JP4844139B2 - 永久磁石モータ用電磁鋼板および永久磁石モータ - Google Patents
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Description
鉄心素材の透磁率が向上することにより、モータのトルクが向上する。これは鉄心の磁束密度増加によって電機子と磁極の間の吸引力および反発力が増加するからである。このため、無方向性電磁鋼板の開発においてはB50と称される磁化力5000A/mでの磁束密度をより高めることを目標に開発が行われてきた。B50を高める手法のひとつとして、合金元素の低減がある。しかし、この場合は渦電流損の増加による鉄損の劣化を招くという難点がある。一方で、{100}面方位などの透磁率特性に有利な方位を増加させ、{111}面方位などの透磁率特性に有害な組織を低減する集合組織の改善する方法がB50の有効な改善方法として知られている。そして、従来の電磁鋼板開発における透磁率の改善は主としてこの集合組織の改善によって行われてきた(例えば、特許文献1)。
このような従来の鉄心材料開発により、鉄損W15/50が2.5W/kgでありながら、1.7T程度のB50を達成する無方向性電磁鋼板が現在開発されている。
上記高出力域の出力特性をも同時に必要とするモータでは高出力を得ようとして磁石強度を強くすると、無負荷時や軽負荷時の鉄損を増加させることになる。そして、運転モードが多用に変化するような場合には平均的な効率の低下に繋がる。また、磁気飽和領域で運転されるモータでは高磁場域でのインダクタンスの低下によって電流やトルクの制御が困難となるという問題も存在する。
上記に対し、磁石強度の飛躍的進歩に伴う鉄心側で生じる弊害を軽減するため、希土類磁石の体積を小さくするという対応が必要になる場合も生じている。このような場合、低下したトルクを補う方法としては磁石トルクと同時にリラクタンストルクを併用するという方法がある。しかしながら、リラクタンストルクの利用率が高くなるほど、ロータとステータ間のギャップを小さくする必要が生じる点や、磁気飽和のために制御が困難となるといった問題点を有している。
[1]Siを0.1〜4.5mass%、Cを0.02mass%以下、Mnを0.05〜3mass%以下、Alを0.1〜3mass%以下、含有し、残部Feおよび不可避的不純物である無方向性電磁鋼板であり、磁気特性が以下の式(1)〜(3)を満たすことを特徴とする永久磁石モータ用電磁鋼板。
J100≧1.75T ―――(1)
J10/J100≦0.80 ―――(2)
W20≦3.0W/kg ―――(3)
ただし、J100:磁化力10000A/mにおける磁気分極、J10:磁化力1000A/mにおける磁気分極、W20:2000A/m、50Hzで磁化した場合の鉄損。
[2] Siを0.1〜4.5mass%、Cを0.02mass%以下、Mnを0.05〜3mass%以下、Alを0.1〜3mass%以下、含有し、残部Feおよび不可避的不純物である無方向性電磁鋼板であり、{111}面方位のX線反射面強度のランダム集合組織強度に対する比が3.5以上9.0以下であり、かつ、平均結晶粒径が45μm以上であることを特徴とする永久磁石モータ用電磁鋼板。
[3] Siを0.1〜4.5mass%、Cを0.02mass%以下、Mnを0.05〜3mass%以下、Alを0.1〜3mass%以下、含有し、残部Feおよび不可避的不純物である無方向性電磁鋼板および永久磁石を用いた磁石モータであって、前記無方向性電磁鋼板の磁気特性は以下の式(1)〜(3)を満たすことを特徴とする永久磁石モータ。
J100≧1.75T ―――(1)
J10/J100≦0.80 ―――(2)
W20≦3.0W/kg ―――(3)
ただし、J100:磁化力10000A/mにおける磁気分極、J10:磁化力1000A/mにおける磁気分極、W20:2000A/m、50Hzで磁化した場合の鉄損。
[4] Siを0.1〜4.5mass%、Cを0.02mass%以下、Mnを0.05〜3mass%以下、Alを0.1〜3mass%以下、含有し、残部Feおよび不可避的不純物である無方向性電磁鋼板および永久磁石を用いた磁石モータであって、前記無方向性電磁鋼板の{111}面方位のX線反射面強度のランダム集合組織強度に対する比が3.5以上9.0以下であり、かつ、平均結晶粒径が45μm以上であることを特徴とする永久磁石モータ。
[5] さらに、上記成分に加えて、
P:0.2mass%以下、
Cu:0.5〜4mass%、
Sb:0.005〜0.05mass%、
Sn:0.005〜0.1mass%、
B:0.0002〜0.002mass%、
Ni:0.1〜5mass%、
Co:0.2〜3mass%、
REM:0.001〜0.01mass%および
Cr:8mass%以下
のうちから1種以上を添加した[1]又は[2]に記載の永久磁石モータ用電磁鋼板。
[6] さらに、上記成分に加えて、
P:0.2mass%以下、
Cu:0.5〜4mass%、
Sb:0.005〜0.05mass%、
Sn:0.005〜0.1mass%、
B:0.0002〜0.002mass%、
Ni:0.1〜5mass%、
Co:0.2〜3mass%、
REM:0.001〜0.01mass%および
Cr:8mass%以下
のうちから1種以上を添加した[3]又は[4]に記載の永久磁石モータ。
Siを0.1%以上4.5%以下
Siは電気抵抗率を増加させることにより渦電流損を低減し、鉄損低減に寄与する成分元素である。Si含有量が0.1%を下回ると上記の効果が得られない。一方、4.5%を超えて含有させると圧延性などの加工性を著しく劣化させる。よって、以上よりSi含有量は0.1%以上4.5%以下とする。
Cu:0.5〜4%、
Sb:0.005〜0.05%、
Sn:0.005〜0.1%、
B:0.0002〜0.002%、
Ni:0.1〜5%、
Co:0.2〜3%および
REM:0.001〜0.01%
また、Crに関しては、電気抵抗率を低下させるため、鉄損低減に有利である。ただし、添加量が過大になると飽和磁化を低下させるため、8%以下とすることが望ましい。
磁石モータは高出力時に直流磁化曲線での磁化力にして5000〜10000A/m付近の磁束密度に達する。従って、高出力駆動条件でのトルクを確保するためには、磁化力10000A/mでの磁気分極を一定値以上とする必要がある。以上より、J100を1.75T以上に規定する。ここで、J100はエプスタイン試験法により、半量をL方向、半量をC方向とした約500gの試料にて測定するのが適当であり、直流磁気試験もしくは50Hz以下の交流磁気試験での最大値により測定するのがよい。
式(2)は本発明の根幹をなす部分である。J100はモータが高出力で運転されているとき鉄心が到達しうる磁気分極の最高値程度の値を想定したものであり、J10は、低磁場域の磁気分極を規定するものである。そして、J10をJ100に対して一致値以下に制限することにより、磁化の飽和位現象が低磁場域から開始するのを緩和し、低磁場域での過剰な磁束密度増加を防止し、同時に高磁場域でのインダクタンス低下を緩和する。J10/J100が0.80を超える場合は、低磁場域の磁束密度が過剰に増加して無負荷・軽負荷での損失を増加させるとともに、低磁場域から高磁場域での透磁率変化を増加させて高磁場域のインダクタンス低下を顕著にする。よって、本発明においては、J10/J100≦0.80とする。上記の効果をさらに有効に得るためには、J10/J100≦0.70とするのが望ましい。
上記では磁化力1000A/mでの磁気分極J10と10000A/mでの磁気分極J100の比J10/J100を規定した。これは、無方向性電磁鋼板の磁化曲線では磁化力1000A/m付近で磁束密度の増加量が減少し、磁気飽和が起こり始めるため、この付近での磁気分極を低磁場域での磁気分極の指標としたものである。
前記のように、無負荷・軽負荷時およびモータが外力によって回転させられている場合、磁石モータでは磁石が鉄心を磁化させることによる損失が発生する。無負荷時の鉄心の磁化による鉄損の発生を抑制するためには、上記で規定したように、J10を低くするとともに、一定の磁化力で磁化された場合の鉄損を低位に保つのが良い。さらに2000A/m付近での鉄損を3.0W/kg以下とすることで、磁石モータが外力により回転させられている際の鉄損を低減することが可能となる。よって、本発明においては、W20≦3.0W/kgとする。なお、W20≦3.0W/kgは、例えば、結晶粒径などを適正化することにより達成可能となる。
上記式(2)であるJ10/J100≦0.80を達成するためには、J10〜J50付近の磁束密度を低下させる作用を有する面方位{111}を適度に含むのが良い。従来はこのような磁化に悪影響を及ぼす方位は出来るだけ低減することが望ましいとされたが、本発明はこのような従来知見に反して、このような方位を適度に含むものであり、本発明は、高出力の特性を重視する磁石モータにおいては面方位{111}を適度に含むことが有利であるとの知見を初めて得たものである。このような効果を得るためには、{111}面方位のランダム強度に対する比が3.5以上とする。一方、9.0を越えると上記式(1)であるJ100が低下して1.75Tを下回る。よって、{111}面方位のX線反射面強度のランダム集合組織強度に対する比は3.5以上9.0以下とする。なお、板厚方向で集合組織が変化しているような場合は、全板厚の平均値で上記範囲を規定する。
無負荷・軽負荷時の鉄損を低減するためには、この状態での鉄心の磁束密度(または磁気分極)を低下させることが有効である。しかし、界磁に永久磁石を使用する限りはこれを無くすることは出来ない。そのため、材料そのものの鉄損を低減することに着目した。そして、実際に材料そのものの鉄損を低減したところ、無負荷・軽負荷時の鉄損が低減することを確認した。材料そのものの鉄損低減の手法としては結晶粒径を粗大化させることが有効である。{111}面方位を上述の範囲としながらW20≦3.0W/kgを達成するためには、結晶粒径は、平均結晶粒径として45μm以上とする必要がある。なお、平均結晶粒径は、十分広い断面(面積S)にて観察される結晶粒の数をNとするとき、円相当径として、以下の式にて定義することとする。
Claims (6)
- Siを0.1〜4.5mass%、Cを0.02mass%以下、Mnを0.05〜3mass%以下、Alを0.1〜3mass%以下、含有し、残部Feおよび不可避的不純物である無方向性電磁鋼板であり、磁気特性が以下の式(1)〜(3)を満たすことを特徴とする永久磁石モータ用電磁鋼板。
J100≧1.75T ―――(1)
J10/J100≦0.80 ―――(2)
W20≦3.0W/kg ―――(3)
ただし、J100:磁化力10000A/mにおける磁気分極、J10:磁化力1000A/mにおける磁気分極、W20:2000A/m、50Hzで磁化した場合の鉄損。 - Siを0.1〜4.5mass%、Cを0.02mass%以下、Mnを0.05〜3mass%以下、Alを0.1〜3mass%以下、含有し、残部Feおよび不可避的不純物である無方向性電磁鋼板であり、{111}面方位のX線反射面強度のランダム集合組織強度に対する比が3.5以上9.0以下であり、かつ、平均結晶粒径が45μm以上であることを特徴とする永久磁石モータ用電磁鋼板。
- Siを0.1〜4.5mass%、Cを0.02mass%以下、Mnを0.05〜3mass%以下、Alを0.1〜3mass%以下、含有し、残部Feおよび不可避的不純物である無方向性電磁鋼板および永久磁石を用いた磁石モータであって、前記無方向性電磁鋼板の磁気特性は以下の式(1)〜(3)を満たすことを特徴とする永久磁石モータ。
J100≧1.75T ―――(1)
J10/J100≦0.80 ―――(2)
W20≦3.0W/kg ―――(3)
ただし、J100:磁化力10000A/mにおける磁気分極、J10:磁化力1000A/mにおける磁気分極、W20:2000A/m、50Hzで磁化した場合の鉄損。 - Siを0.1〜4.5mass%、Cを0.02mass%以下、Mnを0.05〜3mass%以下、Alを0.1〜3mass%以下、含有し、残部Feおよび不可避的不純物である無方向性電磁鋼板および永久磁石を用いた磁石モータであって、前記無方向性電磁鋼板の{111}面方位のX線反射面強度のランダム集合組織強度に対する比が3.5以上9.0以下であり、かつ、平均結晶粒径が45μm以上であることを特徴とする永久磁石モータ。
- さらに、上記成分に加えて、
P:0.2mass%以下、
Cu:0.5〜4mass%、
Sb:0.005〜0.05mass%、
Sn:0.005〜0.1mass%、
B:0.0002〜0.002mass%、
Ni:0.1〜5mass%、
Co:0.2〜3mass%、
REM:0.001〜0.01mass%および
Cr:8mass%以下
のうちから1種以上を添加した請求項1又は2に記載の永久磁石モータ用電磁鋼板。 - さらに、上記成分に加えて、
P:0.2mass%以下、
Cu:0.5〜4mass%、
Sb:0.005〜0.05mass%、
Sn:0.005〜0.1mass%、
B:0.0002〜0.002mass%、
Ni:0.1〜5mass%、
Co:0.2〜3mass%、
REM:0.001〜0.01mass%および
Cr:8mass%以下
のうちから1種以上を添加した請求項3又は4に記載の永久磁石モータ。
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