JP4704554B2 - 液晶表示素子、及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンピューター端末、画像表示装置、シャッターのようなシステムに使用される、低コストの反射型液晶表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示装置は、低消費電力、低コスト、薄型、軽量のため、携帯型の情報端末のディスプレイとして用いられている。
【0003】
一般に、反射型の液晶表示装置において、ネマチック液晶層が基板間に封入されてなる液晶セルは、通常2枚の偏光板で挟まれ、一方の偏光板の下に反射板を設置して用いられている。
【0004】
このような2枚の偏光板を使用する反射型の液晶表示素子では、入射光は偏光板を4回透過することとなり、そのため暗くなってしまう。
【0005】
そこで反射型の液晶表示素子を明るくするために、偏光板を液晶表示素子の前面側の1枚のみにして、液晶セルを1枚の偏光板と反射板で挟む1枚偏光板構成が提案されている。このような構成では、入射光は偏光板を2回しか透過しないで観測者に届くこととなり、透過率の向上が期待できる。さらに、反射板を液晶層と背面側の基板の間に設けることにより、従来のように光が背面側の透明基板を通らなくなるため、基板中を光が透過することにより生じる光強度の減衰がなくなり、透過率の向上が期待できる。
【0006】
この1枚偏光板方式では、背面側基板表面に、従来アルミ等の鏡面高反射率金属膜層を形成し、観測者側透明基板と偏光板の間に拡散板を挿入し反射層の鏡面をなくし、白色表示を行う方法がとられてきた。
【0007】
従来の反射型液晶表示装置に用いられる液晶表示素子の断面模式図を図2に示す。図2において観測者側透明基板1と背面側基板2は平滑なガラス板であり、観測者側透明基板1上の透明電極3は酸化インジウム錫膜(ITO)で形成されている。背面側基板2の上にはアルミからなる反射層5を設けており、反射層5の上には絶縁性の透明樹脂からなるトップコート層6が形成され、さらにトップコート層6の上には対向電極7が設けられている。透明電極3と対向電極7は交差して画素を形成している。さらに、これらの電極上にはそれぞれ配向膜層8、9が設けられている。配向膜層は、ポリイミド樹脂を印刷後、焼成して成膜される。成膜後、240°から260°ねじれるように配向膜層をラビング処理する。このように形成されたそれぞれの基板の周囲にシール剤10を塗布して貼り合わせ、誘電異方性が正でカイラル材料を添加したネマチック液晶材料11を観測者側透明基板1と背面側基板2の間隙に注入する。そして偏光板12、位相差板13、前方散乱板14を観測者側透明基板1の前面に貼りつけてある。
【0008】
この拡散板方式では、反射層5からの反射光は前方散乱板14に入射すると前方散乱板14で散乱するため、反射層5の方向に散乱光が戻る現象が発生する。これは後方散乱と呼ばれ、表示される文字のにじみの原因となり、表示品質が低下してしまう。
【0009】
そこで図3に示すような構造の液晶表示素子が考案されている。図3において観測者側透明基板1と背面側基板2は平滑なガラス板で、観測者側透明基板1上の透明電極3は酸化インジウム錫(ITO)膜である。背面側基板2の上には樹脂基材からなる凹凸層15が形成され、さらに凹凸層15上にアルミからなる反射層5を設けており、反射層5の上には絶縁性の透明樹脂からなるトップコート層6が形成され、さらにトップコート層6の上には酸化インジウム錫(ITO)膜からなる対向電極7が形成されている。透明電極3と対向電極7は交差して画素を形成している。さらに、これらの電極の上には、配向膜層8、9が設けられている。配向膜層はポリイミド樹脂を印刷後、焼成して成膜されており、成膜後、240°から260°ねじれるようにラビング処理されている。このように形成されたそれぞれの基板の周囲にシール剤10を塗布して貼り合わせ、誘電異方性が正でカイラル材料を添加したネマチック液晶材料11を基板間の間隙に注入する。そして偏光板12、位相差板13を透明基板1の前面側に貼りつける。
【0010】
この凹凸層15の代表的な形成方法を示す。まず金属からなる母型に多数の溝や凸凹を形成する。あるいは溝と凸凹の組み合わせにする。そして母型から転写型を形成し、凹凸層15を形成する基板面に樹脂基材層を形成した後、この樹脂基材層表面に転写型の凸凹を押し付けて凸凹の状態を転写することにより凹凸層15を形成する。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
このような方式の液晶表示素子は、凸凹を転写する樹脂基材層の透過率特性の影響を受けやすいという問題があった。また、近年の携帯機器に多く搭載される液晶表示素子である、素子背面にバックライトが設置された半透過タイプのディスプレイには、樹脂基材層が透明でないため使用できないという問題があった。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記の問題を解決するため本発明の液晶表示素子は、観測者側透明基板と背面側基板の間に液晶が挟持され、その厚さ方向に240゜から260゜ねじれたネマチック層と、前記観測者側透明基板の外側に偏光板と位相差板をそなえ、前記背面側基板と前記ネマチック層の間に反射層をそなえた液晶表示素子において、前記背面側基板の前記反射層側の表面はフッ化水素溶液により腐食され凹凸層を形成した後、凹凸層上に反射層として金属膜が成膜されている。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明による液晶表示装置は、背面側の基板をフッ化水素で侵食することにより凹凸層を形成し、その上に反射層を形成した。これにより、明るい反射型表示素子が実現できる。
【0014】
また、凹凸層の表面粗度を0.2から1μm、ピッチを5から20μmの範囲にすることにより、反射層による反射光が均一に散乱され、白色光が得られる。
【0015】
さらに、反射層上に透明なトップコート層を設け、このトップコート層の表面粗さを1μm以下とする。これにより、トップコート層の表面に設ける電極、配向膜の表面粗さも小さくなり、表示ムラは発生しない。
【0016】
ここで凹凸層の表面粗度が5μm以下であれば、ディップ法を用いてにより表面粗さが1μm以下のトップコート層を設けることができる。
【0017】
また、反射層を膜厚100から400オングストロームにすることにより反射層は透過特性も有する半透過層となり、半透過型の表示装置が容易に実現できる。
【0018】
【実施例】
(実施例1)
以下、本発明の液晶表示素子の実施例を図面に基づいて具体的に説明する。
【0019】
本発明の液晶表示素子の断面模式図を図1に示す。背面側基板2上に凹凸層4が形成され、この凹凸層上には、反射層5、及び、透明なトップコート層6が設けられ、さらにこの上に透明電極7がパターン形成されている。
【0020】
本実施例において、観測者側透明基板1と背面側基板2には平滑なガラス板を用いた。観測者側透明基板上には酸化インジウム錫(ITO)膜からなる透明電極3をホトリソグラフィーでパターン形成した。透明電極は、文字や絵を表示するためにグラフィックパターン、あるいは、ストライプ状のパターンになっている。背面側基板2であるガラス基板の表面はフッ化水素溶液により腐食され凹凸層4になっている。この凹凸層4の上にはアルミからなる反射層5が設けられている。反射層5に用いる金属膜としては、アルミ以外にクロム、ニッケルあるいは銀を用いてもよい。金属膜は蒸着法やスパッタ法により凹凸層上に形成される。凹凸層上に反射層が設けられているために、入射光は散乱された反射光になる。反射層として金属膜を用いる場合には、反射層と透明電極とを絶縁するため、ならびに、反射層の酸化を防止するために、トップコート層6が反射層上に設けられる。さらに、トップコート層6の上には酸化インジウム錫(ITO)膜からなる対向電極7が形成されている。この対向電極7は、文字や絵を表示するために、グラフィックパターンやストライプ状のパターンで形成されている。透明電極3と対向電極7は交差して画素を形成している。さらに透明電極3と対向電極7の上には、配向膜層8、9が設けられている。この配向膜層はポリイミド樹脂を印刷後、焼成して成膜され、240°から260°ねじれるようにラビング処理されている。配向膜層はポリイミドの他にテフロン系物質からなる層でもよい。また、配向膜は液晶材料に接するほぼ全面に形成されている。以上のように構成された観測者側透明基板1と背面側基板2を周囲に塗布されたシール剤10により貼り合わせ、誘電異方性が正でカイラル材料を添加したネマチック液晶材料11を観測者側透明基板1と背面側基板2の間隙に注入する。そして偏光板12、位相差板13を観測者側透明基板1の前面に貼りつけた。
【0021】
次に、反射層5、凹凸層4、トップコート層6について詳細に説明する。液晶表示素子を反射型として用いる場合には、反射層5の厚さを800オングストローム以上で形成する。一方、反射層5の厚さが800オングストロームより小さくなるにつれて透過特性を徐々に備えるようになり、反射層5の厚さが100〜400オングストロームのときに半透過型として好ましい特性になる。すなわち、厚さ100〜400オングストロームの金属反射層を用いると半透過型の液晶表示素子が実現できる。 半透過型の液晶表示装置の場合、背面側基板2に実施例のような透明基板(ガラス基板)を用い、透明基板の背後にバックライトを設置することにより、1枚偏光板の半透過タイプのディスプレイが容易に実現できる。また、この透明基板の下側に偏光板を設置することによりコントラストを良くすることができる。
【0022】
本実施例による凹凸層4の模式的な断面図を図4(a)、及び、図4(b)に示す。本図では凸部が周期的に配置しているが、実際には凸部は背面側基板2の平面内でランダムに形成されることとなる。フッ化水素溶液による腐食で形成された凹凸層4の表面粗度(山と谷との高低差)が0.1μmより小さくなると散乱効果がなくなる。一方、1μmより大きくなると(すなわち、配向膜層の表面粗さが1μmより大きくなると)液晶分子の配向が不均一になるため表示ムラが発生してしまう。そのため、表面粗度は0.2μmから1μmが好ましい。このように、凹凸層4の表面粗度を0.2μm〜1μm、ピッチ(山の頂上の間隔)を5μm〜20μmにすることにより、反射層5からの反射光は均一に散乱されることとなり、白色の表示が実現された。
【0023】
このように凹凸層4の表面粗度が0.2μm〜1μmの範囲であれば、トップコート層は蒸着やディップ等のいずれの方法でも問題はない。すなわち、透明な樹脂で形成されるトップコート層が、蒸着により形成される場合はディッピングにより形成される場合に比べて薄くなり、トップコート層の厚みは200オングストローム程度になる。つまり、蒸着による薄いトップコート層では、凹凸層の凹部を埋めるほどトップコート層が形成されない。したがって、配向膜が形成される表面の表面粗さを1μmより小さくするためには、凹凸層の表面粗度自体を1μm以下にする必要がある。
【0024】
逆にいえば、数μm程度の厚いトップコート層を形成する場合には凹凸層の表面粗さがもっと大きくても良い。すなわち、凹凸層の表面粗度が1μm〜5μm程度あっても、ディッピング法によりトップコート層を設けることにより、配向膜が形成される表面の表面粗さを1μmより小さくできる。そのため、表示ムラが発生することはない。つまり、表面粗度が1μm〜5μmの凹凸層でもディッピング法によるトップコート層を設ければ表示ムラは発生しない。
【0025】
このように、透明電極7や配向膜9が形成される表面の粗さが0.2μmから1μmになるように、凹凸層と反射層・トップコート層を選定することにより、1枚の偏光板で白色表示が可能で表示ムラのない表示装置が実現できる。
【0026】
液晶表示素子の背面側基板の腐食方法としてはフッ化水素そのものを用いてもよいし、またフッ化カルシウム、フッ化アルミニウムソーダ、フッ化アンモニウム等のフッ化物と硫酸や塩酸等を混合して発生するフッ化水素を用いてもよい。
【0027】
また、本発明の液晶表示素子の透明基板上にカラーフィルター層を設置することによりカラー表示のできる液晶表示素子を実現することもできる。
(実施例2)
実施例1で述べたように、フッ化水素溶液で腐食加工したガラス基板表面に反射層を形成すると、この反射層はランダムな凹凸反射面になる。このような反射層は反射効率がそれほど良くないため全体に反射率が低く、入射光の反射角度は広範囲にはならない。そこで、本実施例では、フッ酸溶液でガラス基板表面を溶解する加工(腐食加工)を行った後、さらに、加工面であるガラス基板表面に金属製バイトを押し付け、表面に湾曲溝や直線溝をつける加工を行った。これにより反射層5の表面に湾曲溝や直線溝が形成されることとなり、表面にランダムな凹凸が形成されていた時に比べて、溝の方向に垂直な方向から入射する光の反射角度範囲を広げることができる。
【0028】
本実施例2は反射層5の表面に湾曲溝や直線溝をつける加工がある以外は、実施例1と同様の構成、製造方法でよい。
(実施例3)
さらに、実施例1において、反射層5を多層構造とした。これにより、反射層5の曇りをなくすことが可能になる。すなわち、実施例1のように反射層5をアルミの単層で成膜した場合、アルミは酸化しやすいためアルミ表面が曇り、金属光沢が失われることが考えられる。そこで本実施例では、アルミ成膜後、アルミ層の上に銀を成膜して、二層構造とした。
【0029】
また、反射層5に銀を使用した場合には、第二層をアルミで成膜することにより第一層である銀の使用量を少なくすることができる。
【0030】
このように、反射層5はアルミを蒸着後に銀を蒸着するか、あるいは銀を蒸着後にアルミを蒸着した二層構造にすることにより、アルミ単層の場合に比べて反射効率の劣化が防止できる。
【0031】
反射層5の構造を二層構造にした以外は、実施例1と同様の構成、製造方法でよい。
(実施例4)
実施例1の構成において、アルミ、クロム、ニッケル、あるいは銀いずれかの金属を斜方蒸着して反射層5を成膜することとした。そのため、凹凸層の一方向(斜方蒸着方向)の面側に金属反射層が厚く形成されることとなる。したがって、この方向での反射率が最も高くなり、この方向(斜め)から見た時に最も明るくすることができる。このように、凹凸層の凹凸面の一方向側(斜方蒸着方向側)に金属反射層を厚く設ける構成により、この一方向側の面に対する法線方向から見た場合に最も明るくなる。
【0032】
すなわち、凹凸がランダムに形成された表面に斜方蒸着で金属反射層5を成膜することにより、スパッタや垂直方向の蒸着により金属反射層を設けていた時に比べて、反射する光の最も明るくなる方向が法線方向から斜め方向へ移り、斜めから見た時に最も明るくすることができる。したがって、観測者にとって最適な姿勢に合わせて最も明るくすることができる。また、併せてこの方向でのコントラスト比が大きくなるように液晶層の特性や駆動等を設定することも可能である。
【0033】
反射層5を金属の斜方蒸着により成膜する以外は、実施例1と同様の構成の液晶表示素子とした。
【0034】
【発明の効果】
本発明の液晶表示素子は、背面側ガラス基板の表面をフッ化水素溶液により腐食して凹凸層を形成した後、アルミ等の金属膜を凹凸層上に成膜することにより、明るく、視認性に優れた半透過型の液晶表示素子が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる液晶表示素子の構成の一例を示す断面模式図である。
【図2】従来の液晶表示素子の構成の一例を示す断面模式図である。
【図3】従来の液晶表示素子の構成の一例を示す断面模式図である。
【図4】本発明による凹凸層の断面形状を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
1 観測者側透明基板
2 背面側基板
3 透明電極
4 凹凸層
5 反射層
6 トップコート層
7 対向電極
8、9 配向膜層
10 シール剤
11 液晶材料
12 偏光板
13 位相差板
Claims (4)
- 観測者側透明基板と背面側基板の間に挟持された液晶層と、前記観測者側透明基板の外側に設けられた偏光板と、前記液晶層と前記背面側基板との間に設けられた反射層と、を備え、
前記背面側基板にはフッ化水素溶液により腐食された凹凸層が形成されるとともに、前記凹凸層の表面には湾曲溝や直線溝が形成され、
前記反射層は、前記湾曲溝や直線溝が形成された前記凹凸層上に設けられたことを特徴とする液晶表示素子。 - ガラス基板の表面をフッ化水素溶液により腐食させ、凹凸層を形成する腐食加工工程と、
前記凹凸層の表面に湾曲溝や直線溝をつける加工を行う溝加工工程と、
前記溝が形成された前記凹凸層上に金属反射層を設ける工程と、
前記金属反射層上に透明な絶縁層を形成する工程と、
前記絶縁層上に電極を形成する工程と、を備えることを特徴とする液晶表示素子の製造方法。 - 前記溝加工工程において、前記凹凸層の表面に金属製バイトを押し付けることにより、前記凹凸層の表面に湾曲溝や直線溝をつけることを特徴とする請求項2に記載の液晶表示素子の製造方法。
- 前記凹凸層の表面粗度が0.2μm〜1μmの時には、前記絶縁層を蒸着法により形成し、その表面粗さを1μm以下とし、前記凹凸層の表面粗度が1μm〜5μmの時には、前記絶縁層をディッピング法により形成し、その表面粗さを1μm以下としたことを特徴とする請求項2または3に記載の液晶表示素子の製造方法。
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