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JP4710804B2 - 内燃機関の制御装置 - Google Patents

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JP4710804B2 JP2006311297A JP2006311297A JP4710804B2 JP 4710804 B2 JP4710804 B2 JP 4710804B2 JP 2006311297 A JP2006311297 A JP 2006311297A JP 2006311297 A JP2006311297 A JP 2006311297A JP 4710804 B2 JP4710804 B2 JP 4710804B2
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  • Electrical Control Of Ignition Timing (AREA)
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Description

この発明は内燃機関の制御装置に関する。更に具体的には、内燃機関の出力を変化させ得る2つの出力制御手段により、内燃機関の発生出力を制御することができる制御装置に関するものである。
車載用内燃機関では、発生トルクが急増して加速状態に移行する際、内燃機関の出力を駆動輪に伝達する伝達系に歪みが生じ、この復元力により振動が発生する場合がある。この振動は車両の加速度に変動を生じさせることとなり、車両には進行方向前後への振動が発生することとなる。このような振動を抑制するため、例えば、特開2000−356153号公報には、加速状態への移行時に、スロットルバルブの開度と点火時期とを制御することで、内燃機関の発生トルクを制御するシステムが開示されている。
具体的にこのシステムは、内燃機関が加速状態に移行することを検知すると、まず、スロットル開度を所定の期間、そのときの内燃機関の運転状態に対する本来の開度よりも開き側に制御する。これにより吸入空気量はそのときの運転状態において必要な吸入空気量よりも増量される。従って、内燃機関は運転状態に応じて要求されるトルク以上のトルクを発生させ得る状態となる。この状態で、内燃機関の加速状態への移行時に発生する車両の加速度変動の方向や大きさが推定され、その加速度変動に対して逆位相のトルクが発生するように点火時期が調整される。その結果、発生するトルクは、車両に発生する加速度変動を相殺するトルクとなり、加速状態への移行時に車両に発生する振動が低減される。
特開2000−356153号公報 特開2001−186602号公報 特開2005−330921号公報 特開平11−62690号公報
ところで、上記従来技術のようなシステムにおいては、発生トルクと吸入空気量あるいはスロットル開度との関係を定めたトルクマップ、及び発生トルクと点火時期との関係を定めたトルクマップが予めシステムに記憶されている。上記従来技術のようなトルクの制御を行う場合には、このようなトルクマップに基づいて、設定された目標トルクに応じて吸入空気量及びスロットル開度が演算されると共に、目標トルクとに応じて、点火時期に関するマップに基づいて点火時期が演算される。
しかし、例えば、スロットルバルブが、トルクマップに従って演算されたスロットル開度に設定されていても、吸気デポジットの影響等により、予定される量の吸入空気量が吸入されない場合がある。また、要求された量の吸入空気量が吸入されていても、燃料噴射装置の劣化等によりそれに応じた燃料量の燃料が噴射されず、要求トルク通りのトルクが発生しない場合がある。更に、点火装置の劣化により、トルクマップに従って演算された点火時期に点火が行われず、要求通りのトルクが発生しない場合がある。このように、吸入空気量や点火時期に関する発生トルクのトルクマップにはズレが生じる場合がある。トルクマップにズレが生じた場合、例えば加速度振動低減のためのトルク制御等の内燃機関のトルク制御にもズレが生じ、目標とするトルクを発生することが困難な事態を生じ得る。
また、このような事態は、スロットル開度と点火時期とを制御することで、内燃機関の出力を制御する場合に限らず、異なる2つの制御手段を用いて内燃機関の出力を制御する他の場合においても生じ得る。すなわち、目標とする出力に対して、異なる2つの制御手段の制御量がそれぞれのマップに基づいて設定される場合に、その制御手段のマップにズレが生じている状態では、内燃機関の出力を目標出力に正確に制御されない場合がある。
従って、この発明は上記の課題を解決することを目的とし、異なる2つの制御手段により内燃機関の出力が制御される場合に、その異なる2つの制御手段に対するそれぞれの制御量を設定する際に用いられるマップを補正することができるように改良した内燃機関の制御装置を提供するものである。
第1の発明は、上記の目的を達成するため、
内燃機関の出力を変化させる第1出力変化手段と、
前記第1制御手段とは異なる応答性で、前記出力を変化させる第2出力変化手段と、
を備える内燃機関を、制御する制御装置であって、
前記内燃機関の出力と、前記第1出力変化手段の制御量との関係を定める第1マップに従って、前記内燃機関の出力が、要求される要求出力とは所定出力異なる目標出力となるような、前記第1出力変化手段に対する第1制御量を演算する第1制御量演算手段と、
前記第1出力変化手段を、前記第1制御量に制御する第1制御手段と、
前記第1出力変化手段が前記第1制御量に制御された状態において、前記内燃機関が前記要求出力を発するように、前記第2出力変化手段を制御する第2制御手段と、
前記第2制御手段による、前記第2出力変化手段に対する実際の制御量である実制御量を検出する実制御量検出手段と、
前記実制御量に基づいて、前記第1マップ及び/又は前記内燃機関の出力と前記第1出力変化手段の制御量とに関する、前記第2出力変化手段の制御量を定める第2マップの補正を行うマップ補正手段と、
を備えることを特徴とする。
第2の発明は、第1の発明において、前記内燃機関の出力は、内燃機関の回転数をパラメータとして制御されることを特徴とする。
第3の発明は、第1又は第2の発明において、
前記第1出力変化手段は、前記内燃機関の吸気通路に配置されたスロットルバルブであって、
前記第1制御手段は、前記スロットルバルブの開度を制御することを特徴とする。
第4の発明は、第1から第3のいずれかの発明において、
前記第2出力変化手段は、内燃機関の点火装置であって、
前記第2制御手段は、前記点火装置による点火の時期を制御することを特徴とする。
第5の発明は、第1から第4のいずれかの発明において、
前記所定出力は、一定の周期で出力が変化する周期変動出力であって、
前記内燃機関の制御装置は、前記第1出力変化手段が前記第1制御量に制御され、前記第2制御手段により前記第2出力変化手段が制御された状態で、前記内燃機関が発生する出力の周期変動が基準値以下となった場合に周期変動の消滅を判定する周期変動判定手段を、更に備え、
前記実制御量検出手段は、前記周期変動の消滅が認められた状態における、前記第2出力変化手段に対する制御量を、前記実制御量として検出することを特徴とする。
第6の発明は、第1から第5のいずれかの発明において、
前記第2マップに従って、前記第1出力変化手段が前記第1制御量に制御される場合において、前記内燃機関の出力が前記要求出力となるような、前記第2出力変化手段に対する第2制御量を演算する第2制御量演算手段を更に備え、
前記マップ補正手段は、前記第2制御量と前記実制御量との差に基づいて、前記第1マップ及び/又は前記第2マップの補正を行うことを特徴とする。
第7の発明は、上記の目的を達成するため、
内燃機関の出力を変化させる第1出力変化手段と、
前記第1出力変化手段とは異なる応答性で、前記出力を変化させる第2出力変化手段をと、
を備える内燃機関の制御装置であって、
前記内燃機関の出力と、前記第1出力変化手段に対する制御量との関係を定める第1マップに従って、前記内燃機関の出力が、要求される要求出力とは所定出力異なる目標出力となるような、前記第1出力変化手段に対する第1制御量を演算する第1制御量演算手段と、
前記内燃機関の出力と前記第1出力変化手段の制御量とに関する、前記第2出力変化手段の制御量を定める第2マップに従って、前記第1出力変化手段が前記第1制御量に制御される場合に、前記内燃機関の出力が要求出力となるような、前記第2出力変化手段に対する第2制御量を演算する第2制御量演算手段と、
前記第1出力変化手段を、前記第1制御量に制御する第1制御手段と、
前記第2出力変化手段を、前記第2制御量に制御する第2制御手段と、
前記第1出力変化手段が前記第1制御量に制御され、前記第2出力変化手段が前記第2制御量に制御された状態において、前記内燃機関の実出力を検出する実出力検出手段と、
前記目標出力と前記実出力との差に応じて、前記第1マップ及び/又は前記第2マップを補正するマップ補正手段と、
を備えることを特徴とする。
第1の発明によれば、内燃機関の出力が、要求される要求出力とは所定出力異なる目標出力となるように第1出力変化手段を制御した状態で、実際の出力は要求出力となるように、第2出力変化手段による制御を行う。そして、この制御における第2変化手段に対する実際の制御量である実制御量を検出し、検出した実制御量に基づいて、第1マップ及び/又は第2マップの補正を行う。したがって、マップにズレが生じている場合に、2つの制御手段による内燃機関の出力制御において出力に発生するズレを修正するようにマップを補正することができ、より正確な内燃機関の制御を実現することができる。
第2の発明によれば、内燃機関の出力は、内燃機関の回転数をパラメータとして制御される。これにより内燃機関の実際の運転に適した状態でマップの補正のための制御を実現することができる。
第3の発明によれば、内燃機関の出力は、スロットルバルブの開度の制御により制御される。したがって、吸入空気量を増大することによる、より正確な内燃機関の出力制御を実現することができる。
第4の発明によれば、内燃機関の出力は、点火時期の制御によって制御され、この点火時期を決定するマップと第1制御手段に関するマップとの関係においてマップを補正することができる。したがって、点火時期の制御によるより正確な内燃機関の出力制御を実現することができる。
第5の発明によれば、目標出力は、要求出力に、一定の周期で出力が変化する周期変動を加えた出力となり、第1出力変化手段が第1制御量に制御された状態で、内燃機関の出力の周期変動が消滅するように第2制御手段が制御され、このときの制御量に基づいてマップのズレが検出される。このように、周期変動による影響を打ち消すように第2制御手段を制御することで、内燃機関の運転状態が変化して要求出力自体の変化する場合にも、要求出力の変化の影響を除去して、第1、第2マップのズレを修正することができる。
第6の発明によれば、第2マップに基づいて、第1出力変化手段が第1制御量に制御される場合に内燃機関の出力を要求出力とするような、第2出力変化手段に対する第2制御量が演算され、この演算値と実制御量との差に基づいて第1マップ及び/又は第2マップを補正することができる。
第7の発明によれば、内燃機関の出力が要求される要求出力とは所定出力異なる目標出力となるように、第1出力変化手段が制御された状態で、出力が要求出力となる第2出力変化手段に対する制御量が演算され、この演算値に基づいて第2出力変化手段が制御される。そして、このような状態において、内燃機関の実際の出力を検出し、実際の出力と要求出力との差に基づいて、第1、第2マップの補正が行われる。したがって、マップにズレが生じている場合に、2つの制御手段による内燃機関の出力制御において出力に発生するズレを修正するようにマップを補正することができ、より正確な内燃機関の制御を実現することができる。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において、同一または相当する部分には同一符号を付してその説明を簡略化ないし省略する。
実施の形態1.
[実施の形態1のシステム構成について]
図1は、この発明の実施の形態1における内燃機関システムの構成について説明するための模式図である。図1に示すシステムは、内燃機関10を備えている。内燃機関10は気筒12を備えている。図1においては1の気筒12の断面のみを表しているが、実際には内燃機関10は複数の気筒12を備えている。気筒12内部にはピストン14が配置されている。ピストン14は、コンロッドを介してクランクシャフト(図示せず)に接続されている。クランクシャフトの近傍には、内燃機関10のエンジン回転数に応じた出力を発する回転数センサ16が配置されている。
気筒12内のピストン14上部には燃焼室18が設けられている。燃焼室18の天井部(シリンダヘッド)中央には、先端のギャップが燃焼室18内に突出するように点火プラグ20(第2出力変化手段)が組み付けられている。点火プラグ20は放電により燃焼室内に供給された燃料を点火させる。点火プラグ20による点火時期はアクチュエータ22を介して電気的に制御される。
内燃機関10の各気筒12の吸気ポート24には吸気バルブ26が配置され、排気ポート28には排気バルブ30が配置されている。吸気バルブ26及び排気バルブ30には、それぞれ可変動弁機構32、34が接続されている。可変動弁機構32、34は、吸気バルブ26又は排気バルブ30の開閉タイミング及びリフト量を可変とすることができる機構である。また、先端の噴射口を吸気ポート24内に向けて、ポートインジェクタ36が組み付けられている。ポートインジェクタ36は吸気ポート24内に燃料を噴射する燃料噴射装置であり、噴射された燃料は吸気ポート24内で空気と混合されて、気筒12内に吸入される。
各気筒12の吸気ポート24には共通の吸気管40が接続されている。吸気管40には、電子制御式のスロットルバルブ42(第1出力変化手段)が設けられている。スロットルバルブ42はその開度を変更することにより、吸気管40内に流入する空気量を調整する。スロットルバルブ42の開度(スロットル開度)は、アクチュエータ44を介して、アクセル操作などによる加減速要求等に基づいて電気的に制御される。すなわち、アクセル開度とは独立してスロットル開度を制御することができる。スロットルバルブ42の上流において、吸気管40には、エアフロメータ46が配置されている。エアフロメータ36は、吸気管40に流入する空気流量に応じた出力を発する。
実施の形態1の内燃機関システムは、内燃機関の制御装置としてのECU(Electronic Control Unit)50を備えている。ECU50は、回転数センサ16、エアフロメータ46、及びアクセル開度センサ52等の各種センサに接続され、これらのセンサから内燃機関10の運転状態等に関する情報を取得する。また、ECU50は、点火プラグ20のアクチュエータ22、スロットルバルブのアクチュエータ44、可変動弁機構32、34等に接続され、取得した情報に基づいて点火時期、スロットル開度、吸排気バルブの開閉タイミング等を制御する制御信号を発する。
[スロットル開度と点火時期の制御について]
図2は、吸入空気量とトルクとの関係を表す図である。図2において横軸は吸入空気量、縦軸はトルクを表している。図2から、発生するトルクは吸入空気量が増大するに連れて増大することがわかる。即ち要求トルクが大きい場合には多くの吸入空気量が必要となり、要求トルクが小さくなると必要な吸入空気量も小さくなる。また、吸入空気量はスロットル開度の開度に応じて変化する。内燃機関10の通常運転時の基本スロットル開度は、要求トルクが大きくなるに連れて大きく設定され、要求トルクが小さい場合には小さく設定される。
ECU50には、図2に示すような吸入空気量とトルクとの関係を定めたトルクマップ1(第1マップ)、及び吸入空気量に応じたスロットル開度の演算式が予め記憶されている。内燃機関10の通常運転中は、このトルクマップ1に従って、要求トルクに応じた吸入空気量が演算され、演算された吸入空気量に応じて基本のスロットル開度が設定される。
ところで、上記のトルクマップ1におけるトルクは、吸入空気量、機関回転数との関係において、機関出力や燃料消費率が最良となると推定される点火時期(MBT: minimum advance for the best torque)で点火された場合に発生するトルクである。従って、トルクと吸入空気量との関係は、機関回転数が異なる場合には異なるものとなる。従って、トルクと吸入空気量との関係を示すトルクマップ1は、所定の機関回転数ごとに定められて、ECU50に記憶されている。
図3は、点火時期MBTとトルクとの関係を説明するための図である。図3において、横軸は点火時期、縦軸はトルクを表している。図3に示すように、要求トルクが大きい場合には、点火時期はより早いタイミングとなる。ここで、図3の点火時期とは、機関出力や燃料消費率が最良となると推定される点火時期MBTである。この点火時期MBTは、機関回転数、吸入空気量に応じて定まるものである。つまり、図3に示すようなトルクに対する点火時期の関係は、機関回転数及び吸入空気量が異なる場合には、異なるものとなる。ECU50には、機関回転数、吸入空気量ごとに、トルクと点火時期との関係を定めるトルクマップ2(第2マップ)が記憶されている。
上記のように吸入空気量及び点火時期は、互いに内燃機関10のトルクを制御するものであり、それぞれが最適な制御量に設定されることで、要求トルクに応じたトルクが発生する。しかし、例えば、吸気バルブ26や吸気ポート24に吸気デポジットが堆積した場合には、演算されたスロットル開度に応じた吸入空気量が気筒12内に供給されないこととなる。この場合、吸入空気量が要求される量よりも小さくなり、発生トルクは要求トルクよりも小さくなる。また、例えば点火プラグの経時劣化等により設定された点火時期に点火されない場合には、気筒12内での燃焼効率が低下する。従って、発生トルクが要求トルクよりも小さくなる。更に、ポートインジェクタ36の劣化により規定量の燃料が噴射されない場合等には、吸入空気量、及び点火時期が演算の通りに制御されていても、発生トルクが低下することとなる。
このように、トルクマップ1、2に基づいて、要求トルクに応じた吸入空気量及び点火時期を演算して、その演算値に制御しても、要求トルクが発生されない場合がある。即ち、トルクマップ1、2の感度には、上記のような様々な要因によりズレが生じる場合があると言うことができる。このように要求トルクと発生トルクとの間に生じるズレは、ドライバビリティーの向上、燃料消費率の向上の観点からは、好ましいものではない。従って、実施の形態1のシステムは、トルクマップ1、2の感度にズレが生じている場合には、要求トルクを正確に発生するべくトルクマップ1、2のズレの補正を行う。以下、実施の形態1のシステムが行うトルクマップ1、2の補正の手法について説明する。
[実施の形態1のシステムの特徴的な制御]
図4は、この発明の実施の形態1におけるトルク制御の概念について説明するための図である。図4において横軸は経過時間、縦軸はトルクを表している。図4の実線(a)のように要求トルク(要求出力)が一定の状態の場合において、要求トルクに応じた吸入空気量から、トルクアップ量X0(所定出力)だけトルクが増加するように吸入空気量を増加させると、実線(b)のような目標トルクが発生しうる状態となる。つまり、要求トルクをトルクアップ量X0だけ増加させたトルクを目標トルク(目標出力)とし、この目標トルクに応じた吸入空気量(目標空気量)をトルクマップ1に従って定める。そして目標空気量応じてスロットル開度の制御量X1(第1制御量)を演算し、スロットル開度を制御する。その結果、トルクマップ1にズレが生じていない状態であり、点火時期MBTにおいて点火が実行されれば、目標トルク(実線(b))が発生することとなる。
吸入空気量の増大により増大したトルクアップ量X0は、点火時期を点火時期MBTから遅角して燃焼効率を低下させ、トルクダウンすることで相殺することができる。より具体的には、図4の実線(c)に示すように、点火時期の設定における目標トルクは、要求トルクよりもトルクダウン量X0(=トルクアップ量X0)だけ小さなトルクとする。このときの点火時期は、この目標トルク(実線(c))に応じてトルクマップ2に基づいて決定される。以下の実施の形態では、このような目標トルクに応じてトルクマップに基づいて演算された点火時期を理論時期X2と称する。
このようにスロットル開度を制御量1に制御し、点火時期を理論時期X2とした場合、トルクマップ1、2にズレが生じていない状態であれば、吸入空気量増加制御によるトルクの増加分がトルクアップ量X0となり、点火時期遅角によるトルクの低下分がトルクダウン量X0となり両者が相殺される。従って、発生トルクは要求トルク(実線(a))に一致するものとなる。一方、いずれかのトルクマップ1、2にズレが生じている場合、吸入空気量増加によるトルクアップ量と、点火時期遅角によるトルクダウン量が相殺されず、例えば、図4の点線(d)に示すように、要求トルクとはズレたトルクが発生することとなる。
ここで、上記のような要求トルクと発生トルクとのズレを、点火時期を調整することで消滅させることができる。具体的に、図4の点線(d)に示すように発生トルクが要求トルクよりも小さくなっている場合には、その分点火時期の遅角量を理論時期X2よりも少なくし、つまり理論時期X2よりも進角させることで、発生トルクを要求トルクに一致させることができる。
このように、発生トルクと要求トルクを一致させた時の点火時期の制御時期X3(実制御量)は、理論時期X2に制御した場合に生じる発生トルクと要求トルクとのズレを修正するものである。従って、制御時期X3は、トルクマップ1又は2に発生しているズレを吸収したものであると考えられる。従って、点火時期の実際の制御時期X3に応じて、現在の吸入空気量、機関回転数におけるトルクマップ1、2を補正することができる。
より具体的には、次の手順で制御を行う。まず、アイドル運転状態でマップ補正のための制御を行うこととする。更に、各補機類の負荷を一定、即ち、OFF状態にしておくか、ON状態のまま固定する。これにより、発生トルクの変動を、機関回転数の変動として検知することができる。即ち、トルクマップ1、2のズレによる発生トルクと要求トルクとのズレを、機関回転数に基づいて検出できる。この状態で、スロットル開度を制御して吸入空気量を操作し、内燃機関の機関回転数を一定値に維持する。なお、ここで補正されるトルクマップは、このときの機関回転数の範囲のマップが対象となる。
ここのような状態において、要求トルクをトルクアップ量X0増加させたトルクを目標トルクとする目標空気量GAtgtをトルクマップ1に従って定め、それに応じてスロットル開度の制御量X1が演算される。スロットルバルブはその制御量がX1となるまで徐々に開度を増加するよう制御される。このようにスロットル開度を徐変することで吸入空気量は緩やかに増加する。その結果発生トルクは要求トルクから徐々に増加し得る状態となる。
スロットル開度の制御と共に、機関回転数が常に回転数NEiに維持されるように点火時期を遅角制御する。つまり、スロットル開度が開き側の制御量X1に移行して吸入空気量が増加している状態においても、機関回転数が要求トルクに応じた一定の機関回転数NEiに維持されるように、点火時期を遅角制御する。すなわち、ここでは補機類の負荷を一定に維持しているため、機関回転数NEiが一定の状態においては、吸入空気量が増大していても発生トルクが要求トルクに一致したまま維持されていると判断できる。
この状態で吸入空気量が目標空気量GAtgtにまで増加したときの点火時期の制御時期X3を検出する。一方、点火時期の理論時期X2はトルクマップ2から演算される。実施の形態1のシステムでは、トルクマップ1、2に生じているズレは、全てトルクマップ2に吸収させることとし、実際の制御時期X3に応じて、あるいは理論時期X2と実際の制御時期X3との差に応じて、点火時期のトルクマップ2のズレが補正される。
図5は、実施の形態1のシステムにおける、点火時期に関するトルクマップ2の補正の例を説明するための図である。補正の概念的方法としては、例えば、図5の二点鎖線(ii)に示すように、トルクマップ2を示す実線(i)を、要求トルクに対する点火時期MBTを固定とした状態で点火時期の制御時期X3方向に移動させるような形の補正値を算出することで、トルクマップ2を補正する。あるいは、図5の一点鎖線(iii)に示すように、実線(i)に示すトルクマップを、制御時期X3と理論時期X2との差ΔX分平行移動させることによって補正する。また、あるいは、複数の要求トルクについて上記のような制御時期X3の検出を行いトルクマップ2の補正値を算出することもできる。
[実施の形態1の具体的な制御のルーチン]
図6はこの発明の実施の形態1において制御装置としてのECU50が実行する制御のルーチンである。図6のルーチンは、ECU50に予め記憶された一定の期間ごとに定期的に実行される。図6のルーチンでは、まず、現在の吸入空気量GA及び機関回転数NE等の現在の運転状態に関する情報が検出される(S102)。次に、現在の運転状態が、トルクマップ2の補正開始条件を満たしているか否かが検出される(S104)。具体的には、現在内燃機関の暖機や触媒の暖機が完了し通常運転を開始していること、現在の運転状態がアイドル運転状態である等の条件が満たされるか否か判定される。ステップS104において、補正開始条件の成立が認められない場合には、再びステップS102に戻り、補正開始条件の成立が認められるまで、ステップS102及びS104の処理が繰り返し実行される。
一方、ステップS104において、補正開始条件の成立が認められると、次に、現在の機関回転数NEiに対応するフラグXnei=OFFとなっているか否かが判定される(S106)。フラグXneiは、後述の処理が実行され、その機関回転数NEiの範囲の全トルクマップ2の補正が完了した場合にONとされるフラグである。従って、現在の機関回転数NEiに対応するフラグXnei=ONとされている場合には、現回転数NEiのトルクマップ2の補正が不要であるため、再び、ステップS102に戻る。ステップS102〜S106の処理は、そのときの機関回転数NEiに関するトルクマップ2の補正が完了していない機関回転数NEiとなるまで繰り返し行われる。
一方、ステップS106においてXnei=OFFであることが認められた場合、その回転数NEiに関するマップの補正が完了していないと判断される。従って、補機類の負荷が一定に維持されるように制御される(S108)。つまり、各補機類は、ON状態、あるいはOFF状態とされて、後述の制御中そのまま維持される。
次に、目標空気量GAtgtが読み込まれる(S110)。目標空気量GAtgtは、今回の処理で、この目標空気量Gatgtの範囲に関するトルクマップ2の補正を行うべくECU50に記憶されている。その後、目標空気量GAtgtとなるように吸入空気量の制御が実行される(S112)。具体的には、目標空気量GAtgtに応じたスロットル開度目標値が設定され(制御量X1)、そのスロットル開度の制御量X1に向けて、スロットル開度が徐変するように制御される。つまりECU50からのスロットル開度の制御量X1に応じた制御信号がアクチュエータ44に伝達され、これによりスロットルバルブ42の開度が制御される。このとき、目標空気量GAtgtは、要求トルクよりもトルクアップ量X0分大きな目標トルクを発生する吸入空気量に設定されている。従って、スロットル開度が徐変するに連れてより大きなトルクを発生することができる吸入空気量へと増加する。
次に、吸入空気量の徐変の過程における点火時期が演算される(S114)。点火時期は、吸入空気量が目標空気量GAtgtに達するまでの変化の過程において増加するトルクを相殺して、機関回転数が常にNEiに維持されるような点火時期となるように設定される。即ち、点火時期制御量の決定における目標トルクは、要求トルクよりも、吸入空気量増加によるトルクアップ分だけ小さくなるトルクに設定される。その後、点火時期がステップS114で演算された点火時期に制御され点火が行われる(S116)。点火はECU50から点火プラグアクチュエータ22に必要なタイミングで制御信号が発せられることにより制御される。
次に、吸入空気量が目標空気量Gatgtとなったか否かが判定される(S118)。具体的には、例えば現在の吸入空気量がエアフロメータの出力に基づいて検出され、この吸入空気量が目標空気量GAtgt以上となったか否かによって判定が行われる。ステップS118において、吸入空気量が目標空気量GAtgt以上であることが認められない場合には、再びS112に戻る。ステップS112〜S118の吸入空気量の徐変と点火時期制御による回転数NEiの維持の制御は、ステップS118において吸入空気量が目標空気量GAtgt以上であることが認められるまで繰り返し実行される。
一方、ステップS118において、吸入空気量が目標空気量GAtgt以上であることが認められると、次に、目標空気量GAtgt以上となった後、機関回転数が一定時間その回転数NEiの状態で維持されたか否かが判定される(S120)。ステップS120において機関回転数が回転数NEiに維持されたことが認められない場合、ステップS114に戻る。ステップS114〜S120の点火時期制御等の処理は、ステップS120の条件の成立が認められるまで、繰り返し実行される。
一方、ステップS120において、機関回転数が一定期間、回転数NEi維持されたことが認められると、次に、現在の設定されている点火時期である制御時期X3が検出される(S122)。次に、回転数NEi、吸入空気量GAtgtの場合に、要求トルクをトルクダウン量X0小さくする点火時期の理論時期X2が演算される(S124)。その後、点火時期の理論時期X2と点火時期の制御時期X3とに応じて、回転数NEi、吸入空気量GAtgtの範囲の、点火時期のトルクマップ2が補正される(S126)。
次に、現在の目標空気量GAtgtが、トルクマップとして設定されている最大吸入空気量GAmax以上であるか否かが判定される(S128)。目標空気量GAtgt≧GAmaxであることが認められない場合には、回転数NEiの範囲おける他の吸入空気量のマップ補正が行われていない状態であるため、現在の目標空気量GAtgtに所定量ΔGA増加させた空気量GAtgt+ΔGAが次回の目標空気量GAtgtとして再設定される(S130)。その後、再びステップS102に戻り、新たに設定された目標空気量GAtgtにおいて、ステップS102〜S128の処理が繰り返し実行される。
一方、ステップS126において目標空気量GAtgt≧GAmaxであることが認められると、目標空気量GAtgtは予めECU50に記憶された最小吸入空気量GAminに設定される(S132)。次に、トルクマップ2として設定されている全ての回転数NEiに関して、トルクマップ2の補正が完了したか否かが判定される(S134)。ステップS134において全ての回転数NEiに関して、上記のトルクマップ2の補正の完了が認められない場合、今回補正した回転数NEiについての補正完了を示すフラグXneiがONとされ(S136)、再びS102〜S130の処理が繰り返し実行され、補正が完了していない回転数NEiに関するマップの補正が行われる。
一方、全ての回転数に関するトルクマップ2の補正の完了が認められた場合、トルクマップ2の回転数NE範囲ごとのフラグXneiが全てOFFとされ(S138)、今回の処理が終了する。
以上のように、実施の形態1のシステムによれば、内燃機関10の運転中に点火時期のトルクマップ2の補正を行うことができる。従って、より正確に要求トルクを追従したトルク制御を行うことができる。また、トルクマップの補正の際には、機関回転数が一定の回転数に維持される。従って、振動の発生を抑えつつ、吸入空気量の増大や点火時期の遅角による燃焼効率の低下等を伴う制御を行い、マップの補正を実行することができる。
なお、図6においてステップS110が実行されることで、この発明の「第1制御量演算手段」が実現し、ステップS112が実行されることで「第1制御手段」が実現し、ステップS114〜S118が実行されることで「第2制御手段」が実現し、ステップS122が実行されることで「実制御量検出手段」が実現し、ステップS124が実行されることで「第2制御量演算手段」が実現し、ステップS126が実行されることで「マップ補正手段」が実現する。
ところで、実施の形態1のシステムでは、スロットルバルブ42の下流側と気筒12との間には吸気管40等が介在している。従って内燃機関10の通常運転中においても、スロットル開度が要求トルクに応じて基本スロットル開度に設定された後、その開度に応じた量の空気が気筒12内に実際に吸気されるまでの間には、吸気管40の容積等による遅れが生じる。このため要求トルクが急激に変化する場合には、実際に要求トルクの発生に必要な吸入空気量の吸気が間に合わず応答遅れが生じる場合がある。
図7は、スロットル開度の制御と点火時期の制御とを組み合わせることにより、要求トルクに応じたトルクを発生させる例を表している。具体的に、図7に示す例では、要求トルクの変動をアクセル開度等に応じて予め予測する。例えば、時刻T1において要求トルク(a)の急激な増加をある程度前に予測した場合、直ちに、スロットル開度を開き側に制御する。これにより、吸入空気量の増量をより早い段階で開始することができる。この状態で出力可能な範囲のトルクの最大値である上限トルクは、図7において一点鎖線(b)で表すように、要求トルクが急激に増大する前においては、予測された要求トルク(実線(a))よりも大きなものとなっている。
ここで、上限トルク(b)は、スロットル開度を全開とした場合に発生しうるトルクの最大値であり、この点火時期はMBTに制御されている。従って、点火時期をMBTから遅角させることにより実際に発生するトルクを上限トルクよりも低下させることができる。つまり要求トルクに応じて、矢印(c)に示す分のトルク低下を図るよう点火時期をMBTから遅角させる制御を実行すれば、点線(d)のように発生トルクを、要求トルク(a)に即したトルクとすることができる。
このように、実際の内燃機関10の制御において、吸入空気量に関するトルクマップ1と点火時期に関するトルクマップ2とに基づいて、両者の制御量が決定され、この両者の関係で内燃機関の出力が制御される場合がある。このような場合、特に実施の形態1のシステムによるトルクマップの補正は有効であり、吸入空気量と点火時期との関係において、一方あるいは双方のマップを補正して、より正確な出力制御を行うことができる。これについては、以下の実施の形態においても同様である。
なお、実施の形態1のシステムでは、点火時期の制御時期X3から、あるいは理論時期X2と制御時期X3との関係から、トルクマップ2の補正のみを行う場合について説明した。しかし、点火時期の制御時期X3と理論時期X2との間に生じるズレは、必ずしもトルクマップ2のズレにのみ起因するものではなく、トルクマップ1のズレに起因する場合も考えられる。従って、例えば、点火時期の制御時期X3と理論時期X2とから、各トルクマップに対する補正値を演算し、トルクマップ1、2の何れか又は両方を補正するようにしてもよい。これについては、以下の実施の形態においても同様である。
また、実施の形態1のシステムでは、アイドル運転状態で補機類の負荷を一定にし、機関回転数を一定にすることでトルクが一定となるように制御して、トルクマップの補正を行う場合について説明した。しかし、内燃機関10の出力を制御する際のパラメータは、機関回転数に限るものではない。例えば、一定の運転条件下で車速を一定に維持する、あるいはトルクを直接検出して制御するなどとすることも考えられる。これについては、以下の実施の形態においても同様である。
また、実施の形態1のシステムでは、アイドル運転状態の場合に限り、トルクマップ補正のための制御を行う場合について説明した。しかし、この発明はこれに限るものではなく、要求トルクが一定範囲に保てる運転状態であれば、通常走行時に上記と同様の制御を行うことができる。ただし、この場合には、負荷が一定に保たれる必要があり、例えばナビ情報、車速やアクセル開度の変化等によって、登坂路等の負荷が急激に変動するような状態でないことを把握した状態で、マップ補正の制御が実行されることが望ましい。
また、実施の形態1のシステムは、スロットルバルブ42の開度の制御と点火時期の制御によって内燃機関10の出力を一定とし、両者のトルクマップ1、2を補正する場合について説明した。しかし、この発明はこれに限るものではなく、内燃機関10の出力が要求出力となるように制御する2つの制御手段の組み合わせに適用することができる。具体的には、例えば、スロットルバルブ32の開度と、吸排気バルブ26、30との制御により吸入空気量を制御することで内燃機関10の出力を制御するものや、あるいは吸排気バルブ26、30による吸入空気量制御と、点火時期の制御により内燃機関10の出力を制御するものなどに適用することも有効である。特に、内燃機関10の出力制御において応答性の異なる2つの制御手段を用いる場合に、より正確な出力制御を実現することができる場合がある。従って、このような場合に用いられるマップを実施の形態1のシステムの手法よる補正は有効なものとなる。これについては、以下の実施の形態においても同様である。
また、実施の形態1のシステムでは、スロットル開度の制御によりトルクアップ量X0上昇される状態とし、その後、機関回転数を維持した状態における点火時期の制御時期X3を検出し、この制御時期X3に基づいてマップを補正する場合について説明した。しかし、この発明においてトルクマップ補正の手法はこれに限るものではない。例えば、スロットル開度の制御によりトルクアップ量X0上昇させておいて、その後、点火時期に関するトルクマップ2から、要求トルクよりもトルクをX0低減するような目標トルクを発生する点火時期の理論時期X2を演算し、この理論時期X2に基づいて点火時期を制御する。その結果発生するトルク又は機関回転数を検出する。そして、検出値と要求トルクとの差、あるいはそれに応じた機関回転数との差に基づいて、トルクマップ1、トルクマップ2を補正することもできる。これについては、以下の実施の形態においても同様である。
なお、この場合の制御において、スロットル開度が演算されることで、この発明の「第1制御量演算手段」が実現し、スロットル開度が制御されることで「第1制御手段」が実現し、理論時期X2が演算されることで「第2制御量演算手段」が実現し、発生トルクあるいは機関回転数を検出することで「実出力検出手段」が実現し、これに応じてトルクマップを補正することで「マップ補正手段」が実現する。
実施の形態2.
実施の形態2のシステム構成は、実施の形態1のシステムと同様である。実施の形態2のシステムも、実施の形態1のシステム同様に点火時期に関するトルクマップ2の補正を行うが、実施の形態2のシステムによる制御は内燃機関の通常運転中にトルクマップ2の補正を行う点において、実施の形態1のシステムの制御とは異なっている。
具体的に、実施の形態1では、アイドル運転中かつ負荷を全て一定とした状態で、機関回転数を維持するように制御して、点火時期の制御時期X3を検出しマップの補正値を求める場合について説明した。しかし、同様の手法で、要求トルクが変動する過渡的な状態にトルクマップの補正を行った場合、検出された点火時期X3とトルクマップ2から理論的に求められる理論時期X2との差には、トルクマップ1、2のズレ以外に、トルク制御の応答遅れ等種々のトルク制御におけるズレに起因する差が含まれる場合がある。従って、要求トルクが変動する状態においでは、実施の形態1における制御を適用すると、その制御時期X3に基づく補正が必ずしもトルクマップを正確に補正するものとならない場合がある。このため、実施の形態2のシステムは、要求トルクが変動するような通常運転時において、以下の制御を行う。
図8は、実施の形態2のシステムにおいてマップ補正の制御を行う際の要求トルクの変動と、吸入空気量の増量による目標トルクの変動とを説明するための図であり、図9は、実施の形態2のシステムにおいてマップ補正の制御を行う際の要求トルクと、発生トルクとの関係を説明するための図である。図8及び図9において横軸は時間を表し、縦軸はトルクを表している。
実施の形態2のシステムは、要求トルクが変動する運転状態においては、その変動をアクセル開度の操作量等に応じて一定期間先まで、図8実線(a)に示すように要求トルクを予測する。ここで、吸入空気量増量による目標トルクは、図8の実線(b)に示すように、予測された要求トルクに周期Tで変動する周期変動トルクY0を加えたトルクとする。
このとき点火時期の理論時期Y2は、要求トルクを周期変動トルクY0分を低下させたトルクを目標として、トルクマップ2に従って求められる。具体的に理論時期Y2は、基本点火時期MBTを、周期変動トルクY0に応じて周期Tの遅角した時期となる。トルクマップ1、2にズレが生じていない場合、点火時期が理論時期Y2に制御されれば、周期Tで変動する周期変動トルクY0分は相殺される。つまり、要求トルクと発生トルクとの差には、トルク制御におけるズレが含まれることとなるが、トルクマップ1、2にズレが生じていない状態では、少なくとも、要求トルクと発生トルクとの差には、周期Tの変動成分は存在しないと考えられる。
一方、トルクマップ1、2にズレが生じている状態では、点火時期を理論時期Y2に制御しても、図9に点線(b)で示すように、発生トルクには周期変動成分が残ることとなる。この周期変動成分まで消滅させるように点火時期による制御を行った場合、点火時期の制御時期Y3は理論時期Y2とは異なるものとなる。
図10は、実施の形態2のシステムの制御において、吸入空気量増大による周期変動トルクY0を相殺するために必要な点火時期遅角量を説明するための図である。図10において横軸は時間、縦軸は点火時期遅角量を表している。なお、縦軸は、点火時期MBTを基準として、それに対して遅角側をマイナスの値として表している。
上記のように、トルクマップ1、2にズレが生じていない場合、点火時期の理論時期Y2の点火時期MBTに対する遅角量は、周期変動トルクY0に応じたトルクダウンを行うものであるため、図10の実線(Y2)に示すような、周期Tで変化する所定の振幅の遅角量となる。一方、トルクマップ1、2にズレが生じ、発生トルクに生じる周期変動成分を除去するようにトルク制御が行われた場合、点火時期遅角量の振幅は点線(Y3)で示すように、理論時期Y2の振幅とは異なるものとなる。
従って、実施の形態2のシステムにおいては、目標空気量GAtgtを、要求トルクに周期変動トルクY0を加えた目標トルクに応じたものとして吸入空気量を制御した上で、点火時期遅角により発生トルクに生じる周期変動成分を消滅させるように制御する。このときの点火時期の制御時期Y3から周期Tで変動する成分を抽出し、理論時期Y2の周期Tで変動する成分との差を求めることにより、トルクマップに対する補正値を演算し、トルクマップ2を補正する。
なお、実施の形態2のシステムにおいても、トルクマップ補正の制御中は、各補機類の負荷を一定とする。従って、トルクの変動と同様に機関回転数が変化することとなる。実施の形態2の制御においても、発生トルクの変動を回転数によってモニターすることとし、発生トルクに周期変動成分が含まれるか否かの判定についても、機関回転数の変動に基づいて行うこととする。
発生トルク中の機関回転数に含まれる周期変動成分が消滅したか否かは、例えば検出される機関回転数の波形をハイパスフィルタに通すことで判断することができる。具体的に、ハイパスフィルタを通過することにより、機関回転数に含まれる高い周波数の周期変動成分のみが抽出される。従って、ハイパスフィルタを通したときに、機関回転数の波形から周期変動成分が検出されている場合には、まだ発生トルクの周期変動成分が消滅していないものと判断される。また、同様に、点火時期の制御時期Y3の波形をハイパスフィルタに通すことで、制御時期Y3に含まれる周期的な遅角制御量のみを抽出することができる。従って、ハイパスフィルタを通過した制御時期Y3の波形に基づいて、トルクマップの補正値を演算することができる。
以上のように、実施の形態2のシステムによれば、要求トルクが変動する場合にも、吸入空気量の増量によるトルクアップ量を周期変動トルクY0とすることで、トルクマップ1、2のズレによる点火時期の制御時期Y3に生じるズレを周期成分として抽出することができる。従って、要求トルク変動時のトルク制御における他のズレの影響を除去して、より正確にトルクマップの補正を行うことができる。
図11は、この発明の実施の形態2において、ECU50が実行する制御のルーチンである。図11のルーチンは、一定の期間ごとに定期的に実行されるルーチンである。図11のルーチンでは、図6のルーチンと同様に、内燃機関の運転状況に関する情報が検出されて、マップ補正の開始条件が成立し、補機類の負荷が一定に固定された後(S202〜S206)、アクセル開度の変化に応じて、現在から一定時間先の時刻までの要求トルクが予測される(S208)。
次に、目標トルクが演算される(S210)。目標トルクは、ステップS208で演算された目標トルクに、予めECU50に記憶された周期変動トルクY0を加算することで演算される。次に、目標空気量GAtgtが設定される(S212)。目標空気量GAtgtは、吸入空気量に関するトルクマップ1に従って、現在の機関回転数おいて目標トルクを実現する空気量として設定される。
次に、目標空気量GAtgtに応じてスロットル開度が演算され、スロットルバルブ42が演算されたスロットル開度に制御される(S214)。次に、点火時期が演算され、(S216)、演算された点火時期に従って制御される(S218)。点火時期は、スロットル開度の制御によって吸入空気量が目標空気量GAtgtに沿って変化した場合に、発生トルクが要求トルクとなるように設定され、制御される。より具体的には、機関回転数NEがモニターされ要求トルクに応じた機関回転数となるように制御される。
次に、現在までの一定期間の間の機関回転数の変動の波形から、周期変動成分が消滅しているか否かが判別される(S220)。具体的には、現在までの一定期間の間の機関回転数の波形をハイパスフィルタに通した場合に抽出される波形に、許容範囲(基準値)の振幅以上の周期Tの波形が含まれていると判定できるか否かに基づいて判別される。ステップS220において、周期変動成分が消滅していないと判別された場合には、周期変動トルクY0が点火時期制御により相殺されていない状態にあるため、再びステップS208〜S218の処理が行われる。その後、再び、ステップS220において、機関回転数の周期変動成分が消滅しているか否かが判別される。このようなステップS208〜S220の処理は、ステップS220において周期変動成分の消滅が認められるまで繰り返し実行される。
一方、ステップS220において機関回転数の波形から周期変動成分が消滅したことが認められた場合、次に、現在までの一定期間の間の点火時期の制御時期Y3が検出される(S222)。次に、周期変動トルクY0を相殺するための点火時期の理論時期Y2が演算される(S224)。
その後、点火時期の実際の制御時期Y3と理論時期Y2とに基づいて、トルクマップ2が補正される(S226)。具体的には、制御時期Y3に含まれる周期Tの変動成分が実際の制御における遅角量として抽出され、この遅角量と、理論時期Y2に含まれる周期変動トルクY0分の遅角量との差に基づいて、トルクマップ2が補正される。このルーチンでは、要求トルクが変動する環境でトルクマップの補正値が算出されているため、今回求められた補正値を点火時期に関する全トルクマップ2に反映させて補正する。ただし、この補正手法に限らず、例えば、今回のマップ補正の制御の間に変化した機関回転数の範囲、吸入空気量の範囲に関するトルクマップ2のみを補正するようにして、上記の制御を繰り返すことで、他の機関回転数の範囲、吸入空気量の範囲のトルクマップを補正するようにしてもよい。あるいは、機関回転数、吸入空気量の平均値を求めて、その平均値に関するトルクマップ2のみを補正して、上記の処理を繰り返すことでトルクマップの補正を行うようにしてもよい。
なお、実施の形態2において、ステップS212が実行されることにより、この発明の「第1制御量演算手段」が実現し、ステップS214が実行されることにより「第1制御手段」が実現し、ステップS216〜S218が実行されることにより「第2制御手段」が実現し、ステップS220が実行されることにより「周期変動判定手段」が実現し、ステップS222が実行されることにより「実制御量検出手段」が実現し、ステップS224が実行されることにより「第2制御量演算手段」が実現し、ステップS226が実行されることにより「マップ補正手段」が実現する。
以上の実施の形態において各要素の個数、数量、量、範囲等の数に言及した場合、特に明示した場合や原理的に明らかにその数に特定される場合を除いて、その言及した数に限定されるものではない。また、本実施の形態において説明する構造や、方法におけるステップ等は、特に明示した場合や明らかに原理的にそれに特定される場合を除いて、この発明に必ずしも必須のものではない。
この発明の実施の形態1におけるシステムの構成について説明するための模式図である。 吸入空気量と発生するトルクとの関係を説明するための図である。 点火時期と発生するトルクとの関係を説明するための図である。 吸入空気量と点火時期の制御による発生トルクの一例を説明するための図である。 点火時期と発生するトルクとの関係を示すマップの補正について説明するための図である。 この発明の実施の形態1においてECUが実行する制御のルーチンについて説明するためのフローチャートである。 この発明の実施の形態1における、吸入空気量と点火時期の制御によるトルク制御の他の例を説明するための図である。 この発明の実施の形態2における要求トルクと吸入空気量制御による目標トルクとの関係を説明するための図である。 この発明の実施の形態2における点火時期遅角量の理論値について説明するための図である。 この発明の実施の形態2における要求トルクと、吸入空気量と点火時期との制御による発生トルクとを説明するための図である。 この発明の実施の形態2においてECUが実行する制御のルーチンについて説明するためのフローチャートである。
符号の説明
10 内燃機関
12 気筒
16 回転数センサ
20 点火プラグ
22 アクチュエータ
24 吸気ポート
26 吸気バルブ
28 排気ポート
30 排気バルブ
32、34 可変動弁機構
36 ポートインジェクタ
40 吸気通路
42 スロットルバルブ
44 アクチュエータ
46 エアフロメータ
50 ECU
52 アクセル開度センサ

Claims (6)

  1. 内燃機関の出力を変化させる第1出力変化手段と、
    前記第1制御手段とは異なる応答性で、前記出力を変化させる第2出力変化手段と、
    を備える内燃機関を制御する制御装置であって、
    前記内燃機関に要求される要求出力が一定である運転状態において、前記要求出力とは一定の出力異なる目標出力を設定する目標出力設定手段と、
    前記内燃機関の出力と、前記第1出力変化手段の制御量との関係を定める第1マップに従って、前記内燃機関の出力が前記目標出力となるような、前記第1出力変化手段に対する第1制御量を演算する第1制御量演算手段と、
    前記第1出力変化手段を、前記第1制御量に制御する第1制御手段と、
    前記第1出力変化手段が前記第1制御量に制御された状態において、前記内燃機関が前記要求出力を発するように、前記第2出力変化手段を制御する第2制御手段と、
    前記第2制御手段による、前記第2出力変化手段に対する実際の制御量である実制御量を検出する実制御量検出手段と、
    記内燃機関の出力と前記第1出力変化手段の制御量前記第2出力変化手段の制御量との関係を定める第2マップに従って、前記第1出力変化手段が前記第1制御量に制御された状態において、前記内燃機関の出力が前記要求出力となるような、前記第2出力変化手段に対する第2制御量を演算する第2制御量演算手段と、
    前記実制御量と前記第2制御量との差に応じて、前記第1マップ及び/又は前記第2マップの補正を行うマップ補正手段と、
    を備えることを特徴とする内燃機関の制御装置。
  2. 内燃機関の出力を変化させる第1出力変化手段と、
    前記第1制御手段とは異なる応答性で、前記出力を変化させる第2出力変化手段と、
    を備える内燃機関を制御する制御装置であって、
    前記内燃機関に要求される要求出力に、一定の周期で出力が変化する周期変動出力を加えた目標出力を設定する目標出力設定手段と、
    前記内燃機関の出力と、前記第1出力変化手段の制御量との関係を定める第1マップに従って、前記内燃機関の出力が前記目標出力となるような、前記第1出力変化手段に対する第1制御量を演算する第1制御量演算手段と、
    前記第1出力変化手段を、前記第1制御量に制御する第1制御手段と、
    前記第1出力変化手段が前記第1制御量に制御された状態において、前記内燃機関が前記要求出力を発するように、前記第2出力変化手段を制御する第2制御手段と、
    前記第1出力変化手段が前記第1制御量に制御され、前記第2制御手段により前記第2出力変化手段が制御された状態で、前記内燃機関が発生する出力の周期変動が基準値以下となった場合に周期変動の消滅を判定する周期変動判定手段と、
    記周期変動の消滅が認められた状態における、前記第2出力変化手段に対する実際の制御量を、実制御量として検出する実制御量検出手段と、
    前記内燃機関の出力と前記第1出力変化手段の制御量と前記第2出力変化手段の制御量との関係を定める第2マップに従って、前記第1出力変化手段が前記第1制御量に制御された状態において、前記内燃機関の出力が前記要求出力となるような、前記第2出力変化手段に対する第2制御量を演算する第2制御量演算手段と、
    前記実制御量と前記第2制御量との差に応じて、前記第1マップ及び/又は前記第2マップの補正を行うマップ補正手段と、
    を備えることを特徴とする内燃機関の制御装置。
  3. 前記内燃機関の出力は、内燃機関の回転数をパラメータとして制御されることを特徴とする請求項1又は2に記載の内燃機関の制御装置。
  4. 前記第1出力変化手段は、前記内燃機関の吸気通路に配置されたスロットルバルブであって、
    前記第1制御手段は、前記スロットルバルブの開度を制御することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の内燃機関の制御装置。
  5. 前記第2出力変化手段は、内燃機関の点火装置であって、
    前記第2制御手段は、前記点火装置による点火の時期を制御することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の内燃機関の制御装置。
  6. 内燃機関の出力を変化させる第1出力変化手段と、
    前記第1出力変化手段とは異なる応答性で、前記出力を変化させる第2出力変化手段と、を備える内燃機関の制御装置であって、
    前記内燃機関に要求される要求出力が一定である運転状態において、前記要求出力とは一定の出力異なる目標出力を設定する目標出力設定手段と、
    前記内燃機関の出力と、前記第1出力変化手段に対する制御量との関係を定める第1マップに従って、前記内燃機関の出力が前記目標出力となるような、前記第1出力変化手段に対する第1制御量を演算する第1制御量演算手段と、
    前記内燃機関の出力と前記第1出力変化手段の制御量前記第2出力変化手段の制御量との関係を定める第2マップに従って、前記第1出力変化手段が前記第1制御量に制御される場合に、前記内燃機関の出力が前記要求出力となるような、前記第2出力変化手段に対する第2制御量を演算する第2制御量演算手段と、
    前記第1出力変化手段を、前記第1制御量に制御する第1制御手段と、
    前記第2出力変化手段を、前記第2制御量に制御する第2制御手段と、
    前記第1出力変化手段が前記第1制御量に制御され、前記第2出力変化手段が前記第2制御量に制御された状態において、前記内燃機関の実出力を検出する実出力検出手段と、
    前記目標出力と前記実出力との差に応じて、前記第1マップ及び/又は前記第2マップを補正するマップ補正手段と、
    を備えることを特徴とする内燃機関の制御装置。
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