JP4783515B2 - ストッパ手段付きキャスタ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ストッパ手段付きキャスタ、さらに詳しくは、車輪の接地面(外周面)近くの側面に特定の部材を押し付け可能とすることによって車輪の回転を止めるようにしたストッパ手段付きキャスタに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、台車、カート、機器・装置、コンテナボックス、ベッド、机、椅子、ラック、ワゴンをはじめとする種々の可搬物の接地部分には、移動を容易にするためにキャスタが取り付けられている。
【0003】
キャスタは、一般的に、取付台盤、下部台盤、支持ヨーク、軸、車輪などの部材で構成される。この場合、キャスタを前進させるときに車輪が自然に前進方向に向くように、支持ヨークのキャスタ前進側(前面側)は側面視で斜辺に、後方側(後面側)は側面視でほぼ垂直線となるように形成して、支持ヨークの下端側に軸支する軸を、取付台盤および下部台盤の中心線よりも後方に位置させるのが通常である。
【0004】
キャスタには、用途にもよるが、走行移動時以外は車輪が回転しないようにロックないしストッパ機構を設けることが多い。このようなロックないしストッパ機構としては、(イ)車輪の回転を止めるもの、(ロ)支持ヨークの旋回を止めるもの、(ハ)支持ヨークの旋回と車輪の回転との双方を止めるもの、がある。車輪の回転を止めるときには、車輪の接地面となる外周面に制動部材を当接させることが多い。
【0005】
いくつかを例示すると、たとえば、特開平11−321208号公報には、車輪の回転および支持ヨークの旋回を同時に制御するだけでなく、支持ヨークの旋回のみを止めて直線走行のみを可能とする機構を備えたブレーキ装置付きキャスタが示されている。
【0006】
特開平9−76704号公報には、ヨークの向きに関係なく制動操作レバーの位置が一定となるようにして、制動操作レバーの操作を容易に行うことができるようにしたロック機構付きキャスタが示されている。
【0007】
特開平6−16002号公報には、フレームの旋回および車輪の回転を同時に制動することのできるキャスタの制動機構が示されている。
【0008】
実公平8−5842号公報には、車輪の回転およびキャスタの回転を同時にロックし、またはキャスタの回転のみを選択的にロックすることができるブレーキ装置付きキャスタが示されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のロックないしストッパ機構を備えたキャスタは、一般に部品点数が多い上、構造が複雑となることが多く、コスト高の原因や故障の原因となっている。また、制動機構を付加するために、キャスタそのものを大幅に変更しなければならず、既存のキャスタを利用しがたいという問題点も有している。
【0010】
本発明は、このような背景下において、車輪の接地面(外周面)近くの側面に特定の制動部材をワンタッチで押し付ける方式を採用することにより、車輪の回転を確実に止めることができ、制動解除も容易で、全体はシンプルであり、しかも既存のキャスタに若干の工夫を講じるだけで作製することができるストッパ手段付きキャスタを提供することを目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明のストッパ手段付きキャスタは、取付台盤(1)と、下部台盤(2)と、それらの台盤(1),(2)に対し回転自在に設けられた支持ヨーク(3)と、その支持ヨーク(3)の分岐片(31),(31)の下端側間に軸支した軸(4)と、その軸(4)に装着した車輪(5)とで構成されたキャスタにおいて、
足踏み部(61a)と2片の脚部(61b),(61b)とからなる門形アーム部(61)と、それぞれの脚部(61b)の基端側から該脚部(61b)との間でL字形が形成されるように延設された2片の延設片(62),(62)とからなるペダル型操作部材(6)を、支持ヨーク(3)の両分岐片(31),(31)を挟むように、かつその門形アーム部(61)の足踏み部(61a)側が支持ヨーク(3)の前面側に位置するように、軸(4)に軸支すること、
前記ペダル型操作部材(6)の延設片(62),(62)の内側の面は、足踏み部(61a)を踏み込んでペダル型操作部材(6)を軸(4)周りに回動させたときに、支持ヨーク(3)の分岐片(31),(31)の外面との間隔が狭くなるようなテーパー面に形成してあること、
前記支持ヨーク(3)の分岐片(31),(31)の後面側の分岐基部側の位置に貫通孔(h),(h)を設けると共に、その貫通孔(h),(h)を通して、リベット(7),(7)を車輪(5)の接地面近くの側面方向に向けてスライド可能に挿通設置すること、
もって、足踏み部(61a)を踏み込んで延設片(62),(62)を回動させたときに、その延設片(62),(62)のテーパー面により前記リベット(7),(7)の頭部に押圧力が加わって、該リベット(7),(7)が車輪(5)の接地面近くの側面の方向にスライド移動した後、該リベット(7),(7)の頭部とは反対側の端部が車輪(5)の接地面近くの側面に当接して車輪(5)がロックされるようにしてあること、
を特徴とするものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下本発明を詳細に説明する。
【0013】
〈キャスタの基本構成〉
キャスタは、従来のキャスタと同様に、取付台盤(1)と、下部台盤(2)と、それらの台盤(1),(2)に対し回転自在に設けられた支持ヨーク(3)と、その支持ヨーク(3)の分岐片(31),(31)の下端側間に軸支した軸(4)と、その軸(4)に装着した車輪(5)とで構成される。
【0014】
本発明のキャスタは、従来のキャスタと基本の構成が変わらないので、既存のキャスタを利用できるのである。
【0015】
〈改良点〉
本発明においては、以下に述べるように、上記従来のキャスタの基本構成に、ベダル型操作部材(6)およびリベット(7),(7)を取り付けるという2つの工夫を講じる。
【0016】
〈ペダル型操作部材(6)〉
ペダル型操作部材(6)は、足踏み部(61a)と2片の脚部(61b),(61b)とからなる門形アーム部(61)と、それぞれの脚部(61b)の基端側から該脚部(61b)との間でL字形が形成されるように延設された2片の延設片(62),(62)とからなる。
【0017】
そしてこのペダル型操作部材(6)を、支持ヨーク(3)の両分岐片(31),(31)を挟むように、かつその門形アーム部(61)の足踏み部(61a)側が支持ヨーク(3)の前面側に位置するように、軸(4)に軸支する。そのため、軸(4)は従来のキャスタのそれよりも若干長いものを用いることになる。
【0018】
支持ヨーク(3)の前面側とは、キャスタ前進側の面を言うものとし、通常は側面視で斜辺(またはカーブした斜辺)に形成されている。一方、支持ヨーク(3)の後面側とは、キャスタ前進側とは反対の後方側を言い、通常は側面視で概ね垂直線となるように形成されている。
【0019】
上記ペダル型操作部材(6)の延設片(62),(62)の内側の面は、足踏み部(61a)を踏み込んでペダル型操作部材(6)を軸(4)周りに回動させたときに、支持ヨーク(3)の分岐片(31),(31)の外面との間隔が狭くなるようなテーパー面に形成する。テーパー面の角度は、9〜12°程度とすることが好ましい。なおテーパー面とする部分は、延設片(62),(62)の遊端側の部分だけで足りる。
【0020】
〈リベット(7),(7)〉
上記の支持ヨーク(3)の分岐片(31),(31)の後面側の分岐基部側の位置には、貫通孔(h),(h)を設けると共に、その貫通孔(h),(h)を通して、リベット(7),(7)を車輪(5)の接地面近くの側面方向に向けてスライド可能に挿通設置する。
【0021】
リベット(7)の頭部は、ペダル型操作部材(6)の延設片(62),(62)の内側のテーパー面との接触によりリベット(7)が円滑にスライドするように、半球頭状に形成することが望ましい。
【0022】
〈ペダル型操作部材(6)とリベット(7),(7)との協同作用〉
ペダル型操作部材(6)とリベット(7),(7)とを上述のように構成したため、足踏み部(61a)を踏み込んで延設片(62),(62)を回動させると、その延設片(62),(62)のテーパー面によりリベット(7),(7)の頭部に押圧力が加わって、該リベット(7),(7)が車輪(5)の接地面近くの側面方向にスライド移動する。
【0023】
その結果、リベット(7),(7)の頭部とは反対側の端部が車輪(5)の接地面(外周面)近くの側面に接当し、車輪(5)がロックされる。
【0024】
ロックの解除は、ペダル型操作部材(6)の足踏み部(61a)を持ち上げればよい。これにより、リベット(7),(7)が車輪(5)からわずかに離れるので、もはや車輪(5)の回転の支障にはならない。この持ち上げ操作は、足の爪先で行うことができ、場合により手で行ってもよい。
【0025】
【実施例】
次に実施例をあげて本発明をさらに説明する。
【0026】
実施例1
図1は本発明のストッパ手段付きキャスタの一例を示した側面図である。
図2は図1のキャスタの背面図である。
図3は図1のキャスタの底面図である。
図4は図1のキャスタの平面図である。
【0027】
図5は図1のストッパ手段付きキャスタの取付台盤(1)、下部台盤(2)、支持ヨーク(3)の部分の縦断面図である。
図6は支持ヨーク(3)の縦断面図である。
【0028】
図7は図1のキャスタのペダル型操作部材(6)の側面図である。
図8は図7のペダル型操作部材(6)の平面図である。
図9は図7のペダル型操作部材(6)の底面図である。
【0029】
図10は本発明の操作および作用を示した説明図である。
【0030】
〈キャスタの基本構成〉
図1〜6において、取付台盤(1)は、支持ヨーク(3)を介在させた状態で、下部台盤(2)との間で、ボルト(8)、ナット(9)およびワッシャ(10)により締結固定してある。
【0031】
支持ヨーク(3)は、その上部が取付台盤(1)と下部台盤(2)とで挟まれた状態で、ベアリング(11)により回転自在となっている。
【0032】
支持ヨーク(3)の下部側は2股に別れ、その別れた片が分岐片(31),(31)を構成している。この実施例では、支持ヨーク(3)はちょうど竹を斜めに切断したようになっており、その前面側は側面視で斜辺に形成してある。支持ヨーク(3)の後面側は、後方から見た場合に門形となるように形成してあり、その後面は側面視でほぼ垂直線となるようにしてある。
【0033】
支持ヨーク(3)の分岐片(31),(31)の下端側間には、軸(4)が軸支してある。そしてその軸(4)には、車輪(5)が装着してある。
【0034】
上記各部材のうち、取付台盤(1)、下部台盤(2)、支持ヨーク(3)は、通常、ABS樹脂、ポリアミド系樹脂をはじめとするプラスチックスの射出成形品(大型の場合は繊維補強プラスチックスやウイスカー補強プラスチックスとすることもある)で構成されるが、金属製とすることもある。
【0035】
〈ペダル型操作部材(6) 〉
図1〜3および図7〜9に示したように、ペダル型操作部材(6)は、門形アーム部(61)と2片の延設片(62),(62)との一体成形物からなる。
【0036】
このうち門形アーム部(61)は、足踏み部(61a)と2片の脚部(61b),(61b)とからなる。延設片(62),(62)は、それぞれの脚部(61b)の基端側から該脚部(61b)との間でL字形が形成されるように延設される。脚部(61b)−延設片(62)のなす角度は、この実施例ではほぼ90°としてある。
【0037】
このペダル型操作部材(6)は、支持ヨーク(3)の両分岐片(31),(31)を挟むように、かつその門形アーム部(61)の足踏み部(61a)側が支持ヨーク(3)の前面側に位置するように、軸(4)に軸支してある。
【0038】
このようにペダル型操作部材(6)を、軸(4)の部分に軸支するため、キャスタとして従来市販されている標準品を用いる場合には、軸(4)は従来のキャスタのそれよりも若干長いものを用いることになる。
【0039】
上記ペダル型操作部材(6)の延設片(62)、(62)の遊端側の内側の面は、足踏み部(61a)を踏み込んでペダル型操作部材(6)を軸(4)周りに回動させたときに、支持ヨーク(3)の分岐片(31),(31)の外面との間隔が狭くなるようなテーパー面に形成してある(図8参照)。テーパー面の角度θは、この実施例では11°にしてある。
【0040】
〈リベット(7),(7)〉
上記の支持ヨーク(3)の分岐片(31)、(31)の後面側の分岐基部側の位置には貫通孔(h),(h)を設けてあり、その貫通孔(h),(h)を通して、リベット(7),(7)を車輪(5)の接地面近くの側面方向に向けてスライド可能に挿通してある。リベット(7)の頭部は、半球頭状に形成してある。
【0041】
〈操作および作用〉
ペダル型操作部材(6)の足踏み部(61a)を踏み込んで延設片(62),(62)を回動させると、ペダル型操作部材(6)は、軸(4)周りに回動して図10の(イ)の姿勢から(ロ)に姿勢に移行し、延設片(62),(62)のテーパー面によりリベット(7),(7)の頭部に押圧力が加わる。その結果、リベット(7),(7)が車輪(5)の接地面近くの側面方向にスライド移動し、リベット(7),(7)の頭部とは反対側の端部が、車輪(5)の接地面(外周面)近くの側面に接当し、車輪(5)がロックされる。
【0042】
ペダル型操作部材(6)の足踏み部(61a)を、たとえば足の爪先で持ち上げれば、ペダル型操作部材(6)が図10の(ロ)の姿勢から(イ)に姿勢に戻る結果、リベット(7),(7)の端部が車輪(5)からわずかに離れ、ロック解除状態になる。
【0043】
【発明の効果】
本発明においては、上記従来のキャスタの基本構成に、ペダル型操作部材(6)およびリベット(7),(7)を取り付けるという2つの工夫を講じてある。これにより、車輪(5)のロックをワンタッチで行うことができ、ロック解除もワンタッチで行うことができる。そしてこのときのロックは、車輪(5)の接地面(外周面)近くの側面への接当により行うので、車輪(5)の接地面を損傷することがなく、キャスタの寿命が長くなる。
【0044】
本発明によれば、既存の標準的なキャスタをそのまま利用することができ、ただ、ペダル型操作部材(6)およびリベット(7),(7)を取り付けるだけでよいので、コスト高となることを抑制でき、しかも全体がシンプルであるので、故障の要因が極めて少ない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のストッパ手段付きキャスタの一例を示した側面図である。
【図2】 図1のキャスタの背面図である。
【図3】 図1のキャスタの底面図である。
【図4】 図1のキャスタの平面図である。
【図5】 図1のストッパ手段付きキャスタの取付台盤(1)、下部台盤(2)、支持ヨーク(3)の部分の縦断面図である。
【図6】 支持ヨーク(3)の縦断面図である。
【図7】 図1のキャスタのペダル型操作部材(6)の側面図である。
【図8】 図7のペダル型操作部材(6)の平面図である。
【図9】 図7のペダル型操作部材(6)の底面図である。
【図10】 本発明の操作および作用を示した説明図である。
【符号の説明】
(1)…取付台盤、
(2)…下部台盤、
(3)…支持ヨーク、
(31)…分岐片、(h)…貫通孔、
(4)…軸、
(5)…車輪、
(6)…ペダル型操作部材、
(61)…門形アーム部、
(61a)…足踏み部、(61b)…脚部、
(62)…延設片、
(7)…リベット、
(8)…ボルト、
(9)…ナット、
(10)…ワッシャ、
(11)…ベアリング
Claims (2)
- 取付台盤(1)と、下部台盤(2)と、それらの台盤(1),(2)に対し回転自在に設けられた支持ヨーク(3)と、その支持ヨーク(3)の分岐片(31),(31)の下端側間に軸支した軸(4)と、その軸(4)に装着した車輪(5)とで構成されたキャスタにおいて、
足踏み部(61a)と2片の脚部(61b),(61b)とからなる門形アーム部(61)と、それぞれの脚部(61b)の基端側から該脚部(61b)との間でL字形が形成されるように延設された2片の延設片(62),(62)とからなるペダル型操作部材(6)を、支持ヨーク(3)の両分岐片(31),(31)を挟むように、かつその門形アーム部(61)の足踏み部(61a)側が支持ヨーク(3)の前面側に位置するように、軸(4)に軸支すること、
前記ペダル型操作部材(6)の延設片(62),(62)の内側の面は、足踏み部(61a)を踏み込んでペダル型操作部材(6)を軸(4)周りに回動させたときに、支持ヨーク(3)の分岐片(31),(31)の外面との間隔が狭くなるようなテーパー面に形成してあること、
前記支持ヨーク(3)の分岐片(31),(31)の後面側の分岐基部側の位置に貫通孔(h),(h)を設けると共に、その貫通孔(h),(h)を通して、リベット(7),(7)を車輪(5)の接地面近くの側面方向に向けてスライド可能に挿通設置すること、
もって、足踏み部(61a)を踏み込んで延設片(62),(62)を回動させたときに、その延設片(62),(62)のテーパー面により前記リベット(7),(7)の頭部に押圧力が加わって、該リベット(7),(7)が車輪(5)の接地面近くの側面の方向にスライド移動した後、該リベット(7),(7)の頭部とは反対側の端部が車輪(5)の接地面近くの側面に当接して車輪(5)がロックされるようにしてあること、
を特徴とするストッパ手段付きキャスタ。 - リベット(7)の頭部を半球頭状に形成してある請求項1記載のストッパ手段付きキャスタ。
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