JP4786172B2 - 固型粉末化粧料 - Google Patents
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例えば、ワックス等の固形又は半固形油分を高配合し、溶融状態で充填し、冷却固化させることで、耐衝撃性を向上させる技術が知られている(湿式成型法)。しかしながら、この方法では、化粧品中の不揮発性油性成分の含量が多くなるため、使用感が重くなることがあった。
本発明は、前記従来技術の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、耐衝撃性と良好な使用感とを兼ね備えた固型粉末化粧料を提供することにある。
すなわち本発明の固型粉末化粧料は、粉末成分と油性成分とを含む化粧料基剤に、溶剤を添加してスラリーとし、該スラリーを容器に充填した後、前記溶剤を除去することにより得られ、
化粧料全体に対して、平均粒子径1〜50μmの球状ポリオレフィン樹脂粉末を3〜40質量%、不揮発性油性成分を1〜20質量%含むことを特徴とする。
前記化粧料において、球状ポリオレフィン樹脂粉末が、重量平均分子量3000以上のポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリエチレン/ポリプロピレン共重合体から選択される1種又は2種以上であることが好ましい。
前記化粧料は、化粧料全体に対して弾性粉末を3〜30質量%含むことが好ましい。
本発明のポリオレフィン樹脂粉末としては、具体的にはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン/ポリプロピレン共重合体が挙げられる。
本発明の球状ポリオレフィン樹脂粉末の平均粒子径は1〜50μm、好ましくは2〜40μm、さらに好ましくは3〜30μmである。粒子径が1μm未満であると、きしみ感が生じるため好ましくない。また粒子径が50μmを超えると、ざらつき感が生じるため好ましくない。
従来、分子量が300〜2000程度の低分子量ポリオレフィンのワックス粒状物を固型粉末化粧料に配合して、耐衝撃性を向上させる技術が知られているが、この技術は、成形時にワックス粒状物を変形させたり、融着させたりして耐衝撃性を向上させるものであり、使用感が重くなる等の欠点を有する。
これに対し、本発明の球状ポリオレフィン樹脂粉末は、成形時に変形することがないので、固型粉末化粧料にサラサラとした良好な使用感を与えることができる。
また、球状ポリオレフィン樹脂粉末は、本発明の効果を損なわない範囲内で、分散性や化粧持ちをさらに向上させるために、フッ素やシリコーン等の疎水化処理を施しても良い。さらに、ポリオレフィンが主成分であれば、本発明の効果を損なわない程度に、表面や内部に他の微粒子粉末や薬効成分、添加剤や他のポリマーを混合・担持した多機能化粉末としても良い。
本発明において球状ポリオレフィン樹脂粉末は、化粧料全体(最終製品)に対して3〜40質量%、特に5〜30質量%含まれることが好ましい。3質量%未満であると本発明の効果が十分に発揮されず、40質量%を超えると充填困難になる。
本発明において、不揮発性油性成分とは、常圧における沸点が60℃以上の油性成分であり、シリコーン油、ワックス、炭化水素油、エステル油、高級脂肪酸、高級アルコール、天然油分、フッ素油など通常化粧料に用いられている油分のほか、アルキレンオキシド誘導体、油溶性の界面活性剤、油溶性の紫外線吸収剤、油溶性の薬効成分、油溶性被膜剤、油溶性ゲル化剤など、油分に溶解または均一に混合可能であって、粉末の濡れに影響を与えたり、成型助剤や油分の増量剤として機能する成分を含む。
上記シリコーン油を配合すると、伸びの軽さが改善される。
また、該ワックスの含有量は、球状ポリオレフィン樹脂粉末の含有量と比較して、質量比で1/2以下であることが、耐衝撃性及び使用感の点から好ましい。
ワックスの配合方法としては、ワックスの微細分散物を粉末成分と共に配合する方法や、ワックスを他の油性成分と共に加熱溶解して配合する方法が挙げられる。化粧料中に均一に配合するためには、後者の方法がより好ましい。
(化2)
(式中、m/(m+n)=1/500〜1/10である。)
具体的には、メチル(N−プロピル−ピロリドンカルボン酸)シロキサン・メチルポリシロキサン共重合体が挙げられる。
ピロリドンカルボン酸変性シリコーンは、化粧料中1〜15質量%含まれることが好ましい。特に3〜10質量%であることが好ましい。1質量%未満であると本発明の効果が十分に発揮されないことがあり、15質量%を超えると使用感がべたつくことがある。
エステル油としては、イソノナン酸イソノニル、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、 12-ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ジ-2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N-アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ-2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ-2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、トリ-2-エチルヘキサン酸グリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル2-エチルヘキサノエート、2-エチルヘキシルパルミテート、トリミリスチン酸グリセリン、トリ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オレイル、アセトグリセライド、パルミチン酸2-ヘプチルウンデシル、アジピン酸ジイソブチル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸-2-オクチルドデシルエステル、アジピン酸ジ-2-ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバシン酸ジ−2-エチルヘキシル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-ヘキシルデシル、アジピン酸2-ヘキシルデシル、セバシン酸ジイソプロピル、コハク酸2-エチルヘキシル、クエン酸トリエチル等が挙げられる。
フッ素油としては、パーフルオロデカリン、パーフルオロブチルテトラハイドロフラン、パーフルオロアルカン、パーフルオロポリエーテル、フッ素変性シリコーン等が挙げられる。
なお、上記POE、POP、POBは、それぞれポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレンの略である。
粉末は、化粧料油剤、紫外線吸収剤等を内包させたものでもよく、表面を疎水化処理したものでもよい。粉末の疎水化処理としては、例えば、シリコーン油、高級脂肪酸、高級アルコール、脂肪酸エステル、ポリエチレン、金属石鹸、アミノ酸又はアルキルフォスフェート及びフッ素化合物を用いた表面処理が挙げられ、2種以上の処理を組み合わせて行っても良い。
本発明の粉末固型化粧料は、不揮発性油性成分が比較的少ないこと、言い換えれば粉末成分が比較的多いことに特徴があり、粉末成分の合計の含有量は、球状ポリオレフィン樹脂粉末を含め、化粧料全体に対して80〜99質量%であり、好ましくは80〜97質量%、さらに好ましくは80〜95質量%、特に好ましくは84〜90質量%である。
本発明の特徴の一つは、重量平均粒子径が15μm以上、特に30μm以上の大きなパール顔料を高配合させた場合においても、耐衝撃性に優れた化粧料が得られることである。この効果は、パール顔料が化粧料全体に対して、5〜89質量%、好ましくは10〜70質量%、特に好ましくは20〜50質量%含まれる場合に顕著に発揮される。
色材としては、酸化鉄(ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄)、群青、紺青、カーボンブラック、酸化クロム等が挙げられる。
紫外線吸収粉末としては、無機系粉末、有機系粉末がある、無機系粉末としては、微粒子の二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、又はこれらに他の金属をドーピングしたものや、シリカなどとの複合粉末が挙げられる。紫外線吸収粉末の粒子径は、紫外線吸収効果の向上とメーキャップ効果への悪影響の低減のため、0.001〜0.1μmであることが好ましい。有機系粉末としては、トリアジン誘導体等が挙げられる。
本発明の固型粉末化粧料は、以下の方法により製造される。
まず、球状ポリオレフィン樹脂粉末を含む粉末成分をヘンシェルミキサー等で混合後、油性成分を添加し均一に混合して化粧料基剤を調製する。次いでこの化粧料基剤を溶剤と混合してスラリー状物とし、容器に充填する。充填時にスラリー状物の容器等への拡がりが悪い場合には、充填物がこぼれない程度に軽い振動を与えると均一に充填することができる。容器等に充填後、溶剤を除去して固化させる。溶剤の除去は常法、例えば自然乾燥、加温乾燥、温風乾燥、真空吸引等によって行われる。上記製造方法はいわゆる湿式成型法であり、その詳細は特公昭57−60004号公報、特公昭61−54766号公報等に記載されている。
本発明において用いられる溶剤としては、水やメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、ベンゼン、トルエン、THF、パラフィン、シリコーン等が挙げられ、用いる粉末成分及び油性成分の特性に応じて、1種または2種以上を混合して用いることができる。このうち特にエタノールが好ましい。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。配合量については特に断りのない限り質量%を示す。
[耐衝撃性]
各化粧料の成型物をコンパクト容器にセットし、箱に入れた状態で30cmの高さからコンパクトが下向きになるように金属板上に落下させ、何回目で割れたかを調べ、以下のように評価した。
◎:20回目以上
○:11〜19回目
△:6〜10回目
×:5回目以下
各化粧料について、使用時の粉飛びのなさについて、女性パネル12名により5段階評価し(5;とても良好、4;良好、3;普通、2;悪い、1;かなり悪い)、その平均値により、以下のように評価した。
◎:4以上
○:3以上4未満
△:2以上3未満
×:2未満
各化粧料を化粧用パフで取った時の取れ付きの良さについて、女性パネル12名により5段階評価し(5;とても良好、4;良好、3;普通、2;悪い、1;かなり悪い)、その平均値により、以下のように評価した。
◎:4以上
○:3以上4未満
△:2以上3未満
×:2未満
各化粧料について、塗布時の伸びの軽さについて、女性パネル12名により5段階評価し(5;とても良好、4;良好、3;普通、2;悪い、1;かなり悪い)、その平均値により、以下のように評価した。
◎:4以上
○:3以上4未満
△:2以上3未満
×:2未満
各化粧料について、製造時の充填適正を以下のように評価した。
○:充填しやすい(ノズルから中身が均一に出て、問題なく充填できる)
△:充填やや困難(中身がダイラタント状態となりノズルに詰まる懸念がある)
×:充填困難(中身がひどくダイラタント状態となりノズルが詰まる)
(表1)
(製法:乾式成型法)
粉末成分をヘンシェルミキサー等で混合後、油性成分を添加し均一に混合して化粧料基剤を調製する。これを中皿に充填し圧縮成型する(成型圧150kg)。
粉末成分をヘンシェルミキサー等で混合後、油性成分を添加し均一に混合して化粧料基剤を調製する。これに対しエタノールを60〜70質量%加え、均一に混合しスラリー状にする。この際、油性成分については、エタノールの除去により一部が喪失されてしまうため、最終製品での配合量が処方規定量となるように、適宜120〜160%の増量仕込みを行った。これを中皿に充填、成型ヘッドを用いて圧縮成型し(成型圧20kg)、同時に成型ヘッドの裏面からエタノールを吸引する。吸引後、成型物を50℃で2時間乾燥させる。
これに対し、その他の粉末を配合した場合には、特にパール顔料を高配合した場合に、耐衝撃性が悪く、固型化粧料として満足できる品質が得られなかった(試験例2−2〜2−6)。
(表3)
*1:重量平均分子量19000,平均粒子径12μm
*2:重量平均分子量30000,平均粒子径10μm
*3:重量平均分子量15000,平均粒子径10μm
*4:重量平均分子量2000,平均粒子径17μm
(製法)
試験例3−1〜3−8
上記湿式成型法と同様。
試験例3−9〜3−11
上記乾式成型法と同様。
これに対し、他の球状粉末(球状メチルシロキサン網状重合体、球状ポリアクリル酸アルキル、球状無水ケイ酸)を配合した場合には、伸びは軽いものの、耐衝撃性が悪く、粉飛びが生じた(試験例3−6〜3−8)。
また、ポリオレフィン粉末でも、低分子量のポリエチレン粉末や、ポリエチレンのワックス粒状物を配合した場合には、耐衝撃性、使用感共に悪い結果となった(試験例3−4〜3−5)。
以上のことから、球状ポリオレフィン樹脂粉末を用いた場合に、耐衝撃性と良好な使用性とを兼ね備えた固型粉末化粧料が得られることがわかった。
なお、乾式成型法で製造した場合には、球状ポリオレフィン樹脂粉末を配合しても、耐衝撃性は改善されなかった(試験例3−10〜3−11)。
本発明者がさらに検討したところ、ワックスの含有量としては、化粧料全体に対し0.5〜8質量%、好ましくは0.5〜5質量%、さらに好ましくは1〜3質量%であることがわかった。また該ワックスの含有量は、球状ポリオレフィン樹脂粉末の含有量と比較して、質量比で1/2以下が好ましいことが確認された。
なお、ワックスを配合した場合でも、本発明の球状ポリオレフィン樹脂粉末を配合しない場合は、耐衝撃性と使用性の両方において劣る結果となった(試験例6−8)。
(表7)
*1:上記の通り
*2:シリコーンゴムの表面にタルクを被覆した複合粉末(商品名:トレフィルHP40T)
(製法)
上記湿式成型法と同様。
しかしながら、試験例7−3と7−4、あるいは試験例7−7と試験例7−8の比較からわかるように、本発明の球状ポリオレフィン樹脂粉末を配合した場合は、弾性粉末を配合すると、耐衝撃性がさらに良くなることがわかった。また同時に伸びの軽さがより改善された。
本発明者がさらに検討したところ、弾性粉末の含有量としては、化粧料全体に対し3〜30質量%が好ましいことがわかった。
また、試験例7−4と試験例7−8との比較から、上記一般式(I)で表されるピロリドンカルボン酸変性シリコーンを配合すると、伸びの軽さがさらに良くなるため、好ましいことがわかった。
Claims (7)
- 粉末成分と油性成分とを含む化粧料基剤に、溶剤を添加してスラリーとし、該スラリーを容器に充填した後、前記溶剤を除去することにより得られ、
化粧料全体に対して、平均粒子径1〜50μmの球状ポリオレフィン樹脂粉末を5〜30質量%、パール顔料を20〜40質量%、炭化水素を主成分とするワックスを含む不揮発性油性成分を1〜20質量%含むことを特徴とする固型粉末化粧料。 - 請求項1に記載の化粧料において、球状ポリオレフィン樹脂粉末が、重量平均分子量3000以上のポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリエチレン/ポリプロピレン共重合体から選択される1種又は2種以上であることを特徴とする固型粉末化粧料。
- 請求項1又は2に記載の化粧料において、不揮発性油性成分として、ジメチルシリコーン、フェニルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、アルキル変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、ポリオキシアルキレン変性シリコーン、ポリオキシアルキレン/アルキル変性シリコーン、ピロリドンカルボン酸変性シリコーン、シリコーンゴム、及びこれらの架橋体から選択される1種又は2種以上を含むことを特徴とする固型粉末化粧料。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の化粧料において、化粧料全体に対して弾性粉末を3〜30質量%含むことを特徴とする固型粉末化粧料。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の化粧料において、炭化水素を主成分とするワックスの含有量が、球状ポリオレフィン樹脂粉末の含有量と比較して、質量比で1/2以下であることを特徴とする固型粉末化粧料。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の化粧料において、オルガノポリシロキサン粉末を含まないことを特徴とする固型粉末化粧料。
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