JP4715402B2 - 単結晶シリコンウェーハの製造方法、単結晶シリコンウェーハ及びウェーハ検査方法 - Google Patents
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CZ法において、石英ルツボから溶融した酸素は結晶中に取り込まれる。この酸素は、凝固直後は十分に固溶しているが、冷却するにつれ固溶度が減少するため、通常、結晶中に過飽和な状態で存在することになる。そしてこの過飽和な酸素は、デバイスの製造工程における熱処理中に酸化物として析出してくる。この酸素析出物あるいはそれに誘起される欠陥は、BMD(Bulk Micro Defect) と呼ばれ、デバイス活性領域に存在する場合はデバイス特性を劣化させる要因となるが、基板内部に存在する場合はデバイス製造工程で混入する金属不純物を捕獲するゲッタリング源として有効に作用する。
このCOPの密度、サイズを低減させる方法として、水素ガスやアルゴンガス雰囲気で1200℃程度の高温熱処理を行う方法があり、簡便にウェーハ表層のCOP密度を低減させることができる方法として知られている。この処理は、前述した酸素外方拡散処理も兼ねており、この手法により得られたシリコンウェーハは、デバイス活性領域であるウェーハ表層に酸素析出物やCOPが不在な高品質ウェーハとなる。
また、この方法では、結晶成長速度を故意に低下させているために、窒素を添加せずに結晶成長を行った場合、OSFリング領域が結晶面内に出現してしまい、このOSFリング領域を境に内外領域で結晶欠陥の種類が異なることになる。このことは、酸素析出物形成挙動がウェーハ面内で異なることを意味する。
従って、前述したような方法により高温で安定なBMD形成に有効なOSF発生核をウェーハ全面に形成させるには、窒素濃度を3×1015 atoms/cm3 程度に設定する必要がある。
窒素の偏析係数から算出した結晶中の窒素濃度とOSF密度は正の相関を持ち、窒素濃度が1×1014 atoms/cm3 を越えるとOSFがウェーハ外周部から高密度に発生し、窒素濃度の増加に伴いその発生領域はウェーハ内部へと広がり、窒素濃度が2.6×1015 atoms/cm3 でウェーハ全面に均一に発生した。
従って、OSFをウェーハ全面に均一に発生することが可能なウェーハは、1200℃程度の高温で熱処理を行った後もBMDがウェーハ面内に均一に形成され、面内で均一なゲッタリング能を持つ優れたウェーハとなる。
また好適には、前記酸化誘起積層欠陥の密度の最大値と最小値の比(最大値/最小値)が4以下である。
また好適には、水素ガス又はアルゴンガスを含む雰囲気で、1100℃〜1250℃で30分以上5時間以下の熱処理を施す工程を有する。
また好適には、酸化誘起積層欠陥のウェーハ面内密度の最大値と最小値の比(最大値/最小値)が4以下である。
また好適には、水素ガス又はアルゴンガスを含む雰囲気で、1100℃〜1250℃で30分以上5時間以下の熱処理が施されて製造される。
ここでは、2つの比較例及び3つの本発明に係る方法としての実施例について、シリコン単結晶の引き上げ育成を含む単結晶シリコンウェーハの製造条件及び製造方法について説明するとともにOSF密度及びBMD密度について評価結果を示し、本発明に係る単結晶シリコンウェーハ、その製造方法及び検査方法の実施形態について説明する。
各比較例及び実施例の条件に従って育成された結晶からウェーハを切り出した後、窒素ガス雰囲気で650℃で30分の酸素ドナー消去熱処理を施し、そのウェーハに対して各々次のような方法によりウェーハ面内のOSF密度及び、BMD密度の評価を行う。
(1)水蒸気雰囲気中で1140℃で2時間の熱処理。
(2)ウェーハ表面に形成された酸化膜をHF:H2O =1:1の液で除去。
(3)HF:HNO3 :CrO3 :Cu(NO3)2 :H2 O:CH3 COOH=1200cc:600cc:250g:40g:1700cc:1200ccの液でウェーハ表面を2μm除去(これにより欠陥が顕在化)。
(4)光学顕微鏡でウェーハ径方向に5mmあるいは10mmピッチでOSF密度を測定。
(1)乾燥酸素雰囲気で1000℃で16時間の熱処理。
(2)ウェーハ表面に形成された酸化膜をHF:H2O =1:1の液で除去。
(3)ウェーハを半分に劈開。
(4)HF:HNO3 :CrO3 :Cu(NO3)2 :H2 O:CH3 COOH=1200cc:600cc:250g:40g:1700cc:1200ccの液で劈開面を2μm除去(これにより欠陥が顕在化)。
(5)光学顕微鏡でウェーハ径方向に5mmあるいは10mmピッチでエッチピット密度を測定。
比較例1として、少なくともインゴットの引き上げ方向における全長の30〜70%の範囲の直胴部の引き上げを、結晶育成中の温度が1370℃〜1310℃であって、結晶面内の温度勾配比Gc/Geが1.00である結晶育成条件にて、8インチp型、抵抗率約10Ωcm、酸素濃度約12×1017 atoms/cm3 の窒素ドープ結晶の育成を行った。窒素ドープ法としては、結晶育成工程のシリコン原料を融かす工程前にシリコン窒化膜が形成されたシリコンウェーハを窒素ドープ材としてシリコン原料と一緒に仕込んだ。幅広い窒素濃度範囲の結晶を得るため、窒素ドープ材の仕込み量を変えた。結晶中の窒素濃度は、窒素の偏析係数から算出し、0.01〜4×1015 atoms/cm3 である。なお、引き上げの際に添加する窒素濃度については、インゴット全長の30〜70%のみならず、直胴部の全域について、設定された濃度を維持するものとする。
結晶育成後、窒素ガス雰囲気で650℃で30分の酸素ドナー消去熱処理を施したウェーハに加工し、前述したような方法により、ウェーハ面内のOSF密度及び、BMD密度の評価を行った。
図1に示すように、この例では、窒素濃度が1.2×1013 atoms/cm3 ではOSFは発生せず、窒素濃度が1.35×1014 atoms/cm3 で周辺部にOSFが発生し、窒素濃度増加とともにウェーハ外周部から内部に向かってOSFが高密度に発生し、2.6×1015 atoms/cm3 以上でウェーハ全面に均一に発生している。
図2に示すように、窒素濃度3.6〜5.5×1014 atoms/cm3 でウェーハ外周部から10〜20mmの位置でBMD密度の低下が起こっているが、アルゴンアニール処理前後でBMD密度分布に差は見られない。また、この窒素濃度範囲でのOSFは、BMD密度が低下している位置で高密度に発生している。
窒素濃度が7.8〜9.4×1014 atoms/cm3 と高くなると、ウェーハ外周部においてBMD密度の低下は起こらず、逆に増加している。また、低窒素濃度の場合と同様に、アルゴンアニール前後でBMD密度分布に差は見られない。この窒素濃度範囲でのOSFは、ウェーハ中心部近傍まで高密度に発生しているが、その分布は不均一である。
また、窒素濃度が2.6×1015 atoms/cm3 になると、BMDはウェーハ面内均一に形成され、かつOSFも均一に発生している。また、低窒素濃度の場合と同様に、アルゴンアニール前後でBMD密度分布に差は見られない。
表1に示すように、アルゴンアニール後のBMD密度の面内バラツキ(最大値/最小値)は、最大で7倍近くになっている。
従って、BMD密度を面内均一に形成するためには、OSFをウェーハ面内均一に発生させるように窒素濃度を制御する必要があり、また、その濃度は、他の条件をこの比較例1と同様にすると、2.6×1015 atoms/cm3 以上が必要となることになる。
比較例2として、少なくともインゴットの引き上げ方向における全長の30〜70%の範囲の直胴部の引き上げを、結晶育成中の温度が1370℃〜1310℃であって、結晶面内の温度勾配比Gc/Geが0.97である結晶育成条件にて12インチp型、抵抗率約10Ωcm、酸素濃度約14×1017 atoms/cm3 の窒素ドープ結晶の育成を行った。窒素ドープ方法は、比較例1と同様の方法により行った。引き上げの際に添加する窒素濃度は直胴部の全域について各々設定された濃度を維持することは比較例1と同様である。
結晶育成後、窒素ガス雰囲気で650℃で30分の酸素ドナー消去熱処理を施したウェーハに加工し、前述したような方法によりウェーハ面内のOSF密度を評価した。
また、アルゴンガス雰囲気で1200℃で1時間の熱処理を行ったサンプルウェーハ面内のBMD密度を、前述したような方法により評価した。
図4に、アルゴンガス雰囲気で熱処理を行う前後のサンプルのBMD密度分布を示す。面内分布はOSF密度分布の不均一を反映して、不均一であった。
アルゴンアニール後のBMD密度の面内ばらつき(最大値/最小値)を表2に示す。表2に示すように、アルゴンアニール後のBMD密度の面内ばらつき(最大値/最小値)は、最大で16倍になっている。
比較例1として前述したように、結晶面内の温度勾配比Gc/Geが1.00である結晶育成条件の場合、ウェーハ面内のBMD密度分布を均一化させるには、窒素濃度が2.6×1015 atoms/cm3 以上必要であるが、シリコン結晶中の窒素の固溶限界は、5×1015 atoms/cm3 程度であり、これ以上の濃度ではもはや単結晶として育成することができない。
そこで、低窒素濃度でもOSFをウェーハ全面に発生させるために、結晶育成中のウェーハ面内の温度勾配分布が比較例と異なる結晶育成条件を用いる。具体的には、本発明に係る実施例1として、結晶中心部の温度勾配Gcと結晶外周部の温度勾配Geとの比Gc/Geが1.23である条件にて結晶を育成した。
これにより、結晶面内の温度勾配比によっては、窒素をドープすること無くほぼウェーハ全面にOSFを発生させることが可能であり、ウェーハ全面にOSFを発生させるには僅かな窒素ドープ量で可能であることが推測される。
実施例2として、少なくともインゴットの引き上げ方向における全長の30〜70%の範囲の直胴部の引き上げを、結晶育成中の温度が1370℃〜1310℃であって、結晶面内の温度勾配比Gc/Ge=1.10,1.14,1.25である結晶条件にて12インチp型、抵抗率約10Ωcm、酸素濃度約14×1017 atoms/cm3 の窒素ドープ結晶の育成を行い、OSF密度とアルゴンガス雰囲気で1200℃で1時間の熱処理を行った後のBMD密度分布を、各々前述したような方法により評価した。
実施例3として、少なくともインゴットの引き上げ方向における全長の30〜70%の範囲の直胴部の引き上げを、結晶育成中の温度が1370℃〜1310℃であって、結晶面内の温度勾配比Gc/Ge=1.28である結晶育成条件にて12インチp型、抵抗率約10Ωcm、酸素濃度約14×1017 atoms/cm3 の窒素ドープ結晶の育成を行った。そして、OSF密度と、アルゴンガス雰囲気で1200℃で1時間の熱処理を行った後のBMD密度分布とを評価した。
Claims (3)
- チョクラルスキー法によりシリコン単結晶を引き上げ育成する工程を有するシリコン単結晶ウェーハの製造方法であって、
インゴットの引き上げ方向における直胴部の全長の30〜70%の範囲の引き上げ育成を行う際に、結晶育成中の温度が1370℃〜1310℃であって、結晶成長軸方向の温度勾配値の比Gc/Ge(但し、Gc:結晶中心部の平均温度勾配、Ge:結晶外周部の平均温度勾配)を1.14以上1.28以下の範囲とし、窒素を0.8×1014 atoms/cm3 以上5×1015 atoms/cm3 以下の範囲で添加して引き上げ育成を行うことを特徴とする単結晶シリコンウェーハの製造方法。 - 高温酸化熱処理を施した場合における酸化誘起積層欠陥の密度の最大値と最小値の比(最大値/最小値)が4以下であることを特徴とする請求項1に記載の単結晶シリコンウェーハの製造方法。
- 水素ガス又はアルゴンガスを含む雰囲気で、1100℃〜1250℃で30分以上5時間以下の熱処理を施す工程を有することを特徴とする請求項1または2に記載の単結晶シリコンウェーハの製造方法。
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