この発明は新規なメロシアニン色素共重合体とこれを含んでなる光重合性組成物に関するものである。
情報化時代の到来に伴い、光化学的重合が多種多様の分野で頻用されるようになり、今では、その用途は、合成樹脂の分野を越えて、塗料、印刷用刷版、印刷回路、集積回路などの情報記録や電子機器の分野にまで及ぶようになった。光化学的重合は、重合性組成物を光照射することによって重合させる技術であって、大別すると、重合性組成物を直接光照射し、活性化させることによって重合を開始させる直接的光重合と、光増感剤を共存させた状態で光照射し、光増感剤の活性種を利用することによって重合性組成物を重合させる光増感重合とがある。いずれの光化学的重合も、重合の開始及び停止が露出光源の点滅によって制御可能であり、また、露出光源の強度や波長を選択することによって、重合度や重合速度を容易に制御できる特徴を有している。しかも、光化学的重合は、一般に、重合開始エネルギーが低いために、低温でも開始させることができる。ホログラム、印刷用刷版をはじめとする情報記録の分野においては、光化学的重合のこのような利点が買われて、アルゴンレーザー、ヘリウムネオンレーザー、Nd−YAGレーザーの第二高調波などの可視光を照射することによって重合させることのできる光重合性組成物の需要が急速に高まっている。
光重合性組成物へ配合する重合性化合物や重合開始剤は、その多くが紫外線だけを吸収することから、光重合性組成物を可視光により重合させようとすると、可視光を吸収する光増感剤が不可欠の技術要素となる。光増感剤の主体となる吸光性有機化合物が具備すべき特徴としては、可視領域における吸収波長領域が広いこと、分子吸光係数が大きいことと、溶剤に対する溶解性と他の配合成分との相溶性に優れていること、消色性に優れていること、安定性に優れていることなどが挙げられる。
代表的な吸光性有機化合物としては、例えば、メロシアニン色素、シアニン色素、スチリル色素などが挙げられるけれども(特許文献1乃至3を参照)、これらはいずれも、可視領域における吸収波長領域が狭いことから、感光特性の点で未だ不充分である。また、吸光性有機化合物を高分子化することにより吸収波長領域を拡大したものが記載されている(特許文献4及び5を参照)。しかしながら、これらの吸光性有機化合物は、光重合性組成物などを調整する際に、溶剤に対する溶解性および、重合性化合物、バインダー樹脂などの他の配合成分との相溶性に劣ることから、感光特性の点で更に改善が必要である。
そこで、光化学的重合の新しい適用分野である、例えば、情報記録や電子機器の分野においては、重合性化合物、重合開始剤、バインダー樹脂などの、用途に応じた光増感剤以外の材料の組合せを先ず決定し、次いで、多種多様の吸光性有機化合物の中から、それらの重合性化合物や重合開始剤に適合するものを試行錯誤的に検索しているというのが実状である。最近では、光化学的重合の用途が広がるに伴って、可視領域における吸収波長領域が広く、他の配合成分との相溶性に優れる有機化合物が希求されるようになった。
特開昭54−151024号公報
特開昭58−29803号公報
特開昭59−56403号公報
特開昭60−79014号公報
特開平4−86653号公報
斯かる状況に鑑み、この発明は、可視領域における吸収波長領域が広く、有機溶剤に対する溶解性と他の配合成分との相溶性に優れた新規な吸光性有機化合物を提供することによって、高感度で安定性の優れた光重合性組成物を提供することを課題とするものである。
この課題を解決すべく、本発明者がメロシアニン色素共重合体に着目し、鋭意研究し、検索したところ、一般式1で表される構成単位と、一般式2で表される構成単位とを含んでなるメロシアニン色素共重合体は、可視領域における吸収波長領域が有意に広がることから、光化学的重合などに汎用される500nm付近の可視光を効率よく吸収し得ること、高感度化で、消色性に優れること、さらには、有機溶剤への溶解性や他成分との相溶性に優れていることが判明した。
(一般式1において、G1は水素原子または脂肪族炭化水素基を表し、それらの脂肪族炭化水素基は置換基を有していてもよい。G2は酸素原子または窒素原子を表し、窒素原子には水素原子が結合する。Lは連結基を表し、Mはメロシアニン色素を表す。)
(一般式2において、G3は水素原子または脂肪族炭化水素基を表し、G4は水酸基または直鎖状又は分岐を有する脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、エーテル基またはアミノ基を表す。)
すなわち、この発明は、可視領域における吸収波長領域が広く、有機溶剤に対する溶解性と他の配合成分との相溶性に優れる新規な吸光性有機化合物である、一般式1で表される構成単位と、一般式2で表される構成単位とを含んでなるメロシアニン色素共重合体を提供することにより前記課題を解決するものである。
(一般式1において、G1は水素原子または脂肪族炭化水素基を表し、それらの脂肪族炭化水素基は置換基を有していてもよい。G2は酸素原子または窒素原子を表し、窒素原子には水素原子が結合する。Lは連結基を表し、Mはメロシアニン色素を表す。)
(一般式2において、G3は水素原子または脂肪族炭化水素基を表し、G4は水酸基または直鎖状又は分岐を有する脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、アルコキシ基またはアミノ基を表す。)
本発明のメロシアニン色素共重合体は、可視領域における吸収波長領域が有意に広がることから、光化学的重合などに汎用される500nm付近の可視光を効率よく吸収し得ること、高感度化で、消色性に優れること、さらには、有機溶剤への溶解性や他成分との相溶性に優れていることから、高感度で安定性の優れた光重合性組成物を提供することができる。
前述したとおり、この発明は、一般式1で表される構成単位と、一般式2で表される構成単位とを含んでなるメロシアニン色素共重合体に関するものである。
一般式1において、G1は水素原子または脂肪族炭化水素基を表し、G1における脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、イソプロペニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−プロピニル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、2−ブテニル基、1,3−ブタジエニル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、2−ペンテニル基、2−ペンテン−4−イニル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、5−メチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、ドデシル基、ウンデシル基、オクタデシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基、シクロヘプチル基などが挙げられる。
G2は酸素原子または窒素原子を表し、窒素原子には水素原子が結合する。Lは連結基を表し、連結基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、ビニレン基、トリメチレン基、プロピレン基、プロペニレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基などの脂肪族炭化水素基、シクロペンチレン基、シクロヘキセニレン基、シクロヘキサジエニレン基などの脂環式炭化水素基、o−フェニレン基、m−フェニレン基、p−フェニレン基、ナフチレン基などの芳香族炭化水素基、さらには、それらの組合わせが挙げられる。このうち、連結基の鎖長の構成原子数は、炭素原子などの構成原子数が10個未満、詳細には、2乃至8個のものが好ましい。Mはメロシアニン色素を表す。
一般式2において、G3は水素原子または脂肪族炭化水素基を表し、G3における脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、イソプロペニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−プロピニル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、2−ブテニル基、1,3−ブタジエニル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、2−ペンテニル基、2−ペンテン−4−イニル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、5−メチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、ドデシル基、ウンデシル基、オクタデシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基、シクロヘプチル基などが挙げられる。
G4は、水酸基または直鎖状又は分岐を有する脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、エーテル基またはアミノ基を表し、G4における脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、イソプロペニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−プロピニル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、2−ブテニル基、1,3−ブタジエニル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、2−ペンテニル基、2−ペンテン−4−イニル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、5−メチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、ドデシル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、2−エチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、イソボルニル基、ジシクロペンタニル基、テトラヒドロフルフリール基、2−ヒドロキシプロピル基、トリメチロールプロピル基などが挙げられ、芳香族炭化水素基としては、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、キシリル基、メシチル基、o−クメニル基、m−クメニル基、p−クメニル基、ビフェニリル基などが挙げられ、エーテル基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、フェノキシ基、ベンジルオキシ基、メチレンジオキシ基、エチレンジオキシ基、3−ヒドロキシ−2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロポキシ基、6−ヒドロキシヘキサノキシ基、3−ヒドロキシプロポキシ基、2,4−ジヒドロキシブトキシ基、4−ヒドロキシシクロヘキサノキシ基、5−ヒドロキシペントキシ基、4−ブトキシカルボニルフェノキシ基、4−tert−ブチルフェノキシ基、ベンジロキシ基、2−(4−フェニル)エトキシ基、4−フェニリルフェノキシ基、フェロセニルメトキシ基、2−フェロセニルエトキシ基、トリフルオロエトキシ基、テトラフルオロプロポキシ基、オクタフルオロペントキシ基、2,3−ジブロモプロポキシ基、トリメトキシシリルプロポキシ基などが挙げられ、アミノ基としては、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、プロピルアミノ基、ジプロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ブチルアミノ基、ジブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、ジイソブチルアミノ基、sec−ブチルアミノ基、tert−ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、ジペンチルアミノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基などが挙げられる。
また、一般式1で表される構成単位に結合するメロシアニン色素は、一般式3乃至一般式5のいずれかの構造を有し、連結基Lを介して共重合体に結合する。
一般式3乃至一般式5において、Z1乃至Z9は互いに同じか異なる複素環を表す。X1乃至X6は、それぞれ独立して、炭素原子か、あるいは、例えば、窒素原子、燐原子、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、テルル原子などの周期律表における第15族又は第16族のヘテロ原子を表す。Y1乃至Y9は、互いに同じか異なるヘテロ原子を表し、個々のヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、テルル原子などの周期律表における第16族の元素などが挙げられる。したがって、Z1乃至Z9における複素環の具体例としては、例えば、アセナフチレノ[1,2−d]チアゾール環、イソオキサゾール環、イソキノリン環、イミダゾール環、2,4−イミダゾリジンジオン環、2,4−イミダゾリジンジチオン環、イミダゾリン環、イミダゾ[4,5−d]キノキザリン環、イミダゾ[4,5−d]キノリン環、イミダゾ[4,5−d]ピリジン環、インドレニン環、インドール環、オキサジアゾール環、2,5−オキサゾリジンジオン環、2,5−オキサゾリジンジチオン環、オキサゾール環、キノリン環、キノリノ[2,3−d]チアゾール環、2,4−チアゾリジンシチオン環、2,4−チアゾリジンジオン環、チアジアゾール環、チアゾリン環、チアゾール環、2−チオキソ−4−イミダゾリジノン環、2−チオキソ−5−オキサゾリジノン環、2−チオキソ−4−チアゾリジノン環、2−チオキソ−5−ピロリジノン環、テトラゾール環、ナフト[2,3−d]イミダゾール環、ナフト[1,2−d]チアゾール環、ナフト[2,3−d]チアゾール環、トリアゾール環、ピラゾール環、ピリジン環、2,5−ピロリジンジオン環、2,5−ピロリジンジチオン環、ピロール環、フェナントレノ[9,10−d]チアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾインドレニン環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾセレナゾール環、ベンゾチアジアゾール環などが挙げられる。
一般式3乃至一般式5におけるR1乃至R27は、それぞれ独立して、水素原子又は置換基を表す。R1乃至R27における置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、イソプロペニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−プロピニル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、2−ブテニル基、1,3−ブタジエニル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、2−ペンテニル基、2−ペンテン−4−イニル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、5−メチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、ドデシル基、ウンデシル基、オクタデシル基などの脂肪族炭化水素基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基、シクロヘプチル基などの脂環式炭化水素基、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、キシリル基、メシチル基、o−クメニル基、m−クメニル基、p−クメニル基、ビフェニリル基などの芳香族炭化水素基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、フェノキシ基、ベンジルオキシ基、メチレンジオキシ基、エチレンジオキシ基などのエーテル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基などのエステル基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、プロピルアミノ基、ジプロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ブチルアミノ基、ジブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、ジイソブチルアミノ基、sec−ブチルアミノ基、tert−ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、ジペンチルアミノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基などのアミノ基、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基などのハロゲン基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホ基若しくはそれらの塩、シアノ基、ニトロ基、更には、これらの組合わせからなる置換基が挙げられる。そして、R1乃至R27いずれか1つが、二価基となり、一般式1におけるLとして共重合体に連結し、メロシアニン色素と共重合体を結合する。このとき、Lとして連結する置換基R1乃至R27は、上記一般式1における連結基Lを表す。なお、X1乃至X6が二価又は三価のヘテロ原子である場合、R5、R6、R12乃至R15及びR22乃至R27の一部又は全部が存在しない。また、一般式3乃至一般式5におけるZ1、Z3及びZ6は、置換基を1又は複数有していてもよい。その置換基は、例えば、R1乃至R27に挙げたような置換基が挙げられる。mは0以上の整数であり、mが0の場合、R3、R4、R10、R11、R20及びR21は存在しない。
本発明のメロシアニン色素共重合体は、一般式1で表される構成単位を、1乃至50モル%、好ましくは、10乃至40モル%含んでなる共重合体であり、メロシアニン色素共重合体の数平均分子量(以下、「Mn」と略記することがある。)は、1,000乃至100,000、好ましくは2,000乃至10,000の範囲にあり、その重量平均分子量(以下、「Mw」と略記することがある。)は、1,000乃至100,000、好ましくは、5,000乃至30,000の範囲にあるメロシアニン色素共重合体である。
斯かるメロシアニン色素共重合体は諸種の方法により合成できるけれども、経済性を重視するのであれば、例えば、一般式1に対応する一般式6で表されるメロシアニン色素単量体と一般式2に対応する一般式7で表される単量体とをフリーラジカル開始剤の存在下、重合反応させることによって、この発明のメロシアニン色素共重合体を合成することができる。
(一般式6において、G1、G2、L、Mは、上記一般式1におけると同じものを表す。)
一般式7
(一般式7において、G
3、G
4は上記一般式2と同じものを表す。)
一般式6で表されるメロシアニン色素単量体の具体例としては、例えば、化学式1乃至化学式11で表わされるものが挙げられる。ちなみに、これらのメロシアニン色素単量体は、例えば、速水正明監修『感光色素』、11乃至31頁、1997年、産業図書株式会社発行に記載された方法か、あるいは、それらの方法に準じて所望量を得ることができる。
また、本発明のメロシアニン色素共重合体の合成に使用する一般式7で表される単量体としては、例えば、メチルビニルケトン、フェニルビニルケトン、エチルビニルケトン、n−プロピルビニルケトン、シクロヘキシルビニルケトン、イソブチルビニルケトンなどのビニルケトン類、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、ネオペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘプチルアクリレート、オクチルアクリレート、ノニルアクリレート、ドデシルアクリレート、2−メチルブチルアクリレート、3−メチルブチルアクリレート、2−エチルブチルアクリレート、1,3−ジメチルブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−メチルペンチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、アダマンチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、テトラヒドロフルフリールアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ネオペンチルグリコールアクリレート、ペンタエリトリトールアクリレート、1,6−ヘキサンジオールアクリレート、トリメチロールプロパンアクリレート、テトラエチレングリコールアクリレート、1,3−ブチレングリコールアクリレート、エチレングリコールアクリレート、グリセロールアクリレート、1,3−プロパンジオールアクリレート、1,2,4−ブタントリオールアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールアクリレート、1,5−ペンタンジオールアクリレート、フェニルアクリレート、4−メトキシカルボニルフェニルアクリレート、4−エトキシカルボニルフェニルアクリレート、4−ブトキシカルボニルフェニルアクリレート、4−tert−ブチルフェニルアクリレート、ベンジルアクリレート、4−フェニルエチルアクリレート、4−フェノキシジエチレングルコールアクリレート、4−フェノキシテトラエチレングリコールアクリレート、4−フェノキシヘキサエチレングリコールアクリレート、4−ビフェニリルアクリレート、フェロセニルメチルアクリレート、フェロセニルエチルアクリレート、トリフルオロエチルアクリレート、テトラフルオロプロピルアクリレート、ヘプタデカフルオロデシルアクリレート、オクタフルオロペンチルアクリレート、2,3−ジブロモプロピルアクリレート、トリメトキシシリルプロピルアクリレート、グリシジルアクリレートなどのアクリル酸エステル類、または、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、sec−ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、ネオペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、ヘプチルメタクリレート、オクチルメタクリレート、ノニルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、2−メチルブチルメタクリレート、3−メチルブチルメタクリレート、2−エチルブチルメタクリレート、1,3−ジメチルブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、2−メチルペンチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、アダマンチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート、テトラヒドロフルフリールメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ネオペンチルグリコールメタクリレート、ペンタエリトリトールメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールメタクリレート、トリメチロールプロピルメタクリレート、テトラエチレングリコールメタクリレート、1,3−ブチレングリコールメタクリレート、エチレングリコールメタクリレート、グリセロールメタクリレート、1,3−プロパンジオールメタクリレート、1,2,4−ブタントリオールメタクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールメタクリレート、1,5−ペンタンジオールメタクリレート、フェニルメタクリレート、4−メトキシカルボニルフェニルメタクリレート、4−エトキシカルボニルフェニルメタクリレート、4−ブトキシカルボニルフェニルメタクリレート、4−tert−ブチルフェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、4−フェニルエチルメタクリレート、4−フェノキシジエチレングルコールメタクリレート、4−フェノキシテトラエチレングリコールメタクリレート、4−フェノキシヘキサエチレングリコールメタクリレート、4−ビフェニリルメタクリレート、フェロセニルメチルメタクリレート、フェロセニルエチルメタクリレート、トリフルオロエチルメタクリレート、テトラフルオロプロピルメタクリレート、ヘプタデカフルオロデシルメタクリレート、オクタフルオロペンチルメタクリレート、2,3−ジブロモプロピルメタクリレート、トリメトキシシリルプロピルメタクリレート、グリシジルメタクリレートなどのメタクリル酸エステル類、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−ヘキシルメタクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−ニトロフェニルアクリルアミド、N−エチル−N−フェニルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミドなどのアクリルアミド類もしくはメタクリルアミド類などの単量体が挙げられる。
また、本発明のメロシアニン色素共重合体は、前記単量体以外の共重合成分を1乃至30モル%含んでいてもよい。他の共重合成分として用いうる単量体としては、エチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテルなどのビニルエーテル類、ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルブチレート、酢酸ビニル、安息香酸ビニルなどのビニルエステル類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニルなどのハロゲン化ビニル類、スチレン、α−メチルスチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレンなどのスチレン類、エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレンなどのオレフィン類、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール、4−ビニルピリジン、ビニルピロリジンなどが挙げられる。また、これらの単量体は、クマリン化合物、シアニン化合物、シクロペンタノン化合物、スチルベン色素、ピラン化合物、メチレンブルー化合物、メロシアニン色素などの1種または2種以上の色素が結合したものであってもよい。
本発明のメロシアニン色素共重合体の合成方法は、反応容器に一般式6で表される単量体と一般式7で表される単量体とをそれぞれモル比で、2:1乃至1:60の割合で混合し、必要に応じて、適宜溶剤に溶解し、例えば、ジ−(tert−ブチル)パーオキサイド、1,1−ビス(tert−ブチル−ペルオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、tert−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチルー2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、tert−ブチルペルオキシビバレート、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ブチルペルオキシ)ヘキサン、過酸化ベンゾイル、過酸化デカノイル、過酸化プロピオニル、過酸化ヒドロキシヘプチル、過酸化シクロヘキサノン、過安息香酸tert−ブチル、ジクミルパーオキサイド、過酸化ラウロイルなどの過酸化物、アゾイソビスブチロニトリル、2,2−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)、2,2−アゾビス(2−メチルバレロニトリル)、4,4´−アゾビス(4−シアノ吉草酸)などのアゾ化合物などのフリーラジカル開始剤を加えた後、加熱還流などにより、加熱攪拌しながら周囲温度か周囲温度を上回る温度で反応させる。
前記溶剤としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素類、四塩化炭素、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジブロモエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、α−ジクロロベンゼンなどのハロゲン化物、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール、イソペンチルアルコール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、フェノール、ベンジルアルコール、クレゾール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリンなどのアルコール類及びフェノール類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,4−ジオキサン、アニソール、1,2−ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジシクロヘキシル−18−クラウン−6、メチルカルビトール、エチルカルビトール、メチルセロゾルブ、エチルセロソルブなどのエーテル類、フルフラール、アセトン、エチルメチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、酢酸、無水酢酸、無水プロピオン酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、無水プロピオン酸、酢酸エチル、炭酸ブチル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ヘキサメチル燐酸トリアミド、燐酸トリメチルなどの酸及び酸誘導体、アセトニトリル、プロピオニトリル、スクシノニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル類、ニトロメタン、ニトリベンゼン、ベンゾニトリルなどのニトリル類、ニトロメタン、ニトロベンゼンなどのニトロ化合物、ジメチルスルホキシド、スルホランなどの含硫化合物、水などが挙げられ、必要に応じて、これらは適宜組合せて用いられる。
溶剤を用いる場合、一般に、溶剤の量が多くなると反応の効率が低下し、反対に、少なくなると、原料化合物を均一に加熱・攪拌するのが困難になったり、副反応が起こり易くなる。したがって、溶剤の量を重量比で原料化合物全体の100倍まで、通常、5乃至50倍の範囲にするのが望ましい。原料化合物の種類や反応条件にもよるけれども、反応は、10時間以内、好ましくは、0.5乃至5時間で完結する。
斯くして得られるメロシアニン色素共重合体は、用途によってはそのまま用いられることもあるけれども、通常、使用に先立って、例えば、溶解、分液、傾斜、濾過、抽出、濃縮、薄層クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、蒸留、昇華、結晶化などの類縁化合物を精製するための汎用の方法により精製することができ、必要に応じて、これらの方法は組合せて適用される。
この発明のメロシアニン色素共重合体は、490nmより長波長の可視領域、通常、505乃至550nm付近の波長域に吸収極大を有し、しかも、可視領域における吸収波長領域が広く、吸収極大波長を中心とする分子吸光係数の半値幅が広いことから、光化学的重合などに汎用される波長500nm付近の可視光を効率よく吸収する。しかも、この発明のメロシアニン色素系共重合体は、光化学的重合などに汎用される、例えば、炭化水素系、アルコール系、エーテル系、ケトン系、ニトリル系、ハロゲン系、アミド系、エステル類などの親水性、疎水性の諸溶剤に対して、実用上支障のない溶解性を示し、特に、エチルセロソルブ、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのアルコール系、ケトン系溶剤を用いた場合、優れた溶解性を示し、重合性化合物、バインダー樹脂などの他の配合成分との相溶性に優れるものである。これらの性質ゆえに、この発明のメロシアニン色素共重合体は、例えば、ホログラム、写真、複写機、プリンター、ファクシミリなどの情報表示装置、フレキソ製版
、グラビア印刷などの印刷、フォトレジストなどの印刷回路、集積回路における光増感剤、さらには、追記型、書き換え型の高密度光記録媒体の記録層を構成する吸光剤をはじめとする多種多様の用途を有する。
さらに、この発明のメロシアニン色素共重合体は、上述した諸用途に加えて、とりわけ、当該メロシアニン色素共重合体を、必要に応じて、紫外領域、可視領域又は赤外領域の光を吸収する他の材料の1又は複数、さらに必要に応じて、その他のアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等のアクリル酸系の単独重合体及び共重合体、ニトロセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、セルロースアセテートのセルロース系重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、塩化ビニル系共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールのビニル系ポリマー及びビニル化合物の共重合体、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ブタジエン−スチレン共重合体、エポキシ系重合体、メラミン化合物、ポリエチレングリコール、クエン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、オレイン酸テトラヒドロフルフリルなどの可塑剤、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタントリオレート、ステアリン酸モノグリセリド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、アルキルジ(アミノエチル)グリシン、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩、2−アルキル−N−カルボキシエチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインなどの界面活性剤、ヒンダードアミン系化合物、アクリレート系化合物 、金属錯体系化合物 、オキサミド系化合物、トリアジン系化合物などの光安定化剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤などの酸化防止剤などの添加剤の1又は複数とともに、衣料一般や、衣料以外の、例えば、ドレープ、レース、ケースメント、プリント、ベネシャンブラインド、ロールスクリーン、シャッター、のれん、毛布、布団、布団地、布団カバー、布団綿、シーツ、座布団、枕、枕カバー、クッション、マット、カーペット、寝袋、テント、自動車を含む車輌の内装材、ウインドガラス、窓ガラスなどの建寝装用品、紙おむつ、おむつカバー、眼鏡、モノクル、ローネットなどの保健用品、靴の中敷、靴の内張地、鞄地、風呂敷、傘地、パラソル、ぬいぐるみ、照明装置や、例えば、ブラウン管ディスプレー、液晶ディスプレー、電界発光ディスプレー、プラズマディスプレーなどを用いるテレビジョン受像機やパーソナルコンピューターなどの情報表示装置用の光学フィルター類、パネル類及びスクリーン類、サングラス、サンルーフ、サンバイザー、PETボトル、貯蔵庫、ビニールハウス、寒冷紗、光ファイバー、プリペイドカード、電子レンジ、オーブンなどの覗き窓、光電変換素子、さらには、これらの物品を包装、充填又は収容するための包装用材、充填用材、容器などに用いるときには、生物や物品における自然光や人工光などの環境光による障害や不都合を防止したり低減することができるだけではなく、物品の色彩、色調、風合などを整えたり、物品から反射したり透過する光を所望の色バランスに整えることができる実益がある。
以下、この発明の実施の形態につき、実施例に基づいて説明する。
〈メロシアニン色素単量体〉反応容器にジメチルアセトアミドを適量取り、10℃以下に冷却撹拌しながら、化学式12で表されるメロシアニン色素1.8g、トリエチルアミン8mlと、4−(N,N−ジメチルアミノ)ピリジン10mgを加え、さらに、メタクリル酸クロライド2mlを滴々加えた後、40℃まで加熱し,4時間反応させた。反応混合物にエタノールを加え、室温まで冷却した後,析出した結晶を採取し、クロロホルムにより再結晶したところ、化学式1で表されるメロシアニン色素単量体の赤色結晶が0.84g得られた。
結晶の一部をとり、常法により融点を測定したところ、化学式1で表されるメロシアニン色素単量体の融点は198℃であった。また、常法にしたがってメタノール溶液における可視吸収スペクトルを測定したところ、波長525nm付近に吸収極大(ε=9.93×104)が観察された。さらに,常法により、クロロホルム−d溶液中における1H−核磁気共鳴スペクトル(以下、「1H−NMRスペクトル」と略記する。)を測定したところ、化学シフトδ(ppm,TMS)が、1.4(t,3H)、1.9(s,3H)、4.0(q,2H)、4.4(s,4H)、5.3(d,1H)、5.6(s,1H)、6.1(s,1H)、7.0乃至7.6(m,5H)の位置にピークが観察された。
〈メロシアニン色素共重合体〉 反応容器にジメチルスルホキシド6ml、化学式1で表されるメロシアニン色素単量体 0.1g、メタクリル酸メチル 0.25ml、アゾビスイソブチロニトリル 20mgを仕込み、窒素気流下、80℃で5時間反応させた。反応液を大過剰のメタノールに注ぎ、ろ別した重合体を良溶媒としてクロロホルム、貧溶媒としてメタノールを用いて再沈殿したところ、化学式13で表されるこの発明のメロシアニン色素共重合体の淡赤色重合体が40mg得られた。
この重合体の一部をとり、常法に従い1H−NMRから求めた共重合体組成は、メロシアニン残基含量 31.3mol%であった。さらに、ポリスチレン換算数平均分子量は2,500、重量平均分子量は6,000、分子量分布Mw/Mnは2.4、平均重合度は4であった。また、常法にしたがってメタノール溶液における可視吸収スペクトルを測定したところ、波長525nm付近に吸収極大(ε=9.93×104)が観察された。そして、吸収極大波長を中心として、吸収極大波長の短波長側で分子吸光係数が半減する波長(474nm)と、吸収極大波長の長波長側で分子吸光係数が半減する波長(542nm)とをそれぞれ求め、両者の波長差の1/2を計算し、半値幅を求めたところ34nmであった。
〈メロシアニン色素共重合体〉 反応容器にジメチルスルホキシド6ml、化学式1で表されるメロシアニン色素単量体 0.04g、メタクリル酸メチル 0.5ml、アゾビスイソブチロニトリル 20mgを仕込み、窒素気流下、80℃で5時間反応させた。反応液を大過剰のメタノールに注ぎ、ろ別した重合体を良溶媒としてクロロホルム、貧溶媒としてメタノールを用いて再沈殿したところ、化学式14で表されるこの発明のメロシアニン色素共重合体の淡赤色重合体が40mg得られた。
この重合体の一部をとり、常法に従い1H−NMRから求めた共重合体組成は、メロシアニン残基含量 1.8mol%あった。さらに、ポリスチレン換算の数平均分子量は9,200、重量平均分子量は20,000、分子量分布Mw/Mnは2.2、平均重合度は1.5であった。また、常法にしたがってメタノール溶液における可視吸収スペクトルを測定したところ、波長525nm付近に吸収極大(ε=9.93×104)が観察された。そして、吸収極大波長を中心として、吸収極大波長の短波長側で分子吸光係数が半減する波長(484nm)と、吸収極大波長の長波長側で分子吸光係数が半減する波長(544nm)とをそれぞれ求め、両者の波長差の1/2を計算し、半値幅を求めたところ30nmであった。
〈メロシアニン色素単量体〉 反応容器にジメチルアセトアミドを適量取り、10℃以下に冷却撹拌しながら、化学式15で表されるメロシアニン色素0.7g、トリエチルアミン2mlと、4−(N,N−ジメチルアミノ)ピリジン5mgを加え、さらに、メタクリル酸クロライド1.3mlを滴々加えた後、同温にて2時間反応させた後、反応混合物に純水30mlを加えた。析出した結晶を採取し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;クロロホルム)により精製を行ったところ、化学式7で表されるメロシアニン色素単量体の赤色結晶が0.15g得られた。
結晶の一部をとり、常法により融点を測定したところ、化学式7で表されるメロシアニン色素単量体の融点は253℃であった。また、常法にしたがってメタノール溶液における可視吸収スペクトルを測定したところ、波長511nm付近に吸収極大(ε=1.33×105)が観察された。さらに,常法により、クロロホルム−d溶液中における1H−NMRスペクトルを測定したところ、化学シフトδ(ppm,TMS)が、2.0(s,3H)、3.8(s,6H)、4.5(s,4H)、5.5(s,1H)、6.1(s,1H)、7.3〜8.0(m,5H)の位置にピークが観察された。
〈メロシアニン色素共重合体〉 反応容器にジメチルスルホキシド6ml、化学式7で表されるメロシアニン色素単量体 53mg、メタクリル酸メチル 0.11ml、アゾビスイソブチロニトリル 5.6mgを仕込み、窒素気流下、100℃で6時間反応させた。反応液を大過剰のメタノールに注ぎ、ろ別した重合体を良溶媒としてクロロホルム、貧溶媒としてメタノールを用いて再沈殿したところ、化学式16で表されるこの発明のメロシアニン色素共重合体の淡赤色重合体が55mg得られた。
この重合体の一部をとり、常法に従い1H−NMRから求めた共重合体組成は、メロシアニン残基含量 10mol%であった。さらに、ポリスチレン換算数平均分子量は3,700、重量平均分子量は5,900、分子量分布Mw/Mnは1.6、平均重合度は3であった。また、常法にしたがってメタノール溶液における可視吸収スペクトルを測定したところ、波長511nm付近に吸収極大(ε=1.33×105)が観察された。そして、吸収極大波長を中心として、吸収極大波長の短波長側で分子吸光係数が半減する波長(479nm)と、吸収極大波長の長波長側で分子吸光係数が半減する波長(527nm)とをそれぞれ求め、両者の波長差の1/2を計算し、半値幅を求めたところ24nmであった。
〈メロシアニン色素単量体〉 反応容器にジメチルアセトアミドを適量取り、10℃以下に冷却撹拌しながら、化学式17で表されるメロシアニン色素0.8g、トリエチルアミン1.6mlと、4−(N,N−ジメチルアミノ)ピリジン5mgを加え、さらに、メタクリル酸クロライド0.8mlを滴々加えた後、50℃まで加熱し,30分間反応させた。反応混合物に純水8mlを加え、室温まで冷却した後,析出した結晶を採取し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;クロロホルム)により精製を行ったところ、化学式5で表されるメロシアニン色素単量体の赤色結晶が0.22g得られた。
結晶の一部をとり、常法により融点を測定したところ、化学式5で表されるメロシアニン色素単量体の融点は220℃であった。また、常法にしたがってメタノール溶液における可視吸収スペクトルを測定したところ、波長494nm付近に吸収極大(ε=1.05×105)が観察された。さらに,常法により、クロロホルム−d溶液中における1H−NMRスペクトルを測定したところ、化学シフトδ(ppm,TMS)が、1.3(m,3H)、1.5(m,3H)、1.9(d,3H)、4.3(m,2H)、4.5(m,2H)、4.6(m,2H)、4.9(m,2H)、5.5(d,1H)、6.1(s,1H)、7.3〜8.4(m,6H)の位置にピークが観察された。
〈メロシアニン色素共重合体〉 反応容器にジメチルスルホキシド6ml、化学式5で表されるメロシアニン色素単量体 0.1g、メタクリル酸メチル 0.23ml、アゾビスイソブチロニトリル 10mgを仕込み、窒素気流下、100℃で6時間反応させた。反応液を大過剰のメタノールに注ぎ、ろ別した重合体を良溶媒としてクロロホルム、貧溶媒としてメタノールを用いて再沈殿したところ、化学式18で表されるこの発明のメロシアニン色素共重合体の淡赤色重合体が38mg得られた。
この重合体の一部をとり、常法に従い1H−NMRから求めた共重合体組成は、メロシアニン残基含量 7.1mol%であった。さらに、ポリスチレン換算数平均分子量は5,400、重量平均分子量は9,000、分子量分布Mw/Mnは1.7、平均重合度は6であった。また、常法にしたがってメタノール溶液における可視吸収スペクトルを測定したところ、波長494nm付近に吸収極大(ε=1.05×105)が観察された。そして、吸収極大波長を中心として、吸収極大波長の短波長側で分子吸光係数が半減する波長(463nm)と、吸収極大波長の長波長側で分子吸光係数が半減する波長(512nm)とをそれぞれ求め、両者の波長差の1/2を計算し、半値幅を求めたところ24.5nmであった。〈実験例1:感度測定〉
バインダーポリマー(商品名『XPD2000』 中外貿易製)10%のエチルセロソルブ溶液100重量部、モノマー(商品名『A−TMM−3LM−N』 新中村化学工業製)10重量部、開始剤(商品名『ジフェニルヨードニウムフォスフェイト』 アボガド製)0.5重量部の溶液を調製し、さらに本願発明のメロシアニン色素共重合体である化学式13、化学式16、化学式18及び、比較対照色素(化学式12)のいずれかを0.3重量部それぞれ加えて光重合組成物を調製した。
次に、常法にしたがって、この組成物を表面処理したアルミ板に均一に塗布して感光層を形成させた後、酸素による重合を防止する為にポリビニルアルコール層を形成した。そして、この感光層に、グレースケールを密着させて、150Wのキセノンランプからの光を、シャープカットフィルターおよび干渉フィルターを用いて所望の波長光(539nm)を取り出し60秒露光した。その後アルカリ系現像液で現像して、光硬化した不溶化段数を求め、次式を用いて感度を求めた。これらの結果を表1に示す。
E(mJ/cm2)=Io(mJ/cm2・s)×Tn×t(s)
E:光硬化時の総照射量、Tn:ステップタブレットn段目の透過率、t:露光時間、Io:露光強度
各種フィルターの組み合わせ(シャープカットフィルター、干渉フィルター、熱線カットフィルター)は、シャープカットフィルター(商品名『Y52』;東芝ガラス製)、干渉フィルター(商品名『KL54』;東芝ガラス製)、熱線カットフィルター(商品名『HA−30』;HOYA製)を用いた。
上記結果より、本発明のメロシアニン色素共重合体は、グレースケール感度0.8〜1.9mJ/cm2であり、比較化合物のグレースケール感度8.6mJ/cm2にくらべて、系全体に対する色素重量部が低下しているにもかかわらず、4倍以上の高感度化が達成された。また、メロシアニン色素共重合体を用いた光重合組成物は、色素自体の存在量が減少したにもかかわらず、比較化合物を用いた光重合組成物と比べ感度が向上したことで、色素自体の色を容易に消滅させることが可能となることから、消色性について優位に働いていると考えられる。
〈実験例2:ホログラム評価〉(1)体積型ホログラムの作製下記成分を混合し、体積型ホログラム記録用感光性組成物を得た。増感色素は、本発明のメロシアニン色素共重合体(化学式13)を用いた。比較化合物としてメロシアニン色素単量体(化学式12)を用いた。<組成> ビスフェノール系エポキシ樹脂(昭和高分子製) 100重量部 アクリレート系モノマー(アボガド製) 100重量部 ジフェニルヨードニウム塩(アボガド製) 5重量部 メチルエチルケトン(和光純薬製) 100重量部 増感色素 0.2重量部
(2)体積型ホログラム記録用感光性媒体の作製上記体積型ホログラム記録用感光性組成物を、厚さ10mmのガラス上にアプリケーターにて塗布し、乾燥時膜厚が15μmのホログラム記録用組成物層を形成し、体積型ホログラム記録用感光性媒体を作製した。体積型ホログラム記録用感光性媒体のホログラム記録用組成物側にポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略記する。)フィルムを保護膜としてラミネートした。
(3)体積型ホログラムの作製 ガラス基板側から488nmアルゴンレーザー光を入射して干渉露光を行い、体積型ホログラムを記録した。次いで、キセノンランプを照射することにより干渉光を固定して、体積型ホログラムを作製した。体積型ホログラムの作製に要する総露光量(mJ)を表2に示す。
メロシアニン色素共重合体(化学式13)および、メロシアニン色素単量体(化学式12)のホログラム感度は、それぞれ、体積型ホログラム作製に要する総露光量が、27mJ、72mJであることから、本発明のメロシアニン色素共重合体は、比較対照化合物と比べて3倍程度の高感度化が達成されたことがわかる。またグレースケール評価結果と同様に、色素自体の存在量が減少したにもかかわらず,単量体の場合と比べ感度が向上したため、光増感剤としての機能を果たした後、後工程において色素自体の色を容易に消滅させることが可能となることから、消色性についても向上が認められ、ホログラム記録用感光材料として有利に使用できる。さらにまた、本発明のメロシアニン色素共重合体は、共重合化することにより、色素単量体に比べ、ホログラムなどの光化学的重合に汎用される溶剤に対する溶解性および、その他の配合成分との相溶性の向上が確認された。
その他にも、例えば、情報表示装置、印刷、印刷回路、集積回路、光記録媒体を始めさまざまな分野において、光増感剤、吸収剤として有利に使用できる。