<実施の形態1>
図1はこの発明における実施の形態1である移動体通信システムの構成を示す説明図である。同図に示すように、コアネットワーク、基地局制御装置などを含む基地局上位装置1に、複数の基地局11〜14が接続されたネットワーク構成を持ち、移動局(端末)2が、基地局11〜14のうち複数の基地局と同時に通信を行うことが可能なシステムである。
図1において、基地局上位装置1は、複数の基地局11〜14と接続されており、基地局と制御信号を送受信することにより、基地局11〜14を制御したり、接続された複数の基地局11〜14に対して、同じデータを同時に配信することができる。基地局11〜14はそれぞれ移動局2と無線通信を行う機能を持っている。図1において、基地局11は、移動局2とは無線通信を行っている状態ではなく、基地局12〜14は、移動局2と無線通信を行っている状態を示している。移動局2は基地局11〜14と同時に無線通信を行うことができる。このように、図1では、例として、移動局2と基地局11〜14のうち、基地局12〜14とが通信状態にある状況を示している。なお、基地局上位装置と、基地局との接続は、無線伝送によるものでも、有線伝送によるものでも良い。
このような構成において、基地局11〜14は、複数の無線リソースを同時に処理できるものであり、図1では、3つの(無線)リソースを10A〜10Cで示している。無線リソースは、例えば、無線通信がOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)方式などのような、マルチキャリア伝送である場合は、リソース10Aをあるサブキャリア、リソース10Bをリソース10Aとは周波数の異なる別のあるサブキャリア、リソース10C、リソース10A,10Bとは周波数の異なる別のあるサブキャリアとしても良い。
図1では、移動局2は、基地局12に対して、リソース指定信号RS2によりリソース10Cを指定している。また、移動局2は基地局13に対して、リソース指定信号RS3によりリソース10Bを指定している。さらに、移動局2は基地局14に対して、リソース指定信号RS4によりリソース10Aを指定している。
このように、実施の形態1の移動体通信システムは、移動局2が、基地局12〜14と同時に無線通信を行い、基地局12〜14それぞれの無線リソースを指定することにより、基地局11〜14に対する無線リソース管理が簡易になり、基地局上位装置1による基地局11〜14の無線リソースの管理も簡易になる。なぜならば、移動局2が基地局11〜14の無線リソースの指定を行う分、基地局11〜14及び基地局上位装置1の負担が軽減されるからである。
また、実施の形態1の移動体通信システムは異なる通信方式を共存させることができる効果を奏する。以下、この点について詳述する。
上述した特許文献1〜特許文献3に開示されたシステムは、1つのコアネットワークに接続された複数の基地局X,Yが、同時に1つの移動局(端末)Aと無線通信状態にあることを想定した内容となっている。
異なる通信方式が存在するということは、異なるコアネットワークがもう1つ存在し、それに従属した基地局制御装置、基地局Z,Wが存在し、やはり、移動局Aに接続されていることになる。
上述した異なるコアネットワークとの共存させることに関し、特許文献1〜3に何らな開示されておらず、コアネットワークが無線リソースを制御する限り、別のコアネットワークの無線リソースを知ることはできないことから、上記特許文献1〜特許文献3に開示されたシステムでは異なる通信方式を共存させることができない。
一方、実施の形態1の移動体通信システムは、移動局が無線リソースを制御する構成であるため、異なる通信方式を共存させることが可能になる。すなわち、移動局が無線リソースを制御できるならば、異なるコアネットワークに属する複数の基地局との通信も、自らリソースを振り分けることができるため、可能となる。
このように、複数の基地局がそれぞれ異なった通信方式であった場合でも、移動局側でその違いを認識して、それぞれの基地局に対して、方式に合った通信になるように変更することができる。
さらに、移動局2は複数の基地局12〜14と同時に無線通信を行ってリソース指定を行うことにより、複数の基地局に対するリソース制御を迅速に行うことができる。
図2は移動局2と基地局11〜14との間の無線通信が、マルチキャリア伝送の方式で行われた場合の、移動局2が指定する基地局11〜14のリソースを示す説明図である。図1に示したように移動局2は、基地局12〜14と通信状態にあり、図2は、図1に対応付けた基地局12〜14へのリソース指定状況を示している。
図2の(a)において、無線リソースBS2は基地局12に対する無線リソースを示している。斜線部分は、移動局2がリソース指定信号RS2により指定したリソース10Cを示している。移動局2は、基地局12の利用周波数f1〜fNのうち、ある時間帯(図2の無線リソースBS2の2マス分)のみ、f2の中心周波数を持つサブキャリアをリソース10Cとして指定する。
また、図2の(b)において、無線リソースBS3は基地局13に対する無線リソースを示している。斜線部分は、無線リソースBS1と同様、移動局2がリソース指定信号RS3により指定したリソースを示している。そして、移動局2は、基地局13の利用周波数f1〜fNのうち、ある時間帯(図2の無線リソースBS3の4マス分)のみ、f3,f4の中心周波数を持つサブキャリアをリソース10Bとしてを指定する。
さらに、図2の(c)において、無線リソースBS4は基地局14に対する無線リソースを示している。斜線部分は、無線リソースBS2,BS3と同様、移動局2がリソース指定信号RS4により指定したリソースを示している。移動局2は、基地局14の利用周波数f1〜fNのうち、ある時間帯(図2の無線リソースBS4の1マス分)のみ、f1の中心周波数を持つサブキャリアをリソース10Aとして指定する。
マルチキャリア伝送が、例えば、OFDMのように、隣接するサブキャリア同士が直交多重するような方式でなされた場合、上記の様に、隣の中心周波数(例えばf1とf2、f2とf3)を同時に無線通信しても、干渉を低減して、通信することが可能である。
このように、移動局2が、基地局12〜14の無線リソースを効率よく利用することができる。また、移動局2は、基地局12〜14に対し、使用するリソースの情報を、リソース指定信号RS2〜RS4によってサブキャリア番号(f1,f2,…の、1,2)という少ない情報だけ通知すればよいことになる。
移動局2による、基地局12〜14のリソース指定の方法は概ね以下の方法1〜方法5に大別される。
方法1:基地局12〜14から各基地局のリソース関連情報を通知してもらい、それを元に移動局2が基地局12〜14それぞれのリソースを指定する方法である。なお、リソース関連情報は無線リソースの輻輳状況等のリソース使用情報IR、及び当該リソース用に割り当てられた滞留データ量である滞留データ量等の滞留情報IDを含む情報である。
方法2:あるリソース関連情報通知用基地局が、所定数の隣接基地局のリソース関連情報を移動局に通知することにより、移動局が通知用基地局及び所定数の隣接基地局のリソースを指定する方法である。例えば、基地局13がリソース関連情報通知用基地局として、基地局12,14のリソース関連情報をも移動局2に通知すると、移動局2は、1つの基地局13から、3つの基地局12〜14のリソース関連情報を得ることができ、基地局12〜14に対して、どのリソースを指定したら良いか判断を行ってリソースを指定することができる。
方法3:基地局上位装置1の役割を基地局11〜14と等価な関係にある他の基地局が行う方法である。
方法4:移動局2が、基地局の送信電力を可能な限り最小とするようにリソースを制御する方法である。
方法5:移動局2が互いに異なる複数の基地局と、それぞれ異なるデータを送受する方法である。
以下、方法1の詳細について図1を例にして説明する。基地局11〜14は、報知情報(リソース関連情報)として、それぞれの基地局における無線リソースの使用状況、データの滞留情報を、報知チャネルを用いて基地局のセル内にある全ての移動局に対して、無指向で送信している。無線リソースの使用状況は、無線リソースの輻輳状況を意味し、データの滞留情報とは、基地局上位装置1から基地局11〜14に対して伝送されたデータ等が基地局11〜14それぞれの内部で滞留している量に関する情報である。
図3は報知チャネル上に乗せられたリソース関連情報RJの内容を示す説明図である。同図に示すように、リソース関連情報RJは、リソース使用情報IRと滞留情報IDとから構成される。
図4はリソース使用情報IRの詳細を示す説明図である。同図に示すように、各リソースにリソース番号が割り当てられており、各リソースのリソース使用状況が、使用リソースの場合は“1”、空きリソースの場合は“0”というように、ビット表現で示される。実際のデータとしては、16進数表示となり、図4の例では、リソース使用情報IRは16進数で“7D”となる。
図5は滞留情報IDにおける滞留レベルを示す説明図である。同図に示すように、滞留情報IDは、滞留情報量[kbyte]に基づき64レベルに区分され、64レベルを16進数表示したものを滞留レベルとして報知チャネル上に乗せている。レベルは、リソース毎に存在し、先頭リソースから順にレベル情報がリソース関連情報RJの滞留情報IDとして格納される。
図6は滞留情報IDの詳細を示す説明図である。同図に示すように、滞留情報IDはリソース単位滞留情報ID1,ID2,ID3,…から構成されている。各IDi(i=1,2,3,…)は、リソース番号iと対にして滞留レベルを格納している。
上述したリソース関連情報RJの基地局から移動局への伝送は、CDMA(Code Division Multiple Access)方式であれば、次のように行われる。各基地局は、それぞれ異なる拡散コードを乗算しておき、移動局に対して、送信する。移動局は、報知チャネル上のリソース関連情報RJを受信した後に、それぞれの基地局に応じた拡散コードを用いて、基地局毎のリソース関連情報RJを復調することができる。
一方、TDMA(Time Division Multiple Access)方式であれば、各基地局は、それぞれに割当てられたタイムスロットにリソース関連情報RJを乗せる。移動局は、各基地局からのリソース関連情報RJを決められたタイムスロットに応じて取得し、基地局毎のリソース関連情報RJを認識する。
また、OFDM方式であれば、移動局は、ある中心周波数を持つサブキャリアを、ある基地局送信の報知チャネル受信用として割当て、そこから、その基地局が送信するリソース関連情報RJを得る。他の基地局発信の報知チャネルは、また別な中心周波数を持つサブキャリアを割当てる。
このようにして、移動局は、複数の基地局がそれぞれ送信するリソース関連情報RJが、どの基地局から発信されたものであるかを識別することができる。
図7は実施の形態1の移動体通信システムにおける基地局の内部構成を示すブロック図である。なお、基地局100は図1の基地局11〜14それぞれに相当する。
基地局100は、上述した方法1を実現すべく、移動局2がリソースの制御を行う際に必要なリソース関連情報RJを送信可能な構成を呈している。
アンテナ部101は移動局2あるいは他の基地局と送受信を行う。変調部102は、送信を行いたいデータを変調する。チャネルコーディング部103は基地局上位装置140からデータ格納部104を介して伝送されてくるデータフォーマット(TrCH:Transport Channel)を、無線送信用データフォーマット(PhCH:Physical Channel)に変換する。
データ格納部104は基地局上位装置140から伝送されてきたデータを、基地局100が処理するまでに一時的に格納しておく。リソース対応付け部105は変調部102、チャネルコーディング部103、及びデータ格納部104の3部間のリソース対応付け、また、復調部109、チャネルコーディング部108、及びデータ格納部107の3部間のリソース対応付けを行うためのリソース対応情報RCを認識する。
滞留レベル算出部106は、データ格納部104,107に、処理されず蓄えられたデータ量に基づき、滞留レベルを算出し、リソース対応情報に基づき、リソース毎に滞留レベルを対応づけた滞留情報IDを取得し、この滞留情報IDにリソース使用情報IRを付加してリソース関連情報RJを生成する。
データ格納部107、上りデータを、基地局上位装置140に伝送する処理を行う前に、一時的に格納する。チャネルコーディング部108は、無線受信したデータフォーマット(PhCH)を上位装置に伝送するデータフォーマット(TrCH)に変換する。復調部109は受信したチャネルを復調する。なお、基地局上位装置140として基地局制御装置やコアネットワーク等が考えられる。
以下、図7を参照して、基地局100による下りデータ送信内容について説明する。基地局100は、基地局上位装置140よりデータを受取ると、データ格納部104に格納する。基地局上位装置140から伝送されてくるデータは、基地局100と基地局上位装置140とがIP網で接続されていた場合は、IPフォーマットで伝送されてくる、また、基地局100と基地局上位装置140とがATM網で接続されていた場合は、ATMフォーマットで伝送されてくる。しかしながら、格納される段階では、TrCHのフォーマットに変換されているものとする。変換の内容は省略する。
データ格納部104に格納されたデータのうち、先に到着して格納されたデータから順に、チャネルコーディング部103でチャネルコーディング処理を行う。データは、チャネルコーディング処理において、TrCHからPhCHに変換される。その後、変調部102において、PhCHデータは、方式に応じて、QPSK、CDMA、OFDMなどの変調が行われ、RF信号にアップコンバートされてアンテナ部101より移動局2に送信される。
データ格納部106において格納されたデータの、どのデータをチャネルコーディングして、変調部102の無線リソースにマッピングすればよいかをテーブル形式等により示すリソース対応付け情報RCは、リソース対応付け部105において格納されている。変調部102、チャネルコーディング部103及びデータ格納部104それぞれの処理は、リソース対応付け部105に格納されたリソース対応情報RCを参照して、それぞれの処理を行う。
例えば、基地局上位装置140から伝送されてきた格納データ識別番号=3のデータは、変調部102において、無線リソース番号=5に対応付けられている場合、チャネルコーディング部103は、リソース対応情報RCに基づき、格納データ識別番号=3に関するチャネルコーディングの情報パラメータを元にチャネルコーディング処理を行い、変換されたPhCHデータを、無線リソース番号=5に割当てる処理を行う。チャネルコーディングの情報パラメータとは、例えば、3GPP TS25.212に記載されているビット数の情報などを示す。変調部102においては、OFDM方式であれば、5番目のサブキャリアに割当てるような処理を行う。
リソース対応付け部105は、移動局2によりリソース制御がなされる場合は、移動局2よりリソース割当て情報を受取り、リソース対応付けを行いリソース対応情報RCを得る。また、基地局上位装置140によりリソース制御がなされる場合は、基地局上位装置140より、データとは別のメッセージにて、リソース割当て情報を受取り、リソース対応付けを行ってリソース対応情報RCを得る。
次に、図7を参照して、基地局100による上りデータ受信処理を説明する。アンテナ部101より受信した受信データは、ダウンコンバート(ダウンコンバート部の図示省略)されて復調部109に入力された後、復調部109において、復調処理がなされる。復調されたPhCHデータは、チャネルコーディング部108において、チャネルデコーディング処理がなされ、TrCHデータに変換される。TrCHデータに変換されたデータは、データ格納部107に一時的に格納され、先に格納された順に基地局上位装置140に伝送される。
データ格納部107から基地局上位装置140への伝送は、基地局100と基地局上位装置140とが、IP網で接続されている場合は、IPフォーマットで伝送される。基地局100と基地局上位装置140とが、ATM網で接続されている場合は、ATMフォーマットで伝送される。IPフォーマット、ATMフォーマットへの変換については、省略する。
復調部109において復調された、ある無線リソースのデータが、チャネルコーディング部108によるチャネルデコーディング処理により、どの格納データ識別番号に割当てられるかの対応に関する情報もリソース対応情報RCとしてリソース対応付け部105に格納されている。
データ格納部107、チャネルコーディング部108及び復調部109それぞれは、リソース対応付け部105のリソース対応情報RCを参照して、下りデータ送信処理時の変調部102、チャネルコーディング部103及びデータ格納部104と同様の処理を行う。
次に、図7を参照して、基地局100の滞留レベル算出部106におけるリソース関連情報RJの生成処理を説明する。
滞留レベル算出部106は、データ格納部104,107をそれぞれ監視しており、データ格納部104,107それぞれにどれだけデータが格納されているかを知ることができる。ただし、データ格納部104,107からの情報だけでは、基地局100と基地局上位装置140との間のリソース毎のデータ格納量しか知ることが出来ない。そこで、データ格納部104,107の格納データ識別番号と、変調部102、復調部109で処理される無線リソースとの対応情報を示すリソース対応情報RCをリソース対応付け部105より受け取る。
滞留レベル算出部106は、データ格納部104,107の格納情報と、リソース対応付け部105からのリソース対応情報RCとに基づき、無線リソース毎の滞留レベルを算出して滞留情報ID(図6参照)を取得し、滞留情報IDにリソース使用情報IRを付加したリソース関連情報RJ用の報知チャネルのフォーマットを生成し、データ格納部104に格納する。
そして、下りデータ処理の順番が来ると、チャネルコーディング部108において、チャネルコーディングがなされ、変調部102において、変調され、アップコンバート(アップコンバート部は図示せず)されてRF信号となり、アンテナ部101より報知チャネルにリソース関連情報RJを載せて移動局に報知する。
このようにして、基地局100から、移動局2に対して、無線リソース毎の滞留レベルを規定した滞留情報IDを含むリソース関連情報RJが、報知チャネルを用いて報知されることになる。また、基地局100毎の報知チャネルではなく、データに滞留レベルを付属される場合は、滞留レベル算出部106から、無線リソース毎の滞留レベルを報知チャネルのフォーマットにせず、そのままデータ格納部104に格納する。その後、チャネルコーディング部103において、上位装置から伝送されたデータと、滞留レベル情報とを多重することで実現が可能である。
このように、図7で示した基地局100は、リソース関連情報RJを移動局に送信するリソース関連情報送信機能を有するため、実施の形態1の移動体通信システム全体における基地局に対するリソース制御を基地局100からのリソース関連情報に基づき行うことができる。その結果、リソース管理が簡易になり、リソース制御の冗長性を排除することができる効果を奏する。
次に、移動局が、図7で示した基地局からリソース関連情報RJを受信した後、基地局の無線リソースを選択する手順を示す。
図8は実施の形態1の移動体通信システムにおける移動局2の内部構成を示すブロック図である。
アンテナ部21は基地局等の外部と送受信を行う。ダウンコンバート部22は、アンテナ部21において受信したRF信号を、ベースバンドにダウンコンバージョンする。リソース使用状況判定部23は、リソース関連情報RJにおけるリソース使用情報IRに基づく判定を行う。
滞留データ量判定部24は、リソース関連情報RJにおける滞留情報IDを解析して、滞留情報ID中のリソース番号毎の滞留データ量を判定する。リソース選択部25は移動局が使用を所望する無線リソース候補を選択する。基地局選択部26は、上記無線リソース候補から最終的に移動局2が使用する無線リソース及び基地局を選択する。すなわち、実施の形態1の移動体通信システムは移動局2側が基地局を選択することができる。このように、構成部21〜26はリソース関連情報RJに基づき使用リソースを決定するリソース決定機能を有する。
アンプコンバート部27は移動局2が基地局に対して行うリソース指定情報に関するデータをベースバンド信号から、RF信号にアップコンバージョンする。復調部28は受信したチャネルを復調する。変調部29は、送信を行いたいデータを変調する。このように、構成部27〜29は、上記リソース決定機能で決定した使用リソースを基地局に対し指定するリソース指定機能を構成する。
なお、アンテナ部21のブランチ数は“1”とは限らない。なお、アンテナ部21のブランチ数が例えば“2”の場合、図8で示す構成は以下のようになる。ダウンコンバート部22とアンプコンバート部27とがブランチ数に適合させて2つとなる。復調部28で複数ブランチそれぞれの受信情報をまとめて、受信感度が良いほうのブランチの受信情報のみを用いたり、重み付けを用いて合成したりということを行ったりする。リソース使用状況判定部23、滞留データ量判定部24、基地局選択部26、及び基地局選択部26までは図8と同様に各々1単位で実現される。そして、変調部29で、ブランチ選択したり、重み付けをつけてアンプコンバート部27に送信される。
移動局2は、報知チャネル上のリソース関連情報RJをアンテナ部21において受信すると、ダウンコンバート部22において、ダウンコンバージョンし、ベースバンド信号に変換する。変換されたデータは、復調部28において、復調され、リソース使用状況判定部23において、リソース関連情報RJにおけるリソース使用情報IRの内容が判定される。複数の基地局から、基地局毎に異なる報知チャネルで受信した場合は、CDMA方式であれば、異なる拡散コードを乗算することにより多重化されているので、基地局に対応した拡散コードを用いて、各基地局からの報知チャネルを識別することができる。OFDM方式であれば、基地局毎に異なるサブチャネルを割当てていれば、各基地局からの報知チャネルを識別することができる。TDMA方式であれば、基地局固有のタイムスロットを移動局は既知情報として扱う事になるので、どのタイムスロットがどの基地局からの報知チャネルであるかを識別することができる。このようにして、復調部28は、基地局を識別した上で報知チャネル上のリソース関連情報RJを復調することになる。
移動局2は、リソース使用状況判定部23において、リソース使用情報IRより、空きリソース、使用中リソースに関する情報を得る。その後、リソース関連情報RJは、滞留データ量判定部24に送られ、そこで、リソース関連情報RJにおける滞留情報IDに関する解析が行われる。移動局2は、滞留データ量判定部24において、リソース番号毎の滞留レベルを判定することにより、滞留データ量がおよそ何kbyteであるかを認識することができる(図5の対応関係参照)。
リソース選択部25は、リソース使用状況判定部23,滞留データ量判定部24において判定された結果を用いて、使用する無線リソース候補を選択する。滞留データ量判定部24によって滞留データ量が最も大きいと判定されたリソースを基準とし、この最大滞留データのリソース番号に近い位置にあり滞留データ量が比較的小さいリソースのいくつかが無線リソース候補として選択されることになる。
例えば、図4におけるリソース番号4のリソースの滞留レベル(図5参照)が最大であった場合、リソース番号4から等距離にあり、リソース空きリソースであるリソース番号1及び番号7のリソースが無線リソース候補として選択される。
その後、基地局選択部26において、基地局11〜14のうち、リソース選択部25で選択した無線リソース候補のうち、滞留データ量が大きいと判定されたリソースと同じ基地局にあるリソースを最終決定リソースとして選択し、当該最終決定リソースが割り当てられた基地局を選択基地局として選択する。
例えば、リソース番号1〜4が基地局12に割り当てられており、リソース番号5〜8が基地局13に割り当てられている場合、前述したように、図4におけるリソース番号4のリソースの滞留レベル(図5参照)が最大であり、リソース番号1及び番号7のリソースが無線リソース候補として選択されたケースを考える。この場合、最大滞留リソース(リソース番号4)と同じ基地局12にあるリソース番号1のリソースが最終決定リソースとして決定され、最終決定リソース(リソース番号1)を有する基地局12が選択基地局として選択される。
このようにリソース選択部25及び基地局選択部26は、リソース使用情報IR及び滞留情報IDを含むリソース関連情報RJに基づき、適切な無線リソースを選択するリソース管理が行える効果を奏する。
そして、変調部29において、移動局2から、上記選択基地局に通知するリソース選択に関する情報を乗せた上りデータを選択基地局固有のフォーマットや方式に変換する。例えば、CDMA方式であれば、選択基地局固有の拡散コード番号を割当てたり、TDMA方式であれば、選択基地局固有のタイムスロットに上記上りデータを割当てたりして行うことができる。
また、離散フーリエ変換(DFT(Discrete Fourier Transform))した後に、高速フーリエ逆変換IFFT(Inverse Fast Fourier Transform)を行うような、シングルキャリアFDMA方式であれば、DFTの段階で、それぞれの基地局で異なる周波数領域に割当てたり、OFDM方式であれば、各基地局に異なるサブキャリアを割当てたりを行うといった前提に基づき、選択基地局固有のフォーマットや方式に変換することにより行われる。
変調部29は、変調部29において処理されたベースバンドの上りデータをアップコンバージョンしてRF信号とし、当該RF信号がアンテナ部21より送信される。
このように、実施の形態1の移動体通信システムにおける移動局2は、基地局11〜14における無線リソースを選択するにより、基地局11〜14のリソース管理を行うことができる。
上記した方法1による移動局2による基地局11〜14のリソース指定が行われることにより、基地局11〜14は、簡易な構成で、リソース制御の冗長性を排除することができる効果を奏する。以下、この点について詳述する。
従来技術では、基地局は、移動局からのデータを、復調及びメッセージ生成処理、あるいは、復調、チャネルデコーディング(復号化)及び上位レイヤフレームフォーマット化処理を行ってから、上位装置にデータ伝送した。
一方、実施の形態1の移動体通信システムでは、基地局は、移動局からのデータを、復調(SIR推定(SIR推定値(信号電力/干渉電力)に基づく処理))後に移動局に戻すことにより、上述したメッセージ処理や、チャネルデコーディング処理などを行わずに、復調できた段階で、即座に移動局に情報をフィードバックするだけですむという特徴を有する。
このように実施の形態1の移動体通信システムでは、基地局は、移動局(端末)から来た情報をほぼそのまま移動局へ折り返すことにより、チャネルコーディング(あるいはメッセージ生成)が不要になる分、リソース制御の冗長性を排除することができる。
また、実施の形態1では移動局2によりリソース指定がなされるので、移動局2の位置に最も適したリソース使用を、迅速に行うことができる効果を奏する。
図9は実施の形態1の効果を示す説明図である。同図に示すように、移動局2からのリソース指定信号RS2〜RS4により基地局12〜14のリソースを制御することができる。その結果、基地局上位装置1によるリソース制御が不要となるため、基地局11〜14間を接続した状態において、基地局上位装置1を介さずに、基地局11〜14だけで、移動局2と通信することが可能となる。
図10は実施の形態1の効果を示す説明図である。同図に示すように、移動局2に最も近い基地局が基地局12である場合において、基地局12のリソースが十分に空いていない場合、隣の基地局13のリソースを用いて、移動局2との通信を行うといった制御も可能である。
次に、方法2について図11を例に挙げて具体的に説明する。図11は、あるリソース関連情報通知用基地局が隣接基地局のリソース情報をも移動局に通知することが可能な報知チャネルのフォーマットについて示す説明図である。
図11に示すように、リソース関連情報通知用基地局の報知チャネル上に乗せられる複数基地局リソース関連情報MRJは複数基地局リソース使用情報MIR及び複数基地局滞留情報MIDとから構成される。
複数基地局リソース使用情報MIRは、基地局リソース使用情報MIR1,MIR2,MIR3,…から構成され、各基地局リソース使用情報MIRi(i=1,2,3,…)は、基地局番号iと、基地局番号iに該当する基地局に対応したリソース使用情報から構成される。
複数基地局滞留情報MIDは、基地局滞留情報MID1,MID2,MID3,…から構成され、各基地局滞留情報MIDiは、基地局番号iと、基地局番号iに該当する基地局に対応した滞留情報からなる。
このように、方法2においては、複数基地局リソース使用情報MIR及び複数基地局滞留情報MIDからなる複数基地局リソース関連情報MRJが用いられ、複数基地局リソース使用情報MIR及び複数基地局滞留情報MIDは、方法1で説明した図3のリソース使用情報IR及び滞留情報IDと同様な関係となる。
移動局2による基地局リソースの選択に関しても、方法1において図8を用いた説明と同様に行われる。
したがって、移動局2が、リソース関連情報通知用基地局と、その隣接した基地局とのみ、無線通信を行うようなシステムであった場合、リソース関連情報通知用基地局の報知チャネルから複数基地局リソース関連情報MRJを受信すればよい。このため、図8におけるリソース使用状況判定部23の前段に設けられたる復調部28で行われる復調において、基地局識別のためにCDMA方式などにより多重化された状態のチャネルを分離するという処理は必要ないことになる。
基地局間のデータのやり取りは、定期的に基地局同士でリソース使用状況、滞留情報などの情報を送受したり、ある基地局が、移動局から要求があった時に、その基地局が自身の周辺の基地局の情報を集めるようにしたり、基地局同士を無線接続できるようにして、無線基地局間の特殊チャネルを用意して送受したりしても良い。また、基地局上位装置が、移動局の周辺にある全基地局の情報を集めるようにしたり、移動局と最も無線リソースを使用して通信を行う基地局が、周辺全基地局の情報を集めるようにしても良い。
上述したように、方法2を採用した移動体通信システムは、方法1を採用した場合の効果に加えて、さらに、次のような効果を奏している。
移動局3は、自身と無線通信接続する複数の基地局のリソース関連情報を、比較的少ない報知チャネルから得ることができる。図1で示す構成において、例えば、リソース関連情報通知用基地局が基地局13となり、隣接基地局が基地局12,14となる場合、基地局13は、基地局12,14と通信して、基地局12〜14のリソース関連情報を得ることにより、基地局12〜14用の複数基地局リソース関連情報MRJを得ることができる。
方法1では、基地局毎に報知チャネルが存在し、移動局は、その報知チャネルが、どの基地局から発信されたものであるのかを、CDMA方式などの多重化を行うことで識別しなければならなかった。
一方、方法2では、リソース関連情報通知用基地局からの報知チャネルから得られる複数基地局リソース関連情報MRJによって、複数の基地局のリソース関連情報を認識することができるため、方法1のように複数の基地局それぞれリソース関連情報RJを送信する場合に比べ、多重化する数を少なくすることができる効果を奏する。
さらに、移動局2が、リソース関連情報通知用基地局と、当該リソース関連情報通知用基地局に隣接した基地局のみとしか無線通信しないシステムであるならば、リソース関連情報通知用基地局から1つの報知チャネル上の複数基地局リソース関連情報MRJを受信するだけで、移動局が無線通信を行う全ての基地局のリソース関連情報を得ることができるという効果を奏する。加えて、移動局の装置構成が簡略化されるという効果も奏する。
次に、方法3について図12及び図13を例に挙げて具体的に説明する。図12及び図13は方法3を採用した場合の実施の形態1の移動体通信システムの使用状況を示す説明図である。図12では移動局2がリソース指定信号RS2〜RS5を基地局12〜15に与える状況を示し、図13では基地局12〜14の基地局リソース使用情報MIR2〜MIR4及び基地局滞留情報MID2〜MID4が基地局15に伝達され、基地局15から複数基地局リソース使用情報MIR及び複数基地局滞留情報MIDからなる複数基地局リソース関連情報MRJが移動局2に伝達される状況を示している。
図12、図13に示すように、基地局11〜14に接続された基地局15が、基地局上位装置1(図1等参照)ではなく、基地局15であった場合を示している。図12,図13において、基地局15に隣接する基地局は基地局11〜14である。
方法2と同様、隣接する基地局11〜14のリソース使用情報IR及び滞留情報IDを移動局2に通知する場合、基地局15は、自身のリソース使用情報の他に、基地局11〜14のリソース情報も同じ報知チャネル中に乗せて移動局2に送信する。上記報知チャネル、方法2の説明で示した図11で示すデータフォーマットより構成され、基地局11〜15それぞれのリソース使用情報、滞留情報が含まれている。
ただし、滞留情報IDの内容は、方法1や方法2のように、基地局上位装置1から各基地局11〜15に対して送信されたデータに基づく情報ではなく、図13に示すように、基地局15から基地局11〜14それぞれに対して送信された下りデータDD2〜DD4に基づく情報である。
また、基地局15は、自ら移動局2と無線通信することができるので、以下のような通信を行うことができる。移動局2は、基地局15及び基地局12〜14と無線通信を行っている。基地局15が、移動局2との無線通信において、データの処理負荷が大きくなってきた場合、基地局15は、移動局2に対して、報知チャネルを用いて、リソース使用情報のリソース空きがあるにも拘わらず、リソース使用中と伝える。また、処理負荷が閾値を超えないように、リソースを他の基地局、例えば、基地局13に移す。これは、閾値を設ければ、自動的にリソースが移るように設定することができる。移す前に、基地局15は、報知チャネルの複数基地局リソース関連情報MRJ内の基地局13用の滞留情報を、基地局13の空きリソースの滞留データ量レベルが上げるように変更する。
その結果、移動局2は、基地局15に対して、新規リソース割り当てを行わず、基地局13のリソースに対してリソースを割当てようとする。これにより、基地局の処理負荷調整も含んだリソース制御を行うことができる。
実施の形態1の移動体通信システムは方法3を採用することにより、以下の述べる効果を奏する。
基地局15は、下位に基地局11〜14を従属させており、下位の基地局11〜14と基地局15とはデータのやり取りを行うことができる。基地局15は、基地局11〜14内の情報を束ねることができる。この基地局15が自ら移動局2と通信することによって、基地局15と基地局11〜14との伝送経路も考慮に入れた最適なデータ伝送ができる。
基地局15は、基地局15,基地局11間、基地局15,基地局12間、基地局15,基地局13間、基地局15,基地局14間の伝送遅延情報などを集めることができ、伝送遅延が小さいものが基地局15,基地局13間である場合、基地局13,基地局15及び移動局2となる経路を優先することで、システムとして伝送遅延を小さく抑えることができる効果を奏する。
一方、基地局15,基地局14間の遅延が大きいと、基地局15は、基地局14へデータを伝送せず(上りなら移動局2から基地局15の通信に基地局14を経由せずに行い)、基地局15,移動局2間(基地局15から直接移動局2への経路)にリソースをなるべく割当てることにより伝送遅延を小さく抑えることができる。
基地局15,基地局11〜14間それぞれは、IPネットワークで接続されている場合、揺らぎが大きくなる為、このような伝送遅延を意識しなければならず、方法3を採用した場合に、上記伝送経路を考慮に入れたデータ伝送を行うことができるため、伝送遅延を小さく抑えることができる効果を奏する。
また、基地局11〜14を、基地局15のコプロセッサのような補助基地局として使用することができる効果を奏する。すなわち、通常は基地局15だけで移動局2と通信を行っておいて、基地局15だけでは負荷が大きくなった場合に、基地局11〜14も用いることにより、基地局15の負荷を軽減することができる。
方法4は、例えば、図1で示した移動体通信システムにおいて、移動局2による、基地局12〜14等へのリソース指定のもう1つの方法として、移動局2が、基地局12〜14の送信電力を最小にするように、基地局12〜14のリソース指定を行う方法である。以下、方法4について、図1を例に挙げて具体的に説明する。
移動局2は、通信状態の基地局12〜14より、基地局12〜14が移動局2に送信する送信電力に関する情報の通知を受け、上記送信電力に関する情報に基づき、最も送信電力が大きい基地局14に割当てるリソース数を減らし、最も送信電力が小さい基地局(例えば、基地局13)に割当てるリソース数を増加することで、基地局12〜14が移動局2に送信する送信電力の総和を最小にすることを可能にしている。
移動局2が、基地局12〜14それぞれの送信電力を知る方法は、方法1などで用いた報知チャネルのようなデータチャネルとは異なる共通チャネルで基地局12〜14が移動局2に通知するというものがある。また、基地局12〜14から移動局2に送信されるデータ中に、基地局送信時の送信電力を情報として乗せ、移動局2で、受信した電力を測定し、無線伝搬による電力の損失(伝搬ロス)を測定するというものもある。伝搬ロスは、例えば、基地局12〜14が下りデータ送信時に-10dBmの電力で送信し、その情報をデータに乗せる事で移動局2に通知する。移動局2は、受信時に、受信電力を測定し、-70dBmの電力であったとすると、伝搬ロスは、60dBということになる。
さらに、移動局2が基地局12〜14の送信電力を知る方法として、直接的に送信電力値を通知してもらったり、受信電力を測定したすることのほかに、基地局12〜14それぞれと移動局2との距離が短い方が送信電力が小さくなることを利用して、送信電力を最小にする方法がある。基地局2と移動局12〜14それぞれの距離とは、パスの到来時間の遅延量で測定する。下りデータのパス検出を行うことで、そのパスの遅延時間から、基地局12〜14それぞれと移動局2との距離を推定するのである。以下に推定方法の詳細を説明する。
図14は移動局2,基地局12〜14それぞれとの距離の推定方法を示す説明図である。図14に示すように、移動局2は、3つの基地局12〜14それぞれと同時に接続できるとする。移動局2は、パス遅延の情報を元に、移動局2と基地局12〜14との電波の伝搬距離のうち最も伝搬距離が短い基地局から順にリソースを追加していく。
報知チャネルは方法1〜方法3のいずれのフォーマットでも構わないが、移動局2が、空きリソースに、リソースを割り当てようとする時の優先順位として、基地局の送信電力が最も小さくなるようにする。パス遅延の情報は、例えば、W-CDMA方式であれば、チップレート3.84MHzか2〜4倍オーバサンプリングした7〜15MHz程度の分解能で、その伝搬距離はわかる。移動体通信では、直接波が到来することはまれであるので、移動局は、基地局からの到来パスのうち、最も電力の大きいパスの検出位置の遅延が小さくなる基地局を、伝搬距離が短い基地局とみなせばよい。
図15は基地局12〜14から移動局2への電波到来の伝搬遅延時間ΔT2〜ΔT4と伝搬距離との関係を示すグラフである。
同図(a)〜(c)に示すように、基地局12〜14それぞれの受信電力のピークPX2〜PX4が検出されるまでの伝搬遅延時間ΔT2〜ΔT4は、ΔT2(同図(c))<ΔT3(同図(b))<ΔT4(同図(a))の関係を有する。従って、移動局2と基地局12〜14との距離ds2〜ds4は、図14に示すように、ds2<ds3<ds4の関係を満たすものと推定される。
移動局2は、上述した推定方法で認識した移動局2と基地局12〜14とのds2〜ds4に基づき、基地局12〜14に対するリソースを追加割当てしていく。伝搬距離が最も短いと推定された基地局に、空きリソースがなかった場合は、次に伝搬距離が短いと推定された基地局にリソースを追加で割当てるようにすれば良い。図14で示した例では、基地局12のリソースが空いていなければ、基地局13にリソースを割当てるようにする。
実施の形態1の移動体通信システムは方法4を採用することにより、移動体通信システムの運用コストを下げることができる効果を奏する。ただし、移動局と複数の基地局との同時通信を維持するために、移動局と無線通信可能な基地局との無線リソースは、最低1リソースは存在しているものとする。その理由は以下に述べる。
最も送信電力が小さくなるように制御を行う場合、移動局から最も近い位置にあり、回線品質の良い基地局に全てのリソースを集中させることが考えられるが、これでは、移動局が移動し、回線品質が良かった基地局との通信が、回線が悪くなることにより、他の基地局との通信に切替える動作を行うときに、まったく接続が成されていない基地局に接続を行うように制御しなければならないことになる。
したがって、上述したように移動局と無線通信可能な基地局との無線リソースを最低1リソースは存在させ、1つの移動局が、複数の基地局と同時接続の状態を維持することにより、ある基地局との回線が瞬断した場合、直ちに他の接続された基地局のリソース数を増加させる制御を行うことができるなどの柔軟さが保たれる。また、制御の移行が安易になる。また、複数の基地局それぞれのQoS(品質情報)を常に認識しておくことで、他の基地局のリソース数を増加させたり、減少させたりする処理を迅速に行うことができる。
このように、方法4を採用する場合、送信電力を最小にするために最大数のリソースを使用する基地局以外の接続可能な基地局のリソースを、1リソース以上接続しておく必要がある。
スループットを優先する中で、電力を参照にするような制御を行うようにしても良い。スループットを早くするために必要なパラメータは、方法1でも述べた、リソース使用状況、データ滞留情報などで、例えば、データ滞留量が大きくならないようにすることを、電力を最小にすることよりも優先させることで、スループットを高くしたまま、その中でなるべく基地局の下り送信電力を最小にする制御を移動局が行うことができるようになる。また、上記方法4を応用して、移動局の基地局への送信電力をも最小にすることも可能であり、効果も同様に得ることができる。
次に、方法5について図16を例に挙げて具体的に説明する。図16は方法5を採用した場合の実施の形態1の移動体通信システムの使用状況を示す説明図である。
方法1が、移動局が複数の基地局の無線リソースを選択制御するというものに対して、方法5は、移動局が複数の基地局毎に異なるデータを送信することに着目している。
図16は、移動局4が複数の基地局31〜34と同時に通信できるような移動体通信システムにおいて、移動局4が基地局31〜34毎に異なるデータを送受することを示したものである。基地局上位装置3は基地局31〜34と接続されており、基地局との接続は、無線接続でも、有線接続でも構わない。基地局31〜34は移動局4と無線伝送により通信を行うことができる。
次に、方法5を採用した場合の実施の形態1の移動体通信システムの動作を説明する。図16において、移動局4は、基地局32,33と同時に通信している。その際、移動局4は、基地局32,33それぞれと、異なったデータを送受信している。すなわち、移動局4は基地局32に対しデータdataBを送信し、基地局33に対しデータdataBと異なるデータdataAを送信している。
図17は移動局4の内部構成の一部を示す説明図である。図8で示した変調部29内の構成に相当する。以下、図17を参照して、異なったデータを送受信する方法として、移動局4から基地局32,33へのデータ送信において、移動局4がOFDM方式を用いて、無線伝送する場合を説明する。
図16に示す構成において、基地局31〜34は共通のサブキャリアSC0〜SC8を有している。
そして、図17に示すように、サブキャリアSC0〜SC8は最終的にリソース選択部25及び基地局選択部26によって決定された使用無線リソースである。また、サブキャリアSC0〜SC2及びサブキャリアSC3〜SC4は、基地局選択部26によって基地局33及び基地局32用のリソースとしてそれぞれ最終的に決定されている。なお、図17において、サブキャリアSC5〜SC8は他の基地局へのデータdataCとして割り当てられた状態を示している。
図17で示す構成において、直列・並列変換部41は送信用データD0,D1,…,D8,…を受け、サブキャリアSC0〜SC8単位に直列・並列変換して、送信用データD0〜D8を得る。IFFT部42は基地局選択部26の選択内容に基づき高速フーリエ逆変換を行いサブキャリアSC0〜SC8にデータD0〜D8を割り当てる。
このように、送信用データが複数のサブキャリアSC0〜SC8に対応する送信用データD0〜D8に分割され、さらに、データdataAがデータD0〜D2となり、データdataBがデータD3,D4として基地局33及び基地局32への送信用に割り当てられる。
そして、並列・直列変換部43で並列・直列変換した後、アンテナ部44(図8のアンテナ部21に相当)から送信する。上記のように、直列・並列変換部41はデータ分割機能を有し、IFFT部42、並列・直列変換部43及びアンテナ部44は複数の分割データを複数のリソースに振り分けて送信するデータ送信機能を有する。
図17に示すように、サブキャリアSC0〜SC2をデータdataA(D0〜D2)伝送に用いることにより、データdataAを基地局33に送信することができる。そして、データdataA伝送で用いなかったサブキャリアSC3〜SC4をデータdataB(D3,D4)伝送に用いることにより、データdataBを基地局32に送信するができる。
その結果、実施の形態1の移動体通信システムは、方法5採用することにより、互いに異なるデータdata及びデータdataBを異なる基地局33及び32に送信することができる。
一方、基地局32,33それぞれから移動局4への送信には、基地局32,33がシングルキャリア伝送である場合には、基地局32,33が、それぞれのデータを移動局4に送信し、移動局4は、OFDM方式などのマルチキャリア伝送により、基地局32からの送信データはサブキャリアSC0〜SC2で受信し、基地局33からの送信データは、サブキャリアSC3〜SC4で受信するように行えばよい。
図18はサブキャリアビームパターンを示すグラフである。同図に示すように、移動局4が、サブキャリアSC0〜SC2を基地局32からのデータ受信に用い、サブキャリアSC3〜SC4を基地局33からのデータ受信に用いることにより、基地局32,33それぞれ独立した受信が可能なる。
その結果、移動局2と基地局32,33との間で同じデータを送受信する場合に比べて、より多くのデータ量を伝送することができるようになる。
また、ある1つのデータ系列を、複数のデータに分割して、それぞれを異なる基地局に送信することもできる。
例えば、移動局4と基地局32との伝送路だけが悪く、うまくデータ通信ができず、移動局4が基地局32から再送要求を受けた場合には、移動局4は、基地局32にではなく、基地局33を経由して、基地局32に送るべきデータを送信することもできる。基地局33に送信するべきデータは、すでに送信に成功しているので、データ系列を全て再送する必要が無く、分割した半分のデータ系列だけを再送するだけでよいことになるので、高速に無線上でのデータ再送をすることができるという効果を奏する。
<実施の形態2>
図19はこの発明の実施の形態2である移動体通信システムにおける通信状態を示す説明図である。同図に示す移動体通信システムは、移動局6が、複数の基地局51〜53と同時に無線通信を行うことができる。
実施の形態2の移動体通信システムが、実施の形態1と異なる点は、報知チャネルを用いた報知情報を使用せずに、移動局から要求に応じて、リソース関連情報RJを含む応答を返すということにある。すなわち、基地局は、一の移動局よりリソース状況などを要求(リソース要求)されたことに対し、応答として、当該一の移動局にリソース状況などのリソース関連情報を返す(リソース返答)。このように、各基地局はリソース要求があった移動局単位にリソース返答を行っている。
図19で示す例では、基地局51〜53は、移動局6に対してそれぞれ下りデータDD1〜DD3を送信しようとしている。
図20は移動局6による下りデータDD1〜DD3の伝送速度決定処理手順を示す説明図である。以下、同図を参照して伝送速度決定処理内容を説明する。
まず、ステップST1において、移動局6は、通信することに決めた3つの基地局51〜53に対して、基地局51〜53それぞれの最大伝送速度(200kbps)のデータ量で下りデータを要求する。例えば、移動局6が、基地局51〜53それぞれにマルチキャリア伝送を行うことを要求する場合には、ステップST1において、それぞれの基地局51〜53に対して、最大(仮に10個とする)のサブキャリアを割当てを要求して最大伝送速度を実現することができる。
そして、ステップST2において、ステップST1の要求に応答して、基地局51〜53それぞれからリソース関連情報を移動局6に通知する。なお、リソース関連情報は(1)リソース輻輳状況等のリソースリソース使用情報、(2)伝送路状態(伝送歪み具合)、(3)基地局と移動局との距離、(4)滞留情報などを含む情報である。
その後、ステップST3において、移動局6は基地局51〜53から通知されたリソース関連情報に基づき、基地局51〜53それぞれの伝送速度をステップST1時から変化させ、最終決定する。
例えば、移動局6が、ステップST1で10個のサブキャリアの割当を要求した際、移動局6が伝送速度の比率(データ量比)は、(基地局51):(基地局52):(基地局53)=3:2:5にすることを決定した場合を想定する。
この場合、移動局6は、基地局51には割当てサブキャリア数を“3”、基地局52には割当てサブキャリア数を“2”、基地局53には割当てサブキャリア数を“5”にそれぞれ更新する。その結果、基地局51〜53それぞれの下りデータDD1〜DD3の最終要求伝送速度として、60,40,100(kbps)の伝送速度が要求されることになる。
また、基地局51〜53がシングルキャリア伝送であるならば、適応変調を用いたり、DFTしてから、IFFTするような方式を用いて、DFTのサンプルポイント数を増減させたりすることで伝送速度を変えることができる。なお、例では、基地局51〜53移動局6への下りデータ送信について述べたが、移動局6から基地局51〜53への上り送信に関しても、同様の事が言える。
以降、実施の形態2の伝送速度決定手順を具体的に説明する。なお、本実施の形態2においては、移動局6が主導の無線リソース制御だけではなく、ネットワーク側主導の無線リソース制御も考えられる。すなわち、移動局6による制御をそっくりそのまま基地局上位装置1(図1参照)に相当する上位装置に行われることも可能である。まず、移動局主導の無線リソース制御について説明する。
図21は実施の形態2の移動体通信システムの利用状況を示す説明図である。図21において、移動局6は、複数の基地局51〜53と、最大の伝送速度で接続しようとする。基地局51〜53から見ると、移動局6から、最大の伝送速度で送信して欲しいという要求が通知される事になる(図20のステップST1参照)。
これに対し、基地局51〜53はそれぞれ無線リソースの使用状況、滞留情報を含むリソース関連情報を移動局6に通知する(図20のステップST2参照)。上記リソース関連情報は、移動局6と無線通信を行うのに用いる無線リソースを使用して通知される。
当初(図20のステップST1段階)、移動局6が基地局51〜53に対して、最大の下り伝送速度を要求することにより、基地局51〜53、それぞれ最大のリソース数分の無線リソースの予約をとる。その後、予約した無線リソースの中から必要なリソースのみ使用するようにすると、最適なリソースを自由に選択することができるようになるので、空きリソースからいきなり最終的な伝送速度分のリソースを確保する場合に比べ、リソース制御が簡易に行えるという利点がある。
移動局6は、各基地局51〜53から、それぞれのリソース使用状況、滞留データ量を含むリソース関連情報を受信すると、基地局51〜53が送信する下りデータの伝送速度の値を変更した最終伝送速度要求RD1〜RD3を基地局51〜53に送信する(図20のステップST3参照)。
移動局6は、上記リソース使用状況、滞留データ量を主としたリソース関連情報の受信の替わりに、基地局51〜53それぞれが移動局6に送信した下りデータの伝送路の歪み具合を測定し、測定した歪み具合を主としたリソース関連情報を移動局6に通知し、移動局6が測定歪み具合に基づき下りデータの伝送速度を決定するようにも良い。また、移動局6は、リソース使用状況、滞留データ量の情報に加え、伝送路の歪み具合の測定結果をも利用して下りデータ伝送速度を決定しても良い。
この場合、最初に基地局51〜53がそれぞれ最大のリソースを確保するため、最大のリソース数分の伝送路の歪み具合測定結果(移動局6から基地局51〜53への上り伝送経路歪み結果,基地局51〜53により測定)が基地局51〜53それぞれから移動局6に通知され、移動局6におり認識することができるという利点がある。
図22は実施の形態2の移動体通信システムにおける移動局6の内部構成を示すブロック図である。同図に示すように、移動局6はアンテナ部61、ダウンコンバート部62、リソース使用状況判定部63、伝送路状態判定部64、データ量振り分け部65、アンプコンバート部66、復調部67、及び変調部68から構成される。
アンテナ部61簡略化して1ブランチとしているが、複数ブランチでも構わない。ダウンコンバート部62は、アンテナ部61において受信したRF信号を、ベースバンド信号に変換する。
リソース使用状況判定部63は、基地局からのリソース関連情報等に含まれた基地局の無線リソース使用状況を判定する。伝送路状態判定部64は、移動局に新たに無線通信を行うために使用する各基地局の無線リソースからのデータの伝送路状態を判定する。
データ量振り分け部65、基地局からの下りデータ伝送速度の大きさを決定す。データ量振り分け部65によるデータ量振分けは、移動局6が、複数の基地局に対して、同じデータを分割して送信する、あるいは、基地局から、移動局に対して、同じデータが分割されて送信される場合には、そのデータ量の比率を意味する。
また、移動局6が、複数の基地局に対して、基地局毎に異なるデータを送受信する場合には、単純に、データ量振り分け部65は基地局毎の伝送速度の大きさを決定するだけとなる。
アンプコンバート部66は、ベースバンド信号をRF信号に変換する。復調部67は、受信したチャネルを復調する。変調部68は送信を行いたいデータを変調する。
このような構成の移動局6は、基地局51〜53それぞれに対して、下りデータの伝送速度要求(当初伝送速度要求)を通知する。この際、まだ移動局5は、基地局51〜53それぞれのリソース使用状況、滞留データ量、伝送路状態、いずれもわからない状態であるため、データ量振り分け部65は、最大の伝送速度要求を基地局51〜53それぞれに対して行う(図20のステップST1段階)。
これに対して、基地局51〜53はそれぞれ空いているリソースを利用して、自らのリソース使用状況、及び滞留データ量を主としたリソース関連情報を移動局6に通知する(図20のステップST2段階)。このときに用いるのは、最小伝送速度のデータチャネルでも良いし、リソース使用状況・滞留データ量を通知するための特別なチャネルを用いても良い。
移動局6は、基地局51〜53それぞれから、リソース使用状況、滞留データ量を主としたリソース関連情報を受信すると、アンテナ部61において受信したRF信号をダウンコンバート部62においてベースバンド信号に変換し、復調部67において、リソース関連情報の内容は復調され、リソース使用状況判定部63においてリソース使用状況が判定される。
リソース関連情報内におけるリソース使用状況の情報フォーマットとして、図3〜図5において説明されたリソース関連情報RJと同様なもフォーマットを用いることができる。基地局51〜53それぞれからの下りデータDD1〜DD3は、復調される過程において、信号の伝送路歪みの度合いが測定される。歪みの度合いは、移動局6、基地局51〜53共に知っている既知信号系列を用いて行われる。既知信号系列に対して、どれくらい位相・振幅がずれているかを求めて、ずれの大きさを歪みの度合いして測定することができる。なお、伝送路状態の判定の替わりに、SIRを算出してもよい。これも、既知信号の系列を利用して算出することになる。
図23は、リソース使用状況と伝送路状態(歪み具合)とから、伝送速度を決定するための判断基準を表形式に示した説明図である。同図に示すように、移動局6は、通信しているリソースの状況と、リソース番号で規定されたリソース毎の伝送路状況に基づき、基地局51〜53毎の伝送速度を決定する。
なお、図23において、基地局51がリソース番号0〜3のリソースを使用し、基地局52がリソース番号4〜7のリソースを使用し、基地局53がリソース番号8〜11のリソースを使用している場合を示している。移動局6の伝送路状態判定部64は基地局51〜53それぞれのリソースの空き状態、伝送路状況に基づき、基地局51〜53それぞれの伝送速度を最終的に決定する。
図23で示す例では、基地局53の空きリソース(リソース番号8,10)が2つ有り、他の2つのリソース(リソース番号9,11)の伝送路状況が良好であるため、基地局53の伝送速度を100kbpsに決定している。基地局51の空きリソース(リソース番号3)が1つ有り、他の3つのリソース(リソース番号0〜3)の伝送路状況が比較的悪い状況であるため、基地局51の伝送速度を60kbpsに決定している。基地局52の空きリソース(リソース番号6)が1つ有り、他の3つのリソース(リソース番号4,5,7)の伝送路状況が最悪に近い状況であるため、基地局52の伝送速度を40kbpsに決定している。
なお、図23で示した伝送路状況の替わりに、SIR推定値の大きさをレベルで段階分けし、SIRの大きいものを伝送路状況が良いと同様な判断に用い、SIR推定値の低いものを伝送路状況が悪いと同様な判断に用いても良い。
図24は基地局51(52,53)の内部構成の一部を示す説明図である。同図は変調部の構成に相当する。以下、図24を参照して、基地局51において、移動局6からの制御に基づき、下り送信データの伝送速度を上下させる方法を説明する。
基地局51から、移動局6へ下りデータを送信する伝送方法が、OFDM方式であった場合、図24に示すように、基地局51はリソース番号0〜3のリソースに対応したサブキャリアSC0〜SC8を有している。
サブキャリアSC0〜SC8を全て利用した伝送速度が200kbpsであった場合、例えば、直列・並列変換部45より受ける送信データD0,D1,…,D9,…のうち、IFFT部46よって高速フーリエ変換することにより得られるサブキャリアSC1,SC3,SC5,SC7のみに送信データD1〜D4を乗せ、サブキャリアSC0,SC2,SC4,SC6,SC8には送信データを乗せなくする。そうすると、並列・直列変換部47からアンテナ部48に伝送される単位時間当たりのデータ量を小さくすることにより、伝送速度を図23に示す60kbps程度に小さくすることができる。
このように、IFFT部46により、サブキャリアSC0〜SC8のうち、送信データを乗せるサブキャリア量を変動させることにより、伝送速度を大きくしたり小さくしたりすることができる。
図22に戻って、伝送路状態判定部64において、上記の様に伝送路状況が判定されると、データ量がデータ量振り分け部65により、上記の様に決定され、変調部68において変調され、アンプコンバート部66においてRF信号に変換され、アンテナ部61から基地局に送信される。
このように、実施の形態2の移動体通信システムでは、移動局6の制御下で、各基地局に対し最初に最大の伝送速度で送信要求を出し、その後伝送速度を減らして最終的な伝送速度を要求している。すなわち、移動局6は、最初に最大リソースを確保して、その中で制御しやすいように最終決定伝送速度(最終決定リソース)に応じてリソースを減らすように制御が行われるため、リソース制御が行いやすくなる効果を奏する。なお、移動局6から基地局51〜53それぞれへの上り送信を同様な手法で行った場合でも、同様の効果を奏する。
次に、ネットワーク側主導の無線リソース制御について説明する。図25は実施の形態2の移動体通信システムの利用状況を示す説明図である。
図25に示すように、基地局51〜53に対し同一の基地局上位装置5が接続され、ネットワーク制御を行えるものとする。基地局51〜53は、移動局6とデータ通信する前に、移動局6からデータ通信用共通チャネル(例えば、W-CDMA方式であれば、3GPPにあるように、ランダムアクセスチャネル)を受信する。このランダムアクセスチャネルに、移動局6から、下り送信データの伝送速度の情報が含まれており、通常、最大値となっている。
基地局51〜53は、移動局6から、その情報を受信すると、基地局上位装置1に対して、移動局6からの要求を通知する。また、その時までには、基地局上位装置1は、各基地局51〜53のリソース使用状況を含むリソース関連情報を認識しているものとする。基地局上位装置1は、各基地局51〜53に対し、無線リソースの使用状況を含みリソース関連情報に基づいて移動局6に対する下りデータの伝送速度を決定する。なお、基地局51〜53は移動局6への下りデータDD1〜DD3に、3GPPでは、スロットフォーマット、TFCI(Transport Format Combination Indicator) を挿入することにより、決定した基地局51〜53の伝送速度を移動局に通知することができる。
伝送速度の大きさは、OFDM方式であるならば、図24を参照して説明したように、使用するサブキャリアを選択することで調整できる。W-CDMA方式であるならば、低い拡散率で送信できるようなチャネルコーディングを行うことで調整できる。チャネルコーディングに付いては、例えば、W-CDMA方式であるならば、3GPP TS25.212で規定されたチャネルコーディングを用いれば良い。なお、本実施の形態では、主として下り送信について述べたが、上り送信に関しても、同様な制御を行うことができるのは勿論である。
このように、移動局6が、複数の基地局51〜53と同時に通信を行っている状況において、基地局上位装置1による無線リソース制御のスループットを上げることができる。以下、この点について詳述する。
実施の形態2の移動体通信システムにおいて、基地局上位装置が、複数の基地局を経由して、ある1つの移動局となるべく大きい伝送速度で通信を行いたい場合、リソースの使用状況を認識して、その移動局と無線通信を行っている複数の基地局とのそれぞれの伝送速度を変化させる(無線リソース制御)という制御を行っている。
その結果、伝送速度を変化させる基準に、リソースの使用状況を使用することにより、リソース制御が単純化されるため、基地局上位装置1による無線リソース制御のスループットは向上することができる。
<実施の形態3>
図26はこの発明における実施の形態3である移動体通信システムの構成を示す説明図である。同図(a)は通常状態の場合を示しており、同図(b)は一部回線不安定状態の場合を示している。
同図に示すように、実施の形態3の移動体通信システムは、図1で示した実施の形態1の構成と同様、基地局71〜74、基地局71〜74全てと接続された基地局上位装置7からなる構成を持つネットワークを持ち、移動局8は、複数の基地局71〜74と同時に通信を行うことができるような移動体通信システムである。
図26において、移動局(端末)8は、基地局71〜74全てと同時に通信を行っている。さらに、図16で示す構成と同様に、移動局8は、基地局71〜74それぞれと、異なるデータの送受信を行っている。例えば、移動局8は、基地局71に対してデータdataDを送信し、基地局72に対してはデータdataDとは異なるデータdataBを送信している。さらに、移動局8は基地局73に対しては、データdataD及びデータdataBとは異なるデータdataAを送信している。加えて、移動局8は基地局74に対しては、データdataD、データdataB及びデータdataAとは異なるデータdataCを送信している。
図26(a)で示す通常状態においては、移動局8と基地局71〜74との回線品質は、全て良好で安定している。これに対して、図26(b)で示す一部回線不安定状態においては、移動局8と基地局71,72,74との回線品質は良好であるが、移動局8と基地局73との回線品質は、良好ではなく不安定となっている状態を示している。
図27は実施の形態3の移動体通信システムにおける移動局8の内部構成を示すブロック図である。同図に示すように、移動局8はデータ存廃判定部80、アンテナ部81、ダウンコンバート部82、リソース使用状況判定部83、滞留データ量判定部84、リソース選択部85、基地局選択部86、アンプコンバート部87、復調部88、及び変調部89から構成される。
データ存廃判定部80は、無線回線品質が不安定となったデータを破棄するか、存続するかを判断する。なお、データ存廃判定部80の動作詳細については後に詳述する。また、上述した構成部81〜89は図8で示した移動局2の構成部21〜29と同様であるため、説明を省略する。
以下に、実施の形態3の移動体通信システムにおいて、回線品質が不安定と判断する手法を図27を参照して説明する。なお、本実施の形態3は、主に上りデータ送受に関して説明している。
図27で示す構成は、実施の形態1で説明したリソース選択を行う機能ブロック(図8参照)と同様のものである。移動局8により実施の形態3の機能が制御されるのであれば、上述したように図27の機能ブロックは移動局8内に存在する。
また、基地局71〜74や基地局上位装置7などのネットワーク側により実施の形態3の機能が制御されるのであれば、基地局71〜74、または、基地局上位装置7に図27で示した構成の機能ブロックが存在することになる。
図27において、データ存廃判定部80では、データを破棄するまでの時限情報等と現在の測定値との比較によってデータ存廃の判定を行う。時限情報は、送信discard-time、あるいは、データに許容される遅延情報を含み、時限情報以外に確保すべき帯域の属性情報(=送信QoS(Quality of Service)・受信QoS)、あるいは、移動局の最大中間処理バッファサイズ(=移動局バッファサイズ)もデータ存廃判定部80により管理される時限情報等に含まれる。
現在の測定値は、データを受信してから現在までの経過時間、あるいは、単位時間当たりの平均データレート、あるいは、ARQによりACKが返答されてこない最古のデータからその後送信してACKが返答されてきたデータの量(=移動局中間バッファサイズ)を含む。上記した時限情報や属性情報は、チャネルの設定時に通信する基地局に通知されている。これらの比較により、データ存廃判断用の閾値以上になったときにデータ存廃判定部80は送信データを破棄すべき緊急モードと判定する。
このように、データ存廃判定部80は、複数の基地局における所定の基地局へのデータ送信中に送信データを廃棄すべきか否かを判断する。したがって、図26(b)で示す利用状況時に、(所定の基地局)との通信状態が不良で、上述したデータ存廃判断用の閾値以上になったとき、基地局73への送信データの廃棄を判断し緊急モードと判定する。緊急モード時において実施の形態3の移動体通信システムは以下の動作を行う。
図26の(b)に示すような一部回線不安定状態時において、データ存廃判定部80が緊急モードと判定した際、移動局8がデータdataAをどうしても最後まで送信しきらなければならない場合、移動局8は、いままでデータdataAを送信していなかった基地局71,72,74に対しても、データdataAを分散して送信して、データdataAを迅速に基地局71,72,74に送信するようにする。
基地局71,72,74は分散したデータdataAを受信すると、基地局71,72,74間で通信を行いデータdataAを結合するか、基地局上位装置7において基地局71,72,74から受信された分散したデータdataAを集めて並べ替えるかにより、分散されたデータdataAをまとめることができる。また、基地局71,72,74間で通信を行ってデータdataAを順番どおりに並べ替え後、基地局上位装置7に送信することにより、分散されたデータdataAをまとめることができる。
また、緊急度に応じて、データdataAを送信するように変更する周辺基地局数を制御することができる。これは、データ存廃判定部80が、緊急度合を判断する機能をさらに持ち、基地局選択部86が、データdataAを送信する基地局を選択する機能を有していれば実現できる。この場合、基地局選択部86は、どの基地局が緊急モード時にデータdataAを送信することになり易いかを数値化した”関連度(通信属性値)”というものを持っている。関連度を表すパラメータ(関連度パラメータ(通信属性値用パラメータ))は、(A)回線品質、(B)基地局間距離情報/移動局位置情報、(C)移動局移動速度情報、(D)移動局移動方向情報、を含む。
図28は関連度パラメータに基づく緊急時基地局選択内容を表形式で示す説明図である。図28に示すように、移動局8が、関連度を指定し、緊急時に、どの基地局とにおいてデータdataAの通信に変更するかの制御を行う場合を示している。
同図に示すように、関連度パラメータとして、(A)回線品質、(B)基地局間距離情報、(C)移動局移動速度情報、(D)移動局移動方向情報は、0〜63にレベル分けされており、(A)回線品質は値が大きいほど良好な回線品質であることを意味する。(B)基地局間距離情報は値が大きいほど、移動局と基地局との距離が大きいことを意味する。(C)移動局移動速度情報は、移動局が移動している速度を表しており、値が大きいほど速度が速いことを意味する。基地局毎に値が違うのは、それぞれの基地局からみると、移動速度が異なって見えるからである。基地局と移動局との距離が大きいほど、小さい時に比べて、移動速度は小さく見える。(D)移動局移動方向情報は、移動局が、それぞれの基地局に対して、近づいているのか、遠ざかっているのかを数値化したものである。値が大きいほど、移動局は、その基地局に対して近づいていっていることになる。それぞれのレベル値は、3GPPなどで規定されているソフトハンドオーバで用いられるようなパラメータの求め方と同様に求められる。
これらの関連度パラメータを元に、基地局71〜74毎に属性値が求められる。属性値(E)は、(A)-(B)+(C)+(D)の計算式で求められる。属性値(E)に対する閾値を60とし、それを上回っている基地局71,72が、基地局73の緊急時にデータdataAの通信に選択される基地局となる。
また、(A)回線品質を元に、データdataAの通信に変更した場合の各基地局の伝送速度が決められる。(A)回線品質が50以上63以下である場合に、64kbps、(A)回線品質が32以上49以下である場合に32kbpsの伝送速度であるとすると、移動局8は、緊急時に伝送速度64kbpsでデータdataAを基地局71に送信するように変更される。一方、移動局8は、緊急時に、伝送速度32kbpsでデータdataAを基地局72に送信するように変更される。上りデータ通信に関して説明したが、下りデータ通信に関しても、同様に制御を行うことができる。
また、移動局8が主体となって、緊急時のデータ通信内容の変更を行う替わりに、基地局71〜74が主体となって、緊急時のデータ通信内容の変更を行う場合は、基地局71〜74それぞれが、図28で示す関連度パラメータをそれぞれ測定して保持していて、緊急時に、緊急時基地局選択と自認した基地局に、移動局8がデータdataAを送信することになる。下りデータに関しても、同様に制御を行うことができる。
このように、実施の形態3の移動体通信システムにおいては、移動局8の基地局71〜74とのいずれかの回線において、品質が劣化して、不安定な回線状態となった場合、移動局8が基地局71〜74の無線リソースを制御することで、データ通信を絶やすことなく送信完了できる頻度が高くなり、実質的なスループットが向上を図ることができる効果を奏する。
すなわち、実施の形態3の移動体通信システムによれば、移動局2は、基地局選択部86により、通信属性値(E)に基づき通信良好と判断した通信良好基地局を、データ存廃判定部80で廃棄と判断した送信データの送信先として選択することにより、通信対象の基地局が送信データの送信が困難な状況が生じても、当該送信データを通信良好基地局に送信することにより送信データの送信を正常に完了させることができる効果を奏する。
なお、実施の形態3では、移動局8から基地局71〜74への上りデータの送信の場合について述べたが、逆に、基地局から、移動局への下りデータの送信の場合についても、上記と同様な制御が可能である。この場合の効果についても、同様である。
この際、移動局8が主体となって制御を行う場合には、基地局上位装置7を経由しない分、高速な制御を行うことができる。
また、上記した関連度パラメータ(回線品質、基地局間距離情報、移動局移動速度情報、移動局移動方向情報)に基づく基地局選択を行う方法を用いて、回線緊急時に、その回線データの送受を完了させる他に、回線緊急時ではない場合にもスループットを向上させることができる。
図29及び図30は実施の形態3の移動体通信システムにおける通常状態時におけるスループット向上方法を示す説明図である。図29は、4つの基地局71〜74と、移動局8との位置関係を、地上の真上から見た状態を概念的に示している。移動局8は、基地局71〜74のうち、3つの基地局71〜73のセルエリアCA1〜CA3内にあり、基地局71〜73と同時通信することが可能である。図29は移動局8が静止状態にある場合を示している。図29で示す状態の場合は、移動局8と基地局71、移動局8と基地局72、移動局8と基地局73は、それぞれ、異なったデータを送受信していても良いし、同じデータを送受していても良い。
移動局8が基地局71〜74における関連度パラメータを一括管理する場合、移動局8は、基地局74の関連度パラメータも、基地局71や基地局73などから得て管理しているものとする。移動局8が静止している場合、各基地局71〜74が通信可能な領域を意味するセルエリアCA1〜CA4のセル半径は、一定値で、セルエリアCA1〜CA4は円形を呈している。
図30に示すように、この状態で、移動局8が、基地局74の方向に移動する場合、移動局8は、上記関連度パラメータのうち、基地局74における移動局移動速度情報と移動局移動方向情報の内容を参照して、基地局71(あるいは基地局72,73)に対して、基地局74のセルエリアCA4内に移動局8が含まれるように、セルエリアCA4の変形指示を与える。基地局74は、移動局8と通信状態となっている他の基地局71(あるいは基地局72,73)を介して得られる移動局8からの指示に基づき、移動局8に対して、ビームフォーミングなどを行うことにより、セルエリアCA4を変形して、図30に示すように、移動局8がセルエリアCA4内に入るようにする。
すなわち、基地局74における移動局移動速度情報と移動局移動方向情報のパラメータ値が大きいほど、移動局8は基地局74に対して、ビーム(セルエリアCA4の形状)を移動局8自身に向けるように指示を行う。
一方、基地局72は、自身の関連度パラメータにおける移動局移動速度情報と移動局移動方向情報の値が共に小さくなるため、移動局8は、基地局72に対して、ビームを向けないように指示を行う。移動局移動速度情報と、移動局移動方向情報は、加算するか、乗算するかを行い、一つの値として認識する。また、上記2つの情報それぞれに異なる重み係数を乗算してから加算しても良い。
移動局8は、基地局74との関連度パラメータにおける回線品質の値が、時限情報等により決定されるある閾値を超えると、基地局74の無線リソースを確保するように制御を行う。また、移動局8は、基地局72との回線品質の値が、ある閾値を下回ると、基地局72の無線リソースを切断するように制御を行う。切断しようとする基地局72のデータを早く送受しきるために、移動局は、基地局71,基地局73のリソースも用いて、基地局73との間のデータを早く送受しようとする。なお、ビームを向けるとは、基地局の複数アンテナに指向性を持たせ、移動局の方向に強い送信電力となるようなビームパターンを基地局が生成することである。ビームを向けないとは、移動局の方向に弱い送信電力なるようなビームパターンとすることである。移動局にヌルを向けるようにしても良い。
以下、「ヌル」について説明する。複数ブランチを用いたアレーアンテナのビームフォーミングを行うと、メインローブと、サイドローブが存在するビームパターンが形成される。このメインローブと、サイドローブとの間、その他ローブ同士の間は、ビームの谷間の様にへこんだ状態になり、ビームが届かない領域になる。その領域を「ヌル」という。なお、ビームを向けるとは、メインローブを移動局に向くように制御することを意味する。
移動局8ではなく、基地局上位装置7など、ネットワーク側が上記関連度パラメータを管理する場合、ネットワーク側は、移動局8と接続した基地局71〜73から、移動局と各基地局との属性を示す関連度パラメータ(回線品質、基地局間距離情報、移動局移動速度情報、移動局移動情報)を監視することになる。移動局8が、図29の位置から、基地局74に向けて移動を開始した場合、基地局上位装置7(ネットワーク側)は、そのことを、関連度パラメータの移動局移動方向情報等の値から認識する。移動局移動速度情報の値と、移動局移動方向情報の値に基づいて、基地局上位装置7(ネットワーク側)は、基地局74のセルを構成するビームを移動局8に向ける。移動局移動速度情報値と、移動局移動方向情報から基地局74のビーム制御を行うための値を得るには、2つの情報から得られる値を加算しても良いし、乗算しても良いし、それぞれの情報に重み付け係数を乗算してから加算しても良い。
このようにして、移動局移動速度情報及び移動局移動方向情報に基づいて得られた値が大きければ大きいほど、基地局74のビームを移動局8に向ける度合いを強くする。移動局8と基地局74との関連度パラメータのうちの回線品質パラメータ値が、ある閾値を超えると、基地局上位装置7は、基地局74に対して、移動局8と通信を行うようにリソース制御を行う。そして、移動局8と基地局74との通信が開始される。
一方、移動局8と、基地局72との関連度パラメータのうち、移動局移動速度情報、及び移動局移動方向情報から得られる基地局72のビーム制御のための値は小さくなっていくため、基地局72からのビームを移動局8に向ける度合いを弱くする。移動局8と、基地局72との関連度パラメータのうちの回線品質の値がある閾値を下回ると、基地局上位装置7は、基地局72に対して、移動局8との通信を切断するように無線リソース制御を行う。切断しようとする基地局72のデータを早く送受しきるために、基地局上位装置7は、基地局71,73に対して、移動局8と基地局72との通信中のデータと同じデータを早く送受しようとする。
このように、実施の形態3の移動体通信システムは、移動局8は、関連度パラメータにおける移動局移動速度情報と移動局移動方向情報とに基づき、移動する先に存在するの基地局との無線リソースを確保して通信状態にすること、及び遠ざかる方向にある基地局との無線リソースを解放を行い開放状態にすることを、それぞれ優先的に早期に行っている。このため、移動局が複数の基地局と同時に通信することができる移動体通信システムにおいて、スループットの向上を実現することができる。また、移動局が遠ざかる方向に存在する通信状態の基地局の消費電力をより小さくすることができる。
また、図9に示すように、基地局11〜14(基地局71〜74に相当)それぞれにローカルサーバ91〜94が接続されて、ローカルサーバ91〜94それぞれからの情報を移動局8に送信できるようなシステムを考える。この場合、移動局8が移動する方向に存在する基地局が、移動局8と早く接続できるようになるため、移動局8を利用するユーザが、移動先の情報をより早く知ることができるようになったり、ユーザが知りたいと思う情報を、タイムリーに得ることができる効果を奏する。すなわち、移動先の基地局が一般的に有している基地局近傍のローカルな(場所毎の)情報を早期に得ることができる。
図31は、図29及び図30で示した実施の形態3の移動体通信システムにおける通常状態時におけるスループット向上方法を実現するための第1のシステムである基地局及び基地局上位装置の構成を示すブロック図である。
図31で示す構成は、実施の形態3において、移動局移動速度情報や、移動局移動方向情報など図28に示す関連度パラメータに基づき、基地局上位装置の制御下で基地局のセル構成を変更する事ができる基地局と基地局上位装置の構成を示す図である。
図31において、一つの基地局上位装置150に対し2つの基地局111,112が接続されている構成を示している。
基地局111,112はそれぞれアンテナ部121、変調部122、復調部123及び重み付け係数設定部125を有する。アンテナ部121は移動局8や他の基地局と送受信を行う。変調部122は送信を行いたいデータを変調する。復調部123は受信したチャネルを復調する。
重み付け係数設定部125は変調部122、あるいは、復調部123のビームパターンを信号処理で変形させるための重み付け係数設定処理を行う。
一方、基地局制御装置やコアネットワークに相当する基地局上位装置150は、内部にパラメータ情報格納部154を有している。パラメータ情報格納部154は、移動局移動速度情報、移動局移動方向情報など、図28に示す関連度パラメータを格納している。
以下、移動局8が移動する方向の先にあり、移動局8が近づく方向に存在する基地局が、移動局を早くセルエリア内に入れるようにセル構成を変形させるビームパターン変形の動作を図29〜図31を用いて説明する。
以下で述べる説明の都合上、図31で示した基地局111は、図29,図30で示した基地局72に相当し、基地局112は、図29,図30で示した基地局74に相当すると仮定する。
基地局111,基地局112それぞれにおいて、アンテナ部121により受信された移動局8からの上りデータは、復調部123において復調される。その際、図15のようなパス検出の検出位置の情報などにより、移動局移動速度情報と、移動局移動方向情報など、図28で示される関連度パラメータの元となる情報を測定し、関連度パラメータを基地局上位装置150に通知することにより、基地局上位装置150内のパラメータ情報格納部154に各基地局における関連度パラメータが格納される。すなわち、パラメータ情報格納部154内に図28に示すような関連度パラメータが収集される。
基地局上位装置150は、パラメータ情報格納部154に格納された関連度パラメータにおける移動局移動速度情報と、移動局移動方向情報とに基づき、移動局8が基地局111から遠ざかり、基地局112の方向に向かっていることを認識する。この場合、基地局上位装置150は、基地局111に対しては、ビームパターンを、移動局8がセルエリアに入らないような形を形成するような重み付け係数を設定するよう指示を基地局111の重み付け係数設定部125に与え、基地局112の重み付け係数設定部125に対しては、ビームパターンを、移動局がセルエリアに入るような形を形成するような重み付け係数を設定するよう指示を与える。
その結果、今まで基地局112(図29,図30の基地局74)では受信できなかった移動局8からのデータを受信できるようになり、また、今まで基地局112が移動局8に送信できなかったデータを送信できるようになる。
図32はアンテナ部121及び変調部122の詳細を示す説明図である。図33はアンテナ部121及び復調部123の詳細を示す説明図である。これらの図は、アンテナ部121、変調部122及び復調部123における、重み付け係数設定部125によって設定される重み付け係数に基づく信号処理を用いてビームパターンを変更する構成を示している。
図32に示すように、アンテナ部121はアンテナブランチ121a〜121dから構成され、変調部122内にアンテナブランチ121a〜121dに対応して乗算部126a〜126dが設けられ、乗算部126a〜126dはそれぞれ重み付け係数設定部125によって設定された重み係数を用いて乗算処理を行う。乗算部126a〜126dにおいて設定される重み係数の大きさは処理対象の信号の振幅の大きさ、位相回転量と正の相関を有する。したがって、相対的に大きい重み係数が設定された乗算部(126a〜126d)に対応するアンテナブランチ(121a〜121d)の送信能力が高くなる。
図33に示すように、復調部123内にアンテナブランチ121a〜121dに対応して乗算部127a〜127dが設けられ、乗算部127a〜127dはそれぞれ重み付け係数設定部125による設定された重み係数を用いて乗算処理を行う。乗算部127a〜127dの乗算結果が加算部128で加算されることにより復調信号が得られる。乗算部127a〜127dにおいて設定される重み係数の大きさは信号の振幅の大きさ、位相回転量と正の相関を有する。したがって、相対的に大きい重み係数が設定された乗算部(126a〜126d)に対応するアンテナブランチ(121a〜121d)の受信能力が高くなる。
このように、アンテナブランチ121a〜121dに対応づけた変調部122内の乗算部126a〜126d、復調部123内の乗算部127a〜127dの重み付けを適宜設定してビームパターンを変更することにより、図29,図30で示したようにセルエリアを変形することができる。
図34は移動局8に割り当てる周波数帯域を示す説明図である。同図に示すように、OFDMを用いて、近づいてくる移動局に対しては、比較的広い周波数帯域(接近移動局割り当てAC1)を割当て、遠ざかる移動局に対して比較的狭い周波数帯域(接近移動局割り当てAC2)を割り当てるようにしても良い。この場合、基地局111,112の構成は、重み付け係数設定部125が、サブキャリア割当て部となり、近づいてくる移動局に対して、多くのサブキャリアを割当てるように制御する事になる。これにより、近づいてくる移動局との通信は安定し、ハンドオーバも行いやすくなり、遠ざかる移動局との通信は、より不安定となり、回線が切断され易くなるという効果を奏する。
まあ、移動局が近づいていく基地局とその移動局とのハンドオーバは高速スケジューリング(ハンドオーバ処理の優先度を高くするスケジューリング)で、遠ざかる基地局とのハンドオーバは低速粗雑なスケジューリング(ハンドオーバ処理の優先度を低くしたリアルタイム性の無いスケジューリング)で行われても良い。この場合、基地局を安価にできる。
このように、実施の形態3の移動体通信システムにおける第2のシステムによって、移動局の移動方向及び移動速度に関する情報に基づく基地局上位装置150の制御下で、複数の基地局のうち、移動局が近づく方向に存在する非通信状態の基地局が早期に通信状態にされ、移動局が遠ざかる方向に存在する通信状態の基地局が早期に開放状態になるように制御されるため、移動体通信システムにおけるスループット向上を図ることができる。また、移動局が遠ざかる方向に存在する通信状態の基地局の消費電力をより小さくすることができる。
図35は、図29及び図30で示した実施の形態3の移動体通信システムにおける通常状態時におけるスループット向上方法を実現するための第2のシステムの基地局及び移動局の構成を示すブロック図である。
図35で示す構成は、実施の形態3において、移動局移動速度情報や、移動局移動方向情報など図28に示す関連度パラメータに基づき、移動局の制御下で基地局のセル構成を変更する事ができる基地局と移動局の構成を示す図である。
図35において、一つの移動局130が2つの基地局113,114とからなる構成を示している。
基地局113,114はそれぞれアンテナ部121、変調部122、復調部129及び重み付け係数設定部125を有する。アンテナ部121は移動局130と送受信を行う。変調部122は送信を行いたいデータを変調する。復調部129は受信したチャネルを復調する。復調内容が移動局130からの重み付け指示の場合、当該指示内容を重み付け係数設定部125に付与する。
重み付け係数設定部125は変調部122、あるいは、復調部129のビームパターンを信号処理で変形させるための重み付け係数設定処理を行う。
一方、移動局130は、内部に移動局移動速度情報、移動局移動方向情報などの関連度パラメータを格納するパラメータ情報格納部134を有している。パラメータ情報格納部134に格納した関連度パラメータは変調部132で変調してアンテナ部131から基地局113,基地局114に送信することができる。また、基地局113,1114からの関連度パラメータに関する情報はアンテナ部131で受信され、復調部133で復調された後にパラメータ情報格納部134内に格納される。
以下、移動局130が移動する方向の先にあり、移動局130が近づく方向に存在する基地局が、移動局を早くセルエリア内に入れるようにセル構成を変形させるビームパターン変形の動作を図29,図30及び図35を用いて説明する。
以下で述べる説明の都合上、図35で示した基地局113は、図29,図30で示した基地局72に相当し、基地局114は、図29,図30で示した基地局74に相当し、移動局130が移動局8に相当すると仮定する。
移動局130において、基地局113からのデータを受信すると、アンテナ部131で受信し、ダウンコンバートされて、復調部133で復調される。その際、図15で示されるようなパス検出の検出位置の情報などから、移動局移動速度情報と、移動局移動方向情報の情報が測定され、これらの情報を関連度パラメータとしてパラメータ情報格納部154に格納する。
パラメータ情報格納部154の関連度パラメータに基づき、移動局130は、基地局113から、基地局114の方向に移動していることを認識する。移動局130は、基地局113の重み付け係数設定部125に対し、移動局130が基地局113のセルエリアから早く外れるように、ビームパターンを変更するよう、重み付け係数の設定を指示するする信号を、変調部132、アンテナ部131を経由して送信する。
一方、移動局130は、基地局114の重み付け係数設定部125に対しては、移動局130が、早くセルエリアに入るように、ビームパターンを変更するように、重み付け係数の設定を指示するする信号を、変調部132、アンテナ1131を経由して、送信する。なお、この送信内容は移動局130と通信状態にある基地局113を介して基地局113に伝送される。
その結果、今まで基地局114では受信できなかった移動局130からのデータを受信できるようになり、また、今まで基地局114が移動局130に送信できなかったデータを送信できるようになる。
このように、実施の形態3の移動体通信システムにおける第2のシステムによれば、移動局の移動方向及び移動速度に関する情報に基づく移動局130の制御下で、複数の基地局のうち、移動局が近づく方向に存在する非通信状態の基地局が早期に通信状態にされ、移動局が遠ざかる方向に存在する通信状態の基地局が早期に開放状態になるように制御されるため、移動体通信システムにおけるスループット向上を図ることができる。また、移動局が遠ざかる方向に存在する通信状態の基地局の消費電力をより小さくすることができる。
なお、重み付け係数設定部125からの制御により、信号処理を用いてビームパターンを変更する変調部122及びアンテナ部121の構成は図32で示した構成と同様である。また、重み付け係数設定部125からの制御により、信号処理を用いてビームパターンを変更する復調部129及びアンテナ部121の構成は図33で示した構成(復調部123が復調部129に置き換わる点のみ異なる)と同様である。
なお、図34で示した様に、OFDMを用いて、近づいてくる移動局に対しては、多くの周波数帯域を割当てるようにしても良い。この場合の基地局113,114の構成は、重み付け係数設定部125が、サブキャリア割当て部となり、近づいてくる移動局に対して、多くのサブキャリアを割当てるように制御する事になる。これにより、近づいてくる移動局との通信は安定し、ハンドオーバも行いやすくなり、遠ざかる移動局との通信は、より不安定となり、回線が切断され易くなるという効果がある。
また、移動局が近づいていく基地局とその移動局とのハンドオーバは高速スケジューリングで、遠ざかる基地局とのハンドオーバは低速粗雑なスケジューリングで行われても良い。この場合、基地局を安価にできる。
図36は、図29及び図30で示した実施の形態3の移動体通信システムにおける通常状態時におけるスループット向上方法を実現するための第3のシステムの基地局の構成を示すブロック図である。
図36で示す構成は、実施の形態3において、移動局移動速度情報や、移動局移動方向情報など図28に示す関連度パラメータに基づき、基地局自身の制御下で基地局のセル構成を変更する事ができる基地局の構成を示す図である。
基地局115はアンテナ部121、変調部122、復調部123、パラメータ情報格納部124及び重み付け係数設定部125を有する。アンテナ部121は移動局130と送受信を行う。変調部122は送信を行いたいデータを変調する。復調部123は受信したチャネルを復調する。
基地局115は、内部に移動局移動速度情報、移動局移動方向情報などの関連度パラメータを格納するパラメータ情報格納部124を有している。
重み付け係数設定部125は、パラメータ情報格納部124内に格納された関連度パラメータに基づき、変調部122、あるいは、復調部123のビームパターンを信号処理で変形させるための重み付け係数設定処理を行う。
以下、移動局が移動する方向の先にあり、移動局が近づく方向に存在する基地局が、移動局を早くセルエリア内に入れるようにセル構成を変形させるビームパターン変形の動作を図29,図30及び図36を用いて説明する。
以下で述べる説明の都合上、図36で示した基地局115は、図29,図30で示した基地局74に相当すると仮定する。
アンテナ部121により受信された移動局8からの上りデータは、復調部123において、復調される。その際、パス検出の検出位置の情報など、図28で示される関連度パラメータの元となる情報を認識し、内部のパラメータ情報格納部124に格納する。
パラメータ情報格納部124において、基地局115自身に関する、図28に示すような関連度パラメータが収集される。パラメータ情報格納部124において、移動局移動速度情報と、移動局移動方向情報との情報を元に、移動局が基地局115の方向に向かっていることを認識すると、移動局8がセルエリアに十分に入り、安定した通信ができるような形を形成するように重み付け係数の設定を指示する(説明の都合上、図36では当該指示が行われることとパラメータ情報格納部124から重み付け係数設定部125への矢印で示している)。これにより、今まで移動局8と基地局115との通信の回線品質が悪かったのが、良好な品質で通信できるようになる。
基地局115が自ら重み付け係数設定部125の設定内容を指示する第3のシステムでは、あらかじめ移動局8との通信が、回線品質が悪かったとしても、少なくとも関連度パラメータが認識可能程度に成立していなければならない。
これに対して、基地局上位装置150や、移動局130で重み付け係数設定部125の設定内容の変更を指示する第1及び第2のシステム構成(図31及び図35参照)では、移動局8がセルエリア内から外れている場合でも、ビームを変更する制御を行うことが可能であるという違いがある。
このように、実施の形態3の移動体通信システムにおける第3のシステムによれば、移動局の移動方向及び移動速度に関する情報に基づく基地局115自身の制御下で、移動局が近づく方向に存在する非通信状態の場合に早期に通信状態にし、移動局が遠ざかる方向に存在する通信状態の場合に早期に開放状態になるように制御するため、移動体通信システムにおけるスループット向上を図ることができる。また、移動局が遠ざかる方向に存在する通信状態の基地局の消費電力をより小さくすることができる。
なお、重み付け係数設定部125からの制御により、信号処理を用いてビームパターンを変更する変調部122及びアンテナ部121の構成は図32で示した構成と同様である。また、重み付け係数設定部125からの制御により、信号処理を用いてビームパターンを変更する復調部123及びアンテナ部121の構成は図33で示した構成と同様である。
なお、図34で示した様に、OFDMを用いて、近づいてくる移動局に対しては、多くの周波数帯域を割当てるようにしても良い。この場合の基地局115の構成は、重み付け係数設定部125が、サブキャリア割当て部となり、近づいてくる移動局に対して、多くのサブキャリアを割当てるように制御する事になる。これにより、近づいてくる移動局との通信は安定し、ハンドオーバも行いやすくなり、遠ざかる移動局との通信は、より不安定となり、回線が切断され易くなるという効果がある。
また、移動局が近づいていく基地局とその移動局とのハンドオーバは高速スケジューリングで、遠ざかる基地局とのハンドオーバは低速粗雑なスケジューリングで行われても良い。この場合、基地局を安価にできる。
この発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。