JP4752183B2 - インクセットおよびインクジェット記録方法 - Google Patents
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Description
本発明は、色再現性に優れたインクセットおよびインクジェット記録方法に関する。
インクジェット記録方法は、インク組成物の小滴を飛翔させ、紙等の記録媒体に付着させて印刷を行う印刷方法である。この方法は、比較的安価な装置で高解像度、高品位な画像を高速で印刷可能であるという特徴を有する。
最近では、複数の有彩色インク組成物を用意し、インクジェット記録によってカラー画像を形成することが行われている。一般に、カラー画像の形成は、イエローインク組成物、マゼンタインク組成物、およびシアンインク組成物の三色、さらにブラックインク組成物を加えた四色、さらには、前記四色に加えて、色濃度の低い(ライト)シアンインク組成物と色濃度の低い(ライト)マゼンタインク組成物とを加えた六色によってカラー画像形成を行うことが行われている。
シアン色,マゼンタ色,イエロー色の3種のインクドットを混在させて形成すると、明度の低い(暗い)カラー画像を印刷することができる。例えば、シアン色、マゼンタ色、イエロー色の各色インクドットをほぼ等量ずつ混在させて形成すると、減法混色によって視覚上ではブラックを呈する。このようにして表現されたブラックは、コンポジットブラックと呼ばれる。
したがって、本発明は、画像再現性、色再現性、および定着性に優れた画像の印刷を実現することができるインクセットおよびインクジェット記録方法の提供をその目的としている。
前記ブラックインク組成物が、分散剤無しに水に分散および/または溶解が可能な表面処理顔料と、二種以上の樹脂粒子と、主溶媒としての水とを少なくとも含んでなり、
前記二種以上の樹脂粒子の少なくとも一種は膜化温度0℃未満のものであり、少なくともその一種は膜化温度30℃以上のものであり、かつ
前記有彩色インク組成物が、顔料と、該顔料を包含し、かつ該顔料をインク組成物中に分散可能とするポリマーと、主溶媒としての水とを少なくとも含んでなり、ここで、前記ポリマーが、疎水性基と親水性基とを有し、実質的にインク組成物中において溶解していないものである。
前記ブラックインク組成物が、分散剤無しに水に分散および/または溶解が可能な表面処理顔料と、二種以上の樹脂粒子と、主溶媒としての水とを少なくとも含んでなり、
前記二種以上の樹脂粒子の少なくとも一種は膜化温度0℃未満のものであり、少なくともその一種は膜化温度30℃以上のものであり、かつ
前記有彩色インク組成物が、顔料と、該顔料を包含し、かつ該顔料をインク組成物中に分散可能とするポリマーと、主溶媒としての水とを少なくとも含んでなり、ここで、前記ポリマーが、
A)式(I):
で表されるモノマーA1、
式(II):
式(III):
で表されるA3から選ばれる、少なくとも一種のモノマーの5〜45重量%と、
B)塩生成基を有するモノマーの3〜40重量%と、
C)数平均分子量500〜500,000のマクロモノマーの5〜40重量%と、
D)前記モノマーA)、B)、およびC)と共重合可能なモノマーの0〜87重量%とを重合させてなるビニルポリマーである、インクセット。
前記インク組成物として、ブラックインク組成物と、互いに組み合わせることにより無彩色を印刷可能な少なくとも二種以上の有彩色インク組成物とを用い、
前記ブラックインク組成物が、分散剤無しに水に分散および/または溶解が可能な表面処理顔料と、二種以上の樹脂粒子と、主溶媒としての水とを少なくとも含んでなり、
前記二種以上の樹脂粒子の少なくとも一種は膜化温度0℃未満のものであり、少なくともその一種は膜化温度30℃以上のものであり、
前記有彩色インク組成物が、顔料と、該顔料を包含し、かつ該顔料をインク組成物中に分散可能とするポリマーと、主溶媒としての水とを少なくとも含んでなり、ここで、前記ポリマーが、疎水性基と親水性基とを有し、実質的にインク組成物中において溶解していないものであり、かつ、
前記有彩色インク組成物を組み合わせて印刷するインクドットが無彩色または明度の低い有彩色である場合に、前記有彩色インク組成物の組み合わせに代えて、前記ブラックインク組成物を吐出させることによりインクドットを印刷することを特徴とするものである。
前記インク組成物として、ブラックインク組成物と、互いに組み合わせることにより無彩色を印刷可能な少なくとも二種以上の有彩色インク組成物とを用い、
前記ブラックインク組成物が、分散剤無しに水に分散および/または溶解が可能な表面処理顔料と、二種以上の樹脂粒子と、主溶媒としての水とを少なくとも含んでなり、
前記二種以上の樹脂粒子の少なくとも一種は膜化温度0℃未満のものであり、少なくともその一種は膜化温度30℃以上のものであり、
前記有彩色インク組成物が、顔料と、該顔料を包含し、かつ該顔料をインク組成物中に分散可能とするポリマーと、主溶媒としての水とを少なくとも含んでなり、ここで、前記ポリマーが、ブラックインク組成物と、少なくとも一種以上の有彩色インク組成物とを含んでなるインクセットであって、
前記ブラックインク組成物が、分散剤無しに水に分散および/または溶解が可能な表面処理顔料と、二種以上の樹脂粒子と、主溶媒としての水とを少なくとも含んでなり、
前記二種以上の樹脂粒子の少なくとも一種は膜化温度0℃未満のものであり、少なくともその一種は膜化温度30℃以上のものであり、かつ
前記有彩色インク組成物が、顔料と、該顔料を包含し、かつ該顔料をインク組成物中に分散可能とするポリマーと、主溶媒としての水とを少なくとも含んでなり、ここで、前記ポリマーが、
A)式(I):
で表されるモノマーA1、
式(II):
式(III):
(式中、R1、R2およびnは、式(I)で定義したものと同じ意味を表す。)
で表されるA3から選ばれる、少なくとも一種のモノマーの5〜45重量%と、
B)塩生成基を有するモノマーの3〜40重量%と、
C)数平均分子量500〜500,000のマクロモノマーの5〜40重量%と、
D)前記モノマーA)、B)、およびC)と共重合可能なモノマーの0〜87重量%とを重合させてなるビニルポリマーであり、かつ、
前記有彩色インク組成物を組み合わせて印刷するインクドットが無彩色または明度の低い有彩色である場合に、前記有彩色インク組成物の組み合わせに代えて、前記ブラックインク組成物を吐出させることによりインクドットを印刷することを特徴とする。
本発明によるインクセットは、ブラックインク組成物と、少なくとも一種以上の有彩色インク組成物とを含んでなるものである。
ここで、「有彩色インク組成物」とは、カラー、即ち、彩度を有する色(有彩色)を示すインク組成物を意味し、所謂有彩色印刷を行うことができるもの意味する。これは、彩度を有さない無彩色のみを印刷するブラックインク組成物との対比において使用されるものである。「有彩色」としては、例えば、シアン、マゼンタおよびイエロー等の色が挙げられる。
(1)表面処理顔料
ブラックインク組成物に含まれる表面処理顔料とは、顔料表面に多数の親水性官能基および/またはその塩を、直接またはアルキル基、アルキルエーテル基、アリール基等を介して間接的に結合させたもので、分散剤なしに水性媒体中に分散および/または溶解が可能とされたものでいう。このことから、本発明による表面処理顔料は自己分散型顔料とも呼ばれることがある。本発明において、顔料が分散剤なしに水中に安定に存在している状態を「分散および/または溶解」と表現する。物質が溶解しているか、分散しているのかを明確に区別することが困難な場合も少なくない。本発明にあっては、分散剤なしに水中に安定に存在しうる顔料である限り、その状態が分散か、溶解かを問わず、そのような顔料を利用可能である。よって、本明細書において、分散剤なしに水中に安定に存在しうる顔料を水溶性顔料ということがあるが、顔料が分散状態にあるものまでも排除することを意味するものではない。
本発明によるブラックインク組成物は、二種以上の樹脂粒子を含んでなり、この二種以上の樹脂粒子の少なくとも一種は膜化温度0℃未満のものであり、少なくともその一種は膜化温度30℃以上のものである。
膜化温度は、樹脂粒子を水に溶解または分散させて得られた水溶液または水性分散液をアルミニウム等の金属板の上に薄く塗布して、規定温度乾燥させた状態を観察して判断する。膜化するものは、透明な連続フィルムの形成され、膜化しないものは白濁状となる。
樹脂粒子の添加量または平均粒径が上記の範囲にあることにより、ブラックインク組成物の安定性および信頼性を向上させることが可能となる。
水
本発明によるブラックインク組成物は水を主溶媒として含んでなる。水はイオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水または超純水を用いることが好ましい。特に、紫外線照射または過酸化水素添加等により滅菌処理した水の利用が、カビまたはバクテリアの発生を防止しインク組成物の長期保存を可能にするので好ましい。
本発明によるブラックインク組成物は、水溶性有機溶媒を含んでなることが好ましい。水溶性有機溶媒は、主として、ブラックインク組成物の浸透剤、保湿剤、粘性調整剤等として機能するものである。水溶性有機溶媒の具体例としては、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレンフリコール、ジプロピレングリコール、2−ブテンー1,4−ジオール、2−エチルー1,3−ヘキサンジオール、2−メチルー2,4−ペンタンジオール、1,2−オクタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ペンタンジオール、4−メチル−1,2−ペンタンジオール等の多価アルコール類、グルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、アルドン酸、グルシトール、(ソルビット)、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、トレハロース、マルトトリオース等の糖類、糖アルコール類、ヒアルロン酸類、尿素類等のいわゆる固体湿潤剤、エタノール、メタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロパノールなどの炭素数1〜4のアルキルアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、1−メチル−1−メトキシブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテルなどのグリコールエーテル類、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチルー2−イミダゾリジノン、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルスルホキシド、ソルビット、ソルビタン、アセチン、ジアセチン、トリアセチン、スルホラン等が挙げられ、これらの一種または二種以上を利用することができる。
本発明によるブラックインク組成物は、界面活性剤を含んでなることが好ましい。界面活性剤の例としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤およびノニオン性界面活性剤が挙げられ、発泡または起泡の発生が少ないインク組成物を得るという理由から、ノニオン性界面活性剤が好ましい。ノニオン性界面活性剤の具体例としては、アセチレングリコール系界面活性剤、アセチレンアルコール系界面活性剤、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルなどのエーテル系、ポリオキシエチレンオレイン酸、ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンステアレート等のエステル系、ジメチルポリシロキサン等のシリコン系界面活性剤、その他フッ素アルキルエステル、パーフルオロアルキルカルボン酸塩等の含フッ素系界面活性剤等が挙げられ、特に、アセチレングリコール系界面活性剤およびアセチレンアルコール系界面活性剤が好ましい。これらの界面活性剤はインク組成物に添加された場合、発泡性が少なく、また優れた消泡性機能を有するので好ましいで。アセチレングリコール系界面活性剤およびアセチレンアルコール系界面活性剤の具体例としては、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3オールなどが挙げられるが、市販品で入手も可能で、例えば、エアープロダクツ社のサーフィノール104、82、465、485、TGや日信化学社製のオルフィンSTG、オルフィンE1010等が挙げられる。
本発明によるブラックインク組成物は、pH調整剤をさらに含んでなることが好ましい。pH調整剤の具体例としては、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属の水酸化物、アンモニア、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン等のアミン類等が挙げられ、好ましくはアルカリ金属の水酸化物、アンモニア、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、およびこれらの混合物からなる群から選択されるものが挙げられる。pH調整剤を添加することにより、インク組成物のpHが6〜10に調整されることが好ましい。インク組成物のpHがこの範囲に調整されることにより、インクジェットプリンタを構成する材料等に悪影響を及ぼさず、またインク組成物の記録ヘッドの目詰まりを有効に防止することができる。よって、pH調整剤の添加量は、インク組成物のpHが6〜10に調整される程度の量が好ましい。
本発明によるブラックインク組成物は、必要に応じて、pH緩衝剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、防腐または防カビ剤、キレート化剤等が添加されてよい。
pH緩衝剤の具体例としては、コリジン、イミダゾール、燐酸、3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、ほう酸等が挙げられる。
本発明における有彩色インク組成物は、顔料と、該顔料を包含し、かつ該顔料をインク組成物中に分散可能とするポリマーと、主溶媒としての水とを少なくとも含んでなるものである。
本発明の有彩色インク組成物に含有される顔料としては、従来からインクジェット用のインク組成物に使用されている有機顔料を用いることができる。
このようなシアン顔料としては、C.I.ピグメントブルー15:3、15:4および60等が好ましく用いられ、特に、C.I.ピグメントブルー15:3が好ましい。
このようなマゼンタ顔料としては、C.I.ピグメントレッド122、202、209およびC.I.ピグメントバイオレット19等が好ましく用いられ、特に、C.I.ピグメントレッド122が好ましい。
このようなイエロー顔料としては、C.I.ピグメントイエロー74、93、109、110、128、138、150、151、154、155、180、185等が挙げられる。
(a)第一の態様によるインクに用いられるポリマー
本発明の第一の態様によるインクにおいて用いられるポリマーは、疎水性基と親水性基とを有し、顔料を包含しながらそれを水中に分散可能とし、かつ実質的にインク組成物中において溶解していないものである。
本発明においてポリマーは、30〜125 KOH mg/gの酸価を有するものであることが好ましく、より好ましい下限は50 KOH mg/gであり、より好ましい上限は100 KOH mg/gである。
本発明においてポリマーは、数平均分子量として1,000〜200,000を有するものであることが好ましく、より好ましい下限は3,000であり、より好ましい上限は150,000である。
さらに本発明においてポリマーは、解離性の親水性基(例えば、カルボキシル基)の塩生成率、すなわち中和率が100%未満に、後述の顔料包含工程またはインク組成物の配合工程に調整される。本発明の好ましい態様によれば、中和率の下限は60%が好ましく、その上限は95%であることが好ましい。
また、本発明の好ましい態様によれば、ポリマーは、ポリアクリル酸エステル、スチレン−アクリル酸共重合体、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、含珪素ポリマー、含硫黄ポリマーからなる群から選ばれた一種以上を主成分とするものからなることができる。
本発明の第二の態様によるインクにおいて用いられるポリマーは、下記A)〜D)のモノマーを重合させてなるものである。
モノマーA)は、下記の式(I)で表されるモノマーA1、下記式(II)で表されるモノマーA2、および式(III)で表されるA3から選ばれる少なくとも一種のモノマーを意味する。
A)式(I):
で表されるモノマーA1、
式(II):
式(III):
商業的に入手うるモノマーAの具体例としては、新中村科学(株)製のNKエステル M-20G、40G、90G、230G、日本油脂(株)のブレンマーPEシリーズ、PME-100、200、400、1000等が挙げられる。
ビニルポリマーにおける(メタ)アクリル酸エステルモノマーAの含量は、印字濃度及びインク粘度の観点から、5〜45重量%、好ましくは5〜35重量%である。
モノマーBは、塩生成基を含んでなるモノマーである。
この塩生成基含有モノマーとしては、アニオン性モノマーまたはカチオン性モノマーの利用が好ましい。アニオン性モノマーおよびカチオン性モノマーは、それぞれ単独でまたは二種以上を混合して用いることができる。
不飽和カルボン酸モノマーの具体例としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、2−メタクリロイルオキシメチルコハク等が挙げられる。これらは、それぞれ単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
モノマーC)は、数平均分子量1,000〜10,000のポリスチレン系マクロモノマーである。
マクロモノマーの好ましい例としては、片末端に重合性官能基を有し、好ましくは数平均分子量が500〜500,000、より好ましくは1,000〜10,000であるマクロマーが挙げられる。
商業的に入手しうるスチレン系マクロマーとしては、例えば、東亜合成(株)製のAS-6、AN-6、AN-6S、HS-6S、HS-6等が挙げられる。
モノマーD)は上記モノマーA)、B)、およびC)と共重合可能なものであり、その具体例としては、例えば(メタ)アクリル酸エステル、芳香環含有モノマー、マクロマーが挙げられる。これらは、それぞれ単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。このモノマーD)には、耐水性及び耐擦過性の観点から、芳香環含有モノマー及びマクロマーからなる群より選ばれた1種以上が含有されていることが好ましい。
なお、前記「(イソまたはターシャリー)及び「(イソ)」は、これらの基が存在している場合とそうでない場合の双方を意味し、これらの基が存在していない場合には、ノルマルを示す。
以上のモノマーA)、B)、C)、およびD)を重合させてなるビニルモノマーにおけるこれらのモノマーの存在量は、モノマーA)が5〜45重量%(好ましくは10〜35重量%)、モノマーB)が3〜40重量%(好ましくは5〜35重量%)、モノマーC)が5〜40重量%(好ましくは10〜35重量%)、モノマーD)が0〜87重量%(好ましくは0〜75重量%)である。
ビニルポリマーの重量平均分子量は、印字濃度と吐出安定性の観点から、好ましくは3,000〜300,000、より好ましくは5,000〜200,000である。
本発明において用いられる顔料を包含したポリマー粒子分散液は、具体的には、特開2001−247810号公報に記載の方法によって調製することができる。例えば、以下の工程により好ましく調製することができる。すなわち、
(1)水溶性有機溶媒に溶解したポリマー溶液と、顔料と、必要により中和剤とを混合して、溶剤分散液を調製する工程
(2)この分散液を水相に展開して水性の懸濁液を調製する転送乳化工程
(3)溶剤分散液調整時に添加してある水溶性有機溶媒を蒸留して除き、顔料をポリマー粒子で包含する工程からなる。
本発明において有彩色インク組成物は、主溶媒として水を含んでなる。水は、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、または超純水を用いることができる。また、紫外線照射、または過酸化水素添加などにより滅菌した水を用いることにより、インク組成物を長期保存する場合にカビまたはバクテリアの発生を防止することができるので好適である。
有彩色インク組成物は、水溶性有機溶媒をさらに含んでなることが好ましい。水溶性有機溶媒は、主として、ブラックインク組成物の浸透剤、保湿剤、粘性調整剤等として機能するものである。
このようなグリコールモノ−n−ブチルエーテルとしては、例えば、エチレングルコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、またはジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテルから選ばれるものが好ましいものとして挙げられる。これらは二種以上を併用しても良い。
本発明による有彩色インク組成物は、界面活性剤をさらに含んでなるものが好ましい。界面活性剤の具体例および好ましい界面活性剤の具体例等は先にブラックインク組成物において説明したものと同様であってよい。本発明の好ましい態様によれば、本発明による有彩色インク組成物は、界面活性剤(特にノニオン性界面活性剤)と、前記した水溶性有機溶媒とに組合せを添加したものが好ましい。
本発明において、有彩色インク組成物は1,2−アルカンジオールをさらに含んでなることが好ましい。
このような1,2−アルカンジオールとしては、その炭素数が4〜10の1,2−アルカンジオールからなる群より選択されるものが好ましい。この場合、1,2−アルカンジオールは混合して添加してもよい。
本発明の好ましい態様によれば、有彩色インク組成物は、インクジェット記録ヘッドのノズルの目詰まりを防止するためにポリオール類を含んでなることが好ましい。このようなポリオール類としては、水溶性のあるポリオール類が好ましく、その例としてはエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、1、3−プロピレングリコール、イソプロピレングリコール、イソブチレングリコール、1、4−ブタンジオール、1、3−ブタンジオール、1、5−ペンタンジオール、1、6−ヘキサンジオール、グリセリン、メソエリスリトール、ペンタエリスリトール、チオジグリコール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
また、これらの成分は、他のインク添加剤と合わせてインク粘度が25℃で25cPs以下になる添加量で加えることが好ましい。
本発明によるインク組成物は、上記した成分を、分散/混合機(例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、バスケットミル、ロールミル等)に供給し、分散させることにより調製されてよい。本発明の好ましい態様によれば、上記した分散/混合機により得られたインク原液をメンブランフィルターやメッシュフィルター等のフィルターを用いて濾過し、粗大粒子を除去することが好ましい。
本発明によるインクセットは、インク組成物を用いた記録方式に用いられる。インク組成物を用いた記録方式とは、例えば、インクジェット記録方式、ペン等による筆記具による記録方式、その他各種の印刷方式が挙げられる。本発明によるインクセットは、インク組成物を記録媒体に付着させて印刷を行う記録方法に用いられ、好ましくはインクジェット記録方法に用いられる。
本発明の別の態様によれば、インク組成物の液滴を吐出し該液滴を記録媒体に付着させて印刷を行うインクジェット記録方法であって、インク組成物として、ブラックインク組成物と、互いに組み合わせることにより無彩色を印刷可能な少なくとも二種以上の有彩色インク組成物とを用いる。本発明の好ましい態様によれば、このようなインクセットとして、上記した本発明によるインクセットを用いる。そしてさらに、有彩色インク組成物を組み合わせて印刷するインクドットが無彩色または明度の低い有彩色である場合に、有彩色インク組成物の組み合わせに代えて、ブラックインク組成物を吐出させることによりインクドットを印刷する。このようなインクジェット記録方法により、普通紙に印刷した場合に生ずることがある所謂白ポチの発生またはカラーブリードの発生を防止することが出来る。また、画像再現性、および色再現性に優れた画像の印刷が可能となる。
ブラックインク組成物
表面処理顔料分散液の調製
顔料分散液1
市販のカーボンブラックであるカラーブラックS170(商品名:デグサ・ヒュルス社製)100gを水1kgに混合して、ジルコニアビーズによるボールミルにて粉砕した。この粉砕原液に次亜塩素酸ナトリウム(有効塩素濃度 12%)1400gを滴下して、ボールミルで粉砕しながら5時間反応させ、さらに攪拌しながら4時間煮沸して湿式酸化を行った。得られた分散原液をガラス繊維ろ紙GA−100(商品名:アドバンテック東洋社製)で濾過して、さらに水で洗浄した。得られたウェットケーキを水5kgに再分散して、逆浸透膜により電導度が2mS/cmになるまで脱塩および精製し、さらに顔料濃度が15重量%になるまで濃縮して分散液1を調製した。
この分散液の顔料の平均粒径をMicrotrac UPA150(Microtrac社製)の粒度分布測定により測定したところ、110nmであった。
市販のカーボンブラックであるMA8(商品名:三菱化学社製)100gを水500gに混合して、ジルコニアビーズによるボールミルにて粉砕した。この粉砕原液に次亜塩素酸ナトリウム(有効塩素濃度 12%)500gを滴下して、攪拌しながら10時間煮沸して湿式酸化を行った。得られた分散原液をガラス繊維濾紙GA−100(商品名:アドバンテック東洋社製)で濾過して、さらに水で洗浄した。得られたウェットケーキを水5kgに再分散して、逆浸透膜により電導度が2mS/cmになるまで脱塩および精製し、さらに顔料濃度が15重量%になるまで濃縮して分散液2を調製した。
この分散液の顔料の平均粒径をMicrotrac UPA150(Microtrac社製)の粒度分布測定により測定したところ、150nmであった。
市販のカーボンブラックであるMA8(商品名:三菱化学社製)100g、水溶性樹脂分散剤であるジョンクリルJ62(商品名:ジョンソンポリマー社製)150g、水酸化ナトリウム6g、水250gを混合して、ジルコニアビーズによるボールミルにて10時間分散した。得られた分散原液をガラス繊維濾紙GA−100(商品名:アドバンテック東洋社製)で濾過して、さらに水で洗浄した。
得られたウェットケーキを水5kgに再分散して、逆浸透膜により電導度が2mS/cmになるまで脱塩および精製し、さらに顔料濃度が15重量%になるまで濃縮して分散液4を調製した。
この分散液の顔料の平均粒径をMicrotrac UPA150(Microtrac社製)の粒度分布測定により測定したところ、130nmであった。
樹脂粒子を分散粒子とするエマルジョンを下記の方法によって調製した。
撹拌機、還流コンデンサー、滴下装置、及び温度計を備えた反応容器に、イオン交換水900g及びラウリル硫酸ナトリウム3gを仕込み、撹拌下に窒素置換しながら70℃まで昇温した。内温を70℃に保ち、重合開始剤として過硫酸カリウム4gを添加し、溶解後、予めイオン交換水450g、ラウリル硫酸ナトリウム3gにアクリルアミド20gにスチレン300g、ブチルアクリレート640g、及びメタクリル酸30gを撹拌化に加えて作製した乳化物を、反応溶液内に連続的に4時間かけて滴下した。滴下終了後、3時間の熟成を行った。得られた水性エマルジョンを常温まで冷却した後、イオン交換水と5%水酸化ナトリウム水溶液を添加して固形分40重量%、pH8に調整し、エマルジョン1を得た。
得られたエマルジョン1は約20℃の室内周囲温度で膜化すること確認し、熱分析装置SSC5000(セイコー電子(株)製)を用いた示差熱分析によりガラス転移温度を測定したところ、−15℃であった。また、このエマルジョン1の平均粒径をMicrotrac UPA150(Microtrac社製)の粒度分布測定により測定したところ、110nmであった。
撹拌機、還流コンデンサー、滴下装置、及び温度計を備えた反応容器に、イオン交換水900g及びラウリル硫酸ナトリウム1gを仕込み、撹拌下に窒素置換しながら70℃まで昇温した。内温を70℃に保ち、重合開始剤として過硫酸カリウム4gを添加し、溶解後、予めイオン交換水450g、ラウリル硫酸ナトリウム3gにアクリルアミド20gにスチレン365g、ブチルアクリレート545g、及びメタクリル酸30gを撹拌化に加えて作製した乳化物を、反応溶液内に連続的に4時間かけて滴下した。滴下終了後、3時間の熟成を行った。得られた水性エマルジョンを常温まで冷却した後、イオン交換水と水酸化ナトリウム水溶液を添加して固形分40重量%、pH8に調整し、エマルジョン2を得た。
得られたエマルジョン2は約20℃の室内周囲温度で膜化すること確認し、熱分析装置SSC5000(セイコー電子(株)製)を用いた示差熱分析によりガラス転移温度を測定したところ、−6℃であった。このエマルジョン2の平均粒径をMicrotrac UPA150(Microtrac社製)の粒度分布測定により測定したところ、200nmであった。
撹拌機、還流コンデンサー、滴下装置、及び温度計を備えた反応容器に、イオン交換水900g及びラウリル硫酸ナトリウム1gを仕込み、撹拌下に窒素置換しながら70℃まで昇温した。内温を70℃に保ち、重合開始剤として過硫酸カリウム4gを添加し、溶解後、予めイオン交換水450g、ラウリル硫酸ナトリウム3gにアクリルアミド20gにスチレン615g、ブチルアクリレート295g、及びメタクリル酸30gを撹拌化に加えて作製した乳化物を、反応溶液内に連続的に4時間かけて滴下した。滴下終了後、3時間の熟成を行った。得られた水性エマルジョンを常温まで冷却した後、イオン交換水と水酸化ナトリウム水溶液とを添加して固形分40重量%、pH8に調整し、エマルジョン3を得た。
得られたエマルジョン3は約20℃の室内周囲温度で膜化しないこと確認し、熱分析装置SSC5000(セイコー電子(株)製)を用いた示差熱分析によりガラス転移温度を測定したところ、36℃であった。またこのエマルジョン3の平均粒径をMicrotrac UPA150(Microtrac社製)の粒度分布測定により測定したところ、110nmであった。
撹拌機、還流コンデンサー、滴下装置、及び温度計を備えた反応容器に、イオン交換水900g及びラウリル硫酸ナトリウム3gを仕込み、撹拌下に窒素置換しながら70℃まで昇温した。内温を70℃に保ち、重合開始剤として過硫酸カリウム4gを添加し、溶解後、予めイオン交換水450g、ラウリル硫酸ナトリウム3gにアクリルアミド20gにメチルメタクリレート675g、ブチルアクリレート235g、及びメタクリル酸30gを撹拌化に加えて作製した乳化物を、反応溶液内に連続的に4時間かけて滴下した。滴下終了後、3時間の熟成を行った。得られた水性エマルジョンを常温まで冷却した後、イオン交換水と水酸化ナトリウム水溶液とを添加して固形分40重量%、pH8に調整し、エマルジョン4を得た。
得られたエマルジョン4は約20℃の室内周囲温度で膜化しないこと確認し、熱分析装置SSC5000(セイコー電子(株)製)を用いた示差熱分析によりガラス転移温度を測定したところ、50℃であった。このエマルジョン4の平均粒径をMicrotrac UPA150(Microtrac社製)の粒度分布測定により測定したところ、180nmであった。
表1に示す各組成物を混合し、室温にて2時間攪拌した後、孔径約5μmのステンレス製フィルターにて濾過して、実施例1、2および比較例3の各水性ブラックインク組成物を調製した。表1中に示す各組成の添加量は全て重量%であり、顔料分散液および樹脂分散液の添加量はそれぞれ固形分濃度で示す。
ポリマー(I)の調製
攪拌機、温度計、還流管、および滴下ロートを備えた反応容器を窒素置換した後、スチレン30部、α−メチルスチレン10部、ブチルメタクリレート15部、ラウリルメタクリレート10部、アクリル酸2部、t―ドデシルメルカプタン0.3部を入れて70℃に加熱した。これに、別に用意したスチレン150部、アクリル酸15部、ブチルメタクリレート50部、t−ドデシルメルカプタン1部、メチルエチルケトン20部、およびアゾビスイソブチロニトリル3部を滴下ロートに入れて4時間かけて反応容器に滴下して、分散ポリマーを重合反応させた。さらに、反応容器にメチルエチルケトンを添加して、50重量%濃度のポリマー溶液を作成した。
得られたポリマー溶液からポリマーを抽出して、中和手滴定法による酸価とGPC法による平均分子量を測定した。その結果、酸価は55 KOHmg/g、平均分子量は35,000であった。
イエロー分散液I
イエロー顔料を含有するポリマー粒子分散液を以下の通りに製造した。すなわち、上記で製造したポリマー(I)溶液50部、C.I.ピグメントイエロー74 75部、0.05wt%の水酸化ナトリウム水溶液27.5部、メチルエチルケトン60部を混合し、ホモジナイザーで30分攪拌した。その後、イオン交換水を300部添加して、更に1時間攪拌した。ロータリーエバポレーターを用いてメチルエチルケトンの全量と水の一部を留去した後、0.3μmのメンブレンフィルターで濾過して固形分が20重量%のイエロー分散体1を得た。
マゼンタ顔料を含有するポリマー粒子分散液を、顔料としてC.I.ピグメントレッド122 80部とポリマー(I)溶液40部とを用いた以外は、イエロー分散体と同様にして得た。
シアン顔料を含有するポリマー粒子分散液を、顔料としてC.I.ピグメントブルー15:4 50部とポリマー(I)溶液100部とを用いた以外は、イエロー分散体と同様にして得た。
下記第2表に示した組成に従って、上記したイエロー分散液I、マゼンタ分散液I、またはシアン分散液Iと、溶剤類および超純水とを混合して、2時間攪拌した。続いて、孔径約1.2μmのメンブランフィルタ(商品名)(日本ミリポア・リミテッド製)を用いて濾過して、カラーインクを調製した。表2中、各組成物の添加量は重量%である。
上で得たブラック、イエロー、マゼンタ、およびシアンインクを、以下の表の通り組み合わせて、インクセットとした。
なお、インクセット1および2は、ブラックインクとして表面処理型のブラック顔料インク組成物を用いたものであり、インクセット3は、ブラックとして、高分子分散剤型のブラック顔料インク組成物を用いたものである。
前記各インクセットについて、プリンタEM−930C(セイコーエプソン社製)を用いて、解像度720dpiで、印字画像として255階調のフルカラーチャートを印刷した。この際、R240、G180、B200からブラックインクへの交換を行なうYMCドットデータを作成して、これに従い印刷を行い、記録紙としてはXerox4024(ゼロックス社製)を用いた。
得られた各印字物の印字品質を評価した。印字品質の評価は、各印字物を、白ポチ、カラーブリード、および色再現性についてそれぞれ試験を行い、下記のようにして判定した。
前記の印字物を目視および顕微鏡によって観察し下記基準にしたがって評価した。顕微鏡観察には、顕微鏡BHZ−UMA(OLYMPUS社製)を用い、倍率50倍で観察を行った。
なお、ここで白ポチとは、目視観察または顕微鏡観察により、印字物中に、印刷されずに点状に残った空白部分をいうこととする。
評価A:顕微鏡観察によっても、印字物について白ポチが観察されない
評価B:目視観察によっては白ポチが観察されないが、顕微鏡観察によれば白ポチが観察される
評価C:目視観察によっても白ポチが観察される
前記の印字物におけるカラーブリードの有無を、目視および顕微鏡によって観察し下記基準にしたがって評価した。顕微鏡観察には、顕微鏡BHZ−UMA(OLYMPUS社製)を用い、倍率50倍で観察を行った。
評価A:顕微鏡観察によっても、印字物についてカラーブリードが観察されない
評価B:目視観察によってはカラーブリードが観察されないが、顕微鏡観察によればカラーブリードが観察される
評価C:目視観察によってもカラーブリードが観察される
前記の印字物における耐擦過性を、以下の条件で評価した。
印字後48時間経過した時点で、サウザーランドラブテスターを用い、JIS K 5701に準じて耐擦過性評価を行った。評価基準は、以下の通りである。
評価A:色剤の剥離が全くない
評価B:色剤の剥離がわずかにある(色剤全体の20%未満)
評価C:色剤の剥離がある(色剤全体の20%以上80%未満)
評価D:色剤がほとんど剥離する(色剤全体の80%以上剥離する)
色再現性については色再現範囲を以下の通りにして求めることにより評価した。
先ず、カラー384パッチ、グレー17パッチからなるカラーチャートを各インクセットについて印字し、Gretag Macbeth社製Type Spectrolinoを用いて、上記印刷物のL*、a*、b*、を測色した。色再現範囲は、色空間をL*値で10分割し、各L*値のa*b*空間の領域(a*とb*の値)を求めた後、全L*値のa*b*空間領域を計算し、L*a*b*色空間体積(ガマット値)を算出することにより求めた。得られた結果を以下の基準で評価した。
評価A:色再現範囲の大きさが300000以上である。
評価B:色再現範囲の大きさが200000以上250000未満である。
評価C:色再現範囲の大きさが200000未満である
以下の組成のモノマーを用意した。
ポリプロピレングリコールモノメタクリレート(n=9) 15重量%
(式(I)において、R’がメチルおよびR2が水素である化合物。商品名:Blemmer PP-500、NOF社製)
ポリエチレングリコールモノメタクリレート(n=23) 10重量%
(式(IV)において、m=23、R’およびR2がメチルである化合物。商品名:NK ESTER M230G、新中村化学社製)
メタクリル酸 14重量%
スチレンモノマー 36重量%
スチレンマクロマー 15重量%
(スチレン−アクロニトリル共重合マクロマー、スチレン含量:75重量%、数平均分子量:6,000、重合性官能基:メタクリロイル基、商品名:AN-6、TOAGOSEI社製)
n−ブチルメタクリレート 10重量%
重合連鎖移動剤(2−メルカプタンエタノール)0.27重量%、メチルエチルケトン60重量%、および2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を次いで滴下装置に加え、混合した。その後、滴下装置を窒素ガス置換した。
反応容器内の混合物の温度を、窒素雰囲気下、撹拌しながら65℃まで上げ、滴下装置内の混合物を反応容器に3時間かけて滴下した。65℃下での滴下終了後2時間経過した後に、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.3重量%をメチルエチルケトン5重量%に溶解した溶液を加えた。混合物を65℃で2時間、さらに70℃で2時間熟成させ、ポリマー溶液を得た。
上記のようにして得たポリマー溶液の一部を、減圧留去して溶媒を除いて乾燥させて単離した。
重量平均分子量を、ポリスチレンを標準物質とし、濃度1mm1/lのドデシルジメチルアミンを含むクロロホルムを溶媒としたゲルパーシエーションクロマトグラフィーにより決定した。その結果、重量平均分子量は、70,000であった。
イエロー分散液II
イエロー顔料を含有するポリマー粒子分散液を以下の通りに製造した。すなわち、上記で製造したポリマー(II)をメチルエチルケトンに溶解して50%溶液とし、この溶液50部、C.I.ピグメントイエロー74 75部、0.05%の水酸化カリウム 300部、メチルエチルケトン60部を混合し、ホモジナイザーで30分撹拌した。その後、イオン交換水300部添加して、さらに2時間撹拌した。ロータリーエバポレーターを用いてメチルエチルケトンの全量と水の一部を留去した後、0.3μmのメンブレンフィルターでろ過して、固形分が20重量%のイエロー分散体IIを得た。
マゼンタ顔料を含有するポリマー粒子分散液を、顔料としてC.I.ピグメントバイオレット19 80部とポリマー(II)のメチルエチルケントン50%溶液を40部とする以外は、イエロー分散液と同様にして、マゼンタ分散液IIを得た。
シアン顔料を含有するポリマー粒子分散液を、顔料としてC.I.ピグメントブルー15:4 50部とポリマー(II)のメチルエチルケントン50%溶液を100部とする以外は、イエロー分散液と同様にして、シアン分散液IIを得た。
下記第5表に示した組成に従って、上記したイエロー分散液II、マゼンタ分散液II、またはシアン分散液IIと、溶剤類および超純水とを混合して、2時間攪拌した。続いて、孔経約1.2μmのメンブランフィルタ(商品名)(日本ミリポア・リミテッド製)を用いて濾過して、カラーインクを調製した。表5中、各組成物の添加量は重量%である。
上で得たブラック、イエロー、マゼンタおよびシアンインクを、以下の表の通り組み合わせて、インクセットとした。
なお、インクセット1および2は、ブラックインクとして表面処理型のブラック顔料インク組成物を用いたものであり、インクセット3は、ブラックとして、高分子分散剤型のブラック顔料インク組成物を用いたものである。
Claims (22)
- ブラックインク組成物と、少なくとも一種以上の有彩色インク組成物とを含んでなるインクセットであって、
前記ブラックインク組成物が、分散剤無しに水に分散および/または溶解が可能な表面処理顔料と、二種以上の樹脂粒子と、主溶媒としての水とを少なくとも含んでなり、
前記二種以上の樹脂粒子の少なくとも一種はガラス転移温度0℃未満のものであり、少なくともその一種はガラス転移温度30℃以上のものであり、かつ
前記有彩色インク組成物が、顔料と、該顔料を包含し、かつ該顔料をインク組成物中に分散可能とするポリマーと、主溶媒としての水とを少なくとも含んでなり、ここで、前記ポリマーが、疎水性基と親水性基とを有し、実質的にインク組成物中において溶解していないものである、インクセット。 - ブラックインク組成物と、少なくとも一種以上の有彩色インク組成物とを含んでなるインクセットであって、
前記ブラックインク組成物が、分散剤無しに水に分散および/または溶解が可能な表面処理顔料と、二種以上の樹脂粒子と、主溶媒としての水とを少なくとも含んでなり、
前記二種以上の樹脂粒子の少なくとも一種はガラス転移温度0℃未満のものであり、少なくともその一種はガラス転移温度30℃以上のものであり、かつ
前記有彩色インク組成物が、顔料と、該顔料を包含し、かつ該顔料をインク組成物中に分散可能とするポリマーと、主溶媒としての水とを少なくとも含んでなり、ここで、前記ポリマーが、
A)式(I):
で表されるモノマーA1、
式(II):
式(III):
で表されるモノマーA3から選ばれる、少なくとも一種のモノマーの5〜45重量%と、B)塩生成基を有するモノマーの3〜40重量%と、
C)数平均分子量500〜500,000のマクロモノマーの5〜40重量%と、
D)前記モノマーA)、B)、およびC)と共重合可能なモノマーの0〜87重量%とを重合させてなるビニルポリマーである、インクセット。 - 前記表面処理顔料が、顔料を次亜ハロゲン酸および/または次亜ハロゲン酸塩による酸化処理あるいはオゾンによる酸化処理されたものである、請求項1または2に記載のインクセット。
- 前記ブラックインク組成物が、前記表面処理顔料をブラックインク組成物全量に対して1〜15重量%含んでなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載のインク組成物。
- 前記樹脂粒子の少なくとも一つが、不飽和単量体および/または架橋性単量体を水性媒体中で乳化重合して得られたエマルジョンの形態で前記ブラックインク組成物に添加されてなる、請求項1〜4のいずれか一項に記載のインクセット。
- 前記樹脂粒子の平均粒子径が、50〜250nmである、請求項1〜5のいずれか一項に記載のインクセット。
- 前記ブラックインク組成物が、前記二種以上の樹脂粒子をブラックインク組成物全量に対して0.5〜10重量%含んでなる、請求項1〜6のいずれか一項に記載のインクセット。
- 前記ブラックインク組成物が、水溶性有機溶媒および/または界面活性剤をさらに含んでなる、請求項1〜7のいずれか一項に記載のインクセット。
- 前記水溶性有機溶媒が、多価アルコール、グリコール系ブチルエーテル、ピロリドン、およびこれらの混合物からなる群から選択されるものであり、
前記界面活性剤がアセチレングリコール系界面活性剤である、請求項8に記載のインクセット。 - 前記ブラックインク組成物が、アルカリ金属の水酸化物、アンモニア、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、およびこれらの混合物からなる群から選択されるpH調整剤をさらに含んでなる、請求項1〜9のいずれか一項に記載のインクセット。
- 前記有彩色インク組成物が、顔料を有彩色インク組成物全量に対して0.5〜10重量%含んでなる、請求項1〜10のいずれか一項に記載のインクセット。
- 前記有彩色インク組成物が、水溶性有機溶媒、界面活性剤、1,2−アルカンジオールおよびこれらの混合物からなる群から選択されるものをさらに含んでなる、請求項1〜11のいずれか一項に記載のインクセット。
- 前記水溶性有機溶媒がグリコールモノ−n−ブチルエーテルであり、
前記界面活性剤がアセチレングリコール系界面活性剤であり、
前記1,2−アルカンジオールが、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、およびそれらの混合物からなる群から選択されるものである、請求項12に記載のインクセット。 - 前記有彩色インク組成物が、互いに組み合わせることにより無彩色を印刷可能な少なくとも二種以上の有彩色インク組成物からなる、請求項1〜13のいずれか一項に記載のインクセット。
- 前記有彩色インク組成物が、シアンインク組成物と、マゼンタインク組成物と、イエローインク組成物とからなる、請求項1〜14のいずれか一項に記載のインクセット。
- 前記有彩色インク組成物が、色濃度の異なる二種のシアンインク組成物と、色濃度の異なる二種のマゼンタインク組成物と、イエローインク組成物とからなる、請求項1〜15のいずれか一項に記載のインクセット。
- インク組成物を記録媒体に付着させて印刷を行う記録方法に用いられる、請求項1〜16のいずれか一項に記載のインクセット。
- インクジェット記録方法に用いられる、請求項1〜16のいずれか一項に記載のインクセット。
- インク組成物の液滴を吐出し該液滴を記録媒体に付着させて印刷を行うインクジェット記録方法であって、
前記インク組成物として、ブラックインク組成物と、互いに組み合わせることにより無彩色を印刷可能な少なくとも二種以上の有彩色インク組成物とを用い、
前記ブラックインク組成物が、分散剤無しに水に分散および/または溶解が可能な表面処理顔料と、二種以上の樹脂粒子と、主溶媒としての水とを少なくとも含んでなり、
前記二種以上の樹脂粒子の少なくとも一種はガラス転移温度0℃未満のものであり、少なくともその一種はガラス転移温度30℃以上のものであり、
前記有彩色インク組成物が、顔料と、該顔料を包含し、かつ該顔料をインク組成物中に分散可能とするポリマーと、主溶媒としての水とを少なくとも含んでなり、ここで、前記ポリマーが、疎水性基と親水性基とを有し、実質的にインク組成物中において溶解していないものであり、かつ、
前記有彩色インク組成物を組み合わせて印刷するインクドットが無彩色または明度の低い有彩色である場合に、前記有彩色インク組成物の組み合わせに代えて、前記ブラックインク組成物を吐出させることによりインクドットを印刷することを特徴とする、インクジェット記録方法。 - インク組成物の液滴を吐出し該液滴を記録媒体に付着させて印刷を行うインクジェット記録方法であって、
前記インク組成物として、ブラックインク組成物と、互いに組み合わせることにより無彩色を印刷可能な少なくとも二種以上の有彩色インク組成物とを用い、
前記ブラックインク組成物が、分散剤無しに水に分散および/または溶解が可能な表面処理顔料と、二種以上の樹脂粒子と、主溶媒としての水とを少なくとも含んでなり、
前記二種以上の樹脂粒子の少なくとも一種はガラス転移温度0℃未満のものであり、少なくともその一種はガラス転移温度30℃以上のものであり、
前記有彩色インク組成物が、顔料と、該顔料を包含し、かつ該顔料をインク組成物中に分散可能とするポリマーと、主溶媒としての水とを少なくとも含んでなり、ここで、前記ポリマーが、ブラックインク組成物と、少なくとも一種以上の有彩色インク組成物とを含んでなるインクセットであって、
前記ブラックインク組成物が、分散剤無しに水に分散および/または溶解が可能な表面処理顔料と、二種以上の樹脂粒子と、主溶媒としての水とを少なくとも含んでなり、
前記二種以上の樹脂粒子の少なくとも一種はガラス転移温度0℃未満のものであり、少なくともその一種はガラス転移温度30℃以上のものであり、かつ
前記有彩色インク組成物が、顔料と、該顔料を包含し、かつ該顔料をインク組成物中に分散可能とするポリマーと、主溶媒としての水とを少なくとも含んでなり、ここで、前記ポリマーが、
A)式(I):
で表されるモノマーA1、
式(II):
式(III):
で表されるA3から選ばれる、少なくとも一種のモノマーの5〜45重量%と、
B)塩生成基を有するモノマーの3〜40重量%と、
C)数平均分子量500〜500,000のマクロモノマーの5〜40重量%と、
D)前記モノマーA)、B)、およびC)と共重合可能なモノマーの0〜87重量%とを重合させてなるビニルポリマーであり、かつ、
前記有彩色インク組成物を組み合わせて印刷するインクドットが無彩色または明度の低い有彩色である場合に、前記有彩色インク組成物の組み合わせに代えて、前記ブラックインク組成物を吐出させることによりインクドットを印刷することを特徴とする。 - 前記インク組成物が、請求項1〜16のいずれか一項に記載のインクセットを構成するインク組成物である、請求項19または20に記載のインクジェット記録方法。
- 請求項19〜21のいずれか一項に記載の方法によって記録が行われた、記録物。
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