JP4788056B2 - ウイルス濃縮材料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、検体中のウイルスの検査、診断に有用である、試料中のウイルスを濃縮するための材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のウイルス検査・診断法としてウイルス抗原あるいは抗ウイルス抗体の免疫学的測定が一般的である。献血血液の検査場合、ウイルス感染から数週間から数ヶ月間は、ウイルス量あるいは抗ウイルス抗体量が少ないため、これらの免疫学的測定法では検出できない場合がある。この検出不可能な期間はウインドウ・ピリオド(空白期間)と呼ばれており、このような患者が献血を行った場合、その献血液は十分な感染性を持つことが多く、不特定多数の輸血患者・血液製剤利用患者に危険をおよぼす可能性がある。したがって、ウインドウ・ピリオドをできる限り短縮するため、免疫学的測定限界下のウイルスを高感度に検出できる技術の開発が急務とされている。
【0003】
近年、ポリメラーゼチェインリアクション法(以下PCR法)に代表される、核酸増幅技術により、極微量のウイルスでも検出できる可能性が開けてきた。しかしながら、PCR法などによっても極微量のウイルス検出は特殊な施設と高度な技術が必要とされ、一般的な施設で簡便に実施することはきわめて困難である。そこで、これらの問題解決のため、検体中のウイルスを濃縮することが行われている。
【0004】
また、年間600万にも及ぶ献血の検体を一つづつ検査するには多大な労力と莫大な費用を要することは容易に理解することができる。この場合、例えば、献血液を少量ずつ50人分集めてスクリーニング検査を行えば、単純計算で約50分の1の労力と費用で済むことになる。ところが、この場合でも一つの検体中に存在する可能性のあるウィルスは薄められているから検出漏れが生じる恐れがある。これを防ぐために試料中のウイルスを濃縮することが望まれる。
【0005】
従来、ウイルス濃縮技術として遠心を利用する方法が知られているが、試料中のウイルスを何らかの材料に吸着し濃縮に利用することは知られていない。例えば、特開平4-342536号公報、特開平6-114250号公報、特開平11-267199号公報などには、ウィルスによる影響をなくすことを目的として、希薄なウィルス濃度の溶液からウィルスを除去したり、溶液中のウイルスを不活化する技術が記載されているに過ぎない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明の課題は、試料中のウイルスを吸着し、適当な液中に高濃度で脱着させて検出を行うことができ、かつ正確な検出結果を得ることができる手段を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは研究の結果、上記課題を解決する手段として、表面にアミン化合物を固定化した材料からなるウイルス濃縮材料を開発するに到った。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のウイルス濃縮材料(以下、単に「本発明の材料」ともいう)の形態は何ら限定されるものではなく、例えば粒子状、多孔質膜状、フィルター状、繊維状、シート状、チューブ状、板状などが挙げられる。その中で、粒子状のものが好ましい。理由として、材料の一定体積に対して表面積を多く取る事ができるためウイルスの吸着が有利に行えること、検査時の操作性に優れる事が挙げられる。
【0009】
本発明の材料が粒子状である場合、該粒子をウイルスを含む試料液に添加するとウイルスが該粒子の表面に存在するアミン化合物により粒子に結合する。その結果、血漿や血清等の検体中のウイルスを高い効率で濃縮するため、通常、カラムクロマト法ではなくバッチ法にて使用される。したがって、粒子の粒径は通常0.08μm〜300μm、好ましくは0.1μm〜100μmである。粒径は均一である必要はないが均一であることとが好ましい。特に、粒径が上記の範囲内であれば粒径が均一でなくてもより好ましい結果が得易い。粒径が小さすぎると、血液または体液からウイルス濃縮用粒子を分離する際の遠心分離の回転数や回転時間の増加を招き、装置が大型になったり、高い時間的効率が得られず好ましくない。また、磁気分離の場合、血液または体液からウイルス濃縮用粒子を分離する際の磁気分離性が劣り、分離操作に長時間を要し、高い時間的効率が得られず好ましくない。また、粒径が大きすぎるとウイルスを捕獲する効率が低下し、ウイルス濃縮が十分に行えないことがあるため好ましくない。また、粒子形状はまったく限定されず、球状などの一定形状でもよいし、不定形の粒子の集まりであってもよい。なお球状でない粒子の粒径は各粒子の最長径と最短径との平均値をとるものとする。
【0010】
また、多孔質膜も好ましく使用する事ができる。その場合、孔径は適用対象によるが、通常、最大孔径が0.1μm〜50μmの範囲にあることが好ましい。膜の形状としては、平膜、中空糸膜、不織布、織布などを例示できる。
【0011】
血漿や培養液などを対象とした場合は、最大孔径が0.1μm〜5μm が好ましく、細胞などが含まれる場合は、最大孔径が、5〜50μmが好ましい。最大孔径が小さすぎると、全体に孔径が小さくなるため十分な濾過量が得られなくなるからである。また、孔径が小さすぎるとサイズによっては捕捉されるウイルスもある。本発明の多孔質膜の透水量は、10 mL/min/m2/mmHg 以上、好ましくは100 mL/min/m2/mmHg 以上であることが、濾過圧を低くできるため好ましい。
【0012】
また、多孔質膜が不織布状である場合、多孔質膜を形成するフィラメントは、モノフィラメントであってもマルチフィラメントであってもよいが、平均直径が100μm以下、好ましくは、50μm以下であると、膜の表面積が大きくなり吸着部位が増加するため好ましい。
多孔質膜の空孔部の割合(空孔率)は、20%以上、好ましくは50%以上であり、実用的には50〜90%の範囲である。
【0013】
本発明の材料の材質は、特に限定されず、セルロ−スやその誘導体などの天然高分子、あるいはポリオレフィン、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリエステル、ポリサルホン、ポリアクリルニトリルなどの高分子材料を例示できるが、好ましくは、寸法安定性に優れ水に対して低膨潤性の材料、たとえばポリプロピレンやポリフッ化ビニリデンなどにより基材膜が構成されており、表面処理により親水性フィルタ−に改質されているものが好ましい。
【0014】
また、本発明のウイルス濃縮材料が、多孔質膜である場合においては、孔を閉塞せず十分な透過性能を維持できるように、水に非膨潤性(膨潤率が20%以下)であり、ガラス転移点が290K以下の柔軟な高分子により表面改質されていることが好ましい。そのような重合体として、メトキシエチルアクリレ−トに代表されるアルコキシアルキルアクリレ−ト類の単量体を主な構成成分とする重合体や共重合体を例示することができる。
【0015】
本発明のウイルス濃縮材料は、水不溶性の材料であれば特に限定されず、そのような材料の表面に存在するアミン化合物から構成されている。
【0016】
本発明において「アミン化合物」とは、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、第4級アンモニウム基、並びにイミノ基(−NH−及び=NH)(これらの基はそれ自体カチオンとして存在するか、それ自体カチオンとして存在しないが中性付近(約pH6〜8)においてプロトンの結合により容易にカチオンを形成するので、以下、「カチオン性基」ともいう。)を含有する化合物、特に好ましくはイミノ基を有する化合物を意味する。上記のカチオン性基の存在形態は多様であって何ら制限されず、例えば化合物中にアミジノ基、イミジノ基、ヒドラジノ基、ピリジル基等の状態で存在してもよい。
【0017】
本発明においてアミン化合物は、医療診断薬用途に使用した場合、水や緩衝液、血液、体液中に溶出するとPCR法などの核酸増幅法を阻害することがあるため、粒子に化学的に結合されている必要がある。その存在量は、粒子1g当り平均で1×10-10mol以上であり、代表的には1×10-10〜1×10-2molであり、好ましくは1×10-9〜1×10-3molであり、より好ましくは1×10-8〜1×10-3molである。アミン化合物の存在量が少な過ぎるとウイルス濃縮能力が不十分である。本発明の作用、効果の観点からは、アミン化合物の存在量の上限は特に限定されないが、製造技術的には1×10-2molを超える量で存在せしめることは通常困難なことが多い。
【0018】
ウイルス濃縮材料は、例えば(1)重合性アミン化合物を(必要に応じて他のコマオノマーとともに)重合する方法、(2)アミン化合物を基材材料に結合させる方法などにより製造することができる。
【0019】
(1)重合性アミン化合物を重合する方法
この方法に使用することのできる重合性アミン化合物としては、例えば2−(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2−(ジエチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2−(ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリレート、3−(ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリレート等のアミノアルキル(メタ)アクリル酸エステル類及びこれらの塩化メチレン、硫酸ジメチル、硫酸ジエチル等による4級塩;
2−(ジメチルアミノエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(ジエチルアミノエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、3−(ジメチルアミノエトキシ)プロピル(メタ)アクリレート等のアミノアルコキシアルキル(メタ)アクリル酸エステル類及びこれらの塩化メチレン、硫酸ジメチル、硫酸ジエチル等による4級塩;
N−(2−ジメチルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N−(2−ジエチルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N−(2−ジメチルアミノプロピル)(メタ)アクリルアミド、N−(3−ジメチルアミノプロピル)(メタ)アクリルアミド等のN−アミノアルキル基含有(メタ)アクリルアミド類及びこれらの塩化メチレン、硫酸ジメチル、硫酸ジエチル等による4級塩等が挙げられる。なかでも、2−(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、N−(2−ジメチルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、及びこれらの塩化メチレンによる4級塩が好ましい。
これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0020】
重合性アミン化合物と共重合するモノマーとしては、下記に示すような架橋性モノマーならびに非架橋性かつ非イオン性モノマーを挙げることができる。
【0021】
架橋性モノマーとしては、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2,2'−ビス〔4−(メタ)アクリロイルオキシプロピオキシフェニル〕プロパン、2,2'−ビス〔4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキジフェニル〕プロパン、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールブロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等のジビニル系モノマー、トリビニル系モノマー及びテトラビニル系モノマーが挙げられる。なかでも、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレートおよびトリメチロールプロパントリメタクリレートが好ましい。これらは1種単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0022】
共重合可能な非架橋性かつ非イオン性モノマーは、重合性アミン化合物あるいは架橋性モノマーのいずれかと共重合可能であって、非架橋性かつ非イオン性のモノマーである。
【0023】
このようなモノマーとして、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ハロゲン化スチレン等の芳香族ビニル単量体;アクリロニトリル等の不飽和ニトリル;メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート等のアクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステル;ブタジエン、イソプレン等のジオレフィン;酢酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル;塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン等を挙げることができる。なかでも、スチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレートが好ましい。これらのモノマーは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0024】
上記重合性アミン化合物を含むモノマー成分は水系分散媒中で重合開始剤の存在下、乳化重合、懸濁重合、分散重合などにより重合される。
【0025】
重合開始剤としては、過硫酸塩類、あるいは過酸化水素−塩化第一鉄、クメンヒドロペルオキシド−アスコルビン酸ナトリウム等のレドックス系の水溶性重合開始剤、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩基酸塩、アゾビスイソブチロニトリル、ビス(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイドなどの油溶性重合開始剤が例示される。
また、必要に応じて界面活性剤、分散安定剤などを使用することもできる。
【0026】
(2)アミン化合物を基材材料に結合させる方法
粒子表面にカルボキシル基、ヒドロキシル基、エポキシ基、アミノ基、アミド基、アルデヒド基、カルボキシル基、酸クロライド基など官能基を有するモノマーを共重合やシード重合法などで重合させることにより導入し、次にそれら官能基を反応点としてアミン化合物を反応させることにより、材料表面に導入することができる。上記の官能基を有するモノマーの例として、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸フマル酸、マレイン酸、ハイドロキシエチルメタアクリレート、2−ハイドロキシエチルアクリレート、2−ハイドロキシエチルメタクリレート、グリシジルメタアクリレート、グリシジルアクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミドを挙げる事ができる。
【0027】
上記のようにして粒子表面に導入された官能基と反応させるアミン化合物としては、例えば、生物試料由来の、プトレッシン、カダベリン、スペルミジン、スペルミン、1,3-ジアミノプロパン、カルジン、ホモスペルミン、3-アミノプロピルカダベリン、ノルスペルミン、テルモスペルミン、カルドペンタミン等のポリアミンおよびそれらの重合生成物、ヒストンおよびプロタミンに分類される塩基性タンパク質とそれらの重合体、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン、ポリプロピレンイミンなどのポリアルキルアミン、ポリアルキルイミンなどに分類されるポリアミン化合物、ポリリシン、ポリアルギニン、ポリヒスチジンなどのポリアミノ酸類、その他ポリジエチルアミノエチルメタクリレート、ポリジメチルアミノエチルメタクリレート、ポリビニルピリジン4級化物、ポリブレン、キトサン、グリコールキトサン、メチルグリコールキトサン、ポリジアリルジメチルアンモニウム等の合成、天然、半合成(発酵、遺伝子組み替えを含む)高分子、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等のジアミン類;3-アミノプロピルトリエトキシシランなどのシランカップリング剤等が挙げられる。また、前述のアミン化合物を有するモノマーを共重合したポリマーなどを挙げることができる。
【0028】
本発明のウィルス濃縮材料は、内部または表面に磁性体を含有することもできる。但し、この磁性体は該材料の内部のみに含有され、表面に露出していないことが好ましい。本発明ウイルス濃縮材料を粒子形状とした場合に特に磁性体を含有させる利点が得られる。即ち、該粒子に磁気を作用させて収集することが可能となり、遠心分離等による操作が不要で検査時間を短縮することが可能となるほか、検査・診断の自動化への対応も容易となる。このような磁性体としては、例えば四三酸化鉄(Fe3O4)、γ−重三二酸化鉄(γ−Fe2O3)等の各種フェライト、鉄、マンガン、コバルト、クロムなどの金属またはこれら金属の合金などを用いることができる。
【0029】
磁性体の含有量は、ウイルス濃縮材料全体に対し10重量%以上、特に20〜100重量%であることが好ましい。この量が少なすぎると、粒子形状とした場合の該ウイルス濃縮用粒子に、良好な磁気分離性が得られず、その結果、後述するウイルスの分離・濃縮方法において、血液または体液等の検体からウイルス濃縮用粒子を分離するために相当に長い時間を要するので、高い時間的効率が得られないことがあり、好ましくない。
【0030】
磁性体をウイルス濃縮材料に含有させるには、
(a)上記(1)の方法により重合を行う際に、モノマーを含む重合成分に磁性体を混合して重合を行う。
(b)高分子を構成するモノマーを含む重合成分を通常の高分子粒子水分散体を得る方法で重合し、高分子粒子水分散体を得る。この粒子表面に磁性体層を形成する。
(c)高分子を実質的に水不溶で水より沸点の低い溶媒に溶解し、磁性体をこの溶液に分散する。これを適当な乳化剤ないしは分散剤を用いて水に分散させ、溶媒を蒸留により除去する。
【0031】
また磁性体の表面露出を防ぐために上記の(a)、(b)または(c)で得られた高分子水分散体をシードとしてモノマーを添加して重合し、粒子表面に高分子層を形成する事も可能である。
(b)及び(c)の方法により磁性体を導入したポリマー粒子の表面にアミン化合物を結合させるには、前述の(2)の方法を行えばよい。
【0032】
本発明のウイルス濃縮材料が粒子状で懸濁液として使用する場合、その分散媒に乳化剤、分散剤、未反応モノマー、水溶性ポリマー、重合開始剤の分解物などを含んでいる場合がある。これらの物質は、核酸増幅検査段階において反応阻害物となる可能性が高いため、例えばAdv.Colloid Interface Sci.,81,77〜165(1999)などに示される方法によりウイルス濃縮用粒子の分散媒から除去することが好ましい。
後述するアミン化合物の定量に滴定を採用する場合には、最終的に混床型イオン交換樹脂などを用いてウイルス濃縮用粒子を精製することが好ましい。
【0033】
[有用性]
本発明のウイルス濃縮材料は、例えば血液や体液等の検体中のウイルスを吸着、除去すること、吸着した後、該材料から適当な液中に脱着させて濃縮することなどの利用することができる。該材料により分離・濃縮されたウイルスは核酸抽出・検査・診断、特に核酸増幅を伴う検査・診断に好適に用いられる。
【0034】
また、本発明のウイルス濃縮材料が粒子状である場合、試料中のウイルス外皮蛋白の検出にも使用することができる。具体的には、該粒子を試料と混合し、吸着されたウイルス外皮蛋白を標識抗体で検出する方法をあげることができる。この方法では、標識抗体の種類を変えることにより各種のウイルス外皮蛋白を検出することができる。
【0035】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、「部」は特記しない限り重量部を意味する。
I.[ウイルス濃縮材料の形態が粒子状である場合の実施例、及び比較例]
以下の実施例において、得られたウイルス濃縮材料に存在するアミン化合物の量および粒径は、下記の方法で測定した。
【0036】
・アミン化合物の存在量:
▲1▼電導度滴定法:
ウイルス濃縮材料を遠心分離あるいは磁気分離により純水で2回洗浄し、粒子1gあたり混床型イオン交換樹脂5gを添加し、混合後1時間攪拌した後、混床型イオン交換樹脂を濾去した。この混床型イオン交換樹脂による精製を2回繰り返した。得られた精製粒子のカチオン性基を硫酸規定液を滴定液として滴定しアミン化合物含有量とした。この方法は下記実施例1〜6に適用した。
▲2▼非水滴定法:
上記▲1▼と同様にウイルス濃縮材料を精製後、乾燥しクロロホルムに溶解し、クロロホルムに不溶分を濾去した後、過塩素酸/酢酸溶液の規定液を用いて滴定しアミン化合物量を定量した。この方法は下記実施例7〜10に適用した。
【0037】
実施例1
油性磁性流体「マーポマグナFV−55」[松本油脂製薬(株)製]にアセトンを加えて粒子を析出沈殿させた後、これを乾燥することにより、親油化処理された表面を有するフェライト系の超常磁性体粒子(粒子径:0.01μm)を得た。
ついで、超常磁性体粒子40部にシクロヘキシルメタクリレート90部、トリメチルアミノエチルメタクリレートの塩化物10部およびビス(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド(重合開始剤)3部を添加し、この系を混合攪拌することにより超常磁性体を均一に分散させてモノマー組成物を調製した。
【0038】
一方、ポリビニルアルコール10部、およびポリエチレンオキシドノニルフェニルエーテル0.1部を水1000部に溶解して水分散体を調製した。
得られた水性媒体(水相)中に上記のモノマー組成物を添加し、超音波分散機で分散処理することにより平均粒子径が1μmの油滴(油相)が水性媒体に分散されてなる懸濁液(油滴分散体)を調製した。
次に、得られた懸濁液を容量2リットルの攪拌機付き三つ口フラスコに仕込み、この系を75℃に昇温し、窒素雰囲気下において攪拌しながら5時間にわたり油滴中のモノマーを重合(懸濁重合)させることにより、本発明のウイルス濃縮材料を製造した。
【0039】
実施例2
実施例1において油性磁性流体「マーポマグナFV−55」[松本油脂製薬(株)製]を「フェリコロイドHC50」[タイホー工業(株)製]に代えた以外は実施例1と同様にして、本発明のウイルス濃縮材料を製造した。
【0040】
実施例3
実施例1において重合開始剤をビス(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイドからベンゾイルペルオキシドに代えた以外は実施例1と同様にして、本発明のウイルス濃縮材料を製造した
【0041】
実施例4
実施例1においてトリメチルアミノエチルメタクリレートの塩化物10部をジメチルアミノエチルメタクリレート10部に代えた以外は実施例1と同様にして、本発明のウイルス濃縮材料を製造した。
【0042】
実施例5
実施例1においてシクロヘキシルメタクリレートの使用量を100部とし、トリメチルアミノエチルメタクリレートの塩化物を使用せず、ビス(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド(重合開始剤)3部の代りに2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩基酸塩5部を使用した以外は実施例1と同様にして、本発明のウイルス濃縮材料を製造した。
【0043】
実施例6
実施例1において分散処理に超音波微分散機を使用せず、高速剪断ミルタイプのホモジナイザーを使用することにより平均粒子径が4μmの油滴(油相)が水性媒体に分散されてなる懸濁液(油滴分散体)を調製した以外は実施例1と同様にして、本発明のウイルス濃縮材料を製造した。
【0044】
実施例7
(1)実施例1においてシクロヘキシルメタクリレートの使用量を95部とし、トリメチルアミノエチルメタクリレートの塩化物10部の代わりにメタクリル酸5部を使用した以外は実施例1と同様にして磁性ポリマー粒子を製造した。
(2)上記(1)で得られた磁性ポリマー粒子を5mM水酸化ナトリウム水溶液に分散し、80℃で12時間処理してカルボキシ変性磁性ポリマー粒子とした。
(3)得られたカルボキシ変性磁性ポリマー粒子1g(乾燥重量)を20mLの10mM MES緩衝溶液(pH6)に添加し、ポリエチレンイミン(数平均分子量7万)の30%水溶液0.1mLおよびカルボジイミド試薬であるEDC・塩酸塩(1−エチル−3(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドヒドロクロライド)0.2gを添加し、20℃で2時間反応させ、本発明のウイルス濃縮材料を得た。
【0045】
実施例8
(1)実施例7(2)と同様にして得られたカルボキシ変性磁性ポリマー粒子1g(乾燥重量)を20mLの10mM MES緩衝溶液に添加し、ポリ−L−リジン臭化水素物(数平均分子量30万)の1%水溶液1mLおよび水溶性カルボジイミド試薬であるEDC・塩酸塩(1−エチル−3(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドヒドロクロライド)0.2gを添加し、20℃で2時間反応させ、ポリ−L−リジン固定磁性粒子からなる本発明のウイルス濃縮材料を得た。
【0046】
実施例9
(1)実施例7(2)と同様にして得られたカルボキシ変性磁性ポリマー粒子1g(乾燥重量)を20mLの10mM MES緩衝溶液に添加し、ポリアリルアミン(PAA;数平均分子量10万)の1%水溶液1mLおよび水溶性カルボジイミド試薬であるEDC・塩酸塩(1−エチル−3(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドヒドロクロライド)0.2gを添加し、20℃で2時間反応させ、ポリアリルアミン固定磁性粒子からなる本発明のウイルス濃縮材料を得た
【0047】
実施例10
(1)実施例1においてシクロヘキシルメタクリレートの使用量を90部に変え、トリメチルアミノエチルメタクリレートの塩化物の代わりにグリシジルメタクリレート10部を用いた以外は実施例1と同様にしてグリシジル変性磁性粒子を得た。
(2)得られたグリシジル変性磁性粒子1g(乾燥重量)を1%のピリジンを含有する蒸留水20mLに懸濁し、ポリエチレンイミン(数平均分子量7万)の30%水溶液0.1mLを添加し、60℃で24時間反応させ、ポリエチレンイミン固定磁性粒子からなる本発明のウイルス濃縮材料を得た。
【0048】
【表1】
【0049】
ウイルスの濃縮及びPCR試験結果
(1)実施例1〜10で得られた粒子の水分散体を精製後、生理食塩水で固形分濃度5重量%に調整した。
(2)HBVを105コピー/mL含有するヒト血漿を、ウイルスDNA陰性血漿を用いて段階的に希釈し、 HBVを104〜101コピー/mLで含有する試料を調製した。この試料5mLに上記(1)で調製した粒子懸濁液(5重量%)100μLを加え、室温で10分間回転撹拌し、ウイルス吸着処理を行った。
【0050】
ウイルス吸着処理後、磁気分離スタンドにセットし、粒子と上清を分離し、上清を捨て、 Tris-HCl緩衝液(pH7.4)を加え、100μLの粒子分散液を調製した。この粒子分散液から、DNA抽出キット(和光純薬工業株式会社)を用いて、付属の調製法に従い核酸を抽出した。比較例1として、 HBVを104〜101コピー/mLで含有する血漿検体100μLから、DNA抽出キットを用いて核酸を抽出した。得られた抽出物をPCR法により、35回の増幅過程によりDNAを増幅した。PCRのプライマー配列は、Hiroaki Okamoto, Igaku no ayumi, (1992),162(9),544-549.に従った。得られたPCRの増幅産物を3%アガロースを用いて電気泳動を行い、エチジウムブロマイド染色によりDNAを可視化しポラロイド写真に撮影した。得られた目的DNAの量をバンドの蛍光強度から、-,+,++,+++の4段階で判定した。
結果を表2〜12に示す。
【0051】
【表2】
(実施例1)
【0052】
【表3】
(実施例2)
【0053】
【表4】
(実施例3)
【0054】
【表5】
(実施例4)
【0055】
【表6】
(実施例5)
【0056】
【表7】
(実施例6)
【0057】
【表8】
(実施例7)
【0058】
【表9】
(実施例8)
【0059】
【表10】
(実施例9)
【0060】
【表11】
(実施例10)
【0061】
【表12】
(比較例1)
【0062】
本発明の粒子を用いずに実施した比較例1(表12)の実験からは、ウイルス核酸の検出には1×102 copies/mL以上のウイルス濃度が必要であり、1×101 copies/mL以下の検体からはウイルスを検出することは出来なかった。一方、本発明の粒子を用いて、検体を50倍濃縮して実施した実施例1〜10(表2〜11)の実験の結果、少なくとも1×101 copies/mL以上のウイルス濃度の検体からウイルス核酸が検出でき、本発明の粒子は、高感度のウイルス検出において有効であった。
【0063】
実施例11
実施例7のウィルス濃縮用粒子の水分散体を精製後、生理食塩水で固形分濃度5%に調整したもの100μLを濃度既知のHBsAg陽性検体の希釈サンプル画100μLに添加し、チューブミキサーで15分間撹拌した。撹拌後、磁気分離スタンドにて粒子を分離し、上清を除去し続いてトリス緩衝生理食塩水(TBS)pH7.5で洗浄し、ペルオキシダーゼ標識HBs抗体(特殊免疫研究所製)を100μLを添加して反応させ、TBSで洗浄し、基質液100μLを添加して発色反応を30分間行い硫酸を添加して反応を停止させ、各々吸光度を測定した。
結果を表13に示す。
【0064】
【表13】
【0065】
II.[ウイルス濃縮材料が多孔質膜状である場合の実施例及び比較例]
以下の実施例における特性は、以下の条件あるいは方法で測定した。
1.透水量: 25℃±2℃で測定した値である。
2.空孔率: 下式(A)により算出した。
空孔率(%)=空孔部の体積/(空孔部の体積+フィルター実績部の体積)
×100
【0066】
3.膜の最大孔径: ASTM−F316を参考にしてバブルポイント法により求めた値である。最大孔径は、製膜後の膜全体に均一に存在する孔の最大孔径を表わす値であり、ピンホ−ルや製膜後に作られた該最大孔径より大きな孔などは含まれない。
4.フラメント直径: 走査型電子顕微鏡で観察したフィラメントの長径と短径の平均値のことであり、異形フィラメントであっても多孔質フィラメントであっても同様である。
【0067】
5.ウイルスの定量: プラ−ク(溶菌班)法により行った。すなわち、検体を宿主細胞もしくは宿主細菌と接触させてたのち、ウイルスに感染することにより生成するプラ−ク(溶菌班)数を測定することにより求めた。ウイルス捕捉率は、下式(B)により算出した。
ウイルス捕捉率(%)=(1−生存ウイルス数)/原液中のウイルス数
×100
ウイルス捕捉率が高いほどウイルス濃縮能力が高いといえる。本発明ではウイルス捕捉率95%以上を充分なウイルス濃縮能力を有する材料と判断した。
【0068】
実施例12
メルトフローインデックスが30及び0.3の二種のポリプロピレンの混合物(混合重量比100:40)100部当り、320部の流動パラフィン(数平均分子量324)及び0.3部の結晶核形成剤としての1,3,2,4−ビス(p−エチルベンジリデン)ソルビトールを二軸型押出機により溶融混練しペレット化した。このペレットを上記押出機を用いて150〜200℃で溶融し、スリット幅0.6mmのTダイスより空気中に押し出して、Tダイス直下に置かれた冷却液相のガイドローラーの回転によってポリエチレングリコ−ルよりなる冷却固化液中に導き冷却固化した後、1,1,2−トリクロロ−1,2,2−トリフルオロエタンに浸漬して流動パラフィンの抽出を行なった。続いて、135℃の空気中で2分間熱処理し、最大孔径0.5μm、空孔率58%、膜厚80μmのポリプロピレンフィルタ−を得た。
【0069】
このようにして得られたポリプロピレンフィルタ−に、アルゴンプラズマ(100W、0.1Torr、15秒間)を照射した後、2−メトキシエチルアクリレ−トガス(1.0 Torr)に3分間、次にグリシジルアクリレ−トガス(0.7Torr)に3分間接触させて表面グラフト重合を行い、表面に反応性官能基を有する親水性多孔質膜を得た。続いて、1wt%のポリエチレンイミン(分子量1800)と1.0wt%のピリジンを含む水溶液に、60℃、18時間浸漬することにより膜表面にポリエチレンイミンを固定化した。得られた膜は、水及び塩化メチレン/メタノ−ル共沸溶媒で良く洗浄した後、試料とした。
【0070】
ポリプロピレン膜の表面に導入されたポリ(2−メトキシエチルアクリレ−ト)とグリシジル基に結合したポリエチレンイミンは、IRスペクトル(ATR法)により確認した。ESCAで求めた窒素/炭素比は0.06であった。また、過塩素酸滴定により求めたアミンの量は、3.3×10-4mol/gであった。該膜の空孔率は55%、透水量390mL/min/m2/mmHg、最大孔径0.52μmであった。
【0071】
この膜を、ニュ−クリポア製スウインロックフィルタ−ホルダ−(直径25mm)にセットし、ヘルペスウイルス type I H.F. 株を約104 (PFU/mL)となるように添加したPBSバッファ−(pH7.35〜pH7.6)、及び人新鮮血より採取した血漿を、各々10mL濾過してウイルス捕捉率を測定したところ、PBSバッファ−中で99.9%以上、人血漿中で98%であった。また、φX174(バクテリオファ−ジ)についても同様に試験を行った結果、人血漿中で99%、水中で98%以上の捕捉率を示した。
【0072】
実施例13
グリシジルアクリレ−トのかわりにグリシジルメタクリレ−トを使用した他は、実施例12と同様で、ポリフッ化ビニリデンフィルター(ミリポア社製)にポリエチレンイミン(分子量70,000)を固定化したフィルタ−を作製した。この膜のESCAで求めた窒素/炭素比は0.08、過塩素酸滴定により求めたアミンの量は、4.8×10-4mol/gであった。この膜の空孔率は61%、透水量380mL/min/m2/mmHg、最大孔径0.50μmであった。
【0073】
この膜を、ニュ−クリポア製スウインロックフィルタ−ホルダ−(直径25mm)にセットし、ヘルペスウイルス type I H.F. 株を約104 (PFU/mL)含むPBSバッファ−(pH7.35〜pH7.6)と人新鮮血より採取した血漿を、各々10mL濾過し、ウイルス捕捉率を測定したところ、PBSバッファ−中で99%以上、人血漿中で99%であった。また、φX174(バクテリオファ−ジ)についても同様に試験を行った結果、人血漿中で98%,水中で99%以上の捕捉率を示した。
【0074】
実施例14
実施例12と同様の方法で作製したポリプロピレンフィルターに、アルゴンプラズマ(100W、0.2Torr、20秒間)を照射した後、グリシジルアクリレ−トガス(0.7Torr)を3分間接触させて表面グラフト重合を行い、表面に反応性官能基を有する親水性多孔質膜を得た。続いて、1wt%のポリエチレンイミン(分子量70,000)と0.5wt%のピリジンを含む水溶液に、60℃、18時間浸漬することにより膜表面にポリエチレンイミンを固定化した。得られた膜は、水及び塩化メチレン/メタノ−ル共沸溶媒で良く洗浄した後、試料とした。
【0075】
この空孔率は57%、透水量352mL/min/m2/mmHg、最大孔径0.49μmであった。この膜のESCAで求めた窒素/炭素比は0.07、過塩素酸滴定により求めたアミンの量は、4.4×10-4 mol/gであった。
この膜を、ニュ−クリポア製スウインロックフィルタ−ホルダ−(直径25mm)にセットし、実施例12と同様にヘルペスウイルス type I H.F. 株の捕捉率を測定したところ、PBSバッファ−中で99%以上、人血漿中で 98%であった。また、φX174(バクテリオファ−ジ)についても同様に試験を行った結果、人血漿中で98%,水中で99%以上の捕捉率を示した。
【0076】
実施例15
実施例12と同様の方法で作製したポリプロピレンフィルターに、ポリエチレンイミンのかわりにイミノビスプロピルアミンを固定化した膜を得た。この空孔率は56%、透水量348mL/min/m2/mmHg、最大孔径0.49μmであった。この膜のESCAで求めた窒素/炭素比は0.03、過塩素酸滴定により求めたアミンの量は、2.4×10-4 mol/gであった。
この膜を、ニュ−クリポア製スウインロックフィルタ−ホルダ−(直径25mm)にセットし、実施例1と同様にヘルペスウイルス type I H.F. 株の除去率を測定したところ、PBSバッファ−中で99.9%以上、人血漿中で 99.6%であった。また、φX174(バクテリオファ−ジ)についても同様に試験を行った結果、人血漿中で98%,水中で99%以上の捕捉率を示した。
【0077】
実施例16
ポリプロピレン製不織布(東燃(株)製タピルス)に、実施例12と同様にしてポリエチレンイミン(分子量1200)を固定化した膜を得た。
このフィルタ−をフィルタ−ホルダ−(直径47mm)に30枚積層してセットし、実施例1と同様にヘルペスウイルス type I H.F. 株を用いてウイルス捕捉率を測定したところ、PBSバッファ−中で99%以上、人血漿中で98%であった。また、φX174(バクテリオファ−ジ)についても同様に試験を行った結果、人血漿中で99%、水中で99%以上の捕捉率を示した。
【0078】
実施例17
ポリウレタン製多孔質フィルタ−(東洋ポリマ−(株)製ルビセル)に、実施例12と同様の方法でにしてポリエチレンイミンを固定化したフィルタ−を得た。
過塩素酸滴定により求めたアミンの量は、1.6×10-4 mol/gであった。該膜の空孔率は82%、透水量1.1×104 mL/min/m2/mmHg 、最大孔径18μmであった。
【0079】
このフィルタ−を、フィルタ−ホルダ−(直径47mm)に20枚積層し、ヘルペスウイルス type I H.F. 株を約104 (PFU/mL)含むPBSバッファ−(pH7.35〜pH7.6)と人血液を、各々30mL濾過し、ウイルス捕捉率を測定したところ、PBSバッファ−中で99%以上、人血漿中で98%であった。また、φX174(バクテリオファ−ジ)についても同様に試験を行った結果、人血漿中で98%,水中で98%以上の捕捉率を示した。
【0080】
比較例2
実施例12で基材として用いたポリプロピレンフィルタ−に、実施例1と同様の方法で、2−メトキシエチルアクリレ−トとグリシジルアクリレ−トを表面グラフト重合させた膜を作製した。該膜の空孔率は59%、透水量434mL/min/m2/mmHg 、最大孔径0.5μmであった。
実施例12と同様の方法でウイルス捕捉試験を行った。該フィルタ−は、PBSバッファ−中、血漿中のどちらにおいても、ヘルペスウイルス、φX174の各捕捉率は50%以下であり、濃縮することができなかった。
【0081】
比較例3
実施例12で基材として用いたポリプロピレンフィルタ−に、実施例12と同様の方法で、平均分子量1200のポリエチレンイミンを60℃、1時間反応させて、膜表面に固定化した。この膜の空孔率は57%、透水量365mL/min/m2/mmHg、最大孔径0.50μmであった。この膜のESCAで求めた窒素/炭素比は0.004、過塩素酸滴定により求めたアミンの量は、0.7×10-4 mol/gであった。
【0082】
実施例12と同様にしてウイルス除去率を測定したところ、ヘルペスウイルスでは、PBSバッファ−中で99.9%以上、人血漿中で54%、また、φX174(バクテリオファ−ジ)では、人血漿中で50%以下、水中で99.9%以上の除去率を示した。水中ではウイルスを除去できるものの、種々の蛋白質を含む血漿中ではウイルスを捕捉、濃縮することができなかった。
【0083】
比較例4
実施例12で基材として用いたポリプロピレンフィルタ−に、アルゴンプラズマ(100W、0.1Torr、15秒間)を照射した後、2−メトキシエチルアクリレ−ト(0.8Torr)を3分間、4−ビニルピリジン(0.8Torr)で2分間接触させて表面グラフト重合を行なった後、0.1モルのベンジルクロライドを含むメタノ−ル中で55℃で3時間、4級化反応を行なうことにより、ピリジニウム構造を表面に有する空孔率57%,透水量104 mL/min/m2/mmHg、最大孔径0.48μmの膜を得た。
【0084】
該フィルタ−のウイルス除去率を実施例12と同様の方法で測定したところ、PBSバッファ−中では、ヘルペスウイルス及びφX174を98%以上捕捉することができたが、人血漿中ではどちらのウイルスの捕捉率も50%以下であった。
【0085】
【発明の効果】
本発明のウイルス濃縮材料は、ウイルスの認識・分離(除去)・濃縮などに使用することができるため、食品工業、発酵工業、医薬品工業を初めとした産業界で広く実用可能な材料である。また、血漿などの蛋白質成分を含む溶液中でもウイルスを認識できるため、医療や生活現場におけるウイルス汚染やウイルス感染の防止、治療、診断などに有効である。
【0086】
本発明のウイルス濃縮材料が粒子状である場合、遠心分離や磁気を作用させる簡便な手段により、同時に多数の検体を簡便に濃縮処理することのができ、しかも得られた濃縮ウイルスを含む試料は核酸増幅の処理に悪影響を及ぼさない。この粒子を利用するウイルス濃縮方法は、極く微量のウイルスを含む検体からウイルスを効率良く短時間で濃縮することができ、その結果ウイルスをより高精度で検出することができる。
【0087】
また、本発明のウィルス濃縮用粒子は検体よりウィルスを吸着した後、免疫化学的測定に供することもできる。また、多孔質膜として用いた場合、取り扱いが容易であり、しかもウイルスに対して選択的な相互作用を有し、簡便で処理速度に優れている。
Claims (7)
- 表面に、イミノ基を含有するアミン化合物を固定化した材料からなるウイルス濃縮材料。
- 前記材料が水不溶性材料である、請求項1に記載のウイルス濃縮材料。
- 前記材料が空孔率20%以上を有する多孔質膜である、請求項1又は2に記載のウイルス濃縮材料。
- 前記多孔質膜が表面処理により反応性官能基を導入した多孔質膜である、請求項3に記載のウイルス濃縮材料。
- 血漿又は血清中のウイルスを濃縮するものである、請求項1〜4のいずれか1項に記載のウイルス濃縮材料。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載のウイルス濃縮材料を用いて、検体中のウイルスを濃縮する方法。
- 前記検体が血漿又は血清である、請求項6に記載の方法。
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