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JP4766310B2 - 送信装置及び送信方法 - Google Patents

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  • Digital Transmission Methods That Use Modulated Carrier Waves (AREA)
  • Cable Transmission Systems, Equalization Of Radio And Reduction Of Echo (AREA)

Description

本発明は、信号を送信する前に伝送路歪みを軽減するよう周波数領域において等化を行うFDE(Frequency Domain Equalization)方式を採用する送信装置及び送信方法に関するものである。
まず、受信側で周波数領域等化を行うシングルキャリアブロック伝送方式を説明する。この方式は、送信信号として、複数の情報シンボルから構成された信号ブロックを送信し、受信側でこのブロック単位で周波数領域等化や復調の処理を行う方式である。
特にこの方式は、送信ブロック末尾をそのブロックの先頭にコピー(この部分をサイクリックプレフィクス(Cyclic Prefix: CP)という)してデータを送信し、受信側で周波数領域等化を行うことが特徴である。周波数領域等化により、伝送路特性の影響が除去され、伝送データビット誤り率が改善される。
しかし、受信装置側で周波数領域等化回路が必要なために、受信装置の構成が大きくなる。
そこで、受信装置側で施していた周波数領域等化処理を、送信装置で送信前に実施することが行われている。
これによれば、受信装置側の周波数領域等化回路が不要となり、復調データからCP部を除去するだけでよい。したがって、受信装置の構成が簡単になる。
留場宏道、他「周波数領域等化送信ダイバーシチを用いたMC−CDMA上りリンクの誤り率特性」信学技報TECHNICAL REPORT OF ICICE. RCS2004-67(2004-05), p67-72. 林和則「変復調と等化方式の基礎(Fundamentals of Modulation/Demodulation and Equalization Technologies)」Proc. MWE2004, pp.523-532, 2004
前記送信前周波数領域等化を施すと、送信する信号電力及び信号電力の変化幅が増大する。そのため、送信装置の信号処理回路がオーバフローするので余裕のある信号処理回路が必要となったり、ダイナミックレンジの大きな増幅器が必要となったりする。このため、送信装置の大型化、高消費電力化を招く。
そこで、送信装置に対しても、周波数領域等化の効果を維持しながらも、ある程度送信電力やその変動を軽減することのできる通信方式の改良が望まれている。
そこで本発明の目的は、送信前の周波数領域等化の処理内容を工夫して、信号電力及び信号電力の変化幅が大きく増大しないようにすることができる送信装置及び送信方法を提供することである。
本発明の送信装置は、送信信号をフーリエ変換するフーリエ変換部と、前記フーリエ変換された周波数領域の送信信号に対して伝送路特性を表す関数の逆数を乗算することにより周波数領域等化を行う等化演算部と、周波数領域等化された信号を逆フーリエ変換する逆フーリエ変換部とを備える。前記等化演算部は、前記伝送路特性を表す関数(一般に複素数で表される)の逆数の振幅がある制限値Mを超えた場合、前記伝送路特性を表す関数の逆数の振幅がその制限値Mを超える部分を一定値に制限して、周波数領域等化を行う。
このように、信号スペクトルに伝送路周波数特性の逆特性(伝送路逆特性)を乗算するときに、伝送路逆特性の振幅を制限値M以下に制限することにより、送信する信号電力やその変動の増大を抑えることができる。
前記制限値Mは、前記伝送路特性を表す関数の振幅の最大値を1に規格化した場合、当該伝送路特性を表す関数の振幅の逆数の最小値(つまり1のこと)から最大値までの範囲内の値をとることが望ましい。この範囲よりも小さくなると、送信信号電力を制限しすぎることになり、電力制限の効果は増えるが、送信信号のビット誤り率(BER)が増大する。また、この範囲よりも大きくしても、伝送路特性を表す関数の逆数の振幅は常にM未満であるので、振幅を制限する意味はなくなる。
前記制限値Mは、前記範囲の中で、最大値に近づくほど等化特性は良いが電力制限効果は小さくなり、最小値に近づくほど、送信電力抑制の効果が増大するが等化特性は低下する。
このことから考えると、電力制限効果と等化効果のバランスをとるには、Mは最小と最大の中間あたりが良いと考えられる。そこで、前記制限値Mは、特に、前記伝送路特性を表す関数の振幅の逆数の最小値と最大値との平均値に近い値をとることが望ましい。平均値の種類としては、前記伝送路特性を表す関数の振幅の逆数を伝送信号のスペクトル帯域にわたって積分し、その積分値をスペクトル帯域で割って平均値を求めてもよく、前記最大値と最小値の中間値(最大値+最小値)/2を平均値としてもよい。
さらに、本発明の送信装置は、前記逆フーリエ変換部で逆フーリエ変換された時間領域の信号の振幅が、ある所定値Rを超える場合、その振幅値を一定値に制限する時間領域振幅制限部をさらに備えている。この方法では、周波数領域等化を行うときの振幅制限と、周波数領域信号を時間領域信号に変換後、時間領域での振幅制限とを併用することにより、ビット誤り率(BER)を大きく低下させないで、さらに効果的に、送信電力を抑制することができる。
また、本発明の他の局面では、周波数領域等化後の信号電力を周波数領域等化前の信号電力と同じにするため、周波数領域等化前の時間領域送信信号に対して、前記伝送路特性を表す関数の逆数の振幅値を含む係数を乗算する電力制御部をさらに備えている。
無線通信では、送信電力の値は法律で規定されているのが一般的であり、規定値にあわせる必要がある。従来から、一般的には、送信端にて送信電力を検出してその値が基準値となるように送信装置信機の利得をフィードバック制御する自動レベル制御(ALC)が行われるが、本発明では、等化演算に用いた前記伝送路特性を表す関数の周波数スペクトルを用いることにより、等化後の送信電力が算出できるので、この等化後の送信電力をフィードバック制御に用いれば、送信端でレベル制御をしなくても、周波数領域等化後の送信電力を周波数領域等化前と同等にすることができる。
また、本発明の送信方法は、伝送路の周波数特性を推定し、送信信号をフーリエ変換し、前記フーリエ変換された周波数領域の送信信号に対して、前記伝送路特性を表す関数の逆数の振幅がある制限値Mを超えた場合、前記伝送路特性を表す関数の逆数の振幅がその制限値Mを超える部分を一定値に制限して前記伝送路特性を表す関数の逆数を乗算することにより周波数領域等化を行い、周波数領域等化された信号を逆フーリエ変換し、前記逆フーリエ変換された時間領域の信号の振幅が、ある所定値Rを超える場合、その振幅値を一定値に制限し、この時間領域で振幅制限された信号を送信する方法である。この方法は、前記送信装置の発明と同一発明にかかる送信方法である。
また、本発明の他の局面における送信方法は、周波数領域等化後の信号電力を周波数領域等化前の信号電力と同じにするため、周波数領域等化前の時間領域送信信号に対して、伝送路特性を表す関数の逆数の振幅値を含む係数を乗算し、送信信号をフーリエ変換し、前記フーリエ変換された周波数領域の送信信号に対して、伝送路特性を表す関数の逆数の振幅がある制限値Mを超えた場合、前記伝送路特性を表す関数の逆数の振幅がその制限値Mを超える部分を一定値に制限して前記伝送路特性を表す関数の逆数を乗算することにより周波数領域等化を行い、周波数領域等化された信号を逆フーリエ変換し、この逆フーリエ変換された信号を送信する方法である。この方法は、前記送信装置の発明と同一発明にかかる送信方法である。
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、シングルキャリアブロック伝送方式を採用した本発明の送信装置及び受信装置を示すブロック図である。
まず、送信装置側における処理を説明する。送信装置は、変調部2、CP付加部3、周波数変換部4、アンテナ5などからなる通常の送信装置の構成に加えて、周波数領域等化部1を備えている。
送信しようとする送信データs(t)は、変調部2において、Mシンボルごとにブロック化される。tは離散時間である。
このブロック化された送信信号s(t)の各ブロックにパイロット信号を挿入する。
挿入方法は、例えば、CP(Cyclic Prefix)とデータの間にパイロット信号を挿入してもよく、データチャネルに抑圧されたパイロット信号を重畳してもよい。パイロット信号として、形の分かっている信号なら何でもよく、例えばチャープ(chirp)信号やPN (Psuedorandom Noise) 信号系列を用いる。
次に、周波数領域等化部1において、送信信号ブロックを離散フーリエ変換する。離散フーリエ変換された周波数領域の信号をS(f)と書く。
そして、伝送路特性を表す所定の周波数伝達関数H(f)に基づいて、送信前の周波数領域等化処理を行う。この周波数領域等化は、信号S(f)に対して周波数成分ごとに伝達関数H(f)の逆数1/H(f)を乗算し、離散逆フーリエ変換によって再び時間領域の信号に戻す処理である。この詳細な内容は後述する。
次に、CP付加部3において、ブロック末尾部を先頭にコピーしてCPを付加する。
次にプリアンブル(Preamble)を生成する。プリアンブルには、例えば、PN 信号系列、チャープ信号などが考えられる。
このようにして生成されたプリアンブルをブロックに付加する。このように付加されたプリアンブルとブロックを「フレーム」という。なお、複数のブロックに1つのプリアンブルを付けてもよく、1つのブロックに1つのプリアンブルを付けて1フレームとしてもよい。
周波数変換部4は、このフレームに対して、周波数変換を行って、無線周波数信号を生成し、アンテナ5から放射されるようにする。
次に、受信装置側における処理を説明する。
受信装置では、アンテナ6から入力された受信信号を、周波数変換部7において、周波数変換する。復調部8では、この受信信号を復調する。CP除去部9は、フレームの先頭を検出し、フレームからブロックを切り出す。そして、このブロックから受信データを抽出し、受信データからサイクリックプレフィックスCPを除去して、送信されたデータを出力する。
次に、送信前の周波数領域等化処理の内容を、図2を参照しながら詳しく説明する。
周波数領域等化部1は、ブロック化された送信信号s(t)を離散フーリエ変換(FFT)するフーリエ変換部11、フーリエ変換後の信号S(f)に対して所定の周波数伝達関数H(f)に基づいて周波数領域等化処理を行う等化演算部12、周波数領域等化された信号S′(f)に対して離散逆フーリエ変換によって再び時間領域の信号に戻す逆フーリエ変換部13、並びに伝送路の伝達関数H(f)を推定する伝送路推定部14を有している。
伝送路推定部14おける伝送路の周波数伝達関数H(f)の求め方は、例えば、通信相手方からパイロット信号を送信してもらい受信装置で受信し、その歪みを測定してフーリエ変換してその周波数伝達関数H(f)を求めればよい。アンテナダイバーシチの例であるが、トリケップス企画部編「〜ディジタル放送/移動通信のための〜OFDM変調技術」p.102-p.108,p.115-p.120,株式会社トリケップス、2000年3月6日発行、などを参照。
等化演算部12は、伝送路特性の離散周波数伝達関数H(f)の逆数1/H(f)を算出して、フーリエ変換後の信号S(f)に乗算する。
グラフを用いて説明すると次のとおりである。
図3は、一例として、所定の形を持った周波数伝達関数H(f)の振幅|H(f)|を表すグラフであり、横軸に周波数をとっている(以下、周波数伝達関数H(f)の振幅|H(f)|を単に「周波数伝達関数|H(f)|」と書くことがある)。
この周波数伝達関数|H(f)|は、周波数f0、レベル差が3dB、時間差が2シンボル時間(2Ts;Tsは1送信シンボル時間)の2つの電波のマルチパス伝送路をモデルとして算出したものである。
周波数伝達関数|H(f)|の大きさは、そのピークを1に規格化している。|H(f)|の形は、中心周波数f0で1となり、中心周波数f0から離れるにつれて低下していき、周波数f0±1/4Tsで落ち込み(ノッチ)が生じている(これが伝送歪みの原因となる)。その後、再度上昇して、周波数f0±1/2Tsになると1に戻る関数である。
この周波数伝達関数H(f)の逆数の振幅|1/H(f)|をグラフに描くと、図4に示すようなグラフになる。|1/H(f)|は、前記ノッチのところで大きな値となる。
したがって、フーリエ変換した送信信号S(f)に1/H(f)をかけて周波数領域等化すると、周波数領域等化後の信号は、ノッチの部分の影響により、送信電力が増大するとともに、平均電力と最大電力の比(つまりダイナミックレンジ)も増大する。
そこで、等化演算部12において、図5に示すように、|1/|H(f)|の、規定値を超えた振幅を制限値Mに制限する。すなわち、周波数f1にて振幅値|1/|H(f1)|が規定値を超えた場合、
1/H(f1)=M×exp[j∠(1/H(f1))] (∠は位相角)
とする。つまり位相角はそのままで振幅のみを制限する。制限値Mを超えない周波数f2では、1/|H(f2)|は変更なく、次のように表される。
1/H(f2)=|1/H(f2)|×exp{j∠(1/H(f2))}
例えば256点のフーリエ変換を用いる場合、256点の1/|H(f)|がある。これらの全ての振幅値について上記規定値を超えているかどうかの評価を実施する。
以上の計算例では、周波数伝達関数|H(f)|の逆数の振幅|1/H(f)|が制限値を超えたかどうかを調べているが、周波数伝達関数の振幅|H(f)|(図3)が制限値M′(=1/M)を下回ったかどうかを調べて、制限値M′を下回った周波数f1では、
H(f1)=M′×exp{j∠(H(f1))}
とし、制限値M′を下回らなかった周波数f2では、
H(f2)=|H(f2)|×exp{j∠(H(f2))}
とし、その後、H(f)の逆数1/H(f)を求めても良い。1/H(f)の振幅最大値をMに制限するなら、H(f)の振幅最小値を1/Mに制限しても同じことである。実際には逆数演算時(1/X)時にオーバフローが起こることがあるので後者の方が望ましい場合がある。
次に、周波数伝達関数H(f)の逆数の振幅|1/H(f)|を、制限値Mで制限することの効果を説明する。
図6は、制限値Mをいろいろと変えて、送信電力をシミュレーションしてプロットしたグラフである。破線の曲線aは最大電力、実線の曲線
は平均電力を表す。
変調方式はQPSK(帯域制限無し)としている。
図6の横軸は、制限値Mの値を表す。制限値Mを1から9までとっている。M>6になると、Mは実質的に無限大と同じになる。これは、図4に示すように、|1/H(f)|の最大値が6になっており、これ以上制限値Mを大きくしても、振幅制限の効果は同じだからである。なお、最大値6という数値は、「レベル差が3dB、時間差が2シンボル時間(2Ts;Tsはシンボル時間)の静的2波のマルチパス伝送路」を想定した本モデルの場合であり、実際には|1/H(f)|の最大値は、伝送路の形態に応じた値をとることはもちろんである。
一方、制限値の最小値M=1の場合は、フーリエ変換後の信号S(f)を、常に最小値1に制限していることに相当する。なお、最小値がM=1となる理由は、周波数伝達関数|H(f)|のピークを1に規格化したからである。周波数伝達関数|H(f)|のピークを他の値に規格化したならば、最小値Mの値もそれに応じた値となる(例えばピークを2に規格化した場合、最小値は1/2になる)。
図6の縦軸は、等化演算部12に入力される周波数領域等化前の信号の電力を基準(0dB)にしたときの、周波数領域等化後の信号の相対電力(dB)をとっている。
このグラフから、制限値M=6以上のとき、周波数領域等化する前(0dB)に比べ、平均電力は8dB上昇し、最大電力つまり変化幅は15dB上昇している。
制限値Mを低下させていくと、例えばM=3に設定すると、周波数領域等化する前(0dB)に比べて、平均電力は5.5dB上昇し、最大電力は13dB上昇している。つまり、制限値M=6のときに比べて、平均電力の上昇が2.5dBだけ抑えられ、最大電力の上昇が2dBだけ抑えられている。
したがって本発明の周波数領域の制限により、信号電力の増大、変動を抑制する効果があることがわかる。
制限値Mを1まで低下させると、周波数領域等化前に比べて、平均電力は同じになり、最大電力は6dB上昇に留まる。
図7は、図6と同じ条件における等化効果すなわちビット誤り率への影響を示すグラフである。横軸にキャリア対雑音比(CNR)をとり、縦軸にビット誤り率(BER)をとっている。
制限値Mを過度に小さく(例えばM=1又は2)すると、信号電力の増大、変動を抑制することができるものの、最適な周波数領域等化条件を満たさなくなるので、ビット誤り率(BER)が全体的に増大している。
一方、制限値Mを無限大に近く(例えばM=6)にすると、同じCNRでも、ビット誤り率(BER)は低下するが、図6で見たように信号電力の増大、変動を来す。
したがって、信号電力の増大、変動を抑制する観点から制限値Mは小さいほうがよく、等化効果を維持し低いビット誤り率(BER)を確保する観点から制限値Mは大きいほうがよい。
電力制限効果と等化効果のバランスをとるには、Mは最小値と最大値の中間あたりが良いと考えられる。例えば、前記制限値Mは、|1/H(f)|の最小値と最大値との平均値に近い値をとることが望ましい。平均値のとり方としては、|1/H(f)|を伝送信号のスペクトル帯域にわたって積分し、その積分値をスペクトル帯域幅で割って平均値を求めてもよく、前記最大値と最小値の中間値(最大値+最小値)/2を平均値としてもよい。
図6の例では、|1/H(f)|の最小値は1,最大値は6であり、平均値(中間値)は3.5である。
図7のグラフを参照すると、M=3にすると、ビット誤り率(BER)は振幅制限なしの場合と比べ1〜2dB程度上昇するのみであり、問題なく使用できることがわかる。
したがって、「Mは|1/H(f)|の最小値と最大値の中間あたりが良い」という基準が妥当であることが分かる。なお、前記「・・あたり」とは、前記平均値(又は中間値)の近傍を意味する言葉である。
発明者は、特にMを平均値(又は中間値)より小さめ(+0%,−20%)の範囲内で選択することが好ましいと考えている。なぜなら、Mが前記平均値(又は中間値)を超える場合は、電力抑制効果が小さくなる方向にあるため、BERの劣化量を一般的な許容値に収めることが難しくなることがある。そこで、BERの劣化量を一般的な許容値に収めるために、Mを平均値(又は中間値)より小さめ(+0%、−20%)の範囲内で選択することが好ましいからである。
次に、本発明の他の実施形態を、図8を用いて説明する。
この図8の送信装置の構成では、図2の構成に加えて、時間領域で振幅を制限する振幅制限部16を設けている。
振幅制限部16は、周波数領域等化演算後、逆FFTで時間領域の信号に変換した信号において、時間領域で振幅制限をかける。つまり振幅が振幅制限値R以上の場合、Rに制限する。
すなわち、離散逆フーリエ変換した時間領域の信号s'(t)を次のように表すとすれば、
s'(t)= real[a(t)×exp(jωt+θ(t) )]
時間t1にて振幅値|a(t1)|が制限値超えた場合、s'(t1)を
s'(t1)= real{ R×exp(jωt1+θ(t) }
と制限する。
振幅制限値Rは、固定値に設定するとよい。
その固定値の決め方は設計に応じて行えばよい。例えば、振幅制限部16の出力信号の電力が、等化演算部12に入力される信号S(f)の平均電力の、例えば2.81倍(9dB)に制限されるようにRを設定する。
ここで、周波数伝達関数H(f)の逆数|1/H(f)|を前記制限値Mで周波数領域制限することに加えて、時間領域制限値Rで制限することの効果を、グラフを用いて説明する。
以下、時間領域制限値Rは、等化演算部12に入力される信号の平均電力の2.81倍(9dB)に固定されているものとする。
図9は、周波数領域制限とともに時間領域制限を併用してみた場合の送信信号の相対電力の低下を示すグラフである。グラフ中の曲線a,bは、図6の曲線a,bと同じく周波数領域制限のみ行った場合の曲線であり、それぞれ最大電力と平均電力を表す。時間領域制限を併用した場合の曲線をそれぞれa',b'で表している。
グラフから、制限値M=最大値6のとき、時間領域制限した場合は、時間領域制限しないときに比べて、最大電力は15dBから6dB低下して9dBとなり、平均電力は8dBから2dB低下して6dBとなっている。R=9dBに時間波形を制限しているので当然であるが、9dBにて最大電力が制限されていることがわかる。
図10は、ビット誤り率への影響を示すグラフである。横軸にキャリア対雑音比(CNR)をとり、縦軸にビット誤り率(BER)をとっている。
図10のM=1からM=4のグラフは、周波数領域の制限と時間領域での制限とを適用したグラフである。図7のM=1からM=4のグラフ(時間領域制限をかけない場合)と比べて、時間領域制限をかけることで、BERは3dBほど劣化するにとどまっている。
一方、周波数領域の制限を適用せずに、時間領域での制限だけを適用したグラフをで示している。グラフでは、ビット誤り率(BER)が大幅に劣化していることがわかる。
以上のことから、周波数領域の制限に加えて、時間領域での制限を併用すると、BERの劣化を最小限に抑えつつ、時間領域の振幅制限により、最大電力をさらに大きく抑制することができる。
このように、周波数領域等化を行うときの振幅制限と時間領域での振幅制限とを併用することにより、ビット誤り率(BER)を大きく低下させないで、さらに効果的に、送信電力を抑制することができる。
次に、本発明のさらに他の実施形態を、図11を用いて説明する。
この送信装置の構成は、送信信号への係数の乗算により信号電力を周波数領域等化前と同じレベルになるよう制御するためのものである。
等化演算部12は、次の(1)〜(3)の処理を行う。
(1)「信号電力は、信号の離散周波数振幅スペクトルの2乗(|S(f)|2)の総和を離散周波数点数Nで割った値に等しい」という定理(パーセバルの定理)を用いれば、周波数伝達関数|H(f)|の最大値を1と正規化すると、信号電力は、周波数等化前の送信電力の
A=(1/N)×Σn{ |1/H(fn)| 2}
倍になる。等化演算部は、上式により、制御係数Aを算出する。
(2)この制御係数Aから、√(1/A)を算出する。
(3)等化演算部は、あらかじめ時間領域にて送信信号の振幅を√(1/A)倍する。
以上の処理により、周波数領域等化後の信号電力は周波数領域等化前の信号電力と同じにすることができる。
しかも、この制御により瞬時に送信信号電力を制御できるという特徴がある(一般にALCでは電力を検出してフィードバックするので制御遅れが発生する)。
次に、自動利得制御(ALC)を併用した本発明のさらに他の実施形態を、図12を用いて説明する。
この図12の実施形態によれば、図11の電力制御処理に加えて、送信装置の出力電力を検出して信号増幅器の利得を調整するフィードバック方式のいわゆる自動利得制御(ALC)を併用している。
この構成によれば、既に図11で説明した電力制御処理により送信電力は所望値に近づいているので、ALC制御が短時間で収束する効果が期待できる。
以上で、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の実施は、前記の形態に限定されるものではない。例えば、今まで説明した例は搬送波帯通信の場合であったが、ベースバンド通信の場合でも、本発明を適用できる。この場合、図1の送信装置、受信装置の周波数変換部、アンテナを省略するだけでよい。その他、本発明の範囲内で種々の変更を施すことが可能である。
次に、質問器とRF−ID装置(タグ)とからなる通信システムにおいて、本発明の適用例を説明する。
質問器は、タグ側の受信回路を簡単にするため、振幅変調(ASK)を用いて電波を送信し、受信側ではダイオードで包絡線検波することが多い。これは高周波信号の包絡線つまり送信されたデータをダイオード1個で取り出すことができるからである。
図13は、質問器とRF−ID装置(タグ)を示すブロック構成図である。
質問器は、送信回路Tと受信回路Rを有し、RF−ID装置も送信回路と受信回路を有している。
質問器は、送信信号に関しては、送信回路Tにおいて周波数領域等化処理を行い、受信信号に関しては、従来の受信側で周波数領域等化を行うシングルキャリアブロック伝送方式を採用し、質問器の受信回路Rにおいて周波数領域等化処理を行っている。
このように、送信・受信とも、質問器側で周波数領域等化処理を行うのは、RF−ID装置の受信回路の構成がICカードなどの制約を受けるため、受信側で周波数領域等化処理をすることが困難であるからである。
本方式を適用すれば、送信側で周波数領域等化することができ、従来よりも高速なデータ伝送が可能となる。
次に、ベースバンドデータ伝送装置に本発明を適用した例を説明する。
従来のRS422方式などのデータ伝送装置は、1Mbps程度以上の伝送速度で、伝送線路の長さが長く(例えば数10m以上)なると伝送路歪みが顕在化して、特性の良いケーブルを使用する等の対策が必要となる。
従来のデータ伝送装置の簡便な特徴を活かすためには、主装置に周波数領域等化機能を集合し、対向する従装置は簡素な構造とすることが望ましい。
そこで、図14に示すように、主装置から従装置への通信に送信前周波数領域等化を用い、逆方向には従来の受信後周波数領域等化を用いている。この構成により、主装置に周波数領域等化機能を集約することができ、従装置は簡素化される。
送信前に周波数領域等化を行う本発明の送信装置及び受信装置を示すブロック図である。 送信前の周波数領域等化を行う等化部の処理を説明するためのブロック図である。 伝送路特性を表す周波数伝達関数H(f)の振幅|H(f)|を表すグラフである。 周波数伝達関数H(f)の逆数の振幅|1/H(f)|のグラフである。 周波数伝達関数H(f)の逆数の振幅|1/H(f)|の、規定値を超えた振幅値を制限値Mに制限した様子を示すグラフである。 制限値Mを変えながら送信電力をシミュレーションしてプロットしたグラフである。 図6と同じく制限値Mを変えながら等化効果すなわちビット誤り率への影響を示すグラフである。 時間領域制限を併用した、本発明の他の実施形態の送信装置の構成を示すブロック図である。 周波数領域の制限とともに、時間領域制限を併用した場合の、周波数領域の制限のみに比べて相対電力の低下を示すグラフである。 図9と同じく制限値Mを変えながら等化効果すなわちビット誤り率への影響を算出した結果を示すグラフである。 本発明のさらに他の実施形態の送信装置の構成を示すブロック図である。 本発明のさらに他の実施形態の送信装置の構成を示すブロック図である。 本発明を適用した質問器とRF−ID装置(タグ)のブロック構成図である。 本発明を適用したベースバンドデータ伝送装置のブロック構成図である。
符号の説明
1 周波数領域等化部
2 変調部
3 CP付加部
4 周波数変換部
5 アンテナ
6 アンテナ
7 周波数変換部
8 復調部
9 CP除去部
11 フーリエ変換部
12 等化演算部
13 逆フーリエ変換部
14 伝送路推定部

Claims (6)

  1. 信号を送信する前に周波数領域において周波数領域等化を行う送信装置であって、
    送信信号をフーリエ変換するフーリエ変換部と、
    前記フーリエ変換された周波数領域の送信信号に対して伝送路特性を表す関数の逆数を乗算することにより周波数領域等化を行う等化演算部と、
    周波数領域等化された信号を逆フーリエ変換する逆フーリエ変換部とを備え、
    前記等化演算部は、前記伝送路特性を表す関数の逆数の振幅がある制限値Mを超えた場合、前記伝送路特性を表す関数の逆数の振幅がその制限値Mを超える部分を一定値に制限して、周波数領域等化を行うものであり、
    前記逆フーリエ変換部で逆フーリエ変換された時間領域の信号の振幅が、ある所定値Rを超える場合、その振幅値を一定値に制限する時間領域振幅制限部をさらに備えることを特徴とする送信装置。
  2. 前記制限値Mは、当該伝送路特性を表す関数の振幅の逆数の最小値から最大値までの範囲内の値をとる請求項1記載の送信装置。
  3. 前記制限値Mは、前記伝送路特性を表す関数の振幅の逆数の最小値と最大値との平均値近傍の値をとる請求項2記載の送信装置。
  4. 信号を送信する前に周波数領域において周波数領域等化を行う送信装置であって、
    周波数領域等化後の信号電力を周波数領域等化前の信号電力と同じにするため、周波数領域等化前の時間領域送信信号に対して、伝送路特性を表す関数の逆数の振幅値を含む係数を乗算する電力制御部と、
    前記係数が乗算された送信信号をフーリエ変換するフーリエ変換部と、
    前記フーリエ変換された周波数領域の送信信号に対して伝送路特性を表す関数の逆数を乗算することにより周波数領域等化を行う等化演算部と、
    周波数領域等化された信号を逆フーリエ変換する逆フーリエ変換部とを備え、
    前記等化演算部は、前記伝送路特性を表す関数の逆数の振幅がある制限値Mを超えた場合、前記伝送路特性を表す関数の逆数の振幅がその制限値Mを超える部分を一定値に制限して、周波数領域等化を行うものであることを特徴とする送信装置。
  5. 信号を送信する前に周波数領域において周波数領域等化を行う送信方法であって、
    送信信号をフーリエ変換し、
    前記フーリエ変換された周波数領域の送信信号に対して、伝送路特性を表す関数の逆数の振幅がある制限値Mを超えた場合、前記伝送路特性を表す関数の逆数の振幅がその制限値Mを超える部分を一定値に制限して前記伝送路特性を表す関数の逆数を乗算することにより周波数領域等化を行い、
    周波数領域等化された信号を逆フーリエ変換し、
    前記逆フーリエ変換された時間領域の信号の振幅が、ある所定値Rを超える場合、その振幅値を一定値に制限し、
    この時間領域で振幅制限された信号を送信することを特徴とする送信方法。
  6. 信号を送信する前に周波数領域において周波数領域等化を行う送信方法であって、
    周波数領域等化後の信号電力を周波数領域等化前の信号電力と同じにするため、周波数領域等化前の時間領域送信信号に対して、伝送路特性を表す関数の逆数の振幅値を含む係数を乗算し、
    送信信号をフーリエ変換し、
    前記フーリエ変換された周波数領域の送信信号に対して、伝送路特性を表す関数の逆数の振幅がある制限値Mを超えた場合、前記伝送路特性を表す関数の逆数の振幅がその制限値Mを超える部分を一定値に制限して前記伝送路特性を表す関数の逆数を乗算することにより周波数領域等化を行い、
    周波数領域等化された信号を逆フーリエ変換し、
    この逆フーリエ変換された信号を送信することを特徴とする送信方法。
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