃的な荷重が入力されると、本体ゴム弾性体16が急激に乃至は過大に弾性変形することに伴い、受圧室において問題となる異音の発生要因のキャビテーション気泡を生ぜしめる程に過大な負圧が発生する場合がある。
そこにおいて、本実施形態に従う構造とされた自動車用エンジンマウント10では、このキャビテーション気泡が発生する前の大きな負圧の段階で、金属板ばね68に負圧が及ぼされると、金属板ばね68のばね特性の設定に基づき、金属板ばね68の弁板部72が仕切部材36から上方に離隔するように変位すると共に、ゴム弁体78の環状当接突起96が仕切部材36から離隔することによって、短絡路54の遮断状態が解除される。それによって、受圧室90と中央空所38が短絡路54を通じて相互に連通せしめられ、受圧室90の圧力が弾性ゴム膜42の弾性変形に基づき平衡室92側に逃がされることで、受圧室90と平衡室92が短絡路54を通じて実質的に短絡せしめられる。その結果、受圧室90の圧力と平衡室92の圧力が平衡状態に向かい、受圧室90の過負圧状態が解消されることで、キャビテーション気泡の発生が抑えられて、問題となる異音や振動等が防止されるのである。
ここで、金属板ばね68による仕切部材36への押し付け力が及ぼされていない、金属板ばね68の未装着の状態においては、ゴム弁体78の押圧突部98よりも外周側においてゴム弁体78と金属板ばね68の弁板部72との対向面間に隙間100が形成されている。従って、金属板ばね68による仕切部材36への押し付け力が及ぼされる金属板ばね68の装着に際して、例えば、金属板ばね68や仕切部材36、第二の取付金具14等の寸法誤差や金属板ばね68の特性誤差等に起因して、弁板部72の仕切部材36への対向面が仕切部材36の弁板部72への対向面に対して傾斜せしめられることとなっても、かかる弁板部72の傾斜に伴うゴム弁体78の外周部分の変位が、隙間100により吸収される。その結果、ゴム弁体78の外周部分に突設された環状当接突起96が、仕切部材36の短絡路54の受圧室90側の開口部の周りに全周に亘って安定して押し付けられる。
それ故、本実施形態に係る自動車用エンジンマウント10によれば、金属板ばね68の寸法誤差や特性誤差等による弁板部72と仕切部材36の平行な組み付け状態への影響等を特別に考慮せずとも、短絡路54のシール性能が高い信頼性を確保し得るが故に、所期の防振効果が安定して得られるのである。
なお、本発明に係る流体封入式防振装置の一実施形態としての自動車用エンジンマウントは、当然ながら、上述の第一の実施形態にのみ限定されるものでなく、各種の形態が採用される。以下に第一の実施形態と異なる形態の本発明に係る自動車用エンジンマウントについて説明するが、前記実施形態と実質的に同一の構造とされた部材および部位については、前記実施形態と同一の符号を付することにより、それらの詳細な説明を省略する。
すなわち、本発明の第二の実施形態としての自動車用エンジンマウントの要部が、図11にも示されているように、周方向に連続に延びる円環形状の押圧突部104が、金属板ばね68の弁板部72において、ゴム弁体78の環状当接突起96よりも内周側に位置せしめられるようにして、ゴム弁体78に向かって突出形成されるようにしても良い。これにより、押圧突部104の耐久性が向上され得ることに加えて、ゴム弁体78に押圧突部を設けない分だけ、ゴム弁体78や環状当接突起96の設計自由度の向上が図られ得る。
また、図12に示される本発明の第三の実施形態としての自動車用エンジンマウントのように、中央突部としての押圧突部106が、ゴム弁体78の環状当接突起96よりも内周側において径方向中央部分から径方向外方に向かって所定の長さで広がる厚肉部とされても良い。また、厚肉状の押圧突部106の下面における環状当接突起96の内側には、予め下方に開口する円形ドーム形の中央凹所108を形成して、金属板ばね68の仕切部材36への装着に際して、環状当接突起96が仕切部材36に対して優先的に当接されるようにしても良い。
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、これら実施形態における具体的な記載によって、本発明は、何等限定されるものでなく、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様で実施可能であり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
例えば、前記実施形態では、短絡路54がマウント10の略中心軸上に設けられていたが、マウントの中心軸から偏倚した位置に設けることも可能である。また、短絡路の受圧室側の開口部に重ね合わされるゴム弁体や金属板ばねの弁板部も、金属板ばねの設計変更に伴いマウントの中心軸から偏倚した位置に設けるようにしても良い。
また、前記実施形態では、短絡路54やゴム弁体78が各一つ形成されていたが、要求される受圧室90と平衡室92の短絡効果や製作性等に応じて、複数形成することも可能である。
また、前記第一の実施形態では、押圧突部98が、例えばゴム弁体78の径方向中間部分を周方向に延びる一条の環状弾性突部とされていたが、押圧突部の条数や大きさ、形状、構造等は限定されるものでない。また、かかる押圧突部98は周方向の全周に亘って連続して形成されていることも必須の構成要件でない。
また、前記実施形態に係る自動車用エンジンマウントでは、単一オリフィス通路を設けた構造が採用されていたが、例えばオリフィス通路として、第一のオリフィス通路と、第一のオリフィス通路よりも高周波数域にチューニングされた第二のオリフィス通路とが設けられている構造が、採用されても良い。これにより、例えば、問題となり易い振動が低周波数域と中乃至は高周波数域に存在する場合に、第一のオリフィス通路や第二のオリフィス通路を通じて流動せしめられる各流体の共振周波数を、それぞれ低周波周域と高周波数域にチューニングすることによって、複数の振動に対して防振効果が有効に発揮され得る。ここで、複数のオリフィス通路が形成されることに伴い、金属板ばねのバネの有効自由長が著しく制限されて、バネの特性誤差が大きくばらつくこととなっても、環状当接突起の上方でゴム弁体と金属板ばねの間に隙間が形成されていることから、金属板ばねの特性誤差等による環状当接突起と仕切部材の当接状態のばらつきが、隙間による環状当接突起の変位吸収により有効に解消され得るのである。
また、前記実施形態では、ゴム弁体78と一体形成された係止突部80が金属板ばね68の装着孔76に抜け止め係止されることによって、ゴム弁体78が金属板ばね68に取り付けられるようになっていたが、例えば、係止突部80や装着孔76を設けずに、ゴム弁体の径方向中央部分が金属板ばねに直接に重ね合わせられて固着されるようにしても良い。
加えて、前記実施形態では、本発明を自動車用エンジンマウントに適用したものの具体例について説明したが、本発明は、自動車用ボデーマウントやデフマウント、サスペンションメンバマウント等の他、自動車以外の各種振動体の防振装置に対して、何れも、適用可能である。
本発明の第一の実施形態としての自動車用エンジンマウントの縦断面図。 同自動車用エンジンマウントの一部を構成する仕切部材の平面図。 同仕切部材の正面図。 同仕切部材の底面図。 図2のV−V断面図。 図2のVI−VI断面図。 同自動車用エンジンマウントの一部を構成する金属板ばねを拡大して示す平面図。 図7のVIII−VIII断面図。 同自動車用エンジンマウントの一部を構成するゴム弁体を拡大して示す縦断面図。 同自動車用エンジンマウントの要部を拡大して示す縦断面図。 本発明の第二の実施形態としての自動車用エンジンマウントの要部を拡大して示す縦断面図。 本発明の第三の実施形態としての自動車用エンジンマウントの要部を拡大して示す縦断面図。
符号の説明
10:自動車用エンジンマウント、12:第一の取付金具、14:第二の取付金具、16:本体ゴム弾性体、36:仕切部材、54:短絡路、68:金属板ばね、78:ゴム弁体、84:ダイヤフラム、90:受圧室、92:平衡室、94:オリフィス通路、96:環状当接突起、98:押圧突部、100:隙間

Claims (7)

  1. 第一の取付部材と第二の取付部材を本体ゴム弾性体で連結すると共に、該第二の取付部材で仕切部材を支持せしめて、該本体ゴム弾性体で壁部の一部が構成されて非圧縮性流体が封入された受圧室と、壁部の一部が可撓性膜で構成されて非圧縮性流体が封入された平衡室を、該仕切部材を挟んだ両側に形成すると共に、それら受圧室と平衡室を相互に連通するオリフィス通路を該仕切部材を利用して形成する一方、該仕切部材に短絡路を形成して、該オリフィス通路を通じて連通された該受圧室と該平衡室が該短絡路を通じて短絡されるようにし、更に、該仕切部材における該短絡路の該受圧室側への開口部にゴム弁体を配設すると共に、該ゴム弁体に対して該受圧室側から金属板ばねを重ね合わせて設け、該仕切部材における該短絡路の該受圧室側への開口部に向けて該ゴム弁体を押し付けて該短絡路を閉塞状態に保持せしめた流体封入式防振装置において、
    前記ゴム弁体における前記仕切部材への対向面には外周部分を周方向に連続して延びる環状当接突起を形成する一方、該ゴム弁体と前記金属板ばねとの対向面間には該環状当接突起よりも内周側において押圧突部を形成することにより、該金属板ばねによる前記仕切部材への押し付け力が及ぼされていない状態下では該押圧突部よりも外周側において該ゴム弁体と該金属板ばねとの対向面間に隙間が形成されるようにしたことを特徴とする流体封入式防振装置。
  2. 前記ゴム弁体が円板形状を有しており、前記環状当接突起が円環形状とされていると共に、該環状当接突起と同心的な円周上に延びる外周縁部を有する形状をもって前記押圧突部が形成されている請求項1に記載の流体封入式防振装置。
  3. 前記押圧突部が、前記ゴム弁体において前記金属板ばねに向かって突出形成されている請求項1又は2に記載の流体封入式防振装置。
  4. 前記ゴム弁体の中央部分には、前記金属板ばねとの対向面側に突出する中央突部が形成されており、該中央突部の形成領域を外周側に外れた位置に前記環状当接突起が形成されていることにより、該中央突部によって前記押圧突部が構成されている請求項3に記載の流体封入式防振装置。
  5. 前記押圧突部が、前記金属板ばねにおいて前記ゴム弁体に向かって突出形成されている請求項1又は2に記載の流体封入式防振装置。
  6. 前記金属板ばねには装着孔が貫通形成されている一方、前記ゴム弁体の中央部分には前記環状当接突起と反対側に向かって突出する係止突部が一体形成されており、該係止突部が装着孔に挿通されて抜け止め係止されることによって、該ゴム弁体が該金属板ばねに取り付けられている請求項1乃至5の何れか一項に記載の流体封入式防振装置。
  7. 前記ゴム弁体の中央部分には、前記環状当接突起の内周側に位置して前記仕切部材に向かって開口するドーム形の中央凹所が形成されている請求項1乃至6の何れか一項に記載の流体封入式防振装置。
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