JP4731804B2 - 燃料電池システムの排出方法 - Google Patents
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Description
この種の燃料電池では、発電に伴ってカソード側で水が生成され、この生成水の一部は固体高分子電解質膜を透過してアノード側にも浸入する。また、カソードに供給された空気中の窒素は微量ながら固体高分子電解質膜をアノード側に透過して水素ガスに混入する。アノード側におけるこれら水分や窒素等の不純物は、燃料電池の発電を不安定にする虞がある。
そこで、この種の燃料電池では、定期的にあるいは燃料電池の発電状況に応じて、水素循環流路から前記不純物を含む水素ガスを排出し、水素ガス中の不純物濃度を低減させている(例えば、特許文献1参照)。従来、不純物を含む水素ガスの排出は、燃料電池の発電状態にかかわらず排出弁の開弁保持時間を一定時間に制御することで行っている。
例えば、不純物を含む水素ガスの排出が不十分だと、燃料電池の発電の安定性を十分に回復することができない。一方、不純物を含む水素ガスの排出が過剰だと、見かけ上の水素消費量が多くなって発電効率の悪化を招く。また、水素循環流路から排出された水素ガスをカソードから排出されるカソードオフガスで希釈するシステムを備えている場合には、希釈後の水素濃度を安定させるのが難しくなる。
このように構成することにより、燃料電池の発電状態の変化により燃料ガス循環流路内の圧力が変化しても、単位時間当たりのアノードオフガス放出量を正確に算出することができ、正確にアノードオフガス放出量を積算することができる。その結果、前記排出弁から実際に排出されるアノードオフガスの量を、発電状態に応じて算出された要求排出量と同じにすることができるので、不純物の排出に必要なアノードオフガスの排出量に過不足が生じなくなり、換言すれば、不純物を含むアノードオフガスの排出量を最適化することができる。
このように構成することにより、燃料電池の運転状態に応じて排出時間を適正に設定することができる。
図1は燃料電池車両に搭載された燃料電池システムの概略構成図である。
燃料電池1は、例えば固体ポリマーイオン交換膜等からなる固体高分子電解質膜2をアノード3とカソード4とで両側から挟み込んで形成されたセルを複数積層して構成されたものであり(図1では単セルのみを示す)、アノード3の反応ガス流路5に燃料ガスとして水素ガスを供給し、カソード4の反応ガス流路6に酸化剤ガスとして酸素を含む空気を供給すると、アノード3で触媒反応により発生した水素イオンが、固体高分子電解質膜2を通過してカソード4まで移動して、カソード4で酸素と電気化学反応を起こして発電し、水が生成される。カソード側で生じた生成水の一部は固体高分子電解質膜2を透過してアノード側に逆拡散するため、アノード側にも生成水が存在する。
アノードオフガス流路18からは、排出弁21を備えたアノードオフガス排出流路22が分岐しており、アノードオフガス排出流路22は希釈装置11に接続されている。この希釈装置11において、アノードオフガス排出流路22から排出されたアノードオフガスが、空気排出流路9から排出された排出空気によって希釈処理されて排出される。
燃料電池1は電子制御ユニット(以下、ECUと略す)30により制御され、そのため、ECU30には、空気流量検出センサ12、カソード入口圧センサ13、空気温センサ14、アノード入口圧センサ23、アノード入口温センサ24、電流計25、大気圧センサ26からの信号が入力され、コンプレッサ7の回転数、流量制御弁27および圧力制御弁10の開度、排出弁21の開閉などの制御が行われる。
そこで、この燃料電池システムでは、一定時間連続運転する毎に、および、燃料電池1の発電状況に応じて、排出弁21を開き、不純物を含むアノードオフガスを燃料ガス循環流路20からアノードオフガス排出流路22を介して希釈装置11に排出することにより(以下、この処理を不純物排出処理と称す)、燃料電池1のアノード3を流通する水素ガス中の不純物濃度を所定値以下となるように管理し、燃料電池1の発電を安定した状態に保持している。
まず、ステップS101において、不純物排出要求があるか否かを判定する。この実施例1では、燃料電池1の発電運転を一定時間連続した時、および、燃料電池1のセル電圧のうち一番低いセル電圧が予め設定された下限電圧を下回った時に、不純物排出要求ありと判定される。
ステップS101における判定結果が「YES」(不純物排出要求あり)である場合は、ステップS102に進み、現在の発電状態に応じた要求排出量VREQを算出する。ここで、要求排出量VREQは、例えば、燃料電池1の発電電流IFCやアノード入口温度THに基づいて算出することができる。この実施例では、発電電流IFCが大きいほど要求排出量VREQを大きくし、アノード入口温度THが低いほど要求排出量VREQを大きくする。
次に、ステップS104に進み、排出弁21の下流のアノードオフガス排出流路22内のガス圧力(以下、排出弁出口圧と称す)POUTとして、大気圧センサ26により検出された大気圧POを設定する。これは、排出弁出口圧POUTが大気圧POとほぼ同一とみなせる場合であり、同一と見なせない場合には、例えば排出弁21の下流のアノードオフガス排出流路22に圧力センサを設けて直接に排出弁出口圧POUTを検出したり、後述する実施例2で説明するように(ステップS203〜S205)圧力制御弁10の下流の排出空気圧力を推定し、この排出空気圧力を排出弁出口圧POUTとみなすなどの方法で、排出弁出口圧POUTを求めるのが好ましい。
排出量ベース値マップは、排出弁21の上流と下流の差圧が大きいほど排出弁21を流通するガス流量が大きくなることから、アノード入口圧PHが大きいほど排出量ベース値DVPGBSが増大し、排出弁出口圧POUTが小さいほど排出量ベース値DVPGBSが増大するように設定する。
次に、ステップS108に進み、積算排出量VPGを算出する。積算排出量VPGの算出方法は、ステップS104〜S109の一連の処理を前回実行したときに算出した積算排出量(すなわち、積算排出量の前回値VPGn−1)に、今回ステップS107の処理を実行して算出した補正後排出量ベース値DVPGを加算して得た値を、積算排出量の今回値VPGnとする(VPGn = VPGn−1 + DVPG)。なお、積算排出量VPGの初期値は0である。
ステップS109における判定結果が「YES」(VREQ>VPG)である場合は、積算排出量VPGが未だ要求排出量VREQに達していないので、ステップS104に戻って、ステップS104〜S109の一連の処理を再度実行し、排出弁21からのアノードオフガスの排出を続行する。
一方、ステップS109における判定結果が「NO」(VREQ≦VPG)である場合は、積算排出量VPGが要求排出量VREQに達したので、ステップS110に進み、排出弁21を閉じて、不純物排出処理を終了する。
実施例1では、実際に排出弁21から排出されるアノードオフガスの積算排出量VPGを算出し、この積算排出量VPGが要求排出量VREQと同じになるように排出弁21の開閉を制御したが、実施例2では、要求排出量VREQに対応する排出時間を算出し、排出弁21を開弁してからの経過時間が前記排出時間に達した時に排出弁21を閉弁することにより、不純物を含むアノードオフガスの排出量の最適化を図っている。
まず、ステップS201において、不純物排出要求があるか否かを判定する。不純物排出要求があるか否かの判定は実施例1の場合と同じである。すなわち、燃料電池1の発電運転を一定時間連続した時、および、燃料電池1のセル電圧のうち一番低いセル電圧が予め設定された下限電圧を下回った時に、不純物排出要求ありと判定される。
ステップS201における判定結果が「YES」(不純物排出要求あり)である場合は、ステップS202に進み、現在の発電状態に応じた基本排出時間TMONBSを算出する。この基本排出時間TMONBSは実施例1における要求排出量VREQに対応するものであり、燃料電池1の発電電流IFCやアノード入口温度THに基づいて算出することができる。この実施例では、発電電流IFCが大きいほど基本排出時間TMONBSを長くし、アノード入口温度THが低いほど基本排出時間TMONBSを長くする。
なお、この実施例2では、排気圧損DPOUTを算出するためのパラメータとして空気流量QAを用いているが、排気圧損DPOUTを算出するためのパラメータとしては、空気流量QA、発電電流IFC、目標発電量IREQのいずれか、あるいはこれらを適宜組み合わせてパラメータとすることができる。さらに、必要に応じて、カソード出口温度TAOあるいは燃料電池1の冷媒温度TWに基づいて補正してもよい。
次に、ステップS205に進み、大気圧センサ26で検出した大気圧POに、排気圧損DPOUTと圧損補正係数KTAOの積を加算することにより、排出弁出口圧POUTを算出する(POUT=DPOUT × KTAO + PO)。
次に、ステップS207に進み、図8に示す排出時間圧力補正係数マップを参照して、アノード入口圧センサ23により検出されたアノード入口圧PHと、排出弁出口圧POUTに基づいて、排出時間圧力補正係数KPONを算出する。
排出時間圧力補正係数マップは、排出弁21の上流と下流の差圧が大きいほど排出弁21を流通するガス流量が大きくなり排出時間が短くて済むことから、アノード入口圧PHが高いほど排出時間圧力補正係数KPONが小さくなり、排出弁出口圧POUTが低いほど排出時間圧力補正係数KPONが小さくなるように設定する。
次に、ステップS209に進み、ステップS202で算出した基本排出時間TMONBSに、ステップS207で算出した排出時間圧力補正係数KPONとステップS208で算出した排出時間温度補正係数KTONを乗じて圧力補正および温度補正を行い、要求排出時間TMONREQを算出する(TMONREQ=TMONBS × KPON × KTON)。
ステップS210における判定結果が「NO」(時間経過していない)である場合は、ステップS210に戻り、排出弁21の開弁状態を保持して、排出弁21からのアノードオフガスの排出を続行する。
一方、ステップS210における判定結果が判定結果が「YES」(時間経過した)である場合は、ステップS211に進み、排出弁21を閉じ、排出タイマーをリセットして、不純物排出処理を終了する。
この発明において、燃料電池の燃料ガスは、純粋な水素ガスに限るものではなく、炭化水素を含む燃料を改質して生成される水素リッチなガスであってもよい。
この発明における燃料電池システムは、前述した各実施例のように燃料電池車両に搭載されるものに限られず、定置式の燃料電池システムであってもよい。
3 アノード
4 カソード
20 燃料ガス循環流路
21 排出弁
Claims (2)
- アノードに燃料ガスが供給されカソードに酸化剤ガスが供給されて発電をする燃料電池と、前記燃料電池のアノードから排出されるアノードオフガスを再び前記アノードに供給するための燃料ガス循環流路と、前記燃料ガス循環流路からアノードオフガスを排出可能にする排出弁とを備えた燃料電池システムの排出方法であって、
前記燃料ガス循環流路からアノードオフガスを排出すべき要求があったときに前記燃料電池の発電状態に応じて前記燃料ガス循環流路から排出すべきアノードオフガスの要求排出量を算出し、
前記燃料ガス循環流路内の圧力と前記排出弁の下流の圧力との圧力差に基づいて単位時間当たりのアノードオフガス放出量を算出し、
このアノードオフガス放出量の積算値が前記要求排出量と同じになるように前記排出弁の開閉を制御することを特徴とする燃料電池システムの排出方法。 - アノードに燃料ガスが供給されカソードに酸化剤ガスが供給されて発電をする燃料電池と、前記燃料電池のアノードから排出されるアノードオフガスを再び前記アノードに供給するための燃料ガス循環流路と、前記燃料ガス循環流路からアノードオフガスを排出可能にする排出弁とを備えた燃料電池システムの排出方法であって、
前記燃料ガス循環流路からアノードオフガスを排出すべき要求があったときに前記燃料電池の発電状態に応じて前記排出弁を開いておくべき排出時間を算出し、さらに、前記燃料ガス循環流路内の圧力と前記排出弁の下流の圧力との圧力差に基づいて該圧力差が大きいほど前記排出時間が短くなるように補正し、補正した排出時間の間だけ開かれるように前記排出弁の開閉を制御することを特徴とする燃料電池システムの排出方法。
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