近年、カメラ付きの携帯電話端末においては、持ち運びの利便性等から小型化、薄型化が要求されており、カメラ付きの携帯電話端末に用いられるレンズ駆動装置に対しても、当然に小型化、薄型化が要求されている。
しかし、特許文献1に開示されているレンズ駆動装置は、2枚のリンク板でレンズユニットを挟み込む構成を採用しているため、2枚のリンク板を配置するためのスペースをレンズ駆動装置内に確保する必要がある。また、レンズユニットの周囲にレンズ中心に対して対称となるよう駆動機構(アクチュエータ)を配置しているので、レンズの光軸と垂直な平面方向にアクチュエータを設置するための一定の空間が必要となる。これらの結果、レンズ駆動装置が厚く、かつ大型化し、そのレンズ駆動装置を用いたカメラ付き携帯電話端末が、厚く、大型になるという問題がある。
そこで、本出願人は、レンズ駆動装置を薄く、小型化するため、レンズを保持する可動鏡筒を移動させるアクチュエータを、レンズ光軸と直交するXY平面における一方向のみに配置し、そのXY平面の他の方向に弾性部材を配置する構成としたレンズ駆動装置を考案した。
図7は、考案したレンズ駆動装置の上面図であり、アクチュエータを2つ搭載して両側駆動とした例を表している。また図8は、図7に示すレンズ駆動装置のレンズ中心を通るB−B線に沿う断面図である。
このレンズ駆動装置は、可動部と固定部及びそれらを繋げる弾性部材から構成され、可動部がムービングマグネット方式のリニア駆動により光軸方向に移動することができる。
可動部側は、レンズ204を保持して光軸F方向へ移動可能なレンズ固定円筒205からなる可動鏡筒203とマグネット206、固定部側は、可動鏡筒203を収納する固定ホルダ202とヨーク207とコイル208から構成され、それらが弾性部材209によって連結されている。マグネット206、ヨーク207、コイル208は、可動鏡筒203を移動させる駆動機構(アクチュエータ)を構成しており、このレンズ駆動装置には2つのアクチュエータが設けられている。
可動鏡筒203は、内部に複数枚のレンズを格納するレンズ固定円筒205から構成され、そのレンズ固定円筒205の下部には、円柱面のXY平面上に、マグネット206を取り付けて固定するための鍔部205aが形成されている。
固定ホルダ202は、略正方形状の底部と、底部の周縁に沿った周壁部とからなり、上方に開口を有し、その内部に可動鏡筒203、アクチュエータ、弾性部材209を収納する。
4つの弾性部材209は、板状弾性体(板ばね)で構成され、各々の弾性部材209の一端は可動鏡筒203外壁のそれぞれの位置に、他端は固定ホルダ202の4角付近に各々固定されている。4つの弾性部材209は、同一平面(XY平面)内で蛇行した形状を有する。
アクチュエータは、略枡形(方形)の固定ホルダ202と可動鏡筒203に挟まれた空間の、光軸Fと直交するXY平面における一方向に設けられる。図7の例では、可動鏡筒203のX軸方向の両側に2つのアクチュエータが設けられ、両側駆動とされている。
このように構成されるレンズ駆動装置において、コイル208に電流を流すことによって、2つのマグネット206に光軸Fに平行な上方への推力が発生し、可動鏡筒203が固定部(固定ホルダ202)に対して弾性部材209による動作規制を保たれた状態で、光軸F方向へ移動(フォーカス動作)する。
図7の例においては、レンズ204を中心として各部品が対称に配置されているため、可動鏡筒203はフォーカス駆動時に光軸Fに対して垂直な姿勢を保持したままの動作が可能となっている。つまり、弾性部材209の弾性力(「ばね力」若しくは「反力」ともいう)中心212、可動鏡筒203の重量中心213、アクチュエータの推力中心214、以上3つの力点の光軸Fに対して垂直な平面座標系での位置が略一致する、したがって、フォーカス動作時には、可動鏡筒203が光軸Fに対して垂直姿勢が終始保持され、並進運動を行なう。
上述したように可動鏡筒203の移動時における動作姿勢保持の観点から、アクチュエータは2つ以上の対称配置とすることが好ましい。
しかし、レンズ駆動装置に占めるアクチュエータ、中でもマグネットは、単価比率が高く、レンズ駆動装置のコストを削減するために極力使用数を減らしたい部品の1つでもある。
そこで、上記コスト削減の観点から、本出願人は、アクチュエータを1つのみの構成としたレンズ駆動装置を考案した。
図9は、アクチュエータを1つ備えた構成のレンズ駆動装置の上面図である。また、図10は、図9に示したレンズ駆動装置のレンズ中心を通るC−C線に沿う断面図である。
図9において、図7に示したレンズ駆動装置と比較して異なる点は、2つ配置されていたアクチュエータのうち1つを除去し、1つのアクチュエータによる片側駆動のレンズ駆動装置とした点である。
図9に示すレンズ駆動装置は、可動部と固定部及びそれらを繋げる弾性部材を備え、可動部がムービングマグネット方式のリニア駆動により光軸方向に移動する。
可動部側は、複数枚のレンズ部材を有するレンズ304を保持して光軸F方向へ移動可能なレンズホルダ305からなる可動鏡筒303とマグネット306、また固定部側は、可動鏡筒303を収納する固定ホルダ302とヨーク307とコイル308から構成され、それらが4本の板状の弾性部材(板ばね)309によって連結されている。
本例における可動鏡筒303は、レンズ304の中心304aに対して非対称であり、かつX軸に対して対称な形状としている。
各々の弾性部材309の一端は、可動鏡筒303の外壁の所定位置にそれぞれ固定され、その他端は、固定ホルダ302の所定位置にそれぞれ固定され、可動鏡筒303と固定ホルダ302が連結される。各弾性部材309は、可動鏡筒303の重量中心313に対して、略対称に配置することが好ましい。
マグネット306、ヨーク307、コイル308は、磁気回路部を構成し、可動鏡筒303を光軸F方向に移動させる駆動機構(アクチュエータ)として機能する。アクチュエータは、可動鏡筒303に設けられた孔310に貫装されるような状態に設置される。
このレンズ駆動装置では、アクチュエータが1つのみであるため、アクチュエータによる推力中心314は、光軸Fに略直交する平面座標において、可動鏡筒303の重量中心313から外れる。
図10は、図9に示したレンズ駆動装置のA−A線に沿う断面図である。図10に示すように、略箱状の固定ホルダ302に、可動鏡筒303及び磁気回路構成からなるアクチュエータが収納されている。各々の弾性部材309と可動鏡筒303との固定部309a〜309dは、フォーカス動作前の初期位置において、一平面内に配置されている。ここで一平面内とは、光軸に対し略垂直で固定ホルダ302の底部からの高さが略同一の面をいう。
可動鏡筒303は、内部にレンズ304を固定するための円筒形状の空間を有する樹脂製のレンズホルダ305から構成され、そのレンズホルダ305の下部には、鍔部305aが形成されている。この鍔部305aには、マグネット306が載置され、固定される。
略箱状の固定ホルダ302は、略正方形状の底部と、底部の周縁に沿った周壁部とからなり、上方に開口を有し、その内部に可動鏡筒303、アクチュエータ、弾性部材309を収納する。
レンズ駆動装置の上方には、光を取り込むための円形の入射窓331を有する天面部品330が配置されている。
可動鏡筒3をレンズ304の光軸F方向に移動させるアクチュエータは、可動鏡筒303に設けられた孔310に貫装されるようにして、光軸Fと直交するXY平面における一方向に設けられる。図10の例では、可動鏡筒303のX軸方向の片側に1つのアクチュエータが設けられ、片側駆動により、可動鏡筒303を移動させる。
アクチュエータを構成するヨーク307は、固定ホルダ302の底部に立設され、その内側(レンズ中心4a側)にコイル308が設けられる。そして、レンズホルダ305の鍔部305aに載置されたマグネット306が、コイル308と対向配置され、レンズ駆動機構内の磁気回路が構成される。
このように構成されるレンズ駆動装置1において、コイル308に電流を流すことによって、1つのマグネット306に光軸Fに平行な上方への推力が発生し、可動鏡筒303が固定ホルダ302に対して弾性部材9による動作規制を保たれた状態で、光軸F方向へ移動(フォーカス動作)する。
ところが、可動鏡筒303がアクチュエータを内方するような構造であるので、可動鏡筒303が、図7の例のように、レンズ中心304aの対称形状を保てず、可動鏡筒303の重量中心313がレンズ中心304aから離れた箇所に位置している。
また、部品生産性や対衝撃性能等の理由から弾性部材は極力対称形状が望まれる。そのため、弾性部材の弾性力中心312はレンズ中心304aと異なる箇所に位置している。
さらに、アクチュエータの推力中心314は、磁気回路構成部品上(この例ではマグネット306)にくるので、必然的にレンズ中心304aとは、その位置を重複させることはできない。
これらの結果として、弾性部材309の弾性力中心312、可動鏡筒303の重量中心313、アクチュエータの推力中心314の3つの力点が一致せず、各中心点に働くモーメントの不均衡により、可動鏡筒303が回転運動をしてしまい、理想動作することが不可能となる。
図9,10に示すレンズ駆動装置のフォーカス動作時の状態を、図11に示す。この図11に示すように、コイル308に電流を供給しアクチュエータを駆動させて可動鏡筒303をフォーカス動作させると、弾性力中心312に働く弾性力kによって生じる弾性力モーメントMk、可動鏡筒303の重力中心313に働く重力gによって生じる重力モーメントMg、推力中心314に働く推力fによって推力モーメントMfが発生し、光軸F方向への並進運動ではなく、(図中では反時計回りの)回転運動をする。
その結果、可動鏡筒303の一部、例えば可動鏡筒303の上面部端縁がレンズ駆動装置上方に配された光透過性の樹脂からなる天面部品330と干渉する。すなわちレンズ304の光軸Fと天面部品330が垂直ではない状態で可動鏡筒303が天面部品330に当接してフォーカス動作(移動)を停止させ、レンズ傾きθが発生する。レンズ傾きθが発生すると、フォーカス動作させたときの光学特性(解像度など)が変化し、画質が劣化するという問題があった。
とりわけ、小型のカメラモジュールの場合、レンズの傾きが撮像素子(画質)に与える影響は、大型のカメラモジュールの場合よりも大きいので、小型化に伴いレンズ傾きの許容範囲がより小さくなる。
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、レンズ中心に対してアクチュエータが非対称に配置されているレンズ駆動装置において、フォーカス動作時におけるレンズの光軸に対する適正な姿勢を維持することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明は、レンズを保持して該レンズの光軸方向に移動可能な可動部と、この可動部を収納する固定部と、レンズの中心に対して非対称に配置され、可動部を光軸方向上向きに移動させる駆動機構と、一端及び他端が可動部及び固定部にそれぞれ固定され、各一端と可動部との固定点が光軸に略直交する同一平面上に設けられた複数の弾性部材とを備え、複数の弾性部材を、可動部の重量中心と駆動機構の推力中心を結ぶ直線に直交する直線により2つの領域に分類し、駆動機構が含まれる側の一方の領域における弾性部材の他端と前記固定部との固定点が、他方の領域における弾性部材の他端と固定部との固定点より、光軸上で低い位置となることにより、複数の弾性部材による弾性力中心が、駆動機構の推力中心近傍に移動しているように構成する。
上記構成によれば、複数の弾性部材による弾性力の弾性力中心が駆動機構の推力中心近傍に移動しているので、可動部の重量中心、駆動機構の推力中心の各中心との間で相互に発生するモーメント量を小さくすることができる。これにより、可動部の回転運動を抑制し、フォーカス動作中におけるレンズの光軸に対する傾きが抑えられる。
本発明によれば、フォーカス動作中におけるレンズの光軸に対する傾きを抑えることができるので、レンズの光軸に対する適正な姿勢を維持しながらフォーカス動作ができるレンズ駆動装置を提供することができる。
また、部品削減により(駆動機構がレンズ中心に対して非対称となり)可動部が並進運動しなくなるためにレンズの姿勢が維持できないという問題が解決されるので、部品の削減が可能となり、コストを抑制することができる。また、部品削減により装置を小型化できる。
また、本発明に係るレンズ駆動装置を携帯電話端末等の携帯機器に適用した場合、携帯機器の小型化、薄型化に寄与することができる。
以下、本発明に係るカメラモジュール用レンズ駆動装置を実施するための最良の形態の例について、添付図1〜図6を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施の形態例に係るレンズ駆動装置の上面図である。図1に示すレンズ駆動装置1は、可動部と固定部及びそれらを繋げる弾性部材を備え、可動部がムービングマグネット方式のリニア駆動により光軸方向に移動することができる。ここで、光軸とは、撮像素子(図示略)の撮像面に対して光が略垂直な角度で入射するときの軸をいう。
可動部側は、複数枚のレンズ部材を有するレンズ4を保持して光軸F方向へ移動可能なレンズホルダ5からなる可動鏡筒3とマグネット6、また固定部側は、可動鏡筒3を収納する固定ホルダ2とヨーク7とコイル8から構成され、それらが4本の板状の弾性部材(板ばね)9によって連結されている。
本例における可動鏡筒3は、レンズ4の中心4aに対して非対称であり、かつX軸に対して対称な形状としている。なお、本例において、X軸は可動鏡筒3の重量中心13と駆動機構の推力中心14を結ぶ直線とし、Y軸はX軸に直交する直線とする。
各々の弾性部材9の一端は、可動鏡筒3の外壁の所定位置(固定部9a〜9d)にそれぞれ固定され、その他端は、固定ホルダ2の所定位置(固定部11a〜11d)にそれぞれ固定され、可動鏡筒3と固定ホルダ2が連結される。図1の例では、複数の弾性部材9は、可動鏡筒3の重量中心13に対して略対称な配置とされているが、この例に限らず非対称であってもよい。
レンズ駆動装置の適当なフォーカス感度を得るためには、アクチュエータによって発生させる推力(駆動力)の推力定数と、その駆動力による動作を規制する弾性部材9のばね定数との相互バランスが重要となる。本例では、アクチュエータが1つだけの構成としているので、推力定数が低い。したがって、それに合わせてばね定数を低く(ばねを柔らかく)する必要があり、限られた空間で弾性部材9の有効長を長くとるために、弾性部材9
は、蛇行した形状に形成されている。
マグネット6、ヨーク7、コイル8は、磁気回路部を構成し、可動鏡筒3を光軸F方向に移動させる駆動機構(アクチュエータ)として機能する。アクチュエータは、可動鏡筒3に設けられた孔10に貫装されるような状態に設置される。
レンズ駆動装置1では、アクチュエータが1つのみであるため、アクチュエータによる推力中心14は、光軸Fに略直交する平面において、可動鏡筒3の重量中心13から大きく外れている。
図2は、図1に示したレンズ駆動装置1のA−A線に沿う断面図である。図2に示すように、レンズ駆動装置1は、略箱状の固定ホルダ2に、可動鏡筒3及び磁気回路構成からなるアクチュエータが収納されている。
各々の弾性部材9と可動鏡筒3との固定部9a〜9dは、フォーカス動作前の初期位置において、一平面内に配置されている。Y軸を挟んでアクチュエータが含まれない領域(図2左側)にある弾性部材9では、固定ホルダ2との固定部11a,11dが、可動鏡筒3側の固定部9a〜9dと同じ高さの取り付け位置15、すなわち同一平面内にある。一方、Y軸を挟んでアクチュエータが含まれる領域(図2右側)にある弾性部材9では、固定ホルダ2との固定部11b,11cが、可動鏡筒3側の固定部9a〜9dよりも、前記光軸において低い取り付け位置16にある。すなわち、固定部11b,11cは、固定ホルダ2の底部からの高さが、固定部11a,11dよりも低い位置にある。ここで一平面内とは、光軸に対し略垂直で固定ホルダ2の底部からの高さが略同一の面をいう。なお、図2においては弾性部材9の傾きを強調して記載している。
可動鏡筒3は、内部にレンズ4を固定するための円筒形状の空間を有する樹脂製のレンズホルダ5から構成され、そのレンズホルダ5の下部には、鍔部5aが形成されている。この鍔部5aには、マグネット6が載置され、固定される。レンズホルダ5の内部には、レンズ4と、スペーサとしての中間部材24が配置されている。
レンズ4は、カメラの撮影レンズで、複数枚のレンズ部材が組み合わされて構成される。図2の上側に配されているのが被写体側レンズ部材22で、下側に配されているのがカメラボディ側レンズ部材23である。なお、本例のレンズ駆動装置1では、可動鏡筒3が、レンズ4とレンズホルダ5と中間部材28という複数の部材から構成されているが、これらのうち複数の部材又は全ての部材が同一部材で一体に構成されていてもよい。
被写体側レンズ部材22は、中央にレンズ機能を持つ円形のレンズ部を有し、外周にレンズ部を保持して支えるためのホルダ部(図示せず)を有している。ホルダ部は、中間部材24に当接している。カメラボディ側レンズ部材23は、中央にレンズ機能を持つレンズ部を有し、外周にレンズ部を保持して支えるためのホルダ部(図示せず)を有している。カメラボディ側レンズ部材23のホルダ部も中間部材24に当接している。
被写体側レンズ部材22及びカメラボディ側レンズ部材23のレンズ部は、樹脂製の非球面レンズとされており、レンズ部とホルダ部は樹脂の一体成型によって形成されている。
中間部材24は、中央に孔25を有する例えばドーナッツのような、略環状の部材である。この中間部材24によって被写体側レンズ部材22とカメラボディ側レンズ部材23の間隔を一定に保持している。中間部材24が存在することによって、被写体側レンズ部材22及びカメラボディ側レンズ部材23の取り付け作業や、位置決め作業を簡易にしている。
レンズホルダ5の前面(図2上方)には、被写体からの反射光をレンズホルダ5内に取り込むための円形の入射窓21が形成されている。
略箱状の固定ホルダ2は、略正方形状の底部と、底部の周縁に沿った周壁部とからなり、上方に開口を有し、その内部に可動鏡筒3、アクチュエータ、弾性部材9を収納する。
レンズ駆動装置1の上方には、このレンズ駆動装置1に光を取り込むための円形の入射窓31を有する天面部品30が配置されている。
レンズ駆動装置1の後ろ側(図2、固定ホルダ2の下側)には、図示しない撮像素子が設置されている。天面部品30の入射窓31から入射した光は、レンズ駆動装置1の入射窓21から内部に取り込まれ、レンズ4を経由し、固定ホルダ2の底部に設けられている孔(図示略)を通って、撮像素子表面に照射され、被写体像が撮像される。この撮像素子は、固定ホルダ2の底部表面に設置するようにしてもよい。
可動鏡筒3をレンズ4の光軸F方向に移動させるアクチュエータは、可動鏡筒3に設けられた孔10に貫装されるようにして、光軸Fと直交するXY平面における一方向に設けられる。図1の例では、可動鏡筒3のX軸方向の片側に1つのアクチュエータが設けられ、片側駆動により、可動鏡筒3を移動させる。
アクチュエータを構成するヨーク7は、固定ホルダ2の底部に立設され、その内側(レンズ中心4a側)にコイル8が設けられる。そして、レンズホルダ5の鍔部5aに載置されたマグネット6が、コイル8と対向配置され、レンズ駆動機構内の磁気回路が構成される。アクチュエータは、コイル8と電磁部材のマグネット6との間で電磁吸引力または電磁反発力を発生し、可動鏡筒3に光軸F方向への駆動力を与える。
このように構成されるレンズ駆動装置1において、コイル8に電流を流すことによって、1つのマグネット6に光軸Fに平行な上方への推力が発生し、可動鏡筒3が固定ホルダ2に対して弾性部材9による動作規制を保たれた状態で、光軸F方向へ移動(フォーカス動作)する。
上記レンズ駆動装置1においては、弾性部材9と固定ホルダ2との取り付け位置(高さ)を変更することにより、弾性部材9による弾性力中心12をアクチュエータの推力中心14近傍にずらしている。
つまり、従来は、弾性部材9の取付面が水平(光軸に直交)であるが、本例では、取付面を傾斜(固定ホルダ側取り付け位置の高さを調整)させている。これにより、光軸F方向の高さが相対的に低くなった固定部11b〜11c側に、弾性部材中心12がシフトする。
弾性力中心位置がシフトする原理を、図4の模式図を参照して説明する。図4に示すように、弾性部材9と固定ホルダ2との取り付け位置の高さが、取り付け位置15,16のように異なる状態で可動鏡筒3が光軸方向へ移動した場合、可動鏡筒3にかかる弾性力が異なる。例えば、取り付け位置が高い可動鏡筒3の左側の固定部にかかる力fL、取り付け位置が低い可動鏡筒3の右側の固定部にかかる力はfRとすると、fL<fRである。このとき、複数の弾性部材9による弾性力中心12は、従来の中心付近にあった弾性力中心312から、大きくアクチュエータ側に移動する。
それにより、従来の水平取り付け仕様では、推力中心と弾性力中心が一致せずに離れた箇所に配置されていたが、傾斜取り付け仕様では、その距離がほとんど一致した状態に配置されている。
なお、本実施の形態例では、可動鏡筒3の重量中心13によるモーメントを加味して、重量モーメントを含んだ各モーメントの釣り合いを考慮し、故意に弾性力中心12と推力中心14を一致させずに、弾性力中心12と推力中心14とを微小相互オフセットさせている(図2参照)。
上記レンズ駆動装置1においては、図3に示すように、弾性力中心12に働く弾性力k1による弾性力モーメント、重量中心13に働く重力g1による重力モーメント及び推力中心14に働く推力f1による推力モーメントの間で、相互に発生するモーメント量が抑えられ、可動鏡筒3の安定したフォーカス動作が可能になる。従来仕様の対称形状(両側駆動)及び片側駆動と比較して、フォーカス動作中のレンズ傾斜を抑えることができる。h1,h2はそれぞれ、固定ホルダ2と可動部材9との取り付け位置15,16における、可動ホルダ2の底部からの高さを示している(h1>h2)。
したがって、可動鏡筒3は、モーメント量が抑えられた理想に近い並進運動を行なうことができるようになり、フォーカス動作中、レンズ4の姿勢を維持しながら、光軸F方向へ移動させることができる。
上述した構成のレンズ駆動装置1によれば、フォーカス動作時のレンズ4の姿勢を適正に維持できるので、可動鏡筒3をフォーカス動作させたときの光学特性(解像度)劣化を防ぐことができる。
また、部品を削減してアクチュエータが1つだけの構成(片側駆動)とすることにより、アクチュエータがレンズ中心4aに対して非対称配置となる場合でも、フォーカス動作中のレンズ4の光軸に対する姿勢を適正に保つことができる。したがって、部品削減により生じていた問題が解決されるので、アクチュエータを非対称配置として部品を削減することができ、従来のレンズ駆動装置と比較して、薄型化、小型化が可能になる。
さらに、部品を削減したことによりレンズ駆動装置内に空きスペース(図1;可動鏡筒3を挟んでマグネット6の反対側)が生まれ、レンズ駆動装置の更なる小型化設計が可能となる。また、部品を削減した部分に新たなスペースが生まれるので、設計自由度が向上する。
次に、上述したレンズ駆動装置1を、携帯機器の一例として携帯電話端末に搭載した例について説明する。
図5は、本発明に係るレンズ駆動装置が取り付けられたカメラ付き携帯電話端末の斜視図である。図5に示すように、カメラ付き携帯電話端末100は、操作ボタン(操作部)が配列された下部筐体101と、カメラによって撮影した画像を表示する部分が裏面に形成された上部筐体102とからなる。上部筐体102を下部筺体101に合致するようにスライド若しくは折り畳むことで、持ち運びに都合のよいコンパクトなサイズにすることができる。カメラ機能を使用して撮影を行う場合には、図5に示すように、下部筺体101と上部筐体102をずらした状態で使用する。
カメラ付き携帯電話端末100の上部筐体102の背面部には、レンズ駆動装置1を埋設するための穴が形成されている。レンズ駆動装置1を、レンズホルダ5に形成された入射窓21が被写体側を向くようにして、その穴に取り付ける。レンズ駆動装置1を取り付けた後、上面から図2,3に示したような透明な樹脂製の天面部品30を覆うように設置する。
本例のカメラ付き携帯電話端末100によれば、薄型、小型のレンズ駆動装置1を用いているので、上部筐体102の厚さを薄くすることができる。その結果、下部筺体101と上部筐体102とを合致させた場合に、カメラ付き携帯電話端末の全体の厚さを薄くすることができるので、カメラ付き携帯電話端末100を小型、薄型にすることができる。
なお、レンズ駆動装置1が適用される携帯電話端末はこの例に限らず、例えば、表示部と操作部が一体型の、いわゆるスティック型の携帯電話端末などであってもよいことは勿論である。
図6を参照しながら、このカメラ付き携帯電話端末100のレンズ駆動装置1を含むカメラ120のシステム構成を説明する。
カメラ120は、レンズ4を有する可動鏡筒3を駆動して撮影モードの切り換え動作を実現するドライバ122と、撮像素子104から得られる画像信号を処理するISP(Image Signal Processor)124と、画像データを保存するストレージデバイス126と、コントロールロジック部128と、電子処理をするための画像を一時保管する単数または複数のメモリ130と、光学画像や電子処理された電子画像を表示する表示手段132と、これらの各部材を制御するシステムコントローラとしてのMPU(Micro Processing Unit)134を有している。
ここで、カメラ120のカメラモジュール121は、レンズ4を有する可動鏡筒3等からなるレンズ駆動装置1のメカ部分と、撮像素子104と、ドライバ122と、ISP124とからなる撮像素子ユニット121aの信号処理部分から構成される。撮像素子104とドライバ122とISP124とは、回路基板(図示略)に設置される。制御部は、コントロールロジック部128とMPU134とで構成される。また、画像取得手段が、撮像素子104とISP124と制御部とで構成される。MPU134は、撮影モード切り換え指令を読み取る切り換え指令読取手段、レンズ4の操作位置を確認する操作位置確認手段、及びレンズ4の位置を検出する現在位置検出手段となり、またアクチュエータの負荷を検出する負荷検出手段としても機能する。
図3に示す状態において、図示されない所定の切り換えスイッチが操作されると、コイル8に電流が流れる。すると、電流の向きとマグネット6による磁界の向きとによって、フレミングの左手の法則によりマグネット6に力が作用する。なお、フレミングの左手の法則は、磁界中に線電流が流れているときに、その線電流を流している物体に働く力の関係を示すものである。
本例では、コイル8がヨーク7に固定されており、ヨーク7は固定ホルダ2に固定されているため、反作用としてマグネット6に力が働くこととなる。これによって、マグネット6が固設されている可動鏡筒3は、弾性部材9の弾性力による動作規制を受けながら光軸F方向に移動する。
そして、可動鏡筒3の上面が所定の高さまで移動、若しくは天面部品30に突き当たると、MPU134がアクチュエータにかかる負荷を検出して、MPU134からドライバ122に対し、コイル8に供給する電流を適切な値に制御するよう制御信号を出力する。ドライバ122は、コイル8に供給する電流を制御し、可動鏡筒3を停止させ、レンズ4の光軸に対する略垂直な姿勢を維持する。アクチュエータの負荷を検出して、その負荷に応じてアクチュエータの動作を制御する技術は周知慣用技術であるので、ここでは詳細な説明を省略する。
なお、本実施の形態では、レンズ駆動装置1をカメラ付き携帯電話端末100のカメラ部分の機能として組み込んだ例を示したが、このレンズ駆動装置1は、モバイルコンピュータ、PDA(Personal Digital Assistant)、ゲーム機等の他の携帯機器に使用したり、監視カメラ、医療用カメラ等他のカメラ装置や、自動車、テレビジョン受像機等の電子機器にも組み込むことができる。
また、上述した実施の形態例では、マグネット6とコイル8とで駆動機構を構成したが、コイル8の位置にマグネット6を配置し、マグネット6の位置にコイル8及びヨーク7を配置する構成とし、いわゆるムービングコイル駆動としてもよい。
また、駆動機構は、マグネット6、ヨーク7、コイル8から構成される磁気回路でなくても、圧電素子型など、駆動力を発生するものであれば他の駆動機構であってもよい。
さらに、本発明は、上述した各実施の形態例に限定されるものではなく、その他本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の変形、変更が可能であることは勿論である。
1…レンズ駆動装置、2…固定ホルダ、3…可動鏡筒、4…レンズ、5…レンズホルダ、6…マグネット、7…ヨーク、8…コイル、9…弾性部材、9a,9b,9c,9d…固定部(レンズホルダ側)、10…孔、11a,11b,11c,11d…固定部(固定ホルダ側)、12…弾性力中心、13…重量中心、14…推力中心、15,16…取り付け位置、100…カメラ付き携帯電話端末、h1,h2…固定ホルダ底部からの高さ