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JP4760653B2 - 車両の制動装置 - Google Patents

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Description

本発明は、車両の制動装置に係り、更に詳細にはブレーキブースタと制動力を電気的に制御可能な制動力発生手段とを有する車両の制動装置に係る。
自動車等の車両の制動装置の一つとして、ブレーキブースタと制動力を電気的に制御可能な制動力発生手段とを有し、制動力発生手段は回生制動装置とポンプ加圧式の制動力発生装置(制動液圧サーボ手段)とよりなる制動装置は従来よりよく知られており、例えば本願出願人の出願にかかる下記の特許文献1に記載されている。
特に下記の特許文献1に記載された制動装置に於いては、ブレーキペダルとブレーキブースタの入力ロッドとの間にストローク伝達勾配抑制装置が設けられ、ストローク伝達勾配抑制装置はブレーキペダルのストロークが設定ストローク以下であるときには制動操作力がブレーキブースタへ伝達されることを抑制又は阻止するようになっている。従ってマスタシリンダの制動液圧の上昇が抑制又は阻止され、ブレーキペダルのストロークに対応する所要の制動力は主として回生制動装置及びポンプ加圧式の制動力発生装置により発生される。
特開2006−143099号公報
上記公開公報に記載されている如き従来の制動装置に於いては、ブレーキペダルのストロークが設定ストローク以下であるときには、ブレーキブースタへの制動操作力の伝達が抑制されることによりマスタシリンダの制動液圧の上昇が抑制されるので、ブレーキブースタへの制動操作力の伝達が抑制されない場合に比して、回生制動装置により発生される制動力を大きくして回生効率を高くすることができる。
しかし上記公開公報に記載されている如き従来の制動装置に於いては、回生効率を確実に高くすべく、図27に示されている如く、設定ストロークS2は回生制動装置による車両全体の最大回生制動力Fbvrmaxに対応するストロークS1よりも大きい値であり、そのためブレーキペダルのストロークSが設定ストロークS2以下であり且つ車両全体の目標制動力Fbvtが最大回生制動力Fbvrmaxよりも大きい領域に於いて目標制動力Fbvtと最大回生制動力Fbvrmaxとの偏差分の制動力ΔFbvがポンプ加圧式の制動力発生装置により補充されるだけでなく、ブレーキペダルのストロークSが設定ストロークS2よりも大きい領域に於ける最大回生制動力Fbvrmaxとブレーキブースタの作動により発生される制動液圧による制動力Fbvbとの和が目標制動力Fbvtよりも小さくなるため、ブレーキペダルのストロークSが設定ストロークS2より大きい領域に於いても、目標制動力Fbvtと最大回生制動力Fbvrmax及びブレーキブースタの作動による制動力の和Fbvbとの偏差分の制動力、即ち不足する制動力がポンプ加圧式の制動力発生装置による制動力Fbvfにより補充されなければならない。
従ってブレーキペダルのストロークが設定ストローク以上の領域に於いてもポンプ加圧式の制動力発生装置により制動力が補充されなければならないため、ポンプ加圧式の制動力発生装置の作動頻度が高くその作動時間が長くなり、またストロークが設定ストローク以上の領域に於いては制動圧(ホイールシリンダ圧力)が高圧であるため、ポンプ加圧式の制動力発生装置は耐久性に優れた高性能な装置でなければならず、制動装置を低廉化することができないという問題がある。
またブレーキペダルのストロークが低い領域に於いてのみポンプ加圧式の制動力発生装置による制動力の補充を行うことにより、ポンプ加圧式の制動力発生装置に対する要求性能を低下させようとすると、例えば図28に示されている如く、ブレーキペダルのストロークSが設定ストロークS2を越えて増大する過程に於いてポンプ加圧式の制動力発生装置による制動力Fbvfの補充が行われなくなった段階で車両全体の制動力Fbvが急激に低下変化し、逆にブレーキペダルのストロークSが設定ストロークS2を越えて低下する過程に於いてポンプ加圧式の制動力発生装置による制動力の補充が行われるようになった段階で車両全体の制動力Fbvが急激に増大変化することが避けられず、また目標制動力Fbvtを達成することができない。
更にブレーキペダルのストロークが低い領域に於いてのみポンプ加圧式の制動力発生装置による制動力の補充を行うと共に、上述の如き制動力の急変を防止しようとすると、例えば図29に示されている如く、ストロークSが設定ストロークS2を越えて大きくなるにつれてポンプ加圧式の制動力発生装置による制動力Fbvfの補充量を漸減しなければならず、そのためこの場合にも目標制動力Fbvtを達成することができないという問題がある。
本発明は、ブレーキブースタと制動力を電気的に制御可能な制動力発生手段とを有し、ブレーキペダルとブレーキブースタの入力ロッドとの間にストローク伝達勾配抑制装置が設けられた従来の車両の制動装置に於ける上述の如き問題に鑑みてなされたものであり、本発明の主要な課題は、運転者の制動操作量が基準値以下の領域に於いてはブレーキブースタを作動させず且つ運転者の制動操作量が基準値よりも大きい領域に於いては制動液圧サーボ手段を作動させないようにすると共に、運転者の制動操作量が基準値を越えて増減する際の制動力の急変の虞れを低減することにより、制動力の急変に起因する制動フィーリングの悪化を防止しつつ制動液圧サーボ手段に対する要求性能を低下させ、制動装置の低廉化を達成することである。
〔課題を解決するための手段及び発明の効果〕
上述の主要な課題は、本発明によれば、請求項1の構成、即ち制動操作手段と制動液圧発生手段との間に設けられたブレーキブースタと、ホイールシリンダ圧力を前記制動液圧発生手段により発生される制動液圧よりも高く制御することにより制動力を発生する制動液圧サーボ手段とを有する車両の制動力制御装置にして、前記制動操作手段に対する運転者の制動操作量を検出する手段と、運転者の制動操作量が制御モード切換え基準値以下であるときには、前記ブレーキブースタを作動させることなく運転者の制動操作量に基づいて前記制動液圧サーボ手段を制御することにより運転者の制動操作量に応じた制動力を発生させ、運転者の制動操作量が前記制御モード切換え基準値よりも大きいときには、前記制動液圧サーボ手段を作動させることなく前記ブレーキブースタを作動させることにより運転者の制動操作量に応じた制動力を発生させることを特徴とする車両の制動装置によって達成される。
上記請求項1の構成によれば、運転者の制動操作量が制御モード切換え基準値以下であるときには、ブレーキブースタを作動させることなく運転者の制動操作量に基づいて制動液圧サーボ手段を制御することにより運転者の制動操作量に応じた制動力が発生されるが、運転者の制動操作量が制御モード切換え基準値よりも大きく、ホイールシリンダ圧力が高くなるときには、制動液圧サーボ手段は作動されず、ブレーキブースタの作動により運転者の制動操作量に応じた制動力が発生されるので、前述の従来の制動装置の場合に比して制動液圧サーボ手段の作動頻度及び作動時間を低減することができ、また制動液圧サーボ手段により制御されるホイールシリンダ圧力は低くてよく、従って制動液圧サーボ手段に対する要求性能を確実に低下させることができ、これにより制動装置を低廉化することができる。
また上記請求項1の構成によれば、運転者の制動操作量が制御モード切換え基準値以下である場合及び制御モード切換え基準値よりも大きい場合の何れの場合にも、運転者の制動操作量に応じた制動力が発生されるので、運転者の制動操作量の如何に関係なく確実に運転者の制動操作量に応じた制動力を発生させることができると共に、運転者の制動操作量が制御モード切換え基準値を越えて増減変化する際に制動力が急変することを防止することができ、これにより制動力の急変に起因する制動フィーリングの悪化を確実に防止することができる。
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1の構成に於いて、前記制動装置は更に回生制動力を発生する回生制動手段を有し、運転者の制動操作量が制御モード切換え基準値以下であるときには、前記ブレーキブースタを作動させることなく運転者の制動操作量に基づいて前記回生制動手段及び前記制動液圧サーボ手段を制御することにより運転者の制動操作量に応じた制動力を発生させ、運転者の制動操作量が前記制御モード切換え基準値よりも大きいときには、前記制動液圧サーボ手段を作動させることなく少なくとも前記ブレーキブースタを作動させることにより運転者の制動操作量に応じた制動力を発生させるよう構成される(請求項2の構成)。
上記請求項2の構成によれば、運転者の制動操作量が制御モード切換え基準値以下であるときには、ブレーキブースタが作動されず、運転者の制動操作量に基づいて回生制動手段及び制動液圧サーボ手段を制御することにより運転者の制動操作量に応じた制動力が発生されるが、運転者の制動操作量が制御モード切換え基準値よりも大きく、ホイールシリンダ圧力が高くなるときには、制動液圧サーボ手段は作動されず、少なくともブレーキブースタを作動させることにより運転者の制動操作量に応じた制動力が発生されるので、前述の従来の制動装置の場合に比して制動液圧サーボ手段の作動頻度及び作動時間を低減することができ、また制動液圧サーボ手段により制御されるホイールシリンダ圧力は低くてよく、従って制動液圧サーボ手段に対する要求性能を確実に低下させることができ、これにより制動装置を低廉化することができる。
また上記請求項2の構成によれば、上記請求項1の構成の場合と同様、運転者の制動操作量が制御モード切換え基準値以下である場合及び制御モード切換え基準値よりも大きい場合の何れの場合にも、運転者の制動操作量に応じた制動力が発生されるので、運転者の制動操作量の如何に関係なく確実に運転者の制動操作量に応じた制動力を発生させることができると共に、運転者の制動操作量が制御モード切換え基準値を越えて増減変化する際に制動力が急変することを防止することができ、これにより制動力の急変に起因する制動フィーリングの悪化を確実に防止することができる。
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項2の構成に於いて、運転者の制動操作量が前記制御モード切換え基準値であるときの車両全体の制動力は前記回生制動手段による車両全体の最大回生制動力よりも大きいよう構成される(請求項3の構成)。
上記請求項3の構成によれば、運転者の制動操作量が制御モード切換え基準値であるときの車両全体の制動力は回生制動手段による車両全体の最大回生制動力よりも大きいので、回生制動手段に対する回生制動の要求性能が過剰に高くなることを防止することができ、よって回生制動手段は高性能な回生制動手段でなくてもよい。
また本発明によれば、上記請求項1乃至3の何れかの構成に於いて、前記ブレーキブースタの作動開始時のジャンピングによるホイールシリンダ圧力の増圧量は運転者の制動操作量が前記制御モード切換え基準値であるときの制動力に対応する値に設定されているよう構成される(請求項4の構成)。
上記請求項4の構成によれば、ブレーキブースタの作動開始時のジャンピングによるホイールシリンダ圧力の増圧量は運転者の制動操作量が制御モード切換え基準値であるときの制動力に対応する値と同一であるので、運転者の制動操作量が制御モード切換え基準値を越えて増減変化する際に制動力が急変することを確実に防止することができる。
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項2乃至4の何れかの構成に於いて、運転者の制動操作量が前記制御モード切換え基準値よりも大きい状況に於いて、前記ブレーキブースタを作動させることにより発生される制動力が運転者の制動操作量に基づく目標制動力よりも小さいときには、前記目標制動力に対し不足する制動力の少なくとも一部が前記回生制動手段を作動させることにより補充されるよう構成される(請求項5の構成)。
上記請求項5の構成によれば、運転者の制動操作量が制御モード切換え基準値よりも大きい状況に於いて、ブレーキブースタを作動させることにより発生される制動力が運転者の制動操作量に基づく目標制動力よりも小さいときには、目標制動力に対し不足する制動力の少なくとも一部が回生制動手段を作動させることにより補充されるので、目標制動力に対し不足する制動力の少なくとも一部が回生制動手段を作動させることにより補充されない場合に比して、運転者の制動操作量が制御モード切換え基準値よりも大きい状況に於ける制動力を確実に目標制動力に近づけることができると共に、回生効率を確実に高くすることができる。
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1乃至5の何れかの構成に於いて、前記制御モード切換え基準値は、ホイールシリンダへ流入する作動液体の流量及びホイールシリンダ圧力が互いに他に対し線形の関係をなす領域の値であるよう構成される(請求項6の構成)。
上記請求項6の構成によれば、制御モード切換え基準値は、ホイールシリンダへ流入する作動液体の流量及びホイールシリンダ圧力が互いに他に対し線形の関係をなす領域の値であり、従って制動装置の作動液体の流量について見た剛性が高い領域であるので、製造公差や経時変化に起因して実際の制御モード切換え基準値が本来の値とは異なる値になっても、運転者の制動操作量が制御モード切換え基準値を越えて増減変化する際に制動力が急変することを効果的に防止することができる。
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項2乃至6の何れかの構成に於いて、運転者の制動操作量が前記制御モード切換え基準値よりも小さいプリチャージ開始基準値以上であり且つ前記制御モード切換え基準値以下であるときには、前記制動液圧サーボ手段により運転者の制動操作量に応じてホイールシリンダ圧力を予め増圧するよう構成される(請求項7の構成)。
一般に、運転者の制動操作量が制御モード切換え基準値よりも小さい状況に於いて回生制動手段による回生制動が行われる場合には、回生制動手段による回生制動が行われない場合に比して制動液圧サーボ手段により発生される制動力が小さくてよく、これによりホイールシリンダ圧力は低い圧力になる。これに対し運転者の制動操作量が制御モード切換え基準値を越えることによりブレーキブースタの作動が開始する際にはジャンピングによりホイールシリンダ圧力が急激に増大する。
上記請求項7の構成によれば、運転者の制動操作量が制御モード切換え基準値よりも小さいプリチャージ開始基準値以上であり且つ制御モード切換え基準値以下であるときには、制動液圧サーボ手段により運転者の制動操作量に応じてホイールシリンダ圧力が予め増圧されるので、運転者の制動操作量が制御モード切換え基準値を越えて増減変化する際に於けるホイールシリンダ圧力の変化量を確実に低減することができ、これにより運転者の制動操作量が制御モード切換え基準値を越えて増減変化する際の制動力の急変及びこれに起因するショックを確実に低減することができる。
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項7の構成に於いて、前記プリチャージ開始基準値は、運転者の制動操作量の増大変化率が大きいときには運転者の制動操作量の増大変化率が小さいときに比して小さくなるよう、運転者の制動操作量の増大変化率に応じて可変設定されるよう構成される(請求項8の構成)。
上記請求項8の構成によれば、プリチャージ開始基準値は、運転者の制動操作量の増大変化率が大きいときには運転者の制動操作量の増大変化率が小さいときに比して小さくなるよう、運転者の制動操作量の増大変化率に応じて可変設定されるので、運転者の制動操作速度が高いときにも確実に遅れなく制動液圧サーボ手段により運転者の制動操作量に応じてホイールシリンダ圧力を予め増圧することができ、逆に運転者の制動操作速度が低いときに運転者の制動操作量が必要以上に低い領域よりホイールシリンダ圧力の増圧が開始される場合に比して、回生制動手段による制動力を大きくし、これにより回生効率を高くすることができる。
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項7又は8の何れかの構成に於いて、運転者の制動操作量が前記制御モード切換え基準値であるときの前記制動液圧サーボ手段による前記ホイールシリンダ圧力の増圧量は、前記ブレーキブースタの作動開始時のジャンピングによるホイールシリンダ圧力の増圧量と同一であるよう構成される(請求項9の構成)。
上記請求項9の構成によれば、運転者の制動操作量が制御モード切換え基準値であるときの制動液圧サーボ手段によるホイールシリンダ圧力の増圧量は、ブレーキブースタの作動開始時のジャンピングによるホイールシリンダ圧力の増圧量と同一であるので、運転者の制動操作量が制御モード切換え基準値を越えて増減変化する際のホイールシリンダ圧力の変化を防止し、これにより制動力の変化及びこれに起因するショックを確実に低減することができる。
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項2乃至9の何れかの構成に於いて、前記制動操作手段は少なくとも運転者の制動操作量が前記制御モード切換え基準値よりも大きい状況に於いて、ストロークが大きくなるほどレバー比が大きくなるレバー比可変式のブレーキペダルであり、前記ブレーキブースタを作動させることにより発生される制動力は運転者の制動操作量に基づく目標制動力よりも小さいよう構成される(請求項10の構成)。
上記請求項10の構成によれば、制動操作手段は少なくとも運転者の制動操作量が制御モード切換え基準値よりも大きい状況に於いて、ストロークが大きくなるほどレバー比が大きくなるレバー比可変式のブレーキペダルであり、ブレーキブースタを作動させることにより発生される制動力は運転者の制動操作量に基づく目標制動力よりも小さいので、制動操作手段がレバー比一定のブレーキペダルである場合に比して、運転者の制動操作量に基づく目標制動力とブレーキブースタを作動させることにより発生される制動力との差を確実に大きくすることができ、これによりこれらの制動力の差に相当する不足制動力を補充する回生制動手段による制動力を大きくし、回生効率を確実に高くすることができる。
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1乃至10の何れかの構成に於いて、前記制動操作手段と前記ブレーキブースタとの間にブレーキブースタ作動制限手段及びストローク許容手段を有し、前記ブレーキブースタ作動制限手段は運転者の制動操作量が前記制御モード切換え基準値以下であるときには、前記制動操作手段に対する運転者の制動操作力が前記ブレーキブースタへ伝達されることを阻止し、前記ストローク許容手段は前記ブレーキブースタ作動制限手段が作動している状況に於いて運転者による前記制動操作手段のストロークを許容するよう構成される(請求項11の構成)。
上記請求項11の構成によれば、運転者の制動操作量が制御モード切換え基準値以下であるときには、ブレーキブースタ作動制限手段により制動操作手段に対する運転者の制動操作力がブレーキブースタへ伝達されることが阻止されるので、ブレーキブースタを確実に作動させることなく制動液圧サーボ手段の制御により運転者の制動操作量に応じた制動力を発生させることができ、またストローク許容手段によりブレーキブースタ作動制限手段が作動している状況に於いて運転者による制動操作手段のストロークが許容されるので、運転者はブレーキブースタ作動制限手段が作動している状況に於いても確実に制動操作手段をストロークさせることができる。
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項11の構成に於いて、前記ブレーキブースタ作動制限手段は運転者の制動操作力が増大する過程に於いて前記ストローク許容手段が前記制動操作手段のストロークの許容を終了する前に前記ブレーキブースタに対する運転者の制動操作力の伝達を開始するよう構成される(請求項12の構成)。
上記請求項12の構成によれば、運転者の制動操作力が増大する過程に於いてストローク許容手段が制動操作手段のストロークの許容を終了する前にブレーキブースタに対する運転者の制動操作力の伝達が開始されるので、ストローク許容手段が制動操作手段のストロークを許容しなくなる前に確実にブレーキブースタに対する運転者の制動操作力の伝達を開始させることができる。
〔課題解決手段の好ましい態様〕
本発明の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1乃至12の何れかの構成に於いて、運転者の制動操作量は運転者の制動操作による制動操作手段の変位量であるよう構成される(好ましい態様1)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1乃至12又は上記好ましい態様1の何れかの構成に於いて、制動液圧サーボ手段は制動液圧発生手段により発生される制動液圧とホイールシリンダ圧力との間の差圧を制御する制御弁を含むよう構成される(好ましい態様2)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1乃至12又は上記好ましい態様1又は2の何れかの構成に於いて、運転者の制動操作量に基づいて車両全体の目標制動力を演算する手段を含み、運転者の制動操作量が制御モード切換え基準値以下であるときには、ブレーキブースタを作動させることなく車両全体の目標制動力に基づいて制動液圧サーボ手段を制御することにより車両全体の目標制動力を達成する制動力を発生させるよう構成される(好ましい態様3)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項4乃至12又は上記好ましい態様1乃至3の何れかの構成に於いて、運転者の制動操作量に基づいて車両全体の目標制動力を演算する手段を含み、ブレーキブースタの作動開始時のジャンピングによるホイールシリンダ圧力の増圧量は運転者の制動操作量が制御モード切換え基準値であるときの車両全体の目標制動力に対応する値に設定されているよう構成される(好ましい態様4)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1乃至12又は上記好ましい態様1乃至4の何れかの構成に於いて、運転者の制動操作量が制御モード切換え基準値よりも大きい終了基準値以下になると、制動液圧サーボ手段によるホイールシリンダ圧力の制御の準備が開始されるよう構成される(好ましい態様5)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記好ましい態様5の構成に於いて、終了基準値は運転者の制動操作量の低下変化率が大きいときには運転者の制動操作量の低下変化率が小さいときに大きくなるよう、運転者の制動操作量の低下変化率に応じて可変設定されるよう構成される(好ましい態様6)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項7乃至12又は上記好ましい態様1乃至6の何れかの構成に於いて、運転者の制動操作量がプリチャージ開始基準値であるときの車両全体の制動力は回生制動手段による車両全体の最大回生制動力よりも大きいよう構成される(好ましい態様7)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項11又は12又は上記好ましい態様1乃至7の何れかの構成に於いて、ブレーキブースタ作動制限手段は運転者の制動操作量が制御モード切換え基準値を越えると、特別の駆動手段による駆動を要することなく制動操作手段に対する運転者の制動操作力のブレーキブースタへの伝達を開始するよう構成される(好ましい態様8)。
以下に添付の図を参照しつつ、本発明を幾つかの好ましい実施例について詳細に説明する。
[第一の実施例]
図1はハイブリッドシステムが搭載された車輌に適用された本発明による制動装置の第一の実施例を示す概略構成図、図2は図1に示された液圧式の摩擦制動装置を示す概略構成図である。
図1に於いて、10は車両Vに搭載された第一の実施例の制動装置を全体的に示しており、制動装置10は液圧式の摩擦制動装置12と前輪用回生制動装置14と後輪用回生制動装置16よりなっている。また図1に於いて、18は前輪を駆動するハイブリッドシステムを示しており、ハイブリッドシステム18はガソリンエンジン20と電動発電機22とを含んでいる。ガソリンエンジン20の出力軸24はクラッチを内蔵する無段変速機26の入力軸に連結されており、無段変速機26の入力軸は電動発電機22の出力軸28にも連結されている。無段変速機26の出力軸30の回転はフロントディファレンシャル32を介して左右前輪用車軸33FL及び33FRへ伝達され、これにより左右の前輪34FL及び34FRが回転駆動される。
ハイブリッドシステム18のガソリンエンジン20及び電動発電機22はエンジン制御装置36により運転者による図には示されていないアクセルペダルの踏み込み量及び車輌の走行状況に応じて制御される。また電動発電機22は前輪用回生制動装置14の発電機としても機能し、回生発電機としての機能(回生制動)もエンジン制御装置36により制御される。
また図1に於いて、従動輪である左右の後輪34RL及び34RRの回転は左右後輪用車軸38RL、38RR及び後輪用ディファレンシャル40を介して後輪用回生制動装置16の電動発電機42へ伝達されるようになっている。電動発電機42による回生制動もエンジン制御装置36により制御され、従ってエンジン制御装置36は回生制動装置用制御装置として機能する。尚電動発電機42も必要に応じて左右の後輪34RL及び34RRを駆動する補助的な駆動源として使用されてもよい。
左右の前輪34FL、34FR及び左右の後輪34RL、34RRの摩擦制動力は、後に詳細に説明する如く運転者によるブレーキペダル44に対する制動操作量に応じて液圧式の摩擦制動装置12のホイールシリンダ46FL、46FR、46RL、46RRの制動圧が制動制御装置48により油圧回路50を介して制御されることによって制御される。
図2に示されている如く、摩擦制動装置12は制動液圧発生手段としてのマスタシリンダ52と、ブレーキペダル44に対する踏力に比してマスタシリンダ52内の圧力を増圧する負圧式のブレーキブースタ54とを有し、ブレーキブースタ54とブレーキペダル44との間に作動制限及びストローク許容装置56を有している。マスタシリンダ52にはマスタシリンダリザーバ52Aが接続されている。尚ブレーキブースタはハイドロブースタであってもよい。
マスタシリンダ52にはマスタ導管58の一端が接続され、マスタ導管58の他端は作動液体としてのオイルを貯留するリザーバ60に接続されている。マスタ導管58の途中にはリザーバ60よりマスタシリンダ52へ向かうオイルの流れのみを許す逆止弁62が設けられている。リザーバ60にはオイル給排導管64の一端が接続され、オイル給排導管64の他端は図には示されていない電動機により駆動されるオイルポンプ66の吸入側に接続されている。オイルポンプ66は制動制御装置48により電動機に対する駆動電流が制御されることにより制御されるようになっている。
オイルポンプ66の吐出側にはオイル供給導管68が接続され、オイル供給導管68にはオイル給排導管70の一端が接続されている。オイル給排導管70の他端はホイールシリンダ46に接続され、オイル給排導管70の途中にはホイールシリンダ46へのオイルの供給を制御する増圧制御弁としての常開型の電磁開閉弁74が設けられている。電磁開閉弁74の両側のオイル給排導管70にはホイールシリンダ46よりオイル供給導管68へ向かうオイルの流れのみを許す逆止バイパス導管76が接続されている。
電磁開閉弁74とホイールシリンダ46との間のオイル給排導管70にはオイル排出導管78の一端が接続され、オイル排出導管78の他端はリザーバ60とオイルポンプ66との間のオイル給排導管64に接続されている。オイル排出導管78の途中にはホイールシリンダ46よりのオイルの排出を制御する減圧制御弁としての常閉型の電磁開閉弁80が設けられている。電磁開閉弁74及び80の開閉は制動制御装置48によりそれぞれのソレノイド(図示せず)に対する制御電流が制御されることにより達成される。
またオイル供給導管68には接続導管82の一端が接続され、接続導管82の他端はマスタシリンダ52と逆止弁62との間のマスタ導管58に接続されている。接続導管82の途中には周知の構成のリニアソレノイド弁84が設けられている。リニアソレノイド弁84は通常時にはオイル供給導管68の側よりマスタ導管18の側へ向かうオイルの流れのみを許し、そのソレノイド(図示せず)に対する制御電流Isが制動制御装置48によって制御されることによりリニアソレノイド弁84を横切る差圧ΔP(オイル供給導管68の側が接続導管82の側よりも高圧の差圧)を制御する(図4参照)。
リニアソレノイド弁84の両側の接続導管82にはマスタ導管18の側よりオイル供給導管68の側へ向かうオイルの流れのみを許す逆止バイパス導管86が接続されている。またリニアソレノイド弁84とマスタ導管18との間の接続導管82には圧力センサ88が接続されており、圧力センサ88は接続導管82内の圧力Pをマスタシリンダ圧力Pmとして検出するようになっている。かくしてリニアソレノイド弁84及び逆止バイパス導管86は必要に応じてホイールシリンダ46よりマスタシリンダ52へ至るオイルの流れを遮断すると共に、必要に応じてリニアソレノイド弁84を横切る差圧ΔPを制御する遮断弁として機能する。
以上の説明より解る如く、オイルポンプ66、電磁開閉弁74及び80、リニアソレノイド弁84等は、リニアソレノイド弁84を横切る差圧ΔPを制御することによりホイールシリンダ46内の圧力、即ち各車輪の制動圧をマスタシリンダ52内の圧力よりも高い圧力に増減制御する電気制御式の油圧サーボ装置76(制動液圧サーボ手段)として機能する。
尚図1及び図2には図示されていないが、オイル給排導管70、オイル排出導管78、ホイールシリンダ46、電磁開閉弁74及び80、逆止バイパス導管76等は各車輪に対応して設けられている。リニアソレノイド弁84及び逆止バイパス導管86も各車輪に対応して設けられてもよいが、摩擦制動装置12が左右前輪に対応する前輪系統と左右後輪に対応する後輪系統とよりなる二系統の制動装置である場合には、前輪系統用及び後輪系統用のリニアソレノイド弁84及び逆止バイパス導管86が設けられ、摩擦制動装置12が左前輪及び右後輪に対応する第一系統と右前輪及び左後輪に対応する第二系統とよりなる二系統の制動装置である場合には、第一系統用及び第二系統用のリニアソレノイド弁84及び逆止バイパス導管86が設けられていてよい。
図示の実施例に於いては、ブレーキペダル44はアーム部44Aの上端に於いて枢軸90により図2には示されていない車体に枢支されており、アーム部44Aには枢軸90と下端のペダル部44Bとの間に於いて連結部材92がピン94により枢着されている。連結部材92は及びブレーキブースタ54の軸線96に沿って延在し、ブレーキブースタ54の側の端部にはガイドブロック98が固定されている。
ガイドブロック98にはブレーキブースタ54の入力ロッド100が挿通され、入力ロッド100はガイドブロック98により軸線96に沿ってガイドブロック98に対し相対的に往復動可能に支持されている。入力ロッド100は軸線96に沿って入力ロッド100に対し相対的に往復動可能にばね座部材102が嵌合しており、ガイドブロック98とばね座部材102との間には圧縮コイルばね104が弾装されている。入力ロッド100の先端にはナット106が螺合している。
入力ロッド100はその根元側の大径部と先端側の小径部とを有し、大径部にはブレーキペダル44の側へ向けて開いた実質的にカップ形をなすばね座部材108が嵌合しており、ばね座部材108は入力ロッド100の大径部のねじ部に螺合するナット110により位置決めされている。ばね座部材108のブレーキペダル44の側の端部とブレーキブースタ54のブレーキペダル44の側の端面との間には反力発生用の圧縮コイルばね112が弾装されている。
以上の説明より解る如く、ブレーキペダル44に運転者の踏力が作用していない非制動時には、ガイドブロック98は圧縮コイルばね104のばね力によりナット106に当接した状態に維持され、ばね座部材102は圧縮コイルばね104のばね力によりばね座部材108に当接した状態に維持され、ガイドブロック98及びばね座部材102は互いに他に対し非制動時の距離So隔置された状態に維持されるようになっている。
またブレーキペダル44に運転者の踏力が与えられ、連結部材92が軸線96に沿ってストロークしても、ガイドブロック98は圧縮コイルばね104のばね力に抗して入力ロッド100に対し相対的に変位する。従ってガイドブロック98、ばね座部材102、圧縮コイルばね104は、ブレーキペダル44に与えられた踏力が或る値以上になるまで入力ロッド100に伝達させず、これによりブレーキペダル44のストロークを許容しつつブレーキブースタ54の作動を制限する作動制限及びストローク許容装置56を構成している。
図示の実施例に於いては、ガイドブロック98がばね座部材102に当接する直前に、即ちピン94の位置に於けるブレーキペダル44のストロークSが非制動時の距離Soよりも僅かに小さい踏力伝達開始ストロークSsになり、ガイドブロック98及びばね座部材102の互いに対向する端部の間の距離Sが0に近い非常に小さい値になると、ブレーキペダル44に与えられている踏力がブレーキブースタ54へ伝達され始めるようになっている。
圧縮コイルばね104及び112のセット荷重をそれぞれF1及びF2とし、圧縮コイルばね104及び112のばね定数をそれぞれK1及びK2とすると、上述の如く踏力の伝達が開始される段階に於いてブレーキペダル44よりピン94を介して連結部材92に伝達される荷重Fpaは下記の式1により表され、ガイドブロック98がばね座部材102に当接する段階に於いてブレーキペダル44よりピン94を介して連結部材92に伝達される荷重Fpb(>Fpa)は下記の式2により表される。
Fpa=F1+K1×Ss+F2 ……(1)
Fpb=F1+K1×So+F2 ……(2)
またピン94の位置に於けるブレーキペダル44のストロークSと入力ロッド100を介してブレーキブースタ54に入力される荷重Fpとの関係は図5に示されている通りであり、ストロークSが踏力伝達開始ストロークSs以下であるときにはブレーキブースタ54に入力される荷重Fpは0である。
従って図5に示されている如く、ブレーキブースタ54に入力される荷重Fpとホイールシリンダ圧力Pwcとの関係について見ると、荷重Fpが上記式1の値Fpa未満であるときには0であり、荷重Fpが上記式1の値Fpaになるとブレーキブースタ54の増圧作用が開始し、このジャンピングによりホイールシリンダ圧力Pwcは荷重Fpaに対応する圧力Pwcj(「ジャンピング圧力」という)になり、荷重Fpが上記式1の値Fpaよりも大きい領域に於いては荷重Fpに比例して増大する。
また図6に示されている如く、踏力伝達開始ストロークSs、即ちブレーキペダル44に与えられている踏力のブレーキブースタ54への伝達が開始されるストロークSsは、ホイールシリンダ46へ供給されるオイルの流量Qとホイールシリンダ46内の圧力Pwcとの関係が線形の領域、即ちゴムシール等の弾性材の変形が飽和する流量及び圧力の値よりも高い領域(摩擦制動装置12の油量剛性が高い領域)であり、よってブレーキブースタ54に入力される荷重Fp及びホイールシリンダ圧力Pwcは互いに線形の関係をなす。
制動制御装置48にはストロークセンサ114よりブレーキペダル44の踏み込みストロークS(ピン94の位置に於けるブレーキペダル44のストローク)を示す信号、圧力センサ115よりマスタシリンダ圧力Pmを示す信号、各車輪に対応して設けられた圧力センサ116fl、116fr、116rl、116rrより左右前輪及び左右後輪のホイールシリンダ46FL、46FR、46RL、46RRの制動圧力Pfl、Pfr、Prl、Prrを示す信号がそれぞれ入力される。
制動制御装置48は、運転者の制動操作量を示すストロークSに基づいて図7に示されたグラフに対応するマップより車両全体の目標制動力Fbvtを演算する。そして制動制御装置48は、ストロークSが踏力伝達開始ストロークSs以下であるときには、各車輪の制動圧Pfl、Pfr、Prl、Prrに基づいて、或いはリニアソレノイド弁84に対する制御電流に基づいて摩擦制動装置12の油圧サーボ装置76により発生される車両全体の摩擦制動力Fbvfを演算する。
更に制動制御装置48は、ストロークSが踏力伝達開始ストロークSs以下であるときには、車両全体の目標制動力Fbvtより車両全体の摩擦制動力Fbvfを減算した値(車両全体の不足制動力ΔFbv)として車両全体の目標回生制動力Fbvrtを演算し、車両全体の目標回生制動力Fbvrtを示す信号をエンジン制御装置36へ出力する。
また制動制御装置48は、ストロークSが踏力伝達開始ストロークSsを越えているときには、オイルポンプ66の駆動及びリニアソレノイド弁84等の制御を停止すると共に、ストロークS若しくは圧力センサ116fl〜116rrにより検出される各車輪の制動圧力Pfl〜Prrに基づいて車両全体の摩擦制動力Fbvfを演算し、車両全体の目標制動力Fbvtより車両全体の摩擦制動力Fbvfを減算した値として車両全体の目標回生制動力Fbvrtを演算し、車両全体の目標回生制動力Fbvrtを示す信号をエンジン制御装置36へ出力する。
エンジン制御装置36にはアクセル開度センサ118よりアクセルペダルの踏み込み量を示す信号、シフトポジション(SP)センサ120より無段変速機26のシフト位置を示す信号、制動制御装置48より車両全体の目標回生制動力Fbvrtを示す信号がそれぞれ入力される。エンジン制御装置36は、運転者による運転操作が駆動操作であるときには、アクセルペダルの踏み込み量を示す信号及び無段変速機26のシフト位置に基づいて当技術分野に於いて公知の要領にてハイブリッドシステム18のガソリンエンジン20及び電動発電機22を制御することにより車両全体の駆動力を制御する。
これに対し運転者による運転操作が駆動操作であるときには、エンジン制御装置36は、車両全体の駆動力を0に制御し、特に制動制御装置48より車両全体の目標回生制動力Fbvrtを示す信号が入力されているときには、予め設定された前後輪配分比又は車両の走行状態に応じて可変設定される前後輪配分比に基づいて車両全体の目標回生制動力Fbvrtを前後輪に配分することにより、前輪用回生制動装置14及び後輪用回生制動装置16の目標回生制動力Fbvrtf及びFbvrtrを演算し、前輪用回生制動装置14及び後輪用回生制動装置16の回生制動力Fbvrf及びFbvrrがそれぞれ目標回生制動力Fbvrtf及びFbvrtrになるよう、目標回生制動力Fbvrtf及びFbvrtrに基づいて前輪用回生制動装置14及び後輪用回生制動装置16を制御する。
尚エンジン制御装置36及び制動制御装置48は実際にはそれぞれ例えばCPU、ROM、RAM、入出力装置を含むマイクロコンピュータと駆動回路とを含む一般的な構成のものであってよい。
運転者が感じるブレーキペダル44の反力Fdは、ホイールシリンダ圧力Pwc等の制動液圧の影響を無視すると、圧縮コイルばね104、112のばね力により決定されるので、ピン94の位置に於けるブレーキペダル44のストロークSと反力Fdとの関係は例えば図7に示されている如き関係になる。但しストロークSが踏力伝達開始ストロークSs以下であるときの図7の直線の傾きは圧縮コイルばね104のばね定数により決定され、ストロークSがSoよりも大きいときの図7の直線の傾きは圧縮コイルばね112のばね定数により決定される。
従って運転者がブレーキペダル44に対する踏力を増大させ、ストロークSが踏力伝達開始ストロークSsよりも大きい値に増大しても、その過程に於いて運転者が感じるブレーキペダル44の反力Fdが段差的に急変することはない。しかしストロークSが踏力伝達開始ストロークSs以下の領域に於いてはブレーキブースタ54が作動せず、ホイールシリンダ圧力Pwcは0であるが、ストロークSが踏力伝達開始ストロークSsを越えた段階でホイールシリンダ圧力Pwcがジャンピング圧力Pwcjに急増し、このホイールシリンダ圧力Pwcの急変に起因してショックが発生する虞れがある。
そこで図示の実施例に於いては、図9に示されている如く、ストロークSが踏力伝達開始ストロークSsよりも小さいプリチャージ開始基準値Spre以上になると、制動制御装置48は摩擦制動装置12のオイルポンプ66の駆動を開始すると共に、リニアソレノイド弁84を制御することにより、ストロークSが踏力伝達開始ストロークSsであるときにホイールシリンダ圧力Pwcがジャンピング圧力Pwcjと同一の圧力になるよう、ストロークSの増大につれてホイールシリンダ圧力Pwcを漸次増大させる。
逆にストロークSが踏力伝達開始ストロークSsよりも大きい値より低下する際には、制動制御装置48はストロークSが踏力伝達開始ストロークSsよりも大きい終了基準値Se以下になると、即ちストロークSが踏力伝達開始ストロークSsになる直前にオイルポンプ66の駆動を開始すると共に、ストロークSが踏力伝達開始ストロークSsになった段階でホイールシリンダ圧力Pwcがジャンピング圧力Pwcjと同一の圧力になるよう制御し、ストロークSが踏力伝達開始ストロークSsからプリチャージ開始基準値Spreになるまで、ストロークSの低下につれてホイールシリンダ圧力Pwcを0になるまで漸次低下させる。
従って図10に示されている如く、ストロークSと車両全体の制動力Fbvとの関係について見ると、車両全体の制動力Fbvは、ストロークSがプリチャージ開始基準値Spre以下であるときには、前輪用回生制動装置14及び後輪用回生制動装置16による回生制動力Fbvrにより達成され、ストロークSがプリチャージ開始基準値Spreよりも大きく踏力伝達開始ストロークSs以下であるときには、回生制動力Fbvrとブレーキブースタ54が作動しない状態で摩擦制動装置12により発生される車両全体の摩擦制動力Fbvfcとの和により達成され、ストロークSが踏力伝達開始ストロークSsよりも大きいときには、回生制動力Fbvrと油圧サーボ装置76の制御が行われることなくブレーキブースタ54の作動により発生される車両全体の摩擦制動力Fbvfbとの和により達成される。
尚ストロークSが踏力伝達開始ストロークSsであるときの車両全体の目標制動力Fbvtに対応するホイールシリンダ圧力Pwctjとすると、ブレーキブースタ54の作動開始時のジャンピング量は、ジャンピング圧力Pwcjがホイールシリンダ圧力Pwctjと同一になるよう設定されている。
またストロークSがプリチャージ開始基準値Spreであるときの車両全体の目標回生制動力Fbvrtは、前輪用回生制動装置14及び後輪用回生制動装置16による最大回生制動力Fbvrmaxよりも小さい値である。またストロークSが踏力伝達開始ストロークSsであるときの車両全体の目標回生制動力Fbvrtは、前輪用回生制動装置14及び後輪用回生制動装置16による最大回生制動力Fbvrmaxよりも大きい値である。
また図示の実施例に於いては、オイルポンプ66の駆動及びリニアソレノイド弁84の制御が遅れなく開始され、油圧サーボ装置76による摩擦制動力の発生が遅れなく達成されるよう、図11に示されている如く、プリチャージ開始基準値Spreはストローク速度Sdが正の値で大きいほど小さくなるよう、ストローク速度Sdに応じて可変設定され、図12に示されている如く、終了基準値Seはストローク速度Sdが負の値で絶対値が大きいほど大きくなるよう、ストローク速度Sdに応じて可変設定される。
次に図3に示されたフローチャートを参照して第一の実施例に於いて制動制御装置48により達成される制動制御ルーチンについて説明する。尚図3に示されたフローチャートによる制御は図には示されていないイグニッションスイッチの閉成により開始され、所定の時間毎に繰返し実行される。
まずステップ10に於いてはストロークセンサ114より検出された踏み込みストロークSを示す信号等の読み込みが行われ、ステップ20に於いては例えばストロークSに基づき運転者により制動操作が行われているか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはステップ50へ進み、否定判別が行われたときにはステップ30に於いて各車輪の目標制動圧Pwct及び目標回生制動力Fbvrtが0に設定され、ステップ40に於いて目標回生制動力Fbvrtを示す信号がエンジン制御装置36へ出力される。
ステップ50に於いてはストロークSに基づき図7に示されたグラフに対応するマップより車両全体の目標制動力Fbvtが演算され、ステップ60に於いては例えばストロークSの時間微分値としてストローク速度Sdが演算されると共に、ストローク速度Sdに基づき図11に示されたグラフに対応するマップよりプリチャージ開始基準値Spreが演算される。この場合プリチャージ開始基準値Spreはストローク速度Sdが正の値で大きいほど小さくなるよう演算される。
ステップ70に於いてはストロークSがプリチャージ開始基準値Spre以上であるか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはステップ90へ進み、否定判別が行われたときにはステップ80に於いて各車輪の目標制動圧Pwct及び車両全体の摩擦制動力Fbvfが0に設定され、しかる後ステップ120へ進む。
ステップ90に於いてはストロークSが踏力伝達開始ストロークSs以下であるか否かの判別、即ち油圧サーボ装置76の制御による各車輪の制動圧Pwcの制御が必要な状況であるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ140へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ100へ進む。
ステップ100に於いてはストロークSに基づき図9の縦軸を各車輪の目標制動圧Pwctに置き換えたグラフに対応するマップより各車輪の目標制動圧Pwctが演算され、ステップ110に於いては各車輪の制動圧Pfl〜Prrに基づいて、或いはリニアソレノイド弁84に対する制御電流に基づいて、或いはストロークSに基づいて摩擦制動装置12により発生される車両全体の摩擦制動力Fbvfが演算される。
ステップ120に於いては車両全体の目標制動力Fbvtより車両全体の摩擦制動力Fbvfを減算した値として車両全体の目標回生制動力Fbvrtが演算されると共に、車両全体の目標回生制動力Fbvrtを示す信号がエンジン制御装置36へ出力され、ステップ130に於いては各車輪の制動圧Pwcが目標制動圧Pwctになるようリニアソレノイド弁84等が制御される。
ステップ140に於いてはストローク速度Sdが負の値であるか否かの判別、即ち運転者の制動操作量が低減されている過程であるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ180へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ150に於いてストローク速度Sdに基づき図12に示されたグラフに対応するマップより終了基準値Seが演算される。この場合終了基準値Seはストローク速度Sdが負の値で絶対値が大きいほど大きくなるよう演算される。
ステップ160に於いてはストロークSが終了基準値Se以下であるか否かの判別、即ちブレーキブースタ54の作動が終了する可能性が高く、オイルポンプ66の駆動を開始する必要があるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ180へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ170に於いてオイルポンプ66の駆動が開始される。
ステップ180に於いては各車輪の目標制動圧Pwctが0に設定され、ステップ190に於いてはが演算され、各車輪の制動圧Pfl〜Prrに基づいて、或いはストロークSに基づいて摩擦制動装置12により発生される車両全体の摩擦制動力Fbvfが演算され、ステップ200に於いてはステップ120の場合と同様に車両全体の目標制動力Fbvtより車両全体の摩擦制動力Fbvfを減算した値として車両全体の目標回生制動力Fbvrtが演算されると共に、車両全体の目標回生制動力Fbvrtを示す信号がエンジン制御装置36へ出力される。
尚図3には示されていないが、オイルポンプ66が駆動されリニアソレノイド弁84が制御されている状況に於いて各車輪の目標制動圧Pwctが0になったときには、ステップ160に於いて肯定判別が行われた場合を除き、オイルポンプ66の駆動及びリニアソレノイド弁84の制御が停止される。
次に上述の如く構成された第一の実施例の作動をストロークSの値が種々の場合について説明する。
(1)ストロークSが0である場合
運転者により制動操作が行われておらず、ストロークSが0である場合には、ステップ20に於いて否定判別が行われ、ステップ30及び40が実行されるので、摩擦制動装置12、前輪用回生制動装置14、後輪用回生制動装置16の何れによっても制動力は発生されない。
(2)ストロークSが0よりも大きくプリチャージ開始基準値Spre未満である場合
ステップ20に於いて肯定判別が行われ、ステップ50及び60が実行され、ステップ70に於いて肯定判別が行われ、ステップ80に於いて各車輪の目標制動圧Pwct及び車両全体の摩擦制動力Fbvfが0に設定され、しかる後ステップ120及び130が実行される。従って摩擦制動装置12によって制動力は発生されず、車両全体の回生制動力Fbvrが車両全体の目標制動力Fbvtになるよう、前輪用回生制動装置14及び後輪用回生制動装置16によって制動力が発生される。
(3)ストロークSがプリチャージ開始基準値Spre以上であり踏力伝達開始ストロークSs以下である場合
この場合にはステップ70及び90に於いて肯定判別が行われ、ステップ100〜130が実行されるので、摩擦制動装置12の油圧サーボ装置76による車両全体の制動力Fbvfcと車両全体の回生制動力Fbvrとの和が車両全体の目標制動力Fbvtになるよう、油圧サーボ装置76、前輪用回生制動装置14、後輪用回生制動装置16によって制動力が発生される。
特に摩擦制動装置12の油圧サーボによる車両全体の制動力Fbvfcは、ストロークSが大きいほど大きくなり、ストロークSがプリチャージ開始基準値Spreであるときにはブレーキブースタ54の作動開始時のジャンピングによるホイールシリンダ圧力Pwcjに対応する制動力になるよう制御される。
(4)ストロークSが踏力伝達開始ストロークSsよりも大きい場合
この場合にはステップ70に於いて肯定判別が行われるが、ステップ90に於いて否定判別が行われ、ステップ140〜200が実行される。従って摩擦制動装置12の油圧サーボによっては制動力が発生されず、ブレーキブースタ54の作動による車両全体の制動力Fbvfbと車両全体の回生制動力Fbvrとの和が車両全体の目標制動力Fbvtになるよう、ブレーキブースタ54及びマスタシリンダ52、前輪用回生制動装置14、後輪用回生制動装置16によって制動力が発生される。
またこの場合に於いて、運転者の制動操作量が低減されており、ストローク速度Sdが負の値であるときには、ステップ140に於いて肯定判別が行われ、ステップ160に於いてストロークSが終了基準値Se以下であるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはストローク速度Sdが正の値でありステップ140に於いて否定判別が行われた場合と同様にステップ180へ進むが、肯定判別が行われたときにはステップ170に於いてオイルポンプ66の駆動が開始される。
かくして図示の第一の実施例によれば、運転者の制動操作量としてのストロークSが制御モード切換え基準値としての踏力伝達開始ストロークSs以下であるときには、ブレーキブースタ54は作動せず、ストロークSに基づいて油圧サーボ装置76、前輪用回生制動装置14、後輪用回生制動装置16が制御されることによりストロークSに応じた車両全体の目標制動力Fbvtが達成されるよう制動力が発生されるが、ストロークSが踏力伝達開始ストロークSsよりも大きく、ホイールシリンダ圧力Pwcが高くなるときには、油圧サーボ装置76は作動されず、少なくともブレーキブースタ54を作動させることによりストロークSに応じた車両全体の目標制動力Fbvtが達成されるよう制動力が発生される。
従って図示の第一の実施例によれば、ストロークSが高い領域に於いても油圧サーボ装置の作動が継続される前述の従来の制動装置の場合に比して油圧サーボ装置76の作動頻度及び作動時間を確実に低減することができ、また油圧サーボ装置76により制御されるホイールシリンダ圧力Pwcは低くてよく、従って油圧サーボ装置76に対する要求性能を確実に低下させることができ、これにより制動装置を確実に低廉化することができる。
また図示の第一の実施例によれば、ストロークSが踏力伝達開始ストロークSs以下である場合及び踏力伝達開始ストロークSsよりも大きい場合の何れの場合にも、ストロークSに応じた車両全体の目標制動力Fbvtが達成されるよう制動力が発生されるので、ストロークSの如何に関係なく車両全体の制動力Fbvが確実にストロークSに応じた車両全体の目標制動力Fbvtになるよう制動力を発生させることができると共に、ストロークSが踏力伝達開始ストロークSsを越えて増減変化する際に制動力が急変することを防止することができ、これにより制動力の急変に起因する制動フィーリングの悪化を確実に防止することができる。
特に図示の第一の実施例によれば、ブレーキブースタ54の作動開始時のジャンピング圧力Pwcjは、ストロークSが踏力伝達開始ストロークSsであるときの車両全体の目標制動力Fbvtに対応するホイールシリンダ圧力Pwcと同一であるので、ブレーキブースタ54の作動開始時に於けるホイールシリンダ圧力Pwcを確実に車両全体の目標制動力Fbvtを達成するに必要な圧力にすることができる。
また図示の第一の実施例によれば、踏力伝達開始ストロークSsは、ホイールシリンダ46へ供給されるオイルの流量Qとホイールシリンダ46内の圧力Pwcとの関係が線形の領域、即ち摩擦制動装置12の油量剛性が高く、ブレーキブースタ54に入力される荷重Fp及びホイールシリンダ圧力Pwcは互いに線形の関係をなす領域であるので、製造公差や経時変化に起因して実際の踏力伝達開始ストロークSsが本来の値とは異なる値になっても、ストロークSが踏力伝達開始ストロークSsを越えて増減変化する際に制動力が急変することを効果的に防止することができる。
また図示の第一の実施例によれば、ストロークSが踏力伝達開始ストロークSsよりも小さいプリチャージ開始基準値Spre以上になると、ストロークSが踏力伝達開始ストロークSsであるときにホイールシリンダ圧力Pwcがブレーキブースタ54の作動開始時のジャンピング圧力Pwcjと同一の圧力になるよう、油圧サーボ装置76によりストロークSの増大につれてホイールシリンダ圧力Pwcが漸次増大されるので、ストロークSの増大時にストロークSが踏力伝達開始ストロークSsを越えた段階でホイールシリンダ圧力Pwcが0よりジャンピング圧力Pwcjに急増すること及びこのホイールシリンダ圧力Pwcの急変に起因するショックを確実に防止することができる。
この場合プリチャージ開始基準値Spreはストローク速度Sdが正の値で大きいほど小さくなるよう、ストローク速度Sdに応じて可変設定されるので、ストローク速度Sdが高いときにも確実に遅れなく油圧サーボ装置76によりストロークSに応じてホイールシリンダ圧力を予め増圧することができ、逆にストローク速度Sdが低いときにストロークSが必要以上に低い領域よりホイールシリンダ圧力の増圧が開始される場合に比して、前輪用回生制動装置14及び後輪用回生制動装置16による制動力を大きくし、これにより回生効率を高くすることができる。
また図示の第一の実施例によれば、ストロークSが踏力伝達開始ストロークSsであるときの油圧サーボ装置76によるホイールシリンダ圧力Pwcの増圧量は、ブレーキブースタ54の作動開始時のジャンピングによるホイールシリンダ圧力Pwcjと同一であるので、ストロークSが踏力伝達開始ストロークSsを越えて増減変化する際のホイールシリンダ圧力Pwcの変化を防止し、これにより制動力の変化及びこれに起因するショックを確実に低減することができる。
また図示の第一の実施例によれば、ストロークSが踏力伝達開始ストロークSsであるときの油圧サーボ装置76によるホイールシリンダ圧力Pwcの増圧量は、ブレーキブースタ54の作動開始時のジャンピングによるホイールシリンダ圧力Pwcjと同一であり、ジャンピングによるホイールシリンダ圧力Pwcjは車両全体の制動力Fbvが目標制動力Fbvtであるときのホイールシリンダ圧力Pwcと同一であるので、ストロークSが踏力伝達開始ストロークSsであるときの前輪用回生制動装置14及び後輪用回生制動装置16による車両全体の回生制動力Fbvrは0であり、これによりストロークSが踏力伝達開始ストロークSsを越えて増減する際に前輪用回生制動装置14及び後輪用回生制動装置16による車両全体の回生制動力Fbvrが急変すること及びこれに起因するショックを確実に防止することができる。
また図示の第一の実施例によれば、ストロークSが踏力伝達開始ストロークSsよりも大きい値より低下する際には、ストロークSが踏力伝達開始ストロークSsよりも大きい終了基準値Se以下になると、オイルポンプ66の駆動が開始され、ストロークSが踏力伝達開始ストロークSsになった段階でホイールシリンダ圧力Pwcがジャンピング圧力Pwcjと同一の圧力になるよう制御され、ストロークSが踏力伝達開始ストロークSsからプリチャージ開始基準値Spreになるまで、ストロークSの低下につれてホイールシリンダ圧力Pwcが0になるまで漸次低下されるので、ストロークSの低下時にストロークSが踏力伝達開始ストロークSsを越えた段階でホイールシリンダ圧力Pwcがジャンピング圧力Pwcjより0に急減すること及びこのホイールシリンダ圧力Pwcの急変に起因するショックをも確実に防止することができる。
この場合終了基準値Seはストローク速度Sdが負の値で絶対値が大きいほど大きくなるよう、ストローク速度Sdに応じて可変設定されるので、ストロークの低下速度が高いときにも確実に遅れなく油圧サーボ装置76によるストロークSに応じたホイールシリンダ圧力の制御の準備をすることができ、これによりストロークSが踏力伝達開始ストロークSsになった段階で確実に油圧サーボ装置76によりホイールシリンダ圧力Pwcをジャンピング圧力Pwcjと同一の圧力に制御し、ホイールシリンダ圧力Pwcが急激に低下することを防止することができる。
また図示の第一の実施例によれば、ストロークSが踏力伝達開始ストロークSsであるときの目標制動力Fbvtは前輪用回生制動装置14及び後輪用回生制動装置16による車両全体の最大回生制動力Fbvrmaxよりも大きいので、前輪用回生制動装置14及び後輪用回生制動装置16に対する回生制動の要求性能が過剰に高くなることを防止することができ、よって前輪用回生制動装置14及び後輪用回生制動装置16は高性能な回生制動装置である必要がない。
また図示の第一の実施例によれば、ストロークSがプリチャージ開始基準値Spreであるときの目標制動力Fbvtは前輪用回生制動装置14及び後輪用回生制動装置16による車両全体の最大回生制動力Fbvrmaxよりも小さいので、ストロークSが踏力伝達開始ストロークSs以下の状況に於いて、前輪用回生制動装置14及び後輪用回生制動装置16による車両全体の回生制動力Fbvrを確実に最大回生制動力Fbvrmax以下の範囲にてできるだけ大きくすることができ、これによりストロークSがプリチャージ開始基準値Spreであるときの目標制動力Fbvtは前輪用回生制動装置14及び後輪用回生制動装置16による車両全体の最大回生制動力Fbvrmaxよりも大きい場合に比して、確実に回生効率を高くすることができる。
また図示の第一の実施例によれば、ストロークSが踏力伝達開始ストロークSsよりも大きい状況に於いて、ブレーキブースタ54の作動により発生される制動力Fbvfbが車両全体の目標制動力Fbvtよりも小さいときには、目標制動力に対し不足する制動力が前輪用回生制動装置14及び後輪用回生制動装置16を作動させることにより補充されるので、目標制動力に対し不足する制動力が回生制動手段を作動させることにより補充されない場合に比して、運転者の制動操作量が制御モード切換え基準値よりも大きい状況に於ける車両全体の制動力Fbvを確実に目標制動力Fbvtに近づけることができると共に、回生効率を確実に高くすることができる。
また図示の第一の実施例によれば、ブレーキペダル44のストロークを許容しつつブレーキブースタ54の作動を制限する作動制限及びストローク許容装置56は、ブレーキペダル44に連結された連結部材92と、連結部材92に固定されブレーキブースタ54の入力ロッド100に対し相対的に遊動するガイドブロック98と、入力ロッド100に担持されたばね座部材102と、ガイドブロック98とばね座部材102との間に弾装された圧縮コイルばね104とを含み、運転者によるブレーキペダル44のストロークを許容すると共に、ブレーキペダル44に対する運転者の制動操作力がブレーキブースタ54へ伝達されることを阻止するよう構成されているので、ブレーキペダル44のストロークを許容しつつブレーキブースタ54の作動を制限するか否かの切り替えを行う例えば電気制御式の駆動装置は不要であり、従って作動制限及びストローク許容装置56の構造を簡略化することができると共に、切り替えの制御を不要にすることができる。
また図示の第一の実施例によれば、ガイドブロック98がばね座部材102に当接する直前に、ブレーキペダル44に与えられている踏力がブレーキブースタ54へ伝達され始めるようになっているので、ガイドブロック98がばね座部材102に当接することにより踏力がブレーキブースタ54へ伝達され始める構造の場合に比して、ストロークSが踏力伝達開始ストロークSsを越えて増大する際に運転者がブレーキペダル44の反力の急変やショックを感じる虞れを確実に低減することができる。
[第二の実施例]
図13は第一の実施例の修正例として構成された本発明による車両の制動装置の第二の実施例の要部を示す概略構成図である。尚図13に於いて図2に示された部材と同一の部材には図2に於いて付された符号と同一の符号が付されている。
この実施例に於いては、ブレーキペダル44にはペダル比変更装置130が設けられており、図13には詳細に示されていないが、ペダル比変更装置130はアーム部44Aに対し相対的に変位可能な部材を含み、アーム部44Aの変位及び荷重が相対的に変位可能な部材を介してピン94へ伝達されるようになっている。尚ペダル比変更装置130自体は本発明の要旨をなすものではなく、例えば特許第3269239号公報に記載されている如く当技術分野に於いて公知の構成のものであってよいので、ペダル比変更装置130の詳細な構造及びその説明については省略する。
図13に示されている如く、軸線96に垂直な方向について枢軸90とペダル部44Bの中央部との間のアーム長さをLpとし、枢軸90とピン94との間のアーム長さをLsとすると、ブレーキペダル44のレバー比Rl(=Ls/Lp)は、図14に示されている如く、ストロークSが踏力伝達開始ストロークSs以下の領域に於いては実質的に一定であるが、ストロークSが踏力伝達開始ストロークSsを越える領域に於いてはストロークSの増大につれて漸次大きくなるようになっている。
従って軸線96に沿う方向について見たペダル部44Bの中央部のストロークをSpとすると、ストロークSの変化量dSに対するストロークSpの変化量dSpの比dSp/dSであるブレーキペダル44のペダル比Rpは、図15に示されている如く、ストロークSが踏力伝達開始ストロークSs以下の領域に於いては実質的に一定であるが、ストロークSが踏力伝達開始ストロークSsを越える領域に於いてはストロークSの増大につれて漸次大きくなるようになっている。
この第二の実施例の他の点については上述の第一の実施例の場合と同様であり、従って摩擦制動装置12、前輪用回生制動装置14、後輪用回生制動装置16はそれぞれ制動制御装置48及びエンジン制御装置36により第一の実施例の場合と同様に制御され、ブレーキブースタ54等も第一の実施例の場合と同様に作動する。
従って図示の第二の実施例によれば、上述の第一の実施例の場合と同様の作用効果が得られることに加えて、軸線96に沿う方向について見たペダル部44Bの中央部のストロークSpと車両全体の制動力Fbvとの関係は図16に示されている如き関係になり、一点鎖線にて示された第一の実施例の場合に比して、ストロークSが踏力伝達開始ストロークSsに対応するSspを越える領域に於いてブレーキブースタ54の作動により発生される車両全体の摩擦制動力Fbvfbを小さくし、前輪用回生制動装置14及び後輪用回生制動装置16による回生制動力Fbvrを大きくすることができ、これにより上述の第一の実施例の場合に比して回生効率を高くすることができる。尚図16に於いて、Sprepはプリチャージ開始基準値Spreに対応するストロークSpである。
尚上述の第二の実施例に於いては、ブレーキペダル44のペダル比Rpは、ストロークSが踏力伝達開始ストロークSs以下の領域に於いては実質的に一定であり、ストロークSが踏力伝達開始ストロークSsを越える領域に於いてはストロークSの増大につれて漸次大きくなるようになっているが、少なくともストロークSが踏力伝達開始ストロークSsを越える領域に於いてストロークSの増大につれて漸次大きくなるようになっている限り、ストロークSが踏力伝達開始ストロークSs以下の領域に於いてもペダル比RpがストロークSの増大につれて漸次大きくなるようになっていてもよい。
また上述の第一及び第二の実施例に於いては、ストロークSが踏力伝達開始ストロークSsであるときにホイールシリンダ圧力PwcがPwcjになるようになっているが、図17及び図18に示されている如く、ストロークSが踏力伝達開始ストロークSsであるときにホイールシリンダ圧力PwcがPwcjよりも小さい値になるようストロークSの増大につれてホイールシリンダ圧力Pwcが漸次増大され、ストロークSが踏力伝達開始ストロークSsであるときにも回生制動が行われるよう修正されてもよい。
その場合にもストロークSが踏力伝達開始ストロークSs以下の領域に於いてストロークSの増大につれてホイールシリンダ圧力Pwcが漸次増大されず、従って回生制動のみが行われる場合に比して、ストロークSが踏力伝達開始ストロークSsの前後に変化する状況に於いてホイールシリンダ圧力Pwcが段差的に急激に変化することに起因するショックを確実に低減することができる。
[第三の実施例]
図19は第一の実施例の修正例として構成された本発明による車両の制動装置の第三の実施例の制動制御ルーチンを示すフローチャートである。尚図19に於いて図3に示されたステップと同一のステップには図3に於いて付されたステップ番号と同一のステップ番号が付されている。
この第三の実施例に於いては、制動制御装置48は、ストロークSが踏力伝達開始ストロークSs以下であるときには、ストロークSに基づいて摩擦制動装置12の油圧サーボ装置76により発生すべき車両全体の目標摩擦制動力Fbvtを演算し、油圧サーボ装置76により発生される車両全体の摩擦制動力Fbvrが車両全体の目標摩擦制動力Fbvtになるよう、オイルポンプ66を駆動すると共にリニアソレノイド弁84等を制御し、従って前輪用回生制動装置14及び後輪用回生制動装置16による回生制動は行われない。
また制動制御装置48は、ストロークSが踏力伝達開始ストロークSsよりも大きいときには、上述の第一及び第二の実施例の場合と同様、油圧サーボ装置76による制動力を発生させず、ブレーキブースタ54の作動による車両全体の制動力Fbvfbが発生されるとともに、ブレーキブースタ54の作動による車両全体の制動力Fbvfbと車両全体の回生制動力Fbvrとの和が車両全体の目標制動力Fbvtになるよう、前輪用回生制動装置14及び後輪用回生制動装置16が制御される。
次に図19に示されたフローチャートを参照して第三の実施例に於ける制動制御ルーチンについて説明する。
この実施例に於いては、ステップ50が完了するとステップ90へ進み、ステップ100が実行されると、ステップ130へ進む。他のステップは上述の第一及び第二の実施例の場合と同様に実行される。
かくして図示の第三の実施例によれば、図20に示されている如く、ストロークSが踏力伝達開始ストロークSs以下であるときには、油圧サーボ装置76により発生される車両全体の摩擦制動力Fbvrが車両全体の目標摩擦制動力Fbvtになるよう制御され、ストロークSが踏力伝達開始ストロークSsよりも大きいときには、油圧サーボ装置76による制動力は発生されず、上述の第一及び第二の実施例の場合と同様、ブレーキブースタ54の作動による車両全体の制動力Fbvfbと車両全体の回生制動力Fbvrとの和が車両全体の目標制動力Fbvtになるよう、ブレーキブースタ54の作動により制動力Fbvrbが発生されると共に、前輪用回生制動装置14及び後輪用回生制動装置16が制御される。
従って第三の実施例によれば、上述の第一及び第二の実施例の場合に比して回生効率は低くなるが、ストロークSが踏力伝達開始ストロークSsよりも大きい領域に於いて油圧サーボ装置76による制動力の発生は不要であるので、上述の第一及び第二の実施例の場合と同様、前述の従来の制動装置の場合に比して油圧サーボ装置76に対する制動圧や耐久性の要求性能を低下させることができる。
また第三の実施例によれば、ストロークSがプリチャージ開始基準値Spre以上であり踏力伝達開始ストロークSs以下である場合にも、上述の第一及び第二の実施例の場合の如く油圧サーボ装置76による車両全体の制動力Fbvfcと車両全体の回生制動力Fbvrとの和が車両全体の目標制動力Fbvtになるよう、油圧サーボ装置76、前輪用回生制動装置14、後輪用回生制動装置16が制御される場合に比して、制動力の制御を簡略化することができる。
尚上述の第三の実施例に於いては、ブレーキペダル44のペダル比Rpは、第一の実施例の場合と同様、ストロークSの全域に亘り実質的に一定であるが、上述の第二の実施例の場合と同様、ストロークSが踏力伝達開始ストロークSsを越える領域に於いてはストロークSの増大につれて漸次大きくなるよう修正されてもよい。
その場合には図21に示されている如く、上述の第二の実施例の場合と同様、ストロークSが踏力伝達開始ストロークSsに対応するSspを越える領域に於いてブレーキブースタ54の作動により発生される車両全体の摩擦制動力Fbvfbを小さくし、前輪用回生制動装置14及び後輪用回生制動装置16による回生制動力Fbvrを大きくすることができ、これにより上述の第三の実施例の場合に比して回生効率を高くすることができる。
[第四の実施例]
図22は回生制動装置が搭載されていない車両に適用された本発明による車両の制動装置の第四の実施例の制動制御ルーチンを示すフローチャートである。尚図22に於いて図3に示されたステップと同一のステップには図3に於いて付されたステップ番号と同一のステップ番号が付されている。
この第四の実施例に於いては、図には示されていないが、第一の実施例に於ける、前輪用回生制動装置14及び後輪用回生制動装置16は設けられておらず、制動力は第一の実施例に於ける摩擦制動装置12と同様の摩擦制動装置によってのみ油圧サーボ装置76による制動力又はブレーキブースタ54の作動による制動力として発生される。またこの実施例に於いては、ブレーキペダル44、ブレーキブースタ54、作動制限及びストローク許容装置56は第一の実施例の場合と同様に構成されており、第二の実施例に於けるペダル比変更装置130は設けられていない。
従ってこの第四の実施例に於いては、制動制御装置48は、ストロークSが踏力伝達開始ストロークSs以下であるときには、ストロークSに基づいて摩擦制動装置12の油圧サーボ装置76により発生すべき車両全体の目標摩擦制動力Fbvtを演算し、油圧サーボ装置76により発生される車両全体の摩擦制動力Fbvrが車両全体の目標摩擦制動力Fbvtになるよう、オイルポンプ66を駆動すると共にリニアソレノイド弁84等を制御する。
また制動制御装置48は、ストロークSが踏力伝達開始ストロークSsよりも大きいときには、オイルポンプ66を駆動しないと共にリニアソレノイド弁84等を制御せず、これにより油圧サーボ装置76による制動力を発生させず、ブレーキブースタ54の作動による制動力Fbvrbのみが発生する状態にする。
次に図22に示されたフローチャートを参照して第四の実施例に於ける制動制御ルーチンについて説明する。
この第四の実施例に於いては、ステップ50が完了するとステップ90へ進み、ステップ100が実行されると、ステップ130へ進む。またステップ170が実行されると、ステップ210に於いて各車輪の目標制動圧Pwctが0に設定され、他のステップは上述の第一乃至第三の実施例の場合と同様に実行される。
かくして図示の第四の実施例によれば、図23に示されている如く、ストロークSが踏力伝達開始ストロークSs以下であるときには、油圧サーボ装置76により発生される車両全体の摩擦制動力Fbvrが車両全体の目標摩擦制動力Fbvtになるよう制御され、ストロークSが踏力伝達開始ストロークSsよりも大きいときには、油圧サーボ装置76による制動力は発生されず、ブレーキブースタ54の作動による制動力Fbvrbができるだけ車両全体の目標摩擦制動力Fbvtに近い値になるよう発生される。
従って第四の実施例によれば、回生制動装置が搭載されていない車両に於いて、ストロークSが踏力伝達開始ストロークSsよりも大きい領域に於いて油圧サーボ装置76による制動力の発生を不要にすることができるので、上述の第一乃至第三の実施例の場合と同様、前述の従来の制動装置の場合に比して油圧サーボ装置76に対する制動圧や耐久性の要求性能を低下させることができる。
尚上述の第四の実施例に於いては、ブレーキペダル44のペダル比Rpは、第一及び第三の実施例の場合と同様、ストロークSの全域に亘り実質的に一定であるが、例えば上述の第二の実施例に於けるペダル比変更装置130と同様の装置により、上述の第二の実施例の場合とは逆に、ストロークSが踏力伝達開始ストロークSsを越える領域に於いてはペダル比Rpが図24に示されている如くストロークSの増大につれて漸次小さくなるよう修正されてもよい。
その場合には図25に示されている如く、ストロークSが踏力伝達開始ストロークSsに対応するSspを越える領域に於いてブレーキブースタ54の作動により発生される車両全体の摩擦制動力Fbvfbを大きくすることができ、これにより上述の第四の実施例の場合に比してストロークSが大きい領域に於ける車両全体の制動力Fbvを車両全体の目標制動力Fbvtに近づけることができる。尚図25に於いて、二点鎖線はペダル比Rpが一定である場合にブレーキブースタ54の作動により発生される車両全体の摩擦制動力Fbvfbの値を示している。
以上に於いては本発明を特定の実施例について詳細に説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施例が可能であることは当業者にとって明らかであろう。
例えば上述の各実施例に於いては、制御に供される運転者の制動操作量はブレーキペダル44のストロークSであるが、ブレーキペダル44に対する踏力であってもよく、またストロークS及びブレーキペダル44に対する踏力の両者に基づいて判定されるよう修正されてもよい。
また上述の各実施例に於いては、運転者の制動操作量としてのブレーキペダル44のストロークSに基づいて車両全体の目標制動力Fbvtが演算され、目標制動力Fbvtに基づいて油圧サーボ装置76、前輪用回生制動装置14、後輪用回生制動装置16が制御されるようになっているが、油圧サーボ装置76等を制御するためのパラメータは車両の目標減速度であるよう修正されてもよい。
また上述の第一及び第二の実施例に於いては、ストロークSが踏力伝達開始ストロークSsよりも小さいプリチャージ開始基準値Spre以上になると、ストロークSが踏力伝達開始ストロークSsであるときにホイールシリンダ圧力Pwcがブレーキブースタ54の作動開始時のジャンピング圧力Pwcjと同一の圧力になるよう、油圧サーボ装置76によりストロークSの増大につれてホイールシリンダ圧力Pwcが漸次増大されるようになっているが、油圧サーボ装置76によるホイールシリンダ圧力Pwcの漸増が省略され、ストロークSが踏力伝達開始ストロークSs以下であるときには回生制動力のみにより車両全体の目標制動力Fbvtが達成されるよう修正されてもよい。
尚その場合には、前輪用回生制動装置14及び後輪用回生制動装置16による最大回生制動力Fbvrtmaxは、ストロークSが踏力伝達開始ストロークSsであるときの車両全体の目標制動力Fbvtjよりも大きい値に設定される。
また上述の第一及び第二の実施例に於いては、ストロークSが踏力伝達開始ストロークSsよりも大きいときには、車両全体の目標制動力Fbvtとブレーキブースタ54の作動による制動力Fbvfbとの偏差分の制動力が前輪用回生制動装置14及び後輪用回生制動装置16による回生制動力Fbvrにより補充されるようになっているが、特に上記偏差分の制動力が小さい場合には、図26に示されている如く、前輪用回生制動装置14及び後輪用回生制動装置16による回生制動力Fbvrの発生が省略されてもよい。
尚図26に於いては、ステップ140に於いて否定判別が行われた場合又はステップ170が完了すると、ステップ30及び40が実行される点が第一の実施例の場合とは異なる。
また上述の第一及び第二の実施例に於いては、プリチャージ開始基準値Spreはストローク速度Sdが正の値で大きいほど小さくなるよう、ストローク速度Sdに応じて可変設定され、終了基準値Seはストローク速度Sdが負の値で絶対値が大きいほど大きくなるよう、ストローク速度Sdに応じて可変設定されるようになっているが、プリチャージ開始基準値Spre及び終了基準値Seの少なくとも一方が一定の値であるよう修正されてもよい。
また上述の各実施例に於いては、車両を駆動する駆動手段はガソリンエンジン20と電動発電機22とを含むハイブリッドシステム18であり、電動発電機22が回生制動用の発電機として作動するようになっているが、ハイブリッドシステムの内燃機関はディーゼルエンジンの如き他の内燃機関であってもよく、また車両を駆動する駆動手段は通常の内燃機関であり、回生制動用の発電機は内燃機関とは独立のものであってもよい。
また上述の各実施例に於いては、車両は前輪がハイブリッドシステム18により駆動される前輪駆動車であるが、本発明が適用される車両は後輪駆動車や四輪駆動車であってもよい。
ハイブリッドシステムが搭載された車両に適用された本発明による制動装置の第一の実施例を示す概略構成図である。 図1に示された液圧式の摩擦制動装置を示す概略構成図である。 第一の実施例に於いて制動制御装置により達成される制動制御ルーチンを示すフローチャートである。 リニアソレノイド弁に対する制御電流Isとリニアソレノイド弁を横切る差圧ΔPとの間の関係を示すグラフである。 ブレーキペダルのストロークSとブレーキブースタに入力される荷重Fpとの関係及び荷重Fpとホイールシリンダ圧力Pwcとの間の関係を示すグラフである。 ホイールシリンダへ供給されるオイルの流量Qとホイールシリンダ内の圧力Pwcとの間の関係を示すグラフである。 ブレーキペダルのストロークSと車両全体の目標制動力Fbvtとの間の関係を示すグラフである。 ブレーキペダルのストロークSとブレーキペダルの反力Fdとの間の関係を示すグラフである。 ブレーキペダルのストロークSとホイールシリンダ圧力Pwcとの間の関係を示すグラフである。 ブレーキペダルのストロークSと車両全体の制動力Fbvとの間の関係を示すグラフである。 ブレーキペダルのストローク速度Sdとプリチャージ開始基準値Spreとの間の関係を示すグラフである。 ブレーキペダルのストローク速度Sdと終了基準値Seとの間の関係を示すグラフである。 第一の実施例の修正例として構成された本発明による車両の制動装置の第二の実施例の要部を示す概略構成図である。 ブレーキペダルのストロークSとブレーキペダルのレバー比Rlとの間の関係を示すグラフである。 ブレーキペダルのストロークSとブレーキペダルのペダル比Rpとの間の関係を示すグラフである。 ブレーキペダルのペダル部のストロークSpと車両全体の制動力Fbvとの間の関係を示すグラフである。 第一の実施例の他の修正例に於けるブレーキペダルのストロークSと車両全体の制動力Fbvとの間の関係を示すグラフである。 第二の実施例の他の修正例に於けるブレーキペダルのペダル部のストロークSpと車両全体の制動力Fbvとの間の関係を示すグラフである。 第一の実施例の修正例として構成された本発明による車両の制動装置の第三の実施例の制動制御ルーチンを示すフローチャートである。 第三の実施例に於けるブレーキペダルのストロークSと車両全体の制動力Fbvとの間の関係を示すグラフである。 第三の実施例の他の修正例に於けるブレーキペダルのペダル部のストロークSpと車両全体の制動力Fbvとの間の関係を示すグラフである。 回生制動装置が搭載されていない車両に適用された本発明による車両の制動装置の第四の実施例の制動制御ルーチンを示すフローチャートである。 第四の実施例に於けるブレーキペダルのストロークSと車両全体の制動力Fbvとの間の関係を示すグラフとの間の関係を示すグラフである。 第四の実施例の修正例に於けるブレーキペダルのストロークSとブレーキペダルのペダル比Rpとの間の関係を示すグラフである。 第四の実施例の修正例に於けるブレーキペダルのペダル部のストロークSpと車両全体の制動力Fbvとの間の関係を示すグラフである。 第一の実施例の更に他の修正例に於いて制動制御装置により達成される制動制御ルーチンを示すフローチャートである。 従来の制動装置についてブレーキペダルのストロークSと車両全体の目標制動力Fbvtとの間の関係を示すグラフである。 ブレーキペダルのストロークが低い領域に於いてのみポンプ加圧式の制動力発生装置による制動力の補充が行われる場合について、ブレーキペダルのストロークSと車両全体の制動力Fbvとの間の関係を示すグラフである。 ブレーキペダルのストロークが低い領域に於いてのみポンプ加圧式の制動力発生装置による制動力の補充が行われる他の場合について、ブレーキペダルのストロークSと車両全体の制動力Fbvとの間の関係を示すグラフである。
符号の説明
10…制動装置、12…摩擦制動装置、14…前輪用回生制動装置、16…後輪用回生制動装置、18…ハイブリッドシステム、22…電動発電機、36…エンジン制御装置、44…ブレーキペダル、42…電動発電機、44…ホイールシリンダ、48…制動制御装置、52…マスタシリンダ、54…ブレーキブースタ、56…作動制限及びストローク許容装置、114…ストロークセンサ

Claims (12)

  1. 制動操作手段と制動液圧発生手段との間に設けられたブレーキブースタと、ホイールシリンダ圧力を前記制動液圧発生手段により発生される制動液圧よりも高く制御することにより制動力を発生する制動液圧サーボ手段とを有する車両の制動力制御装置にして、前記制動操作手段に対する運転者の制動操作量を検出する手段と、運転者の制動操作量が制御モード切換え基準値以下であるときには、前記ブレーキブースタを作動させることなく運転者の制動操作量に基づいて前記制動液圧サーボ手段を制御することにより運転者の制動操作量に応じた制動力を発生させ、運転者の制動操作量が前記制御モード切換え基準値よりも大きいときには、前記制動液圧サーボ手段を作動させることなく前記ブレーキブースタを作動させることにより運転者の制動操作量に応じた制動力を発生させることを特徴とする車両の制動装置。
  2. 前記制動装置は更に回生制動力を発生する回生制動手段を有し、運転者の制動操作量が制御モード切換え基準値以下であるときには、前記ブレーキブースタを作動させることなく運転者の制動操作量に基づいて前記回生制動手段及び前記制動液圧サーボ手段を制御することにより運転者の制動操作量に応じた制動力を発生させ、運転者の制動操作量が前記制御モード切換え基準値よりも大きいときには、前記制動液圧サーボ手段を作動させることなく少なくとも前記ブレーキブースタを作動させることにより運転者の制動操作量に応じた制動力を発生させることを特徴とする請求項1に記載の車両の制動装置。
  3. 運転者の制動操作量が前記制御モード切換え基準値であるときの車両全体の制動力は前記回生制動手段による車両全体の最大回生制動力よりも大きいことを特徴とする請求項2に記載の車両の制動装置。
  4. 前記ブレーキブースタの作動開始時のジャンピングによるホイールシリンダ圧力の増圧量は運転者の制動操作量が前記制御モード切換え基準値であるときの制動力に対応する値に設定されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の車両の制動装置。
  5. 運転者の制動操作量が前記制御モード切換え基準値よりも大きい状況に於いて、前記ブレーキブースタを作動させることにより発生される制動力が運転者の制動操作量に基づく目標制動力よりも小さいときには、前記目標制動力に対し不足する制動力の少なくとも一部が前記回生制動手段を作動させることにより補充されることを特徴とする請求項2乃至4の何れかに記載の車両の制動装置。
  6. 前記制御モード切換え基準値は、ホイールシリンダへ流入する作動液体の流量及びホイールシリンダ圧力が互いに他に対し線形の関係をなす領域の値であることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の車両の制動装置。
  7. 運転者の制動操作量が前記制御モード切換え基準値よりも小さいプリチャージ開始基準値以上であり且つ前記制御モード切換え基準値以下であるときには、前記制動液圧サーボ手段により運転者の制動操作量に応じてホイールシリンダ圧力を予め増圧することを特徴とする請求項2乃至6の何れかに記載の車両の制動装置。
  8. 前記プリチャージ開始基準値は、運転者の制動操作量の増大変化率が大きいときには運転者の制動操作量の増大変化率が小さいときに比して小さくなるよう、運転者の制動操作量の増大変化率に応じて可変設定されることを特徴とする請求項7に記載の車両の制動装置。
  9. 運転者の制動操作量が前記制御モード切換え基準値であるときの前記制動液圧サーボ手段による前記ホイールシリンダ圧力の増圧量は、前記ブレーキブースタの作動開始時のジャンピングによるホイールシリンダ圧力の増圧量と同一であることを特徴とする請求項7又は8に記載の車両の制動装置。
  10. 前記制動操作手段は少なくとも運転者の制動操作量が前記制御モード切換え基準値よりも大きい状況に於いて、ストロークが大きくなるほどレバー比が大きくなるレバー比可変式のブレーキペダルであり、前記ブレーキブースタを作動させることにより発生される制動力は運転者の制動操作量に基づく目標制動力よりも小さいことを特徴とする請求項2乃至9の何れかに記載の車両の制動装置。
  11. 前記制動操作手段と前記ブレーキブースタとの間にブレーキブースタ作動制限手段及びストローク許容手段を有し、前記ブレーキブースタ作動制限手段は運転者の制動操作量が前記制御モード切換え基準値以下であるときには、前記制動操作手段に対する運転者の制動操作力が前記ブレーキブースタへ伝達されることを阻止し、前記ストローク許容手段は前記ブレーキブースタ作動制限手段が作動している状況に於いて運転者による前記制動操作手段のストロークを許容することを特徴とする請求項1乃至10の何れかに記載の車両の制動装置。
  12. 前記ブレーキブースタ作動制限手段は運転者の制動操作力が増大する過程に於いて前記ストローク許容手段が前記制動操作手段のストロークの許容を終了する前に前記ブレーキブースタに対する運転者の制動操作力の伝達を開始することを特徴とする請求項11に記載の車両の制動装置。
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