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JP4797704B2 - 車体前部構造 - Google Patents

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JP4797704B2 JP2006057697A JP2006057697A JP4797704B2 JP 4797704 B2 JP4797704 B2 JP 4797704B2 JP 2006057697 A JP2006057697 A JP 2006057697A JP 2006057697 A JP2006057697 A JP 2006057697A JP 4797704 B2 JP4797704 B2 JP 4797704B2
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Description

この発明は、自動車の車体前部構造に関し、特に、左右一対のフロントサイドフレームと、サスペンション装置を取付けるサスペンションタワー部とを備える車体前部構造に関する。
従来から、自動車の前部車体構造においては、車両の衝突安全性能を高めるため、車体前後方向に延びるフロントサイドフレームに作用する衝突荷重を、如何に車体後方側に分散して伝達していくかが検討されている。
従来においては、この衝突荷重を、主として、フロントサイドフレームの後端に連なって車体下部に位置するボディフレームに伝達していたが、この衝突荷重が車体上部に伝達されないため、フロントサイドフレームがその基部のダッシュパネル付近で上方に折れ曲がり、フロントサイドフレームの軸圧縮によるエネルギー吸収を十分に実現できないおそれがあった。
そこで、例えば、下記特許文献1では、フロントサイドフレームに作用する衝突荷重を、車体上部に位置するエプロンメンバに分散伝達するように、ホイールエプロンに沿って斜め上方側に延びてフロントサイドフレームとエプロンメンバとを連結する剛性部材を備えた車体前部構造が提案されている。
特開2005−335619号公報
ところで、前述の特許文献1のように、車体上部に衝突荷重を分散伝達する場合は、車体上部に大きな衝突荷重が作用するため、この衝突荷重を車体上部で支持する必要が生じる。
しかし、このように車体上部で衝突荷重を支持する場合には、従来よりも車体上部の剛性を高める必要が生じて、車体上部に衝突荷重を吸収支持するような補強手段等を新たに設定する必要が生じ、車体上部の重量が増加したり、車両前後方向に設置スペースを確保しなければならない等の問題が生じることになる。
そこで、本発明は、フロントサイドフレームに作用する衝突荷重を車体上部に伝達するに車体前部構造において、フロントサイドフレームの上方への屈曲を抑制してフロントサイドフレームの軸圧縮によるエネルギー吸収を実現しつつも、できるだけ車体上部に新たな補強手段等を設定することなく、衝突エネルギーを吸収支持することができる車体前部構造を提供することを目的とする。
この発明の車体前部構造は、ダッシュパネルから車両前方側に突出するフロントサイドフレームと、その車外側位置において、該フロントサイドフレームに下端部が結合されてエンジンルーム内に膨出するように形成されたサスペンション装置を収容するサスペンションタワー部とを左右それぞれに備えた車体前部構造にあって、前記サスペンションタワー部の上部と該サスペンションタワー部より車両前方側のフロントサイドフレームとを、側面視で前下がりに傾斜して結合する左右一対の第一メンバを備え、該第一メンバを平面視で車両前方側を先細りとしたハの字状に配置して、前記サスペンションタワー部の上部を車幅方向に延びるサスタワーバーで連結し、前記サスペンションタワー部の車両後方側に車幅方向に延びるカウルボックスを形成し、該カウルボックスとサスペンションタワー部の上部とを、車両前後方向に延びる第二メンバで連結し、前記第二メンバの設置位置を、平面視で前記第一メンバとのなす角度が車両内方側の方を車両外方側よりも小さくなるように設定し、さらに、前記サスペンションタワー部の上部の車幅方向外側にエプロンメンバが結合され、該エプロンメンバの後側にヒンジタワーとカウルボックスとが結合され、前記サスタワーバーがカウルボックスと離間しており、前記第二メンバが、該サスタワーバーよりも後方で、エプロンメンバよりも車幅方向内側に配置され、左右の第二メンバの後端が、平面視で前記フロントサイドフレームよりも車幅方向外側に位置して互いに離間しており、かつ、第二メンバ後端が、平面視で前記エプロンメンバと離間して前記カウルボックスに固定され、前記第二メンバが、第一メンバからの荷重によってサスペンションタワー部の上部が車幅方向外側へ変位する時、車幅方向外方側への倒れが生じて、サスペンションタワー部の上部の車幅方向外側へ変位を促進するものである。
上記構成によれば、前面衝突時にフロントサイドフレームに作用する衝突荷重は、第一メンバによってサスペンションタワー部の上部に分散伝達される。そして、第一メンバのハの字配置に起因して、サスペンションタワー部の上部に車幅方向の変位を生じさせ、サスタワーバーに車幅方向、すなわちサスタワーバーの軸方向にその衝突荷重を伝達することになる。
このため、フロントサイドフレームは、衝突荷重が車体上部に分散されるため、上方に屈曲変形することなく、適正に軸圧縮して衝突エネルギーを吸収することができる。また、サスペンションタワー部を介してサスタワーバーに軸方向の荷重を付与することで、サスタワーバーに軸方向の塑性変形を生じさせることになり、サスタワーバーで衝突エネルギーを吸収することができる。すなわち、車両前後方向に生じる衝突エネルギーを、車両の操安性向上のために設置する既存のサスタワーバーを利用して、分散吸収することができるのである。
なお、前述の第一メンバは、車両前方からの荷重伝達を適切に伝達するメンバ部材であれば、材料、形状、および成形方法等については、特に限定されるものではなく、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、スチール等で成形した、パイプ型メンバ、H型断面メンバ、I型断面メンバ、L型断面メンバ等であってもよい。また、ホイールエプロンやサスペンションタワー部と閉断面を構成するようなガセット部材であってもよい。
また、前記サスペンションタワー部の車両後方側に車幅方向に延びるカウルボックスを形成し、該カウルボックスとサスペンションタワー部の上部とを、車両前後方向に延びる第二メンバで連結したものであるから、サスペンションタワー部の上部とカウルボックスが車両前後方向に延びる第二メンバで連結されることで、サスペンションタワー部の上部に伝達される衝突荷重がカウルボックスにも直接伝達されることになる。
このため、サスペンションタワー部の上部に伝達された衝突荷重が、サスタワーバーに加えて、カウルボックスをも通じて車体上部に分散伝達されることになり、衝突性能を確実に向上することができる。
よって、車体上部への衝突荷重の分散伝達を確実に行なうことができ、フロントサイドフレームの軸圧縮によるエネルギー吸収をより確実に実現できる。
さらに、前記第二メンバの設置位置を、平面視で前記第一メンバとのなす角度が車両内方側の方を車両外方側よりも小さくなるように設定したものであり、このように、第二メンバの設置角度を、第一メンバとのなす角度が車両内方側の方を小さくなるように設定したことで、例えば、第一メンバからの荷重によって、サスペンションタワー部の上部が車幅方向外方側へ変位する場合に、第二メンバに車幅方向外方側への変位(倒れ)が生じて、サスペンションタワー部の上部の車幅方向外方側への変位が促進されることになる。
よって、第二メンバによって、カウルボックスに対して衝突荷重を分散伝達しつつも、この第二メンバがサスペンションタワー部の上部の車幅方向外方側への変位を阻害することなく促進するため、よりサスタワーバーの塑性変形によるエネルギー吸収度合を高めることができる。
この発明の一実施態様においては、前記第二メンバが平面視で前記第一メンバの後端よりも車幅方向外側に配設されており、前記サスタワーバーの車幅方向中間部位から後方に末広がりに延びて前記カウルボックスに固定される第三メンバを設けたものである。
この発明の一実施態様においては、前記第一メンバの中間部に、エンジンマウントを取付けるエンジンマウント取付け部を形成したものである。
上記構成によれば、エンジン等のパワープラントがフロントサイドフレームよりも上方に位置する第一メンバで支持されることになる。
このため、エンジンマウントの取付け部位をフロントサイドフレームに設定する必要がなくなり、フロントサイドフレームの座屈変形領域を拡大することができる。また、前面衝突時のパワープラントの後退エネルギーを第一メンバを介してサスペンションタワー部の上部に伝達できる。さらに、パワープラントの支持位置を高く設定できるため、パワープラントの振動抑制を図ることもできる。
よって、フロントサイドフレームの軸圧縮によるエネルギー吸収量をより多くすることができ、また、前面衝突時のパワープラントの後退挙動による影響を車体上部に伝達することで、車体下部の負担を軽減することができる。また、パワープラント振動のNVH(Noise Vibration Harshness)性能も高めることができる。
この発明の一実施態様においては、前記第一メンバを、前記フロントサイドフレーム上に配置されるエンジンマウントと平面視で重複するように、フロントサイドフレームの上方に延在して、該第一メンバの前端部を、前記エンジンマウントより車両前方側でフロントサイドフレームに結合したものである。
上記構成によれば、第一メンバを、フロントサイドフレーム上のエンジンマウントと平面視で重複するように設置して、そのエンジンマウントの前方位置でフロントサイドフレームに連結しているため、エンジンマウントをフロントサイドフレーム上に設置しつつも、第一メンバをサスペンションタワー部にダイレクトに連結することができる。
よって、フロントサイドフレーム上に設置したエンジンマウントの干渉をうけることなく、第一メンバによって、ダイレクトにサスペンションタワー部の上部に衝突荷重を伝達することができるため、より積極的にサスペンションタワー部の上部に車幅方向の変位を生じさせ、サスタワーバーの塑性変形を促進することができる。
この発明によれば、フロントサイドフレームは、衝突荷重が車体上部に分散されるため、上方に屈曲変形することなく、適正に軸圧縮して衝突エネルギーを吸収することができ、また、サスペンションタワー部を介してサスタワーバーに軸方向の荷重を付与することで、サスタワーバーに軸方向の塑性変形を生じさせることになり、サスタワーバーで衝突荷重を吸収することができる。すなわち、車両前後方向に生じる衝突エネルギーを、車両の操安性向上のために設置する既存のサスタワーバーを利用して分散吸収することができるのである。
よって、フロントサイドフレームに作用する衝突荷重を車体上部に伝達するに車体前部構造において、フロントサイドフレームの上方への屈曲を抑制してフロントサイドフレームの軸圧縮によるエネルギー吸収を実現しつつも、できるだけ車体上部に新たな補強手段を設定することなく、衝突エネルギーを吸収支持することができる。
本発明の実施形態を以下図面に基づいて詳述する。
まず、図1〜図7により、第一実施形態の構成について説明する。図1はこの実施形態の車体前部構造を示す左側斜視図、図2は車体前部構造を示す右側斜視図、図3は車体前部構造の平面図、図4は車体前部構造の正面図、図5は車体前部構造の左側側面図、図6は図3のA−A線矢視断面図、図7は図3のB−B線矢視断面図である。なお、各図において、ドライバーから見て右側を車両右側として説明し、左側を車両左側として説明する。
まず、図1に示すように、本実施形態の車体前部構造は、車室CとエンジンルームERとを仕切るダッシュパネル1から車両前方側に突出する左右一対のフロントサイドフレーム2,2と、このフロントサイドフレーム2,2の前端に設置した左右一対のクラッシュカン3,3と、車幅方向に延びてそのクラッシュカン3,3の前端を連結するバンパーレインフォースメント4と、エンジンルームER内でフロントサイドフレーム2,2の外側方でエンジンルームER内方に膨出して上下方向に立設する左右一対のサスペンションタワー部5,5(以下、サスタワーと略記する)と、さらにそのサスタワー5,5の外側方上部位置で車両前後方向に延設する左右一対のエプロンメンバ6,6と、エプロンメンバ6,6とフロントサイドフレーム2,2との間で前輪(図示せず)を覆うように張設されるホイールエプロン7,7と、エプロンメンバ6,6の後方で上下方向に延びる左右一対のフロントピラー8,8と、フロントピラー8,8の下部で上下方向に延びるヒンジタワー9,9と、ダッシュパネル1の上部で左右のヒンジタワー9,9の間で車幅方向に延びてヒンジタワー9,9を連結するカウルボックス10とを有する。
前述のフロントサイドフレーム2,2は、断面略ハット状のインナパネルとアウタパネル(具体的には図示せず)を接合することで、車両前後方向に延びる強固な閉断面を形成している。このフロントサイドフレーム2,2で、車両前突時に作用する車両前後方向の衝突エネルギーを支持している。
前述のクラッシュカン3,3は、車両前突時の衝撃に対して座屈変形することで、衝突エネルギーを吸収するよう脆弱部3a…(図5参照)を設けた四角筒状の部材で構成している。
前述のバンパーレインフォースメント4は、車幅方向に延設した断面コ字状のメンバ部材によって構成しており、車両前方からの衝突エネルギーを前述のクラッシュカン3,3に伝達するように構成している。また、このバンパーレインフォースメント4の表面には車幅方向に延びるバンパーフェイス(図示せず)を取付けている。
前述のサスタワー5,5は、フロントサイドフレーム2,2の外側部に下端部5aを接合した円筒状体で形成しており、内部には、図示しないサスペンション装置のダンパー等を収容している。そして、その上部には、そのダンパー等を固定するため強固に構成した(後述する)、サスタワー上部52を設定している。
前述のエプロンメンバ6,6は、エンジンルームERの側方上縁部に位置して車両前後方向に延びる閉断面を形成している。このエプロンメンバ6は、サスタワー5の外側方に位置して、サスタワー5に作用する衝突荷重も支持するように構成している。
前述のホイールエプロン7,7は、フロントサイドフレーム2とエプロンメンバ6とを繋ぐ異形のパネル体で形成され、エンジンルームERの上部側壁を構成しており、エンジンルームERを車外から仕切る仕切り壁として機能している。
前述のフロントピラー8,8は、エプロンメンバ6,6の後端位置から斜め上方側に延びる閉断面によって構成され、図示しないルーフパネルに向って上方に延びている。
前述のヒンジタワー9,9は、フロントピラー8,8の下部に位置して、上下方向に延びることで車室Cの前部側壁を構成している。このヒンジタワー9,9の後端には、図示しないフロントドアの回転ヒンジを設けている。
前述のカウルボックス10は、車幅方向に湾曲して延びる閉断面によって構成しており、ダッシュパネル1の上部に接合することで(図7参照)、車室前端上部の剛性を向上している。なお、車幅方向に延びるダッシュパネル1はダッシュアッパ1aとダッシュロア1bとによって構成している(図7参照)
本実施形態では、前部車体構造の衝突性能を高めるため、さらに、フロントサイドフレーム2,2とサスタワー上部52,52を連結するブリッジ状の第一メンバ11,12と、サスタワー上部52,52とカウルボックス10とを連結する第二メンバ20,20と、左右のサスタワー上部52,52を連結するサスタワーバー21と、カウルボックス10端部とサスタワーバー21中央部を連結する第三メンバ22,22と、を設けている。
まず、ブリッジ状の第一メンバ11,12は、アルミニウム等の軽合金で鋳造成形した長尺の角柱メンバで形成しており、その前端部11a、12aをフロントサイドフレーム2の前部、具体的にはフロントサイドフレーム2のサスタワー5より前方位置で前端よりやや後方位置に締結固定して、その後端部11b、12bをサスタワー上部52の前壁面に締結固定することで、図5に示すように、側面視で、サスタワー上部52からフロントサイドフレーム2に向って下方に傾斜して、直線状に延びるように設置している。
また、平面視においては、図3に示すように、左右一対の第一メンバ11,12を、車両前方から車両後方側に向うに従って、徐々に車両外方側に広がるように略ハ字状に傾斜配置して、フロントサイドフレーム2,2と、車幅方向のオフセット量が少ないサスタワー上部52,52とを、連結するように設置している。
また、右側の第一メンバ11の中間部には、エンジンE、ミッションM等で構成したパワープラントPを支持するエンジンマウント取付け部13を形成している。このエンジンマウント取付け部13は、図1に示すように円筒型マウント14(No.3マウント)を上方から嵌め込むことで取付けるように、鉛直方向に延びる有底の凹状孔部15で構成している。
一方、図2に示すように、左側の第一メンバ12には、エンジンマウントを取付けるエンジンマウント取付け部は形成されず、フロントサイドフレーム2上に設置された角型マウント16(No.4マウント)の上方に第一メンバ12が位置するように設定している。
サスタワー上部52と第一メンバ11の締結部分の構造を、図6によって説明する。
サスタワー5は、上端を閉鎖した中空円筒の本体部53を備え、その本体部53の内部にはサスペンション装置のコイルスプリングSを保持する受部54を形成し、本体部53の略中央には、ゴムブッシュ55を介して図示しないダンバー軸を配置する貫通孔56を形成している。この本体部53の上部に、外縁部を起立形成した円形キャップ状の補強部材57をボルト58等で固定することで、強固なサスタワー上部52を構成している。本体部53と補強部材57で囲まれた空間Qは、平面視(上方視)で略リング状の閉断面を構成して、サスタワー上部52の剛性を高めている。
このように剛性を高めたサスタワー上部52に対して、第一メンバ11の後端部11bに設けた締結フランジ11Bを、ボルト16と締結ナット17で締結固定することで、第一メンバ11をサスタワー上部52に固定している。
また、前述の第二メンバ20、20も、図1に示すように、アルミニウム等の軽合金で鋳造成形した角柱メンバで形成しており、その前端部20aをサスタワー上部52に締結固定して、その後端部20bをカウルボックス10の前面部に締結固定している。そして、この第二メンバ20,20の延設方向は、図3に示すように、略車両前後方向に延びるよう設定して、前述の第一メンバ11,12とのなす角を、車両内方側の角度αの方が車両外方側の角度βよりも小さくなるように設定している(図面では左側のみ示す)。
この第二メンバ20,20とサスタワー上部52の締結部分の構造も、図6に示すように、前述の補強部材57と本体部53とによって構成された閉断面Qに対して、第二メンバ20,20の前端部20aの締結フランジ20Aを、ボルト23と締結ナット24で締結固定することで構成している。
また、第二メンバ20,20とカウルボックス10の締結部分の構造も、図7に示すように、カウルボックス10の前面10a(フロントパネル)に対して、第二メンバ20の後端部20bに設けた締結フランジ20Bを、ボルト25と締結ナット26で締結固定することで構成している。
また、前述のサスタワーバー21は、図1に示すように、アルミニウム等の軽合金で鋳造成形した長尺の角柱メンバで形成しており、車幅方向に延設することで左右のサスタワー上部52、52を連結している。このサスタワーバー21も前述の第一メンバ11,12や第二メンバ20,20と同様に、補強部材57で補強されたサスタワー上部52に、ボルトと締結ナットで締結固定されている(具体的には図示せず)。
また、第三メンバ22,22は、図1に示すように、円筒形状のロッド部材で構成して、前端部をサスタワーバー21の中央部の連結ブラケット21Aを介してサスタワーバー21に連結して、後端部をカウルボックス10の前面部に締結固定することで、図3に示すように、車両後方側を末広がりに大きく傾斜配置している。
次に、以上のように構成したこの実施形態の車体前部構造における、前面衝突時の挙動について、図8〜図11の模式図により説明する。図8、図9は従来構造との比較において本実施形態の衝突時の挙動を示した側面図、図10、図11は本実施形態の衝突時の挙動を示した平面図である。各図において(A)は前突前、(B)は前突初期、(C)は前突中期、(D)は前突後期を表している。
なお、同一の構成要素については、前述の図1〜図7と同一の符号を付して説明を省略する。また、図8、図9において、Tは前輪タイヤ、Wはタイヤホイール、Bはバリア、Gはタイヤ接地面を示している。
まず、図8、図9において、側面視における前面衝突時の挙動について説明する。
前突初期から前突中期にかけて、図面右側の従来構造では、バンパーレインフォースメント4が後退してクラッシュカン3が座屈変形することで、衝突初期の衝突エネルギーを吸収することができる。しかし、衝突エネルギーが車体上部に分散されずにフロントサイドフレーム2に集中するため、その基部であるダッシュパネル1近傍から上方に折れ曲がり変形が生じて、エンジンルーム内のパワープラントPが後方、かつ上方に変位する所謂ノーズダイブ挙動が発生する。また、タイヤホイールWも硬質であるため後方に変位することでダッシュパネル1の後退を助長する。
これに対して、図面左側の本実施形態の構造では、バンパーレインフォースメント4が後退してクラッシュカン3が座屈変形することで、衝突初期の衝突エネルギーを吸収することができることに加えて、ブリッジ状の第一メンバ11によって、フロントサイドフレーム2の衝突エネルギーをサスタワー上部52に分散伝達できることから、フロントサイドフレーム2には上方への折れ曲がり変形が生じることはない。また、第一メンバ11がエンジンマウント取付け部13によってパワープラントPを支持しているため、パワープラントPの後方、かつ上方への変位(動き)もサスタワー上部52に分散して伝達でき、パワープラントPの後退が抑制され、ノーズダイブ挙動を抑えることができる。
さらに、前突中期から前突後期に衝突が進むと、従来の構造では、フロントサイドフレーム2が逆への字状に大きく上方に折れ曲がり、ノーズダイブ挙動が更に大きくなり、エプロンメンバ6が潰れる。
これに対して、本実施形態の構造では、フロントサイドフレーム2に更に軸方向の座屈変形が生じて、衝突エネルギーが吸収される。それと共に、パワープラントPの後退エネルギーが第一メンバ11によってサスタワー上部52に伝達されてエプロンメンバ6やカウルボックス10、さらには後述するように、サスタワーバー21に分散されるため、ノーズダイブ挙動を抑制できる。
次に、図10、図11で、平面視における前面衝突時の挙動について説明する。
前突初期(図10のB参照)から前突中期(図11のC参照)にかけて、前述のようにバンパーレインフォースメント4が後退してクラッシュカン3,3が座屈変形することで、衝突初期の衝突エネルギーが吸収される。また、第一メンバ11,12がフロントサイドフレーム2,2の衝突エネルギーをサスタワー上部52に分散して伝達するため、フロントサイドフレーム2,2に衝突エネルギーが集中するのを緩和できる。このとき、フロントサイドフレーム2,2とのオフセット量が少ないサスタワー上部52,52に第一メンバ11,12によってダイレクトに衝突荷重を伝達しているため、第一メンバ11,12の車幅方向の傾斜角度を大きくすることなく、確実に衝突エネルギーを伝達することができる。
そして、衝突中期(図11のC参照)からさらに衝突が進むと、フロントサイドフレーム2,2の衝突エネルギーとパワープラントPの後退エネルギーが第一メンバ11,12からサスタワー上部52に伝達される。このとき、第二メンバ20,20を通じてカウルボックス10等にもエネルギーが分散伝達されるため、サスタワー5,5の負担を軽減できる。
さらに、衝突が進むと、第一メンバ11,12からの荷重を受けてサスタワー上部52,52が車幅方向外方側に変位することになる。すなわち、第一メンバ11,12をハの字状に配置したことで、サスタワー上部52,52に内開きの荷重が作用して車幅方向外方側に変位するのである(図11のD参照)
このサスタワー上部52,52の変位によって、左右のサスタワー上部52,52間を連結するサスタワーバー21に対して車幅方向、すなわちサスタワーバー21の軸方向に引っ張り荷重が作用することになり、サスタワーバー21に引っ張りによる塑性変形が生じることになる。
なお、このサスタワー上部52,52の変位は、オフセット衝突など、衝突荷重の入力方向が変化した場合には、車幅方向内方側に生じる場合もある。この場合にも、サスタワーバー21には、軸方向の圧縮方向の荷重が作用して、サスタワーバー21に塑性変形が生じることになる。
また、左側の第一メンバ12では、エンジンマウント取付け部を設けていないため、車両前方側からの衝突エネルギーのみがダイレクトにサスタワー上部52に伝達されることになり、より積極的にサスタワー上部52に車幅方向の変位を生じさせることができる。
このように、フロントサイドフレーム2,2に生じる衝突エネルギーを、車体上部のサスタワー上部52、エプロンメンバ6,6、カウルボックス10、さらに、車幅方向に延びるサスタワーバー21に分散して吸収させることで、フロントサイドフレーム2,2の折れ曲がり変形を抑えて、パワープラントPの後退等によるノーズダイブ挙動を抑えることができる。
次に、このように構成した本実施形態の作用効果について詳述する。
まず、この実施形態では、サスタワー上部と、そのサスタワーより車両前方側のフロントサイドフレームとを、側面視で前下がりに傾斜して結合する左右一対の第一メンバを備え、その第一メンバを平面視で車両前方側を先細りとしたハの字状に配置して、サスタワー上部を車幅方向に延びるサスタワーバーで連結している。
これにより、前面衝突時にフロントサイドフレームに作用する衝突荷重は、第一メンバによってサスタワー上部に分散伝達される。そして、第一メンバのハの字配置に起因して、サスタワー上部に車幅方向の変位を生じさせ、サスタワーバーに車幅方向、すなわち、サスタワーバーの軸方向にその衝突荷重を伝達することになる。
このため、フロントサイドフレームは、衝突荷重が車体上部に分散されるため、上方に屈曲変形することなく、適正に軸圧縮して衝突エネルギーを吸収することができる。また、サスタワー上部を介してサスタワーバーに軸方向の荷重を付与することで、サスタワーバーに軸方向の塑性変形を生させることになり、サスタワーバーで衝突エネルギーを吸収することができる。すなわち、車両前後方向に生じる衝突エネルギーを、車両の操安性向上のために設置する既存のサスタワーバーを利用して分散吸収することができるのである。
よって、フロントサイドフレームに作用する衝突荷重を車体上部に伝達するに車体前部構造において、フロントサイドフレームの上方への屈曲を抑制してフロントサイドフレームの軸圧縮によるエネルギー吸収を実現しつつも、できるだけ車体上部に新たな補強手段を設定することなく、衝突エネルギーを吸収支持することができる。
なお、前述の第一メンバは、車両前方からの衝突荷重を適切に後方に伝達する部材であれば、材料、形状、及び成形方法等については、特に限定されるものではなく、アルミニウム合金やスチール等で成形した、パイプ型メンバ、H型断面メンバ、I型断面メンバ、L型断面メンバ等であってもよい。
また、この実施形態では、サスタワーの車両後方側に車幅方向に延びるカウルボックスを形成し、そのカウルボックスとサスタワー上部とを、車両前後方向に延びる第二メンバで連結している。
これにより、サスタワー上部に伝達される衝突荷重がカウルボックスにも直接伝達されることになる。
このため、サスタワー上部に伝達された衝突荷重が、サスタワーバーに加えて、カウルボックスをも通じて車体上部に分散伝達されることになり、衝突性能を確実に向上することができる。
よって、車体上部への衝突荷重の分散伝達を確実に行なうことができ、フロントサイドフレームの軸圧縮によるエネルギー吸収をより確実に実現できる。
また、この実施形態では、前記第二メンバの設置位置を、平面視で第一メンバとのなす角度が車両内方側(角度α)の方を車両外方側(角度β)よりも小さくなるように設定している。
これにより、第一メンバからの荷重によって、サスタワー上部が車幅方向外方側へ変位する場合に、第二メンバに車幅方向外方側への変位が生じてサスタワー上部の車幅方向外方側への変位が促進されることになる。
よって、第二メンバによって、カウルボックスに対して衝突荷重を分散伝達しつつも、この第二メンバがサスタワー上部の車幅方向外方側への変位を阻害することなく促進するため、よりサスタワーバーの塑性変形によるエネルギー吸収度合を高めることができる。
また、この実施形態では、前記第一メンバの中間部に、No.3マウント14を取付けるエンジンマウント取付け部13を形成している。
これにより、エンジンE等のパワープラントPがフロントサイドフレーム2よりも上方に位置する第一メンバで支持されることになる。
このため、エンジンマウントの取付け部位をフロントサイドフレーム2,2に設定する必要がなくなり、フロントサイドフレーム内部に節等の補強部材を設ける必要がなく、その分、フロントサイドフレーム2の座屈変形領域を拡大することができる。よって、フロントサイドフレーム2の軸圧縮によるエネルギー吸収量をより多くすることができる。
また、前面衝突時に生じるパワープラントPの後退エネルギーをブリッジ状の第一メンバ11を介してサスタワー上部52に伝達することができる。よって、前面衝突時のパワープラントPの後退挙動による影響を車体上部に伝達することで、車体下部の負担を軽減することができる。
さらに、パワープラントPのNo.3マウント14の支持位置を高く設定できるため、No.3マウント14のゴム弾性を柔らかくしつつも、パワープラントPの変動を抑えて振動抑制を図ることもできる。よって、パワープラント振動のNVH性能も高めることができる。
また、この実施形態では、第一メンバ12を、フロントサイドフレーム2上に配置されるNo.4マウント16と平面視で重複するように、フロントサイドフレーム2の上方に延在して、第一メンバ12の前端部12aを、No.4マウント16より車両前方側でフロントサイドフレーム2に結合したものである。
これにより、第一メンバ12を、フロントサイドフレーム2上のNo.4マウント16と平面視で重複するように設置して、そのNo.4マウント16の前方位置でフロントサイドフレーム12に連結しているため、No.4マウント16をフロントサイドフレーム2上に設置しつつも、第一メンバ12をサスタワー上部52にダイレクトに連結することができる。
よって、フロントサイドフレーム2上に設置したNo.マウント16の干渉をうけることなく、第一メンバ12によって、ダイレクトにサスタワー上部52に衝突荷重を伝達することができ、より積極的にサスタワー上部52に車幅方向の変位を生じさせ、サスタワーバー21の塑性変形を促進することができる。
次に、図12により、第二実施形態の構成について説明する。この第二実施形態では、前述の軽合金の角柱メンバで構成した第一メンバ11,12の代わりに、サスタワー5,5とホイールエプロン7,7との間で閉断面を構成する連結ガセット100,100を設けて、フロントサイドフレーム2,2に生じる衝突エネルギーを、サスタワー上部52,52に伝達するように構成している。その他、同一の構成要素については、第一実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。
前述の連結ガセット100は、図12に示すように、前端下部101をフロントサイドフレーム2とホイールエプロン7、後端上部102をサスタワー上部52に接合した略三角状のボックス体によって構成され、周縁に設けた複数のフランジ部103…を、サスタワー5前壁やホイールエプロン7に接合することで、閉断面を形成している。
この連結ガセットの上面壁104,104は、サスタワー上部52とフロントサイドフレーム2との間で斜め下方に傾斜するように配置されているため、前述の実施形態と同様に、フロントサイドフレーム2,2に作用する車両前方からの衝突エネルギーを、サスタワー上部52,52に分散伝達することができる。
また、この連結ガセット100,100は、左右の上面壁104,104を平面視で車両前方側を先細りとしたハの字状に配置しているため、前述の実施形態と同様に、車両前突時にはサスタワー上部52,52を車幅方向外方側に変位させることができる。よって、本実施形態でも、前述の実施形態と同様に、サスタワーバー21に軸方向の塑性変形を生じさせることができ、サスタワーバー21で衝突エネルギーを吸収することができる。
特に、本実施形態では、連結ガセット100をスチール材料で構成することができるため、他の車体部材と一体化することができ、ボルトや締結ナット等の締結部材を削減することができる。
また、連結ガセット100をスチール材料とすることで、他の車体部材と同じ材料で形成できるため、生産コストも低減できるという効果も奏する。
なお、本実施形態では、エンジンマウントやエンジンマウント取付け部について開示していないが、前述の実施形態と同様に、連結ガセット100の中間部等にエンジンマウント取付け部を設けてもよい。
その他の作用効果については、前述の第一実施形態と同様である。
以上、この発明の構成と、前述の実施形態との対応において、
この発明の第一メンバは、ブリッジ状の第一メンバ11,12、連結ガセット100に対応し、
以下同様に、
エンジンマウント取付け部に取付けられるエンジンマウントは、No.3マウント14に対応し、
フロントサイドフレーム上に配置されるエンジンマウントは、No.4マウント16に対応するも、
この発明は、前述の実施形態に限定されるものではなく、あらゆる車体前部構造に適用する実施形態を含むものである。
第一実施形態の車体前部構造を示す左側斜視図。 第一実施形態の車体前部構造を示す右側斜視図。 車体前部構造の平面図。 車体前部構造の正面図。 車体前部構造の左側側面図。 図3のA−A線矢視断面図。 図3のB−B線矢視断面図。 従来構造との比較において本実施形態の衝突時の挙動を示した側面図。 従来構造との比較において本実施形態の衝突時の挙動を示した側面図。 本実施形態の衝突時の挙動を示した平面図。 本実施形態の衝突時の挙動を示した平面図。 第二実施形態の車体前部構造を示す左側斜視図。
1…ダッシュパネル
2…フロントサイドフレーム
5…サスペンションタワー部
6…エプロンメンバ
9…ヒンジタワー
10…カウルボックス
11…第一メンバ
12…第一メンバ
13…エンジンマウント取付け部
14,16…マウント(エンジンマウント)
20…第二メンバ
21…サスタワーバー
22…第三メンバ
52…サスペンションタワー部の上部
100…連結ガセット

Claims (4)

  1. ダッシュパネルから車両前方側に突出するフロントサイドフレームと、その車外側位置において、該フロントサイドフレームに下端部が結合されてエンジンルーム内に膨出するように形成されたサスペンション装置を収容するサスペンションタワー部とを左右それぞれに備えた車体前部構造にあって、
    前記サスペンションタワー部の上部と該サスペンションタワー部より車両前方側のフロントサイドフレームとを、側面視で前下がりに傾斜して結合する左右一対の第一メンバを備え、
    該第一メンバを平面視で車両前方側を先細りとしたハの字状に配置して、
    前記サスペンションタワー部の上部を車幅方向に延びるサスタワーバーで連結し
    前記サスペンションタワー部の車両後方側に車幅方向に延びるカウルボックスを形成し、
    該カウルボックスとサスペンションタワー部の上部とを、車両前後方向に延びる第二メンバで連結し、
    前記第二メンバの設置位置を、平面視で前記第一メンバとのなす角度が車両内方側の方を車両外方側よりも小さくなるように設定し、
    さらに、前記サスペンションタワー部の上部の車幅方向外側にエプロンメンバが結合され、
    該エプロンメンバの後側にヒンジタワーとカウルボックスとが結合され、
    前記サスタワーバーがカウルボックスと離間しており、
    前記第二メンバが、該サスタワーバーよりも後方で、エプロンメンバよりも車幅方向内側に配置され、
    左右の第二メンバの後端が、平面視で前記フロントサイドフレームよりも車幅方向外側に位置して互いに離間しており、かつ、第二メンバ後端が、平面視で前記エプロンメンバと離間して前記カウルボックスに固定され、
    前記第二メンバが、第一メンバからの荷重によってサスペンションタワー部の上部が車幅方向外側へ変位する時、車幅方向外方側への倒れが生じて、サスペンションタワー部の上部の車幅方向外側へ変位を促進することを特徴とする
    車体前部構造。
  2. 前記第二メンバが平面視で前記第一メンバの後端よりも車幅方向外側に配設されており、
    前記サスタワーバーの車幅方向中間部位から後方に末広がりに延びて前記カウルボックスに固定される第三メンバを設けた
    請求項1記載の車体前部構造。
  3. 前記第一メンバの中間部に、エンジンマウントを取付けるエンジンマウント取付け部を形成した
    請求項1または2に記載の車体前部構造。
  4. 前記第一メンバを、前記フロントサイドフレーム上に配置されるエンジンマウントと平面視で重複するように、フロントサイドフレームの上方に延在して、
    該第一メンバの前端部を、前記エンジンマウントより車両前方側でフロントサイドフレームに結合した
    請求項1〜3の何れか1項に記載の車体前部構造。
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