JP4761113B2 - 動力伝達チェーンおよびこれを備える動力伝達装置 - Google Patents
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隣り合うリンク同士の屈曲に連動して、対応するピンとインターピースとが互いに転がり運動し、当該対応するピンおよびインターピースの互いの接触位置が移動する。
しかしながら、チェーンの直線領域では、ピンもインターピースもプーリに係合していない(挟持されていない)ため、ピンとインターピースとがチェーン駆動時の慣性等によって不用意な転がり運動を起こし、リンク同士が不用意な屈曲をする傾向にある。
同様の課題は、ピンおよびストリップを備える動力伝達チェーンに限らず、他の一般の構成を有する動力伝達チェーンにも存在する。
本発明によれば、直線領域の動力伝達部材は、対偶部材に対して、逆方向に移動することが抑制されている。その結果、直線領域のリンク同士が本来の屈曲方向と反対の方向(負側)に不用意に屈曲する、いわゆるオーバーシュートを抑制できる。したがって、例えば、動力伝達チェーンが一対のプーリに巻き掛けられて、動力伝達部材が各プーリと係合して動力の伝達を行う場合に、プーリに保持されていない直線領域のリンク同士がオーバーシュートすることを抑制でき、動力伝達チェーンの振動および騒音を抑制できる。また、オーバーシュートを抑制することにより、動力伝達チェーンに余分な負荷が作用することを抑制して高い伝動効率を達成することができる。
また、上記延設部と、上記対偶部材との面接触により、直線領域の動力伝達部材が対偶部材に対して逆方向に移動することを、より確実に防止することができる。
図1は、本発明の一実施の形態に係る動力伝達チェーンを備える動力伝達装置としてのチェーン式無段変速機(以下では、単に無段変速機ともいう)の要部構成を模式的に示す斜視図である。図1を参照して、無段変速機100は、自動車等の車両に搭載されるものであり、第1のプーリとしての金属(構造用鋼等)製のドライブプーリ60と、第2のプーリとしての金属(構造用鋼等)製のドリブンプーリ70と、これらの両プーリ60,70間に巻き掛けられた無端状の動力伝達チェーン1(以下では、単にチェーンともいう)とを備えている。なお、図1中のチェーン1は、理解を容易にするために一部断面を示している。
ドリブンプーリ70の可動シーブ72には、ドライブプーリ60の可動シーブ63と同様に油圧アクチュエータ(図示せず)が接続されており、変速時に、この可動シーブ72を移動させることにより溝幅を変化させるようになっている。それにより、チェーン1を移動させて、プーリ70のチェーン1に関する有効半径R(以下、プーリ70の有効半径Rともいう)を、最大値R2(図3(A)参照)から最小値R1(図3(B)参照)までの間で変更できるようになっている。
一方、無段変速機100の増速比が最も高い場合(オーバードライブ時)には、図3(B)に示すように、ドライブプーリ60の有効半径Rが最大値R2とされ、ドリブンプーリ70の有効半径Rが最小値R1とされる。
なお、以下では、図5を参照して説明するときは、チェーン1の直線領域を基準として説明し、図6を参照して説明するときは、チェーン1の屈曲領域を基準として説明する。
なお、転がり摺動接触とは、転がり接触およびすべり接触の少なくとも一方を含む接触のことをいう。
各リンク2は板状に形成されており、チェーン進行方向Xの前後に並ぶ一対の端部としての前端部5および後端部6、ならびにこれら前端部5および後端部6間に配置される中間部7を含んでいる。
具体的には、第1のリンク列51のリンク2の前貫通孔9と、第2のリンク列52のリンク2の後貫通孔10とは、チェーン幅方向Wに並んで互いに対応しており、これらの貫通孔9,10を挿通する第1および第2のピン3,4によって、第1および第2のリンク列51,52のリンク2同士がチェーン進行方向Xに屈曲可能に連結されている。
図4において、第1〜第3のリンク列51〜53は、それぞれ1つしか図示されていないが、チェーン進行方向Xに沿って第1〜第3のリンク列51〜53が繰り返すように配置されている。そして、チェーン進行方向Xに互いに隣接する2つのリンク列のリンク2同士が、対応する第1および第2のピン3,4によって順次に連結され、無端状をなすチェーン1が形成されている。
この周面11は、滑らかな面に形成されており、チェーン進行方向Xの前方を向く対向部としての前部12と、チェーン進行方向Xの後方を向く背部としての後部13と、直交方向Vに相対向する一対の端部としての一端部14および他端部15とを有している。
後部13は、平坦面に形成されている。この平坦面は、チェーン進行方向Xと直交する所定の平面A(図5において、紙面に直交する平面)に対して、所定の傾斜角Bを有しており、チェーン内周側を向いている。
他端部15は、第1のピン3の周面11のうち、チェーン内周側(直交方向Vの他方)の端部を構成しており、チェーン内周側に向けて凸湾曲する曲面に形成されている。
なお、以下では、直交方向Vのうち、一端部14から他端部15に向かう側をチェーン内周側といい、他端部15から一端部14に向かう側をチェーン外周側という。
図2および図6を参照して、一対の端面17は、チェーン幅方向Wに直交する平面を挟んで相対向しており、互いに対称な形状を有している。これらの端面17は、各プーリ60,70の対応するシーブ面62a,63a,72a,73aに摩擦接触(係合)するためのものである。
第1のピン3の端面17は、球面の一部を含む形状に形成され、チェーン幅方向Wの外側に凸湾曲している。また、第1のピン3の一端部14は、その他端部15よりも、チェーン幅方向Wに長手(幅広)に形成されており、これにより、端面17がチェーン内周側を向いている。チェーン幅方向Wからみて、端面17の頂部23の位置は、当該端面17の図心の位置と一致している。
接触領域24は、例えば、楕円形形状をなしており、接触中心点C(接触領域24の図心に相当)を有している。チェーン幅方向Wからみて、接触中心点Cの位置は、頂部23の位置(端面17の図心の位置)と一致している。なお、接触中心点Cの位置は、端面17の図心に対してずれていても(オフセットしていても)よい。
同様に、ドリブンプーリ70の有効半径Rは、ドリブンプーリ70に挟持された第1のピン3の動力伝達面17の接触中心点Cと、ドリブンプーリ70の中心軸線F2との間のプーリ70の径方向の距離として定義される。
この迎え角Eは、例えば、第1のピン3の後部13の傾斜角Bと等しくされている(E=B)。なお、迎え角Eと傾斜角Bとは異なるようにされていてもよい。
第2のピン4は、その一対の端部が上記各プーリのシーブ面に接触しないように、第1のピン3よりも短く形成されており、対をなす第1のピン3に対して、チェーン進行方向Xの前方に配置されている。チェーン進行方向Xに関して、第2のピン4は、第1のピン3よりも薄肉に形成されている。
後部19は、チェーン進行方向Xと直交する平坦面に形成されている。前述したように、この後部19は対をなす第1のピン3の前部12と対向している。
一端部21は、第2のピン4の周面18のうち、チェーン外周側の端部を構成しており、チェーン外周側に向けて凸湾曲する曲面に形成されている。
他端部22は、第2のピン4の周面18のうち、チェーン内周側の端部を構成しており、チェーン内周側に向けて凸湾曲する曲面に形成されている。
図5に示すように、チェーン1は、所定の連結ピッチPを有している。連結ピッチPとは、チェーン1の直線領域における、隣り合う第1のピン3間の距離をいう。具体的には、チェーン1の直線領域のリンク2の前貫通孔9内の第1および第2のピン3,4の互いの接触部T1と、当該リンク2の後貫通孔10内の第1および第2のピン3,4の互いの接触部T1との間の、チェーン進行方向Xの距離をいう。本実施の形態では、連結ピッチPは、例えば、8mmに設定されている。
第1の平面H1は、屈曲領域の一のリンク2aの各貫通孔9,10のそれぞれに挿通された、一対の第1のピン3a,3bのそれぞれの接触中心点Cを含み、且つチェーン幅方向Wと平行な平面をいう。
設計上の屈曲角φ(許容屈曲角)の範囲は、例えば0°〜20°に設定されている。
図7は、第1のピン3の要部の拡大断面図である。図5および図7を参照して、本実施の形態の特徴とするところは、隣接するリンク2同士の滑らかな屈曲を達成しつつ、チェーン1の直線領域のリンク2同士が、本来の屈曲方向と反対の方向(屈曲角φの負側)に不用意に屈曲すること(以下、オーバーシュートという。)を抑制している点にある。
曲面部25のチェーン内周側の端部が、所定の起部J(チェーン幅方向Wからみて、所定の起点)とされている。起部Jの位置は、接触部T1の位置、すなわち、チェーン1の直線領域における第1のピン3の接触部Tと一致している。この起部Jは、前部12のうち、チェーン内周側寄りに配置されている。
中心Mは、チェーン進行方向Xに直交し且つ第1のピン3の接触部T1を含む平面上において、上記接触部T1よりもチェーン内周側に位置している。基礎円Kと起部Jとは、交差している。
すなわち、チェーン幅方向Wからみて、第1のピン3の曲面部25をインボリュート曲線に形成することで、接触部Tの移動軌跡を上記したインボリュート曲線にしている。この接触部Tは、対応するリンク2同士の屈曲角φ(図6参照)の増大に伴い、チェーン外周側に変位する。
再び図5および図7を参照して、延設部26は、直線領域の隣り合うリンク2同士がオーバーシュートすることを抑制するためのものである。この延設部26は、前部12のうち、曲面部25よりもチェーン内周側の部分を構成しており、曲面部25の起部Jから曲面部25と逆方向V1(チェーン内周側方向)に延びている。
したがって、チェーン1の直線領域をチェーン幅方向Wからみたとき、第1のピン3の前部12は、その曲面部25の起部Jおよび延設部26が、後部19と接触している。
なお、長さNの範囲の下限は、0.1mmであることがより好ましい。また、長さNの範囲の上限は、0.8mmであることが好ましいが、これより大きくてもよい。
一方、図6に示すように、チェーン1の屈曲領域では、第1のピン3の前部12は、その曲面部25の接触部Tが、対をなす第2のピン4の後部19と線接触する。このとき、延設部26と後部19とは、接触していない。
以上説明したように、本実施の形態によれば、チェーン1の直線領域の第1のピン3は、対応する第2のピン4に対して、逆方向V1に移動することが抑制されている。
また、オーバーシュートを抑制することにより、チェーン1に余分な負荷が作用することを抑制でき、高い伝動効率を達成することができる。
しかも、面接触であることにより、対をなす第1および第2のピン3,4の互いの接触面積を十分に確保して、両者の接触時の圧力(面圧)をより低減することができる。したがって、各第1および第2のピン3,4が受ける負荷を低減してチェーン1の耐久性をより向上することができる。
また、第1のピン3を各リンク2の前貫通孔9に遊嵌すると共に各リンク2の後貫通孔10に圧入嵌合し、さらに、第2のピン4を、各リンク2の前貫通孔9に圧入嵌合すると共に各リンク2の後貫通孔10に遊嵌している。
この際、対をなす第1および第2のピン3,4間において、互いの転がり接触成分が多くてすべり接触成分が極めて少なく、するとその結果、各第1のピン3の各端面17が上記対応するシーブ面62a,63a,72a,73aに対してほとんど回転せずに接触することとなり、摩擦損失を低減してより高い伝動効率を確保できる。
このように、振動が抑制されて静粛性にすぐれ、且つ伝動効率および耐久性にすぐれた無段変速機100を実現することができる。
図8を参照して、本実施の形態の特徴とするところは、複数種類の第1のピンとして、第1のピン3,3Aが備えられており、第1のピン3を基準としたその接触部Tの転がり摺動接触の移動軌跡と、第1のピン3Aを基準としたその接触部TAの転がり摺動接触の移動軌跡とが相異なるようにされている点にある。
チェーン1の直線領域をチェーン幅方向Wからみて、第1のピン3の接触部Tと第1のピン3Aの接触部TAとは、直交方向Vの位置が揃えられている。すなわち、これらの接触部T,TAは、チェーン進行方向Xに延びる直線上に配置されている。
第1のピン3と第1のピン3Aとは、チェーン進行方向Xにランダムに配列されている。より具体的には、第1のピン3および第1のピン3Aの少なくとも一方が、チェーン進行方向Xの少なくとも一部に不規則に配置されている。
なお、本実施の形態において、接触部T,TAを直交方向Vにオフセットして配置してもよい。この場合、各第1のピン3,3Aの形状を大型化することなく、接触部T,TA間の転がり摺動接触の軌跡をより大きく相異ならせることができる。各第1のピン3,3Aが各プーリに順次に係合するときの係合音の発生周期をよりランダムにでき、駆動時の騒音をより低減できる。
図9を参照して、本実施の形態の特徴とするところは、1つの(単一の)第1のピン3によって、チェーン進行方向Xに隣り合う対偶部材としてのリンク2B同士が互いに相対回転可能に(屈曲可能に)連結されている点にある。具体的には、各リンク2Bの前貫通孔9Bに、対応する第1のピン3が相対移動可能に遊嵌され、各リンク2Bの後貫通孔10Bに、対応する第1のピン3が相対移動を規制されるように圧入嵌合されている。
これにより、リンク2Bと当該リンク2Bに遊嵌された第1のピン3とは、互いに転がり摺動接触するようになっている。また、チェーン幅方向Wからみて、第1のピン3を基準とするその接触部Tの移動軌跡は、所定の起部J(起点)を持つ所定の曲線としてのインボリュート曲線をなす。
なお、本実施の形態において、第1のピン3Aをさらに設け、第1のピン3と第1のピン3Aとをチェーン進行方向Xにランダムに配列してもよい。
さらに、図9に示す実施の形態において、第1のピン3は、各リンク2Bの後貫通孔10Bに遊嵌されていてもよい。
また、リンクの前貫通孔と後貫通孔の配置とを互いに入れ換えてもよい。さらに、リンクの前貫通孔と後貫通孔との間の柱部に連通溝(スリット)を設けてもよい。この場合、リンクの弾性変形量(可撓性)を増すことができ、リンクに生じる応力をより低減することができる。
Claims (4)
- 複数のリンクと、これらのリンクを互いに屈曲可能に連結する複数の連結部材とを備える動力伝達チェーンにおいて、
各連結部材は、リンクまたはリンクとの間に介在する部材の何れか一方からなる対偶部材に対してリンク間の屈曲に伴って転がり摺動接触する所定の動力伝達部材を含み、
リンク間の屈曲に伴う上記所定の動力伝達部材と上記対偶部材とのチェーン幅方向からみた接触点の移動軌跡は、所定の起点を持つ所定の曲線をなし、
上記対偶部材に対する上記所定の動力伝達部材の対向部は、上記接触点の移動軌跡として上記所定の曲線を達成するための曲面部と、その曲面部の起点から曲面部と逆方向に延びる延設部とを含み、
動力伝達チェーンの直線領域において上記所定の動力伝達部材の対向部は、上記曲面部の起点および上記延設部で対偶部材と接触するようにしてあり、
上記所定の動力伝達部材に対する上記対偶部材の対向部は、平坦な面であり、
上記動力伝達部材の延設部は、平坦な面であり、
チェーン直線領域において上記動力伝達部材の延設部の略全面が上記対偶部材の上記対向部と面接触していることを特徴とする動力伝達チェーン。 - 請求項1において、上記複数のリンクは、チェーン進行方向に並ぶ第1および第2の貫通孔をそれぞれ含み、
上記所定の動力伝達部材は、第1の貫通孔に相対移動可能に嵌め入れられる動力伝達部材と、第2の貫通孔に相対移動を規制されて嵌め入れられる動力伝達部材とをそれぞれ有することを特徴とする動力伝達チェーン。 - 請求項1または2において、上記所定の動力伝達部材は、上記対偶部材に対する転がり摺動接触の移動軌跡の相異なる複数種類の動力伝達部材を有することを特徴とする動力伝達チェーン。
- 相対向する一対の円錐面状のシーブ面をそれぞれ有する第1および第2のプーリと、これらのプーリ間に巻き掛けられ、シーブ面に接触して動力を伝達する請求項1,2または3記載の動力伝達チェーンとを備えることを特徴とする動力伝達装置。
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