JP4780540B2 - サバイビン由来癌抗原ペプチド - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、癌細胞を標的とする細胞傷害性T細胞(以下、CTLという)を誘導することができるペプチドに関する。
また本発明は、前記ペプチドを含む癌ワクチン及び抗癌剤に関する。
更に本発明は、癌細胞を標的とするCTLを誘導するための前記ペプチドの使用、得られたCTL及び前記CTLを含む抗癌剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年における免疫学と分子生物学の進歩は、腫瘍免疫の進歩に多大の影響を与えている。ヒトでインフルエンザウイルス感染が起きた場合に、その感染に対して免疫が成立して感染症から離脱するという事象は以下の細胞性免疫により説明することができる。インフルエンザウイルスに感染した上皮細胞は、その細胞表面にある主要組織適合抗原複合体HLA分子上にウィルスゲノム由来の9〜10のポリペプチドを提示する。このHLA−ウイルスペプチド複合体を提示する感染細胞は強烈なアロジェニック反応を惹起し、感染細胞は末梢血中に存在するCD8陽性CTLにより特異的に認識され、積極的に排除される。この細胞性免疫のメカニズムは自己の細胞が腫瘍化して生じた癌細胞に対しても同様に働くと理解される。このことは、ベルギーのThierry Boonらによる悪性黒色腫からの腫瘍抗原MAGE遺伝子の単離により証明された(Van der Bruggenら, Science, 254, 1643-1647(1991))。
T細胞が認識する癌抗原の同定方法としては、T細胞を用いてヒト癌由来のcDNAライブラリーをスクリーニングする方法が既に開発されており、この方法を用いて前記のMAGE遺伝子が単離された。それ以後、悪性黒色腫を初めとした癌細胞表面上のクラスI分子に提示されてT細胞に認識される癌由来癌抗原ペプチドが複数同定され、これらのいくつかを用いた臨床治験が開始されており、既に一定の成果が得られている。例えば、癌患者の血清中に存在する抗体により認識される分子として食道癌より同定されたNY−ESO−1分子は、その合成ペプチドがCTLの誘導能を有することが確認されている(Chen, YT.ら, Proc. Natl. Acad. USA, 94, 1914-1918(1997)及びJager, E.ら, J. Exp. Med., 187, 265-270(1998))。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、臨床的に癌の大部分を占めるリンパ腫、肺癌、膀胱癌等の上皮癌では癌抗原がほとんど同定されておらず、これらを用いた免疫療法は確立されていない。そこで本発明は、癌の免疫療法に使用しうる癌ワクチン及び抗癌剤を提供することを解決すべき課題とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、免疫学的なヒト癌拒絶が主にCTL、特にCD8(+)CTLにより担われていることに着目した。CD8(+)CTLは癌細胞上の主要組織適合抗原複合体(ヒトではHLA)と当該HLA上に提示された癌抗原ペプチドとからなる複合体を認識して活性化する。そして、活性化されたCTLはその細胞表面上のT細胞抗原レセプターを介して癌細胞を認識し、これを攻撃する。したがって、癌抗原ペプチドが同定されれば、これを癌ワクチン及び抗癌剤として使用し、CTLを効率的に誘導して、癌を予防及び治療することができる。
サバイビン(Survivin)はアポトーシスインヒビター(IAPs)ファミリーに属するタンパク質であり、強い抗アポトーシス能を有する。サバイビンは当初、単一の遺伝子に由来する産物として報告されたが、この遺伝子には、スプライスバリアントが複数あることが報告されている(Mahotka, C.ら, Cancer Res., 59, 6097-6102(1999))。
サバイビンは肺癌、膀胱癌等の多くの癌で発現するが、正常組織での発現は胎児組織と成人胸腺、精巣等に限られていることが報告されている(Ambrosini, G.ら, Nat. Med., 3, 917-921(1997))。しかしながら、サバイビンが実際にCTLを誘導しうるか否かは明らかにされていなかった。
そこで本発明者等は、種々のサバイビン由来のペプチドについて癌抗原性、すなわちCTL誘導能について鋭意検討を重ねたところ、サバイビンエクソン2B遺伝子によりコードされる23個からなるアミノ酸配列内にHLA−A24結合モチーフがあり、このなかの特定のペプチドがCTLを誘導することができることを見いだした。本発明はこの知見に基づいてなされたものである。
すなわち、本発明は、
(1)配列番号1に示されるアミノ酸配列からなり、癌細胞を標的とする細胞傷害性T細胞を誘導しうるペプチド;
(2)前記(1)のペプチドを含む癌ワクチン;
(3)前記(1)のペプチドを含む抗癌剤;
(4)癌細胞を標的とする細胞傷害性T細胞を誘導するための前記(1)のペプチドの使用;
(5)前記(1)のペプチドにより誘導された細胞傷害性T細胞及び、
(6)前記(5)の細胞傷害性T細胞を含む抗癌剤;
である。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明の癌細胞を標的とする細胞傷害性T細胞を誘導しうるペプチドは、以下の配列:
Ala Tyr Ala Cys Asn Thr Ser Thr Leu (配列番号1)
で示されるペプチドをいう。
【0006】
本発明のペプチドの同定は、以下の工程:
(1)ヒト主要組織適合抗原複合体(MHC)クラスIであるHLA−A24の結合モチーフに対応する配列を有するサバイビン由来ペプチドを提供する工程、
(2)前記のペプチドを、HLA−A24を発現する抗原提示細胞に添加し、HLA−A24により前記ペプチドを提示している抗原提示細胞を得る工程、
(3)前記抗原提示細胞でT細胞を刺激してCTLを誘導する工程、及び、
(4)誘導されたCTLの癌細胞傷害能を測定する工程、
を含む方法により行うことができる。
【0007】
本発明のペプチドはアミノ酸数が9と小さいので、一般的なアミノ酸の化学合成法、例えばFmoc法により合成することができる。市販のアミノ酸合成装置を使用して合成することもできる。また、本発明のペプチドはサバイビンに由来するので、癌患者の癌細胞から文献(Suzuki, K.ら, J. Immunol., 163, 2783-2791(1999))に記載の方法にしたがいサバイビンを単離して、該当するペプチドを得ることもできる。
【0008】
本発明のペプチドを使用して癌細胞を標的とするCTLを誘導することができる。誘導されたCTLは癌細胞を認識して、これを攻撃する。したがって、本発明のペプチドは癌ワクチン及び抗癌剤として使用することができる。
本発明の癌ワクチン及び抗癌剤を適用しうる癌は、本発明のペプチドをHLA−A24により提示している癌細胞からなる癌、例えば上皮癌である。上皮癌としては、肺癌、大腸癌、膀胱癌、膵癌、前立腺癌、乳癌等が挙げられる。
本発明のペプチドを癌ワクチン及び抗癌剤として使用する場合、本発明のペプチドは、それ自身で又は補助剤と共に使用することができ、更に医薬的に許容しうる担体を適宜含有させることができる。
補助剤としては、免疫応答の強化を目的とするアジュバント、例えばフロイドの不完全(完全)アジュバント、アルミニウムアジュバント等が挙げられる。
医薬的に許容しうる担体としては、例えばPBS、蒸留水等の希釈剤、生理食塩水等が挙げられる。
本発明の癌ワクチン及び抗癌剤は、当該技術分野において周知の方法により、液剤、油剤、エマルジョン、ソフトカプセル剤、ハードカプセル剤、錠剤、顆粒剤、固形剤等の形態にすることができる。
本発明の癌ワクチン及び抗癌剤は、その使用形態に応じて経口、非経口又は経皮投与することができる。例えば、静注投与、筋射投与が挙げられる。投与量は、通常、患者の体重、疾患の性質及び状態に依存して変化するが、成人に使用する場合、1日あたり最大で5〜10mgである。例えば、成人の癌患者に皮下注射により使用する場合、1週間あたり100〜1000μgであり、好ましくは100〜200μgである。
【0009】
また、本発明のペプチドを、癌細胞を標的とするCTLを誘導するために使用することができる。誘導は、例えば文献(Nabeta, Y.ら, Jpn. J. Cancer Res. 91, 616-621(2000))に記載の方法にしたがい行うことができる。
具体的には以下の工程:
HLA−A24を発現している細胞を提供する工程、
前記細胞に本発明のペプチドを添加して、HLA−A24上に提示させる工程、
前記ペプチドをHLA−A24により提示している細胞でT細胞を刺激し、前記T細胞を癌細胞標的CTLへ誘導する工程、
を含む方法を使用することができる。
HLA−A24を発現する細胞は癌患者から採取したものでもよいが、非HLA−A24発現細胞に、HLA−A24をコードする遺伝子を導入して作成してもよい。
【0010】
得られたCTLは癌細胞を標的とするので、これを抗癌剤に使用することができる。この場合、前記の本発明のペプチドを含む抗癌剤と同様に、適宜医薬的に許容しうる担体を含み、かつ種々の形態をとることができる。
本発明のCTLを含む抗癌剤は、本発明のペプチドを含む癌ワクチン及び抗癌剤と同様に非経口投与することができる。投与量は、通常、患者の体重、疾患の性質及び状態に依存して変化するが、成人の癌患者に皮下注射により使用する場合、1週間あたり100〜1000μgであり、好ましくは100〜200μgである。
【実施例】
次に、実施例により本発明の効果を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0011】
参考例1 サバイビンmRNAの細胞株における発現
以下の細胞株:
LHK−2(肺腺癌細胞)、KMG−A(胆のう癌細胞)、Fs−1(上顎癌細胞)、OSC40(口腔扁平上皮癌細胞)、HC−MA(下咽頭扁平上皮癌細胞)、KE−4(食道癌細胞)、LB33mel(悪性黒色腫細胞)、888mel(悪性黒色腫細胞)、1102mel(悪性黒色腫細胞)、BB64RCC(腎癌細胞)、LB905BLC(前立腺癌細胞)、YM−EBV(健常人由来EBV−B細胞)、LG2−EBV(健常人由来EBV−B細胞)、KK−EBV(健常人由来EBV−B細胞)、Nabe−EBV(健常人由来EBV−B細胞)、PHA−blast(PHA刺激T細胞)及びCTL(細胞傷害性T細胞)並びに成人の胃、小腸、大腸、脾臓、肺、腎臓、前立腺、膵臓及び心臓から採取した正常組織に由来するmRNA 2μgを、サバイビン遺伝子特異的プライマーを用いてRT−PCRし、得られたPCR産物を電気泳動した後、エチジウムブロマイドで染色した。内部標準としてG3PDHを用いた。図1に示されるように、構成的タンパク質であるG3PDHはいずれの細胞においても発現が見られた。一方サバイビンは、癌細胞であるLHK−2、KMG−A、Fs−1、OSC40、HC−MA、KE−4、LB33mel、888mel、1102mel、BB64RCC、LB905BLC、YM−EBV、LG2−EBV、KK−EBV、Nabe−EBV及びPHA−blastでサバイビンの発現が見られたが、正常細胞では発現が見られなかった。この結果より、サバイビンは多くの癌細胞に特異的に発現することが理解される。
【0012】
実施例1 本発明のサバイビン由来癌抗原ペプチドの製造
以下のアミノ酸配列:
Ala Tyr Ala Cys Asn Thr Ser Thr Leu (配列番号1)
を有するペプチドを合成した。ペプチドは、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)戦略に基づいて固相同時多重ペプチド合成機PSSM−8(島津製作所)を使用して合成し、次いでC18逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)(Millipore)により精製した。ペプチドの純度及び同一性は、それぞれ分析用HPLC及び質量分析により測定した。ペプチドを、ジメチルスルホキシド中に濃度1.5mg/mlで溶解し、−80℃で保存した。
【0013】
実施例2 本発明のサバイビン由来癌抗原ペプチドを用いたCTLの in vitro 誘導
ヒトの末梢血をフィコール・コンレイ密度勾配中で遠心分離して末梢血単核球(PBMC)を集め、次いで接着細胞と非接着細胞とに分離した。接着細胞をAIM−V(Gibco Co.)中、100ng/mlのGM−CSF(Novartis Pharmaceuticals)及び10IU/mlのIL−4(Gibco-BRL)と共にインキュベートした。この細胞を抗原提示細胞(APC)として使用した。非接着細胞をAIM−V中、30〜100IU/mlの組換えIL−4(味の素)と共にインキュベートした。7〜10日目に、本発明のペプチド(終濃度30μg/ml)をAPCに添加し、1日後、組換えTNF−α及びIFN−α(住友製薬)を添加してAPCを成熟させた。次いでAPCに放射線を照射した後、APCと自家非接着細胞から分離したCD8陽性細胞とを、IL−2を含まないAIM−V中で混合した。インキュベート2日後、IL−2(武田薬品工業)を終濃度100IU/mlで培養へ添加した。7日毎に、T細胞マイトジェンであるPHAで刺激した自家PHAブラスト(PHA刺激T細胞)をAPCとして、CD8陽性細胞を刺激した。刺激毎に、培養に100IU/mlのIL−2を含む新鮮培地を追加した。28日目のCTLを以下の活性試験に使用した。
【0014】
実施例3 本発明のCTLの細胞傷害性
(1)試験方法
CTLの細胞傷害能を51Cr細胞傷害試験により評価した。CTLの標的細胞を100μCiのクロム酸ナトリウム(51Cr)を用いて37℃で2時間標識し、洗浄し、再懸濁した。試験ペプチドが提示された標識標的細胞は、前記の標的細胞(5×105細胞/ml)を51Crで標識し、30μg/mlの試験ペプチドと室温で2時間インキュベートすることにより得た。エフェクター細胞(CTL)をV字底マイクロタイタープレートCostar3894(Corning Incorporated)の各ウェルに入れ、ここに前記標識標的細胞を濃度5×103細胞/ウェルで添加し、容量0.2mlとした。6時間のインキュベート後、0.1mlの上清を集め、自動化ガンマカウンター(LKB Wallac)により51Crの放出を測定した。測定は3重に行い標準偏差を計算した。特異的細胞傷害能の百分率は、特異的51Cr放出の百分率を下記の式:[(実験値)−(自発的放出値)/(最大放出値)−(自発的放出値)]×100を用いて計算することにより決定した。自発的放出値は、標的細胞をエフェクター細胞の非存在下で単独でインキュベートしたときの放出値より得た。最大放出値は界面活性剤である10%Nonidet−P40(ナカライケミカルCo.)と共にインキュベートしたときの最大放出量により得た。
【0015】
(2)本発明のCTLの細胞傷害性
の中から、表1に示すHLA−A24の結合モチーフに対応する3種のペプチドを、実施例1に記載の方法にしたがい製造した。
【0016】
表1.試験ペプチド
【0017】
2名のHLA−A24陽性の健常人A及びBの末梢血を用いて、実施例2と同様の方法により各群のペプチドを用いてCTLを誘導した。
CTLの標的細胞として、サバイビンを発現する(以降、サバイビン陽性という)C1R細胞株(ATCCより入手)に、HLA−A24*2402遺伝子を、ベクターpIRES(Clonetech, Inc.)を用いて、文献(Suzukiら、前出)にしたがい導入し、HLA−A24分子を細胞表面に発現させた(以降、HLA−A24陽性という)C1R−A*2402細胞を用いた。前記(1)の試験法にしたがい、各標的細胞に試験ペプチドを添加して、標的細胞上にペプチドを提示させ、これを試験に使用した。
各ペプチドを用いて誘導したCTLについての51Cr細胞傷害試験の結果をそれぞれ図2に示す。縦軸は標的細胞の融解の百分率を、横軸はE/T比(エフェクター細胞(CTL)/標的細胞)を示す。健常人A及びBの両方において、本発明のペプチド(サバイビン2B80)により誘導されたCTLはC1R−A*2402細胞に対して高い細胞融解を示したが、その他のペプチドにより誘導されたCTLはいずれの細胞に対しても低い細胞融解性を示した(図2)。
これらの結果より、本発明のペプチドにより誘導されたCTLが、HLA−A24陽性かつサバイビン陽性の細胞、すなわち癌細胞に対し高い細胞傷害性を有していることが理解される。
(3)本発明のCTLの細胞傷害性
前記の健常人B由来の本発明のCTLについて、下記表2に示す細胞を標的として、本発明のペプチドを添加した場合と未添加の場合の細胞傷害性を試験した。
表2.標的細胞
+:陽性
−:陰性
51Cr細胞傷害試験の結果をそれぞれ図3に示す。試験は1種の標的細胞につき、3つのE/T比(20、6及び2)を用いて行った。図3に示す各標的細胞における結果において、左側の棒はE/T=20での結果、真ん中の棒はE/T=6での結果及び右側の棒はE/T=2における結果を示している。本発明のCTLは、本発明のペプチドを未添加のC1R−A*2402、888mel、LG2−mel、OSC40、KE−4、LHK−2、PC−9に対しても細胞傷害性を示した。これは前記細胞が元々HLA−A24及びサバイビンを発現しているためであると考えられる。一方、本発明のサバイビン由来ペプチドを添加した場合、本発明のCTLはより高い細胞傷害性を示した。一方、HLA−A24を発現していないK562に対しては、たとえ本発明のペプチドを添加した場合であっても細胞傷害性を示さなかった。
これらの結果より、本発明のペプチドにより誘導されたCTLが、HLA−A24陽性かつサバイビン陽性の細胞、すなわち癌細胞に対し高い細胞傷害性を有していること、及び、細胞外からサバイビン由来癌抗原ペプチドを添加した細胞だけでなく細胞内でサバイビンを発現している癌細胞に対しても高い細胞傷害性を有していることが理解される。
【0018】
実施例4 本発明のCTLクローンの作成及び反応性の解析
(1)CTLのクローンの作成
本発明のCTLの反応性を検討するために、単一のCTLクローンを、Riddellら(Walter, EA.ら, N. Engl. J. Med., 333, 1038-1044(1995))の方法にしたがい作成した。96穴U字型プレートにて1ウェルあたり0.3、3又は10細胞/ウェルとなるようにCTLを調整し、ここに放射線を照射して不活化した。次いで、健常人由来PBMC細胞(1×104)とLG2−EBV細胞(5×104)と共に培養した。培養液として、10% ヒトAB血清、40ng/ml抗CD3抗体(BD Pharmingn, San Diego)、50μM 2−ME、10mMHepes、150U/ml IL−2を含むAIM−V溶液を1ウェルあたり全量200μlで用いた。培養7日目に100U/ml IL−2を用いたことを除いて前記と同様の新鮮培養液と交換した。培養10日目ないし14日目に、48穴プレートに移し、実験28日目に3種類のクローン:7F6、7H2及び4F9を得た。この中からクローン7H2についてFACSにより細胞表現型を解析した。
(2)CTLクローン7H2のFACS解析
1次抗体として、マウス抗ヒトCD3、CD4、CD8、CD16、CD56、TCRαβ、TCRγδ分子標識抗体(Becton-Dickinson)を使用した。CTLクローン7H2を1次抗体で4℃、30分処理した後、PBSで2回洗浄した。次いでFITCで標識した抗マウス2次抗体で4℃、30分処理し、PBSで2回洗浄した後、フローサイトメーターFACSCalibur(Becton-Dickinson)により蛍光強度を測定した。
結果を図4に示す。縦軸は細胞数(カウント数)、横軸はFITC蛍光強度を示す。各図の下には使用した1次抗体が認識する細胞表面抗原を記載した。図中の常に右側に位置する線は1次抗体及び2次抗体で処理したときの結果を示し、図中の常に左側に位置する線は1次抗体なしで2次抗体のみで処理した陰性対照を示す。陰性対照を示す線に対して1次抗体で処理したときの線がどれだけ右に移動したかを検討することにより、陽性率を判断した。CTLクローン7H2はCD3、CD8及びTCRαβについては陽性であったが、CD4、CD16及びTCRγδについては陰性であった。
以上の結果より、CTLクローン7H2はCD3、CD8及びTCRαβ陽性の典型的なCTLであることが理解される。
(3)CTLクローンの細胞傷害性
(1)で得た3種類のクローン7F6、7H2及び4F9について、肺癌細胞LHK−2細胞(HLA−A24陽性かつサバイビン陽性)を標的として、本発明のペプチドを添加した場合と未添加の場合の細胞傷害性を試験した。
51Cr細胞傷害試験の結果をそれぞれ図5に示す。図5に示す各CTLクローンの結果において、左側の棒は標的細胞LHK−2、本発明のペプチド添加の場合の結果、真ん中の棒は標的細胞LHK−2、本発明のペプチド未添加の場合の結果及び右側の棒は標的細胞K562の場合の結果を示している。本発明のCTLは、本発明のペプチドを未添加のLHK−2に対しても細胞傷害性を示した。これはLHK−2細胞が元々HLA−A24及びサバイビンを発現しているためであると考えられる。一方、本発明のサバイビン由来ペプチドを添加した場合、本発明のCTLはより高い細胞傷害性を示した。一方、HLA−A24を発現していないK562に対しては、たとえ本発明のペプチドを添加した場合であっても細胞傷害性を示さなかった。
これらの結果より、本発明のペプチドにより誘導されたCTLが、HLA−A24陽性かつサバイビン陽性の細胞、すなわち癌細胞に対し特異的な細胞傷害性を有していること、及び、細胞外からサバイビン由来癌抗原ペプチドを添加した細胞だけでなく細胞内でサバイビンを発現している癌細胞に対しても高い細胞傷害性を有していることが理解される。
【0019】
【発明の効果】
本発明のペプチドは、本発明のペプチドを提示したHLA−A24を有する癌細胞を標的とするCTLを誘導することができる。HLA−A24の発現率は高く、欧米人では20〜30%であり、特に日本人では50%以上が発現している。したがって、本発明の癌抗原ペプチドは有用な癌ワクチン及び抗癌剤として使用することができる。
【0020】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、種々の癌細胞及び正常細胞におけるサバイビンの発現を示す図である。
【図2】図2は、種々のサバイビン由来ペプチドを用いて誘導したCTLについての51Cr細胞傷害試験の結果を示すグラフである。
【図3】図3は、本発明のCTLの種々の標的細胞に対する51Cr細胞傷害試験の結果を示すグラフである。
【図4】図4は、本発明のCTLクローン7H2の細胞表面抗原についてのFACS解析の結果を示すグラフである。
【図5】図5は、本発明のCTLクローンの肺癌細胞LHK−2に対する51Cr細胞傷害試験の結果を示すグラフである。
Claims (6)
- 配列番号1に示されるアミノ酸配列からなり、癌細胞を標的とする細胞傷害性T細胞を誘導しうるペプチド。
- 請求項1に記載のペプチドを含む癌ワクチン。
- 請求項1に記載のペプチドを含む抗癌剤。
- HLA−A24を発現する癌細胞を標的とする細胞傷害性T細胞をin vitroで誘導するための請求項1に記載のペプチドの使用。
- 請求項1に記載のペプチドにより誘導され、かつ、HLA−A24を発現する癌細胞を標的とする細胞傷害性T細胞。
- 請求項5に記載の細胞傷害性T細胞を含む抗癌剤。
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