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JP4793537B2 - 可視光透過型粒子分散導電体、導電性粒子、可視光透過型導電物品、およびその製造方法 - Google Patents

可視光透過型粒子分散導電体、導電性粒子、可視光透過型導電物品、およびその製造方法 Download PDF

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JP4793537B2 JP2004344775A JP2004344775A JP4793537B2 JP 4793537 B2 JP4793537 B2 JP 4793537B2 JP 2004344775 A JP2004344775 A JP 2004344775A JP 2004344775 A JP2004344775 A JP 2004344775A JP 4793537 B2 JP4793537 B2 JP 4793537B2
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Description

本発明は、タングステン酸化物または/及び複合タングステン酸化物を含んでなる導電性粒子を用いた可視光透過型粒子分散導電体、この可視光透過型粒子分散導電体から形成される可視光透過型導電物品、これらの可視光透過型粒子分散導電体と可視光透過型導電物品とに用いられる導電性粒子、およびその製造方法に関する。
現在、透明導電膜は各種表示素子、プラズマ発光表示素子、太陽電池等の透明電極の他、赤外線吸収反射膜、防曇膜、電磁遮蔽膜等に利用されている。
近年、各種表示素子の発展により透明電極の需要も高まっている。透明電極については、材料中に多くの自由電子を保有し導電性が高いことから、酸化インジウムにスズを数モル%ドープしたITO(Indium−Tin−Oxide)が主に用いられている(特許文献1、2)。このITOの母体であるInは、酸化物半導体であり、結晶中に含まれる酸素欠陥からキャリア電子が供給され導電性を示す透明導電物質である。このInにSnを添加すると、キャリア電子が大幅に増加し高い導電性を示すようになると考えられている。
ところで、最近の各種表示装置は低コスト化の傾向にあり、表示欠陥の無い高画質の表示素子を得る上で、透明電極の性能、特にシート抵抗値の低減と可視光透過率の向上が望まれている上、透明電極そのもののコストダウンが極めて重要な課題になっている。ITOの成膜技術改良やスパッタリングターゲットの改良等により透明導電膜の物性向上とコストダウンが進められてきているが、ITOの低コスト化には限界があり、最近のより広範囲のニーズへの対応が困難になってきている。
また、粒子分散型の透明導電膜として、銀塩およびパラジウム塩を含有する水溶液(A)とクエン酸イオンおよび第一鉄イオンとを含有する水溶液(B)とを、実質的に酸素を含まない雰囲気中で混合することによりAg−Pd微粒子を析出させ、このAg−Pd微粒子を水および/または有機溶媒中に含有した塗布液を基体上に塗布して形成された微粒子膜(特許文献3)や、平均1次粒子径10 〜60nmのITO微粒子が平均2次粒子径120〜200nmの2次粒子を形成し、この2次粒子が分散しているインク組成物を使用して形成される透明導電膜(特許文献4)が知られている。
特許文献5では、メタ型タングステン酸アンモニウムと水溶性の各種金属塩とを原料とし、その混合水溶液の乾固物を約300〜700℃の加熱温度に対して不活性ガス(添加量;約50vol%以上)または水蒸気(添加量;約15vol%以下)を添加した水素ガスを供給することによりMWO(M元素;アルカリ、アルカリ土類、希土類などの金属元素、0<x<1)で表される種々のタングステンブロンズを得る製造方法や、同様の操作を支持体上で行わせ、種々のタングステンブロンズ被覆複合体を製造する方法が提案されている。しかし、当該タングステンブロンズは、燃料電池等の電極触媒やエレクトロクロミック材料へ利用される固体材料として考えられており、透明導電性に関する考察はされていない。
特開2003−249125号公報 特開2004−026554号公報 特開2000−90737号公報 特開2001−279137号公報 特開平8−73223号公報
特許文献1、2に記載されたITO導電膜は、インジウムを使用しているため高価であり、安価な透明導電薄膜が工業的に望まれている。
また、特許文献3に記載された貴金属粒子や、特許文献4に記載されたITO粒子は、塗布法によって成膜可能であるため大掛かりな装置が不要となり、成膜コストを低減できるが、粒子自体が高価であり汎用性に欠ける。
本発明の目的は、上述の事情を考慮してなされたものであり、可視光透過性及び導電性に優れ安価な可視光透過型粒子分散導電体を提供することにある。
本発明の他の目的は、上述した可視光透過型粒子分散導電体に用いられる導電性粒子を提供することにある。
本発明の更に他の目的は、可視光透過性及び導電性に優れ安価な可視光透過型粒子分散導電体を用いた可視光透過型導電物品を提供することにある。
本発明の更に他の目的は、可視光透過性及び導電性に優れ安価な可視光透過型粒子分散導電体を得るための導電性粒子を簡便な方法で製造できる導電性粒子の製造方法を提供することにある。
三酸化タングステンはワイドバンドギャップ酸化物であり、可視光領域の光の吸収がほとんど無く、しかもその構造中に自由電子(伝導電子)が存在しないので、導電性を示さない。ところが、三酸化タングステンから少量の酸素が減少したものや、三酸化タングステンにNa等の陽性元素を添加したいわゆるタングステンブロンズは、自由電子が生成されて導電性が発現することが知られている。この三酸化タングステンから少量の酸素が減少したものや、三酸化タングステンに陽性元素を添加したタングステンブロンズは、可視光領域で光の吸収が生じると認識されているため、粒子分散型の透明導電性材料として応用されていない。
本発明者らは、上述の三酸化タングステンから少量の酸素が減少したものや、三酸化タングステンに陽性元素を添加したタングステンブロンズは、波長800nm程度以上の光の吸収が強いが、波長380nm〜780nm程度の人が感知する波長領域(可視光領域)での光の吸収は、前者(波長800nm程度以上の光)の場合と比較して弱いため、可視光透過型透明導電体膜の形成が可能であることに注目した。
そして本発明者らは、三酸化タングステンがワイドバンドギャップであることから、三酸化タングステンの骨格構造を利用し、この三酸化タングステンの酸素量を減少させ、あるいは陽イオンを添加することで、伝導電子(自由電子)を生成させ、このタングステン酸化物粒子、複合タングステン酸化物粒子の粒子径や形状を制御して、可視光領域の光を透過させながら導電性を有する粒子を作製し、これを用いて可視光透過型粒子分散導電体を得るに至った。
すなわち、本発明の第1の発明は、
一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、z/y=2.72)で表記されるタングステン酸化物マグネリ相、または/及び、一般式MxWyOz(但し、M元素は、Cs、Rb、K、Na、Ba、In、Tlのうちから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.33≦x/y≦0.55、z/y=3)で表記される、結晶構造が六方晶タングステンブロンズ構造を有する複合タングステン酸化物を含んでなり、粒子径は1nm以上であり、可視光透過性を有し、かつ、該粒子を9.8MPa圧力下において測定した圧粉抵抗値が1.0Ω・cm以下である導電性粒子の複数集合物であることを特徴とする可視光透過型粒子分散導電体である。
本発明の第2の発明は、
上記導電性粒子の形状が、粒状、針状もしくは板状のいずれか1種以上であることを特徴とする第1の発明に記載の可視光透過型粒子分散導電体である。
本発明の第3の発明は、
上記導電性粒子が、針状結晶を含み、または、全て針状結晶であって、当該針状結晶における長軸と短軸との比(長軸/短軸)が5以上であり、且つ、当該長軸の長さが5nm以上、10000μm以下であることを特徴とする第1または第2の発明に記載の可視光透過型粒子分散導電体である。
本発明の第4の発明は、
上記導電性粒子が、板状結晶を含み、または、全て板状結晶であって、当該板状結晶の厚さが1nm以上、100μm以下であり、且つ、当該板状結晶における板状面の対角長の最大値が5nm以上、500μm以下であり、且つ、当該対角長の最大値と当該板状結晶の厚さとの比(対角長の最大値/厚さ)が5以上であることを特徴とする第1または第2の発明に記載の可視光透過型粒子分散導電体である。
本発明の第5の発明は、
上記可視光透過型粒子分散導電体が膜状であることを特徴とする第1乃至第4の発明のいずれかに記載の可視光透過型粒子分散導電体である。
本発明の第6の発明は、
上記可視光透過型粒子分散導電体がバインダーを含むことを特徴とする第1乃至第5
の発明のいずれかに記載の可視光透過型粒子分散導電体である。
本発明の第7の発明は、
上記バインダーが、透明樹脂または透明誘電体であることを特徴とする第6の発明に記載の可視光透過型粒子分散導電体である。
本発明の第8の発明は、
一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、z/y=2.72)で表記されるタングステン酸化物マグネリ相、または/及び、一般式MxWyOz(但し、M元素は、Cs、Rb、K、Na、Ba、In、Tlのうちから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.33≦x/y≦0.55、z/y=3)で表記される、結晶構造が六方晶タングステンブロンズ構造を有する複合タングステン酸化物を含んでなり、粒子径は1nm以上であり、可視光透過性を有し、かつ、該粒子を9.8MPa圧力下において測定した圧粉抵抗値が1.0Ω・cm以下であることを特徴とする導電性粒子である。
本発明の第9の発明は、
第1乃至第7の発明のいずれかに記載の可視光透過型粒子分散導電体が基材上に形成されていることを特徴とする可視光透過型導電物品である。
本発明の第10の発明は、
一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、z/y=2.72)で表記されるタングステン酸化物マグネリ相、または/及び、一般式MxWyOz(但し、M元素は、Cs、Rb、K、Na、Ba、In、Tlのうちから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.33≦x/y≦0.55、z/y=3)で表記される、結晶構造が六方晶タングステンブロンズ構造を有する複合タングステン酸化物を含んでなる導電性粒子の製造方法であって、
当該導電性粒子の原料となるタングステン化合物を、還元性ガスまたは/及び不活性ガス雰囲気中で熱処理して、上記導電性粒子を製造することを特徴とする導電性粒子の製造方法である。
本発明の第11の発明は、
上記熱処理は、導電性粒子の原料となるタングステン化合物を、還元性ガス雰囲気中にて100℃以上850℃以下で熱処理することを特徴とする第10の発明に記載の導電性粒子の製造方法である。
本発明の第12の発明は、
上記熱処理は、導電性粒子の原料となるタングステン化合物を、還元性ガス雰囲気中にて100℃以上850℃以下で熱処理し、次いで、不活性ガス雰囲気中にて550℃以上1200℃以下の温度で熱処理することを特徴とする第10の発明に記載の導電性粒子の製造方法である。
本発明の第13の発明は、
上記導電性粒子の原料となるタングステン化合物が、3酸化タングステン、2酸化タングステン、タングステン酸化物の水和物、6塩化タングステン、タングステン酸アンモニウム、タングステン酸、6塩化タングステンをアルコール中に溶解させたのち乾燥して得られるタングステン酸化物の水和物、6塩化タングステンをアルコール中に溶解させたのち水を添加して沈殿を生成させ当該沈殿を乾燥して得られるタングステン酸化物の水和物、タングステン酸アンモニウム水溶液を乾燥して得られるタングステン化合物、金属タングステン、から選択されるいずれか1種類以上であることを特徴とする第10または第12の発明に記載の導電性粒子の製造方法である。
本発明の第14の発明は、
第13の発明に記載の導電性粒子の原料となるタングステン化合物と、M元素(但し、M元素は、Cs、Rb、K、Na、Ba、In、Tlのうちから選択される1種類以上の元素)を含有する単体または化合物とを混合した粉末、または、上記タングステン化合物の溶液または分散液と上記M元素を含有する化合物の溶液または分散液とを混合したのち乾燥して得られた粉末、から選ばれる1種以上を、当該導電性粒子の原料となるタングステン化合物として用いることを特徴とする第10乃至第13の発明のいずれかに記載の導電性粒子の製造方法である。
第1乃至第7の発明に係る可視光透過型粒子分散導電体は、三酸化タングステンの酸素量を減少させ、伝導電子を生成させた導電性粒子、または/および、三酸化タングステンへ陽イオンを添加することで伝導電子を生成させた複合タングステン酸化物を含んでなる導電性粒子を含んでいるので、可視光領域での光の透過性に優れ、且つ導電性に優れる。
第8の発明に係る導電性微粒子は、可視光領域での光の透過性に優れ、且つ導電性に優れるので、第1乃至第10の発明に係る可視光透過型粒子分散導電体へ好適に用いることができる。
第9の発明に係る可視光透過型粒子分散導電物品は、可視光領域での光の透過性に優れ、且つ導電性に優れる。
第10乃至第14の発明に係る導電性微粒子の製造方法によれば、導電性粒子の原料となるタングステン化合物を還元性ガスまたは/及び不活性ガス雰囲気中で熱処理することで導電性粒子が得られるので、当該導電性粒子を簡便な方法で安価に製造することができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面に基づき説明する。
本発明に係る可視光透過型粒子分散導電体は、一般式W(但し、Wはタングステン、Oは酸素、2.2≦z/y≦2.999)で表記されるタングステン酸化物、または/及び、一般式M(但し、M元素は、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iのうちから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1.1、2.2≦z/y≦3.0)で表記される複合タングステン酸化物を含んでなり、粒子径は1nm以上であり、可視光透過性を有し、かつ、該粒子を9.8MPa圧力下で測定した圧粉抵抗値が1.0Ω・cm以下である導電性粒子が、複数集合することで互いに接触し導電体を形成したものである。
また、上記導電性粒子は、針状結晶を含む、または、全てが針状結晶であるとき、当該針状結晶における長軸と短軸との比(長軸/短軸)が5以上であり、長軸の長さは5nm以上、10000μmである。また、上記導電性粒子が、板状結晶を含む、または、全てが板状結晶であるとき、当該板状結晶の厚さは1nm以上、100μ以下であり、当該板状結晶における板状面の対角長の最大値が5nm以上、500μm以下であり、且つ、当該対角長の最大値と当該板状結晶の厚さとの比(対角長の最大値/厚さ)が5以上であるものである。
以下、可視光透過型粒子分散導電体およびそれに用いられる導電性粒子について詳細に説明する。
1.導電性粒子
一般に、三酸化タングステン(WO)は可視光透過性に優れるが、有効な伝導電子(自由電子)が存在しないため、導電性材料としては有効ではない。ここで、WOのタングステンに対する酸素の比率を3より低減することによって、WO中に自由電子が生成されることが知られているが、本発明者は、該タングステンと酸素との組成範囲の特定部分において、導電性材料として特異的に有効な範囲があることを見出した。
上記タングステン酸化物において、該タングステンと酸素との組成範囲は、タングステンに対する酸素の組成比が3未満であり、更には、当該導電性粒子をWと記載したとき、2.2≦z/y≦2.999であることが好ましい。このz/yの値が、2.2以上であれば、当該導電性材料中に目的以外であるWO2の結晶相が現れるのを回避することが出来るとともに、材料としての化学的安定性を得ることが出来るので有効な導電性材料として適用できる。一方、このz/yの値が、2.999以下であれば必要とされる量の自由電子が生成され導電材料となる。
また上記複合タングステン酸化物において、当該三酸化タングステン(WO)へ、元素M(但し、M元素は、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iのうちのうちから選択される1種類以上の元素)を添加することで、当該WO中に伝導電子(自由電子)が生成され、導電材料として有効となる。
即ち、この導電材料は、一般式M(但し、M元素は、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iのうちから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1.1、2.2≦z/y≦3.0)で表記される複合タングステン酸化物であることが必要である。更に、安定性の観点からは、M元素は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iのうちのうちから選択される1種類以上の元素であることがより好ましい。
更に、光学特性、耐候性を向上させる観点からは、前記M元素は、アルカリ土類金属元素、遷移金属元素、4B族元素、5B族元素に属するものが、更に好ましい。
酸素量、及びM元素の添加量については、M(但し、M元素は、前記M元素、Wはタングステン、Oは酸素)と記載したとき、0.001≦x/y≦1.1、2.2≦z/y≦3.0の関係を満たす材料が望ましい。M元素の添加量が多いほど、伝導電子の供給量が増加する傾向がある。そして、z/y=3のとき当該添加元素Mの最適添加量となる。これは、上述のようにMが、いわゆるタングステンブロンズの結晶構造をとることによる。例えば、タングステン1モルに対してM元素の添加量は、化学量論的には、六方晶タングステンブロンズの結晶構造の場合に0.33モル程度迄が好ましく、正方晶タングステンブロンズの結晶構造の場合に0.5モル程度迄が好ましく、立法晶タングステンブロンズの結晶構造の場合に1モル程度迄が好ましい。但し、上記の結晶構造が種々の形態をとり得るので、添加元素Mの添加量は、必ずしも上述の添加量に限定される訳ではない。
次に、Mで表記される複合タングステン酸化物において、酸素量の制御を示すz/yの値について説明する。このz/yの値は、前述のタングステン酸化物Wと同様の範囲(2.2≦z/y≦2.999)で伝導電子(自由電子)が発現されることに加え、z/y=3.0においても、上述したM元素の添加量による伝導電子の供給があるため、2.2≦z/y≦3.0が好ましく、更に好ましくは2.72≦z/y≦3.0である。
また、本実施形態の導電性粒子は1nm以上の粒子の大きさであることが好ましい。この導電性粒子は、波長1000nm付近で光を大きく吸収するため、その透過色調は青色系から緑色系となる物が多い。また、当該粒子の粒子の大きさは、その使用目的によって各々選定することができる。まず、透明性を保持した応用に使用する場合には、800nm以下の粒子径を有していることが好ましい。これは、粒子径が800nmよりも小さい粒子は、散乱により光を完全に遮蔽することが無く、可視光領域の視認性を保持し、同時に効率良く透明性を保持することができるからである。特に、可視光領域の透明性を重視する場合には、更に粒子による散乱を考慮することが好ましい。
この粒子による散乱の低減を重視するとき、粒子径は200nm以下、好ましくは100nm以下が良い。その理由は、粒子の粒子径が小さければ、幾何学散乱もしくはミー散乱による、波長380nm〜780nmの可視光領域の光の散乱が低減されるので、膜が曇りガラスのようになって鮮明な透明性が得られなくなるのを回避できるからである。即ち、粒子径が200nm以下になると、上記幾何学散乱もしくはミー散乱が低減し、レイリー散乱領域になる。このレイリー散乱領域では、散乱光が粒子径の6乗に反比例して低減するため、粒子径の減少に伴い散乱が低減し透明性が向上するからである。更に粒子径が100nm以下になると、散乱光は非常に少なくなり好ましい。光の散乱を回避する観点からは、粒子径が小さい方が好ましい。また、粒子径が1nm以上あれば工業的な製造や取り扱いが容易である。
また、当該導電性粒子の導電性を向上させる観点からは、本発明に用いられる導電性粒子の形状は針状または板状であることが好ましい。これは、導電体の導電性を低下させる原因が粒子同士の接触抵抗値にあることから、導電性粒子の形状が針状や板状の粒子分散体であれば粒子同士の接触点数を削減することができ、より高い導電性を有する導電体を得やすくなることによる。
従って、本発明に用いられる導電性粒子は、針状結晶を含む、または、全てが板状結晶のとき、当該板状結晶粒子の厚さが1nm以上、100μm以下であり、板状面における対角線の長さの最大値が5nm以上、500μm以下であり、板状面における対角線の最大値と当該板状結晶の厚さとの比が5以上であるものである。
以上のようにして得られた、本発明に用いられる導電性粒子を9.8MPa圧力下で測定した圧粉抵抗値は、1.0Ω・cm以下であった。当該圧粉抵抗値が1.0Ω・cm以下であれば有効な導電体膜が得られ、応用範囲が拡大されるので好ましい。
また、本実施形態の導電性粒子を構成するタングステン酸化物粒子は、一般式W(但し、Wはタングステン、Oは酸素、2.45≦z/y≦2.999)で表記される組成比のマグネリ相を含むことが好ましい。「マグネリ相」は化学的に安定であり、導電性材料として好ましいからである。
ここで、本発明に係る透明導電膜の導電機構について、図面を参照しながら簡単に説明する。ここで図1(A)〜(D)は、タングステン酸化物、複合タングステン酸化物の結晶構造を示す概略図であり、(A)は、W1849の結晶構造((010)投影)、(B)は、立方晶タングステンブロンズの結晶構造((010)投影)、(C)は、正方晶タングステンブロンズの結晶構造((001)投影)、(D)は、六方晶タングステンブロンズの結晶構造((001)投影)である。
三酸化タングステンの構造は、WOで構成される8面体構造を1単位として考えることができる。この8面体構造の中にW原子が位置し、8面体構造の各頂点に酸素が位置し、すべての8面体構造で、各頂点を、隣接する8面体構造と共有する構造である。このとき、この構造中に伝導電子は存在しない。一方、WO2.9等の組成比で表されるマグネリ相は、WOの8面体構造が規則的に稜共有と頂点共有した構造となる。また、図1(A)に示したような構造のW1849(WO2.72)は、WO10を1単位とした10面体構造とWOの8面体構造とが、稜共有や頂点共有した規則的な構造である。このような構造のタングステン酸化物は、酸素から放出された電子が伝導電子として寄与し、導電性が発現すると考えられている。
三酸化タングステンの上記構造は、全体が均一でも、不均一でも、またアモルファスでも伝導電子が生成し、導電特性が得られる。
さらに、Mで表記される複合タングステン酸化物が、アモルファス構造、または、立方晶もしくは正方晶もしくは六方晶のタングステンブロンズ構造を含むことが好ましい。
この複合タングステン酸化物では、図1(B)〜(D)に示すように、8面体構造が頂点を共有して出来た空隙にM元素が位置する。これらM元素の添加により伝導電子が生じると考えられる。複合タングステン酸化物の構造は、立方晶、正方晶、六方晶が代表的であり、それぞれの構造例を図1の(B)、(C)、(D)に示す。これらの複合タングステン酸化物には、構造に由来した添加元素量の上限があり、1モルのWに対する添加M元素の最大添加量は、立方晶の場合が1モルであり、正方晶の場合が0.5モル程度(添加元素により変化するが、工業的に作製が容易なのは0.5モル程度である)であり、六方晶の場合が0.33モルである。ただし、これらの構造は単純に規定することが困難であり、上記添加元素Mの最大添加量の範囲は、特に基本的な好ましい範囲を示した例であり、この発明がこれに限定されるわけではない。また、結晶構造においても材料の複合化により多種の構造を採り得るものであり、上述した構造も代表例であり、これに限定されるものではない。
複合タングステン酸化物においては、上記構造によって光学特性が変化する。特に、伝導電子由来の近赤外線領域の光吸収領域は、六方晶が最も長波長側になる傾向があり、また可視光領域の吸収も少ない。次は正方晶であり、立方晶は伝導電子由来の光吸収がより短波長側になる傾向があり、可視光領域の吸収も多くなる。よって、より可視光を透過する透明導電膜には上述の理由から、六方晶の構造をもつ複合タングステン酸化物が好ましい。
一般的に、複合タングステン酸化物においてイオン半径の大きなM元素を添加したとき六方晶を形成することが知られており、具体的には、Cs、K、Rb、Tl、Ba、In、Li、Ca、Sr、Fe、Snの各元素を添加したとき、六方晶を形成しやすく好ましい。但し、これらの元素以外でもWO単位で形成される、例えば図1(D)に示すような六角形の空隙に添加元素Mが存在すれば良く、上記元素に限定される訳ではない。また、これらの六方晶の構造をもつ複合タングステン酸化物は均一な結晶構造でも良く、不規則でも構わない。
ここで、当該三酸化タングステン(WO)に対し、上述した酸素量の制御と、伝導電子を生成するM元素の添加とを併用しても良い。また、上記透明導電膜を近赤外線遮蔽膜として利用する場合は、適時目的に合った材料、例えばM元素を選定すればよい。
六方晶構造を有する複合タングステン酸化物の導電性粒子が均一な結晶構造を形成したとき、添加元素Mの添加量は、0.1以上0.4以下が好ましく、更に好ましくは0.33が好ましい。これは結晶構造から理論的に算出される値が0.33であり、この前後の添加量で好ましい導電特性が得られるからである。
複合タングステン酸化物(いわゆるタングステンブロンズ)の導電性粒子の結晶構造は、立方晶や正方晶も知られている(図1(B)、(C))。これらの粒子も、添加元素Mを添加しないタングステン酸化物と比較すると、可視光領域の透過領域が広く、より可視光領域を透過させる目的では有用である。例えば、Na等を添加すると、立方晶の結晶構造を形成し、BaやK等を添加すると正方晶の結晶構造が得られやすい。
本実施形態の導電性粒子の形状は、粒状、針状、もしくは、板状のいずれか1種以上である。この導電性粒子を構成するタングステン酸化物粒子、複合タングステン酸化物粒子は、針状に生成しやすく(例えば、後述する実施例1に係るW1849(WO2.72)の針状結晶のSEM観察像を示す図4(A)(B)を参照。)、分散体としたときにより良好な導電特性を得やすい。また、上記六方晶タングステンブロンズは、板状の形状を形成させることが可能であり(例えば、後述する実施例4に係る六方晶タングステンブロンズCs0.35WOの板状結晶のSEM観察像を示す図6(A)(B)を参照。)、導電体としたとき良好な導電性を得るのに有効である。
さらに本発明に係る導電性粒子は、ITO粒子や貴金属粒子を用いる場合と比較して、Inや貴金属といった高コストな原料を使用しないため、以下に述べる可視光透過型粒子分散導電体を安価に得ることができる。
2.導電性粒子の製造方法
上記一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、2.2≦z/y≦2.999)で表記されるタングステン酸化物を含んでなる導電性粒子、および/または、M(但し、M元素は、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iのうちから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1.1、2.2≦z/y≦3.0)で表記される複合タングステン酸化物を含んでなる導電性粒子は、当該導電性粒子の原料となるタングステン化合物(以下、タングステン化合物出発原料と称する)を不活性ガスまたは/及び還元性ガス雰囲気中で熱処理して得る。これにより、当該導電性粒子を簡便な方法で安価に得ることができる。
上記導電性粒子のタングステン化合物出発原料には、3酸化タングステン、もしくは2酸化タングステン、もしくはタングステン酸化物の水和物、もしくは6塩化タングステン、もしくはタングステン酸アンモニウム、もしくはタングステン酸、もしくは6塩化タングステンをアルコール中に溶解させたのち乾燥して得られるタングステン酸化物の水和物、もしくは6塩化タングステンをアルコール中に溶解させたのち水を添加して沈殿させこれを乾燥して得られるタングステン酸化物の水和物、もしくはタングステン酸アンモニウム水溶液を乾燥して得られるタングステン化合物、もしくは金属タングステンから選ばれたいずれか一種類以上であることが好ましい。
タングステン酸化物の導電性粒子を製造する場合には、製造工程の容易さの観点から、3酸化タングステン、タングステン酸化物の水和物粉末、タングステン酸、もしくはタングステン酸アンモニウム水溶液を用いることが更に好ましい。複合タングステン酸化物の導電性粒子を製造する場合には、タングステン化合物出発原料が溶液であると各元素を容易に均一混合できる観点から、タングステン酸アンモニウム水溶液や、6塩化タングステン溶液、また液状でない場合には、タングステン酸等を用いることが好ましい。
これらのタングステン化合物出発原料を用い、還元性ガス雰囲気中にて100℃以上850℃以下で熱処理し、次いで必要に応じて、不活性ガス雰囲気中にて550℃以上1200℃以下の温度で熱処理することで、上述した粒子径(1nm以上10000μm以下の粒子径)のタングステン酸化物粒子、複合タングステン酸化物粒子を得ることができる。
タングステン酸化物粒子製造のための熱処理条件は、以下のようである。
還元性雰囲気中の熱処理条件としては、まず、タングステン化合物出発原料を還元性ガス雰囲気中にて100℃以上850℃以下で熱処理することが好ましい。100℃以上であれば還元反応が十分に進行し好ましい。また、850℃以下であれば還元が進行し過ぎることがなく好ましい。還元性ガスは、特に限定されないがH2が好ましい。また還元性ガスとしてH2を用いる場合には、還元雰囲気の組成としてのH2は、体積比で0.1%以上あることが好ましく、更に好ましくは体積比で2%以上が良い。H2が体積比で0.1%以上であれば、効率よく還元を進めることができる。
次いで、必要に応じて、結晶性の向上や、吸着した還元性ガスの除去のために、ここで得られた粒子を更に不活性ガス雰囲気中で550℃以上1200℃以下の温度で熱処理することが良い。不活性ガス雰囲気中における熱処理条件としては550℃以上が好ましい。550℃以上で熱処理されたタングステン化合物出発原料は十分な導電性を示す。また、不活性ガスとしてはAr、N等の不活性ガスを用いることが良い。
以上の処理により、一般式Wで表記され、2.45≦z/y≦2.999であり、マグネリ相を含むタングステン酸化物を得ることができる。
複合タングステン酸化物粒子製造のための熱処理条件は、以下のようである。
上記タングステン化合物出発原料と、M元素(但し、M元素は、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iのうちから選択される1種類以上の元素)を含有する単体または化合物とを混合した粉末、または、上記タングステン化合物出発原料の溶液または分散液と上記M元素を含有する化合物の溶液または分散液とを混合したのち乾燥して得られた粉末を製造する。このときタングステン化合物出発原料と、M元素との混合割合は、複合タングステン酸化物をMと表記したとき、当該複合タングステン酸化物中のM元素とタングステンとの組成比が、0.001≦x/y≦1を満たす所定の値とする。
ここで、各成分が分子レベルで均一混合したタングステン化合物出発原料を製造するためにはその原料を溶液で混合することが好ましく、M元素を含むタングステン化合物出発原料が、水や有機溶媒等の溶媒に溶解可能なものであることが好ましい。例えば、M元素を含有するタングステン酸塩、塩化物、硝酸塩、硫酸塩、シュウ酸塩、酸化物、炭酸塩、水酸化物等が挙げられるが、これらに限定されず、溶液状になるものであれば好ましい。また、工業的観点からは、溶液状態から溶媒を蒸発させる工程が複雑であるため、固体で混合して反応させることも可能である。このとき、原料化合物から有毒なガス等が発生するのは工業的に好ましくないため、用いる原料は、タングステン酸とM元素の炭酸塩や水酸化物が好ましい。
熱処理条件は、上述したタングステン酸化物粒子製造のための熱処理条件と同様である。結晶性の良好な複合タングステン酸化物の作製には、以下の熱処理条件が提案できる。但し、出発原料や、目的とする化合物の種類により熱処理条件は異なるので、下記の方法に限定されない。
結晶性の良好な複合タングステン酸化物を製造する場合には、熱処理条件が高い方が好ましく、還元温度は、出発原料や還元時のH温度によって異なるが、600℃〜850℃が好ましい。さらに、その後の不活性雰囲気での熱処理温度は、700℃〜1200℃が好ましい。
3.可視光透過型粒子分散導電体
本実施形態の導電性粒子は、上述のように導電性粒子の組成、粒径、形状を制御することで可視光透過性を得ることができ、該導電性粒子が複数集合し接触して導電体を形成することで、ITO粒子や貴金属粒子を用いる場合に比べて可視光透過型粒子分散導電体を安価に形成できる。
この導電性粒子の適用方法として、当該導電粒子を以下に記すような分散方法によって適宜な媒体中に分散し、所望の基材に導電体を形成する方法がある。この方法は、あらかじめ高温で焼成した導電性粒子を基材中に分散させ、もしくはバインダーによって基材表面に結着させることで、樹脂材料等のように耐熱温度の低い基材への応用が可能であり、導電体の形成の際に真空成膜法等の大掛かりな装置を必要とせず安価である。
本実施形態の可視光透過型粒子分散導電体は膜状に形成でき、また、予め高温で焼成した導電性粒子をバインダーによって基材表面に結着させて形成できる。このバインダーとしては特に制限はないが、透明樹脂もしくは透明誘電体であることが好ましい。
(a)導電性粒子を媒体中に分散し、基材表面に形成する方法
例えば、本実施形態に係る導電性粒子を適宜な溶媒中に分散させ、これに必要に応じて媒体樹脂を添加したのち基材表面にコーティングし、溶媒を蒸発させて所定の方法で樹脂を硬化させれば、当該導電性粒子が媒体中に分散した可視光透過型粒子分散導電体膜の形成が可能となる。コーティングの方法は、基材表面に導電性粒子を含有した樹脂が均一にコートできればよく、特に限定されないが、例えばバーコート法、グラビヤコート法、スプレーコート法、ディップコート法等が挙げられる。
上記媒体は、例えば、UV硬化樹脂、熱硬化樹脂、電子線硬化樹脂、常温硬化樹脂、熱可塑樹脂等が目的に応じて選定可能である。具体的には、ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ふっ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂が挙げられる。また、上記媒体として、金属アルコキシドを用いたバインダーの利用も可能である。上記金属アルコキシドとしては、Si、Ti、Al、Zr等のアルコキシドが代表的である。これら金属アルコキシドを用いたバインダーは、加水分解後に、加熱することで酸化物膜を形成することが可能である。
また、本実施形態に係る導電性粒子を適宜な溶媒中に分散させ、基材表面にコーティングし溶媒を蒸発させることで、当該導電性粒子が基材表面に分散した可視光透過型粒子分散導電体膜の形成が可能となる。ただし、上記導電体膜だけでは当該膜の強度が弱いため、この導電体膜の上から樹脂等を含有した溶液を塗布し、溶媒を蒸発させるとともに保護膜を形成することが好ましい。コーティングの方法は、基材表面に導電性粒子を含有した樹脂が均一にコートできればよく、特に限定されないが、例えばバーコート法、グラビヤコート法、スプレーコート法、ディップコート法等が挙げられる。
上記導電性粒子を分散させる方法は特に限定されないが、例えば超音波照射、ビーズミル、サンドミル等を使用することができる。また、均一な分散体を得るために各種添加剤を添加したり、pHを調整しても良い。
上記基材としては、所望によりフィルム状でもボード状でも良く、形状は限定されない。透明基材としてはPET、アクリル、ウレタン、ポリカーボネート、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル、ふっ素樹脂等が各種目的に応じて使用可能である。また、樹脂以外ではガラスを用いることができる。
(b)基材中に粒子として分散する方法
また、本実施形態に係る導電性粒子を応用する別の方法として、当該導電性粒子を基材中に分散させても良い。この導電性粒子を基材中に分散させるには、当該導電性粒子を基材表面から浸透させても良く、また、当該導電性粒子を、基材の溶融温度以上にその温度を上げて溶融させたのち樹脂と混合しても良い。このようにして得られた導電性粒子を含有した樹脂は、所定の方法でフィルム形状やボード形状に成形し、導電性材料として応用可能である。
例えば、PET樹脂に導電性粒子を分散する方法として、まずPET樹脂と導電性粒子の分散液を混合し、分散溶媒を蒸発させてから、PET樹脂の溶融温度である300℃程度に加熱し、PET樹脂を溶融させ混合し冷却することで、導電性粒子を分散したPET樹脂の作製が可能となる。
4.粒子の形状
タングステン酸化物の導電性粒子や、複合タングステン酸化物の導電性粒子は適宜な熱処理により、図4に示すような、針状結晶を形成することが可能である。針状結晶は微細な粒状粒子と比較すると、可視光透過型粒子分散導電体膜の導電性を向上させる効果がある。その理由は、可視光透過型粒子分散導電体膜は、粒子同士の接触抵抗値が原因で膜の抵抗値がバルクと比較して悪化するが、針状結晶を用いると、この針状結晶の一つ一つが導電パスとなるため、微細な粒状粒子の連結と比べて接触抵抗値が少なく、効率よく電子の輸送が行われので、導電性が向上するからである。
複合タングステン酸化物の導電性粒子である、六方晶タングステンブロンズの導電性粒子は、図6に示す板状の結晶を形成することが可能である。特に、添加元素Mの添加量が0.33より多いときに板状結晶を形成しやすい。得られる板状結晶は、分散したときの微細粒子と比較すると、単位面積あたりの接触抵抗値を低減させることが可能なため、導電性を向上させやすい。
ただし、上記針状結晶5や板状結晶は、ある程度の大きさを有するため、光を散乱させ易く、透明性を低下させる可能性がある。当該透明性を向上させる場合は、上記針状結晶や板状結晶を微細な形状に粉砕する必要があり、目的に応じて粒子形状を変更することが好ましい。尚、粉砕方法は、通常の粉砕方法で良い。
5.可視光透過型粒子分散導電体の光学特性
本実施形態に係る可視光透過型粒子分散導電体の光学特性は、分光光度計(日立製作所製 U−4000)を用いて測定し、可視光透過率(JIS R3106に基づく)を算出した。
透過率の測定結果例として、W1849の導電性粒子から形成された可視光透過型粒子分散導電体の透過プロイファイルを図2に示す。図2は横軸に透過する光の波長をとり、縦軸に光の透過率(%)をとったグラフである。この図2より明らかなように、このW1849の導電性粒子から形成された可視光透過型粒子分散導電体膜は、可視光である波長380nm〜780nmの光を透過させていることが判明した(例えば、波長500nmの可視光の透過率は60%である)。
また、六方晶の複合タングステン酸化物の導電性粒子から形成された可視光透過型粒子分散導電体の透過プロファイルの例として、Cs0.33WOの透過プロファイルを図3に示す。この図3は横軸に透過する光の波長をとり、縦軸に光の透過率(%)をとったグラフである。図3より明らかなように、このCs0.33WOを有する可視光透過型粒子分散導電体膜は、可視光である波長380nm〜780nmの光を透過させており、可視光領域の透過性に優れていることが判明した。
さらに当該可視光透過型粒子分散導電体は、スパッタリング法、蒸着法、イオンプレーティング法及び化学気相法(CVD法)などのような真空成膜法等の大掛かりな成膜装置を必要とせず、塗布法等で可視光透過型粒子分散導電体を形成できるため安価であり、工業的に有用である。
実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
尚、本実施例において、可視光透過型粒子分散導電体の光学特性は、分光光度計(日立製作所製 U−4000)を用いて測定し、可視光透過率(JIS R3106に基づく)を算出した。また、ヘイズ値は、JIS K 7105に基づき、村上色彩技術研究所製の測定装置HR−200を用いて、測定を行った。更に、平均分散粒子径は、動的光散乱法を用いた測定装置(ELS−800(大塚電子株式会社製))により測定し、3回の測定の平均値を平均分散粒子径とした。また、導電特性の評価は、作製した膜の表面抵抗値を測定した。この膜の表面抵抗値は、三菱油化製のハイレスタIP MCP−HT260を用いて測定した。
更に、圧粉抵抗値の測定は、van der Pauw法(第4版、実験化学講座9電気・磁気 平成3年6月5日発行、編者:社団法人 日本化学会、発行所:丸善株式会社を参照)に拠っている。試料は10mmφの円盤状に圧粉した加圧ペレットとし、当該円盤面に90°間隔で4端子の電極を設置し、9.8MPaの加圧をしながら、隣り合う2端子間に電流を流したときの、残りの2端子間の電圧を測定し、抵抗値を算出している。
(実施例1)
六塩化タングステンをエタノールに溶解し、130℃で乾燥して、タングステン酸化物の水和物を作製した。これを還元雰囲気(アルゴン/水素=95/5体積比)中において550℃で1時間加熱し、一度室温に戻した後800℃アルゴン雰囲気中で1時間加熱し、目的とするタングステン酸化物粉末を作製した。
X線回折による結晶相の同定の結果、得られた粉末はW1849(WO2.72)のいわゆるマグネリ相であった。この粉末の形状をSEMにより観察した結果を図4(A)(B)に示す。ここで、(A)は、はW1849の1万倍のSEM像であり、(B)は、3千倍のSEM像である。
すると、図4(A)(B)に示すように針状の結晶が観察された。また、この粉末を9.8MPa圧力下で測定した圧粉抵抗値は0.085Ω・cmであり、良好な導電性が確認された。
このWO2.72の導電性粒子の粉末を20重量部、トルエン79重量部、分散剤1重量部を混合し、針状結晶の形状を保ったまま分散させるために超音波を照射して分散処理を行い、分散液を作製した。この分散液10重量部とハードコート用紫外線硬化樹脂(固形分100%)0.1重量部とを混合した。この液を、ガラス上にバーコーターを用いて塗布し成膜した。この成膜を60℃で30秒乾燥し溶剤を蒸発させた後、高圧水銀ランプで硬化させて可視光透過型粒子分散導電体膜(以下単に導電体膜と称する)を得た。
この導電体膜の光学特性を測定したところ、次のとおりであった。可視光透過率は63%で可視光領域の光を十分透過している事が分かった。更にヘイズ値は3.5%であり透明性が高く、透過色調は美しい青色であり、また表面抵抗値は7.6×10Ω/□であった。
(実施例2)
メタタングステン酸アンモニウム水溶液を130℃で乾燥し、粉末状のタングステン酸化物の化合物を得た。これを、還元雰囲気(アルゴン/水素=97/3体積比)中において550℃で1時間加熱した。そして、一度室温に戻した後800℃アルゴン雰囲気中で1時間加熱することで、タングステン酸化物粉末を作製した。X線回折による結晶相の同定の結果、W1849(WO2.72)の結晶相が観察された。このように、メタタングステン酸水溶液をタングステン化合物出発原料に用いても実施例1と同等の導電性粒子を作製できた。この導電性粒子の粉末を9.8MPa圧力下で測定した圧粉抵抗値は0.089Ω・cmであり、良好な導電性が確認された。
(実施例3)
炭酸Csとタングステン酸をCs/Wのモル比が0.33となるように乳鉢で混合した。これを還元雰囲気(アルゴン/水素=97/3体積比)中において600℃で2時間加熱した。そして、一度室温に戻した後800℃アルゴン雰囲気中で1時間加熱することで、Cs0.33WOの導電性粒子の粉末を作製した。このCs0.33WOは、X線回折による結晶相の同定の結果、六方晶タングステンブロンズであった。得られた導電性粒子の粉末の形状をSEMにより観察した結果を図5に示す。ここで、図5はCs0.33WOの1万倍のSEM像である。
すると、図5に示すように、六角柱の結晶が観察された。この導電性粒子の粉末を9.8MPa圧力下で測定した圧粉抵抗値は0.013Ω・cmであり、良好な導電性が確認された。
このCs0.33WOの導電性粒子の粉末を20重量部、トルエン79重量部、分散剤1重量部を混合し、媒体攪拌ミルを用いて分散処理を行い、平均分散粒子100nmの分散液を作製した。この分散液10重量部とハードコート用紫外線硬化樹脂(固形分100%)0.1重量部とを混合した。この液を、ガラス上にバーコーターを用いて塗布し成膜した。この膜を60℃で30秒乾燥し溶剤を蒸発させた後、高圧水銀ランプで硬化させて導電体膜を得た。
この導電体膜の光学特性を測定したところ、次のとおりであった。可視光透過率は77%で可視光領域の光を十分透過している事が分かった。更にヘイズ値は0.2%であり、透明性が高く内部の状況が外部からもはっきり確認できた。透過色調は美しい青色であり、表面抵抗値は2.8×10Ω/□であった。
(実施例4)
炭酸Csとタングステン酸をCs/Wの比が0.35となるように乳鉢で混合した。これを還元雰囲気(アルゴン/水素=97/3体積比)中において600℃で2時間加熱した。そして、一度室温に戻した後800℃アルゴン雰囲気中で1時間加熱することで、Cs0.35WOの導電性粒子の粉末を作製した。このCs0.35WOは、X線回折による結晶相の同定の結果、六方晶の結晶相が観察された。得られた粉末のSEM観察した結果を図6(A)(B)に示す。ここで、(A)は、はCs0.35WO5千倍のSEM像であり、(B)は、1万倍のSEM像である。
すると、図6に示すように板状の結晶が観察された。このように、Cs添加量を0.33より増加させることで、板状の結晶が生成することが分かった。この粉末を9.8MPa圧力下で測定した圧粉抵抗値は0.0096Ω・cmであり、良好な導電性が確認された。
(実施例5)
炭酸Csとタングステン酸をCs/Wの比が0.33となるように乳鉢で混合した。これを還元雰囲気(アルゴン/水素=97/3体積比)中において600℃で2時間加熱し、Cs0.33WOの導電性粒子の粉末を作製した。このCs0.33WOは、X線回折による結晶相の同定の結果、六方晶の結晶相が観察された。得られた粉末のSEM観察では、六角柱の微細結晶が観察された。この粉末を9.8MPa圧力下で測定した圧粉抵抗値は0.013Ω・cmであり、良好な導電性が確認された。
このCs0.33WOの導電性粒子の粉末を20重量部、トルエン79重量部、分散剤1重量部を混合し、媒体攪拌ミルを用いて分散処理を行い、平均分散粒子120nmの分散液を作製した。この分散液10重量部とハードコート用紫外線硬化樹脂(固形分100%)0.1重量部とを混合した。この液を、ガラス上にバーコーターを用いて塗布し成膜した。この膜を60℃で30秒乾燥し溶剤を蒸発させた後、高圧水銀ランプで硬化させ導電体膜を得た。
この導電体膜の光学特性を測定したところ、次のとおりであった。可視光透過率は63%で可視光領域の光を十分透過している事が分かった、更にヘイズ値は0.8%であり、透明性が高く内部の状況が外部からもはっきり確認できた。透過色調は美しい青色であり、表面抵抗値は3.6×10Ω/□であった。
(実施例6)
炭酸Rbとタングステン酸をRb/Wの比が0.33となるように乳鉢で混合した。これを還元雰囲気(アルゴン/水素=97/3体積比)中において600℃で2時間加熱した。そして、一度室温に戻した後800℃アルゴン雰囲気中で1時間加熱することで、Rb0.33WOの導電性粒子の粉末を作製した。このRb0.33WOは、X線回折による結晶相の同定の結果、六方晶の結晶相が観察された。得られた導電性粒子の粉末のSEM観察では、六角柱の微細結晶が観察された。この導電性粒子の粉末を9.8MPa圧力下で測定した圧粉抵抗値は、0.0086Ω・cmであり、良好な導電性が確認された。
このRb0.33WOの導電性粒子の粉末を20重量部、トルエン79重量部、分散剤1重量部を混合し、媒体攪拌ミルを用いて分散処理を行い、平均分散粒子80nmの分散液を作製した。この分散液10重量部とハードコート用紫外線硬化樹脂(固形分100%)0.1重量部とを混合した。この液を、ガラス上にバーコーターを用いて塗布し成膜した。この膜を60℃で30秒乾燥し溶剤を蒸発させた後、高圧水銀ランプで硬化させ導電体膜を得た。
この導電体膜の光学特性を測定したところ、次のとおりであった。可視光透過率は76%で可視光領域の光を十分透過している事が分かった。更にヘイズ値は0.2%であり、透明性が高く内部の状況が外部からもはっきり確認できた。透過色調は美しい青色であり、表面抵抗値は4.2×10Ω/□であった。
(実施例7)
炭酸Rbとタングステン酸をRb/Wの比が0.33となるように乳鉢で混合した。これを還元雰囲気(アルゴン/水素=97/3体積比)中において600℃で2時間加熱した。そして、一度室温に戻した後800℃アルゴン雰囲気中で100時間加熱することで、Rb0.33WOの粉末を作製した。このRb0.33WOは、X線回折による結晶相の同定の結果、六方晶の結晶相が観察された。得られた粉末をSEM観察した結果を図7(A)(B)に示す。ここで、(A)は、はRb0.33WOの200倍のSEM像であり、(B)は、1千倍のSEM像である。
すると、図7(A)(B)に示すように、六角柱の繊維状の結晶が観察された。
この粉末の圧粉抵抗値を測定した結果、0.0046Ω・cmであり。良好な導電性が確認された。
このRb0.33WO粉末を20重量部、トルエン79重量部、分散剤1重量部を混合し、超音波照射により分散処理を行い、繊維状粒子の分散液を作製した。この液10重量部とハードコート用紫外線硬化樹脂(固形分100%)0.1重量部とを混合した。この液を、ガラス上にバーコーターを用いて塗布、成膜した。この膜を60℃で30秒乾燥し溶剤を蒸発させた後、高圧水銀ランプで硬化させ導電膜を得た。
この導電膜の光学特性を測定したところ、可視光透過率は56%で可視光領域の光を十分透過している事が分かった、さらにヘイズは8.2%であり、透明性が高く内部の状況が外部からもはっきり確認できた。透過色調は、美しい青色となった。表面抵抗値は3.1×10Ω/□であった。
(実施例8)
炭酸Kとタングステン酸をK/Wの比が0.33となるように乳鉢で混合した。これを還元雰囲気(アルゴン/水素=97/3体積比)中において600℃で2時間加熱した。そして、一度室温に戻した後800℃アルゴン雰囲気中で1時間加熱することで、K0.33WOの導電性粒子の粉末を作製した。このK0.33WOは、X線回折による結晶相の同定の結果、六方晶の結晶相が観察された。得られた導電性粒子の粉末のSEM観察では、六角柱の微細結晶が観察された。また、この導電性粒子の粉末を9.8MPa圧力下で測定した圧粉抵抗値は、0.049Ω・cmであり、良好な導電性が確認された。
このK0.33WOの導電性粒子の粉末を20重量部、トルエン79重量部、分散剤1重量部を混合し、媒体攪拌ミルを用いて分散処理を行い、平均分散粒子80nmの分散液を作製した。この分散液10重量部とハードコート用紫外線硬化樹脂(固形分100%)0.1重量部とを混合した。この液を、ガラス上にバーコーターを用いて塗布し成膜した。この膜を60℃で30秒乾燥し溶剤を蒸発させた後、高圧水銀ランプで硬化させ導電体膜を得た。
この導電体膜の光学特性を測定したところ、次のとおりであった。可視光透過率は62%で可視光領域の光を十分透過している事が分かった。更にヘイズ値は0.9%であり、透明性が高く内部の状況が外部からもはっきり確認できた。透過色調は美しい青色であり、表面抵抗値は7.3×10Ω/□であった。
(実施例9)
炭酸Baとタングステン酸をBa/Wの比が0.33となるように乳鉢で混合した。これを還元雰囲気(アルゴン/水素=97/3体積比)中において550℃で2時間加熱した。そして、一度室温に戻した後700℃アルゴン雰囲気中で1時間加熱することで、Ba0.33WOの導電性粒子の粉末を作製した。このBa0.33WOは、X線回折による結晶相の同定の結果、六方晶の結晶相が観察された。得られた導電性粒子の粉末のSEM観察では、六角柱の微細結晶が観察された。この導電性粒子の粉末を9.8MPa圧力下で測定した圧粉抵抗値は0.068Ω・cmであり、良好な導電性が確認された。
このBa0.33WOの導電性粒子の粉末を20重量部、トルエン79重量部、分散剤1重量部を混合し、媒体攪拌ミルを用いて分散処理を行い、平均分散粒子95nmの分散液を作製した。この分散液10重量部とハードコート用紫外線硬化樹脂(固形分100%)0.1重量部とを混合した。この液を、ガラス上にバーコーターを用いて塗布し成膜した。この膜を60℃で30秒乾燥し溶剤を蒸発させた後、高圧水銀ランプで硬化させ導電体膜を得た。
この導電体膜の光学特性を測定したところ、次のとおりであった。可視光透過率は55%で可視光領域の光を十分透過している事が分かった。更にヘイズ値は1.3%であり、透明性が高く内部の状況が外部からもはっきり確認できた。透過色調は美しい青色であり、表面抵抗値は3.6×1010Ω/□であった。
(実施例10)
塩化Tlをメタタングステン酸アンモニウム水溶液に溶解した。このときTl/Wの比が0.33となるように混合した。これを還元雰囲気(アルゴン/水素=97/3体積比)中において600℃で2時間加熱した。そして、一度室温に戻した後800℃アルゴン雰囲気中で1時間加熱することで、Tl0.33WOの導電性粒子の粉末を作製した。このTl0.33WOは、X線回折による結晶相の同定の結果、六方晶の結晶相が観察された。得られた導電性粒子の粉末のSEM観察では、六角柱の微細結晶が観察された。この導電性粒子の粉末を9.8MPa圧力下で測定した圧粉抵抗値は0.096Ω・cmであり、良好な導電性が確認された。
このTl0.33WOの導電性粒子の粉末を20重量部、トルエン79重量部、分散剤1重量部を混合し、媒体攪拌ミルを用いて分散処理を行い、平均分散粒子85nmの分散液を作製した。この分散液10重量部とハードコート用紫外線硬化樹脂(固形分100%)0.1重量部とを混合した。この液を、ガラス上にバーコーターを用いて塗布し成膜した。この膜を60℃で30秒乾燥し溶剤を蒸発させた後、高圧水銀ランプで硬化させ導電体膜を得た。
この導電体膜の光学特性を測定したところ、次のとおりであった。可視光透過率は72%で可視光領域の光を十分透過している事が分かった。更にヘイズ値は1.1%であり、透明性が高く内部の状況が外部からもはっきり確認できた。透過色調は美しい青色であり、表面抵抗値は6.2×1011Ω/□であった。
(実施例11)
塩化Inをメタタングステン酸アンモニウム水溶液に溶解した。このときIn/Wの比が0.33となるように混合した。これを還元雰囲気(アルゴン/水素=97/3体積比)中において500℃で1時間加熱した。そして、一度室温に戻した後700℃アルゴン雰囲気中で1時間加熱することで、In0.33WOの導電性粒子の粉末を作製した。このIn0.33WOは、X線回折による結晶相の同定の結果、六方晶の結晶相が観察された。得られた導電性粒子の粉末のSEM観察では、六角柱の微細結晶が観察された。この導電性粒子の粉末を9.8MPa圧力下で測定した圧粉抵抗値は0.032Ω・cmであり、良好な導電性が確認された。
このIn0.33WOの導電性粒子の粉末を20重量部、トルエン79重量部、分散剤1重量部を混合し、媒体攪拌ミルを用いて分散処理を行い、平均分散粒子110nmの分散液を作製した。この分散液10重量部とハードコート用紫外線硬化樹脂(固形分100%)0.1重量部とを混合した。この液を、ガラス上にバーコーターを用いて塗布し成膜した。この膜を60℃で30秒乾燥し溶剤を蒸発させた後、高圧水銀ランプで硬化させ導電体膜を得た。
この導電体膜の光学特性を測定したところ、次のとおりであった。可視光透過率は75%で可視光領域の光を十分透過している事が分かった。更にヘイズ値は1.3%であり、透明性が高く内部の状況が外部からもはっきり確認できた。透過色調は美しい青色であり、表面抵抗値は3.5×10Ω/□であった。
(実施例12)
炭酸Kとタングステン酸をK/Wの比が0.55となるように乳鉢で混合した。これを還元雰囲気(アルゴン/水素=97/3体積比)中において600℃で2時間加熱した。そして、一度室温に戻した後800℃アルゴン雰囲気中で1時間加熱することで、K0.55WOの導電性粒子の粉末を作製した。このK0.55WOは、X線回折による結晶相の同定の結果、正方晶の結晶相が観察された。得られた導電性粒子の粉末のSEM観察では、直方体の微細結晶が観察された。この導電性粒子の粉末を9.8MPa圧力下で測定した圧粉抵抗値は0.12Ω・cmであり、良好な導電性が確認された。
このK0.55WOの導電性粒子の粉末を20重量部、トルエン79重量部、分散剤1重量部を混合し、媒体攪拌ミルを用いて分散処理を行い、平均分散粒子95nmの分散液を作製した。この分散液10重量部とハードコート用紫外線硬化樹脂(固形分100%)0.1重量部とを混合した。この液を、ガラス上にバーコーターを用いて塗布し成膜した。この膜を60℃で30秒乾燥し溶剤を蒸発させた後、高圧水銀ランプで硬化させ導電体膜を得た。
この導電体膜の光学特性を測定したところ、次のとおりであった。可視光透過率は62%で可視光領域の光を十分透過している事が分かった。更にヘイズ値は1.2%であり、透明性が高く内部の状況が外部からもはっきり確認できた。透過色調は美しい青色であり、表面抵抗値は5.7×1011Ω/□であった。
(実施例13)
炭酸Naとタングステン酸をNa/Wの比が0.50となるように乳鉢で混合した。これを還元雰囲気(アルゴン/水素=97/3体積比)中において600℃で2時間加熱した。そして、一度室温に戻した後800℃アルゴン雰囲気中で1時間加熱することで、Na0.50WOの導電性粒子の粉末を作製した。このNa0.50WOは、X線回折による結晶相の同定の結果、正方晶の結晶相が観察された。この導電性粒子の粉末を9.8MPa圧力下で測定した圧粉抵抗値は0.18Ω・cmであり、良好な導電性が確認された。
このNa0.50WOの導電性粒子の粉末を20重量部、トルエン79重量部、分散剤1重量部を混合し、媒体攪拌ミルを用いて分散処理を行い、平均分散粒子50nmの分散液を作製した。この分散液10重量部とハードコート用紫外線硬化樹脂(固形分100%)0.1重量部とを混合した。この液を、ガラス上にバーコーターを用いて塗布し成膜した。この膜を60℃で30秒乾燥し溶剤を蒸発させた後、高圧水銀ランプで硬化させ導電体膜を得た。
この導電体膜の光学特性を測定したところ、次のとおりであった。可視光透過率は52%で可視光領域の光を十分透過している事が分かった。更にヘイズ値は0.6%であり、透明性が高く内部の状況が外部からもはっきり確認できた。透過色調は美しい青色であり、表面抵抗値は4.8×1011Ω/□であった。
(比較例1)
市販の三酸化タングステン粉末を20重量部、トルエン79.5重量部、分散剤1.0重量部を混合し、媒体攪拌ミルを用いて分散処理を行い、平均分散粒子80nmの分散液を作製した。この分散液20重量部とハードコート用紫外線硬化樹脂(固形分100%)0.1重量部とを混合した。この液を、ガラス上にバーコーターを用いて塗布し成膜した。この膜を60℃で30秒乾燥し溶剤を蒸発させた後、高圧水銀ランプで硬化させ薄膜を得た。
この薄膜の光学特性を測定したところ、可視光透過率は89%で可視光領域の光の殆どを透過しているが、表面抵抗値は測定不能で、導電体膜としての応用は困難であった。
以上、本発明を上記実施の形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
尚、実施例1〜13、比較例1測定結果の一覧を表1に示す。
タングステン酸化物の結晶構造を示す概略図であり、W1849の結晶構造((010)投影)である。 タングステン酸化物の結晶構造を示す概略図であり、立方晶タングステンブロンズの結晶構造((010)投影である。 タングステン酸化物の結晶構造を示す概略図であり、正方晶タングステンブロンズの結晶構造((001)投影である。 タングステン酸化物の結晶構造を示す概略図であり、六方晶タングステンブロンズの結晶構造((001)投影)である。 1849の導電性粒子から形成された可視光透過型粒子分散導電体の透過プロイファイルを示すグラフである。 六方晶複合タングステン酸化物Cs0.33WOの導電性粒子から形成された可視光透過型粒子分散導電体の透過プロファイルを示すグラフである。 実施例1で得られた導電性粒子であるマグネリ相W1849(WO2.72)の針状結晶のSEM観察像を示す拡大図である。 図4(A)の全体図である。 実施例3で得られた導電性粒子である六方晶タングステンブロンズCs0.33WOの六角柱状結晶のSEM観察像である。 実施例4で得られた導電性粒子である六方晶タングステンブロンズCs0.35WOの板状結晶のSEM観察像を示す拡大図である。 実施例4で得られた導電性粒子である六方晶タングステンブロンズCs0.35WOの板状結晶のSEM観察像を示す拡大図である。 実施例7で得られた導電性粒子である六方晶タングステンブロンズRb0.35WOの繊維状結晶のSEM観察像を示す拡大図である。 図7(A)の全体図である。

Claims (14)

  1. 一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、z/y=2.72)で表記されるタングステン酸化物マグネリ相、または/及び、一般式MxWyOz(但し、M元素は、Cs、Rb、K、Na、Ba、In、Tlのうちから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.33≦x/y≦0.55、z/y=3)で表記される、結晶構造が六方晶タングステンブロンズ構造を有する複合タングステン酸化物を含んでなり、粒子径は1nm以上であり、可視光透過性を有し、かつ、該粒子を9.8MPa圧力下において測定した圧粉抵抗値が1.0Ω・cm以下である導電性粒子の複数集合物であることを特徴とする可視光透過型粒子分散導電体。
  2. 上記導電性粒子の形状が、粒状、針状もしくは板状のいずれか1種以上であることを特徴とする請求項1に記載の可視光透過型粒子分散導電体。
  3. 上記導電性粒子が、針状結晶を含み、または、全て針状結晶であって、当該針状結晶における長軸と短軸との比(長軸/短軸)が5以上であり、且つ、当該長軸の長さが5nm以上、10000μm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の可視光透過型粒子分散導電体。
  4. 上記導電性粒子が、板状結晶を含み、または、全て板状結晶であって、当該板状結晶の厚さが1nm以上、100μm以下であり、且つ、当該板状結晶における板状面の対角長の最大値が5nm以上、500μm以下であり、且つ、当該対角長の最大値と当該板状結晶の厚さとの比(対角長の最大値/厚さ)が5以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の可視光透過型粒子分散導電体。
  5. 上記可視光透過型粒子分散導電体が膜状であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の可視光透過型粒子分散導電体。
  6. 上記可視光透過型粒子分散導電体がバインダーを含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の可視光透過型粒子分散導電体。
  7. 上記バインダーが、透明樹脂または透明誘電体であることを特徴とする請求項6に記載の可視光透過型粒子分散導電体。
  8. 一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、z/y=2.72)で表記されるタングステン酸化物マグネリ相、または/及び、一般式MxWyOz(但し、M元素は、Cs、Rb、K、Na、Ba、In、Tlのうちから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.33≦x/y≦0.55、z/y=3)で表記される、結晶構造が六方晶タングステンブロンズ構造を有する複合タングステン酸化物を含んでなり、粒子径は1nm以上であり、可視光透過性を有し、かつ、該粒子を9.8MPa圧力下において測定した圧粉抵抗値が1.0Ω・cm以下であることを特徴とする導電性粒子。
  9. 請求項1乃至7のいずれかに記載の可視光透過型粒子分散導電体が基材上に形成されていることを特徴とする可視光透過型導電物品。
  10. 一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、z/y=2.72)で表記されるタングステン酸化物マグネリ相、または/及び、一般式MxWyOz(但し、M元素は、Cs、Rb、K、Na、Ba、In、Tlのうちから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.33≦x/y≦0.55、z/y=3)で表記される、結晶構造が六方晶タングステンブロンズ構造を有する複合タングステン酸化物を含んでなる導電性粒子の製造方法であって、
    当該導電性粒子の原料となるタングステン化合物を、還元性ガスまたは/及び不活性ガス雰囲気中で熱処理して、上記導電性粒子を製造することを特徴とする導電性粒子の製造方法。
  11. 上記熱処理は、導電性粒子の原料となるタングステン化合物を、還元性ガス雰囲気中にて100℃以上850℃以下で熱処理することを特徴とする請求項10に記載の導電性粒子の製造方法。
  12. 上記熱処理は、導電性粒子の原料となるタングステン化合物を、還元性ガス雰囲気中にて100℃以上850℃以下で熱処理し、次いで、不活性ガス雰囲気中にて550℃以上1200℃以下の温度で熱処理することを特徴とする請求項10に記載の導電性粒子の製造方法。
  13. 上記導電性粒子の原料となるタングステン化合物が、3酸化タングステン、2酸化タングステン、タングステン酸化物の水和物、6塩化タングステン、タングステン酸アンモニウム、タングステン酸、6塩化タングステンをアルコール中に溶解させたのち乾燥して得られるタングステン酸化物の水和物、6塩化タングステンをアルコール中に溶解させたのち水を添加して沈殿を生成させ当該沈殿を乾燥して得られるタングステン酸化物の水和物、タングステン酸アンモニウム水溶液を乾燥して得られるタングステン化合物、金属タングステン、から選択されるいずれか1種類以上であることを特徴とする請求項10または12に記載の導電性粒子の製造方法。
  14. 請求項13に記載の導電性粒子の原料となるタングステン化合物と、M元素(但し、M元素は、Cs、Rb、K、Na、Ba、In、Tlのうちから選択される1種類以上の元素)を含有する単体または化合物とを混合した粉末、または、上記タングステン化合物の溶液または分散液と上記M元素を含有する化合物の溶液または分散液とを混合したのち乾燥して得られた粉末、から選ばれる1種以上を、当該導電性粒子の原料となるタングステン化合物として用いることを特徴とする請求項10乃至13のいずれかに記載の導電性粒子の製造方法。
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