JP4859118B2 - 既存鋼構造部材の補強工法 - Google Patents
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Description
既存鋼構造物を構成している既存鋼構造部材に補強用鋼材を用いて補強する場合、補強用鋼材を既存鋼構造部材に溶接により接合する技術は既に知られている(特許文献1)。
補強用鋼材を既存鋼構造部材に溶接により接合する場合、補強用鋼材の位置合わせをして仮付け溶接を行い、次に、本溶接が行なわれる。
しかしながら、溶接作業では仮付け溶接から本溶接までの間溶接養生が必要とされ、また溶接作業は高度の技能を有する有資格者しかできないため、施工コスト及び人員配置の手間がかかり、工期の短縮化を図る上で不利があった。
このような場合、複数のラチス材に対してそれぞれ補強用鋼材を個別に溶接するのでは、溶接作業は上述のように仮付け溶接から本溶接までの間溶接養生が必要とされ、また溶接作業は高度の技能を有する有資格者しかできないため、施工コスト及び人員配置の手間がかかり、工期の短縮化を図る上で不利がある。
また、ボルト、ナットを用いて補強用鋼材とラチス材の多数箇所を締結することが考えられるが、この場合には、ボルトが挿通できように、ラチス材に多数のボルト挿通孔を精度を持たせて形成する必要があり、そのためラチス材への孔加工に手間取り、施工コストを削減し、工期の短縮化を図る上で不利がある。
本発明は、このような事情に鑑み成されたものであり、本発明の目的は、既存鋼構造部材を構成するラチス材を補強するに際し、有資格者による作業を減少して人員配置を迅速に行なえ、工期の短縮化、施工コストの低減化を図る上で有利な新規な補強工法を提供することにある。
また、本発明は、既存鋼構造物を構成する既存鋼構造部材であって、互いに対向して延在する一対の弦材と、それら弦材間に掛け渡された平鋼からなる複数のラチス材とを有するラチス柱またはラチス梁を補強する工法であって、前記一対の弦材間に露出する前記ラチス材の部分に対応した長さで前記ラチス材の部分の全長にわたって当て付け可能な当て付け面を有する複数の補強用鋼材を用意し、前記補強用鋼材として、2つのフランジが直交しそれらフランジのうちの一方のフランジの外面が前記当て付け面とされ、前記外面が前記当て付け面とされるフランジは前記平鋼の幅と同一のフランジ幅を有する山形鋼を用い、前記当て付け面を貫通するように前記外面が前記当て付け面とされるフランジに打ち込み鋲の挿通孔を形成すると共に、前記当て付け面で前記挿通孔の周囲の前記フランジの箇所に座繰り面を形成し、前記平鋼の幅に前記外面が前記当て付け面されるフランジのフランジ幅を合致させて前記各ラチス材にそれぞれ前記フランジの前記当て付け面を当て付け、前記挿通孔から打ち込み鋲を前記ラチス材に打ち込んで前記当て付け面を前記ラチス材に密接した状態で前記山形鋼のフランジを前記ラチス材に取り付けるようにしたことを特徴とする。
そして、ラチス材を補強するに際し、ドリルねじや打ち込み鋲を用いて複数の補強用鋼材をそれぞれラチス材に取着でき、この作業は、電動式やエア式のドライバや打鋲機などを用いて簡単に行なえるので、有資格者による作業を減少して人員配置を迅速に行なえ、工期の短縮化、施工コストの低減化を図る上で有利となる。
また、火気を使用することなくラチス材の補強を行なえ、したがって、溶接の際の火気養生は不要となり、工期の短縮化および施工コストを低減化する上で有利となる。
図1は柱の正面図、図2は図1のAA断面図、図3は図2のAA断面図を示している。
本実施の形態では、既存鋼構造物8の屋根10を支える柱12に本発明が適用された場合を例にとって説明する。
既存鋼構造部材である柱(ラチス柱)12は、互いに対向して延在する一対の弦材14と、それら弦材14間に掛け渡された複数のラチス材(斜材)16とを含んで構成されている。
本実施の形態では、各弦材14は、2つの山形鋼1402のフランジ1402Aを対向して配置することで構成されている。
また、ラチス材16は型鋼で構成され、本実施の形態では型鋼として平鋼が用いられている。
ラチス材16の長手方向の両端は、各弦材14の2つの山形鋼1402のフランジ1402Aに挟持され、ボルト、ナットの締結により、あるいは、溶接により固定されている。
補強用鋼材20として様々な断面形状の型鋼が使用可能であり、型鋼の断面形状は、補強すべき強度や、ラチス材16の断面形状などに応じて適宜選択される。
山形鋼は、互いに直交するフランジ2002を有しており、それらフランジ2002のうちの一方のフランジ2002の外面が当て付け面2004とされる。
図3に示すように、外面が当て付け面2004とされるフランジ2002はラチス材16を構成する平鋼の幅と同一のフランジ幅を有している。
当て付け面2004とされるフランジ2002には、該フランジ2002を貫通するようにドリルねじの挿通孔をまたは打ち込み鋲22の挿通孔2010を、フランジ2002の延在方向に間隔をおいて複数形成しておく。この挿通孔2010のピッチは、例えば、50〜100mm程度である。なお、図面では、打ち込み鋲22を用いる場合を描いている。
そして弦材14の間に露出する各ラチス材16の箇所に、ラチス材16を構成する平鋼の幅に外面が当て付け面2004されるフランジ2002のフランジ幅を合致させてそれぞれ各補強用鋼材20の当て付け面2004を当て付け、ドリルねじまたは打ち込み鋲22を挿通孔2010からラチス材16に打ち込み、補強用鋼材20をラチス材16に取り付ける。
また、打ち込み鋲22は、頭部と軸部とを有し、軸部の先端が鋭く尖った鋲であり、エア式やガス式、火薬式などの打鋲機を用いて打ち込むことにより、下孔をあけていない鋼材にも、あたかも木材に釘を打ち込むように打ち込むことができる鋲であり、ドリルねじと同様にフランジ2002の当て付け面2004がラチス材16の面にがたつくことなく密接した接合状態で簡単に確実に取り付けられる。
なお、実施の形態のように、フランジ2002にドリルねじや打ち込み鋲22の挿通孔(下孔)2010を予め形成しておくと、施工効率を高める上で極めて有利となる。
また、ラチス材16を補強するに際し、ドリルねじや打ち込み鋲22を用いて複数の補強用鋼材20をそれぞれラチス材16に取着するようにしており、この作業は、電動式やエア式のドライバや打鋲機などを用いて簡単に行なえるので、有資格者による作業を減少して人員配置を迅速に行なえ、工期の短縮化、施工コストの低減化を図る上で有利となる。
また、本実施の形態では、ドリルねじや打ち込み鋲22を用いているので、火気を使用することなくラチス材16の補強を行なえ、したがって、溶接の際の火気養生は不要となり、工期の短縮化および施工コストを低減化する上で有利となる。
図4は、ラチス材と補強用鋼材との結合状態を示す断面図である。
第2の実施の形態では、打ち込み鋲22を用いる場合で、補強すべきラチス材16の板厚が大きくなった場合、例えば、3〜6mm程度を超える場合に、当て付け面2004で挿通孔2010の周囲の箇所に座繰り面2020を形成したものである。
より詳細は、当て付け面2004が平鋼に合わせられる面で当て付け面2004の周囲の箇所に座ぐり面が形成されている。
打ち込み鋲22は、ラチス材16の母材を押し除けてラチス材16を貫入していく。そのため、打ち込み鋲22が打ち込まれた箇所には、貫入していく側と突き抜けて出る側との双方に、膨出部16A、16Bがそれぞれ形成され、この膨出部16A、16Bの大きさは、打ち込み鋲22が打ち込まれるラチス材16の厚さが、材料などにもよるが、例えば、3〜6mm程度を超える場合に無視できなくなる。すなわち、仮に、当て付け面2004で挿通孔2010の周囲の箇所に座ぐり面2020が形成されていなかったならば、膨出部16Aにより当て付け面2004がラチス材16から浮き上がり、その結果、補強用鋼材20の当て付け面2004とラチス材16とが密接しないことにより補強効果が損なわれる。本実施の形態では、座ぐり面2020を設け、膨出部16Aをこの座ぐり面2020の内側に収容し、当て付け面2004とラチス材16とを密接させて意図した補強効果が得られるようにしている。
この場合、補強用鋼材20の長手方向の全長にわたる箇所はドリルねじまたは打ち込み鋲22によりラチス材16に取着され、したがって、溶接の箇所は補強用鋼材20の長手方向の全長にわたる箇所ではなく、補強用鋼材20の両端のみとなるため、溶接作業を要するものの、溶接に対する養生の簡略化、作業時間の短縮、コストダウンを図る上で有利となる。
Claims (3)
- 既存鋼構造物を構成する既存鋼構造部材で、互いに対向して延在する一対の弦材と、それら弦材間に掛け渡された平鋼からなる複数のラチス材とを有するラチス柱またはラチス梁を補強する工法であって、
前記一対の弦材間に露出する前記ラチス材の部分に対応した長さで前記ラチス材の部分の全長にわたって当て付け可能な当て付け面を有する複数の補強用鋼材を用意し、
前記補強用鋼材として、2つのフランジが直交しそれらフランジのうちの一方のフランジの外面が前記当て付け面とされ、前記外面が前記当て付け面とされるフランジは前記平鋼の幅と同一のフランジ幅を有する山形鋼を用い、
前記当て付け面を貫通するように前記外面が前記当て付け面とされるフランジにドリルねじまたは打ち込み鋲の挿通孔を形成し、
前記平鋼の幅に前記外面が前記当て付け面とされるフランジのフランジ幅を合致させて前記各ラチス材にそれぞれ前記フランジの前記当て付け面を当て付け、前記挿通孔からドリルねじまたは打ち込み鋲を前記ラチス材に打ち込んで前記当て付け面を前記ラチス材に密接した状態で前記山形鋼のフランジを前記ラチス材に取り付けるようにした、
ことを特徴とする既存鋼構造部材の補強工法。 - 既存鋼構造物を構成する既存鋼構造部材で、互いに対向して延在する一対の弦材と、それら弦材間に掛け渡された平鋼からなる複数のラチス材とを有するラチス柱またはラチス梁を補強する工法であって、
前記一対の弦材間に露出する前記ラチス材の部分に対応した長さで前記ラチス材の部分の全長にわたって当て付け可能な当て付け面を有する複数の補強用鋼材を用意し、
前記補強用鋼材として、2つのフランジが直交しそれらフランジのうちの一方のフランジの外面が前記当て付け面とされ、前記外面が前記当て付け面とされるフランジは前記平鋼の幅と同一のフランジ幅を有する山形鋼を用い、
前記当て付け面を貫通するように前記外面が前記当て付け面とされるフランジに打ち込み鋲の挿通孔を形成すると共に、前記当て付け面で前記挿通孔の周囲の前記フランジの箇所に座繰り面を形成し、
前記平鋼の幅に前記外面が前記当て付け面されるフランジのフランジ幅を合致させて前記各ラチス材にそれぞれ前記フランジの前記当て付け面を当て付け、前記挿通孔から打ち込み鋲を前記ラチス材に打ち込んで前記当て付け面を前記ラチス材に密接した状態で前記山形鋼のフランジを前記ラチス材に取り付けるようにした、
ことを特徴とする既存鋼構造部材の補強工法。 - 前記補強用鋼材の長手方向の両端は、それぞれ対応する前記弦材に、溶接により接合されている、
ことを特徴とする請求項1または2記載の既存鋼構造部材の補強工法。
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