以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明においては、蓄電装置をアイドリングストップ車に適用した場合について述べる。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における蓄電装置のブロック回路図である。図2は、本発明の実施の形態1における蓄電装置の蓄電部通常時、および主電源通常時の主電源電圧Vbと蓄電部電圧Vcの経時変化図を示す。図3は、本発明の実施の形態1における蓄電装置の蓄電部通常時、および主電源劣化限界時の主電源電圧Vbと蓄電部電圧Vcの経時変化図を示す。図4は、本発明の実施の形態1における蓄電装置の蓄電部劣化限界時、および主電源通常時の主電源電圧Vbと蓄電部電圧Vcの経時変化図を示す。図5は、本発明の実施の形態1における蓄電装置の蓄電部劣化限界時、および主電源劣化限界時の主電源電圧Vbと蓄電部電圧Vcの経時変化図を示す。なお、図1において、太線は電力系配線を、細線は信号系配線をそれぞれ示す。
図1において、蓄電装置1はスタータからなる大電流負荷3が接続された主電源5と、小電流負荷7との間に接続されている。主電源5はバッテリであり、小電流負荷7はオーディオやナビゲーション等である。
蓄電装置1は次の構成を有する。まず、主電源5の出力には充放電回路9と主電源電圧検出回路11が接続されている。充放電回路9には蓄電部13と蓄電部電圧検出回路15が接続されている。従って、蓄電部13は充放電回路9によって充電と放電の制御が行われる。なお、蓄電部13は電力を蓄える蓄電素子として、充電電圧を約2.13Vとした初期容量60F(ファラッド)の電気二重層キャパシタを用い、これを6個直列に接続して必要な電力を賄っている。また、主電源5の出力と蓄電部13の出力のいずれかを切り替えて小電流負荷7に出力する切替スイッチ17が図1に示すように接続されている。さらに、充放電回路9、主電源電圧検出回路11、蓄電部電圧検出回路15、および切替スイッチ17は制御部19にも接続されている。このことから、制御部19は主電源電圧検出回路11や蓄電部電圧検出回路15の出力を取り込むと同時に、充放電回路9や切替スイッチ17の制御を行う。また、制御部19は車両側制御回路(図示せず)と信号の送受信を行う機能を有している。なお、主電源電圧検出回路11、および蓄電部電圧検出回路15の電力系配線における入力と出力は等電圧になるように構成されている。
次に、このような蓄電装置1の動作について、特に蓄電装置1を使用するアイドリングストップ状態からエンジン始動後に至るまでの期間を中心に図2から図5を用いて説明する。
まず、図2は蓄電部13と主電源5のいずれもが通常時における主電源5の電圧Vbと蓄電部13の電圧Vcの経時変化図であり、横軸は時間tを、縦軸は電圧(V)を示す。また、主電源5の電圧Vbを細線で、蓄電部13の電圧Vcを太線で、それぞれ示す。
最初に、蓄電装置1が小電流負荷7に電力を供給する既定時間tsをあらかじめ決めておく。その決定方法は以下の通りである。
一般に、主電源5により大電流負荷3(スタータ)を駆動すると、その電圧Vbの経時変化は例えば図2の細線に示す特性になる。すなわち、エンジン始動時(時間t1)に最大電流が流れるので主電源5の電圧Vbは極めて低電圧まで落ち込むが、その後のエンジン始動に従って、何回か(本実施の形態1では2回)の微小な落ち込みを伴いながら安定した電圧(約13.2V)まで戻る。
このような電圧Vbの経時変化特性を複数の劣化限界に達した状態の主電源5に対して求め、それらを平均する。この平均した経時変化から主電源5の電圧Vbが小電流負荷7の最低駆動電圧Vmin(本実施の形態1では10.5V)を下回った時から最低駆動電圧Vminに戻るまでの時間を求める。これを既定時間tsと定義する。本実施の形態1では既定時間tsは1.5秒であった。従って、大電流負荷3を駆動後、既定時間tsである1.5秒以内に電圧Vbが10.5Vに至らなければ、主電源5が劣化していることになる。
この既定時間tsは蓄電装置1の製造時に制御部19に記憶しておく。この状態で、実際の動作について説明する。
まず、図2において、時間t0はアイドリングストップ中である。この時はエンジンが停止しているので、オルタネータも動作していない。従って、小電流負荷7への電力は主電源5からのみ供給されている。この際の主電源5の電圧Vbはオルタネータが動作しているときの通常電圧(約13.2V)より低い12V近傍であったとする。従って、蓄電装置1の制御部19は、主電源電圧検出回路11の出力、すなわち主電源5の電圧Vbを取り込んで、時間t0では電圧Vbが小電流負荷7の最低駆動電圧Vmin(10.5V)よりも高い12Vであることから、切替スイッチ17を主電源5側に切り替えている。ゆえに、蓄電部13からの放電は起こっていないので、電圧Vcは満充電電圧である12.8V(≒2.13V×6個)を維持しており、電力の供給待機状態にある。また、アイドリングストップ中であるので大電流負荷3(スタータ)は停止している。
次に、時間t1でエンジン始動を開始したとする。この時は前記したように主電源5の電圧Vbは約12Vから6V程度まで急激に低下する。制御部19はこの電圧変化を主電源電圧検出回路11により取り込み、主電源5の電圧Vbが小電流負荷7の最低駆動電圧Vmin(10.5V)未満になったことを検出する。その結果、切替スイッチ17を蓄電部13側に切り替える。これにより、小電流負荷7には蓄電部13から電力が供給されるので、引き続き安定して動作することができる。同時に、制御部19は既定時間tsのカウントを開始する。
時間t1の時点で蓄電部13が小電流負荷7に電力供給を開始すると、まず蓄電部13の内部抵抗値Rに応じた電圧降下が発生する。本実施の形態1では蓄電部13が劣化していない通常時の内部抵抗値Rは約40mΩであり、また小電流負荷7の最大駆動電流Im(本実施の形態1では5A)を供給しているとすると、時間t1での電圧降下は0.2V(=5A×0.04Ω)となる。従って、時間t1で蓄電部13の電圧Vcは0.2V下がり、それ以降は小電流負荷7が電力を消費するに従って、蓄電部13の電圧Vcが経時的に低下していく。
その後、既定時間tsの1.5秒が経過した時間t2になると、制御部19は小電流負荷7への電力供給を停止する。具体的には切替スイッチ17を主電源5側に切り替える。主電源5は劣化限界に至るまでは必ず1.5秒以内に小電流負荷7の最低駆動電圧Vmin(10.5V)以上に戻るので、時間t2以降は再び主電源5から小電流負荷7に電力が供給される。その結果、蓄電部13の放電が停止するので、その電圧Vcは時間t2で前記電圧降下分が上昇した後、一定となる。この時、蓄電部13は満充電状態ではないので、再度の小電流負荷7への電力供給を禁止し、禁止を示す信号を外部の車両側制御回路に送信する。その結果、車両側制御回路は蓄電装置1が使えない状態であるので、後述する禁止解除状態になるまでアイドリングストップを行わないように制御する。
その後、主電源5の電圧Vbは経時的に上昇し、やがて蓄電部13の電圧Vcを上回る。これにより、主電源5から蓄電部13への充電が可能になるのであるが、充電時に電圧Vbは充放電回路9における内部抵抗等に起因した電圧降下を起こし、また蓄電部13の内部抵抗値Rに応じて電圧Vcは電圧上昇を起こすので、これらの変動分以上に主電源5の電圧Vbが蓄電部13の電圧Vcより高くなり充電可能な電圧に至る時間t3になれば、制御部19は充放電回路9に対し蓄電部13を充電するよう制御する。その結果、次のアイドリングストップに備えて蓄電部13を再び満充電にする。この時の電圧Vcの経時変化を図2の時間t3からt5に示す。時間t3で時間t2と同様に電圧上昇した後、時間とともに電圧Vcは上昇していく。
その後、時間t4で、主電源5の電圧Vbが主電源既定電圧Vbs(=12.8V)に至ったとする。なお、主電源既定電圧Vbsは主電源5が通常時(劣化に至っておらず、オルタネータが動作している時)の最低電圧である12.8Vとした。制御部19は主電源電圧検出回路11で電圧Vbの変化を監視しているので、電圧Vbが主電源既定電圧Vbsに至ったことを検出すれば、待機時間twのカウントを開始する。なお、待機時間twについては後述する。
その後、時間t5で蓄電部13の電圧Vcが満充電電圧12.8Vに至ると、制御部19は充放電回路9が充電を停止するよう制御する。その結果、時間t5以降では蓄電部13は満充電電圧12.8Vを維持する。
その後、時間t6でエンジン再始動が完了し、大電流負荷3(スタータ)が停止したとする。この時はエンジンが駆動し、オルタネータが動作しているので、主電源5の電圧Vbは通常電圧である13.2Vに至って安定する。しかし、この時点ですぐに蓄電部13からの電力供給を行うと、充放電がほぼ連続して行われるので発熱してしまう可能性がある。そこで、このような発熱を抑え、さらに充電による発熱を冷ますために、時間t4から既定の待機時間tw(本実施の形態1では後述する理由で5秒とした)が経過するまで待つ。待機時間twが経過した時間t7では、蓄電部13の充電は完了しており、充電による発熱も冷めているので、以後は蓄電部13から電力を供給することが可能な状態となる。従って、制御部19は時間t7で蓄電部13の電力供給禁止を解除するとともに、車両側制御回路に禁止解除信号を送信する。これにより、車両側制御回路はアイドリングストップ動作を許可する。
このような制御とすることにより、蓄電部13が満充電に至らないうちに小電流負荷7へ電力を供給してしまうことによる蓄電部13の電力不足の可能性を低減できるとともに、蓄電部13の放冷も可能となる。すなわち、本実施の形態1の構成では、主電源5の電圧Vbが主電源既定電圧Vbs(=12.8V)以上の場合、蓄電部13を満充電にして放冷するには5秒あれば十分であるので、待機時間tw(=5秒)が経過した時には蓄電部13は満充電され、放冷もなされている。従って、待機時間twの経過後に蓄電部13の電力供給禁止を解除することで、蓄電部13の電力不足と発熱の可能性を低減できる。このような理由から待機時間twを5秒とした。
以上の動作を繰り返すことにより、アイドリングストップ後の主電源5の電圧低下を補償している。このことから、蓄電部13の電力は既定時間tsだけしか放電されないので、蓄電部13の電力を必要以上に消費することがなくなり、その分、充放電時間を短縮でき、繰り返し充放電を行っても発熱が抑制され、高信頼性が得られる。
次に、図3に示した蓄電部13が通常時で、主電源5が劣化限界に達している場合について説明する。なお、図3の横軸、縦軸、細線、太線の意味は図2と同じである。
まず、時間t0からt1は図2と同じであるので説明を省略する。
時間t1でエンジン始動が開始すると、図2と同様に蓄電部13の電力が小電流負荷7に供給され、電圧Vcは時間t1で電圧降下を起こした後、経時的に低下していく。その後、既定時間ts(1.5秒)が経過した時間t2に至ると、主電源5の電圧Vbは劣化限界に達しているため、ちょうど小電流負荷7の最低駆動電圧Vmin(=10.5V)まで上昇する。この時点で制御部19は図2と同様に蓄電部13から小電流負荷7への電力供給を停止し、主電源5から供給するよう切替スイッチ17を切り替える。同時に、蓄電部13からの電力供給を禁止する。これにより、時間t2で電圧Vcは電圧上昇をした後、安定する。
その後、時間t3で主電源5の電圧Vbが蓄電部13の電圧Vcを上回り充電可能な電圧に至ると、蓄電部13の充電が開始されるが、主電源5は劣化限界状態であるため、電圧Vbの上昇が遅い。すなわち、時間t2からt3の間が図2の場合より長くなる。従って、時間t3以降の動作は図2と全く同じであるが、蓄電部13の電力供給禁止を解除する時間が長くなるという違いがある。このことから、主電源5の劣化が進行すると、蓄電部13の電力供給禁止期間(図3の時間t2からt7)が徐々に長くなることになる。その結果、アイドリングストップ禁止期間も長くなるので、制御部19は時間t2で主電源5の電圧Vbが劣化限界である10.5Vを下回ったことを検知すると、車両側制御回路に主電源5の劣化信号を送信する。なお、一般には車両側制御回路も主電源5の電圧Vbを監視しているので、二重に主電源5の劣化を検知していることになり、アイドリングストップ機能全体の高信頼性が得られる。
以上の動作によっても、蓄電部13の電力を必要以上に消費することがないので、従来に比べ充電時間を短縮でき、低発熱で高信頼性が得られる。
次に、図4に示した蓄電部13が劣化限界に達し、主電源5が通常時である場合について説明する。なお、図4の横軸、縦軸、細線、太線の意味は図2と同じである。
まず、時間t0からt1は図2と同じであるので説明を省略する。
時間t1でエンジン始動が開始すると、蓄電部13の電力が小電流負荷7に供給される。この時、蓄電部13は劣化限界に達しているので、その内部抵抗値Rは通常時よりも大きくなる。本実施の形態1では劣化限界の蓄電部13の内部抵抗値Rは約100mΩであった。従って、時間t1における電圧降下は図2の場合より大きくなり、図2と同様に小電流負荷7に最大駆動電流Im(=5A)を供給したとすると、電圧Vcの電圧降下は0.5Vになる。
時間t1以降では電圧Vcは小電流負荷7への電力供給に従って経時的に低下していく。この時、蓄電部13は劣化限界に達しているので、容量値Cが初期(通常)の10Fから低下している。ゆえに、小電流負荷7が図2と同じ電力を消費したとしても、容量値Cが小さい分、電圧Vcが図2の場合よりも急に低下していく。
一方、主電源5は通常状態であるので、大電流負荷3の駆動に伴う電圧Vbの回復は早い。従って、既定時間ts以内の時間t2で電圧Vbが電圧Vcと等しくなる。制御部19は両者の電圧変化を監視しているので、既定時間tsが経過するまでに両者が等しくなったことを検出すると、蓄電部13から小電流負荷7への電力供給を停止し、主電源5の電力を小電流負荷7に供給するように切替スイッチ17を切り替える。これにより、蓄電部13の放電が停止するので、時間t1における電圧降下分、時間t2で電圧Vcが上昇した後、安定する。
その後、既定時間tsが経過後の時間t3では、すでに小電流負荷7への電力供給源を蓄電部13から主電源5に切り替えた後なので、制御部19は特に何の動作も行わない。
次に、時間t4で電圧Vbが電圧Vcを上回り、蓄電部13の充電が可能な電圧に至るので、主電源5から蓄電部13への充電が可能となる。そこで、制御部19は蓄電部13の充電を開始するよう充放電回路9に指示する。この時も時間t2と同様に電圧上昇が発生し、その後、主電源5の電圧Vbの変化に対応して蓄電部13の電圧Vcが上昇し、充電が行われる。
次に、時間t5で主電源5の電圧Vbが主電源既定電圧Vbs(=12.8V)に戻る。これにより、制御部19は待機時間twのカウントを開始する。時間t5からt8の動作は図2の時間t4からt7の動作とそれぞれ同じであるので、説明を省略する。
このように、既定時間ts以内であっても主電源5の電圧Vbと蓄電部13の電圧Vcが等しくなれば蓄電部13の放電を停止することで、既定時間tsまで放電するよりも放電電力を少なくできるので、蓄電部13を再充電する際の電力を少しでも低減することができる。
なお、時間t2で蓄電部13から小電流負荷7への電力供給を停止する直前に、蓄電部13の電圧Vcが小電流負荷7の最低駆動電圧Vmin(10.5V)未満であれば、図4よりもさらに急な傾きで電圧Vcが低下していることになるので、蓄電部13が完全に劣化したことがわかる。この場合、制御部19は蓄電部13が劣化したことを外部の車両側制御回路に送信して運転者に修理を促すとともに、以後、蓄電部13から小電流負荷7への電力供給を禁止する。これにより、車両側制御回路は蓄電装置1の修理が終わるまでアイドリングストップを行わないように制御する。その結果、アイドリングストップを行うことによる小電流負荷7への電力供給不足の可能性を回避できるので、アイドリングストップ機能全体の高信頼性が得られる。
次に、図5に示した蓄電部13と主電源5の両方が劣化限界に達している場合について説明する。なお、図5の横軸、縦軸、細線、太線の意味は図2と同じである。
まず、時間t0からt1は図2と同じであるので説明を省略する。
また、時間t1での動作も図4と同じであるので説明を省略するが、蓄電部13は劣化限界に達しているので、時間t1以降で電圧Vcは図4と同様に急に低下していく。その後、既定時間ts(1.5秒)が経過した時間t2に至ると、主電源5の電圧Vbは劣化限界に達しているため、ちょうど小電流負荷7の最低駆動電圧Vmin(=10.5V)まで上昇すると同時に、蓄電部13の電圧Vcも最低駆動電圧Vmin(=10.5V)まで低下する。従って、電圧Vbと電圧Vcは時間t2で一致することになる。この時点で制御部19は蓄電部13から小電流負荷7への電力供給を停止し、主電源5から供給するよう切替スイッチ17を切り替える。同時に、以後の蓄電部13からの電力供給を禁止する。ゆえに、時間t2で蓄電部13の電圧Vcは時間t1での電圧降下分が上昇した後、それ以降は一定になり、主電源5の電圧Vbは上昇し続ける。
その結果、時間t3で主電源5から蓄電部13に充電ができる電圧差になると、制御部19は蓄電部13の充電を開始する。この時、主電源5は劣化限界状態であるため、図3と同様に主電源5の電圧Vbの上昇が遅い。従って、蓄電部13の電力供給禁止期間が図4の場合に比べ長くなる。しかし、この場合でも蓄電部13の電力を必要以上に消費することはないので、従来に比べ充電時間を短縮でき、低発熱で高信頼性が得られる。なお、時間t4以降の動作は図4の時間t5以降の動作と同じである。
また、時間t2における主電源5の電圧Vbと蓄電部13の電圧Vcから、主電源5や蓄電部13の劣化を検知し、車両側制御回路に劣化信号を送信する等の動作も図3、図4の場合と同じである。これにより、アイドリングストップ機能全体の高信頼性が得られる。
以上の構成、動作により、既定時間tsが経過するか、または既定時間ts以内に主電源5の電圧Vbが蓄電部13の電圧Vcと等しくなれば、蓄電部13の電力を小電流負荷7に供給するようにしたので、蓄電部13の電力を必要以上に消費することがなく、その分、充放電時間が短縮され、発熱が抑制された高信頼性の蓄電装置を実現できた。
(実施の形態2)
図6は、本発明の実施の形態2における蓄電装置の蓄電部通常時、および主電源通常時の主電源電圧Vbと蓄電部電圧Vcの経時変化図を示す。図7は、本発明の実施の形態2における蓄電装置の蓄電部劣化限界時、および主電源通常時の主電源電圧Vbと蓄電部電圧Vcの経時変化図を示す。なお、本実施の形態2における蓄電装置の構成は実施の形態1の図1と同じであるので、構成上の説明を省略する。
本実施の形態2の動作は、実施の形態1の動作に対し次の点を追加している。すなわち、蓄電部13から小電流負荷7に電力を供給している時に、既定時間ts以内に主電源5の電圧Vbが小電流負荷7の最低駆動電圧Vmin(10.5V)以上になった場合にも、小電流負荷7への電力供給を停止するとともに、主電源5から小電流負荷7に電力を供給し、主電源5の電力を充放電回路9により蓄電部13に充電するようにした。この特徴部分を中心に、図6、図7を用いて動作を説明する。
図6は蓄電部通常時、および主電源通常時における主電源5の電圧Vbと蓄電部13の電圧Vcの経時変化図であり、横軸、縦軸、細線、太線の意味は図2と同じである。
まず、既定時間tsの決定方法については実施の形態1と同じであるので説明を省略する。なお、本実施の形態2においても既定時間tsは1.5秒とした。
次に、図6において、時間t0からt1の動作は実施の形態1と同じである。また、時間t1でエンジン始動を開始した時の動作も図2と同じである。
時間t1以降は、小電流負荷7が電力を消費するに従って、蓄電部13の電圧Vcは経時的に低下していくが、主電源5の電圧Vbはエンジン始動とともに経時的に上昇する。今、主電源5は通常状態であるので、その電圧Vbは図6の細線に示したように既定時間tsが経過した時(時間t3)よりも前の時間t2で小電流負荷7の最低駆動電圧Vmin(10.5V)以上に戻る。そこで、制御部19は既定時間tsが経過していなくても電圧Vbが小電流負荷7の最低駆動電圧Vmin(10.5V)以上に戻れば、その時点で蓄電部13から小電流負荷7への電力供給を停止する。これにより、時間t2で蓄電部13の電圧Vcは電圧上昇した後、一定値を保ち、一方で主電源5の電圧Vbは上昇するので、やがて電圧Vbが電圧Vcを上回り、時間t4で主電源5から蓄電部13への充電が可能な電圧差となる。この時点で、制御部19は主電源5の電力を充放電回路9により蓄電部13に充電するよう制御する。なお、図6では時間t4で主電源5の電圧Vbが主電源既定電圧Vbsに戻った場合を示している。従って、蓄電部13の充電が開始されると同時に待機時間twのカウントが開始される。その後、時間t5で満充電になれば充電を停止する。時間t5以降の動作は図2の時間t5以降と同じであるので説明を省略する。
以上のように動作することで、既定時間tsの経過前であっても蓄電部13から小電流負荷7への電力供給を停止するので、蓄電部13の放電量が減り、その分、さらに充放電時間が短縮される。従って、発熱が抑制され、高信頼性が得られる。
次に、図7に示した蓄電部13が劣化限界に達し、主電源5が通常時の場合について説明する。なお、図7の横軸、縦軸、細線、太線の意味は図2と同じである。まず、時間t0からt1の動作と、時間t1における動作は図6の動作と同じである。但し、時間t1における蓄電部13の電圧Vcの電圧降下は蓄電部13が劣化限界に達しているので、図6の場合より大きくなる。
時間t1以降では蓄電部13の電圧Vcは図7の太線の特性で急低下するが、主電源5の電圧Vbは通常状態であるので、図7の細線に示すように上昇する。すなわち、電圧Vbが小電流負荷7の最低駆動電圧Vmin(10.5V)以上に戻るのは時間t1から既定時間ts(1.5秒)が経過した時間t3よりも前の時間t2である。従って、図6と同様に、この時点で蓄電部13から小電流負荷7への電力供給を停止し、主電源5から供給する。
その後、時間t4で蓄電部13の充電が可能となる電圧差(電圧Vbと電圧Vcの差)が得られると、蓄電部13の充電が開始する。また、図7の場合には、主電源5の電圧Vbが主電源既定電圧Vbsに戻る時間は蓄電部13の充電開始時間t4と同時ではなく、その後の時間t5である場合を示している。なお、時間t6以降の動作は図6の時間t5以降の動作と同じである。この場合、蓄電部13への充電時間(時間t4からt6)は図6に比べ長くなるものの、実施の形態1における図4の場合に比べ充放電時間が短縮され、その分、発熱が抑制される効果が得られる。
次に、主電源5が劣化限界に達しているが、蓄電部13は通常時の場合については次のようになる。主電源5は劣化限界に達しているので、電圧Vbが最低駆動電圧Vmin(10.5V)以上に戻るのは既定時間ts(1.5秒)が経過した時である。ゆえに、主電源5が劣化限界に達しているが、蓄電部13は通常時の場合は実施の形態1の図3と全く同じ動作になるので、説明を省略する。
同様に、主電源5と蓄電部13がいずれも劣化限界に達している場合についても、主電源5が劣化限界に達しているので、電圧Vbが最低駆動電圧Vmin(10.5V)以上に戻るのは既定時間ts(1.5秒)が経過した時である。ゆえに、この場合は実施の形態1の図5と全く同じ動作になるので、説明を省略する。
以上の構成、動作により、主電源5の電圧Vbが小電流負荷7の最低駆動電圧Vmin(10.5V)以上になった場合にも、小電流負荷7への電力供給を停止するとともに、主電源5の電力を小電流負荷7に供給し、充放電回路9により蓄電部13を充電することで、特に主電源5が通常状態の場合は蓄電部13の放電量を低減できるので、その分、充放電が早くなり、さらなる発熱抑制が可能な高信頼性の蓄電装置を実現できた。
なお、本実施の形態2においても実施の形態1と同様に蓄電部13の充電が完了し、主電源の電圧Vbが安定する待機時間twが経過するまでは、制御部19は蓄電部13から小電流負荷7への電力供給を禁止するとともに、禁止信号を車両側制御回路(図示せず)に送信してアイドリングストップを禁止している。
また、蓄電部13から小電流負荷7への電力供給を停止した際に、蓄電部13の電圧Vcが小電流負荷7の最低駆動電圧Vmin(10.5V)未満であれば、実施の形態1と同様に制御部19は蓄電部13が劣化したことを外部の車両側制御回路に送信し、以後、蓄電部13から小電流負荷7への電力供給を禁止している。
さらに、蓄電部13から小電流負荷7への電力供給を停止した際に、主電源5の電圧Vbが小電流負荷7の最低駆動電圧Vmin(10.5V)未満であれば、実施の形態1と同様に制御部19は主電源5が劣化したことを外部の車両側制御回路に送信している。
これらの動作も同時に行うことにより、実施の形態1と同様にアイドリングストップ機能全体の高信頼性を得ている。
(実施の形態3)
図8は、本発明の実施の形態3における蓄電装置のブロック回路図である。図9は、本発明の実施の形態3における蓄電装置の蓄電部が新品で最大電流供給時、かつ主電源通常時の主電源電圧Vbと蓄電部電圧Vcの経時変化図を示す。図10は、本発明の実施の形態3における蓄電装置の蓄電部が劣化限界時で最大電流供給時、かつ主電源通常時の主電源電圧Vbと蓄電部電圧Vcの経時変化図を示す。図11は、本発明の実施の形態3における蓄電装置の蓄電部が小電流供給時、かつ主電源劣化時の主電源電圧Vbと蓄電部電圧Vcの経時変化図を示す。なお、図8の太線と細線の意味は図1と同じである。
図8に示す蓄電装置は、実施の形態1の図1に示す構成に対し、電流検出手段21を追加した構成とした。電流検出手段21は充放電回路9と直列に接続され、蓄電部13への充電電流Iを検出する。充電電流Iは制御部19に出力される。また、電流検出手段21の構成としては、充放電回路9と直列に低抵抗器を接続し、その両端電圧から充電電流Iを求めてもよいし、ホール素子等の間接的な電流検出手段を用いてもよい。なお、電流検出手段21以外の構成は実施の形態1の図1と同じであるので、その詳細な説明は省略する。
次に、本実施の形態3の蓄電装置における動作について、まず図9を用いて説明する。図9は蓄電部13が新品で最大電流供給時、かつ主電源5が通常時における主電源5の電圧Vbと蓄電部13の電圧Vcの経時変化図であり、横軸、縦軸、細線、太線の意味は図2と同じである。
まず、蓄電装置1が小電流負荷7に供給する電荷量Qをあらかじめ決めておく。その決定方法は以下の通りである。
まず、実施の形態1で述べたように、劣化限界に達した状態の主電源5で大電流負荷3を駆動した時に、主電源5の電圧Vbが6V程度まで低下した後、小電流負荷7の最低駆動電圧Vmin(10.5V)に至るまでの時間(既定時間ts)を求める。この詳細な方法は実施の形態1と同じであるので説明を省略するが、本実施の形態3においても既定時間tsは1.5秒(s)であった。
次に、小電流負荷7の最大駆動電流Imを求める。これは、あらかじめ小電流負荷7を駆動させて最大電流を測定することにより得られる。本実施の形態3では最大駆動電流Imは5Aであった。
以上のパラメータから、蓄電部13は小電流負荷7に最大駆動電流Imを既定時間tsの間、供給することができれば、小電流負荷7を安定的に駆動できる。従って、小電流負荷7を駆動するために蓄電部13が必要とする電荷量Qは、既定時間tsと最大駆動電流Imの積で表すことができるので、本実施の形態3ではQ=Im×ts=5A×1.5s=7.5A・sとなる。この電荷量Qを上記のようにして求め、あらかじめ制御部19に記憶しておく。この状態で、実際の動作について説明する。
まず、図9には示していないが、車両の使用終了時に制御部19は蓄電素子の寿命を延ばすために蓄電部13の電力を全て放電するように充放電回路9を制御する。このため、蓄電装置1の起動時に制御部19は、まず充放電回路9を制御して蓄電部13を充電している。この際、制御部19は充電を定電流で行うとともに(この充電電流をIとする)、蓄電部13の容量値Cと内部抵抗値Rを以下のようにして求める。
まず、容量値Cは充電中の任意の時間幅における充電電流Iの時間積分値∫Idtを、前記時間幅における蓄電部13の電圧Vcの変化幅dVで除することにより求める。具体的には、まず充電中のある時間taにおける電圧Vcaを求め、さらに時間taより任意の時間幅分だけ後の時間tbにおける電圧Vcbを求める。この電圧差、すなわち蓄電部13の電圧Vcの変化幅をdVとすると、dV=Vcb−Vcaとなる。次に、時間幅(時間taからtb)における充電電流Iの時間積分値∫Idtを求める。なお、積分範囲は時間taからtbである。今、充電は定電流で行われているので、充電電流Iは一定である。ゆえに、時間taからtbにおける時間積分値は、∫Idt=I×(tb−ta)となる。次に、得られたこれらの値から蓄電部13の容量値Cを求める。容量値Cは、C×dV=∫Idt=I×(tb−ta)の関係から、C=I×(tb−ta)/dVにより計算できる。なお、充電電流Iは電流検出手段21により求める。制御部19は以上の計算を充電中に行って容量値Cを求める。
次に、内部抵抗値Rを求めるために、制御部19は充電電流Iで充電を行っている途中で充電を中断するよう充放電回路9を制御する。充電を中断すると、蓄電部13の電圧Vcは内部抵抗値Rに応じた電圧降下を起こす。この電圧降下による電圧変動幅をVvとする。制御部19は、充電を中断する直前の電圧値と中断後の電圧値を蓄電部電圧検出回路15からそれぞれ求め、両者の差から電圧変動幅Vvを得る。これらより、内部抵抗値Rは、電圧変動幅Vvを充電電流Iで除すること(R=Vv/I)で求められる。なお、充電電流Iは、充電を中断する直前の電流値を電流検出手段21により求めている。制御部19は以上の動作、および計算を充電中に行って内部抵抗値Rを求める。電圧変動幅Vvが求まれば、制御部19は充電を再開する。なお、この時にも内部抵抗値Rに応じた電圧上昇が起こるので、この電圧上昇により内部抵抗値Rを求めてもよい。また、充電の中断時間は電圧変動幅Vvを安定して求めることができる時間(本実施の形態3では約0.1秒とした)であればよい。
なお、蓄電部13の容量値Cと内部抵抗値Rを求める順番は上記と逆であってもよい。
次に、図9の場合の動作について説明する。図9において、時間t0からt1は実施の形態1の図2と同じ動作なので、説明を省略する。
時間t1でエンジン始動を開始すると、主電源5の電圧Vbが小電流負荷7の最低駆動電圧Vmin(10.5V)未満になるので、制御部19は切替スイッチ17を蓄電部13側に切り替えて、蓄電部13から小電流負荷7に電力を供給する。これにより、蓄電部13の電圧Vcは電圧降下を起こした後、時間t1以降では小電流負荷7が電力を消費するに従って、蓄電部13の電圧Vcは経時的に低下していく。この際、制御部19は蓄電部13の供給電荷量Qsがあらかじめ求めた電荷量Qを超えるまで小電流負荷7に電力を供給するよう制御している。従って、制御部19は電荷量Qと容量値C、内部抵抗値R、および時間t1における蓄電部13の初期電圧Vc1から、電圧Vcが何Vまで低下すると電荷量Qを超えるかを計算する。具体的には、次のようになる。
電荷量Qは前記した通り、7.5A・s(I=5A、ts=1.5秒より)である。蓄電部13の構成は実施の形態1と同じなので、容量値Cは、60Fの蓄電素子が6個直列接続されていることから合成容量を求めて、C=10Fとなる。また、蓄電素子を6個直列に接続した時の蓄電部13の内部抵抗値Rは実施の形態1で述べたように約40mΩであった。これは、前記した充電の中断により求めている。さらに、初期電圧Vc1は図9より主電源既定電圧Vbsと同じ12.8Vである。ここで、蓄電部13が実際に小電流負荷7に供給する電荷量Qsは、小電流負荷7への電力供給に伴う蓄電部13の電圧変化量(=Vc1−Vcx−IR)に容量値Cを乗じた値となる。これらのことから、求めたい電圧(放電終了電圧)をVcxとすると、Qs=C×(Vc1−Vcx−IR)>Qとなるので、ここにそれぞれの数値を代入して計算すると、Vcx<11.85Vとなる。従って、蓄電部13の電圧Vcが11.85Vを下回ると、あらかじめ求めた小電流負荷7に供給する電荷量Qを上回ることになる。このような計算から明らかなように、放電終了電圧Vcxは最大値(蓄電部13が新品の時)の11.85Vと、最小値(小電流負荷7の最低駆動電圧Vmin)の10.5Vの範囲で、蓄電部13の容量値Cに応じて変動する。この変動幅を図9の縦軸に両矢印で示す。なお、容量値Cや内部抵抗値Rは蓄電部13の温度や劣化に応じて変化する。
制御部19は上記のような計算を行い、電圧Vcが11.85Vに至るまで小電流負荷7に電力を供給し続ける。その後、時間t2で電圧Vcが11.85Vを下回り、蓄電部13の供給電荷量Qsが、あらかじめ求めた電荷量Qを超えれば、制御部19は小電流負荷7への電力供給を停止する。この時、蓄電部13は最大電流5Aを既定時間である1.5秒間に渡って供給し終わっている。一方、主電源5は劣化限界に至るまでは必ず1.5秒以内に小電流負荷7の最低駆動電圧Vmin(10.5V)以上に戻っている。これらのことから、時間t2で切替スイッチ17を主電源5側に切り替えることにより、その後再び主電源5から小電流負荷7に電力が供給され、同時に蓄電部13の小電流負荷7への電力供給を禁止する。この動作は実施の形態1と同じである。但し、時間t2では電圧Vbが電圧Vcよりも低いため、主電源5から蓄電部13への充電ができない。従って、時間t2の放電停止時に蓄電部13の内部抵抗値Rによる電圧上昇が起こった後、時間t2以降では蓄電部13の電圧Vcは一定値となる。
その後、電圧Vbが電圧Vcより大きくなり、時間t3において両者の電圧差が充電可能な値になれば、主電源5の電力を充放電回路9により蓄電部13に充電する。この時も定電流充電を行うことで、前記した方法により蓄電部13の容量値Cと内部抵抗値Rを求めて更新する。すなわち、図9に示すように、時間taにおける電圧Vcaと時間tbにおける電圧Vcbから電圧差、すなわち電圧Vcの変化幅dVを求めることにより容量値Cを計算し、時間tcから時間tdまでの充電中断時の電圧降下による電圧変動幅Vvを求めることにより内部抵抗値Rを計算する。これらの計算方法は前記した通りである。このように、充電の都度、容量値Cと内部抵抗値Rを更新することで、温度や劣化による容量値Cと内部抵抗値Rの変化に対応した正確な放電終了電圧Vcxの計算が可能となる。さらに、容量値C、または内部抵抗値Rが後述する劣化限界値(本実施の形態3ではそれぞれ4.17F、100mΩ)に至れば、制御部19は蓄電部13が劣化したことを外部の車両側制御回路(図示せず)に送信するとともに、蓄電部13から小電流負荷7への電力供給を禁止する。これにより、蓄電部13から小電流負荷7への電力供給不足による小電流負荷7の動作への影響を回避することができ、より高信頼性が得られる。
なお、容量値Cと内部抵抗値Rは、基本的には蓄電部13への充電が定電流で行われている時に求めるが、蓄電部13が満充電に近づくと、充放電回路9は充電制御を定電流制御から定電圧制御に切り替える。その結果、充電電流Iは時間とともに変化し、一定ではなくなる。従って、容量値Cは充電電流Iを時間taからtbまで時間積分し、前記したC×dV=∫Idtの関係式から求める。なお、内部抵抗値Rは、前記した定電流での充電時に内部抵抗値Rを求める方法と同じである。このようにして、充電電流が変化している場合でも容量値Cと内部抵抗値Rを求めることができる。
次に、時間t4からt7の動作は、上記した蓄電部13の容量値Cと内部抵抗値Rを求める部分を除き、実施の形態1で述べた図2の時間t4からt7とそれぞれ同じであるので説明を省略する。
以上の動作を繰り返すことにより、アイドリングストップ後の主電源5の電圧低下を補償している。このことから、蓄電部13からは、あらかじめ決められた電荷量Qまでしか放電されないので、蓄電部13の電力を必要以上に消費することがなくなり、その分、充放電時間を短縮でき、繰り返し充放電を行っても発熱が抑制され、高信頼性が得られる。
次に、主電源5は通常時であるが、蓄電部13が劣化限界に達しており、かつ小電流負荷7が最大電流(5A)を消費している場合について説明する。
まず、本実施の形態3では小電流負荷7を正常に駆動するために、10.5V以上の電圧を供給しなければならない。従って、蓄電部13が劣化限界に達しているということは、放電終了電圧Vcxが10.5Vであるということになる。そこで、劣化限界に達した蓄電部13の容量値Cを求める。前記したC×(Vc1−Vcx−IR)=Qの関係式に、Vc1=12.8V、Vcx=10.5V、I=5A(小電流負荷7最大電流値)、R=100mΩ(蓄電部13の劣化限界時の内部抵抗値)、Q=7.5A・sを代入すると、C=4.17Fが得られる。従って、この値が容量値Cの劣化限界値となる。ここでは、容量値Cが劣化限界値に達している場合の動作について、図10を参照しながら説明する。なお、図10の横軸、縦軸、細線、太線の意味は図2と同じである。
まず、時間t0からt1は図9の場合と同じであるので説明を省略する。
時間t1でエンジン始動が開始すると、蓄電部13の電力が小電流負荷7に供給される。この時、蓄電部13は劣化限界に達しているので、図9の場合に比べ内部抵抗値Rが大きい。従って、電圧Vcは図4と同様に0.5V(=0.1Ω×5A)の電圧降下を起こす。また、容量値Cが小さいので、時間t1以降では電圧Vcが図9の場合よりも急に低下していく。
その後、制御部19は電圧Vcが10.5Vに至るまで小電流負荷7に電力を供給し続け、時間t2で電圧Vcが10.5Vを下回り、蓄電部13の供給電荷量Qsが、あらかじめ求めた電荷量Qを超えると、制御部19は小電流負荷7への電力供給を停止する。この時も図9と同様に、蓄電部13は最大電流5Aを既定時間である1.5秒間に渡って供給し終わっている上、主電源5は1.5秒以内に小電流負荷7の最低駆動電圧Vmin(10.5V)以上に上昇しているので、時間t2以降は再び主電源5から小電流負荷7に電力が供給される。
また、時間t2で蓄電部13からの電力供給を停止すると、蓄電部13の内部抵抗値Rに応じた電圧上昇が起こる。その結果、電圧Vbと電圧Vcが近接するため、両者の電圧差が蓄電部13を充電できる値には至らない。ゆえに、蓄電部13の充電は時間t2の時点では開始されず、電圧Vcは一定電圧のまま推移する。
その後、時間t3で電圧Vbと電圧Vcの電圧差が蓄電部13を充電できる値以上になると、制御部19は主電源5の電力を充放電回路9により蓄電部13に充電する。この時も時間t2と同様に電圧上昇が発生し、その後、主電源5の電圧Vbの変化に対応して蓄電部13の電圧Vcが上昇し、充電が行われる。この際、充放電回路9は定電流で充電するように制御するものの、主電源5の電圧Vbが大電流負荷3の消費電流特性に応じて階段状に変化するので、蓄電部13の電圧Vcも電圧Vbの変化に追従する。そのため、制御部19は前記した充電電流Iが一定でない場合の方法で容量値Cと内部抵抗値Rを求めて更新する。この場合、蓄電部13は劣化限界に至っているので、新しく求めた容量値C、または内部抵抗値Rが劣化限界値を下回る可能性が高いと想定される。このような蓄電部13のタイムリーな劣化検知は蓄電部13の充電毎に容量値Cと内部抵抗値Rを求めることにより実現されており、これにより信頼性が高まる。
時間t3からt7の動作は図4の時間t4からt8の動作とそれぞれ同じであるので説明を省略する。なお、図9と比べると蓄電部13の充電時間が長くなるが、これは蓄電部13の放電後の電圧が図9の場合より低いためである。しかし、蓄電部13の電力を必要以上に消費することはないので、従来に比べると充電時間を短縮でき、図9と同様に低発熱で高信頼性が得られる。
次に、主電源5が劣化限界を超えて劣化している状態であり、かつ小電流負荷7が小電流(例えば4A)を消費している場合について図11により説明する。図11において、横軸、縦軸、細線の意味は図2と同じである。太線については、太実線は蓄電部13が新品の場合、太点線は蓄電部13が劣化限界時の場合をそれぞれ示す。なお、蓄電部13が劣化限界時の場合は後述し、蓄電部13が新品の場合について説明する。
まず、時間t0からt1は図9と同じ動作なので、説明を省略する。
次に、時間t1でエンジン始動を開始すると、主電源5の電圧Vbが小電流負荷7の最低駆動電圧Vmin(10.5V)未満になるので、制御部19は切替スイッチ17を蓄電部13側に切り替えて、蓄電部13から小電流負荷7に電力を供給する。この時、蓄電部13の内部抵抗値Rに応じた電圧降下が起こる。なお、蓄電部13が新品なので内部抵抗値Rが40mΩであり、小電流負荷7への供給電流が4Aであるので、電圧降下は0.16Vになる。
時間t1以降は、小電流負荷7が電力を消費するに従って、蓄電部13の電圧Vc(以下、太実線で示す)は経時的に低下していくが、消費電流が小さいため電圧Vcの低下は図9に比べて緩やかになる。この際、制御部19は蓄電部13の供給電荷量Qsがあらかじめ求めた電荷量Qを超えるまで小電流負荷7に電力を供給するよう制御しているが、消費電流が4Aであるので、電荷量Q=7.5A・sに至るまでの時間は7.5/4≒1.9秒となる。従って、あらかじめ求めた電荷量Qを超えるまで小電流負荷7に電力を供給すると、放電終了電圧Vcx=11.89V(=Vc1−IR−Q/Cで、Vc1=12.8V、I=4A、R=40mΩ、Q=7.5A・s、C=10Fより)になるまでに約1.9秒かかることになる。
そこで、時間t1から1.9秒後の時間をt3とする。なお、図11の時間t2は図9と同様に時間t1から1.5秒後の時間であり、比較のために図示している。時間t3で蓄電部13の供給電荷量Qsがあらかじめ求めた電荷量Qを超えるので、制御部19は小電流負荷7への電力供給を停止する。この時、主電源5は劣化限界を超えて劣化しているので、図11に示したような電圧Vbの特性、すなわち時間t2(時間t1から1.5秒後)までに最低駆動電圧Vmin(10.5V)に至らない特性となる。この場合、図9のように小電流負荷7が最大電流(5A)を消費していると、時間t2で既定の電荷量Qを超えてしまうが、この時点では電圧Vbは10.5Vには至っていない。従って、本来は主電源5の電圧Vbが図11に示すような特性であれば蓄電部13から小電流負荷7への電力供給を禁止しなければならない。しかし、図11の場合では時間t3まで蓄電部13から小電流負荷7へ電力を供給しているので、その間に電圧Vbは10.5Vを超え、時間t3では小電流負荷7を駆動するのに十分高い電圧まで上昇している。ゆえに、図11の場合であれば時間t3で小電流負荷7への電力供給を蓄電部13から主電源5に切り替えても小電流負荷7の駆動を継続できる。
このような動作が可能となる点が本実施の形態3の最大の特長である。すなわち、制御部19は直前のアイドリングストップ後の主電源5における電圧Vbの経時変化特性と、現在の小電流負荷7の消費電流により、蓄電部13から小電流負荷7への電力供給中に電圧Vbが10.5Vを上回るか否かを判断し、もし上回るのであれば、アイドリングストップ可能信号を車両側制御回路に送信する。これにより、主電源5が劣化していてもアイドリングストップを行うことができる。その結果、主電源5を修理するまでの間に少しでも多くのアイドリングストップが可能となるので、車両の低燃費化に貢献できる。なお、本実施の形態3においても後述するように主電源5の劣化を検出しているが、それにより蓄電部13から小電流負荷7への電力供給を禁止する動作は行っていない。ゆえに、主電源5が劣化しても上記動作が可能となる。
時間t3では制御部19が切替スイッチ17を主電源5側に切り替えることにより小電流負荷7への電力供給を停止する。この動作は実施の形態1と同じである。なお、時間t3で小電流負荷7への電力供給を停止することにより、蓄電部13の電圧Vcは内部抵抗値Rに応じて上昇する。また、時間t3では電圧Vbが電圧Vcよりも低いため、主電源5から蓄電部13への充電ができない。ゆえに、時間t3以降では蓄電部13の電圧Vcは一定値となる。
その後、電圧Vbが電圧Vcを上回り、時間t4において両者の電圧差が充電可能な値になれば、主電源5の電力を充放電回路9により蓄電部13に充電する。この際も、制御部19は蓄電部13の容量値Cと内部抵抗値Rを求めて更新する。
時間t4からt8の動作は、図9の時間t3からt7の動作とそれぞれ同じであるので、説明を省略する。
以上のように動作することで、図11の場合であっても蓄電部13の電力を必要以上に消費することはないので、充電時間を短縮でき、図9と同様に低発熱で高信頼性が得られる。
なお、図11では蓄電部13が新品の場合について説明したが、これは劣化限界時であっても同様の効果が得られる。すなわち、小電流負荷7の消費電流が4Aであると、上記したように既定の電荷量Q(=7.5A・s)を供給するためには約1.9秒(≒7.5/4)が必要となる。この時、蓄電部13は劣化限界状態であるので、放電終了電圧は10.5Vとなる。従って、図11の太点線で示したように、放電開始時の時間t1から1.9秒後の時間t3で蓄電部13の電圧Vcが10.5Vになる。この時点では、主電源5の電圧Vbは10.5Vを上回っているので、制御部19は主電源5から小電流負荷7に電力を供給するよう切替スイッチ17を切り替える。その後、図10で説明したように、主電源5の電圧Vbが蓄電部13の電圧Vcを上回り、蓄電部13を充電できる値に至れば、蓄電部13を充電する。それ以降の動作は図10の時間t3以降と同様である。
このように、本実施の形態3によれば、蓄電部13が劣化限界であり、主電源5が劣化している状態であっても、小電流負荷7の消費電流が小さければ、アイドリングストップを行うことができるという特有の効果が得られる。
以上の構成、動作により、蓄電部13から小電流負荷7への供給電荷量Qsが既定の電荷量Qを超えれば、小電流負荷7への電力供給を停止するとともに、主電源5の電力を充放電回路9により蓄電部13に充電することで、蓄電部13の電力を必要以上に消費することがなくなるので、その分、充電が早くなり発熱抑制が可能な高信頼性の蓄電装置を実現できた。
なお、本実施の形態3においても実施の形態1と同様に蓄電部13の充電完了までは、制御部19は蓄電部13から小電流負荷7への電力供給を禁止するとともに、車両側制御回路(図示せず)は蓄電部13から小電流負荷7へ電力を供給しないようにアイドリングストップを禁止している。
また、蓄電部13から小電流負荷7への電力供給を停止した際に、主電源5の電圧Vbが小電流負荷7の最低駆動電圧Vmin(10.5V)未満であれば、実施の形態1と同様に制御部19は主電源5が劣化したことを外部の車両側制御回路に送信している。
これらの動作も同時に行うことにより、実施の形態1と同様にアイドリングストップ機能全体の高信頼性を得ている。
なお、実施の形態1〜3では蓄電部13を6個の蓄電素子の直列接続構成としたが、これに限らず小電流負荷7が要求する電力仕様に応じて蓄電素子の数量を変えたり並列や直並列接続としてもよいし、蓄電部13を単数の蓄電素子で構成してもよい。
また、実施の形態1〜3では蓄電部13に用いる蓄電素子を電気二重層キャパシタで構成したが、これは電気化学キャパシタ等の他の蓄電素子を用いてもよい。
また、実施の形態1〜3では蓄電装置をアイドリングストップ車に適用した場合について述べたが、それに限らず、ハイブリッド車や、電動パワーステアリング、電動ターボ、電気的な油圧制御による車両制動等の各システムにおける車両用補助電源、あるいは一般の非常用バックアップ電源等にも適用可能である。