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JP4784279B2 - コンデンサーフィルム - Google Patents

コンデンサーフィルム Download PDF

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Description

本発明は、高い耐電圧特性を有し、かつ非常に薄いフィルム厚であり素子巻き等の加工適性に優れたコンデンサー用延伸フィルム及びそれを得るためのキャスト原反シートに関するものである。
2軸延伸ポリプロピレンフィルムは、包装用をはじめ工業用材料フィルムとして広く用いられているが、特に、その耐電圧特性、低い誘電損失特性などの優れた電気特性、及びそれに加え、高い耐湿性を活かしてコンデンサー用の誘電体フィルムとしても、広く利用されてきている。
このようなコンデンサー用フィルムにおいては、コンデンサーを作製する際の素子巻きを容易にする目的や、加工する際の滑り性向上、また、油含浸型コンデンサーの場合には、それを作製する際の油含浸性向上のため、表面を適度に微細粗面化する必要がある(特許文献1)。
表面の微細粗化の方法としては、従来、エンボス法やサンドラミ法などの機械的方法、溶剤を用いたケミカルエッチングなどの化学的方法、ポリエチレンなどの異種ポリマーをブレンドないしは共重合体化したシートを延伸する方法、そして、β晶を生成させたシートを延伸する方法等が提案されている(たとえば、特許文献1など)。
粟屋裕著、高分子素材の偏光顕微鏡入門、アグネ技術センター、131頁、2001年(非特許文献1)によると、ポリプロピレン樹脂は、通常、α晶、β晶などの結晶多形を有している。β晶は、α晶に比して、密度が低く、融点も低いなど、物性上、異なる特徴を有している。溶融したポリプロピレン樹脂を、特定の温度範囲で結晶化させるとβ晶が生じ、これをβ晶の融点近傍で延伸することにより、β晶の球晶がα晶球晶に転移し、その結晶形間の密度差により、フィルム表面にミクロな凹凸加工ができる。この方法による表面粗化方法は、樹脂に添加剤などの不純物を混入させる必要がないため、電気的特性を落とすことがなく、非常にミクロな凹凸を付与させることができるという特徴を持つ。
β晶を用いた表面粗化方法では、シート作製の際、β晶をいかに制御しながら生成させるかが技術上重要な要点となる。β晶生成技術に関しては、たとえば、特許文献2〜4には、特定の触媒によって重合した一定の範囲のメルトフローレート、分子量及び分子量分布を有するポリプロピレン樹脂をシート化すると、高いβ晶比率を持ったシートが得られることを開示している。
また、特許文献5においては、粗面化した延伸ポリプロピレンフィルムを得るための方法として、特定の値の立体規則性度のポリプロピレン原料樹脂を用い、キャスト原反シートのβ晶量を、特定の値以上に制御することによって達成する製造技術が開示されている。
しかしながら、前述の様に、加工適性を向上させる上では、粗面化は必須であるが、一般的に、粗化は耐電圧特性の低下を招くというマイナス面も併せ持つ。一方、産業用コンデンサーの需要が増える中、市場では、より高耐電圧のコンデンサーの要求が非常に強く、また、合わせて電気容量のより一層の向上も求められている。
耐電圧特性の向上のためには、表面の平滑性を増す方法の他、例えば、特許文献6などによると、ポリプロピレン樹脂の高立体規則性化・高結晶性化によっても実現できる。しかしながら、高結晶性化は、延伸性の低下を招き、延伸過程におけるフィルムの破断を発生しやすくなり、製造上、好ましくない。
他方、同体積のコンデンサーにおいて、電気容量を向上させるためには、誘電体フィルムを薄くする必要がある。そのように極薄のフィルムを得るためには、樹脂及びキャスト原反シートの延伸性向上が必須となるが、この特性は、前述の様に、耐電圧性向上のための手法、つまり結晶性向上とは一般的に相容れない物性である。
以上のように、市場が要求する(1)コンデンサーへの加工適性(粗面化)、(2)高耐電圧性(面平滑化、高結晶性化)、(3)高電気容量化(フィルム極薄化のための延伸性向上)の3つの特性を同時に充たし得るコンデンサー用フィルム及びそのキャスト原反シートは、これまで得られていない状況にあった。
特開昭51−63500号公報(2〜4頁) 特開2004−2655号公報(3〜7頁) 特開2004−175932号公報(4〜8頁) 特開2005−89683号公報(5〜7頁) 特許第3508515号公報(2〜3頁) 特開平8−294962号公報(2〜3頁) 粟屋裕著、高分子素材の偏光顕微鏡入門、アグネ技術センター、131頁、2001年
したがって、本発明の目的は、高い耐電圧特性を有し、かつ非常に薄いフィルム厚である素子巻き等の加工適性に優れたコンデンサー用延伸フィルム及びそれを得るためのポリプロピレンキャスト原反シートを提供することである。
本発明は、以下の発明を包含する。
(1)ゲルパーミエーションクロマトグラフ法で測定した重量平均分子量が10万以上50万以下で、分子量分布Mw/Mnが7以上であり、逐次抽出法で測定された樹脂中の抽出残分である立体規則性成分の分率が97質量%以上であり、かつ中間的立体規則性成分の分率が0.5質量%以上2.0質量%未満であるポリプロピレン樹脂を、加熱溶融し、Tダイから押し出して作製された、X線法で調査したβ晶分率が1%以上20%未満であるキャスト原反シートを2軸延伸してなる厚さが1μm以上μm以下であることを特徴とするコンデンサーフィルム。
(2)前記ポリプロピレン樹脂は、プロピレンモノマーをスラリー重合することによって製造されているポリプロピレン樹脂である(1)記載のコンデンサーフィルム。
(3)前記プロピレンモノマーのスラリー重合は、複数の重合反応機を用いた多段重合反応である(2)項記載のコンデンサーフィルム。
(4)前記ポリプロピレン樹脂は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法で測定した重量平均分子量が20万以上40万以下である(1)項〜(3)項のいずれか1項に記載のコンデンサーフィルム。
)前記ポリプロピレン樹脂は、示差走査熱量計(DSC)法で測定した結晶化温度120℃における結晶化速度(1/t1/2)が、0.6min−1以上3min−1未満であ
るポリプロピレン樹脂である(1)項〜()項のいずれか1項に記載のコンデンサーフィルム。
本発明のポリプロピレンキャスト原反シートは、高結晶性であるため耐電圧特性に優れていると同時に、高い延伸特性を有するため、非常に薄いフィルムを作製でき、高い電気容量のコンデンサーが得られるという効果を有する。さらに、ここで得られるフィルムは、適度な微細粗化面を有するため、素子巻き等の加工適性にも優れた効果を有するものである。
本発明に用いるポリプロピレン樹脂は、結晶性のアイソタクチックポリプロピレンである樹脂であり、プロピレンの単独重合体、又は、プロピレンとエチレンないしは炭素数4〜10のα−オレフィンとの共重合体である。炭素数4〜10のα−オレフィンとしては、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセンなど一般的に良く知られたα−オレフィン類が使用可能である。エチレン及びこれらのα−オレフィンは、プロピレンとランダム共重合をなしてもよく、ブロック共重合していても良い。共重合しているエチレン及びα−オレフィンの含有比率は、ポリプロピレン樹脂中に2モル%以下であるのがよく、好ましくは1モル%以下である。
本発明に用いるポリプロピレン樹脂は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法で測定した重量平均分子量が10万以上50万以下である。好ましくは、20万以上40万以下である。さらに好ましくは、25万以上40万未満である。重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)の比から計算される分子量分布は7以上であり、7.5以上がより好ましい。重量平均分子量が50万を超えると、樹脂流動性が著しく低下し、キャスト原反シートの厚さの制御が困難となり、本発明の目的である非常に薄い延伸フィルムを幅方向に精度良く作製することが出来なくなるため、実用上好ましくない。また、重量平均分子量が10万に満たない場合、押し出し成形性には富むが、出来たシートの力学特性の低下とともに延伸性が著しく低下し、2軸延伸成形が出来なくなるという製造上の難点を生じるため、好ましくない。
本発明に係る分子量測定値を得るためのゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)装置には、特に制限はなく、ポリオレフィン類の分子量分析が可能な一般に市販されている高温型GPC装置が、例外なく利用可能であるが、本発明では、東ソー株式会社製、示差屈折計(RI)内蔵型高温GPC測定機、HLC−8121GPC−HTを用いた。GPCカラムには、東ソー株式会社製、TSKgel GMHHR−H(20)HTを3本連結させて用い、カラム温度は145℃、溶離液にはトリクロロベンゼンを用い、流速は1.0ml/minにて測定した。検量線の作製には、東ソー株式会社製の標準ポリスチレンを用い、測定結果はポリプロピレン値に換算した。
さらに本発明に用いるポリプロピレン樹脂は、前述の分子量・分子量分布の範囲の値を有すると同時に、逐次抽出法で抽出された抽出残分が97重量%以上である必要がある。逐次抽出法は、ポリプロピレン樹脂の立体規則性による分別方法の一種であるが、一般的に行われている立体機規則性分別の最も簡便な方法であるn−ヘプタンによる抽出〔この抽出残分をヘプタンインデックス(HI)ないしはアイソタクチックインデックス(II)と一般的に呼ばれている〕より詳細かつ正確であるという特徴を持つ。この方法は、沸点の異なる複数の溶媒を用いて順次抽出し、その抽出重量よりポリプロピレン樹脂の立体規則性分布を調査する。本発明では、日本分析化学・高分子分析研究懇談会編、新版高分子分析ハンドブック、紀伊国屋書店、1995年、613頁に記載の方法によって行った。
即ち、まず、ポリプロピレン樹脂を(1)キシレンに還流下充分溶解させ、その後、室温下4時間放置する。キシレンに不溶な部分をろ別し、不溶分は次の抽出に供する。可溶分は、キシレンを乾固させ、秤量する。この質量がいわゆる非晶性のアタクチック成分の質量に相当する。
キシレン不溶分は、ソックスレー脂肪抽出器を用い、(2)n−ペンタン、(3)n−ヘキサン、(4)n−ヘプタンの順に順次ソックスレー抽出を各々6時間実施する。沸点の低い溶媒では、結晶性の低い(立体規則性が低い)成分が抽出されていき、n‐ヘプタンにも不溶な成分は、立体規則性の度合いが極めて高い「アイソタクチック」成分と定義でき、最終的な抽出残分を重量比で表現することによってその割合を知ることが出来る。
一方、(2)〜(4)の溶媒で可溶な成分は、ステレオブロックと呼ばれる中間的な規則性をもったポリマーから主として構成されているとされている。
このように、逐次抽出法によって評価される立体規則性分布の割合は、いわゆるヘプタン不溶分(HI値)やII値で評価されるような単一の溶媒による抽出量評価結果とまったく異なる意味を持つ。
本発明においては、逐次抽出法で評価される:最終抽出残分率、すなわち逐次抽出法で得られるアイソタクチック成分の割合を立体規則性の一つの指標とし、この値が97質量%以上である必要がある。より好ましくは、97.5質量%以上99質量%以下である。アイソタクチック分率が97質量%以上の高い立体規則性成分を持つことで、樹脂の結晶性が向上し、高い耐電圧特性が期待される。しかし、あまり高すぎると、キャスト原反シート成形の際の固化(結晶化)の速さが早くなりすぎ、シート成形用の金属ドラムからの剥離が発生し易くなるなど製造上の難点を有するため、99質量%以下にすることがより好ましい。
本発明は、この高いアイソタクチック分率と、前出の分子量・分子量分布範囲を同時に満たす樹脂をキャスト原反シートの作製に用いることに特徴がある。即ち、立体規則性度(つまり、結晶性)の値をより高くすることによって、高い耐電圧特性を発現できるが、それだけでは、ポリプロピレン樹脂ないしはそれから得られるキャスト原反シートは、高い延伸性を持たず、非常に薄い延伸フィルムを作製できない。しかしながら、広い分子量分布を同時に併せ持つことにより、延伸性が兼ね備わる。つまり、高い立体規則性を持っていても、分子量分布Mw/Mnが7以上となる場合、いわゆる超高分子量の成分が適度に存在し、適度な延伸性を付与される。また、同時に多く含まれる低分子量成分が、一種の可塑剤的な役割を演じ、超高分子量成分の配向・移動を容易化してさらに延伸性を高める。
このように高い立体規則性と広い分子量分布を併せ持つポリプロピレン樹脂の重合方法としては、スラリー重合を少なくとも一つ以上含む態様が良い。また、少なくとも2つ以上の重合反応器を用いた多段重合反応であっても良く、また、反応器中に水素あるいはコモノマーを分子量調整剤として添加しても良い。最も好ましい態様は、複数の直列に連結したスラリー重合反応器において、各々の反応器に添加する触媒の種類や量、分子量調整剤の添加量を調整することによって、各反応器にて異なる分子量のポリプロピレン樹脂の、重合が可能になり、もって、最終的に得られる分子量分布が広くなる。重合方法をスラリー重合とすることにより、分子量及び反応の調整が容易となる。
使用される触媒は、特に限定されるものではなく、一般的に公知のチーグラー・ナッタ触媒が広く適用される。また、助触媒成分やドナーを含んでも構わない.
このようなスラリー重合によって得られた上記物性を有するポリプロピレン樹脂を170℃〜320℃、好ましくは、200℃〜300℃で加熱溶融してTダイから押し出し、70℃〜140℃、好ましくは80℃〜120℃に保持された金属ドラムで冷却、固化させると、得られるキャスト原反シートのβ晶分率は、1%以上20%未満、好ましくは、5%以上20%未満となる。なお、この値は、β晶核剤を含まない時の値である。
従来、立体規則性度を高くするに従い、延伸前のキャスト原反シートのβ晶生成は容易化され、β晶分率は高くなっていく。しかしながら、本発明においては、高いアイソタクチック成分分率(逐次抽出残分)を有しているにもかかわらず、β晶生成が抑制される傾向にある。これは、本発明に係る立体規則性度と分子量分布とのバランスによって生じている効果であると考えられる。
前述のように、低すぎるβ晶分率は、フィルム表面を平滑化するため、素子巻き等の加工適性には不利となるが、耐電圧特性は向上する。しかしながら、本発明のβ晶分率の範囲は、両物性を十分に満足させるものである。
即ち、β晶分率が1%より低いと、フィルムは平滑になりすぎ、素子巻きが出来なくなり、20%を超えると、耐電圧特性が低下する。この範囲の問であると両物性をバランスさせることが出来る。
本発明におけるβ晶分率は、X線回折強度測定によって得られ、A.Turner−Jonesetal.,Makrorno1.Chem.,75巻,134頁(1964).に記載されている方法によって算出される値であり、K値と呼ばれている値である。即ち、α晶由来の3本の回折ピークの高さの和とβ晶由来の1本の回折ピークの比によってβ晶の比率を表現したものである。
本発明では、リガク社製、X線回折装置RINT−2200を用い、CuKα線、照射出力40KV−40mA、散乱スリット1deg、受光スリット0.3mm、走査速度1deg/minの条件にて測定を行った。
本発明のもう一つの態様は、原料ポリプロピレン樹脂が、逐次抽出法で測定された樹脂中に含む中間的立体規則性成分(ステレオブロック成分)の分率が、0.5質量%以上2質量%未満であることである。
逐次抽出法については、前述の通りに日本分析化学・高分子分析研究懇談会編、新版高分子分析ハンドブック、紀伊国屋書店、1995年、613頁に記載の方法によって行った。
即ち、ポリプロピレン樹脂を(1)キシレンに還流下充分溶解させ、その後、室温下に4時間放置する。キシレンに不溶な部分をろ別し、不溶分は次の抽出に供する。つづいて、その不溶分は、ソックスレー脂肪抽出器を用い、(2)n−ペンタン、(3)n−ヘキサン、(4)n−ヘプタンの順に順次ソックスレー抽出を各々6時間実施する。(2)〜(4)の溶媒で可溶な成分が、ステレオブロックと呼ばれるポリマーから主として構成されている中間的な規則性をもった成分である。
本発明では、耐電圧特性を向上させる立体規則性度とフィルムを薄化ならしめる延伸特性との両立を中間的規則性成分(ステレオブロック成分)量の調整によっても可能であることを見出した。
つまり、耐電圧特性を向上させるが延伸性低下もさせるアイソタクチック成分と、延伸性を向上させるが耐電圧特性を低下させるアタクチック成分の相反する性質を持つ2つをバランスさせる役目を演じるのが中間的規則性成分(ステレオブロック成分)であり、その分率が、0.5質量%より多く2質量%より低い場合に、延伸性を低下させることがなく、耐電圧特性向上を図ることが可能である。
本発明のさらにもう一つは、ポリプロピレン樹脂の示差走査熱量計(DSC)法で測定した結晶化温度120℃における結晶化速度(1/t1/2)が0.6min−1以上3min−1未満であることである。ここで、結晶化速度(1/t1/2)は、結晶化に伴う発熱量を時間で積分し、その発熱量が、全体の発熱量に対して50%となる時間を、ハーフタイム(t1/2)と定義し、その逆数をとり速度として表現したものである。
1/t1/2が、3min−1より大きいと、結晶化速度が非常に速いことを意味し、ポリプロピレン樹脂が押出し機からの吐出と同時に固化をはじめ、キャスト原反シート作製のための金属ドラムへの密着不良、β晶生成の不均一化、さらには、延伸性不良まで生じ、実用上好ましくない。また、1/t1/2が、0.6min−1より遅い場合でも、金属ドラムへの密着過程でシート作製ができなかったり、β晶が生成しなかったりなどの問題を生じるため好ましくない。
結晶化速度を評価する方法としては、本発明では、示差走査熱量計(DSC)法を採用した。DSCには、熱流束型DSC、入力補償型DSCなど、いくつかの熱量検出方式があり、いずれも特に制限なく利用可能であるが、昇降温が非常に高速で行うことが出来る入力補償型DSCが好適である。DSCのメーカー、型式などには、特に制限されないが、本発明の検討には、パーキン・エルマー社製、Diamond DSCを用いた。
本装置による結晶化速度測定の条件は、以下の通りである。まず、ポリプロピレン樹脂を5mg秤りとり、アルミニウム製のサンプルホルダーに詰め、DSC装置にセットし、230℃まで昇温、5分間融解させる。その後、100℃/minの速度で、結晶化温度120℃まで急冷し、同温度で保持し、発熱量の変化を測定した。サンプル温度が120℃±0.1℃に達した時点を時間t=0分とし、時間tに対する発熱量の積分を測定した。前述のとおりその発熱量が、全体の発熱量に対して50%となる時間の逆数をとり結晶化速度とした。
本発明において、ポリプロピレン樹脂を原料としてシート又はフィルムなどを成形する場合、ポリプロピレン樹脂には、必要に応じて、他の樹脂などを本発明の効果を損なわない範囲内で添加しても構わない。前記の他の樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリ(1−ブテン)、ポリイソブテン、ポリ(1−ペンテン)、ポリ(1−メチルペンテン)などのポリα−オレフィン、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、エチレン−ブテン共重合体などの、α−オレフィン同士の共重合体、スチレン−ブタジエンランダム共重合体などのビニル単量体−ジエン単量体ランダム共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体などのビニル単量体−ジエン単量体−ビニル単量体ランダム共重合体などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
他の樹脂の添加量は添加する樹脂の種類にもより異なるが、前述のように本発明の効果が損なわない範囲であれば良く、一般的に、通常の場合、ポリプロピレン樹脂100質量部に対して10質量部以下、好ましくは5質量部以下であるのが良い。
また、本発明において、ポリプロピレン樹脂を原料としたキャスト原反シートあるいは延伸フィルムを成形する場合、樹脂中に必要に応じて酸化防止剤、紫外線吸収剤、塩酸吸収剤などの安定化剤、滑剤、可塑剤、難燃化剤、帯電防止剤などの添加剤を本発明の効果を損なわない範囲であれば添加しても良い。
本発明に係る前述のポリプロピレン樹脂を原料として用いると、キャスト原反シート成形過程において、β晶を1%〜20%未満の範囲で、過度の粗面化を発生させることなく、適度に発生させることが出来るため、高い耐電圧特性を有するコンデンサーフィルム用キャスト原反シートに好ましく使用できる。
本発明のポリプロピレンキャスト原反シートを成形する方法としては、公知の各種方法が制限なく採用することが出来る。例えば、前述のポリプロピレン樹脂からなる原料ペレット類を押出機に供給し、加熱溶融し、ろ過フィルターを通した後、170℃〜320℃、好ましくは、200℃〜300℃で加熱溶融してTダイから溶融押し出し、70℃〜140℃に保持された少なくとも1個以上の金属ドラムで、冷却、固化させ、未延伸のキャスト原反シートを成形する方法を採用できる。ただし、2個回以降の金属ドラムの温度はこの温度範囲にとらわれるものではない。
このシート成形の際に、金属ドラム群中の少なくとも1個目の温度(金属ドラム1個の場合はその温度)を、70℃〜140℃、好ましくは80℃〜120℃に保持することにより、得られるキャスト原反シートのβ晶分率は、1%以上20%未満とすることができる。ただし、2個目以降の金属ドラムの温度はこの温度範囲にとらわれるものではない。なお、この値は、β晶核剤を含まない時の値である。これらキャスト原反シートの厚さには、特に制限はないが、通常0.05mm〜2mm、好ましくは、0.1mm〜1mmであるのが望ましい。
本発明のポリプロピレンキャスト原反シートは、延伸処理を行い延伸フィルムとすることができる。延伸は、縦及び横に2軸に配向せしめる2軸延伸が良く、延伸方法としては、逐次2軸延伸方法が好ましい。逐次2軸延伸方法としては、まずキャスト原反シートを100〜160℃の温度に保ち、速度差を設けたロール問に通して、流れ方向に3〜7倍に延伸し、直ちに室温に冷却する。引き続き、当該延伸フィルムをテンターに導いて、160℃以上の温度で幅方向に3〜11倍に延伸した後、緩和、熱固定を施し巻き取る。
この延伸工程によって、機械的強度、剛性優れたフィルムとなり、また、表面の凹凸もより明確化され、微細に粗面化された延伸フィルムとなる。
本発明のキャスト原反シートは、きわめて延伸性に優れているため、非常に薄い延伸フィルムを得ることができる、延伸フィルムの厚さは、1μm以上7μm以下、好ましくは1μm以上4μm以下である。この延伸フィルムは、表面が微細に粗面化されているため、素子巻き適性に優れており、耐電圧特性も高く、非常に薄いフィルムであるため高い電気容量も発現し易いため、コンデンサー用延伸フィルムとして極めて好適である。
本発明のコンデンサー用延伸フィルムにおいて、金属蒸着加工工程における接着特性を高める目的で、延伸・熱固定工程終了後に、オンラインもしくはオフラインにて、コロナ放電処理を行っても構わない。コロナ放電処理は一般に公知の方法を問題なく用いることができるが、処理をする際に雰囲気ガスとして、空気、炭酸ガス、窒素ガス、及びこれらの混合ガス中で処理することが望ましい。
次に、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、もちろん本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。また、特に断らない限り、例中の部及び%はそれぞれ「質量部」及び「質量%」を示す。
〔特性値の測定方法ならびに効果の評価方法〕
実施例における特性値の測定方法ならびに効果の評価方法はつぎのとおりである。
(1)重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)測定
GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用い、以下の条件で測定した。
測定機:東ソー株式会社製、示差屈折計(RI)内蔵高温GPC、
HLC−8121GPC−HT型
カラム:東ソー株式会社製、TSKgelGMHHR−H(20)HTを3本連結
カラム温度:145℃、
溶離液:トリクロロベンゼン
流速:1.0ml/min
検量線の作製には、東ソー株式会社製の標準ポリスチレンを用い、測定結果はポリプロピレン値に換算した。
(2)逐次抽出法による立体規則性分布測定
ポリプロピレン樹脂を(1)キシレンに還流下充分溶解させ、その後、室温下4時間放置した。キシレンに不溶な部分をろ別し、不溶分は次の抽出に供した。可溶分は、キシレンを乾固させ、秤量した。この質量をアタクチック成分量とした。キシレン不溶分は、ソックスレー脂肪抽出器を用い、(2)n−ペンタン、(3)n−ヘキサン、(4)n−ヘプタンの順に順次ソックスレー抽出を各々6時間実施した。n−ヘプタンにも不溶な最終的な抽出残分を秤量し、この質量をアイソタクチック成分量とした。一方、(2)〜(4)の溶媒で可溶な成分を秤量し、これをステレオプロック成分とした。各々の成分の質量をキシレンに溶解前の樹脂質量に対する百分率比で表現した。
(3)結晶化速度測定(1/tl/2
ポリプロピレン樹脂の結晶化速度(1/t1/2)は、パーキン・エルマー社製、入力補償型DSC Diamond DSCを用い、以下の手順により結晶化温度120℃における発熱量変化を測定することにより算出した。
まず、ポリプロピレン樹脂ペレットを5mg秤りとり、アルミニウム製のサンプルポルダーに詰め、DSC装置にセットし、230℃まで昇温、5分間融解させる。その後、100℃/minの速度で、結晶化温度120℃まで急冷し、同温度で保持し、発熱量の変化を測定した。サンプル温度が120℃±0.1℃に達した時点を時間t=0分とし、時間tに対する発熱量の積分を測定した。前述の通りその発熱量が、全体の発熱量に対して50%となる時間の逆数をとり結晶化速度1/t1/2とした。
(4)β晶分率測定
キャスト原反シートのβ晶分率は、X線回折強度測定によって求められるK値を用いて評価した。
X線回折強度測定条件は次のとおり行った。
測定装置:リガク社製、X線回折装置RINT−2200
X線源:CuKα線
照射出:40KV−40mA
散乱スリットldeg
受光スリット0.3mm
走査速度1deg/min
K値は、得られた強度曲線から、以下の式を用い、α晶由来の3本の回折ピークの高さ
の和とβ晶由来の1本の回折ピークの比によって算出した。
Figure 0004784279
〔ただし、Hβはβ晶(2θ=16deg)の結晶性回折に対応するピークの強度(高さ)、HαI、はα晶(110)面の結晶性回折に対応するピークの強度(高さ)、HαIIはα晶(040)面の結晶性回折に対応するピークの強度(高さ)、HαIIIはα晶(130)面の結晶性回折に対応するピークの強度(高さ)である。ただし、いずれも非晶性散乱を差し引いた後の強度(高さ)を用いた。〕
(5)フィルム厚の評価
二軸延伸フィルムの厚さは、マイクロメーター(JIS−B7502)を用いて、JIS−C2330に準拠して測定した。
(6)フィルムの微細粗面化度(ヘーズ)の評価
二軸延伸フィルム表面の微細粗化度は、JIS−C2330に準じて、へーズ値を用いることにより評価した。透明フィルムにおいては、へーズ度は、表面における光の散乱に起因して変化しているので、フィルム表面の粗化状態を間接的に、評価しえるものと判断した。
(7)耐電圧性の評価
二軸延伸フィルムの耐電圧性は、JIS−C2151及びJIS−C2330に準じて評価した。ここでは、測定された電圧値を、フィルムの厚みで割ったものを、絶縁破壊電圧値として評価に用いた。
(8)コンデンサー用二軸用延伸フィルムとしての総合評価
電気容量向上に必要なフィルムを薄化できるか否か、素子巻き加工に必要な表面の微細粗化が可能か否か、かつ、耐電圧特性を向上させることができるか否かのそれぞれを評価し、コンデンサー用フィルムとしての好適性の総合評価とした。評価基準は、従来技術に基づくフィルムより向上したものを「○」、従来と変わらないものを「△」、コンデンサーフィルムとして適さないものを「×」とした。
〔実施例1〕
スラリー重合により得られた重量平均分子量(Mw)3.7×10、分子量分布(Mw/Mn)7.9、アイソタクチック成分分率が97.8%であり、ステレオブロック成分分率が1.3%であるポリプロピレン樹脂ペレットを押出機に供給して、樹脂温度280℃の温度で溶融し、Tダイを用いて押出し、表面温度を90℃に保持した金属ドラムに巻きつけて固化させ、厚さ約200μmのキャスト原反シートを作製した。押出し成形前のポリプロピレン樹脂ペレットの結晶化速度を評価したところ、0.9min−1であった。また、作製したキャスト原反シートのβ晶分率(K値)は、12%であった。
引き続きこの未延伸キャスト原反シートを130℃の温度で、流れ方向に5倍に延伸し、直ちに室温まで冷却した後、テンターにて160℃の温度で横方向に10倍に延伸して、厚さ4.0μmの薄い二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。微細粗面化状態をヘーズ値で評価したところ、3.7%と適度に粗化されており、素子巻き加工に好適と判断された。また、絶縁破壊電圧は、0.51kV/μmと高い耐電圧特性を得ることができた。表1に樹脂及びキャスト原反シートの物性値ならびに作製した二軸延伸フィルムの評価結果をまとめて示した。
〔実施例2〕
スラリー重合により得られた重量平均分子量(Mw)3.6×10、分子量分布(Mw/Mn)8.2、アイソタクチック成分分率が97.8%であり、ステレオブロック成分分率が1.3%であるポリプロピレン樹脂ペレットから実施例1と同様にして、厚さ約150μmのキャスト原反シートを作製した。押出し成形前のポリプロピレン樹脂ペレットの結晶化速度を評価したところ、0.8min−1であった。また、作製したキャスト原反シートのβ晶分率(K値)は、14%であった。
この未延伸キャスト原反シートを実施例1と同様に延伸して、厚さ3.0μmの薄い二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。微細粗面化状態をヘーズ値で評価したところ、3.9%と適度に粗化されており、素子巻き加工に好適と判断された。また、絶縁破壊電圧は、0.62kV/μmと高い耐電圧特性を得ることができた。表1に樹脂及びキャスト原反シートの物性値ならびに作製した二軸延伸フィルムの評価結果をまとめて示した。
〔実施例3〕
スラリー重合により得られた重量平均分子量(Mw)2.9×10、分子量分布(Mw/Mn)7.1、アイソタクチック成分分率が97.2%であり、ステレオブロック成分分率が0.9%であるポリプロピレン樹脂ペレットから実施例1と同様にして、厚さ約140μmのキャスト原反シートを作製した。押出し成形前のポリプロピレン樹脂ペレットの結晶化速度を評価したところ、1.1min−1であった。また、作製したキャスト原反シートのβ晶分率(K値)は、9%であった。
この未延伸キャスト原反シートを実施例1と同様に延伸して、厚さ2.8μmの薄い二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。ヘーズ値は、3.1%であり、素子巻き加工に好適と判断された。また、絶縁破壊電圧は、0.49kV/μmと高い耐電圧特性を示した。表1に樹脂及びキャスト原反シートの物性値ならびに作製した二軸延伸フィルムの評価結果をまとめて示した。
〔実施例4〕
キャスト原反シートを成形する際の金属ドラムの表面温度を120℃に設定した以外は実施例1と同様にして未延伸シートを得た。そのシートのβ晶分率(K値)は、17%であった。この未延伸キャスト原反シートから実施例1と同様にして、厚さ4.0μmの薄い二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。ヘーズ値は、4.1%と適度に粗化されており、素子巻き加工に好適と判断された。また、絶縁破壊電圧は、0.50kV/μmと高い耐電圧特性を示した。表1に樹脂及びキャスト原反シートの物性値ならびに作製した二軸延伸フィルムの評価結果をまとめて示した。
〔比較例1〕
気相重合により得られた重量平均分子量(Mw)3.5×10、分子量分布(Mw/Mn)7.0、アイソタクチック成分分率が93.7%であり、ステレオブロック成分分率が4.7%であるポリプロピレン樹脂ペレットから実施例1と同様にして、厚さ約150μmのキャスト原反シートを作製した。押出し成形前のポリプロピレン樹脂ペレットの結晶化速度は、0.4min−1。また、作製したキャスト原反シートのβ晶分率(K値)は、21%であった。
この未延伸キャスト原反シートを実施例1と同様に延伸して、厚さ3.0μmの薄い二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。微細粗面化状態をヘーズ値で評価したところ、7.8%と粗化が進んでおり、素子巻き加工には好適と判断された。しかし、絶縁破壊電圧は、0.28kV/μmと従来程度の耐電圧特性しか得ることができなかった。表1に樹脂及びキャスト原反シートの物性値ならびに作製した二軸延伸フィルムの評価結果をまとめて示した。
〔比較列2〕
塊状重合により得られた重量平均分子量(Mw)2.5×10、分子量分布(Mw/Mn)4.4、アイソタクチック成分分率が97.1%であり、ステレオブロック成分分
率が1.4%であるポリプロピレン樹脂ペレットから実施例1と同様にして、厚さ約200μmのキャスト原反シートを作製した。押出し成形前のポリプロピレン樹脂ペレットの結晶化速度は、0.9min−1。また、作製したキャスト原反シートのβ晶分率(K値)は、28%であった。
この未延伸キャスト原反シートを実施例1と同様にして延伸を行ったが、延伸工程で破
断が続発し、厚さ7μm以下の薄い二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得ることができなかった。表1に樹脂及びキャスト原反シートの物性値を記す。
〔比較列3〕
塊状重合により得られた重量平均分子量(Mw)3.1×10、分子量分布(Mw/Mn)4.6、アイソタクチック成分分率が95.7%であり、ステレオブロック成分分率が2.4%であるポリプロピレン樹脂ペレットから実施例1と同様にして、厚さ約200μmのキャスト原反シートを作製した。押出し成形前のポリプロピレン樹脂ペレットの結晶化速度は、0.5min−1であった。また、作製したキャスト原反シートのβ晶分率(K値)は、25%であった。
この未延伸キャスト原反シートを実施例!と同様に延伸して、厚さ4.0μmの薄い二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。ヘーズ値は、4.7%と適度に粗化されており、素子巻き加工に好適と判断された。しかし、絶縁破壊電圧は、0.32kV/μmと従来程度の耐電圧特性しか得ることができなかった。表1に樹脂及びキャスト原反シートの物性値ならびに作製した二軸延伸フィルムの評価結果をまとめて示した。
〔比較例4〕
キャスト原反シートを成形する際の金属ドラムの表面温度を30℃に設定した以外は実施例1と同様にして未延伸シートを得た。そのシートのβ晶分率(K値)は、0%であった。この未延伸キャスト原反シートを実施例1と同様にして、厚さ4.0μmの薄い二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。へ一ズ値は、0.1%とほとんど粗面化されておらず、素子巻き加工に不適と判断された。しかし、絶縁破壊電圧は、0.56kV/μmと高い耐電圧特性を示した。表1に樹脂及びキャスト原反シートの物性値ならびに作製した二軸延伸フィルムの評価結果をまとめて示した。
〔比較例5〕
キャスト原反シートを成形する際の金属ドラムの表面温度を70℃に設定した以外は比較例3と同様にして未延伸シートを得た。そのシートのβ晶分率(K値)は、15%であった。
この未延伸キャスト原反シートを実施例1と同様に延伸して、厚さ4.0μmの薄い二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。ヘーズ値は、3.9%と適度に粗化されており、素子巻き加工に好適と判断された。しかし、絶縁破壊電圧は、0.39kV/μmと従来程度の耐電圧特性しか得ることができなかった。表1に樹脂及びキャスト原反シートの物性値ならびに作製した二軸延伸フィルムの評価結果をまとめて示した。
〔参考実施例1〕
キャスト原反シートを成形する際の金属ドラムの表面温度条件やキャストスピードを調整して、シートのβ晶分率が最も高くなるようにキャスト原反シートを作製した。キャスト条件以外は、実施例1と同様にして未延伸シートを得た。そのシートのβ晶分率(K値)は、20%であった。
この未延伸キャスト原反シートを実施例1と同様に延伸して、厚さ4.0μmの薄い二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。ヘーズ値は、4.5%とであり、素子巻き加工には好適と判断され、絶縁破壊電圧は、0.48kV/μmと高い耐電圧特性を得た。表1に樹脂及びキャスト原反シートの物性値ならびに作製した二軸延伸フィルムの評価結果をまとめて示した。
Figure 0004784279
実施例1〜3から、スラリー重合によって得られ、規定の重量平均分子量と広い分子量分布を持つと同時に高いアイソタクチック成分分率を有するポリプロピレン樹脂を、シートに製膜すると、過度のβ晶を生成せず、適度な微細粗化性を持ち、加工適性に優れたキャスト原反シートが得られるものと判断される。また、このキャスト原反シートは、延伸特性にきわめて優れているため、非常に薄い二軸延伸フィルムを得ることができる。さらに、同時に、高い耐電圧特性を有していることも判明した。
また、キャスト原反シートを作製する際の金属ドラム温度を変更してみたが(実施例4)前記温度範囲内であれば、発明の効果に変わりはないことが示された。
一方、分子量・分子量分布及びアイソタクチック成分分率が、本発明の範囲外にあるポリプロピレン樹脂を用いたキャスト原反シートの場合、素子巻き等の加工適性に優れた微細粗化面を有すると同時に高い耐電圧特性を有した非常に薄いフィルム厚の二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得ることができなかった(比較例1〜3)。
さらに、本発明規定の重量平均分子量・分子量分布、アイソタクチック成分分率を有するポリプロピレン樹脂を用いていても、キャストの際の金属ドラムの温度条件を、通常の一般に良く知られた、例えば、包装資材向け延伸フィルム等の作製条件と同じ条件で作製すると、規定のβ晶分率を得ることができず、コンデンサー用のポリプロピレン延伸フィルムとしては好ましい本発明の効果を得ることができなかった(比較例4)。
また、分子量・分子量分布及びアイソタクチック成分分率が、本発明の範囲外にあるポリプロピレン樹脂を用いて、キャスト条件をコントロールし、β晶分率が本発明の範囲内になるよう作製したシートは、へ一ズ値が下がり表面が平滑化したものの、耐電圧特性はさほど向上せず従来の範囲内に留まり、コンデンサー用のポリプロピレン延伸フィルムとしては好ましい性能の向上を得ることができなかった(比較例5)。
本発明が規定する重量平均分子量・分子量分布、アイソタクチック成分分率を有するポリプロピレン樹脂を用いると、最も高いβ晶分率を得るようにキャスト条件をコントロールしても、キャスト原反シートのβ晶分率は20%を大きく超えることは無く、コンデンサー用のポリプロピレン延伸フィルムとしては好ましい表面粗化状態を得ることができた(参考実施例1)。
分子量、分子量分布、アイソタクチック成分分率、及び結晶化速度が本発明の規定の範囲内にあるポリプロピレン樹脂から作製された適度なβ晶分率を有するキャスト原反シートは、素子巻き等の加工適性に優れた微細粗化面を持ちつつ、かつ、高い耐電圧特性を有した非常に薄いフィルム厚の二軸延伸フィルムを作製することが可能であり、コンデンサー用フィルムとして極めて好適である。

Claims (5)

  1. ゲルパーミエーションクロマトグラフ法で測定した重量平均分子量が10万以上50万以下で、分子量分布Mw/Mnが7以上であり、逐次抽出法で測定された樹脂中の抽出残分である立体規則性成分の分率が97質量%以上であり、かつ中間的立体規則性成分の分率が0.5質量%以上2.0質量%未満であるポリプロピレン樹脂を、加熱溶融し、Tダイから押し出して作製された、X線法で調査したβ晶分率が1%以上20%未満であるキャスト原反シートを2軸延伸してなる厚さが1μm以上μm以下であることを特徴とするコンデンサーフィルム。
  2. 前記ポリプロピレン樹脂は、プロピレンモノマーをスラリー重合することによって製造されているポリプロピレン樹脂である請求項1記載のコンデンサーフィルム。
  3. 前記プロピレンモノマーのスラリー重合は、複数の重合反応機を用いた多段重合反応である請求項2記載のコンデンサーフィルム。
  4. 前記ポリプロピレン樹脂は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法で測定した重量平均分子量が20万以上40万以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載のコンデンサーフィルム。
  5. 前記ポリプロピレン樹脂は、示差走査熱量計(DSC)法で測定した結晶化温度120℃における結晶化速度(1/t1/2)が、0.6min−1以上3min−1未満であるポリプロピレン樹脂である請求項1〜4のいずれか1項に記載のコンデンサーフィルム。
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