ここで、例えば、1インチ幅に1200個のアクチュエータが配列されているインクジェットプリンタにおいて、アクチュエータ上の電極とドライバICの接続端子とを1インチ幅のFlexible Printed Circuit(FPC)で接続する場合には、20μm以下の微小ピッチで配線する必要がある。しかしながら、上述のインクジェット方式を用いてFPCを作製する場合には、作製可能な配線ピッチは40μm程度が限界である。また、インクジェットヘッドに限らず他の電子機器においても、配線基板や回路基板等に、微細なピッチの配線を形成したい、という要望がある。
そこで、本発明の目的は、低コストで微細なパターンを形成可能なパターン形成装置、およびパターン形成方法を提供することである。
本発明の第1の態様に従えば、プリント媒体に導電性液体の所定のパターンを形成するパターン形成装置であって、絶縁性を有する基板、および前記基板上に配置された複数の電極を有するパターン形成基材と、前記各電極に、前記パターン形成基材の表面の、前記各電極と重なる重複領域の撥液性を第1の撥液性にする第1の電位と、前記重複領域を第1の撥液性よりも低い第2の撥液性にする第2の電位とを選択的に付与する電位付与機構と、前記電位付与機構を制御して、前記パターンに対応する前記電極の電位を前記第2の電位とし、且つ、前記パターンから外れた前記電極の電位を前記第1の電位とする電位制御機構と、前記パターン形成基材の表面上において前記パターンに形成された導電性液体をプリント媒体に当接させることによって前記プリント媒体に転写する転写機構とを備えるパターン形成装置が提供される。
本発明の第1の態様によれば、パターン形成基材は絶縁性の基板上に配置された複数の電極を有しており、前記パターン形成基材の表面上に配置された導電性液体を当該表面上において所望パターンとさせるために、これらの電極に第1の電位、第2の電位を選択的に付与することができる。このとき、エレクトロウェッティング現象により、パターン形成基板の電極と重なる重複領域の撥液性を第1、第2の撥液性の間で切り替えることができる。このように、電極に付与する電位に応じて、重複領域の撥液性を調整できるため、パターン形成基材の表面上に濡れ広がる導電性液体のパターンを調整することが出来る。例えば、電極を微細に配列することで、パターン形成基材の表面上に導電性液体の微細なパターンを形成し、当該パターンをプリント媒体に転写することで、プリント媒体に微細なパターンを形成することができる。
ここで、「第1の電位」、「第2の電位」とは、唯一に定まる値ではなく、一定の範囲の値をとってもよい。ただし、この場合、「第1の電位」と「第2の電位」とがとり得る値の範囲は互いに重複しない。また、「導電性液体」とは、銅などのナノ導電性粒子が分散された液体のように、比較的導電性の高い液体に限られるものではなく、水溶液などのエレクトロウエッティング現象を生じる程度の「導電性を有する液体」を含むものである。さらに、「パターン形成基材の表面」とは、パターン形成基材における基板に対して電極が配列されている側の面を意味する。
本発明のパターン形成装置において、前記複数の電極は、前記基板上において互いに離隔していてもよく、規則的に配列されてもよく、互いに同一形状を有してもよい。
この場合には、複数の電極が基板上において互いに離隔し、規則的に配置され、互いに同一形状を有しているので、パターン形成基板の表面上に、所定形状の導電性液体のパターンを容易に形成することができる。
本発明のパターン形成装置において、前記電位制御機構は、前記転写機構が前記パターンに形成された導電性液体を前記プリント媒体に当接させた後、前記所望パターンに対応する前記電極の電位を前記第1の電位としてもよい。
この場合には、所望のパターンに対応する電極の電位を第1の電位とすることで、パターン形成基材の表面の、パターンに対応する重複領域の撥液性が高まるので、所望パターンに形成された導電性液体が確実にプリント媒体に転写される。
さらに、本発明のパターン形成装置では、前記電位付与機構によって前記第1の電位が付与された前記電極に対応する前記重複領域の撥液性が、前記プリント媒体の撥液性よりも高くてもよい。この場合には、パターン形成基材の表面の、パターンに対応する重複領域(電極と対向する対向領域)の撥液性がプリント媒体の撥液性よりも高いので、導電性液体を確実にプリント媒体に転写することが可能となる。
本発明のパターン形成装置では、前記電位制御機構は、前記パターン形成基材の表面上に配置された導電性液体を前記パターンとさせるべく前記電位付与機構を制御する前に、当該表面上に配置された導電性液体のパターンと前記所望パターンとの中間の形状を有する中間パターンとさせるべく、前記中間パターンに対応する前記電極の電位を前記第2の電位とし、前記中間パターンから外れた前記電極の電位を前記第1の電位とするように前記電位付与機構を制御してもよい。この場合には、中間パターンを経ることによって、パターン形成基材の表面上に配置された導電性液体を、スムーズに所望のパターンとすることができる。
本発明のパターン形成装置は、前記パターン形成基材の表面上に導電性液体を供給する液体供給機構をさらに備えていてもよい。この場合には、パターン形成装置が液体供給機構を備えているので、パターン形成基材の表面上に容易に導電性液体を配置することができる。
本発明のパターン形成装置では、前記パターン形成基材には、前記パターン形成基材の前記表面に一方の開口を有し、前記パターン形成基材を貫通する貫通孔が形成されてもよく、前記液体供給機構が、前記貫通孔を通じて前記パターン形成基材の表面上に導電性液体を供給してもよい。この場合には、導電性液体は貫通孔を介してパターン形成基材の表面上に供給されるので、パターン形成基材をプリント媒体の直下から外れた位置まで移動させる必要がなく、装置を小型化することができる。
本発明のパターン形成装置では、前記電位制御機構は、前記電位付与機構を制御して、前記液体供給機構によって前記パターン形成基材の表面上に供給された前記導電性液体を初めに所定の初期パターンとさせるべく、前記初期パターンに対応する前記電極の電位を前記第2の電位とし、前記初期パターンから外れた前記電極の電位を前記第1の電位としてもよい。パターン形成基材の表面上に液体が配置された際に、当該表面上の撥液性が全面に亘って比較的高い場合には、パターン形成基材の振動等により液体が当該表面上を転がり、当該表面上から落ちてしまう虞がある。また、パターン形成基材の表面上の撥液性が全面に亘って比較的低い場合には、液体が当該表面の全面に濡れ広がってしまう。上述の構成によると、パターン形成基材の表面上の所定の初期パターンに対応する領域に液体を留めておくことができる。したがって、その後、導電性液体を異なるパターンへとスムーズに変更させることができる。
本発明のパターン形成装置では、前記電位制御機構は、前記電位付与機構を制御して、導電性液体を前記初期パターンとさせるべく、前記複数の電極のうちの中央部分の一群の電極の電位を前記第2の電位とし、前記一群の電極を除く他の電極の電位を前記第1の電位としてもよい。この場合には、パターン形成基材の表面の中央部分に液体と留まらせておくことができる。したがって、その後、導電性液体を異なるパターンへとよりスムーズに変更させることができる。
本発明のパターン形成装置では、前記液滴供給機構は、前記パターンに応じた量の導電性液体を供給可能であってもよく、前記電位制御機構は、供給される導電性液体の量が多い程、前記第2の電位が付与される電極の数を多くするとともに、前記第1の電位が付与される電極の数を少なくするように前記電位付与機構を制御してもよい。例えば、パターン形成基材の表面上に配置された導電性液体を中間パターンや初期パターンとする際に、液体の量に対して当該パターンの面積が小さすぎると、当該パターンに対応する領域から液体がはみ出してしまう。一方、液体の量に対して当該パターンの面積が大きすぎると、液体によって当該パターンを形成することができなくなる。上述の構成によると、電位付与機構によって第2の電位が付与される電極に対応する領域から液体がはみ出ることなく、且つ当該領域の全面に液体が広がるようにすることができる。
本発明のパターン形成装置において、前記パターン形成基材が、前記複数の電極を覆う絶縁層をさらに備えていてもよい。電極が絶縁層で覆われている場合には、絶縁層で覆われていない場合と比べて、電位付与機構によって第1の電位が付与された際の重複領域の撥液性(第1の撥液性)と、第2の電位が付与された際の重複領域の撥液性(第2の撥液性)との差が大きくなる。したがって、上述の構成によると、パターン形成基材の表面である絶縁層上に配置された液体を電位制御機構によって所望のパターン(初期パターン、中間パターン)とする際の応答性を高くすることができる。
本発明のパターン形成装置において、前記パターン形成基材には、前記絶縁層上に開口し、前記基板および前記絶縁層を貫通する貫通孔が形成されていてもよい。この場合には、導電性液体の応答性を高めることができ、貫通孔を介して導電性液体を供給することもできる。
本発明のパターン形成装置において、前記複数の電極が、前記基板上においてマトリクス状に配列されていてもよい。この場合には、一度の転写で二次元のパターンを形成することができる。
本発明のパターン形成装置において、前記電極が平板であって、前記複数の電極が同一平面上に配置されていてもよい。この場合には、電極が凹凸を有する面に配置される場合に比べて、製造が容易となる。
本発明のパターン形成装置において、前記基板に複数の凹部が形成されており、前記電極が前記凹部に沿った凹形状を有していてもよい。この場合には、パターン形成基材の表面上に配置され、第2の電位とされた電極に対応する対向領域に濡れ広がった導電性液体は、当該対向領域内からはみ出ることなく安定する。したがって、液体パターンを形成する性能が向上する。
本発明のパターン形成装置は、さらに、前記パターン形成基材を載置して、前記液体供給機構と前記転写機構との間で移動する移動機構を備えてもよい。この場合には、例えば、液体供給機構が、パターン形成基材の上方に配置された液体滴下装置から液体を滴下することによってパターン形成基材の表面上に液体を供給する場合であっても、パターン形成装置は、液体を転写する際には、パターン形成基材がプリント媒体の直下に位置するようにし、パターン形成基材の表面上に液体を配置する際には、パターン形成基材をプリント媒体の直下から外し、液体滴下装置の直下にまで移動させることができる。
本発明の第2の態様に従えば、プリント媒体上に導電性液体のパターンを形成するパターン形成方法であって、絶縁性を有する基板、及び前記基板に配置された複数の電極を有するパターン形成基材を用意する工程と、前記パターン形成基材の表面上に導電性液体を配置する工程と、前記パターン形成基材の表面上に配置された導電性液体を当該表面上において前記パターンとさせるべく、前記パターンから外れた前記電極の電位を、当該電極が対向する前記パターン形成基材の表面の対向領域の撥液性を所定の撥液性とする第1の電位とし、前記パターンに対応する前記電極の電位を、当該電極の前記対向領域を第1の撥液性よりも低い第2の撥液性とする第2の電位とするように、前記各電極に対して、前記第1の電位と前記第2の電位とを選択的に付与する工程と、前記パターン形成基材の表面上において前記パターンに形成された導電性液体をプリント媒体に当接させることによって、前記導電性液体の前記パターンを前記プリント媒体に転写する工程を備えているパターン形成方法が提供される。
本発明の第2の態様によれば、導電性液体を配置する工程と、電極に電位を付与する工程と、形成されたパターンをプリント媒体に転写する工程のみでプリント媒体にパターンを形成することができるので、低コストである。
本発明のパターン形成方法において、前記複数の電極は、前記基板上において互いに離隔するように規則的に配列され、且つ、互いに同一形状を有してもよい。この場合には、複数の電極が基板上において互いに離隔し、規則的に配置され、互いに同一形状を有しているので、パターン形成基板の表面上に、所定形状の導電性液体のパターンを容易に形成することができる。
本発明のパターン形成方法では、前記パターン形成基材の前記表面上において前記導電性液体を配置する工程、前記電極に第1、第2の電位を付与する工程および前記導電性液体の前記パターンを前記プリント媒体に転写する工程をこの順序でそれぞれ複数回行ってもよい。この場合には、導電性液体が配置されるパターン形成基材の表面の面積よりも大きなパターンをプリント媒体に作成することができる。
本発明のパターン形成方法では、前記第1の電位が付与された前記電極に対応する前記対向領域の第1の撥液性が前記プリント媒体の撥液性よりも高くてもよく、前記導電性液体の前記パターンを前記プリント媒体に転写する際において、前記パターンに形成された導電性液体を前記プリント媒体に当接させてから、前記パターンに対応する前記電極の電位を前記第1の電位としてもよい。この場合には、所望のパターンに対応する電極の電位を第1の電位とすることで、パターン形成基材の表面の、パターンに対応する重複領域の撥液性が高まるので、所望パターンに形成された導電性液体が確実にプリント媒体に転写される。また、パターン形成基材の表面の、パターンに対応する重複領域(電極と対向する対向領域)の撥液性がプリント媒体の撥液性よりも高いので、導電性液体を確実にプリント媒体に転写することが可能となる。
本発明のパターン形成方法では、前記電極に第1、第2の電位を付与する際に、前記パターン形成基材の表面上に配置された導電性液体を前記パターンとさせる前に、当該表面上に配置された導電性液体の初期パターンと前記パターンとの中間の形状を有する中間パターンとさせるべく、前記中間パターンに対応する前記電極の電位を前記第2の電位とし、前記中間パターンから外れた前記電極の電位を前記第1の電位としてもよい。この場合には、中間パターンを経ることによって、パターン形成基材の表面上に配置された導電性液体を、スムーズに所望のパターンとすることができる。
本発明のパターン形成方法では、前記電極に第1、第2の電位を付与する際に、前記パターン形成基材の表面上に配置された導電性液体を初めに所定の初期パターンとさせるべく、前記初期パターンに対応する前記電極の電位を前記第2の電位とし、前記初期パターンから外れた前記電極の電位を前記第1の電位としてもよい。この場合には、パターン形成基材の表面上の所定の初期パターンに対応する領域に液体を留めておくことができ、その後、導電性液体を異なるパターンへとスムーズに変更させることができる。
本発明のパターン形成方法では、前記電極に第1、第2の電位を付与する際に、導電性液体を前記初期パターンとさせるべく、前記複数の電極のうちの中央部分において群をなす電極の電位を前記第2の電位とし、前記中央部分において群をなす電極を除く他の電極の電位を前記第1の電位としてもよい。この場合には、パターン形成基材の表面の中央部分に液体と留まらせておくことができ、その後、導電性液体を異なるパターンへとよりスムーズに変更させることができる。
本発明のパターン形成方法では、前記パターン形成基材の表面に、前記導電性液体を配置する際に、前記パターン形成基材の表面上に前記パターンに応じた量の導電性液体が配置されてもよく、前記電極に第1、第2の電位を付与する際に、当該表面上に配置された導電性液体の量が多い程、前記第2の電位を付与する電極の数を多くし、且つ、前記第1の電位を付与する電極の数を少なくしてもよい。この場合には、第2の電位が付与される電極に対応する領域から液体がはみ出ることなく、且つ当該領域の全面に液体が広がるようにすることができる。
本発明のパターン形成方法では、前記パターン形成基材が、前記複数の電極を覆う絶縁層をさらに備えていてもよい。電極が絶縁層で覆われている場合には、絶縁層で覆われていない場合と比べて、電位付与機構によって第1の電位が付与された際の重複領域の撥液性と、第2の電位が付与された際の重複領域の撥液性との差が大きくなる。したがって、上述の構成によると、パターン形成基材の表面である絶縁層上に配置された液体を電位制御手段によって所望パターン(初期パターン、中間パターン)とする際の応答性を高くすることができる。
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。図1は、本実施の形態に係るパターン形成装置の概略構成を示す図である。
図1に示すように、本実施の形態のパターン形成装置1は、水平なパターン形成面15aを有するパターン形成基材10と、パターン形成基材10のパターン形成面15aに導電性液体3を滴下するプリントヘッド20と、パターン形成基材10を支持すると共に垂直方向(図1における上下方向)に変位させることによって、パターン形成面15a上の導電性液体3をプリント媒体5に当接させる転写機構30と、パターン形成基材10を水平面内において移動させる移動機構40と、移動機構40を支持する基台50とを主に備えている。そして、パターン形成装置1は、後述するコントローラ60(図4参照)によって制御される。なお、導電性液体3とは、例えば、銅などのナノ導電性粒子が分散された比較的導電性の高い液体を含み、本実施形態では常にグランド電位に保持されている。また、本実施の形態においては、プリント媒体5はポリイミドフィルムである。
ここで、図2、3を参照しつつ、パターン形成基材10について詳細に説明する。図2は、パターン形成基材10の斜視図であり、図3(a)は、図2の上面図であり、図3(b)は、図3(a)のIIIb-IIIb線に沿う断面図である。図2、3に示すように、パターン形成基材10は、略正方形の板状部材であり、絶縁性を有する基板11と、基板11上において互いに離隔するように配列された複数の電極13と、複数の電極13を覆う絶縁層15とを有している。そして、パターン形成基材10における基板11に対して複数の電極(電極片)13が配列されている側の面、すなわち絶縁層15の表面がパターン形成面15aとなる。本実施の形態では、絶縁層15はフッ素樹脂で作製されている。
電極13は、略正方形の平板電極であり、パターン形成面15aと平行な一平面上においてマトリクス状に配列されている。本実施の形態では、電極13の一辺の長さは5μmである。複数の電極13は、それぞれ配線13aを介してドライバIC14(図4参照)と電気的に接続されている。そして、各電極13に、ドライバIC14により電位信号が供給される。この電位信号は、グランド電位と所定の正電位とを交互に取るパルス列信号である。なお、ドライバIC14により供給される電位信号の正電位の大きさは、後述するエレクトロウェッティング現象が生じる所定値以上となっている。
パターン形成面15a上にグランド電位に保持されている導電性液体3を滴下した状態で、所定領域に位置する電極13の電位を正電位とし、所定領域以外の領域に位置する電極13の電位をグランド電位とする。エレクトロウェッティング現象により、パターン形成面15aの、正電位とされた電極13と対向する領域(電圧印加領域)において、導電性液体3の、パターン形成面15aに対する接触角が小さくなる。すなわち、パターン形成面15aの、電圧印加領域の撥液性(第1の撥液性)は、グランド電位とされた電極13と対向する領域(電極13と導電性液体3との間に電位差がない状態である領域、電圧非印加領域)の撥液性(第2の撥液性)に比べて低下する。したがって、パターン形成面15a上の導電性液体3は、当該所定領域(電圧印加領域)へと移動する。ここで、本実施の形態では、パターン形成面15aの電圧非印加領域の撥液性は、プリント媒体5の撥液性よりも高い。
図1に示されるように、プリントヘッド20は、図示しない保持機構によって保持されており、直下に位置するパターン形成基材10のパターン形成面15aに導電性液体3を滴下する。プリントヘッド20は、後で詳述するように、プリント媒体5に転写するパターンに応じた量の導電性液体3をパターン形成面15aに滴下する。
転写機構30は、モータ31a(図4参照)によって垂直方向(Z方向)に移動可能であるZ方向移動ステージ31を備えている。そして、Z方向移動ステージ31には、パターン形成基材10が載置されている。また、Z方向移動ステージ31は、後で詳述する移動機構40によって、プリントヘッド20の直下である滴下位置と、図示しない保持機構によってパターン形成面15aと平行に保持されているプリント媒体5における転写箇所の直下である転写位置との間を移動できる。そして、転写機構30は、転写位置においてZ方向移動ステージ31を上方に移動させ、パターン形成面15a上の導電性液体3をプリント媒体5に当接させる。
移動機構40は、モータ41a(図4参照)によって、水平面に平行なX方向(図1における左右方向)に移動可能なX方向移動ステージ41と、モータ43a(図4参照)によって、水平面に平行であり、かつX方向と直交するY方向に移動可能なY方向移動ステージ43とを備えている。ここで、図1に示すように、X方向移動ステージ41にはY方向移動ステージ43が載置されており、Y方向移動ステージ43にはZ方向移動ステージ31が載置されている。したがって、移動機構40は、パターン形成基材10が載置されたZ方向移動ステージ31を水平面内において移動させることができる。
ここで、コントローラ60について説明する。コントローラ60は、例えば汎用のパーソナルコンピュータによって構成されている。かかるコンピュータは、CPU、ROM、RAM、ハードディスクなどのハードウェアが収納されており、ハードディスクには、パターン形成装置1の全体の動作を制御する為のプログラムを含む各種のソフトウェアが記憶されている。そして、これらのハードウェア及びソフトウェアが組み合わされることによって、後述の全体パターン記憶部61、部分パターン記憶部62、液量決定部63、電位制御部64、転写制御部65、および位置決め部66(図4参照)が構築されている。
続いて、コントローラ60の概略構成を示すブロック図である図4を参照しつつ、コントローラ60について説明する。コントローラ60は、図4に示すように、全体パターン記憶部61、部分パターン記憶部62、液量決定部63、電位制御部64、転写制御部65、および位置決め部66を有している。また、コントローラ60には、プリントヘッド20、ドライバIC14、転写機構30のモータ31a、および移動機構40のモータ41a、43aが接続されている。
全体パターン記憶部61は、一枚のプリント媒体5に形成するパターンを記憶する。部分パターン記憶部62は、全体パターン記憶部61に記憶されているパターンの一部であって、一度の転写によってプリント媒体5に形成するパターン(以下の説明において「形成パターン」と称する)を記憶する。部分パターン記憶部62の記憶内容は、一度転写される毎に更新される。
液量決定部63は、部分パターン記憶部62に記憶されている形成パターンに基づいて、当該形成パターンを作成するために必要な導電性液体3の量を、パターン形成面15aに滴下する導電性液体3の量として決定し、プリントヘッド20に出力する。
電位制御部64は、ドライバIC14に制御信号を出力することにより、電極13の電位をそれぞれ制御する。より詳細には、電位制御部64は、パターン形成面15a上の導電性液体3を何らかのパターンとさせる場合には、パターン形成面15aに滴下される導電性液体3の量、すなわち液量決定部63によって決定された導電性液体3の量が多い程、正電位が付与される電極13を多くするとともに、グランド電位が付与される電極13を少なくするように制御する。
具体的には、電位制御部64は、パターン形成面15a上に導電性液体3が滴下される前においては、マトリクス状に配列された複数の電極13の、中央部分における一群の電極13に正電位を付与し、その他の電極13にグランド電位を付与するための制御信号をドライバIC14に出力する。これにより、パターン形成面15aの、正電位が付与された電極13と対向する領域の撥液性が低下する。パターン形成面15a上に滴下された導電性液体3は、パターン形成面15aの中央部分(パターン形成面15aの、正電位が付与された電極13と対向する領域)に濡れ広がる。このときのパターン形成面15aの中央部分に固まって存在する導電性液体3のパターンを「初期パターン」と称する。なお、本実施の形態においては、このとき正電位が付与される電極13の個数は、パターン形成面15aにおける部分パターン記憶部62に記憶されている形成パターンに対応する領域と対向する電極13の個数と同数である。
また、電位制御部64は、部分パターン記憶部62に記憶されている形成パターンに基づいて、パターン形成面15a上に配置された導電性液体3の形状を当該形成パターンに近づけるために、パターン形成面15aにおける当該形成パターンに対応する領域と対向する電極13に正電位を付与し、当該形成パターンから外れた領域と対向する電極13にグランド電位を付与するための制御信号をドライバIC14に出力する。
さらに、電位制御部64は、部分パターン記憶部62に記憶されている形成パターンが、互いに離隔した複数の部分を有する場合には、当該形成パターンに対応する領域と対向する電極13に正電位を付与する前に、導電性液体3の形状を初期パターンと形成パターンとの中間の形状である中間パターンにすることができる。その場合には、パターン形成面15aにおける当該中間パターンに対応する領域と対向する電極13に正電位を付与し、当該中間パターンから外れた領域と対向する電極13にグランド電位を付与するための制御信号をドライバIC14に出力する。このとき、本実施の形態においては、正電位が付与される電極13の個数は、パターン形成面15aにおける形成パターンに対応する領域と対向する電極13の個数と同数である。
電位制御部64は、転写機構30によって、パターン形成面15a上の導電性液体3がプリント媒体5と当接した後に、全ての電極13にグランド電位を付与するための制御信号をドライバIC14に出力する。
転写制御部65は、パターン形成面15aにおける部分パターン記憶部62に記憶されている形成パターンに対応する領域と対向する電極13に正電位を付与した後、転写機構30のモータ31aに制御信号を出力して、パターン形成基材10を上方に移動させ、パターン形成面15a上の導電性液体3とプリント媒体5とを当接させる。
位置決め部66は、X方向移動ステージ41のモータ41a、およびY方向移動ステージ43のモータ43aに制御信号を出力して、パターン形成面15aと平行である水平面内においてパターン形成基材10の位置を移動させる。具体的には、パターン形成面15a上に導電性液体3を滴下する際には、パターン形成基材10をプリントヘッド20の直下である滴下位置へ移動させる。そして、パターン形成面15a上に導電性液体3を滴下した後、図1においてプリントヘッド20の右側に支持されているプリント媒体5の直下へパターン形成基材10を移動させる。より詳細には、プリント媒体5の、パターン形成面15aに形成された形成パターンを転写する箇所の直下(転写位置)にパターン形成基材10を移動させる。
次に、本実施の形態のパターン形成装置1における処理手順を示すフローチャートである図6A,Bを参照しつつ、導電性液体3を用いてポリイミドフィルム製のプリント媒体5に図5に示すような配線パターンを形成し、FPCを作製する際の手順について説明する。
前提として、全体パターン記憶部61には、図5に示すようなパターンが記憶されていることとする。そして、部分パターン記憶部62には、例えば、図5において破線で示す領域A及び領域B内のパターンが形成パターンとして記憶されており、液量決定部63では、形成パターンに基づいて導電性液体3の量が決定される。
まず、電位制御部64の制御によって、ドライバIC14が、図7に示すように、液量決定部63で決定される導電性液体3の量に応じて決まる初期パターンに対応する電極13(図7において斜め格子で示す電極13)に正電位を付与するとともに、初期パターンから外れた電極13にグランド電位を付与するための電位信号を各電極13に供給する(ステップS101)。続いて、パターン形成基材10が滴下位置にあるか否かが判断される(ステップS102)。ここで、滴下位置にあると判断された場合には(ステップS102:YES)、後述するステップS103を省略して、ステップS104に進む。一方、滴下位置にないと判断された場合には(ステップS102:NO)、位置決め部66の制御によって、移動機構40がパターン形成基材10を滴下位置に移動させる(ステップS103)。
次に、プリントヘッド20が、液量決定部63で決定された量の導電性液体3をパターン形成面15aに滴下する(ステップS104)。以上のステップS101〜S104が導電性液体配置工程に対応する。このとき、図8に示すように、パターン形成面15a上に滴下された導電性液体3の形状は、初期パターンと同一となる。その後、部分パターン記憶部62に記憶されている形成パターンが、互いに離隔した複数の部分を有するか否かが判断される(ステップS105)。ここで、部分パターン記憶部62に、図5の破線で囲まれた領域Aに対応するパターンが記憶されている場合、すなわち、形成パターンが互いに離隔した部分を有していない場合には(ステップS105:NO)、後述するステップS106は省略される。
続いて、電位制御部64の制御によって、ドライバIC14が、図9に示すように、部分パターン記憶部62に記憶されている形成パターンに対応する電極13(図9において斜め格子で示す電極13)に正電位を付与するとともに、形成パターンから外れた電極13にグランド電位を付与するための電位信号を各電極13に供給する(ステップS107)。このとき、パターン形成面15aの、正電位が付与された電極13と対向する領域の撥液性が、それ以外の領域の撥液性に比べて低下する。したがって、ステップS107において形成パターンに対応する電極13に正電位が付与された後、パターン形成面15a上の導電性液体3は、形成パターンに対応する領域に濡れ広がろうとする(図9(a)参照)。そして、形成パターンに対応する電極13の電位が正電位とされた後、十分時間が経過すると(例えば、数十ミリ秒〜数秒)、導電性液体3は、形成パターンに対応する領域に濡れ広がる(図9(b)参照)。
一方、部分パターン記憶部62に、図5の破線で囲まれた領域Bに対応するパターンが記憶されている場合、すなわち、形成パターンが互いに離隔した複数の部分を有する場合には(ステップS105:YES)、電位制御部64の制御によって、ドライバIC14が、図10に示すように、初期パターンと形成パターンとの中間の形状を有する中間パターンに対応する電極13(図10において斜め格子で示す電極13)に正電位を付与するとともに、中間パターンから外れた電極13にグランド電位を付与するための電位信号を各電極13に供給する(ステップS106)。このとき、パターン形成面15aの、正電位が付与された電極13と対向する領域の撥液性が、それ以外の領域の撥液性に比べて低下するので、パターン形成面15a上の導電性液体3は、図10に示すように、中間パターンに対応する領域に濡れ広がる。
その後、ステップS107に進み、図11に示すように、形成パターンに対応する電極13(図11において斜め格子で示す電極13)に正電位を付与する。このとき、中間パターンの形状に濡れ広がった導電性液体3は、形成パターンに対応する領域に濡れ広がろうとする(図11(a)参照)。そして、形成パターンに対応する電極13の電位に正電位を付与した後、十分時間が経過すると、導電性液体3は、形成パターンに対応する領域に濡れ広がる(図11(b)参照)。以上のステップS105〜S107が電位付与工程に対応する。
次に、位置決め部66の制御によって、移動機構40がパターン形成基材10を転写位置に移動させる(ステップS108)。さらに、図12に示すように、転写制御部65の制御によって、転写機構30がパターン形成基材10を上方に移動させ、形成パターンに形成された導電性液体3とプリント媒体5とを当接させる(ステップS109)。続いて、電位制御部64の制御によって、ドライバIC14が、全ての電極13にグランド電位を付与するための電位信号を供給する(ステップS110)。このとき、パターン形成面15aの、形成パターンに対応する電極13と対向する領域の撥液性は、当該領域の電極13に正電位が付与された場合と比べて高くなり、パターン形成面15aの撥液性は一様となる。また、上述のように、電極13にグランド電位が付与された場合のパターン形成面15aの撥液性は、プリント媒体5の撥液性よりも高いので、パターン形成面15a上の導電性液体3は、プリント媒体5に確実に転写される。
続いて、転写制御部65の制御によって、転写機構30がパターン形成基材10を降下させる(ステップS111)。以上のステップS108〜S111が転写工程に対応する。さらに、全体パターン記憶部61に記憶されているパターン全体がプリント媒体5に形成されたか否かが判断される(ステップS112)。ここで、未だ全体パターン記憶部61に記憶されているパターンが形成されていないと判断された場合には(ステップS112:NO)、部分パターン記憶部62に記憶されている形成パターンが、全体パターン記憶部61に記憶されているパターンのうち、未だ形成されていない部分に対応するパターンに書き換えられる(ステップS113)。その後、ステップS101に戻って、ステップS113において書き換えられた形成パターンに基づいて決められた初期パターンに対応する電極13の電位が正電位とされる。一方、ステップS112において、全体パターン記憶部61に記憶されているパターン全体が形成されたと判断された場合には(ステップS112:YES)、パターン形成装置1における処理が終了する。
以上のように、本実施の形態のパターン形成基材10は、絶縁性を有する基板11と、基板11上において互いに離隔するようにマトリクス状に配列された複数の電極13と、複数の電極13を覆う絶縁層15とを有している。そして、本実施の形態のパターン形成装置1、およびパターン形成方法では、電位制御部64が、パターン形成基材10の複数の電極13に対してグランド電位と所定の正電位とを選択的に付与するドライバIC14を制御する。具体的には、電位制御部64は、パターン形成基材10のパターン形成面15a上に導電性液体3が配置された状態で、形成パターンに対応する電極13に正電位を付与し、形成パターンから外れた電極13にグランド電位を付与するための制御信号をドライバIC14に出力する。そして、転写機構30が、パターン形成面15a上において形成パターンと同じ形状に濡れ広がった導電性液体3を、プリント媒体5に当接させてプリント媒体5に転写する。したがって、微細な電極13を配列することで、パターン形成面15a上に導電性液体3の微細な二次元のパターンを形成することができ、当該パターンをプリント媒体5に転写することで、プリント媒体5に微細なパターンを形成することができる。また、導電性液体3をパターン形成基材10に配置する工程、電極13に電位を付与する工程、および形成されたパターンをプリント媒体5に転写する工程のみでプリント媒体5にパターンを形成することができるので、低コストである。
また、本実施の形態のパターン形成装置1、およびパターン形成方法では、電極13にグランド電位が付与されている場合において、パターン形成面15aの、当該電極13と対向する領域の撥液性はプリント媒体5の撥液性よりも高い。パターン形成面15a上の導電性液体3がプリント媒体5と当接した後、電位制御部64の制御によって、全ての電極13にグランド電位が付与されるので、導電性液体3がプリント媒体5に確実に転写される。
さらに、本実施の形態のパターン形成装置1、およびパターン形成方法では、形成パターンが互いに離隔した複数の部分を有する場合には、電位制御部64の制御によって、当該形成パターンに対応する電極13に正電位が付与される前に、中間パターンに対応する電極13に正電位が付与され、当該中間パターンから外れた電極13にグランド電位が付与される。したがって、パターン形成面15a上に配置された導電性液体3をスムーズに形成パターンに移行させることができる。
加えて、本実施の形態のパターン形成装置1は、パターン形成面15aに導電性液体3を滴下するプリントヘッド20を備えている。したがって、パターン形成面15aに容易に導電性液体3を配置することができる。
また、本実施の形態のパターン形成装置1、およびパターン形成方法では、パターン形成面15a上に導電性液体3が滴下される前に、電位制御部64の制御によって、初期パターンに対応する電極13、すなわち複数の電極13のうち、中央部分にある一群の電極13に正電位が付与され、それ以外の電極13にグランド電位が付与される。したがって、導電性液体3をパターン形成面15aの中央部分に留めておくことができる。よって、導電性液体3がパターン形成面15a上から落ちてしまうのを防ぐことができる。さらに、導電性液体3のパターンを中間パターンまたは形成パターンへとスムーズに変更することができる。
また、本実施の形態のパターン形成装置1、およびパターン形成方法では、プリントヘッド20は、部分パターン記憶部62に記憶されている形成パターンを作成するために必要な量の導電性液体3をパターン形成面15a上に滴下する。そして、電位制御部64は、パターン形成面15aにおける形成パターンに対応する領域と対向する電極13の個数と、初期パターンに対応する電極13の個数および中間パターンに対応する電極13の個数とが等しくなるようにドライバIC14制御信号を出力する。したがって、初期パターンまたは中間パターンに対応する電極13に正電位を付与する際に、導電性液体3が当該パターンからはみ出ることなく、且つ当該パターンの全面に液体が広がるようにすることができる。
加えて、本実施の形態のパターン形成装置1およびパターン形成方法では、複数の電極13が絶縁層15によって覆われている。ここで、複数の電極13が絶縁層15によって覆われておらず、パターン形成基材10のパターン形成面15a(すなわち、基板11の複数の電極13が配列されている側の面)上にグランド電位に保持されている液体3を滴下した状態で、電極13の電位を正電位とした場合においても、エレクトロウェッティング現象が生じることが知られている。パターン形成面15aの当該電極13が対向する領域は、電極13と液体3との間に電位差がない状態である領域に比べて撥液性が低下する。しかしながら、このとき、絶縁層15がある場合に比べて、正電位とされた電極13が対向する領域の撥液性の低下度合いが小さくなると共に、ロバスト性や再現性が低下する(出典:C.Quilliet, B.Berge,”Electrowetting:a recent outbreak”, Current Opinion in Colloid & Interface Science 6 (2001) 34-39)。したがって、本実施の形態においては、パターン形成面15aの、正電位が付与された電極13が対向する領域の撥液性を大きく低下させることができるので、パターン形成面15a上に配置された液体3を電位制御部64の制御により、初期パターン、中間パターン又は形成パターンとする際の応答性を高くすることができる。
さらに、本実施の形態のパターン形成方法では、パターン形成面15aに導電性液体3を配置する工程、形成パターンに対応する電極13に正電位を付与する工程、および形成パターンに形成された導電性液体3をプリント媒体5に転写する工程とが、この順序でそれぞれ複数回行われる。したがって、図5に示すようなパターン全体を作成することができる。
また、本実施の形態のパターン形成基材10では、電極13は、平面視形状が正方形である平板であり、一平面上に配置されている。したがって、電極13が凹凸を有する面に配置される場合に比べて、容易に製造できる。
次に、図13A,Bを参照しつつ、本発明の第2の実施の形態について説明する。図13(a)は、本実施の形態のパターン形成装置101が有するパターン形成基材110の上面図であり、図13(b)は、図13(a)のXIIIb-XIIIb線に沿う断面図である。第2の実施の形態に係るパターン形成装置101の構成と、第1の実施の形態に係るパターン形成装置1の構成との主な相異点は、以下の通りである。第1の実施の形態のパターン形成装置1では、パターン形成面15aに配置される導電性液体3は、プリントヘッド20から滴下されるが、第2の実施の形態のパターン形成装置101では、パターン形成面115aに配置される導電性液体3は、パターン形成面115aに一方の開口を有する供給孔117を介して供給される。その他の構成については、第1の実施の形態とほぼ同様である。第1の実施の形態とほぼ同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
図13(a)、(b)に示すように、平面視が正方形である板状部材のパターン形成基材110における中央部分には、パターン形成基材110を貫通する供給孔117が形成されている。つまり、基板111および絶縁層115を貫通する供給孔117は絶縁層115のパターン形成面115aと、基板111の電極113が配列されている側とは反対側の面(以降、「裏面」と称する)にそれぞれ開口している。
さらに、図13(b)に示すように、パターン形成装置101は、供給孔117を介してパターン形成面115a上に導電性液体3を供給する送液機構120を備えている。送液機構120は、図示しないインクタンクと連通しており、基板111の裏面における供給孔117の他端に接続されている液体流路121と、液体流路121内の液体をパターン形成基材110側に送るポンプ122とを有している。そして、本実施の形態においては、液量決定部63で決定された量の導電性液体3が、ポンプ122に出力される。
以上のように、本実施の形態のパターン形成装置101では、第1の実施の形態のパターン形成装置1と同様に、低コストで微細なパターンを形成することができる。
また、本実施の形態のパターン形成装置101では、パターン形成基材110に設けられた供給孔117を介してパターン形成面115a上に導電性液体3が供給される。したがって、移動機構40はプリント媒体5の直下においてパターン形成基材110を移動させることとなる。つまり、パターン形成基材110をプリント媒体5の直下から外れた位置まで移動させる必要がないので、装置の小型化が可能となる。
次に、図14を参照しつつ、本発明の第3の実施の形態について説明する。図14(a)は、本実施の形態のパターン形成装置201に備えられたパターン形成基材210の上面図であり、図14(b)は、図14(a)のXIVb-XIVb線に沿う断面図である。第3の実施の形態に係るパターン形成装置201の構成と、第1の実施の形態に係るパターン形成装置1の構成との主な相異点は、以下の通りである。第1の実施の形態のパターン形成装置1では、電極13は平面視が正方形である平板であり、互いに同一平面上に配置されているが、第3の実施の形態のパターン形成装置201では、基板211に複数の凹部212が形成されており、電極213は凹部212に沿った凹形状を有している。その他の構成については、第1の実施の形態とほぼ同様である。第1の実施の形態とほぼ同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
図14(a)、(b)に示すように、基板211には、底面の形状が正方形である複数の凹部212がマトリクス状に形成されている。そして、各凹部212内には、当該凹部212に沿った凹形状の電極213がそれぞれ配置されており、絶縁層215が複数の電極213を覆っている。つまり、パターン形成面215aにおいて電極213と対向する領域は、パターン形成面215aに複数の形成されている窪み216の内部となる。
以上のように、本実施の形態のパターン形成装置201では、第1の実施の形態のパターン形成装置1と同様に、低コストで微細なパターンを形成することができる。
また、本実施の形態のパターン形成装置201では、電位制御部64によって、形成パターンに対応する電極213に正電位が付与されると、パターン形成面215a上に配置されている導電性液体3は、正電位が付与された電極213に対応する窪み216内に濡れ広がる。窪み216内濡れ広がった導電性液体3は、正電位が付与された電極213と対向する領域からはみ出ることなく安定するので、液体パターンを形成する性能が向上する。
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて、様々な設計変更を行うことが可能なものである。例えば、上述の第1〜第3の実施の形態では、移動機構40がパターン形成基材10(110、210)を移動させる場合について説明したが、これに限らず、プリント媒体5(およびプリントヘッド20)とパターン形成基材10(110、210)との相対位置を変化させることができればよい。したがって、プリント媒体5(およびプリントヘッド20)を移動させるようにしてもよい。
また、上述の第1〜第3実施の形態では、複数の電極13(113、213)が基板11(111、211)上においてマトリクス状に配列されている場合について説明したが、これには限られない。例えば、第1の実施の形態に係るパターン形成基材10の変形例として図15(a)、(b)に示すように、複数の電極313が一方向に沿って配列されたパターン形成基材310を用いて、一列ずつパターンを形成してプリント媒体5に転写してもよい。また、上記実施形態では、複数の電極はそれぞれ同一形状(一辺の長さが5μmの正方形)であったが、これに限られず任意の形状にしうる。例えば、一辺の長さが0.5μmの正方形であってもよく、各電極の形状は、円、三角形、ひし形等の任意の形状にしうる。また、各電極の形状がそれぞれ異なっていてもよい。
さらに、上述の第1〜第3の実施形態では、導電性液体3がグランド電位に保持されており、ドライバIC14が、グランド電位と正電位とをとる電位信号を電極13(113、213)に付与する場合について説明したが、これには限られない。導電性液体3の電位と、ドライバIC14によって電極13(113、213)に付与される2種類の電位とは、パターン形成面15a(115a、215a)の電極13(113、213)と対向する領域が、所定の撥液性となる場合と、所定の撥液性よりも低くなる場合とをとり得る値であればよい。また、電極13(113、213)がとりえる2種類の電位は、それぞれ唯一に定まる値であってもよいし、互いに重複しない一定の範囲の値であってもよい。なお、図16に示すように、導電性液体3に所定の電位を付与するための表面電極313がパターン形成面115aの電極13と重ならない領域に形成されていてもよい。この場合には、導電性液体3に所定の電位(例えばグランド電位)を安定して付与することができ、液体パターンを形成する際の応答性を高めることができる。ここで、表面電極の形状は、図16に示された形状に限られず、任意の形状にしうる。
また、上述の第1〜第3の実施の形態では、電極13(113、213)がグランド電位である場合、パターン形成面15a(115a、215a)の当該電極13(113、213)と対向する領域の撥液性がプリント媒体5の撥液性よりも高く、電位制御部64の制御によって、パターン形成面15a(115a、215a)上の導電性液体3がプリント媒体5と当接した後に、全ての電極13(113、213)にグランド電位が付与される場合について説明したが、これには限られない。導電性液体3とプリント媒体5とが当接した後、電極13(113、213)の電位が、絶縁層15(115、215)の撥液性がプリント媒体5の撥液性よりも高くなるような電位となればよい。さらに、プリント媒体5の表面に凹凸がある場合、プリント媒体5が多孔質材料で形成されている場合等のように、液体の吸収性が高い場合には、必ずしも絶縁層15(115、215)の撥液性がプリント媒体5の撥液性よりも高くなくてもよい。
上述の第1〜第3の実施の形態では、形成パターンが互いに離隔した複数の部分を有する場合には、形成パターンを形成する前に、中間パターンを形成する場合について説明したが、これには限られない。形成パターンが互いに離隔した複数の部分を有する場合でも、中間パターンを形成しなくてもよく、形成パターンが互いに離隔した複数の部分を有していない場合でも、中間パターンを形成してもよい。
さらに、上述の第1〜第3の実施の形態では、パターン形成面15a(115a、215a)上に配置される導電性液体3を初期パターンと同一形状にするために、導電性液体3が配置される前に、複数の電極13(113、213)のうち中央部分に配置された一群の電極13(113、213)に正電位を付与する場合について説明したが、これには限られない。例えば、初期パターンは、パターン形成面15a(115a、215a)の中央部分に集まっていなくてもよく、例えば、複数箇所に点在していてもよい。また、初期パターンとするべく電極13(113、213)の電位を制御するタイミングは、導電性液体3が配置された後でもよい。加えて、初期パターンは作成されなくてもよい。この場合、導電性液体3が配置される前に、全ての電極13(113、213)に同一の電位(例えば、グランド電位や所定の正電位)を付与していてもよい。
また、上述の第1〜第3の実施の形態では、形成パターンに対応する電極13(113、213)の個数と、初期パターンおよび中間パターンにそれぞれ対応する電極13(113、213)の個数とが等しい場合について説明したが、初期パターンおよび中間パターンにそれぞれ対応する電極13(113、213)の個数はこれに限定されるものではなく、形成パターンに基づいて決定される導電性液体3の供給量が多くなるほど増加するように制御されていればよい。さらに、初期パターンおよび中間パターンにそれぞれ対応する電極13(113、213)の個数は、導電性液体3の供給量と無関係であってもよい。
また、上述の第1〜第3の実施の形態では、パターン形成面15a(115a、215a)に導電性液体3を配置する工程、形成パターンに対応する電極13(113、213)の電位を正電位とする工程、および形成パターンに形成された導電性液体3をプリント媒体5に転写する工程とを、この順序でそれぞれ複数回行う場合について説明したが、これには限られない。一度の工程でパターン全体を形成してもよい。
加えて、上述の第1〜第3の実施の形態においては、複数の電極13(113、213)が絶縁層15(115、215)によって覆われている場合について説明したが、絶縁層15(115、215)はなくてもよい。かかる場合においては、上述のように、パターン形成面15a(115a、215a)の、正電位が付与された電極13(113、213)に対向する対向領域の撥液性の低下が小さい。そのため、パターン形成面15a(115a、215a)上に配置された液体3を電位制御部64の制御により、初期パターンや中間パターンや形成パターンとする際の応答性は低下する。しかしながら、本発明のパターン形成装置1、101、201においては、高い応答性を要求されることはないので、絶縁層15(115、215)がない場合であっても、適用可能である。
さらに、上述の第1〜第3の実施の形態においては、ポリイミドフィルムに導電性液体3で配線パターンを形成することによって、FPCを作製する場合について説明したが、これに限らず、本発明はシリコン基板等の電気配線基板を作製する場合にも適用することができる。さらに、微小導波路や3次元モデルの作製、高精細平面ディスプレイの作製、DNAチップやμ−TASにおける生体材料や薬液の微細パターン形成などに適用することもできる。ここで、導電性を有するUV硬化インクを用いて、基板上にパターンを形成した後、所定のUV光を照射してUV硬化インクを硬化させ、さらにUV硬化インクを重ね打ちすることを繰り返すことによって、容易に3次元モデリングをすることができる。また、導電性を有し、且つ、所定の屈折率を有する透明な液体(誘電体)を用いて所望のパターンを形成することにより、光導波路を容易に形成できる。本発明を電気配線基板の作製以外に適用する場合には、上述の実施の形態において用いられた導電性液体3のように、銅などのナノ導電性粒子が分散された、比較的導電性の高い液体ではなく、エレクトロウエッティング現象を生じる程度の導電性を有する液体であれば、任意の液体を用いることもできる。