JP4753454B2 - 光熱硬化性樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、感光性樹脂組成物に硬化剤として有用なフェノールノボラック及びこのフェノールノボラックを用いた半導体素子や回路配線板等の製造への応用が可能な感光性樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子機器の携帯化などによる軽薄短小化や高機能化が急速度で進展している。これに伴い、これら機器内の回路で使用される半導体集積回路にも、小型化、高集積化が進行している。そのため、従来のパッケージに比べて配線ピン数は増大するが、実装面積やパッケージ面積は逆に小さくなるといったジレンマが生じる。そのため、従来のパッケージ方式とは異なる、BGA(Ball Grid Array),さらにはCSP(Chip Scale Package)とよばれる、新しい形の実装密度の高いパッケージ方式が提案されている。これらの半導体パッケージ方式では、従来型半導体パッケージのリードフレームの代わりに、半導体パッケージ用基板あるいはインターポーザーと呼ばれる、プラスチックやセラミックス等各種材料を使って構成されるサブストレートを使用して、半導体チップの電極とプリント配線板の電気的接続を行っている。このサブストレート上に構成される回路は、小型化・高密度化した半導体内に導入されるものであり、一般的なプリント配線板に比べて非常に細線化・高密度化が進んだものとなる。そこで、パッケージの形式によりこの微細配線をレジスト層の形成により保護する必要が生じる。
【0003】
さらに、これらの半導体パッケージが実装されるプリント回路配線板においても、配線の高密度化のため、フルアディティブ法のような新しい製造方法が注目されている。これは、絶縁基材よりなる積層板に接着剤層を形成し、そこへ無電解めっきにより回路及びスルーホールを形成するもので、高い導体パターン精度や均一なスルーホール導通の生成を行うことが可能である。現在このアディティブ法が民生用、産業用の高密度、高多層基板製造プロセスとして実用され始めている。
【0004】
これらのレジスト用、あるいは接着剤樹脂に共通して要求されるのは、チップ接合や実装時に200〜300℃の高熱に耐え得る高い耐熱性、その加工時に基材にダメージを与えない程度の低温での加工性、配線の接合部や絶縁層の層間で導通を取るための孔加工性などが挙げられる。
【0005】
このような、特に低温加工性と耐熱性の両方が必要な回路基材上へのレジスト膜や層間絶縁膜として、一般的にエポキシ樹脂が使用されている。また、高密度化した回路配線に対応した孔等のパターン加工を行うために写真製版によって形成する(写真法)こと、即ちこれら樹脂に感光性を付与した感光性樹脂を使うことが有利である(例えば、特開平8−62839号公報)。このとき、この感光性樹脂のパターン形成時に不必要な領域の樹脂を除去する現像液は、従来有機溶剤系のものが使用されてきた。しかし、近年作業に対する安全性、また環境への悪影響の防止といった観点より、水系現像液の使用を要求されている。ところが、上記のような感光性樹脂は、感光性を有しない同様の組成の樹脂と比較して、耐熱性や機械特性等が低下してしまうという問題が存在する。これは、樹脂に感光性を付与するために導入されたアクリレート構造などの感光基や増感剤の熱安定性等が樹脂本体のそれに比べ劣っているため、加工後樹脂の中に残ったそれらの感光基や増感剤が樹脂全体の熱安定性等を低下させてしまうことに起因すると考えられる。このため、上記感光性樹脂は、高い耐熱性を要求される用途への応用が制限されているのが現状である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明は、半導体素子、回路配線板などへの製造へ応用することができるような、写真法によりパターン精度の良いレジスト形成がアルカリ水溶液を用いた現像で可能であり、低温での加工が可能で耐熱性の優れた樹脂層を得ることができる新たな感光性樹脂組成物を提供することを目的としてなされたものである。
さらに本発明は、耐熱性の優れた感光性樹脂組成物を提供するに際して硬化剤として有用な新たなフェノールノボラックを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、一般式[1]で表される構造単位からなり、かつ一般式[1]で表される構造単位の少なくとも一部はR1がcis−ジエン構造を有する1価の有機基であり、かつ平均重合度が3〜30の範囲であるフェノールノボラック(以下、フェノールノボラック(1)という)に関する。
【化3】
(式[1]中、cis−ジエン構造を有する1価の有機基でないR1は水素であり、R2は水素または炭素数1〜4のアルキル基である。)
【0008】
さらに本発明は、一般式[2]及び[3]で表される構造単位のいずれか一方又は両方からなり、かつ一般式[2]で表される構造単位の少なくとも一部は、R3及びR4の一方又は両方がcis−ジエン構造を有する1価の有機基であり、一般式[3]で表される構造単位の少なくとも一部は、R6及びR7の一方又は両方がcis−ジエン構造を有する1価の有機基であり、かつ平均重合度が2〜25の範囲であるフェノールノボラック(以下、フェノールノボラック(2)という)に関する。
【化4】
(式[2]中、cis−ジエン構造を有する1価の有機基でないR3及びR4は水素であり、R5は酸素、硫黄または炭素数1〜4の置換基を有していても良いアルキレン基、アルキリデン基もしくはアルキレンオキシ基である。式[3]中、cis−ジエン構造を有する1価の有機基でないR6及びR7は水素であり、R8は、酸素、硫黄または炭素数1〜4の置換基を有していても良いアルキレン基、アルキリデン基もしくはアルキレンオキシ基である。)
【0009】
さらに本発明は、(イ)多官能エポキシ樹脂、(ロ)上記本発明のフェノールノボラック、及び(ハ)酸素増感剤を含有することを特徴とする光熱硬化性樹脂組成物に関する。
【0010】
【発明の実施の形態】
フェノールノボラック(1)
本発明のフェノールノボラック(1)は、上記一般式[1]で表される構造単位からなり、かつ一般式[1]で表される構造単位の少なくとも一部はR1がcis−ジエン構造を有する1価の有機基であり、かつ平均重合度が3〜30の範囲であるフェノールノボラックである。
【0011】
cis−ジエン構造を有する1価の有機基は、酸素増感剤の作用により架橋を生じる基である。一方、R1が水素であることで、このフェノールノボラックを使用して形成された樹脂にアルカリ水溶液による溶解性を付与することができる。このように、架橋性及び溶解性を両立させるとういう観点から、R1がcis−ジエン構造を有する1価の有機基である構造単位の割合が全構造単位の20〜80%の範囲であることが好ましく、残りのR1は水素である。より好ましくは、R1がcis−ジエン構造を有する1価の有機基である構造単位の割合は全構造単位の30〜70%の範囲であり、残りのR1は水素である。
【0012】
上記cis−ジエン構造を有する1価の有機基としては、たとえば、−CH2O−CO−D、−O−CO−D、−CO−O−CH2−D、−CH2O−CH2−D、−O−CH2−D、−NH−CO−D、−CO−NH−CH2−D等を挙げることができる。ただし、Dはcis−ジエン構造である。Dで表されるcis−ジエン構造としてはシクロペンタジエニル基、フリル基、ピロリル基、チエニル基、ピラニル基、イソベンゾフラニル基、インドリジニル基、キノリジニル基などをあげることができる。これらの中で、cis−ジエン構造としては、シクロペンタジエニル基、フリル基、ピロリル基及びチエニル基が好ましく、特に、フラン、チオフェン及びピロール基であることが好ましい。
【0013】
平均重合度は3〜30の範囲、好ましくは4〜20の範囲である。
尚、本発明のフェノールノボラック(1)は、R1がcis−ジエン構造を有する1価の有機基である構造単位がタンダムに存在するものである。
【0014】
フェノールノボラック(1)において、R2は水素または炭素数1〜4のアルキル基である。炭素数1〜4のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、及びアリル基等を挙げることができる。
【0015】
フェノールノボラック(2)
フェノールノボラック(2)は、一般式[2]及び[3]で表される構造単位のいずれか一方又は両方からなり、かつ一般式[2]で表される構造単位の少なくとも一部は、R3及びR4の一方又は両方がcis−ジエン構造を有する1価の有機基であり、一般式[3]で表される構造単位の少なくとも一部は、R6及びR7の一方又は両方がcis−ジエン構造を有する1価の有機基であり、かつ平均重合度が2〜25の範囲であるフェノールノボラックである。
【0016】
フェノールノボラック(2)は、一般式[2]で表される構造単位のみからなる場合(フェノールノボラック(2−1))、一般式[3]で表される構造単位のみからなる場合(フェノールノボラック(2−2))、並びに一般式[2]及び[3]の両方からなる場合(フェノールノボラック(2−3))、の3種類がある。
【0017】
フェノールノボラック(2−1)の場合、一般式[2]で表される構造単位の少なくとも一部は、R3及びR4の一方又は両方がcis−ジエン構造を有する1価の有機基である。上述のように、cis−ジエン構造を有する1価の有機基は、酸素増感剤の作用により架橋を生じる基である。一方、R3及びR4が水素であることで、このフェノールノボラックを使用して形成された樹脂にアルカリ水溶液による溶解性を付与することができる。このように、架橋性及び溶解性を両立させるとういう観点から、R3及びR4がcis−ジエン構造を有する1価の有機基である割合は、R3及びR4の合計の20〜80%の範囲であることが好ましく、残りのR3及びR4は水素である。より好ましくは、R3及びR4がcis−ジエン構造を有する1価の有機基である割合はR3及びR4の合計の30〜70%の範囲であり、残りのR3及びR4は水素である。
【0018】
フェノールノボラック(2−2)の場合、一般式[3]で表される構造単位の少なくとも一部は、R6及びR7の一方又は両方がcis−ジエン構造を有する1価の有機基である。上述のように、cis−ジエン構造を有する1価の有機基は、酸素増感剤の作用により架橋を生じる基である。一方、R6及びR7が水素であることで、このフェノールノボラックを使用して形成された樹脂にアルカリ水溶液による溶解性を付与することができる。このように、架橋性及び溶解性を両立させるとういう観点から、R6及びR7がcis−ジエン構造を有する1価の有機基である割合は、R6及びR7の合計の20〜80%の範囲であることが好ましく、残りのR6及びR7は水素である。より好ましくは、R6及びR7がcis−ジエン構造を有する1価の有機基である割合はR6及びR7の合計の30〜70%の範囲であり、残りのR6及びR7は水素である。
【0019】
フェノールノボラック(2−3)の場合、一般式[2]で表される構造単位の少なくとも一部は、R3及びR4の一方又は両方がcis−ジエン構造を有する1価の有機基であり、一般式[3]で表される構造単位の少なくとも一部は、R6及びR7の一方又は両方がcis−ジエン構造を有する1価の有機基である。そして架橋性及び溶解性を両立させるとういう観点から、R3、R4、R6及びR7がcis−ジエン構造を有する1価の有機基である割合は、R3、R4、R6及びR7の合計の20〜80%の範囲であることが好ましく、残りのR3、R4、R6及びR7は水素である。より好ましくは、R3、R4、R6及びR7がcis−ジエン構造を有する1価の有機基である割合はR6及びR7の合計の30〜70%の範囲であり、残りのR3、R4、R6及びR7は水素である。
【0020】
上記cis−ジエン構造を有する1価の有機基としては、たとえば、−CH2O−CO−D、−O−CO−D、−CO−O−CH2−D、−CH2O−CH2−D、−O−CH2−D、−NH−CO−D、−CO−NH−CH2−D等を挙げることができる。ただし、Dはcis−ジエン構造である。Dで表されるcis−ジエン構造としてはシクロペンタジエニル基、フリル基、ピロリル基、チエニル基、ピラニル基、イソベンゾフラニル基、インドリジニル基、キノリジニル基などをあげることができる。これらの中で、cis−ジエン構造としては、シクロペンタジエニル基、フリル基、ピロリル基及びチエニル基が好ましく、特に、フラン、チオフェン及びピロール基であることが好ましい。
【0021】
平均重合度は2〜25の範囲、好ましくは3〜20の範囲である。
尚、本発明のフェノールノボラック(2)は、一般式[2]で表される構造単位及び/又は[3]で表される構造単位がランダムに存在するものである。
【0022】
フェノールノボラック(2)において、R5及びR8で表される、炭素数1〜4の置換基を有していても良いアルキレン基、アルキリデン基もしくはアルキレンオキシ基において、アルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基等を挙げることができ、アルキリデン基としては、例えば、イソプロピリデン基、ブタン−2,2−ジイル基等を挙げることができ、アルキレンオキシ基としては、例えば、エタン−1,2−ジオキシ基、プロパン−1,2−ジオキシ基等を挙げることができる。また、炭素数1〜4の置換基としては、炭素数1〜4のアルキル基、例えばメチル基、エチル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、及びアリル基等を挙げることができる。
【0023】
上記フェノールノボラック(1)及び(2)の合成方法には特に制限はない。例えば、上記の骨格を有する2核体以上のフェノール性水酸基を有するフェノールノボラック(フェノールノボラック(1)の場合、一般式[1]中のR1が全て水素であるフェノールノボラック、フェノールノボラック(2)の場合、一般式[2]及び[3]中のR3、R4、R6及びR7が全て水素であるフェノールノボラック)(以下原料フェノールノボラックという)と、フェノール性水酸基と反応可能な構造とcis−ジエン構造の両方を一分子中に有する化合物(以下、cis−ジエン構造供与化合物という)を反応させることで得ることができる。フェノール性水酸基と反応可能な構造としては、例えば、エポキシ環、カルボン酸無水物、カルボン酸ハロゲン化物等を挙げることができる。cis−ジエン構造供与化合物としては、具体的には、フルフリルグリシジルエーテルや2−フラン酸塩化物などを使用することができる。原料フェノールノボラックのOH基に、これと反応可能な官能基(グリシジル基等)とcis-ジエン構造(フラン環等)を持った化合物(フルフリルグリシジルエーテル等)を付加/縮合し導入する反応例を如何に示す。
【0024】
【化5】
【0025】
原料フェノールノボラックが有するフェノール性水酸基とcis−ジエン構造供与化合物とは、ほぼ定量的に反応するので、フェノールノボラックに対するcis−ジエン構造を有する1価の有機基の導入量は、cis−ジエン構造供与化合物の使用量(仕込み量)をコントロールすることで容易に調整できる。例えば、一般式[1]中、R1がcis−ジエン構造を有する1価の有機基である構造単位の割合が全構造単位の20〜80%の範囲であるフェノールノボラック(1)や一般式[2]及び[3]中のR3、R4、R6及びR7がcis−ジエン構造を有する1価の有機基である割合をR3、R4、R6及びR7の合計の20〜80%の範囲とするフェノールノボラック(2)は、フェノールノボラックの水酸基1当量に対して、0.2〜0.6当量に当たる量の、cis−ジエン構造供与化合物を反応させることにより得られる。
【0026】
また、フェノールノボラック(1)及び(2)の平均重合度は、上記原料となるフェノールノボラックに所望の平均重合度を有する原料フェノールノボラックを使用することで容易に調整できる。
【0027】
尚、上記一般式[2]及び[3]中のR3、R4、R6及びR7が全て水素であるフェノールノボラック(原料フェノールノボラック)としては、分子中に2個のフェノール性水酸基を有するフェノール化合物をホルムアルデヒドと酸性触媒下で縮合して得られる構造を有する多官能フェノールを使用することができる。その場合、分子中に2個のフェノール性水酸基を有するフェノール化合物としては、ビスフェノールA、ビスフェノールFまたはビスフェノールS、あるいはこれらの誘導体等が挙げられる。
【0028】
光熱硬化性樹脂組成物
(イ)多官能エポキシ樹脂
本発明に用いられる(イ)成分の多官能エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノ−ルA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂(ビスフェノールA、ビスフェノールFのグリシジルエーテル、 (アルキル)ノボラック型エポキシ樹脂)に加えて、ビフェニール型、ナフタレン型、ジフェニルエーテル型、ジフェニルメタン型のグリシジルエーテル、ヘキサヒドロフタル酸などのジカルボン酸のグリシジルエステル、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、ジアミノジフェニルメタン型などのグリシジルアミン、シリコーン変性エポキシ樹脂、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレーなどの脂環式エポキシ樹脂などを挙げることができる。中でも、耐熱性、反応性、他成分との相溶性等の見地より、ビスフェノ−ルA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂などが好ましい。ただし、多官能エポキシ樹脂は、数平均分子量が1000以下であることが、アルカリ水溶液を用いた現像性が良好であることから好ましい。特に好ましい数平均分子量は200〜800である。
【0029】
本発明の樹脂組成物の特長を発現させるには、(イ)成分のエポキシ樹脂のエポキシ当量は120〜500であることが望ましい。エポキシ当量が120より小さいと、エポキシ樹脂の分子構造に占めるエポキシ環の割合が大きくなりすぎ、耐熱性などの樹脂の特性が低下してしまう傾向がある。また、エポキシ当量が500より大きいと、エポキシ樹脂中のエポキシ基の数が少なくなり、効果的な熱架橋構造を形成できず、やはり樹脂の特性が低下してしまう傾向がある。エポキシ樹脂のエポキシ当量はより好ましくは180〜400である。
【0030】
本発明の樹脂組成物に用いるフェノールノボラックは、上記本発明のフェノールノボラック(1)または(2)である。フェノールノボラック(1)及び(2)の混合物であってもよい。
本発明の目的、即ち、光反応によりアルカリ現像性を得るためには、(ロ)成分として、フェノールノボラック(1)の場合、R1がcis−ジエン構造を有する1価の有機基である構造単位の割合が全構造単位の20〜80%の範囲であり、残りのR1が水素であるフェノールノボラックが好ましい。より好ましくは、R1がcis−ジエン構造を有する1価の有機基である構造単位の割合は全構造単位の30〜70%の範囲であり、残りのR1は水素であるフェノールノボラックである。
【0031】
フェノールノボラック(2−1)の場合、R3及びR4がcis−ジエン構造を有する1価の有機基である割合は、R3及びR4の合計の20〜80%の範囲であり、残りのR3及びR4は水素であるフェノールノボラックが好ましい。より好ましくは、R3及びR4がcis−ジエン構造を有する1価の有機基である割合はR3及びR4の合計の30〜70%の範囲であり、残りのR3及びR4は水素であるフェノールノボラックである。
【0032】
フェノールノボラック(2−2)の場合、R6及びR7がcis−ジエン構造を有する1価の有機基である割合は、R6及びR7の合計の20〜80%の範囲であり、残りのR6及びR7は水素であるフェノールノボラックが好ましい。より好ましくは、R6及びR7がcis−ジエン構造を有する1価の有機基である割合はR6及びR7の合計の30〜70%の範囲であり、残りのR6及びR7は水素であるフェノールノボラックである。
【0033】
フェノールノボラック(2−3)の場合、R3、R4、R6及びR7がcis−ジエン構造を有する1価の有機基である割合は、R3、R4、R6及びR7の合計の20〜80%の範囲であり、残りのR3、R4、R6及びR7は水素であるフェノールノボラックが好ましい。より好ましくは、R3、R4、R6及びR7がcis−ジエン構造を有する1価の有機基である割合はR6及びR7の合計の30〜70%の範囲であり、残りのR3、R4、R6及びR7は水素であるフェノールノボラックである。
【0034】
(ハ)酸素増感剤
(ハ)成分の酸素増感剤に特に制限はないが、励起三重項エネルギーが22.5キロカロリー/モル以上のものが好ましい。このような酸素増感剤としては、例えば、メチレンブルー、ローズベンガル、ヘマトポルフィリン、テトラフェニルポルフィン、ルブレン、フラーレンC60、フラーレンC70、フラーレンC82などが例示される。これらの酸素増感剤は、1種を単独で用いることができ、あるいは、2種以上組み合わせて用いることもできる。これらの中で、フラーレンC60およびフラーレンC70を特に好適に用いることができる。
【0035】
本発明組成物において、成分(イ)と成分(ロ)との割合は、熱硬化反応による架橋構造の形成を十分に行い、硬化後の樹脂の良好な特性を発現させるという観点から、(イ)中のエポシキ基に対する(ロ)のフェノール性水酸基のモル比は0.5〜1.5の範囲とすることが適当である。
【0036】
酸素増感剤の配合量としては、成分(ロ)100重量部あたり0.01〜20重量%が好ましく、0.1〜10重量%であることがより好ましい。酸素増感剤の配合量が少なすぎると、増感効果が不十分となる恐れがある。酸素増感剤の配合量が多すぎると、経済的に不利であるのみならず、また均一な製膜が困難となるおそれがある。これまでにフラーレンを使用した感光材料組成物として、フラーレンをアジド化合物等の感光剤と組み合わせる方法が提案されている(特許番号第2814174号)。しかし、この特許においては、一般的なフラーレンの量はフラーレン以外の感光剤量の5倍以上が必要であるなど、本発明と発明内容が異なるものである。本発明においては、フラーレン等の高価な酸素増感剤の使用は比較的少量で、良好な光加工が可能であり、且つ加工後の樹脂も良好な耐熱性等の諸特性を発現することができる。
【0037】
その他、本発明の樹脂組成物には必要に応じて、保存安定性のために紫外線防止剤、熱重合防止剤、可塑剤などが添加できる。また、粘度調整のためにcis−ジエン構造やエポキシ環を有する低分子化合物を添加してもよい。そのほか、光加工後のエポキシ基の熱硬化による耐熱性向上を促進する目的で、アミン化合物などのエポキシ樹脂効果促進剤を使用しても良い。
【0038】
本樹脂組成物の各成分は基本的に溶剤に可溶であるが、特に、アルカリ水溶液に対する溶解性については、成分(ロ)中にフェノール性水酸基が存在する(一般式[1]のR1の一部、並びに一般式[2]及び[3]のR3、R4、R6及びR7は一部が水素である)ことによって、成分(ロ)を含む樹脂組成物全体にアルカリ水溶液に対する溶解性を発現させることができる。(ロ)成分であるフェノールノボラック中のcis−ジエン構造は、酸素増感剤の作用で発生する一重項酸素と容易に反応し、過酸基を有する中間体を形成する。この中間体は、直ちに、隣接する成分と反応し、互いに重縮合反応により架橋し、分子量を飛躍的に増大させる。これにより、この硬化剤、ひいてはこの硬化剤を含む樹脂組成物全体が不溶性となる。さらに、この重縮合反応による架橋で樹脂組成物の耐熱性が増大する。本発明の樹脂組成物は、従来の感光性樹脂とは異なり、光ラジカル重合によらず、cis−ジエン構造を一重項酸素により重縮合することによって架橋させるので、空気中の酸素によって反応が阻害されることがなくスムーズに進行し、得られる架橋樹脂の耐熱性が優れている。
【0039】
本発明の樹脂組成物は、上記の光加工後に比較的低温の後熱処理を行うことにより、(イ)成分のエポキシ樹脂が、(ロ)成分中のフェノール性水酸基と熱硬化反応し、最終的には熱安定性に優れた主骨格を形成する。さらに、従来の感光性樹脂で多用されるアクリロイル基やメタクリロイル基の光反応と違い、本樹脂組成部中の光反応基や増感剤自身も熱安定性を有する。従って、組成物全体で非常に耐熱性に優れる硬化物を得ることができる。
【0040】
本発明による樹脂組成物の使用方法の一般的な使用方法としては、基材・サブストレート上に塗膜を形成し、露光・現像によるパターン加工を行った後さらに熱硬化を行い樹脂層を形成する。塗膜の形成方法に特に制限はなく、例えば、感光性樹脂組成物を溶剤に溶解して得られるワニスを基材・サブストレート上に1〜60μm程度の厚さに直接塗布した後60〜100℃、5〜10分間程度の温和な条件で乾燥する方法、あるいは溶剤に溶解して得られるワニスを予めプラスティックシートやステンレス等の金属による離型基材に塗布し、温和な条件で乾燥して得られるコーティングを基材・サブストレート上に加圧ラミネートして転写する方法等をあげることができる。
【0041】
写真法によるパターンの形成は、樹脂層を残したい範囲への選択的な光照射により、樹脂組成物中のcis−ジエン構造の架橋を形成し、不溶化したのち、未露光部の樹脂を現像液中に溶解除去させることにより行うことができる。実際の露光は、形成した樹脂層の中で樹脂を除去したい部分に光が当たるのを遮ることができるマスクを介して光を樹脂層上に照射することにより行う。
【0042】
本発明において、露光に使用する光の波長は、使用する酸素増感剤に応じて適宜選択することができる。たとえばフラーレンC60を増感剤として使用した場合、紫外域〜可視光域の広範な波長(250nm〜780nm)の光を使用することができる。実際の露光は、形成した樹脂層の中で樹脂を除去したい部分に光が当たるのを遮ることができるマスクを介して上記波長の光を樹脂層上に照射することにより行う。露光後の現像は未硬化の上記樹脂組成物を溶解できる有機溶剤あるいはアルカリ水溶液により行われる。露光部の樹脂は前述の反応により不溶化するが未露光部は溶解し、その結果上記マスクにより樹脂に孔等のパターン加工を行うことができる。
【0043】
露光後の現像は未硬化の上記樹脂組成物を溶解できる有機溶剤あるいはアルカリ水溶液により行われるが、前述のように作業者の安全性や環境汚染への影響を考えた場合アルカリ水溶液による現像が望ましい。アルカリ水溶液としては水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液等を挙げることができる。
【0044】
本発明の樹脂組成物は、現像後に熱硬化反応を行ことによって、成分(イ)のエポキシ基と成分(ロ)のフェノール性水酸基を反応させることにより、安定な架橋構造を形成することができる。熱硬化反応は、通常は120℃から180℃の温度で30分以上加熱することにより行う。本発明の樹脂組成物は、このような比較的低温での熱硬化で、より高温の、具体的には300℃までの高い熱安定性を呈することができる。加熱は熱風、赤外線照射、熱盤上等で行うことができる。通常は空気下で行えるが、必要に応じ窒素、二酸化炭素等の不活性ガス雰囲気、あるいは減圧下で行うこともできる。本発明による樹脂組成物をこれらの加工工程で使用することにより、優れた耐熱性等を有するパターン形成された樹脂層が低温での加工で得られ、良好な特性の半導体素子、プリント回路配線板等を製造することが可能になる。
【0045】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいて説明する。
実施例1
フェノールノボラックとして、フェノライトTD−2090−60M(大日本インキ化学工業(株)製)不揮発分60%、MEK溶液700g(OH約4当量)を2lのフラスコ中に投入し、トリブチルアミン1gを添加し、110℃に加温した。
【0046】
【化6】
フェノライトTD−2090−60M
【0047】
その中へフルフリルグリシジルエーテル308g(2モル)を30分間で滴下した後、110℃で5時間攪拌反応させてフラン環含有フェノールノボラック溶液を得た。フラン環含有フェノールノボラックのフラン環導入率は49%であり、フラン環含有フェノールノボラックの平均重合度は10であった。このフラン環含有フェノールノボラックは本発明のフェノールノボラック(1)に相当する。尚、フラン環導入率は1H−NMRで、δ7.5(フランの3-位のH)とδ1.4(ノボラック中のイソプロピリデンのH)のピークの面積比が約1:6であることより確認した。
【0048】
上記フラン環含有フェノールノボラック溶液51g、エピコート828(油化シェルエポキシ(株)製、分子量は約380、エポキシ当量は約190)20gを混合し、酸素増感剤としてフラーレンC60(純度99.98%)の0.05% 1,1,2,2−テトラクロロエタン溶液14gと熱硬化促進剤としてジシアンジアミド 0.2gを添加して、光熱硬化型樹脂組成物溶液とした。
【0049】
【化7】
【0050】
この溶液をシリコンウエハー上にスピンコート法により塗布し、80℃で10分間の加熱乾燥を行うことで膜厚2μmの薄膜を形成した。この薄膜にフォトマスク(凸版印刷(株)製テストチャート)を介して500W超高圧水銀灯により照射量500mJ/cm2露光し、2.4%水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)水溶液に30秒間浸漬して現像処理を行うことで未露光部が完全に溶解除去し、線幅5μm以下の樹脂パターンを形成した。得られた樹脂パターンを、180℃で1時間加熱することにより樹脂層を形成した。この樹脂層について、室温〜300℃までの熱重量減少率をTGA装置[ティー・エイ・インスツルメント(株)製、TGA2950型、昇温速度10℃/分]で測定したところ、0.7%であった。
【0051】
実施例2
クレゾール1080g(10モル)、ホルマリン(37%)1220g(15モル)、シュウ酸10gを加圧反応容器に仕込み120℃(圧力2.5kg/cm2)で4時間反応し、反応終了後減圧下で脱水、樹脂温度が140℃になるまで加熱した。冷却後粉砕し、メチルエチルケトン溶媒にて樹脂分が60%に調製してアルキル(=メチル)フェノールノボラックとした。このアルキルフェノールノボラック800g(OH約4当量)を2lのフラスコ中に投入し、トリブチルアミン1gを添加し、110℃に加温した。その中へフルフリルグリシジルエーテル308g(2モル)を30分間で滴下した後、110℃で5時間攪拌反応させてフラン環含有アルキルフェノールノボラック溶液を得た。得られたフラン環含有アルキルフェノールノボラックのフラン環導入率は実施例1と同様に求めたところ45%であり、フラン環含有アルキルフェノールノボラックの平均重合度は3.2であった。このフラン環含有アルキルフェノールノボラックは本発明のフェノールノボラック(1)(R2=メチル)に相当する。
【0052】
このフラン環含有アルキルフェノールノボラック溶液50g、エピコート828 20gを混合し、酸素増感剤としてフラーレンC60(純度99.98%)の0.05% 1,1,2,2−テトラクロロエタン溶液14gと熱硬化促進剤としてジシアンジアミド 0.2gを添加して、光熱硬化型樹脂組成物溶液とした。この溶液を、実施例1と同様の方法で加工することによりシリコンウエハー上に樹脂薄膜を作製した。この際も現像時現像残りもなく未露光部のパターンが現像液に溶解除去された。また、この樹脂の300℃での熱重量減少率は0.8%であった。
【0053】
実施例3
フェノールノボラックとして、フェノライトLF−4871(大日本インキ化学工業(株)製、重合度は約15(GPCで、ポリスチレン換算で))不揮発分60%メチルエチルケトン溶液800g(OH約4当量)を2lのフラスコ中に投入し、フルフリルグリシジルエーテル308g(2モル)加え、110℃に加温した。その中へトリブチルアミン1gを添加した後、110℃で5時間攪拌反応させてフラン環含有フェノールノボラック溶液を得た。フラン環含有フェノールノボラックのフラン環導入率は実施例1と同様に求めたところ50%であり、フラン環含有フェノールノボラックの平均重合度は15であった。このフラン環含有フェノールノボラックは本発明のフェノールノボラック(2−3)に相当する。
【0054】
【化8】
フェノライトLF−4871
【0055】
このフラン環含有フェノールノボラック溶液51g、エピコート828 20gを混合、酸素増感剤としてフラーレンC60(純度99.98%)の0.05%1,1,2,2−テトラクロロエタン溶液14gと熱硬化促進剤としてジシアンジアミド 0.2gを添加して、光熱硬化型樹脂組成物溶液とした。この溶液を、実施例1と同様の方法で加工することによりシリコンウエハー上に樹脂薄膜を作製した。この際も現像時現像残りもなく未露光部のパターンが現像液に溶解除去された。また、この樹脂の300℃での熱重量減少率は0.9%であった。
【0056】
比較例
フェノールノボラックとして、フェノライトTD−2090−60M(大日本インキ化学工業(株)製)不揮発分60%、MEK溶液700g(OH約4当量)を2lのフラスコ中に投入し、トリブチルアミン1g、ハイドロキノン0.2gを添加し、110℃に加温した。その中へグリシジルメタクリレート284g(2モル)を30分間で滴下した後、110℃で5時間攪拌反応させてメタクリロイル基含有フェノールノボラック溶液を得た。このメタクリロイル基含有フェノールノボラック溶液50g、エピコート828 20gを混合し、光開始剤としてイルガキュア651 3gと熱硬化促進剤としてトリフェニルフォスフィン0.2gを添加して、光熱硬化型樹脂組成物溶液とした。この溶液を、実施例1と同様の方法で加工することによりシリコンウエハー上に樹脂薄膜を作製した。この際も現像時現像残りもなく未露光部のパターンが現像液に溶解除去された。しかし、この樹脂の300℃での熱重量減少率は2.9%と大きいものであった。
【0057】
【発明の効果】
以上の通り、本発明のフェノールノボラックは、樹脂組成物は、耐熱性ネガ型フォトレジストとして優れた性能を有する樹脂組成物の硬化剤を提供する。さらに本発明の、熱感光性樹脂組成物は、耐熱性ネガ型フォトレジストとして優れた性能を有する。本発明組成物中のフェノールノボラック型光熱硬化剤は、本来アルカリ水溶液などの溶媒に可溶であるが、フラーレンC60などの酸素増感剤から生じる一重項酸素によって側鎖のcis−ジエン基が酸化重縮合を起こして架橋し、溶媒に不溶となる。したがって、従来の耐熱性フォトレジスト組成物では達成できなかった、良好な写真法による加工性と加工後の耐熱性を兼ね備えた実用に供しうるネガ型のパターンが得られる。パターン作成後の低温での加工で、十分な耐熱性を有する、半導体パッケージ等への応用が可能なプリント配線板用保護膜を得ることができる。
Claims (11)
- R1がcis−ジエン構造を有する1価の有機基である構造単位の割合が全構造単位の20〜80%の範囲である請求項1に記載の組成物。
- cis−ジエン構造が、フラン、チオフェン又はピロール構造である請求項項1又は2に記載の組成物。
- R1がcis−ジエン構造を有する1価の有機基である構造単位がタンダムに存在する請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
- (イ)多官能エポキシ樹脂、
(ロ)一般式[2]及び[3]で表される構造単位のいずれか一方又は両方からなり、かつ一般式[2]で表される構造単位の少なくとも一部は、R3及びR4の一方又は両方がcis−ジエン構造を有する1価の有機基であり、一般式[3]で表される構造単位の少なくとも一部は、R6及びR7の一方又は両方がcis−ジエン構造を有する1価の有機基であり、かつ平均重合度が2〜25の範囲であるフェノールノボラック
(ハ)酸素増感剤を含有することを特徴とする光熱硬化性樹脂組成物。 - 一般式[2]及び[3]で表される構造単位の両方からなり、R3、R4、R6及びR7の合計の20〜80%がcis−ジエン構造を有する1価の有機基である請求項5に記載の組成物。
- R3、R4、R6及びR7のいずれかがcis−ジエン構造を有する1価の有機基である構造単位がタンデムに存在する請求項5又は6に記載の組成物。
- 一般式[2]で表される構造単位及び一般式[3]で表される構造単位がランダムに存在する請求項5〜7のいずれか一項に記載の組成物。
- R5及びR8は炭素数1〜4の置換基を有していても良いアルキリデン基である請求項5〜8のいずれか一項に記載の組成物。
- 多官能エポキシ樹脂が、ビスフェノ−ルA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、及びノボラック型エポキシ樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂である請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
- 酸素増感剤が、フラーレンである請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。
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