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JP4770412B2 - 分岐用電線保持具および分岐部を有するワイヤハーネスの製造方法 - Google Patents

分岐用電線保持具および分岐部を有するワイヤハーネスの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、分岐用電線保持具および分岐部を有するワイヤハーネスの製造方法に関し、詳しくは、ワイヤハーネスの分岐部に対し、簡易な操作により結束バンドを締め付け固定可能とするものである。
従来、自動車に配索されるワイヤハーネスには幹線から支線が分岐している箇所が多数存在し、この分岐位置がずれないように電線群にテープを巻き付けて結束している。この分岐部の結束は、ワイヤハーネス組立作業台に立設した電線保持具に電線束を布線した状態で行っている。これら電線束を結束する粘着テープは、幹線から支線が分岐する位置では、電線保持具の支持棒の間に電線束が保持されている状態では支持棒が邪魔となって粘着テープを電線束に巻き付けることができない。
そのため、電線保持具を下降させて電線束を電線保持具から外した状態で粘着テープをたすき掛け状態に交叉させて巻き付けている。このように、分岐部における粘着テープのたすき掛け作業は熟練を要し、作業者の熟練度合いによって結束状態にバラツキが発生しやすく、かつ、ワイヤハーネスには分岐位置が多いために作業時間がかかるという問題がある。また、分岐部に粘着テープを巻き付ける際に電線束を電線保持具から取り出すため、粘着テープを巻き付ける分岐位置にずれが発生しやすく、分岐部の位置精度が低下するという問題もある。
そこで、本出願人は、テープ巻きに代えて汎用の結束バンドで分岐部を結束固定する分岐部結束方法を特開2005−27463号(特許文献1)で提供している。この結束方法では、図11(A)(B)に示すように、先ずワイヤハーネスの組立作業台1上に立設した電線保持具2を通して電線を布線し、この電線保持具2の上部に設けた電線保持棒2a、2b、2cの間を通して幹線Waより支線WbをT字状に分岐させている。次いで、電線束Wに対して、分岐部Pの電線束Wを電線保持具2から取り出さない状態で、一対の結束バンド3A、3Bを支線Wbの両側で幹線Waに巻き付ける。しかる後、結束バンド3A、3Bの先端側を交叉させ、他方の結束バンド3A、3Bの基部に設けた係止部3a、3bにそれぞれ挿入して係止させ、電線束Wの分岐点Pに対応する位置で結束バンド3A、3Bをたすき掛け状態に交叉させて締結している。なお、結束バンド3A、3Bは両者の基部を一定間隔に保持するための別体の補助部材4に挿通しておくことで作業性の向上を図っている。
また、分岐点Pにクリップ5を固定する場合には、図11(C)に示すように、クリップ5を有する別体の補助部材6を両方の結束バンド3A、3Bに挿通して保持させることで分岐点P付近にクリップ5を固定することができる。
特開2005−27463号公報
上記のように、図11(A)(B)に示す方法によれば、電線保持具2に保持された状態の電線束Wの分岐点Pに対し、その保持状態を維持しつつ汎用の結束バンド3A、3Bを用いて交叉状態に結束することができる。しかしながら、分岐点Pに対し結束バンド3A、3Bを巻回するには電線保持棒2a、2b、2cを巻き込まないように注意しながら電線保持棒2a、2b、2cの内側で巻き付け作業をする必要があり、更に、2本の結束バンド3A、3Bに対し、相互に相手側の係止部に挿通するように交叉させなければならず、その作業手順が複雑となる。
また、図11(C)に示す方法によれば、分岐点P付近にクリップ5を取り付けることもできるが、この場合、別体の補助部品6を別途必要とすると共に、分岐点Pの中心位置にクリップ5を取り付けることができれば、ワイヤハーネスを車体へ取り付ける場合、少ないポイントでワイヤハーネスを安定良く固定することが可能となるが、上記方法ではクリップ5の取付位置の位置決め手段がないので、分岐点Pに正確に合致する位置にクリップ5を取り付けるのが困難であるという問題がある。
本発明は上記した問題に鑑みてなされたもので、熟練を要することなく簡易な操作により電線保持具に保持された状態における分岐部に対し、汎用の結束バンドを交叉状態で結束可能な電線保持具および分岐部を有するワイヤハーネスの製造方法を提供することを課題としている。
上記課題を解決するため、本発明では、分岐部の電線を保持するための電線受部と、該電線受部をワイヤハーネスの組立作業台上に立設するための支柱とからなる分岐用電線保持具において、
前記電線受部は分岐点を中心として対向して配置された少なくとも2対の腕部を備えると共に、隣接する前記腕部間の隙間部分を布線される電線束の支持部とし、前記分岐点を中心として対向する各腕部の内面には結束バンドを一方の腕部から他方の腕部に向けてU字状に屈曲しながら案内する案内溝をそれぞれ形成し、該案内溝は前記支持部に支持される電線束に対し該電線束に干渉しないように該電線束の下方を通過する案内軌道に沿って形成していることを特徴とする分岐用電線保持具を提供している。
上記構成によれば、電線受部の各腕部間の支持部によって分岐形態に保持された電線束に対し、支持部による支持状態を維持したままで、対向する腕部に形成した案内溝に沿って結束バンドを挿入するのみの容易な操作により、分岐部の外周位置に結束バンドを交叉させた状態で配置することができる。そして、各結束バンドのそれぞれの係止部に対し結束バンドの先端部を順次挿入して締め付けることで分岐部に対し結束バンドによる交叉状態の固定化を実行することができる。
また、前記案内溝は結束バンドの幅寸法に略対応する溝幅と結束バンドの厚み寸法より深い溝深さに設定するのが好ましい。
このように構成すれば、結束バンドを分岐部の外周に対し交叉状態に案内する所要経路から外れることがなく、かつ支持された電線束に干渉することもなく、結束バンドを容易かつ確実に所要位置に配置することができる。
また、前記分岐点に対応する電線受部の基部には、前記結束バンドが挿通される挿通口を備えたクリップを嵌合保持可能な嵌合凹部を更に備え、前記各腕部に形成された案内溝の案内軌道の一部を前記嵌合凹部に保持されたクリップの挿通口によって代用させる構成としてもよい。
このようにすれば、電線受部に保持された電線束の分岐点に取り付けるべきクリップを電線受部の基部に配置して位置決めしておくことができ、このクリップに対し、案内溝の軌道に従って結束バンドを挿入するのみで、クリップの挿通口に結束バンドを交叉状態で挿通することができる。よって、結束バンドをそれぞれ分岐部に対し交叉状態で締め付けると同時にクリップを分岐点に対し精度よく位置決め固定することができる。
また、他の発明では、前記分岐用電線保持具を用いて、分岐部を有するワイヤハーネスを製造するに際し、前記電線受部の対向する支持部間に沿って電線を布線すると共に、布線される電線の一部を他の支持部側へ分岐させるように布線して少なくとも十字状に分岐する分岐部を構成し、
次いで対向する前記各腕部の案内溝に沿って一方の腕部から他方の腕部へ向けて結束バンドを先端部側からそれぞれ順次挿入して各結束バンドを電線束の分岐点の下面側を通してU字状に案内し、
対向する前記他方の腕部から突出した各結束バンドの先端部を基端部の係止部に挿通して締め付けることで電線束の分岐部に対し各結束バンドを交叉状に締め付け固定するようにしたことを特徴とする分岐部を有するワイヤハーネスの製造方法を提供している。
このような手順で、分岐用電線保持具によって電線束を所要の分岐形態に布線した後、各腕部に形成された案内溝に沿って互いに対向する反対側の腕部に向けて結束バンドを挿通するのみで、電線束に対し結束バンドを分岐点で交叉させた状態で案内配置することができる。よって、対向する腕部間に挿通された結束バンドを係止部で締め付るのみで、電線受部に電線束を保持した状態のまま分岐部に対し結束バンドを交叉状に締め付け固定することができる。
また、分岐部にクリップを取付固定する場合には、
前記電線受部の基部に設けた嵌合凹部に、前記結束バンドの挿通口を備えたクリップを嵌合保持し、
次いで前記電線受部の対向する支持部間に沿って電線を布線すると共に、布線される電線の一部を他の支持部側へ分岐させるようにして布線して少なくとも十字状に分岐する分岐部を構成し、
次いで対向する前記各腕部の案内溝に沿って一方の腕部から他方の腕部へ向けて結束バンドを先端部側からそれぞれ順次挿入して各結束バンドを電線束の分岐点の下面側で前記クリップの挿通口を通過させるようにしてU字状に案内し、
対向する前記他方の腕部から突出した各結束バンドの先端部を基端部の係止部に挿通して締め付けることで電線束の分岐部に対し各結束バンドを交叉状に締め付け固定すると共に、電線束の分岐点の下面側に前記クリップを固定するようにしたことを特徴とする分岐部を有するワイヤハーネスの製造方法を提供している。
このようにすれば、電線受部の基部に設けた嵌合凹部に予めクリップを嵌合配置しておくのみで、前記結束バンドを交叉状に案内配置する操作と同様の作業によって、クリップの挿通口に結束バンドを挿通することができる。よって、結束バンドを締め付け操作すると同時に電線受部に保持された電線束の分岐点に対し精度良くクリップを位置決め固定することができる。
以上の説明より明らかなように、本発明の電線保持具によれば、ワイヤハーネスの分岐部として電線受部に、所要の分岐形態に保持された電線束に対し、汎用の結束バンドを外周に交叉状に配置すべく対向する腕部に設けた案内溝によって案内することができる。よって、電線保持具から電線束を取り外すことなく、かつ汎用の結束バンドを用いて、簡易な操作により分岐部に対し結束バンドを交叉状の所要位置に配置することができる。
また、分岐部を有するワイヤハーネスの製造方法によれば、電線受部の対向する腕部に形成された案内溝に沿って汎用の結束バンドを挿通し、挿通された結束バンドの先端をその基部に設けた係止部に挿通して締め付けるのみで、分岐部に対し結束バンドを交叉状態で締め付け固定したワイヤハーネスを提供することができる。
更に、クリップを備えた分岐部を製造する場合においても、クリップを電線受部の嵌合凹部に嵌合保持した状態で、同様に結束バンドを対向する腕部の案内溝に沿って挿入するのみで、分岐点に正確に位置決めされたクリップを備えたワイヤハーネスを提供することができる。
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1〜図6は分岐用の電線保持具の第1実施形態を示し、この電線保持具10は布線される電線束Wを受け入れて保持する合成樹脂製の電線受部11を上端に備えた金属製の支柱12と、この支柱12をワイヤハーネスの組立作業台Tの所定位置に取付固定するためのボルト・ナットからなる取付部13とから構成している。
電線受部11は、ワイヤハーネスの分岐部Aに布線される電線束を所要方向に案内するために分岐点Pに対応する基部11aの中心位置から四方に向けて延出すると共に略垂直上方へ立設した4本の腕部13A、13B、13C、13Dを備えている。この四本の腕部13A、13B、13C、13Dの隣接する溝状の隙間部分を布線される電線束Wを受け入れて支持する支持部14A、14B、14C、14Dとし、その基端部14a、14b…を電線束Wの高さ方向の支持位置を規制する部分としている。なお、電線受部11は支柱12に対し着脱して各種形状のものに対応することができるように支柱12の上端に形成した雄ネジ部12aに対応する雌ネジ部15を備えている。
また、対向する2対の腕部13A、13Cおよび腕部13B、13Dの内面には、一方から他方に向けてその軌道がU字状に屈曲した経路となる案内溝13a、13bを形成している。案内溝13a、13bは、案内すべき後述の結束バンドB1、B2の幅寸法に略対応すると共に厚さ寸法より深く形成した断面凹状に形成している。また、案内溝13a、13bは電線保持具10に保持された電線束Wの外周に干渉することがないように、その外周より外側下方を通過する軌道に沿って形成されている。即ち、電線束Wを支持する支持部14A、14B、14C、14Dの基端部14a、14b…の高さ位置より、結束バンドB1、B2の案内溝13a、13bの下端位置が下方になる寸法設定としている。案内溝13a、13bの上端の入り口付近では、案内溝13a、13bに対する結束バンドB1、B2の挿通作業を容易にするため、上方外方に向けて緩い角度で傾斜する導入傾斜面13cを形成している。
図4(A)(B)は、汎用の結束バンドB1、B2を示し、ワイヤハーネスの分岐部Aに対し、交叉させた状態で結束するのに十分な長さのバンド本体部Baと、一端に設けた係止部Bbとからなっている。バンド本体部Baの内面には係止部Bbの係止爪Bcに係止してラッチ機構を構成するための係止溝Bdを備えている。
次に上記構成からなる電線保持具10を用いて十字状の4方向に交差する分岐部Aを有するワイヤハーネスの製造工程について説明すると、
先ず、ワイヤハーネスの組立作業台上の布線経路に沿って立設されたU字状の通常の電線受具(図示せず)に沿って電線を布線する。分岐点Pに対応する位置には、分岐用の電線保持具10を立設しておき、図3(A)(B)に示すように、幹線Waを支持部14Aから14Cにわたって係止するようにして直線方向に布線する。そして、幹線Waから分岐すべき支線Wbを分岐点Pにおいて幹線Waに対し直交する方向に向けて布線し、支持部14B、14Dにそれぞれ係止する。このようにして、電線束Wによる十字状の分岐部Aが構成される。
次いで、図5(A)に示すように、対向する2対の腕部13A、13Cと腕部13B、13Dのうち、先ず一方の腕部13Cにおける案内溝13aの始点に沿って結束バンドB1を先端側から対向する他方の腕部13Aに向けて挿入する。挿入された結束バンドB1は案内溝13aに案内されながら分岐部Aを構成する幹線Waおよび支線Wbの基部に干渉することなく、その下方の軌道を通ってU字状に屈曲し、対向する反対側の腕部13Aにおける案内溝13aの端部から突出する。次いで、図5(B)に示すように、腕部13Aから突出した結束バンドB1の先端部を対応する基端部の係止部Bbに挿通して締め付け操作する。
そして、他方の腕部13B、13Dの案内溝13bにも上記と同様の操作により結束バンドB2を挿入すると共に、突出した先端部を係止部Bbに挿通して締め付け操作する。このようにして、分岐部Aを構成する電線束W(幹線Wa、支線Wb)に対し2本の結束バンドB1、B2を交叉状に締め付け固定することで、所要の分岐点Pに対し精度よく合致する分岐部Aを形成することができる。このように、電線保持具10から幹線Waおよび支線Wbを持ち上げることなく支持部14A、14B、14C、14Dに支持させた状態で電線束Wの分岐部Aに対し結束バンドB1、B2を下面側で交叉させた状態で定位置に配置すると共に、締め付け操作することができる。
以上のように、分岐用の電線保持具10を用いることで、汎用の結束バンドB1、B2を用い、かつ、それぞれの結束バンドB1、B2の独立した通常の締め付け操作により分岐部Aに対し、結束バンドB1、B2を交叉状に締め付け操作することができる。更に、結束バンドB1、B2による締め付け操作までの間、電線保持具10に布線された幹線Waおよび支線Wbは、支持部14A、14B、14C、14Dに支持したままで、持ち上げる必要がないので、電線束Wが引っ張られることによる分岐点Pの位置ズレを生じることもなく、簡易な操作により分岐点Pに対する位置決め精度のよい分岐部Aを有するワイヤハーネスを製造することができる。
図7〜図11は第2実施形態の分岐用の電線保持具20を示し、上記第1実施形態の電線保持具10に対し、電線受部21の基部21aにクリップCを嵌合保持可能な嵌合凹部26を更に備えた構成としている。即ち、図8(A)〜(C)に示すように、2本の結束バンドB1、B2の中間部に別体のクリップCを挿通することで分岐部AにクリップCを装着可能とするものである。このクリップCは、結束バンドB1、B2が重ねて挿通される挿通孔Caを形成した台部Cbと、車体の係止孔に嵌合して係止するための係止爪Ccが突設された固定部Cdと、台部Cbと固定部Cdとの中間部に形成された皿部Ceとから構成されている。
第2実施形態の電線保持具20は、布線される電線束Wを受け入れて保持する合成樹脂製の電線受部21を第1実施形態と同様に、金属製の支柱12の上端に着脱可能に取り付けている。この電線受部21は、ワイヤハーネスの分岐部Aとして布線される電線束Wを所要方向に案内するために分岐点Pに対応する基部21aの中心位置から四方に向けて延出すると共に略垂直上方へ立設した4本の腕部23A、23B、23C、23Dを備えている。この4本の腕部23A、23B、23C、23Dの隣接する溝状の隙間部分を布線される電線束Wを受け入れて支持する支持部24A、24B、24C、24Dとし、その基端部24a、24b…を電線束Wの高さ方向の支持位置を規制する部分としている。なお、電線受部21は支柱12に対し着脱して各種形状のものに対応する雌ネジ部25を備えている。
第2実施形態では、基部21aに嵌合凹部26を備える分、各腕部23A、23B、23C、23Dは、第1実施形態に比べてより外方へ拡がった位置に形成されているが、支持部24A、24B、24C、24Dの幅、即ち、保持すべき電線束Wの太さがに応じて、各腕部23A、23B、23C、23Dの幅寸法を広くすることで、各支持部24A、24B、24C、24Dの間隔を調整して対応させることができる。対向する対の腕部23A、23Cおよび腕部23B、23Dの内面には、一方から他方に向けてその軌道がU字状に屈曲した経路となる案内溝23a、23bを形成している。案内溝23a、23bは、案内すべき結束バンドB1、B2の幅寸法に略対応すると共に厚さ寸法より深く形成した断面凹状に形成している。また、案内溝23a、23bは電線保持具20に保持された電線束Wの外周に干渉することがないように、その外周より外側下方を通過する軌道に沿って形成されている。即ち、電線束Wを支持する支持部24A、24B、24C、24Dの基端部24a、24b…の高さ位置より、結束バンドB1、B2の案内溝23a、23bの下端を下方位置に設定している。案内溝23a、23bの上端の入り口付近では、案内溝23a、23bに対する結束バンドB1、B2の挿通作業を容易にするため、上方外方に向けて緩い角度で傾斜する導入傾斜面23cを形成している。
図7(B)(C)に示すように、電線受部21の基部21aの内面には、各腕部23A、23B、23C、23Dに形成された案内溝23a、23bの経路の途中を分割するようにして、クリップCを嵌合保持可能な嵌合凹部26を形成している。嵌合凹部26は、クリップCに対し結束バンドB1、B2が交叉して挿通される向きにクリップCを保持可能とするように、その長手方向が支持部24A、24Cの方向に対応するように形成している。また、嵌合凹部26は、固定部Cdを嵌合保持する第1凹部26aと、皿部Ceを受け入れる第2凹部26bとからなっている。なお、第1凹部26aは係止爪Ccを閉じ方向に弾性変形させることで安定してクリップCを保持できる寸法に設定してもよい。また、嵌合凹部26は、クリップCを嵌合保持した状態で、台部Cbの挿通孔Caが各腕部23A、23B、23C、23Dの案内溝23a、23bによる案内軌道の一部を代用できる位置に挿通孔Caが配置される深さ寸法に設定している。
なお、その他の構成において第1実施形態と同様の部分は、同一符号を付してその説明を省略する。
次に上記構成からなる第2実施形態の電線保持具20を用いて分岐部を有するワイヤハーネスの製造について説明すると、
第1実施形態と同様に、ワイヤハーネスの組立作業台上の分岐点Pに電線保持具20を立設しておく。そして、この電線保持具20の嵌合凹部26に対し、図9(A)に示すように、クリップCの台部Cbおよび皿部Ceを嵌合するようにしてクリップCを電線受部21の基部21aに保持させておく。次いで、第1実施形態と同様に、幹線Waを支持部24Aから24Cにわたって係止するようにして直線方向に布線する。そして、幹線Waから分岐すべき支線Wbを分岐点Pにおいて幹線Waに対し直交する方向に向けて布線し、支持部24B、24Dにそれぞれ係止する。このようにして、分岐点Pに配置されたクリップCの上方に十字状の分岐部Aが構成される。
次いで、図9(B)に示すように、対向する2対の腕部23A、23Cと腕部23B、23Dのうち、先ず一方の腕部23Cにおける案内溝23aの始点に沿って結束バンドB1を先端側から対向する他方の腕部23Aに向けて挿入する。挿入された結束バンドB1は案内溝23aに案内されながら分岐部Aを構成する幹線Waおよび支線Wbの基部に干渉することなく、その下方の分岐点Pに配置されたクリップCの挿通孔Caに挿通され、更に所定の軌道を通ってU字状に屈曲し、対向する反対側の腕部23Aにおける案内溝23aの端部から突出する。次いで、腕部23Aから突出した結束バンドB1の先端部を対応する基端部の係止部Bbに挿通して締め付け操作する。
そして、他方の腕部23B、23Dの案内溝23bにも上記と同様の操作により結束バンドB2を挿入してクリップCの挿通孔Caを通過させると共に、突出した先端部を係止部Bbに挿通して締め付け操作する。このようにして、電線保持具20から幹線Waおよび支線Wbを持ち上げることなく支持部24A、24B、24C、24Dに支持させた状態で分岐部Aに対し結束バンドB1、B2を下面側で交叉させた状態で、かつクリップCを固定した状態で配置することができる。これにより、図10に示すように、分岐部Aを構成する電線束(幹線Wa、支線Wb)に対し2本の結束バンドB1、B2を交叉状に締め付け固定できると共に、分岐点Pの中心に対し精度よくクリップC付きの分岐部Aを形成することができる。
以上のように、分岐用の電線保持具20を用いることで、汎用の結束バンドB1、B2、クリップCを用い、かつ、それぞれの結束バンドB1、B2の独立した通常の締め付け操作により分岐部Aに対し、結束バンドB1、B2を交叉状に締め付け操作することができる。更に、結束バンドB1、B2による締め付け操作までの間、電線保持具20に布線された幹線Waおよび支線Wbは、支持部24A、24B、24C、24Dに支持したままで、持ち上げる必要がないので、電線束Wが引っ張られることによる分岐点Pの位置ズレを生じることもなく、簡易な操作により分岐点Pに対する位置決め精度のよい分岐部Aを有するワイヤハーネスを製造することができる。
また、上記各実施形態において、十字状の4方向への分岐の他に、対となる腕部の本数を増やすことにより、3本以上の結束バンドを用いた多方向の分岐部の結束にも同様に対応することができる。また、電線受部の材質としては、結束バンドの挿入操作時の滑りのよい合成樹脂製を用いた例を示したが、金属製等他の材質を用いてもよい。上記各実施形態では、2本の結束バンドを腕部に対し1本ずつ挿入して締め付け固定した手順を示したが、2本を各腕部に挿入してからそれぞれの締め付け操作を行うようにしてもよい。また、上記各実施形態では電線受部を支柱に対し着脱交換可能な例を示したが、一体のものであってもよい。
本発明に電線保持具の第1実施形態の斜視図である。 (A)は電線受部の平面図、(B)は正面図、(C)はX−X断面図である。 分岐部を有するワイヤハーネスの製造工程を示し、(A)は幹線および支線を布線した状態の正面図、(B)は平面図である。 (A)は結束バンドの正面図、(B)は側面図である。 (A)(B)電線受部に布線された電線束への結束バンドの装着工程を示す断面図である。 (A)電線受部に布線された電線束への結束バンドの締め付け状態を示す正面から見た断面図、(B)は平面図である。 第2実施形態の電線保持具を示し、(A)は斜視図、(B)は平面図、(C)はY−Y断面図である。 結束バンドと共に用いるクリップを示し、(A)は正面図、(B)は側面図、(C)は結束バンドを挿通した状態の平面図である。 (A)は電線受部の基部にクリップを配置した状態の平面図、(B)はZ−Z断面図である。 分岐部にクリップ付の結束バンドを締め付けた状態の底面図である。 (A)〜(C)は従来例を示す図である。
符号の説明
10、20 電線保持具
11、21 電線受部
11a、21a基部
12 支柱
13A、13B、13C、13D、23A、23B、23C、23D 腕部
13a、13b、23a、23b 案内溝
14A、14B、14C、14D、24A、24B、24C、24D 支持部
26 嵌合凹部
A 分岐部
B1、B2 結束バンド
Bb 係止部
C クリップ
Ca 挿通孔
Cb 台部
Cc 係止爪
Cd 係止部
Ce 皿部
W 電線束
Wa 幹線
Wb 支線
P 分岐点

Claims (5)

  1. 分岐部の電線を保持するための電線受部と、該電線受部をワイヤハーネスの組立作業台上に立設するための支柱とからなる分岐用電線保持具において、
    前記電線受部は分岐点を中心として対向して配置された少なくとも2対の腕部を備えると共に、隣接する前記腕部間の隙間部分を布線される電線束の支持部とし、前記分岐点を中心として対向する各腕部の内面には結束バンドを一方の腕部から他方の腕部に向けてU字状に屈曲しながら案内する案内溝をそれぞれ形成し、該案内溝は前記支持部に支持される電線束に対し該電線束に干渉しないように該電線束の下方を通過する案内軌道に沿って形成していることを特徴とする分岐用電線保持具。
  2. 前記案内溝は結束バンドの幅寸法に略対応する溝幅と結束バンドの厚み寸法より深い溝深さに形成している請求項1に記載の分岐用電線保持具。
  3. 前記分岐点に対応する電線受部の基部には、前記結束バンドが挿通される挿通口を備えたクリップを嵌合保持可能な嵌合凹部を更に備え、前記各腕部に形成された案内溝の案内軌道の一部を前記嵌合凹部に保持されたクリップの挿通口によって代用させる構成としている請求項1または請求項2に記載の分岐用電線保持具。
  4. 前記請求項1または請求項2に記載の分岐用電線保持具を用いた分岐部を有するワイヤハーネスの製造方法であって、
    前記電線受部の対向する支持部間に沿って電線を布線すると共に、布線される電線の一部を他の支持部側へ分岐させるように布線して少なくとも十字状に分岐する分岐部を構成し、
    次いで対向する前記各腕部の案内溝に沿って一方の腕部から他方の腕部へ向けて結束バンドを先端部側からそれぞれ順次挿入して各結束バンドを電線束の分岐点の下面側を通してU字状に案内し、
    対向する前記他方の腕部から突出した各結束バンドの先端部を基端部の係止部に挿通して締め付けることで電線束の分岐部に対し各結束バンドを交叉状に締め付け固定するようにしたことを特徴とする分岐部を有するワイヤハーネスの製造方法。
  5. 前記請求項3に記載の分岐用電線保持具を用いた分岐部を有するワイヤハーネスの製造方法であって、
    前記電線受部の基部に設けた嵌合凹部に、前記結束バンドの挿通口を備えたクリップを嵌合保持し、
    次いで前記電線受部の対向する支持部間に沿って電線を布線すると共に、布線される電線の一部を他の支持部側へ分岐させるようにして布線して少なくとも十字状に分岐する分岐部を構成し、
    次いで対向する前記各腕部の案内溝に沿って一方の腕部から他方の腕部へ向けて結束バンドを先端部側からそれぞれ順次挿入して各結束バンドを電線束の分岐点の下面側で前記クリップの挿通口を通過させるようにしてU字状に案内し、
    対向する前記他方の腕部から突出した各結束バンドの先端部を基端部の係止部に挿通して締め付けることで電線束の分岐部に対し各結束バンドを交叉状に締め付け固定すると共に、電線束の分岐点の下面側に前記クリップを固定するようにしたことを特徴とする分岐部を有するワイヤハーネスの製造方法。
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