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JP4715402B2 - 単結晶シリコンウェーハの製造方法、単結晶シリコンウェーハ及びウェーハ検査方法 - Google Patents

単結晶シリコンウェーハの製造方法、単結晶シリコンウェーハ及びウェーハ検査方法 Download PDF

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JP4715402B2 JP2005256193A JP2005256193A JP4715402B2 JP 4715402 B2 JP4715402 B2 JP 4715402B2 JP 2005256193 A JP2005256193 A JP 2005256193A JP 2005256193 A JP2005256193 A JP 2005256193A JP 4715402 B2 JP4715402 B2 JP 4715402B2
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Description

本発明は、半導体デバイスの製造に供される単結晶シリコンウェーハの製造方法、その単結晶シリコンウェーハ、及びそのようなウェーハを製造するためのウェーハ検査方法に関する。
半導体デバイスに用いられるシリコン半導体ウェーハは、主にチョクラルスキー法(CZ法)により引き上げ育成されたシリコン単結晶から製造されている。CZ法は、石英ルツボ内の溶融したシリコンに種結晶を浸けて引き上げ、単結晶を成長させるものである。
CZ法において、石英ルツボから溶融した酸素は結晶中に取り込まれる。この酸素は、凝固直後は十分に固溶しているが、冷却するにつれ固溶度が減少するため、通常、結晶中に過飽和な状態で存在することになる。そしてこの過飽和な酸素は、デバイスの製造工程における熱処理中に酸化物として析出してくる。この酸素析出物あるいはそれに誘起される欠陥は、BMD(Bulk Micro Defect) と呼ばれ、デバイス活性領域に存在する場合はデバイス特性を劣化させる要因となるが、基板内部に存在する場合はデバイス製造工程で混入する金属不純物を捕獲するゲッタリング源として有効に作用する。
この酸素析出物を有効に活用するために、従来より、DZ−IG(Denuded Zone-Intrinsic Gettering)処理が行われている。この処理においては、まず、窒素ガス、酸素ガス若しくはこれらの混合ガス雰囲気で、ウェーハに1150℃程度で数時間の高温熱処理を施す。これによりウェーハ表層の酸素が外方拡散され、ウェーハ表層に存在する酸素の濃度が低下し、ウェーハ表層に、酸素析出物やそれに誘起される欠陥が存在しないディニューディッド層(Denuded Zone;DZ層) が形成される。その後、さらに500〜900℃で数時間の熱処理を施すことで、ウェーハ内部に酸素析出核が形成される。そして、デバイス工程で熱処理を受けることにより酸素析出核が酸素析出物として成長し、ゲッタリング層が形成される。このような処理を行うことにより、ウェーハ表層のデバイス活性領域は無欠陥の一方で、ウェーハ内部には汚染物をデバイス活性領域から除去する吸収層が存在する高品質なウェーハの形成が可能となる。
また、CZ法により製造されるシリコン単結晶には、前述した酸素析出物のような熱処理誘起欠陥とは別に、結晶育成時に形成されるCOP(Crystal Originated Particle)と呼ばれるサイズが0.1μm程度のGrown-in 欠陥が10〜10cm−3程度存在する。この欠陥は前述した手法では除去することができず、そのままでは半導体デバイスの特性を悪化させる要因となる。
このCOPの密度、サイズを低減させる方法として、水素ガスやアルゴンガス雰囲気で1200℃程度の高温熱処理を行う方法があり、簡便にウェーハ表層のCOP密度を低減させることができる方法として知られている。この処理は、前述した酸素外方拡散処理も兼ねており、この手法により得られたシリコンウェーハは、デバイス活性領域であるウェーハ表層に酸素析出物やCOPが不在な高品質ウェーハとなる。
この方法によりウェーハ表層域のCOP密度を効率良く低減するために、結晶育成時に冷却速度を速くすること、又は、結晶育成時に窒素を添加することが提案されている(特許文献1参照)。これによれば、結晶育成中の1100℃〜850℃の温度範囲での冷却中の単結晶の保持時間を80分未満にすること、あるいは、窒素を少なくとも1×1014 atoms/cm添加することにより、結晶育成時に形成されるCOPの密度は増大するがCOPのサイズを小さくすることができ、熱処理により欠陥が消滅し易くすることができる。
ところで、このように結晶育成時に窒素を添加することの利点及び欠点として、高温熱処理でも成長し得る酸素析出核の形成、及び、酸化誘起積層欠陥(Oxidation induced stacking fault;以下、OSF)の発生等が報告されている(非特許文献1参照)。酸素析出物のウェーハ面内分布については記載されていないが、OSFの発生は窒素濃度に強く依存しており、直径200mmの結晶に対して、窒素を5×1014 atoms/cm添加した場合はOSFの発生領域は外周〜50mm程度の範囲までなのに対して、窒素を3×1015 atoms/cm添加した場合はウェーハのほぼ全面にOSFが発生しており、窒素濃度によってウェーハ面内の均一性が異なることを示している。
このOSFの発生核は高温でも安定で、エピタキシャルウェーハの酸素析出を促進させる手段として用いることも提案されている(特許文献2参照)。エピタキシャル成長後も安定な酸素析出核は、当然、水素ガス又はアルゴンガスを含む雰囲気で1200℃程度の熱処理を行っても存在し得ることが十分に考えられる。従って、OSFをウェーハ全面に発生させることが可能であれば、ウェーハ全面にわたって安定な酸素析出物を形成させることが可能となるが、その際の窒素濃度は3×1015 atoms/cm程度必要とされる(非特許文献1参照)。
また、OSFをウェーハ全面に発生させる結晶育成方法も提案されている(特許文献3参照)。この方法は、育成された結晶の最大外径をDmax 、最小外径をDmin とした時、(Dmax −Dmin )/Dmin ×100〔%〕で表される結晶変形率が1.5〜2.0%となる速度を最大引き上げ速度とし、この最大引き上げ速度の0.4〜0.8倍の引き上げ速度で育成する方法である。この方法によれば、窒素濃度が1×1012 atoms/cmでOSF発生領域の拡張が現れてきて、1×1014 atoms/cm以上で望ましいとされている
特開平10−98047号公報 特開平11−189493号公報 特開2000−272997号公報 第52回日本結晶成長学会、バルク成長分科会資料、"Nitrogen and Carbon Effect on the formation of Grown-in Defects and Oxygen Precipitation Behavior"
しかしながら、前述したOSFをウェーハ全面に発生させる結晶育成方法においては、実際にウェーハ全面にOSFが発生した窒素濃度については明記されておらず、通常の引き上げ速度と比較して窒素濃度の低減化が図られたに過ぎず、非特許文献1に開示されている方法と比較して窒素濃度が低減したか否かについては定かでない。
また、この方法では、結晶成長速度を故意に低下させているために、窒素を添加せずに結晶成長を行った場合、OSFリング領域が結晶面内に出現してしまい、このOSFリング領域を境に内外領域で結晶欠陥の種類が異なることになる。このことは、酸素析出物形成挙動がウェーハ面内で異なることを意味する。
また、前述した窒素を添加する方法においても、十分な析出均一性を得るのに必要な、OSF面内均一性・窒素濃度・結晶面内温度分布などが開示されていない。
従って、前述したような方法により高温で安定なBMD形成に有効なOSF発生核をウェーハ全面に形成させるには、窒素濃度を3×1015 atoms/cm程度に設定する必要がある。
また、シリコン融液から窒素を添加する場合、偏析現象によって結晶の長さ方向で窒素濃度が変化してしまい、結晶全域にわたり、同じ窒素濃度で結晶育成を行うことはできない。また、シリコン中の窒素の固溶限界は5×1015 atoms/cm程度であり、結晶トップ部で窒素濃度を3×1015 atoms/cmに設定し結晶育成を行うと、窒素を添加しない場合と比較し、育成可能な結晶長が極端に短くなり、生産性が大幅に低下する。
結晶育成時の結晶成長軸方向の温度勾配を制御することにより窒素無添加でも全面OSF領域が得られ、この領域を用いればBMDの面内均一化が容易であることも開示されているが(特許文献4参照)、具体的な温度勾配の制御範囲や引き上げ速度範囲は開示されておらず、窒素濃度範囲も1×1010〜5×1015 atoms/ccと広く、生産性を低下させることなく全面OSF領域が得られる範囲は明らかでない。同様に、OSFとBMDが混在する領域で覆われたウェーハを用いることが提案されているが(特許文献5参照)、やはり生産性を低下させることなく実現する方法は開示されていない。
特開2001−139396号公報 特開2003−59932号公報
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、生産性を低下させること無く、BMD密度分布の面内不均一性を解消しウェーハ面内で均一なゲッタリング能を有する単結晶シリコンウェーハを製造する単結晶シリコンウェーハの製造方法、そのような単結晶シリコンウェーハ、及びそのようなウェーハを製造するためのウェーハ検査方法を提供することにある。
前記課題を解決するために、本願発明者は結晶育成条件について種々検討を行った。その結果、結晶育成時の結晶成長軸方向の温度勾配を制御することにより、生産性を低下させること無く、1×1015 atoms/cm以下の低窒素濃度であってもウェーハ全面にOSFを発生させる方法を見出した。このOSF核は、高温で安定な酸素析出核と同様の意味を持ち、水素ガスあるいはアルゴンガス雰囲気中で、1200℃程度の温度範囲で熱処理を行った後も安定に存在できるものである。
結晶育成工程において、シリコン原料を融かす前に、シリコン窒化膜が形成されたシリコンウェーハを窒素ドープ材として添加し育成した結晶は、偏析現象により結晶全長にわたり窒素濃度が変化する。シリコン結晶中の窒素の固溶限界は5×1015 atoms/cm程度であり、これ以上の濃度ではもはや単結晶として結晶を育成することができない。
窒素の偏析係数から算出した結晶中の窒素濃度とOSF密度は正の相関を持ち、窒素濃度が1×1014 atoms/cmを越えるとOSFがウェーハ外周部から高密度に発生し、窒素濃度の増加に伴いその発生領域はウェーハ内部へと広がり、窒素濃度が2.6×1015 atoms/cmでウェーハ全面に均一に発生した。
これらの隣り合った結晶部位からウェーハを抜き取り、アルゴンガス雰囲気中で1200℃で1時間の熱処理を行った後、乾燥酸素ガス雰囲気中で1000℃で16時間のBMD成長熱処理を行い、エッチングを施し、BMDを顕在化させ面内の密度分布を調べたところ、窒素濃度が2.6×1015 atoms/cmの部位のみBMD密度が面内で均一になっていた。その他の結晶部位では、すなわち窒素濃度が1×1015 atoms/cm以下では、結晶外周部で密度低下若しくは密度増加が起こり、不均一なOSF分布に依存していた。
従って、OSFをウェーハ全面に均一に発生することが可能なウェーハは、1200℃程度の高温で熱処理を行った後もBMDがウェーハ面内に均一に形成され、面内で均一なゲッタリング能を持つ優れたウェーハとなる。
このことから、さらに鋭意検討を行った結果、結晶育成中の1370℃から1310℃間の結晶成長軸方向の温度勾配値が結晶中心部をGc、結晶外周部をGeとした時、Gc/Ge=1.23になるように設計された結晶育成炉の場合、窒素をドープしなくてもウェーハ面内のほぼ全面にOSFを発生させることが可能であることを見出した。そして、このようなGc/Geの最適化によって、僅かな窒素濃度でOSFをウェーハ全面に発生させることが可能になることを見出した。
すなわち本発明に係る単結晶シリコンウェーハの製造方法は、チョクラルスキー法によりシリコン単結晶を引き上げ育成する工程を有するシリコン単結晶ウェーハの製造方法であって、高温酸化熱処理を施した場合に酸化誘起積層欠陥がウェーハ全面に発生するように、結晶育成中の温度が1370℃〜1310℃の時の結晶成長軸方向の温度勾配値の比Gc/Ge(但し、Gc:結晶中心部の平均温度勾配、Ge:結晶外周部の平均温度勾配)、及び、窒素濃度に応じた引き上げ速度で引き上げ育成を行うことを特徴とする。
また、本発明に係る単結晶シリコンウェーハの製造方法は、チョクラルスキー法によりシリコン単結晶を引き上げ育成する工程を有するシリコン単結晶ウェーハの製造方法であって、インゴットの引き上げ方向における直胴部の全長の30〜70%の範囲の引き上げ育成を行う際に、結晶育成中の温度が1370℃〜1310℃であって、結晶成長軸方向の温度勾配値の比Gc/Ge(但し、Gc:結晶中心部の平均温度勾配、Ge:結晶外周部の平均温度勾配)を1.14以上1.28以下の範囲とし、窒素を0.8×1014 atoms/cm以上5×1015 atoms/cm以下の範囲で添加して引き上げ育成を行うことを特徴とする。
好適には、前記引き上げ育成は、高温酸化熱処理を施した場合に酸化誘起積層欠陥がウェーハ全面に発生するように、窒素濃度に応じた引き上げ速度で行う。
また好適には、前記酸化誘起積層欠陥の密度の最大値と最小値の比(最大値/最小値)が4以下である。
また好適には、水素ガス又はアルゴンガスを含む雰囲気で、1100℃〜1250℃で30分以上5時間以下の熱処理を施す工程を有する。
また、本発明に係る単結晶シリコンウェーハは、チョクラルスキー法により引き上げ育成されて製造されるシリコン単結晶ウェーハであって、高温酸化熱処理を施した場合に酸化誘起積層欠陥がウェーハ全面に発生するように、結晶育成中の温度が1370℃〜1310℃の時の結晶成長軸方向の温度勾配値の比Gc/Ge(但し、Gc:結晶中心部の平均温度勾配、Ge:結晶外周部の平均温度勾配)、及び、窒素濃度に応じた引き上げ速度で引き上げ育成されたことを特徴とする。
また、本発明に係る単結晶シリコンウェーハは、チョクラルスキー法により引き上げ育成されて製造されるシリコン単結晶ウェーハであって、インゴットの引き上げ方向における直胴部の全長の30〜70%の範囲の引き上げ育成を行う際に、結晶育成中の温度が1370℃〜1310℃であって、結晶成長軸方向の温度勾配値の比Gc/Ge(但し、Gc:結晶中心部の平均温度勾配、Ge:結晶外周部の平均温度勾配)を1.14以上1.28以下の範囲とし、窒素を0.8×1014 atoms/cm以上5×1015 atoms/cm以下の範囲で添加して引き上げ育成されたことを特徴とする。
好適には、酸素析出評価熱処理を施した時に形成されるウェーハ面内の平均BMD密度が、1×10個/cm以上5×10個/cm以下、ウェーハ径方向におけるBMDの密度の最大値/最小値の比が3以下である。
また好適には、酸化誘起積層欠陥のウェーハ面内密度の最大値と最小値の比(最大値/最小値)が4以下である。
また好適には、水素ガス又はアルゴンガスを含む雰囲気で、1100℃〜1250℃で30分以上5時間以下の熱処理が施されて製造される。
また、本発明に係るウェーハ検査方法は、チョクラルスキー法により引き上げ育成され高温酸化熱処理を施して製造されるシリコン単結晶ウェーハのBMD分布の良否を検査する方法であって、酸化誘起積層欠陥のウェーハ面内密度の分布を測定し、予め求められたBMD分布とOSF分布との関係により決定された良否範囲に前記測定されたOSF分布が属するか否かを判定し、その良否をBMD分布の良否と推定することを特徴とする。
本発明によれば、生産性を低下させること無く、BMD密度分布の面内不均一性を解消しウェーハ面内で均一なゲッタリング能を有する単結晶シリコンウェーハを製造する単結晶シリコンウェーハの製造方法、そのような単結晶シリコンウェーハ、及びそのようなウェーハを製造するためのウェーハ検査方法を提供することができる。
本発明の実施形態について、図1〜図10を参照して説明する。
ここでは、2つの比較例及び3つの本発明に係る方法としての実施例について、シリコン単結晶の引き上げ育成を含む単結晶シリコンウェーハの製造条件及び製造方法について説明するとともにOSF密度及びBMD密度について評価結果を示し、本発明に係る単結晶シリコンウェーハ、その製造方法及び検査方法の実施形態について説明する。
まず最初に、各例に共通的に適用するOSF密度及びBMD密度の評価方法について説明する。
各比較例及び実施例の条件に従って育成された結晶からウェーハを切り出した後、窒素ガス雰囲気で650℃で30分の酸素ドナー消去熱処理を施し、そのウェーハに対して各々次のような方法によりウェーハ面内のOSF密度及び、BMD密度の評価を行う。
OSF密度評価方法
(1)水蒸気雰囲気中で1140℃で2時間の熱処理。
(2)ウェーハ表面に形成された酸化膜をHF:H2O =1:1の液で除去。
(3)HF:HNO3 :CrO3 :Cu(NO3)2 :H2 O:CH3 COOH=1200cc:600cc:250g:40g:1700cc:1200ccの液でウェーハ表面を2μm除去(これにより欠陥が顕在化)。
(4)光学顕微鏡でウェーハ径方向に5mmあるいは10mmピッチでOSF密度を測定。
BMD密度評価方法
(1)乾燥酸素雰囲気で1000℃で16時間の熱処理。
(2)ウェーハ表面に形成された酸化膜をHF:H2O =1:1の液で除去。
(3)ウェーハを半分に劈開。
(4)HF:HNO3 :CrO3 :Cu(NO3)2 :H2 O:CH3 COOH=1200cc:600cc:250g:40g:1700cc:1200ccの液で劈開面を2μm除去(これにより欠陥が顕在化)。
(5)光学顕微鏡でウェーハ径方向に5mmあるいは10mmピッチでエッチピット密度を測定。
以下、比較例1及び比較例2、及び、実施例1〜実施例3について、単結晶シリコンウェーハの製造方法とその評価結果を示す。
比較例1
比較例1として、少なくともインゴットの引き上げ方向における全長の30〜70%の範囲の直胴部の引き上げを、結晶育成中の温度が1370℃〜1310℃であって、結晶面内の温度勾配比Gc/Geが1.00である結晶育成条件にて、8インチp型、抵抗率約10Ωcm、酸素濃度約12×1017 atoms/cmの窒素ドープ結晶の育成を行った。窒素ドープ法としては、結晶育成工程のシリコン原料を融かす工程前にシリコン窒化膜が形成されたシリコンウェーハを窒素ドープ材としてシリコン原料と一緒に仕込んだ。幅広い窒素濃度範囲の結晶を得るため、窒素ドープ材の仕込み量を変えた。結晶中の窒素濃度は、窒素の偏析係数から算出し、0.01〜4×1015 atoms/cmである。なお、引き上げの際に添加する窒素濃度については、インゴット全長の30〜70%のみならず、直胴部の全域について、設定された濃度を維持するものとする。
結晶育成後、窒素ガス雰囲気で650℃で30分の酸素ドナー消去熱処理を施したウェーハに加工し、前述したような方法により、ウェーハ面内のOSF密度及び、BMD密度の評価を行った。
図1に、アルゴンガス雰囲気で熱処理を行う前の比較例1のサンプルのOSF密度分布を示す。
図1に示すように、この例では、窒素濃度が1.2×1013 atoms/cmではOSFは発生せず、窒素濃度が1.35×1014 atoms/cmで周辺部にOSFが発生し、窒素濃度増加とともにウェーハ外周部から内部に向かってOSFが高密度に発生し、2.6×1015 atoms/cm以上でウェーハ全面に均一に発生している。
図2に、アルゴンガス雰囲気で熱処理を行う前後の比較例1のサンプルのBMD密度分布を示す。
図2に示すように、窒素濃度3.6〜5.5×1014 atoms/cmでウェーハ外周部から10〜20mmの位置でBMD密度の低下が起こっているが、アルゴンアニール処理前後でBMD密度分布に差は見られない。また、この窒素濃度範囲でのOSFは、BMD密度が低下している位置で高密度に発生している。
窒素濃度が7.8〜9.4×1014 atoms/cmと高くなると、ウェーハ外周部においてBMD密度の低下は起こらず、逆に増加している。また、低窒素濃度の場合と同様に、アルゴンアニール前後でBMD密度分布に差は見られない。この窒素濃度範囲でのOSFは、ウェーハ中心部近傍まで高密度に発生しているが、その分布は不均一である。
また、窒素濃度が2.6×1015 atoms/cmになると、BMDはウェーハ面内均一に形成され、かつOSFも均一に発生している。また、低窒素濃度の場合と同様に、アルゴンアニール前後でBMD密度分布に差は見られない。
窒素濃度ごとのアルゴンアニール後のBMD密度の面内バラツキ(最大値/最小値)を表1に示す。
表1に示すように、アルゴンアニール後のBMD密度の面内バラツキ(最大値/最小値)は、最大で7倍近くになっている。
Figure 0004715402
このような比較例1の評価結果から、OSFは窒素濃度に依存して結晶外周部から発生すること、及び、OSF発生核は高温でも安定で、1200℃で1時間程度のアルゴンアニール処理では消滅すること無く安定に存在し、アルゴンアニール前後でBMD密度分布が大きく変わることは無いことが判る。
従って、BMD密度を面内均一に形成するためには、OSFをウェーハ面内均一に発生させるように窒素濃度を制御する必要があり、また、その濃度は、他の条件をこの比較例1と同様にすると、2.6×1015 atoms/cm以上が必要となることになる。
比較例2
比較例2として、少なくともインゴットの引き上げ方向における全長の30〜70%の範囲の直胴部の引き上げを、結晶育成中の温度が1370℃〜1310℃であって、結晶面内の温度勾配比Gc/Geが0.97である結晶育成条件にて12インチp型、抵抗率約10Ωcm、酸素濃度約14×1017 atoms/cmの窒素ドープ結晶の育成を行った。窒素ドープ方法は、比較例1と同様の方法により行った。引き上げの際に添加する窒素濃度は直胴部の全域について各々設定された濃度を維持することは比較例1と同様である。
結晶育成後、窒素ガス雰囲気で650℃で30分の酸素ドナー消去熱処理を施したウェーハに加工し、前述したような方法によりウェーハ面内のOSF密度を評価した。
また、アルゴンガス雰囲気で1200℃で1時間の熱処理を行ったサンプルウェーハ面内のBMD密度を、前述したような方法により評価した。
図3に、アルゴンガス雰囲気で熱処理を行う前のサンプルのOSF密度分布を示す。ウェーハ外周部から内部に向かって高密度に発生するも、その分布は不均一であった。
図4に、アルゴンガス雰囲気で熱処理を行う前後のサンプルのBMD密度分布を示す。面内分布はOSF密度分布の不均一を反映して、不均一であった。
アルゴンアニール後のBMD密度の面内ばらつき(最大値/最小値)を表2に示す。表2に示すように、アルゴンアニール後のBMD密度の面内ばらつき(最大値/最小値)は、最大で16倍になっている。
Figure 0004715402
実施例1
比較例1として前述したように、結晶面内の温度勾配比Gc/Geが1.00である結晶育成条件の場合、ウェーハ面内のBMD密度分布を均一化させるには、窒素濃度が2.6×1015 atoms/cm以上必要であるが、シリコン結晶中の窒素の固溶限界は、5×1015 atoms/cm程度であり、これ以上の濃度ではもはや単結晶として育成することができない。
そこで、低窒素濃度でもOSFをウェーハ全面に発生させるために、結晶育成中のウェーハ面内の温度勾配分布が比較例と異なる結晶育成条件を用いる。具体的には、本発明に係る実施例1として、結晶中心部の温度勾配Gcと結晶外周部の温度勾配Geとの比Gc/Geが1.23である条件にて結晶を育成した。
育成された結晶を縦割り加工し、乾燥酸素雰囲気中で800℃で4時間、その後1000℃で16時間の熱処理を行った後、XRT写真にて観察した。その結果、ほぼウェーハ全面にOSF発生可能領域が観察された。
これにより、結晶面内の温度勾配比によっては、窒素をドープすること無くほぼウェーハ全面にOSFを発生させることが可能であり、ウェーハ全面にOSFを発生させるには僅かな窒素ドープ量で可能であることが推測される。
実施例2
実施例2として、少なくともインゴットの引き上げ方向における全長の30〜70%の範囲の直胴部の引き上げを、結晶育成中の温度が1370℃〜1310℃であって、結晶面内の温度勾配比Gc/Ge=1.10,1.14,1.25である結晶条件にて12インチp型、抵抗率約10Ωcm、酸素濃度約14×1017 atoms/cmの窒素ドープ結晶の育成を行い、OSF密度とアルゴンガス雰囲気で1200℃で1時間の熱処理を行った後のBMD密度分布を、各々前述したような方法により評価した。
図示をしないが、温度勾配比Gc/Ge=1.10では、比較例(Gc/Ge=1.00)とほぼ同じで、窒素濃度増加とともにウェーハ外周部からOSFが発生し、約2×1015 atoms/cmでウェーハ全面にOSFが発生している。
Gc/Ge=1.14では、図5に示すように、窒素濃度が0.79×1014 atoms/cm以上でウェーハ全面にOSFが発生した。すなわち、Gc/Ge=1.14の場合、窒素を0.8×1014 atoms/cm以上ドープすることによりウェーハ全面均一にOSFを発生させることが可能であり、その面内バラツキ(最大値/最小値の比)は、表3に示すように4倍以下となる。
Gc/Ge=1.25では、図6に示すように、評価を行った窒素濃度2.46×1014 atoms/cm以上8.47×1014 atoms/cm以下の範囲のいずれの場合においても、ウェーハ全面にOSFが発生した。また、その面内バラツキ(最大値/最小値の比)は、表3に示すように3倍以下となる。
Figure 0004715402
Gc/Ge=1.14及び1.25の各場合におけるアルゴンアニール後のBMD密度分布を図7及び図8に示す。ウェーハ全面にOSFが発生していないGc/Ge=1.14、窒素濃度が0.74×1014 atoms/cmの場合を除いて、いずれの場合も比較例で見られたウェーハ外周部でのBMD密度の低下や増加は無く、ウェーハ面内のバラツキも、表4に示すように3倍以内である。
Figure 0004715402
実施例3
実施例3として、少なくともインゴットの引き上げ方向における全長の30〜70%の範囲の直胴部の引き上げを、結晶育成中の温度が1370℃〜1310℃であって、結晶面内の温度勾配比Gc/Ge=1.28である結晶育成条件にて12インチp型、抵抗率約10Ωcm、酸素濃度約14×1017 atoms/cmの窒素ドープ結晶の育成を行った。そして、OSF密度と、アルゴンガス雰囲気で1200℃で1時間の熱処理を行った後のBMD密度分布とを評価した。
OSF密度を図9に示す。図9に示すように、評価を行った窒素濃度が0.70〜1.48×1014 atoms/cmのいずれの場合においてもウェーハ全面にOSFが発生している。また、その面内バラツキ(最大値/最小値の比)は、表5に示すように、窒素濃度が0.70×1014 atoms/cmの場合に5倍近い値となっているが、その他の場合は4倍以下となっている。
Figure 0004715402
アルゴンアニール後のBMD密度分布を図10に示す。OSF密度の面内バラツキが5倍近かった窒素濃度が0.70×1014 atoms/cmの場合は、ウェーハ中心部でのBMD密度の増加が見られているが、その他の場合はウェーハ外周部でのBMD密度の低下や増加は無く、ウェーハ面内のばらつきも表6に示すように3倍以内である。
Figure 0004715402
以上説明したように、少なくともインゴットの引き上げ方向における全長の30〜70%の範囲の直胴部の引き上げを、結晶育成中の温度が1370℃〜1310℃であって、結晶育成中の1370℃〜1310℃の間の結晶成長軸方向の温度勾配値を、結晶中心部をGc、結晶外周部をGeとした時、その比Gc/Geが、1.14≦Gc/Ge≦1.28の結晶育成条件においては、窒素濃度が0.8×1014 atoms/cmであっても、ウェーハ全面にOSFを発生することができ、1200℃程度の高温で熱処理を行った後も、高密度にBMDをウェーハ面内均一に形成することができる。その結果、ウェーハ面内で均一なゲッタリング能を得ることができる。
なお、本実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって本発明を何ら限定するものではない。本実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含み、また任意好適な種々の改変が可能である。
図1は、比較例1としての単結晶シリコン製造方法におけるウェーハ面内OSF密度分布を示す図である。 図2は、比較例1としての単結晶シリコン製造方法におけるアルゴンアニール前後のウェーハ面内BMD密度分布を示す図である。 図3は、比較例2としての単結晶シリコン製造方法におけるウェーハ面内OSF密度分布を示す図である。 図4は、比較例2としての単結晶シリコン製造方法におけるアルゴンアニール後のウェーハ面内BMD密度分布を示す図である。 図5は、本発明の実施例2としての単結晶シリコン製造方法におけるウェーハ面内OSF密度分布を示す図であって、Gc/Ge=1.14の時の分布を示す図である。 図6は、本発明の実施例2としての単結晶シリコン製造方法におけるウェーハ面内OSF密度分布を示す図であって、Gc/Ge=1.25の時の分布を示す図である。 図7は、本発明の実施例2としての単結晶シリコン製造方法におけるアルゴンアニール後のウェーハ面内BMD密度分布を示す図であって、Gc/Ge=1.14の時の分布を示す図である。 図8は、本発明の実施例2としての単結晶シリコン製造方法におけるアルゴンアニール後のウェーハ面内BMD密度分布を示す図であって、Gc/Ge=1.25の時の分布を示す図である。 図9は、本発明の実施例3としての単結晶シリコン製造方法におけるウェーハ面内OSF密度分布を示す図であって、Gc/Ge=1.28の時の分布を示す図である。 図10は、本発明の実施例3としての単結晶シリコン製造方法におけるアルゴンアニール後のウェーハ面内BMD密度分布を示す図であって、Gc/Ge=1.28の時の分布を示す図である。

Claims (3)

  1. チョクラルスキー法によりシリコン単結晶を引き上げ育成する工程を有するシリコン単結晶ウェーハの製造方法であって、
    インゴットの引き上げ方向における直胴部の全長の30〜70%の範囲の引き上げ育成を行う際に、結晶育成中の温度が1370℃〜1310℃であって、結晶成長軸方向の温度勾配値の比Gc/Ge(但し、Gc:結晶中心部の平均温度勾配、Ge:結晶外周部の平均温度勾配)を1.14以上1.28以下の範囲とし、窒素を0.8×1014 atoms/cm以上5×1015 atoms/cm以下の範囲で添加して引き上げ育成を行うことを特徴とする単結晶シリコンウェーハの製造方法。
  2. 高温酸化熱処理を施した場合における酸化誘起積層欠陥の密度の最大値と最小値の比(最大値/最小値)が4以下であることを特徴とする請求項1に記載の単結晶シリコンウェーハの製造方法。
  3. 水素ガス又はアルゴンガスを含む雰囲気で、1100℃〜1250℃で30分以上5時間以下の熱処理を施す工程を有することを特徴とする請求項1または2に記載の単結晶シリコンウェーハの製造方法。
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