電界アシスト方式においてノズル開口部から液体を射出するためには、少なくとも開口部に隆起したインクメニスカスから液滴を形成するエネルギーが必要である。形成された液滴は、静電吸引力により基材に対して飛翔するため、特に微小な液滴に対しては、その着弾精度は従来のピエゾ方式やサーマル方式より優れている。
また、従来のピエゾ方式やサーマル方式ではメニスカスを形成し液滴を飛翔させ基材に着弾させるための全エネルギーをピエゾ素子の変形等による圧力で賄わなければならないのに対して、電界アシスト方式で必要となる発生圧力はメニスカスを形成し液滴を形成するだけのエネルギーだけであり、ピエゾ素子等の圧電アクチュエータからなる圧力発生手段の駆動電圧は従来方式に比べて比較的低電圧で済むという利点がある。
しかし、電界アシスト方式においても、微小な液滴を吐出するためにノズル開口径を小さくしたり、高粘度の液滴を吐出させたりする場合には、ノズル内の粘性抵抗が高くなるため、メニスカスを隆起させ液滴を形成させるためにピエゾ素子の駆動電圧を高くする必要があるため、ノズルを多数有するマルチヘッドに適用する際には消費電力の増大につながり不利である。
そこで、本発明は、電界アシスト方式において高粘度の微小な液滴を低い駆動電圧で飛翔させることのできる液体吐出ヘッド及び液体吐出装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、請求項1に記載の液体吐出ヘッドは液体が供給される液体供給口、前記液体供給口から供給された液体を吐出する吐出口及び前記液体供給口から前記吐出口に液体を供給する液体供給路を有するノズルが設けられたノズルプレートと、
前記液体供給口に連通するとともに前記吐出口から吐出される液体が貯蔵されるキャビティと、
前記キャビティの容積を変化させることにより液体に圧力を発生させる圧力発生手段と、前記ノズル及び前記キャビティ内の液体と基材間に静電電圧を印可して静電吸引力を発生させる静電電圧発生手段と、
を備える液体吐出ヘッドであって、
前記ノズルプレートの体積抵抗率が10 15 Ωm以上であるとともに前記液体供給路の断面の面積は前記液体供給口から前記吐出口に向かって減少していくように形成されていることを特徴とする。
請求項1に記載の発明によれば、ノズルの液体供給口の開口面積を吐出口の開口面積の10倍以上とするとともに液体供給路の断面の面積は液体供給口から吐出口に向かって減少していくように形成することで液体供給路内を通過する液体と液体供給路の側面に生じる抵抗を低減させることができるため液体を吐出するのに必要な駆動電圧を低減することができる。
また、ノズルプレートの体積抵抗率が10 15 Ωm以上とすることにより、メニスカスの先端部の電界強度を液滴が効率よく安定的に吐出する電界強度である3×10 7 V/m(30kV/mm)以上とすることができ、圧力発生手段の駆動電圧をより低電圧化することができる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の液体吐出ヘッドにおいて、前記ノズルは、
前記液体供給口と連通する大径部と、前記大径部の底面に開口された前記吐出口と連通する小径部と、を備えることを特徴とする。
請求項2に記載の発明によれば、ノズルを大径部と小径部からなる二重構造として吐出口付近のノズルの径を小さくすることで液体供給路内を通過する液体と液体供給路の側面に生じる抵抗を低減させることができるため液体を吐出するのに必要な駆動電圧を低減することができる。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の液体吐出ヘッドにおいて、前記小径部の長さが15μm以下であることを特徴とする。
請求項3に記載の発明によれば小径部の長さを15μm以下とすることで液体供給路内を通過する液体と液体供給路の側面に生じる抵抗を低減させることができるため液体を吐出するのに必要な駆動電圧を低減することができる。
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の液体吐出ヘッドにおいて、前記液体供給路の側面は前記液体供給口から前記吐出口に向かってテーパ状に形成されていることを特徴とする。
請求項4に記載の発明によれば、前記液体供給口の側面は前記液体供給口から前記吐出口に向かってテーパ状に形成することで、液体供給路内を通過する液体と液体供給路の側面に生じる抵抗を低減させることができるため液体を吐出するのに必要な駆動電圧を低減することができる。
請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッドにおいて、前記ノズルは前記ノズルプレートの吐出面から突出していないフラットなノズルであることを特徴とする。
請求項5に記載の発明によれば、フラットなノズルを使用する場合であっても、請求項1から請求項4に記載の発明と同様の作用を生じさせることができる。なお、フラットなノズルとはノズル大きく突出していない形状のノズルであり、その突出高さは30μm以下のものを指す。突出量が小さい為、ノズルプレート表面のワイプ時に引っかかったり、破損したりすることもなくワイプ操作ができる利点を持つ。
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の液体吐出ヘッドにおいて、前記ノズルプレートの吐出口が開口された面には撥液層が設けられていることを特徴とする。
請求項6に記載の発明によれば、吐出口に形成された液体のメニスカスの吐出口の周囲に濡れ広がることを防止することができる。
請求項7に記載の発明は、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッドにおいて、前記液体は、導電性溶媒を含有する液体であり、前記ノズルプレートの前記液体の吸収率が0.6%以下であることを特徴とする。
請求項7に記載の発明によれば、液体吐出ヘッドのノズルから吐出される液体は導電性溶媒を含有する液体であり、ノズルプレートは体積抵抗率が1015Ωmである上に液体の吸収率が0.6%以下とすることで、ノズルから安定して液体を吐出することのできる電界強度を得ることができる。
請求項8に記載の発明は、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッドにおいて、前記ノズルプレートの厚みが75μm以上であることを特徴とする。
請求項8に記載の発明によれば、ノズルプレートの厚みが75μm以上とすることにより、メニスカスの先端部の電界強度を液滴が効率よく安定的に吐出する電界強度である3×107V/m以上とすることができ、圧力発生手段の駆動電圧をより低電圧化することができる。
請求項9に記載の発明は、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッドにおいて、前記吐出口の開口径が15μm以下であることを特徴とする。
請求項9に記載の発明によれば、吐出口の開口径を15μm以下とすることにより、メニスカスの先端部の電界強度を液滴が効率よく安定的に吐出する電界強度である3×107V/m以上とすることができ、圧力発生手段の駆動電圧をより低電圧化することができる。
請求項10に記載の液体吐出装置は、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドに対向する対向電極とを備え、前記液体吐出ヘッドと前記対向電極との間に生じる前記静電吸引力と前記ノズル内に生じる圧力とにより前記液体を吐出することを特徴とする。
請求項10に記載の発明によれば、液体吐出装置は、請求項1から請求項9に記載された液体吐出ヘッドのノズル内の液体に対して圧力発生手段により加えられた圧力と、静電電圧印加手段により液体吐出ヘッドと対向電極との間に形成された電界との作用によりノズルの吐出口部分にメニスカスが形成されて液体が液滴化し、液滴が電界により加速されて基材に着弾させることができる。
請求項1に記載の発明によれば、液体供給路内を通過する液体と液体供給路の側面に生じる抵抗を低減させることができるため液体を吐出するのに必要な駆動電圧を低減させても安定して液体の吐出を行うことができる。
また、ノズルプレートの体積抵抗率が10 15 Ωm以上とすることで吐出口に形成されるメニスカスの先端部の電界強度を吐出口から安定して液滴を吐出させることができる電界強度である3×10 7 V/m以上とすることができる。
請求項2に記載の発明によれば、ノズルを大径部と小径部からなる二重構造として吐出口付近のノズルの径を小さくすることで液体供給路内を通過する液体と液体供給路の側面に生じる抵抗を低減させることができるので液体を吐出するのに必要な駆動電圧を低減させても安定して液体の吐出を行うことができる。
請求項3に記載の発明によれば、小径部の長さを15μm以下とすることで液体供給路内を通過する液体と液体供給路の側面に生じる抵抗を低減させることができるので、液体を吐出するのに必要な駆動電圧を低減させても安定して液体の吐出を行うことができる。
請求項4に記載の発明によれば、前記液体供給口の側面は前記液体供給口から前記吐出口に向かってテーパ状に形成することで、液体供給路内を通過する液体と液体供給路の側面に生じる抵抗を低減させることができるので液体を吐出するのに必要な駆動電圧を低減させても安定して液体の吐出を行うことができる。
請求項5に記載の発明によれば、フラットなノズルを使用する場合であっても、請求項1から請求項4に記載の発明と同様の効果を生じさせることができる。
請求項6に記載の発明によれば、吐出口まで供給された液体が吐出口の周囲に漏れ広がることなく吐出口に安定してメニスカスを形成することができる。
請求項7に記載の発明によれば、ノズルプレートの液体吸収率を0.6%以下にすることにより、ノズルプレートが液体から導電性溶媒を吸収して体積抵抗率が低下し、ノズルから安定して液滴を吐出させることのできる電界強度が得られなくなる事態を防止することができる。
請求項8に記載の発明によれば、ノズルプレートの厚みが75μm以上とすることで吐出口に形成されるメニスカスの先端部の電界強度を吐出口から安定して液滴を吐出させることができる電界強度である3×107V/m以上とすることができる。
請求項9に記載の発明によれば、吐出口の開口径を15μm以下とすることで吐出口に形成されるメニスカスの先端部の電界強度を吐出口から安定して液滴を吐出させることができる電界強度である3×107V/m以上とすることができる。
請求項10に記載の発明によれば、ノズルから吐出された液滴は、電界からの静電吸引力の作用で、基材のより近い部分に着弾しようとするため、基材に対する着弾の際の角度等を安定させ、液滴を所定の着弾位置に正確に着弾させることが可能となる。また、前記各請求項に記載の発明と同様に、低電圧の静電電圧でメニスカスが大きく隆起するため、静電電圧印加手段により印加される静電電圧の電圧値を低下させることが可能となり、前記各請求項に記載の発明の効果をより有効に発揮することが可能となる。
以下、本発明に係る液体吐出装置の実施の形態について、図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る液体吐出装置の全体構成を示す断面模式図である。なお、本発明の液体吐出ヘッド2は、いわゆるシリアル方式或いはライン方式等の各種の液体吐出装置に適用可能である。
本実施形態の液体吐出装置1は、インク等の帯電可能な液体Lの液滴Dを吐出する後述するノズル5が形成された液体吐出ヘッド2と、液体吐出ヘッド2のノズル5に対向する対向面を有するとともにその対向面で液滴Dの着弾を受ける基材Kを支持する対向電極3とを備えている。
液体吐出ヘッド2の対向電極3に対向する側には、樹脂製のノズルプレート4が備えられており、複数のノズル5が設けられている。液体吐出ヘッド2は、ノズルプレート4の対向電極3に対向する吐出面6からノズル5が突出されない、或いは前述したようにノズル5が30μm程度しか突出しないフラットな吐出面を有するヘッドとして構成されている。
各ノズル5は、ノズルプレート4に穿孔されて形成されており、後述するキャビティ20から液体を供給される液体供給口9と連通する大径部10と、大径部10の底面に開口されているとともに吐出面6に開口された吐出口11と連通する小径部12との2段構造とされている。本実施形態では、大径部10に設けられた液体供給口9の開口面積が吐出口11の開口面積の10倍以上となるように構成されている。小径部12の長さを15μm以下とすることで、液体を吐出するのに必要な駆動電圧を低減させても安定して液体の吐出を行うことを可能とするため、小径部12の長さは15μm以下とする。
また、ノズル5の小径部12および大径部10は、それぞれ断面円形で液体供給口9と吐出口11を結ぶ液体供給路13の側面は、液体供給路13内を通過する液体と液体供給路の側面に生じる抵抗を低減させるために液体供給口9から吐出口11に向かってテーパ状に、即ち液体供給路13の断面の面積が液体供給口9から吐出口11に向かって減少していくように形成されている。
吐出口11の開口径は、後述するように吐出口11に形成されるメニスカスの先端部の電界強度を吐出口11から安定して液滴を吐出させることができる電界強度である3×107V/m以上とすることができる15μm以下とする。
なお、ノズル5の形状は前記の形状に限定されず、例えば、図2(A)〜(C)に示すフラットなノズルのように、形状が異なる種々のノズル5を用いることが可能である。また、ノズルは図2(D)に示すようなノズルが吐出面6より吐出している突出型のノズルを用いることとしてもよい。この場合も液体供給口9と吐出口11を結ぶ液体供給路13の側面は液体供給口から前記吐出口に向かってテーパ状に形成されている。また、ノズル5は、断面円形状に形成する代わりに、断面多角形状や断面星形状等であってもよい。
ノズルプレート4の吐出面6と反対側の面には、例えばNiP等の導電素材よりなりノズル5内の液体Lを帯電させるための帯電用電極14が層状に設けられている。本実施形態では、帯電用電極14は、ノズル5の大径部10の内周面15まで延設されており、ノズル内の液体Lに接するようになっている。
また、帯電用電極14は、静電吸引力を生じさせる静電電圧を印加する静電電圧印加手段としての静電電圧電源16に接続されており、単一の帯電用電極14がすべてのノズル5内の液体Lに接触しているため、静電電圧電源16から帯電用電極14に静電電圧が印加されると、全ノズル5内の液体Lが同時に帯電され、液体吐出ヘッド2と対向電極3との間、特に液体Lと基材Kとの間に静電吸引力が発生されるようになっている。
帯電用電極14の背後には、ボディ層19が設けられている。ボディ層19の前記各ノズル5の大径部10の開口端に面する部分には、それぞれ開口端にほぼ等しい内径を有する略円筒状の空間が形成されており、各空間は、吐出される液体Lを一時貯蔵するためのキャビティ20とされている。
ボディ層19の背後には、可撓性を有する金属薄板やシリコン等よりなる可撓層21が設けられており、可撓層21により液体吐出ヘッド2が外界と画されている。
なお、ボディ層19の可撓層21との境界部には、キャビティ20に液体Lを供給するための図示しない流路が形成されている。具体的には、ボディ層19としてのシリコンプレートをエッチング加工して共通流路および共通流路とキャビティ20とを結ぶ流路とが設けられており、共通流路には、外部の図示しない液体タンクから液体Lを供給する図示しない供給管が連絡されており、供給管に設けられた図示しない供給ポンプにより或いは液体タンクの配置位置による差圧により流路やキャビティ20、ノズル5等の液体Lに所定の供給圧力が付与されるようになっている。
可撓層21の外面の各キャビティ20に対応する部分には、それぞれ圧力発生手段としての圧電素子アクチュエータであるピエゾ素子22が設けられており、ピエゾ素子22には、素子に駆動電圧を印加して素子を変形させるための駆動電圧電源23が接続されている。ピエゾ素子22は、駆動電圧電源23からの駆動電圧の印加により変形して、ノズル内の液体Lに圧力を生じさせてノズル5の吐出口11に液体Lのメニスカスを形成させるようになっている。なお、圧力発生手段は、本実施形態のような圧電素子アクチュエータのほかに、例えば、静電アクチュエータやサーマル方式等を採用することも可能である。
駆動電圧電源23および帯電用電極14に静電電圧を印加する前記静電電圧電源16は、それぞれ動作制御手段24に接続されており、それぞれ動作制御手段24による制御を受けるようになっている。
動作制御手段24は、本実施形態では、CPU25やROM26、RAM29等が図示しないBUSにより接続されて構成されたコンピュータからなっており、CPU25は、ROM26に格納された電源制御プログラムに基づいて静電電圧電源16および各駆動電圧電源23を駆動させてノズル5の吐出口11から液体Lを吐出させるようになっている。
なお、本実施形態では、液体吐出ヘッド2のノズルプレート4の吐出面6には、吐出口11からの液体Lの滲み出しを抑制するための撥液層30が吐出口11以外の吐出面6全面に設けられている。撥液層30は、例えば、液体Lが水性であれば撥水性を有する材料が用いられ、液体Lが油性であれば撥油性を有する材料が用いられるが、一般に、FEP(四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン)、PTFE(ポリテトラフロロエチレン)、フッ素シロキサン、フルオロアルキルシラン、アモルファスパーフルオロ樹脂等のフッ素樹脂等が用いられることが多く、塗布や蒸着等の方法で吐出面6に成膜されている。なお、撥液層30は、ノズルプレート4の吐出面6に直接成膜してもよいし、撥液層30の密着性を向上させるために中間層を介して成膜することも可能である。
液体吐出ヘッド2の下方には、基材Kを支持する平板状の対向電極3が液体吐出ヘッド2の吐出面6に平行に所定距離離間されて配置されている。対向電極3と液体吐出ヘッド2との離間距離は、0.1〜3.0mm程度の範囲内で適宜設定される。
本実施形態では、対向電極3は接地されており、常時接地電位に維持されている。そのため、前記静電電圧電源16から帯電用電極14に静電電圧が印加されると、ノズル5の吐出口11の液体Lと対向電極3の液体吐出ヘッド2に対向する対向面との間に電界が生じるようになっている。また、帯電した液滴Dが基材Kに着弾すると、対向電極3はその電荷を接地により逃がすようになっている。
なお、対向電極3または液体吐出ヘッド2には、液体吐出ヘッド2と基材Kとを相対的に移動させて位置決めするための図示しない位置決め手段が取り付けられており、これにより液体吐出ヘッド2の各ノズル5から吐出された液滴Dは、基材Kの表面に任意の位置に着弾させることが可能とされている。
液体吐出装置1による吐出を行う液体Lは、例えば、無機液体としては、水、COCl2、HBr、HNO3、H3PO4、H2SO4、SOCl2、SO2Cl2、FSO3Hなどが挙げられる。
また、有機液体としては、メタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、tert−ブタノール、4−メチル−2−ペンタノール、ベンジルアルコール、α−テルピネオール、エチレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールなどのアルコール類;フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾールなどのフェノール類;ジオキサン、フルフラール、エチレングリコールジメチルエーテル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、エピクロロヒドリンなどのエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、2−メチル−4−ペンタノン、アセトフェノンなどのケトン類;ギ酸、酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸などの脂肪酸類;ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸−3−メトキシブチル、酢酸−n−ペンチル、プロピオン酸エチル、乳酸エチル、安息香酸メチル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、炭酸ジエチル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、セロソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート、アセト酢酸エチル、シアノ酢酸メチル、シアノ酢酸エチルなどのエステル類;ニトロメタン、ニトロベンゼン、アセトニトリル、プロピオニトリル、スクシノニトリル、バレロニトリル、ベンゾニトリル、エチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、アニリン、N−メチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、o−トルイジン、p−トルイジン、ピペリジン、ピリジン、α−ピコリン、2,6−ルチジン、キノリン、プロピレンジアミン、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N,N,N',N'−テトラメチル尿素、N−メチルピロリドンなどの含窒素化合物類;ジメチルスルホキシド、スルホランなどの含硫黄化合物類;ベンゼン、p−シメン、ナフタレン、シクロヘキシルベンゼン、シクロヘキセンなどの炭化水素類;1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,1,2−テトラクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、ペンタクロロエタン、1,2−ジクロロエチレン(cis−)、テトラクロロエチレン、2−クロロブタン、1−クロロ−2−メチルプロパン、2−クロロ−2−メチルプロパン、ブロモメタン、トリブロモメタン、1−ブロモプロパンなどのハロゲン化炭化水素類などが挙げられる。また、上記各液体を二種以上混合して用いてもよい。
さらに、高電気伝導率の物質(銀粉等)が多く含まれるような導電性ペーストを液体Lとして使用し、吐出を行う場合には、前述した液体Lに溶解又は分散させる目的物質としては、ノズルで目詰まりを発生するような粗大粒子を除けば、特に制限されない。
PDP、CRT、FEDなどの蛍光体としては、従来より知られているものを特に制限なく用いることができる。例えば、赤色蛍光体として、(Y,Gd)BO3:Eu、YO3:Euなど、緑色蛍光体として、Zn2SiO4:Mn、BaAl12O19:Mn、(Ba,Sr,Mg)O・α−Al2O3:Mnなど、青色蛍光体として、BaMgAl14O23:Eu、BaMgAl10O17:Euなどが挙げられる。
上記の目的物質を記録媒体上に強固に接着させるために、各種バインダーを添加するのが好ましい。用いられるバインダーとしては、例えば、エチルセルロース、メチルセルロース、ニトロセルロース、酢酸セルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース及びその誘導体;アルキッド樹脂;ポリメタクリタクリル酸、ポリメチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート・メタクリル酸共重合体、ラウリルメタクリレート・2−ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体などの(メタ)アクリル樹脂及びその金属塩;ポリN−イソプロピルアクリルアミド、ポリN,N−ジメチルアクリルアミドなどのポリ(メタ)アクリルアミド樹脂;ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体、スチレン・マレイン酸共重合体、スチレン・イソプレン共重合体などのスチレン系樹脂;スチレン・n−ブチルメタクリレート共重合体などのスチレン・アクリル樹脂;飽和、不飽和の各種ポリエステル樹脂;ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどのハロゲン化ポリマー;ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体などのビニル系樹脂;ポリカーボネート樹脂;エポキシ系樹脂;ポリウレタン系樹脂;ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタールなどのポリアセタール樹脂;エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合樹脂などのポリエチレン系樹脂;ベンゾグアナミンなどのアミド樹脂;尿素樹脂;メラミン樹脂;ポリビニルアルコール樹脂及びそのアニオンカチオン変性;ポリビニルピロリドン及びその共重合体;ポリエチレンオキサイド、カルボキシル化ポリエチレンオキサイドなどのアルキレンオキシド単独重合体、共重合体及び架橋体;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコール;ポリエーテルポリオール;SBR、NBRラテックス;デキストリン;アルギン酸ナトリウム;ゼラチン及びその誘導体、カゼイン、トロロアオイ、トラガントガム、プルラン、アラビアゴム、ローカストビーンガム、グアガム、ペクチン、カラギニン、にかわ、アルブミン、各種澱粉類、コーンスターチ、こんにゃく、ふのり、寒天、大豆蛋白などの天然或いは半合成樹脂;テルペン樹脂;ケトン樹脂;ロジン及びロジンエステル;ポリビニルメチルエーテル、ポリエチレンイミン、ポリスチレンスルフォン酸、ポリビニルスルフォン酸などを用いることができる。これらの樹脂は、ホモポリマーとしてだけでなく、相溶する範囲でブレンドして用いてもよい。
液体吐出装置1をパターンニング手段として使用する場合には、代表的なものとしてはディスプレイ用途に使用することができる。具体的には、プラズマディスプレイの蛍光体の形成、プラズマディスプレイのリブの形成、プラズマディスプレイの電極の形成、CRTの蛍光体の形成、FED(フィールドエミッション型ディスプレイ)の蛍光体の形成、FEDのリブの形成、液晶ディスプレイ用カラーフィルター(RGB着色層、ブラックマトリクス層)、液晶ディスプレイ用スペーサー(ブラックマトリクスに対応したパターン、ドットパターン等)などを挙げることができる。
なお、リブとは一般的に障壁を意味し、プラズマディスプレイを例に取ると各色のプラズマ領域を分離するために用いられる。その他の用途としては、マイクロレンズ、半導体用途として磁性体、強誘電体、導電性ペースト(配線、アンテナ)などのパターンニング塗布、グラフィック用途としては、通常印刷、特殊媒体(フィルム、布、鋼板など)への印刷、曲面印刷、各種印刷版の刷版、加工用途としては粘着材、封止材などの本発明を用いた塗布、バイオ、医療用途としては医薬品(微量の成分を複数混合するような)、遺伝子診断用試料等の塗布等に応用することができる。
ここで、本発明の液体吐出ヘッド2における液体Lの吐出原理について本実施形態を用いて説明する。
本実施形態では、静電電圧電源16から帯電用電極14に静電電圧を印加し、ノズル5の吐出口11の液体Lと対向電極3の液体吐出ヘッド2に対向する対向面との間に電界を生じさせる。また、駆動電圧電源23からピエゾ素子22に駆動電圧を印加してピエゾ素子22を変形させ、それにより液体Lに生じた圧力でノズル5の吐出口11に液体Lのメニスカスを形成させる。
本実施形態のように、ノズルプレート4の絶縁性が高くなると、図3にシミュレーションによる等電位線で示すように、ノズルプレート4の内部に、吐出面6に対して略垂直方向に等電位線が並び、ノズル5の小径部12の液体Lや液体Lのメニスカス部分に向かう強い電界が発生する。
特に、図3でメニスカスの先端部では等電位線が密になっていることから分かるように、メニスカス先端部では非常に強い電界集中が生じる。そのため、電界の静電力によってメニスカスが引きちぎられてノズル内の液体Lから分離されて液滴Dとなる。さらに、液滴Dは静電力により加速され、対向電極3に支持された基材Kに引き寄せられて着弾する。その際、液滴Dは、静電力の作用でより近い所に着弾しようとするため、基材Kに対する着弾の際の角度等が安定し正確に行われる。
発明者らが、電極間の電界の電界強度が実用的な値である1.5kV/mmとなるように構成し、各種の絶縁体でノズルプレート4を形成して下記の実験条件に基づいて行った実験では、ノズル5から液滴Dが吐出される場合と吐出されない場合があった。
[実験条件]
ノズルプレート4の吐出面6と対向電極3の対向面との距離:1.0mm
ノズルプレート4の厚さ:125μm
ノズル径:10μm
静電電圧:1.5kV
駆動電圧:20V
この実機による実験で、液滴Dがノズル5から安定に吐出されたすべての場合について、メニスカス先端部の電界強度を求めた。実際には、メニスカス先端部の電界強度を直接測定することが困難であるため、電界シミュレーションソフトである「PHOTO−VOLT」(商品名、株式会社フォトン製)で電流分布解析モードによるシミュレーションにより算出した。その結果、すべての場合においてメニスカス先端部の電界強度は3×107V/m以上であった。
また、前記実験と同様のパラメータを同ソフトに入力したシミュレーションにおいて、ノズルプレート4の厚さを変化させた場合およびノズル径を変化させた場合のメニスカス先端部の電界強度を、図4および図5にそれぞれ示す。この結果から、メニスカス先端部の電界強度は、ノズルプレート4の厚さおよび吐出口11の開口径にも依存し、ノズルプレート4の厚さは75μm以上であって、吐出口11の開口径は15μm以下であることが好ましい。
メニスカス先端部の電界強度がノズルプレート4の厚さに依存する理由としては、ノズルプレート4の厚さがより厚くなることで、ノズル5の吐出口11と帯電用電極14との距離が遠くなり、ノズルプレート4内の等電位線が略垂直方向に並び易くなるためメニスカス先端部への電界集中が生じ易くなることが考えられる。
また、吐出口11の開口径、即ちノズル径が小径になることで、メニスカスの径が小さくなり、より小径となったメニスカス先端部に電界が集中することで電界集中の度合が大きくなる。そのため、メニスカス先端部の電界強度が強くなると考えられる。
なお、図4に示したノズルプレート4の厚さとメニスカス先端部の電界強度との関係および図5に示したノズル径とメニスカス先端部の電界強度との関係は、本実施形態のような小径部12および大径部10よりなる2段構造のノズル5の場合のみならず、1段構造、すなわち、単純なテーパ状のノズルや円筒状のノズル、或いは多段構造のノズルの場合もほぼ同じシミュレーション結果が得られている。
さらに、前記シミュレーションにおいて、小径部12および大径部10の区別がないテーパ状または円筒状の1段構造のノズル5において、ノズル5のテーパ角を変化させた場合のメニスカス先端部の電界強度の変化を図6に示す。この結果から、メニスカス先端部の電界強度は、ノズル5のテーパ角に依存することが分かる。ノズル5のテーパ角は30°以下であることが好ましい。なお、テーパ角とはノズル5の内面とノズルプレート4の吐出面6の法線とがなす角のことをいい、テーパ角が0°の場合はノズル5が円筒形状であることに対応する。
また、前記実験条件と同様のパラメータを同ソフトに入力してメニスカス先端部の電界強度を演算した結果、図7に示すように、電界強度はノズルプレート4に用いる絶縁体の体積抵抗率に強く依存することが分かった。文献等では絶縁体または誘電体とされる物質の体積抵抗率は1010Ωm以上のものを指すことが多く、代表的な絶縁体として知られているボロシリケイトガラス(例えば、PYREX(登録商標)ガラス)の体積抵抗率は1014Ωmである。
しかし、このような体積抵抗率の絶縁体では、液滴Dは吐出されない。前記のように、ノズル5から液滴Dを安定に吐出させるためにはメニスカス先端部の電界強度が3×107V/m以上であることが必要であり、図7から、少なくともノズルプレート4の体積抵抗率は1015Ωm以上であることが必要であることが分かった。
ノズルプレート4の体積抵抗率とメニスカス先端部の電界強度との関係が図7のような特徴的な関係になるのは、ノズルプレート4の体積抵抗率が低いと、静電電圧を印加してもノズルプレート内で等電位線が図3に示したように吐出面6に対して略垂直方向に並ぶような状態にはならず、ノズル内の液体Lおよび液体Lのメニスカスへの電界集中が十分に行われないためであると考えられる。
理論上、体積抵抗率が1015Ωm未満のノズルプレート4でも、静電電圧を非常に大きくすればノズル5から液滴Dが吐出される可能性はあるが、電極間でのスパークの発生等により基材Kが損傷される可能性があるため、本発明では採用されない。
なお、図7に示したようなメニスカス先端部の電界強度のノズルプレート4の体積抵抗率に対する特徴的な依存関係は、ノズル径を種々に変化させてシミュレーションを行った場合でも同様に得られており、どの場合も体積抵抗率が1015Ωm以上の場合にメニスカス先端部の電界強度が3×107V/m以上になることが分かっている。また、前記実験条件中のノズルプレート4の厚さとは、本実施形態の場合は、ノズル5の小径部12の長さと大径部10の長さの和に等しい。
一方、体積抵抗率が1015Ωm以上の絶縁体を用いてノズルプレート4を作製しても、ノズル5から液滴Dが吐出されない場合がある。下記実施例1に示すように、液体Lとして水などの導電性溶媒を含有する液体を用いた実験では、ノズルプレート4の液体の吸収率が0.6%以下であることが必要であることが分かった。
これは、ノズルプレート4が液体L中から導電性溶媒を吸収すると導電性の液体である水分子等の分子が本体絶縁性であるノズルプレート4内に存在することになるため、結果的にノズルプレート4の電気伝導度が高くなり、特に液体Lに接する局部の実効的な体積抵抗率の値が低下し、図7に示す関係に従ってメニスカス先端部の電界強度が弱まり、液体Lの吐出に必要な電界集中が得られなくなるためと考えられる。
一方、下記実施例1によれば、液体Lとして導電性溶媒を含まない絶縁性溶媒に帯電可能な粒子を分散した液体を用いた場合には、ノズルプレート4は、その液体に対する吸収率に係わりなく体積抵抗率が1015Ωm以上であれば液体Lを吐出することが分かった。これは、絶縁性溶媒がノズルプレート4内に吸収されても絶縁性溶媒の電気伝導度が低いためノズルプレート4の電気伝導度が大きく変化せず、実効的な体積抵抗率が低下しないためであると考えられる。
なお、前記絶縁性溶媒に分散されている帯電可能な粒子は、例えば、電気伝導度が極めて大きな金属粒子であってもノズルプレート4には吸収されないため、ノズルプレート4の電気伝導度を高めることはない。なお、前記絶縁性溶媒とは、単体では静電吸引力により吐出されない溶媒をいい、具体的には、例えば、キシレンやトルエン、テトラデカン等が挙げられる。また、導電性溶媒とは、電気伝導度が10−10S/cm以上の溶媒をいう。
次に、本実施形態の液体吐出ヘッド2及び液体吐出装置1の作用について説明する。
図8は、本実施形態の液体吐出装置における液体吐出ヘッドの駆動制御を説明する図である。なお、この場合は、静電電圧電源16から帯電用電極14に印加される一定の静電電圧VCは1.5kVに設定されており、駆動電圧電源23からピエゾ素子22に印加されるパルス状の駆動電圧VDは20Vに設定されている。
液体吐出装置1の動作制御手段24は、静電電圧電源16から帯電用電極14に一定の静電電圧VCを印加させる。これにより、液体吐出ヘッド2の各ノズル5には常時一定の静電電圧VCが印加され、液体吐出ヘッド2と対向電極3との間に電界が生じる。
また、動作制御手段24は、液滴Dを吐出させるべきノズル5ごとに、そのノズル5に対応する駆動電圧電源23からピエゾ素子22に対してパルス状の駆動電圧VDを印加させる。このような駆動電圧VDが印加されると、ピエゾ素子22が変形してノズル内部の液体Lの圧力を上げ、ノズル5の吐出口11では、図中Aの状態からメニスカスが隆起し始め、Bのようにメニスカスが大きく隆起した状態となる。
すると、前述したように、メニスカス先端部に高度な電界集中が生じて電界強度が非常に強くなり、メニスカスに対して前記静電電圧VCにより形成された電界から強い静電力が加わる。この強い静電力による吸引とピエゾ素子22による圧力とにより図中Cのようにメニスカスが引きちぎられて、ミストやサテライトが発生することなく液滴Dが形成される。図中Dのように液滴Dは基材Kに向かって飛翔し、その後図中Eのように電界で加速されて対向電極方向に吸引され、対向電極3に支持された基材Kの目標地点に正確に着弾する。
なお、ピエゾ素子22に印加する駆動電圧VDとしては、本実施形態のようにパルス状の電圧とすることも可能であるが、この他にも、例えば、電圧が漸増した後漸減するいわば三角状の電圧や、電圧が漸増した後一旦一定値を保ちその後漸減する台形状の電圧、或いはサイン波の電圧を印加するように構成することも可能である。また、図9(A)に示すように、ピエゾ素子22に常時電圧VDを印加しておいて一旦切り、再度電圧VDを印加してその立ち上がり時に液滴Dを吐出させるようにしてもよい。また、図9(B)、(C)に示すような種々の駆動電圧VDを印加するように構成してもよく適宜決定される。
以上のように、本実施形態にかかる発明によれば、ノズル5内の液体供給路13内を通過する液体と液体供給路13内の側面に生じる抵抗を低減させることで高粘度の液体を吐出させる場合でも、メニスカスを隆起させる液滴を形成するための圧力発生手段の駆動電圧の低電圧化を図ることができる。
また、ノズルプレート4の吐出口11が開口された吐出面6に撥液層30を設けることで吐出口まで供給された液体が吐出口の周囲に漏れ広がることなく吐出口に安定してメニスカスを形成することができる。