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JP4772518B2 - 動力伝動用ベルトの製造方法 - Google Patents

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本発明は、スノーモービル、スクーター及び一般産業用の変速ベルトとして使用されるローエッジシングルコグドベルト、ローエッジダブルコグドベルトであって、圧縮ゴム層のコグ山部と接着ゴム層との界面付近で亀裂が発生しにくい動力伝動用ベルト製造方法に関する。
従来から、スクーターまたは一般産業用の機械分野の駆動系において、駆動プーリと従動プーリに伝動用ベルトを懸架し、プーリの有効径を変化させて変速させるベルト式変速装置が用いられている。ここで使用されている伝動用ベルトは圧縮ゴム層と伸張ゴム層の少なくとも一方のゴム層にコグ山部とコグ谷部を交互に配したコグ部を有し、心線を接着ゴム層内に埋設した構成からなり、ローエッジシングルコグドベルトあるいはローエッジダブルコグドベルトなどのローエッジコグドベルトが知られている。
上記ローエッジコグドベルトの製造方法としては、成形金型上に装着した外補強布、伸張ゴム層のゴムシート、心線、圧縮ゴム層のゴムシート、そして内補強布を順次巻き付け、突状部と溝状部を交互に有する円筒状母型を嵌入した後、加硫するもので、加硫時の圧力により内補強布を収縮させて、圧縮ゴム層のゴムシートを型付けする方法が一般的であった。
しかし、この方法で作製されたベルトは伸張しやすい傾向があることから、以下の方法が提案された。即ち、予め用意したベルト周長よりも長い平面状の溝付金型の上に未加硫ゴムシートを設置し、プレスにより加熱加圧してコグ形状に型付けしたコグパッドを作製する。このコグパッドを成形ドラム上に装着した円筒状母型の突状部と溝状部に嵌め込み、コグパッドのカット面を突き合わせてジョイントした後、心線を巻き付け、更に他のゴム層、補強布をこの上から巻き付けて成型を終え、加硫していた。(例えば、特許文献1に開示。)
更に、他の方法として、圧縮ゴム層の構成材料である補強布やゴムシートを、突状部と溝状部を交互に有する成形型に巻き付け、ジャケットを被せた後に加熱加圧して成形型の突状部と溝状部にコグ部を型付けした未加硫のスリーブを成形した。この未加硫のスリーブの背面には、ゴムが溝状部へ流れ込むためにそれぞれのコグ山部にへこみ部が発生することがあった。へこみ部を残したままでベルトを成形すると、ベルトにピンホールが発生し、亀裂を発生させる原因になっていた。これを除去するためにスリーブの背面を切削、研削、又は研磨加工して平坦に仕上げた後、心線および伸張ゴム層を形成するゴムシートを順次巻き付けてベルト成形体を作製後、加硫していた。(例えば、特許文献2に開示。)
特開2002−1691号公報 特開2005−54851号公報
しかし、スリーブの背面に発生したへこみ部を削除するために、背面を切削、研削、又は研磨加工して平坦に仕上げることは、切削屑、研削屑、又は研磨屑のようなスクラップが多量に発生させていた。このため、このスクラップの発生を少なくする対策が強く望まれていた。
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、切削屑、研削屑、又は研磨屑のようなスクラップの発生を抑え、圧縮ゴム層のコグ山部と接着ゴム層との界面付近に発生するピンホールを無くし、ベルト走行時における早期の亀裂発生を阻止した動力伝動用ベルト製造方法を提供することを目的とする。
本発明の第1の観点によれば、圧縮ゴム層と伸張ゴム層との間に心線を介在させ、少なくとも圧縮ゴム層にコグ部を設けた動力伝動用ベルトの製造方法であり、
圧縮ゴム層になる材料として背面に所定間隔で隆起部を設けた圧縮ゴム用シートを、突状部と溝状部を交互に設けた成形型に巻き付け、かつ上記隆起部を溝状部の上に配置
上記圧縮ゴム用シートを加熱下で加圧して、コグ部とともに平坦な背面を有する未加硫のスリーブを成形し、
上記スリーブの背面に少なくとも心線および伸張ゴム層となる材料を巻き付けてベルト成形体を作製後、
該ベルト成形体を加熱加圧して加硫成形する、動力伝動用ベルトの製造方法である。
この方法では、圧縮ゴム用シートに設けた隆起部を成形型の溝状部の上に配置し、この状態で圧縮ゴム用シートを加熱加圧することで、ボリュームのある隆起部が溝状部で充分に圧入されてへこみ部のない平坦な背面の未加硫のスリーブになる。これにより、圧縮ゴム層と接着ゴム層との界面におけるピンホールの発生が抑制され、ベルトの走行寿命も長くなる。
本発明の第2の観点によれば、背面に所定間隔で隆起部を設けた圧縮ゴム用シートは、隆起部を設けた層と平坦な層を積層したもので、隆起部を設けた層の硬度が平坦な層のそれより大きくなっている動力伝動用ベルトの製造方法であり、隆起部を設けた層を硬くすることで、溝状部への圧入が確実なものになり、圧縮ゴム層と接着ゴム層との界面におけるピンホールの発生が抑制される。
本発明の動力伝動用ベルトでは、圧縮ゴム層が下部接着ゴム層から離れたところに位置する第1層と下部接着ゴム層に密着する第2層に区分され、第1層と第2層の界面が凹凸パターンになって、圧縮ゴム層の第2層と下部接着ゴム層との界面では平坦面を維持している。これによってピンホールの発生も無く、ベルト走行時に亀裂の発生を軽減することができる。
一方、動力伝動用ベルトの製造方法では、圧縮ゴム用シートの隆起部を成形型の溝状部の上に配置し、この状態で圧縮ゴム用シートの背面を加熱加圧することで、ボリュームのある隆起部が充分に溝状部に圧入されてへこみ部のない平坦な背面の未加硫のスリーブになる。これにより、圧縮ゴム層と接着ゴム層との界面におけるピンホールの発生が抑制され、ベルトの走行寿命も長くなる効果がある。
以下、本発明の実施例を添付図面に従って説明する。
図1は本発明方法によって得られた動力伝動用ベルトの部分正面図である。
動力伝動用ベルト1は、上下部接着ゴム層2a、2b内にコードからなる心線3が埋め込まれ、上部接着ゴム層2aの上部位置にはゴム層5aからなる伸張ゴム層6、下部接着ゴム層2bの下部位置には補強布4とゴム層5bを積層した圧縮ゴム層7がある。伸張ゴム層6および圧縮ゴム層7には、それぞれ一定ピッチでベルト長手方向に沿ってコグ谷部8(8a)とコグ山部9(9b)とを交互に配した上下コグ部11、12が設けられている。尚、伸張ゴム層6にも、補強布4を積層してもよい。
圧縮ゴム層7は下部接着ゴム層2bから離れたところに位置する第1層7aと下部接着ゴム層2bに密着する第2層7bに区分され、第1層7aと第2層7bの界面が緩やかな凹凸パターンになっている。ゴク山部9は第1層7aと第2層7bで充満されているため、圧縮ゴム層の第2層7bと下部接着ゴム層2bとの界面が平坦面に維持され、ピンホールの発生も無く、ベルト走行時に亀裂の発生を軽減する。
尚、第1層7aと第2層7bは同質のゴム組成物であってもよく、また第2層7bの硬度を第1層7aのそれより大きく設定してもよく、更には第2層7bの短繊維の添加量を第1層7aのそれより多くしてもよい。
上記圧縮ゴム層7と下部接着ゴム層2bとの界面13では、凹凸が少なく比較的平坦面で、第2層7bへ深く入り込んだへこみ部が発生していない。このため、下部接着ゴム層2bが第2層7b内へ侵入することなく、下部接着ゴム層2bの厚みがベルト全周囲にわたってほぼ均一な厚みになっている。また、上記界面13ではゴム組成物によって充填されているためにピンホール等のボイド発生が無くなり、ベルト走行時に亀裂の発生を軽減している。
ベルト側面の形状は、伸張ゴム層6の頂部14から心線3の上端Pまでの距離をLとしたとき、伸張ゴム層6の頂部14からLの90〜100%に相当する境界位置Uまでの領域を伸張ゴム層6の頂部14に対して直角カット面に、そして上記境界位置Uから圧縮ゴム層の底面にかけてバイアスカット面になっている。バイアスカット面の角度は20〜60度であり、広角度ベルトも含まれる。無論、ベルト側面の形状は、バイアスカット面のみであってもよい。
心線3としては、ポリエステル繊維、アラミド繊維、ガラス繊維が使用され、中でもエチレン−2,6−ナフタレートを主たる構成単位とするポリエステル繊維フィラメント群を撚り合わせた総デニール数を4,000〜8,000の接着処理したコードが、ベルトスリップ率を低くでき、ベルト寿命を延長させるために好ましい。このコードの上撚り数は10〜23/10cmであり、また下撚り数は17〜38/10cmである。総デニールが4,000未満の場合には、心線のモジュラス、強力が低くなり過ぎ、また8,000を越えると、ベルトの厚みが厚くなって、屈曲疲労性が悪くなる。
上記圧縮ゴム層7および伸張ゴム層6に使用するゴムとしては、天然ゴム、ブチルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレンゴム、アルキル化クロロスルフォン化ポリエチレン、水素化ニトリルゴム、水素化ニトリルゴムと不飽和カルボン酸金属塩との混合ポリマー等のゴム材の単独、またはこれらの混合物が使用される。
そして、上記圧縮ゴム層7に使用される短繊維としては、アラミド繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、綿等の繊維からなり繊維の長さは繊維の種類によって異なるが1〜10mm程度である。例えば、アラミド繊維であると3〜5mm程度、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、綿であると5〜10mm程度のものが用いられる。そして、上記ゴム層中の短繊維の方向はベルトの長手方向に対して直角方向を向いているのを90°としたときほとんどの短繊維が70〜110°の範囲内に配向されている。伸張ゴム層5には、短繊維16を含めなくてもよい。また、接着ゴム層2a、2bには、上記短繊維を含めてもよいが、心線3との接着を考慮すると含めない方がよい。
補強布4は綿、ポリエステル繊維、ナイロン等を素材とした平織、綾織、朱子織等に製織した布であって、経糸と緯糸との交差角が90〜120°程度の帆布である。補強布4はRFL処理した後、ゴム組成物をフィリクション・コーチングしてゴム付帆布とする。
RFL液はレゾルシンとホルムアルデヒドとの初期縮合物をラテックスに混合したものであり、ここで使用するラテックスとしてはクロロプレン、スチレン・ブタジエン・ビニルピリジン三元共重合体、水素化ニトリル、NBRなどである。
次に、動力伝動用ベルトの製造方法の工程を図2〜図5に基づいて説明する。
図2は動力伝動用ベルト1の製造方法の一例であって突状部と溝状部を交互に設けた成形型上で補強布を型付している。
即ち、補強布40の型付けでは、ゴム糊であるゴム系接着剤を成形型41(金型に円筒状母型を装着したもの)の突状部42の表面にスプレー、刷毛、ローラー等で塗布した後、接着処理済みもしくは未処理の補強布40を引き出して突状部42の表面に載置する。ピニオンロール50を下ろして歯部52が成形型41の溝状部43に入っていることを確認した後、成形型41を回転させて前方突状部42aに位置する補強布40をピニオンロールの底面51で押圧し、続いてピニオンロール50の歯部52を成形型41の溝状部43に噛合わせて歯部先端面44を成形型41の溝状部底面45に当接して押圧変形する。ピニオンロール50は成形型41の回転とともに回転する。
そして、隣接する後方突状部42bにある補強布40を隣接する他のピニオンロールの底面51で押圧することにより補強布40を伸張させずに無理なく1つの溝状部43に沿って完全に変形し、これを順次繰り返して補強布40を成形型41の全周囲に密着するように型付けする。本実施例の場合、ピニオンロール50の1つの歯部52が成形型41の溝状部43に入っているとき、他のピニオンロール50の歯部52が補強布40を押付けしないために、補強布40が突っ張ってしまったり、浮いたりすることはない。これを繰り返しながらモールド41の全表面に1〜4プライまで被覆する。そして、補強布40の終端はカッターにより切断して、成形型41に貼着する。
尚、補強布40の型付けでは、上記のようなピニオンロールを用いる必要はなく、溝状部に嵌合するロッドを使用してもよい。
ここで使用するゴム系接着剤は、各種のゴム配合物をメチルエチルケトン(MEK)、トルエン等の溶剤に溶解し、混合して得られたものであり、補強布40のモールド41面への密着をよくする。
続いて、図3に示すように、予め隆起部55cを設けた層55aと平坦な層55bを積層した未加硫の圧縮ゴム用シート55の両端面を厚み方向に傾斜したカット(通常ベベカットともいう)したものを、上記補強布40を型付けした成形型41に巻き付ける。この場合、上記隆起部55cは成形型41の溝状部43の上に配置する必要がある。これは、ボリュームをもった隆起部55cを溝状部43に充分に圧入することでへこみ部のない平坦な背面の未加硫のスリーブに仕上げるためである。
圧縮ゴム用シート55は隆起部を設けた層55aと平坦な層55bを積層一体化したものを使用する。隆起部を設けた層55aと平坦な層55bは同質のゴム組成物であってもよく、また上記隆起部を設けた層55aの硬度を上記平坦な層55bのそれより大きく設定してもよい。更には、隆起部を設けた層55aの短繊維の添加量を平坦な層55bのそれより多くしてもよい。このようにすることで、型付け工程において隆起部を設けた層55aのゴム流れを阻止し、硬度を維持することによって、圧縮ゴム用シート55を溝状部43へ充分に圧入することができる。
そして、圧縮ゴム用シート55のカット面を突合せた後、カット面の表面を加圧治具(図示せず)で軽く押圧してジョイントした後、加熱プレス(図示せず)を用いて加熱加圧してジョイント部(図示せず)を形成する。加熱加圧条件は温度が80〜120℃、面圧が1〜2kg/cm、時間が10〜30秒である。ジョイントの位置は通常成形型41の溝状部43で行う。突状部42にジョイントの位置がくると、ベルトコグ谷部にジョイントがくるため、割れが発生しやすくなる。
上記圧縮ゴム用シート55の隆起部55cを設けた層55aの表面に沿うように離型材56であるポリメチルペンテンあるいはポリエチレンテレフタレートからなる耐熱性、離型性に優れる樹脂フィルムまたは離型紙を1プライ巻き付け重ね合わせて接合し、その上に内周を平坦面とする押付材66によって包囲する。押付材66はシート体や筒状体であり、例えばゴム製のジャケットが適用される。
続いて、圧縮ゴム用シート55の型付け工程へ移行する。このゴムシート型付け工程は、例えば加硫缶を使用することができる。この場合、押付材66の外側に蒸気遮断材であるゴム製のジャケット57を被せた後、成形型41を加硫缶へ設置し、温度160〜180℃、外圧0.1〜0.9MPaのみで5〜10分程度型付けし、図4に示すようにコグ部59を有する未加硫のスリーブ60を形成する。加硫缶で型付けしても、スリーブ60のジョイント部の割れは起こらない。
無論、型付けは加硫缶でなく、圧縮ゴム用シート55の外側を加圧バンド、プレス方式等によって加熱、加圧してもよいことは言うまでもない。
未加硫のスリーブ60は、図4に示すように加熱、加圧された圧縮ゴム用シート55が溝状部43へ流れ込むときに、押付材66によって隆起部55cが溝状部43へ圧入され、また同時にボリュームが補填されるために、コグ部59には背面61から深く入り込んだへこみ部を発生しない平坦な背面の未加硫のスリーブを形成する。これにより、圧縮ゴム層と接着ゴム層との界面におけるピンホールの発生が抑制され、ベルトの走行寿命も長くなる。
図5に示す方法によって作製された圧縮ゴム層70の背面にはベルト成形体が作製される。即ち、型付けされた圧縮ゴム層70の背面にベルト成形体を作製する状態を示すものであり、成形型41を成形機(図示せず)に装着し、コードからなる心線71を圧縮ゴム層70(スリーブ60の背面61)上にスパイラルに巻き付けた後、接着ゴム層を形成する接着ゴムシート72、伸張ゴム層を形成する伸張ゴムシート73、上面補強布74、そして空気抜き材75を順次巻き付けてベルト成形体76を作製する。そして、成形機から取り出した成形型41を支持台上に設置して円筒状母型77を嵌入する。円筒状母型77の突状部78と溝状部79の表面には、ナイロン等の織物が被覆されている。
ここで使用する空気抜き材75は離型材56と同様にポリメチルペンテンあるいはポリエチレンテレフタレートからなる耐熱性、離型性に優れる樹脂フィルムである。しかし、空気抜き材75を必ず使用する必要はない。
続いて、成形型41を加硫缶へ移して通常の方法で加硫を行う。加硫した後、円筒状母型77、続いて円筒状のベルトスリーブを成形型41から抜き取る。
上面補強布74の表面に巻付けた空気抜き材75は、コグ山部成形時における空気の滞留を抑えて流れをよくしてコグ山形状を正確に成形する。
次に、ベルトスリーブをマントルに装着し、カッターにより所定幅にバイアスに切断してコグドベルト1を作製する。また、ベルトスリーブを所定幅に直角カットし、矩形断面をもつ単一のベルトに仕上げ、これを2軸のプーリに装着して回転させながら境界位置Uから圧縮ゴム層の底面までのベルト側面を一対のカッターによってバイアスにカットしてリング屑を除去して動力伝動用ベルト1に仕上げることができる。
実施例1
心線として、1,500デニールのアラミド繊維(商品名:トワロン)を上撚り数19.7回/10cm、下撚り数15.8回/10cmで上下逆方向に撚糸して2×3の撚り構成とし、トータルデニール9,000の未処理コードを準備した。次いで、この未処理コードをイソシアネート系接着剤でプレディプした後、約170〜180°Cで乾燥し、RFL液に浸漬した後、200〜240°Cで延伸熱固定処理を行なって処理コードとした。
補強布として、アラミド繊維(商品名:トワロン)とポリエチレンテレフタレート繊維を重量比で50:50の混撚糸を使用したワイドアングルの平織帆布を用いた。これらの帆布をRFL液に浸漬した後、150°Cで2分間熱処理して処理帆布とした。その後、これらの処理帆布にゴム組成物をフリクション・コーチングしてゴム付帆布とした。
圧縮ゴム層と伸張ゴム層はアラミド短繊維(ゴム100重量部に対して25重量部)を含んだクロロプレンゴムからなるゴム組成物を用い、また接着ゴム層は短繊維を含まないクロロプレンゴムからなるゴム組成物を用いた。
突状部と溝状部を交互に有する円筒状母型を断面真円の型の装着した成形型を支軸に設置し、クロロプレンゴム組成物をメチルエチルケトンで溶かしたゴム糊を突状部の表面に吹き付けて塗装した。そして、補強布を成形金型とピニオンロールの間に挟み込み、成形金型とピニオンロールを同期回転しながら型付けしながら1プライ積層した。
続いて、溝状部のピッチ間隔の隆起部をもった一枚の圧縮ゴム用シートをバイアスにカットし、これを成形金型の補強布の上に巻き付けた。この場合、圧縮ゴムシートの隆起部は円筒状母型の溝状部の上にくるように配置された。そして、圧縮ゴムシートの端面を突き合わせ、ジョイント部をステッチャーで軽く接合した後、更に加熱プレス(温度100℃、面圧1〜2kg/cm、15秒間)を用いて接着した。
その後、厚さ0.05mmのポリメチルペンテンフィルム(離型材)を圧縮ゴムシートの表面に1プライ巻き付け、更に歯部と溝部を交互に有する押付材(S3Mの広幅の歯付ベルト)を包囲し、その外側にゴム製のジャケットを被せて加硫缶に設置し、加熱加圧条件(温度170℃、外圧0.8MPaのみで7分程度)によって圧縮ゴムシートを円筒状母型の突状部と溝状部へ型付けし、へこみ部の存在しない凹凸パターン面を有する背面とコグ部を有する未加硫のスリーブを作製した。
更に、未加硫のスリーブの背面(圧縮ゴム層の表面)上に、心線、接着ゴムシート、伸張ゴムシート、補強布、を順次巻き付けてベルト成形体を作製し、突状部と溝状部を交互に有する円筒状母型とジャケットを順次被せて成形型を加硫缶に設置し、通常の条件で加硫してベルトスリーブを得た。このスリーブをカッターによってV状に切断してスクーター用のコグドベルトに仕上げた。
得られたベルトにおける圧縮ゴム層のコグ山部と下部接着ゴム層との界面は、平坦面になり、また下部接着ゴム層がコグ山部内へ侵入することなく、下部接着ゴム層の厚みがベルト全周囲にわたってほぼ均一な厚みになっていた。更に、肉眼で観察しても圧縮ゴム層ではゴム組成物によって充填されているためにピンホール等のボイド発生は見られなかった。また、圧縮ゴム層の第1層と第2層の界面が緩やかな凹凸パターンになっていた。
本発明は、スノーモービル、スクーター及び一般産業用の変速ベルトとして使用されるスノーモービル、スクーター及び一般産業用の変速ベルトとして使用されるローエッジシングルコグドベルト、ローエッジダブルコグドベルトを含むローエッジコグドベルト等の動力伝動用ベルト製造方法である。
本発明の製造方法によって得られた動力伝動用ベルトの部分正面図である。 本発明に係る製造工程であって成形型上で補強布を型付している状態を示す工程である。 本発明に係る製造工程であって圧縮ゴム用シートを成形型に巻き付けて未加硫のスリーブを作製する前の工程を示す。 作製した未加硫のスリーブの断面を示す。 本発明に係る製造工程であって型付けされた未加硫のスリーブ(圧縮ゴム層)の背面にベルト成形体を作製する工程を示す。
符号の説明
1 動力伝動用ベルト
2a 上部接着ゴム層
2b 下部接着ゴム層
3 心線
6 伸張ゴム層
7 圧縮ゴム層
40 補強布
41 成形型
43 溝状部
55 圧縮ゴム用シート
55a 隆起部を設けた層
55b 平坦な層
55 隆起部
60 未加硫のスリーブ
61 背面
66 押付材

Claims (2)

  1. 圧縮ゴム層と伸張ゴム層との間に心線を介在させ、少なくとも圧縮ゴム層にコグ部を設けた動力伝動用ベルトの製造方法であり、
    圧縮ゴム層になる材料として背面に所定間隔で隆起部を設けた圧縮ゴム用シートを、突状部と溝状部を交互に設けた成形型に巻き付け、かつ上記隆起部を溝状部の上に配置
    上記圧縮ゴム用シートを加熱下で加圧して、コグ部とともに平坦な背面を有する未加硫のスリーブを成形し、
    上記スリーブの背面に少なくとも心線および伸張ゴム層となる材料を巻き付けてベルト成形体を作製後、
    該ベルト成形体を加熱加圧して加硫成形する、
    ことを特徴とする動力伝動用ベルトの製造方法。
  2. 背面に所定間隔で隆起部を設けた圧縮ゴム用シートは、隆起部を設けた層と平坦な層を積層したもので、隆起部を設けた層の硬度が平坦な層のそれより大きくなっている請求項1記載の動力伝動用ベルトの製造方法。
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