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JP4638766B2 - 蓚酸バリウムチタニルの製造方法及びチタン酸バリウムの製造方法 - Google Patents

蓚酸バリウムチタニルの製造方法及びチタン酸バリウムの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、特に、圧電体、オプトエレクトロニクス材、誘電体、半導体、センサー等の機能性セラミックの原料として有用な蓚酸バリウムチタニルの製造方法及びこれを用いたチタン酸バリウムの製造方法に関するものである。
従来、チタン酸バリウムは固相法や水熱合成法、蓚酸塩法、アルコキシド法等の湿式方法で製造されている。このうち蓚酸塩法は、TiCl4とBaCl2との水溶液を、約80℃のH224水溶液に攪拌下に滴下して、BaとTiのモル比が1の蓚酸バリウムチタニルを得、該蓚酸バリウムチタニルを仮焼する方法が一般的である。この蓚酸塩法の特徴は、得られる蓚酸バリウムチタニルの組成が均一であり、また安定したモル比で目的物を収率良く得られることである。多くの場合そのモル比(Ba/Ti)は略1となっている。しかしながら、その反面、モル比(Ba/Ti)が1未満の蓚酸バリウムチタニルを収率良く、且つ安定した品質で得る事は困難である。またBaとTiのモル比が略1の場合は、仮焼温度に対するチタン酸バリウムの比表面積変化が大きく、微細なものを安定して得ることが難しいと言う問題もある。
例えば塩化バリウムの水溶液を、蓚酸とオキシ塩化チタンの混合物を含む水溶液に20〜60℃の範囲内の温度で激しくかきまぜながら滴下し、得られる沈澱物を仮焼する方法等が提案されている(特許文献1参照)。しかし、この方法で得られる蓚酸バリウムチタニルを、誘電体セラミック材料のチタン酸バリウム系セラミックの製造原料として用いる場合、特に好適な範囲のTiに対するBaのモル比(Ba/Ti)である0.990〜0.999のものが安定して得られにくいという課題がある。
また本出願人も先に、蓚酸塩法により微粒のチタン酸バリウムを製造する方法として、平均粒径50〜300μmの蓚酸バリウムチタニルを水で洗浄する第一工程、該洗浄後の蓚酸バリウムチタニルをスラリーとした後、湿式粉砕処理して、平均粒径0.05〜1μmの蓚酸バリウムチタニルを得る第二工程、及び該平均粒径0.05〜1μmの蓚酸バリウムチタニルを700〜1200℃で仮焼する第三工程を有する方法を提案した(特許文献2参照)。
特開昭63−103827号公報 特開2004−123431号公報
更に、本発明者らは、蓚酸塩法によりチタン酸バリウムを製造する方法について鋭意研究を進める中で、TiとBaのモル比において、Tiを過剰に含むTiリッチな蓚酸バリウムチタニルを仮焼すると、チタン酸バリウムを得る過程での仮焼温度に対する比表面積変化を小さく抑えられることを知見した。従来、蓚酸塩法を用いてTiを過剰に含む蓚酸バリウムチタニルを安定した品質で、且つ高収率で得ることは困難であった。
従って本発明の目的は、仮焼温度に対する比表面積変化を低く抑えられる蓚酸バリウムチタニルを、蓚酸塩法よって工業的に有利に製造する方法を提供することにある。また本発明の目的は、安定した品質のチタン酸バリウムの製造方法を提供することにある。
本発明が提供しようとする第1の発明は、四塩化チタン及び塩化バリウムを含む水溶液(A液)を、少なくとも蓚酸イオン及びアンモニウムイオンを含む水溶液(B液)に添加し反応を行うことを特徴とする蓚酸バリウムチタニルの製造方法である。
また、本発明が提供しようとする第2の発明は、四塩化チタン及び塩化バリウムを含む水溶液(A液)を、少なくとも蓚酸イオン及びアンモニウムイオンを含む水溶液(B液)に添加し反応を行い蓚酸バリウムチタニルを生成させ、生成した蓚酸バリウムチタニルを仮焼することを特徴とするチタン酸バリウムの製造方法である。
本発明によれば、仮焼温度に対する比表面積変化が低く抑えられる蓚酸バリウムチタニルを安定した品質で且つ高収率で得ることができる。また、このようにして得られた蓚酸バリウムチタニルを仮焼することにより、チタン酸バリウムを工業的に有利に製造することができる。
以下、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明する。本発明の製造方法は、四塩化チタン及び塩化バリウムを含む水溶液(A液)を、少なくとも蓚酸イオン及びアンモニウムイオンを含む水溶液(B液)に添加し反応を行うことを特徴とするものである。本発明の製造方法に従い製造される蓚酸バリウムチタニルは、好適にはTiに対するBaのモル比(以下、「Ba/Tiモル比」という)が1未満のものとなる。
本発明で用いるA液は、四塩化チタン及び塩化バリウムを含む水溶液である。A液においては、四塩化チタン中のTiに対する塩化バリウム中のBaのモル比(Ba/Ti)が1.0〜1.5、特に1.05〜1.20であると、生成される蓚酸バリウムチタニルの組成が安定となるので好ましい。またA液においては、塩化バリウムの濃度が、Baとして0.5〜0.7モル/L、特に0.55〜0.65モル/Lで、四塩化チタンの濃度が、Tiとして0.4〜0.7モル/L、特に0.45〜0.65モル/Lであると、蓚酸バリウムチタニルが高収率で得られるので好ましい。
一方のB液は、蓚酸イオン及びアンモニウムイオンを含む水溶液である。B液は、例えば、蓚酸イオン源となる化合物及びアンモニウムイオン源となる化合物を水に溶解し水溶液とする方法によって調製される(以下、「(1)の調製方法」という。)。或いは、蓚酸イオン源及びアンモニウムイオン源の両方の役割を持つ蓚酸アンモニウム又は/及び蓚酸水素アンモニウムを、所定量の蓚酸とともに水に溶解し水溶液とする方法によって調製される(以下、「(2)の調製方法」という。)。これらの調製方法のうち、(2)の調製方法で調製されたB液を用いることが、アンモニウムイオンの反応効率が高い点から好ましい。
(1)の調製方法で使用する蓚酸イオン源となる化合物としては、例えば蓚酸、蓚酸ナトリウム、蓚酸水素ナトリウム、蓚酸カリウム、蓚酸水素カリウム、蓚酸リチウム、蓚酸水素リチウム等が挙げられる。これらの化合物は1種又は2種以上で使用される。
一方、アンモニウムイオン源となる化合物としては、例えばアンモニア水、アンモニアガス、塩化アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、アンモニウムイオンを含む有機酸塩等が挙げられる。これらの化合物は1種又は2種以上で使用される。アンモニウムイオンを含む有機酸塩としては、例えば、クエン酸アンモニウム、クエン酸水素アンモニウム、酢酸アンモニウム、ギ酸アンモニウム、マロン酸アンモニウム、コハク酸アンモニウム、マレイン酸アンモニウム、プロピオン酸アンモニウム、グルタル酸アンモニウム等のカルボン酸のアンモニウム塩が好ましい。
(1)及び(2)の調製方法において、B液に含有させるアンモニウムイオンの量は、蓚酸イオンに対するモル比で0より大きく5以下であることが好ましく、0.02〜0.50であることが更に好ましい。B液中に含有させるアンモニウムイオンの量が多くなるに従って、反応により得られる蓚酸バリウムチタニルにおけるBa/Tiモル比が低くなる傾向があるが、アンモニウムイオンが少量でも存在すれば、Ba/Tiモル比が1未満の蓚酸バリウムチタニルを得ることができる。従って、Ba/Tiモル比が1未満の蓚酸バリウムチタニルを得る観点から、B液に含有させるアンモニウムイオンの下限値は、蓚酸イオンに対するモル比で0より大きくすればよい。一方、アンモニウムイオンの量が、蓚酸イオンに対するモル比で5を超えると、生成される蓚酸バリウムチタニルにおけるBa/Tiモル比が、誘電体セラミック材料の製造原料等として少なくとも用いることができる範囲である0.9より小さくなる。なお、生成される蓚酸バリウムチタニルにおけるBa/Tiモル比が好ましくは0.990〜0.999であると、該蓚酸バリウムチタニルを原料とするチタン酸バリウムに、誘電体セラミック材料としての優れた誘電特性を付与することができる。この観点から、本発明においては、Ba/Tiモル比が前記範囲の蓚酸バリウムチタニルを生成させることが好ましい。この目的のために、B液におけるアンモニウムイオンの含有量は、蓚酸イオンに対するモル比で0.02〜0.50とすることが特に好ましい。
(1)及び(2)の調製方法において、具体的なB液の組成は、蓚酸イオン濃度が0.5〜1.8モル/L、特に1.5〜1.7モル/Lであり、アンモニウムイオン濃度が0.05〜2.5モル/L、特に0.06〜0.4モル/Lであると、組成の安定した蓚酸バリウムチタニルを高収率で得られる点で好ましい。
A液のB液への添加を、添加後の反応液における蓚酸に対するバリウムのモル比が0.3〜0.6、特に0.34〜0.54となるように行うと、組成の安定した蓚酸バリウムチタニルが高収率で得られるので好ましい。
A液のB液への添加は攪拌下に行うことが好ましい。攪拌速度は、添加開始から反応終了までの間に生成する蓚酸バリウムチタニルを含むスラリーが常に流動性を示す状態であればよく、特に限定されるものではない。
反応は、生成される蓚酸バリウムチタニル粒子の平均粒径が20〜300μmの範囲、特に50〜200μmの範囲となるように条件を設定することが好ましい。当該範囲の平均粒径を有する蓚酸バリウムチタニルは、結晶粒が大きいことに起因して、水で洗浄したときにBa及びTiの溶出が少ないという利点がある。その上、塩素等の不純物を効率的に除去できるという利点もある。平均粒径が20μm未満の蓚酸バリウムチタニルは、水で洗浄しても粒子中に取り込まれた塩素等の不純物を数百ppmレベルまで低減させ難い。また、Ba及びTiの溶出に起因して組成のバラツキが生じやすい。平均粒径が300μmを超える蓚酸バリウムチタニルは、以後の仮焼、粉砕工程において一次径への解砕が困難となり、粒径のバラツキが大きくなる傾向にある。なお、本発明において蓚酸バリウムチタニルの平均粒径とは、レーザー回折・散乱法粒度分布測定装置で測定した値をいう。
本発明では、前記範囲内の平均粒径の蓚酸バリウムチタニルが生成されるように、各反応条件を設定することが好ましい。具体的には、反応系に連続的又は断続的に供給するA液の添加時間を長くとったり、添加温度を高くしたりすることにより、生成する蓚酸バリウムチタニルの粒径を大きくすることができる。この観点から、B液は、予め通常50〜90℃、好ましくは50〜70℃となるまで加温しておくことが好ましい。また、A液のB液への添加時間を好ましくは0.5〜5時間、更に好ましくは1〜4時間とし、且つ一定速度で連続的に行うと、得られる蓚酸バリウムチタニルにおけるTiとBaのモル比のバラツキが小さくなり、安定した品質のものとなる。更に、後述する熟成反応を行うことにより、前記範囲の平均粒径で、高純度な蓚酸バリウムチタニルを短時間で得ることができる。なお、A液の温度は特に限定されないが、B液の加熱温度と同様の範囲内にあると、反応操作が容易となるので好ましい。
A液の添加終了後、引き続き反応を行う(以下、「熟成反応」と呼ぶ。)。この熟成反応を行うと、生成する蓚酸バリウムチタニルの粒成長が抑制されると共に反応が完結するので、前記範囲内の平均粒径を有し、TiとBaのモル比のバラツキが少ない所望の蓚酸バリウムチタニルを得ることができる。
熟成条件は、熟成温度が通常は50℃以上、好ましくは50〜90℃である。熟成温度とは、A液添加後における反応液全体の温度をいう。熟成時間は好ましくは0.5〜10時間、更に好ましくは1〜5時間である。
熟成終了後は、常法により固液分離し、次いで水で洗浄する。洗浄方法は特に制限されるものではない。リパルプ等で洗浄を行うと洗浄効率がよいので好ましい。次いで、乾燥、必要により粉砕して蓚酸バリウムチタニルを得る。
かくして得られる蓚酸バリウムチタニルの好ましい物性としては、平均粒径が20〜300μm、特に50〜200μmである。該蓚酸バリウムチタニルの組成は、BaとTiのモル比(Ba/Ti)が1未満、好ましくは0.990〜0.999である。
本発明の製造方法で得られる蓚酸バリウムチタニルは、誘電体セラミック材料のチタン酸バリウム系セラミックの製造原料として好適に用いることが出来る。本発明のチタン酸バリウムの製造方法は以下の通りである。
本発明のチタン酸バリウムの製造方法は、前述の方法で得られた蓚酸バリウムチタニルを仮焼することを特徴とするものである。本発明では、必要により、更に微粒なチタン酸バリウムを得ることを目的として、仮焼を行う前に、蓚酸バリウムチタニルをボールミル、ビーズミル等の湿式で粉砕処理し、平均粒径が好ましくは0.01〜1μm、更に好ましくは0.05〜0.8μmとなるまで粉砕処理を行ってもよい。湿式粉砕処理で用いる溶媒としては、蓚酸バリウムチタニルに対して不活性であるものが用いられる。例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、トルエン、キシレン、アセトン、塩化メチレン、酢酸エチル、ジメチルホルムアミド及びジエチルエーテル等が挙げられる。このうち、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、トルエン、キシレン、アセトン、塩化メチレン、酢酸エチル、ジメチルホルムアミド、ジエチルエーテル等の有機溶媒で、且つBa及びTiの溶出が少ないものを用いると、結晶性の高いペロブスカイト型チタン酸バリウムを得ることができるので好ましい。特にエタノールを用いると、結晶性の優れたチタン酸バリウムを、800〜950℃程度の低温域で安価に製造することができるので好ましい。
最終製品に含まれる蓚酸由来の有機物は、材料の誘電体特性を損なうとともに、セラミック化のための熱工程における挙動の不安定要因となるので好ましくない。従って、本発明では仮焼により蓚酸バリウムチタニルを熱分解して目的とするチタン酸バリウムを得ると共に、蓚酸由来の有機物を十分除去する必要がある。仮焼条件は、仮焼温度が好ましくは600〜1200℃、更に好ましくは800〜1100℃である。仮焼温度が600℃未満では、単一相のチタン酸バリウムが得られにくい。一方、仮焼温度が1200℃を超えると、粒径のバラツキが大きくなる。仮焼時間は好ましくは2〜30時間、更に好ましくは5〜20時間である。仮焼の雰囲気は特に制限されず、大気中又は不活性ガス雰囲気中の何れであってもよい。
仮焼は所望により何度行ってもよい。或いは、粉体特性を均一にする目的で、一度仮焼したものを粉砕し、次いで再仮焼を行ってもよい。
仮焼後、適宜冷却し、必要に応じ粉砕してチタン酸バリウムの粉末を得る。必要に応じて行われる粉砕は、仮焼して得られるチタン酸バリウムがもろくブロック状のものである場合等に適宜行うが、チタン酸バリウムの粒子自体は下記特定の平均粒径、BET比表面積を有するものである。即ち、前記で得られるチタン酸バリウムの粉末は、走査型電子顕微鏡写真(SEM)から求められる平均粒径が好ましくは0.05〜5μm、更に好ましくは0.1〜2μmである。BET比表面積は、好ましくは1〜20m2/g、更に好ましくは2〜15m2/gである。更に、本発明の製造方法で得られるチタン酸バリウムの組成は、BaとTiのモル比(Ba/Ti)が1未満、特に0.990〜0.999であることが好ましい。
本発明の製造方法で得られるチタン酸バリウムには、必要により誘電特性や温度特性を調製する目的で、副成分元素含有化合物を該チタン酸バリウムに添加し副成分元素を含有させることができる。用いることができる副成分元素含有化合物としては、例えば、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luの希土類元素、Ba、Li、Bi、Zn、Mn、Al、Si、Ca、Sr、Co、Ni、Cr、Fe、Mg、Ti、V、Nb、Mo、W及びSnからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素の化合物が挙げられる。
副成分元素含有化合物は無機物又は有機物のいずれであってもよい。例えば、前記の元素を含む酸化物、水酸化物、塩化物、硝酸塩、蓚酸塩、カルボン酸塩及びアルコキシド等が挙げられる。副成分元素含有化合物がSi元素を含有する化合物である場合は、前記酸化物等に加えて、シリカゾルや珪酸ナトリウム等も用いることができる。副成分元素含有化合物は1種又は2種以上適宜組み合わせて用いることができる。その添加量や添加化合物の組み合わせは、常法に従って行えばよい。
チタン酸バリウムに前記副成分元素を含有させるには、例えば、該チタン酸バリウムと該副成分元素含有化合物を均一混合後、焼成を行えばよい。或いは、蓚酸バリウムチタニルと前記副成分元素含有化合物を均一混合後、仮焼を行ってもよい。
本発明に従い得られたチタン酸バリウムを用いて例えば積層セラミックコンデンサを製造する場合には、先ず、チタン酸バリウムの粉末を、前記した副成分元素を含め従来公知の添加剤、有機系バインダ、可塑剤、分散剤等の配合剤と共に適当な溶媒中に混合分散させてスラリー化し、シート成形を行う。これにより、積層セラミックコンデンサの製造に用いられるセラミックシートを得る。該セラミックシートから積層セラミックコンデンサを作製するには、先ず、該セラミックシートの一面に内部電極形成用導電ペーストを印刷する。乾燥後、複数枚の前記セラミックシートを積層し、厚み方向に圧着することにより積層体とする。次に、この積層体を加熱処理して脱バインダ処理を行い、焼成して焼成体を得る。さらに、該焼成体にNiペースト、Agペースト、ニッケル合金ペースト、銅ペースト、銅合金ペースト等を塗布し焼き付けて、積層コンデンサが得られる。
また、本発明に従い得られたチタン酸バリウムの粉末を、例えばエポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂等の樹脂に配合して、樹脂シート、樹脂フィルム、接着剤等とすると、プリント配線板や多層プリント配線板等の材料、内部電極と誘電体層との収縮差を抑制するための共材、電極セラミック回路基板、ガラスセラミックス回路基板、回路周辺材料及び無機EL用の誘電体材料として用いることができる。
また、本発明に従い得られたチタン酸バリウムは、排ガス除去、化学合成等の反応時に使用される触媒や、帯電防止、クリーニング効果を付与する印刷トナーの表面改質材として好適に用いることができる。
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〜3及び比較例1〜2:蓚酸バリウムチタニルの製造〕
塩化バリウム2水塩、四塩化チタン水溶液、蓚酸2水塩、蓚酸アンモニウム1水塩及び純水を用いて、表1に示す組成のA液及びB液を調製した。次いで、B液を60℃に加温し、A液を室温(25℃)で120分かけて攪拌下にB液に添加した。添加量は表1に示す通りである。添加完了後の反応液におけるTi、Ba、蓚酸イオン、アンモニウムイオンのモル比は表2に示す通りである。添加完了後、更に60℃で1時間攪拌下に熟成した。冷却後、濾過して蓚酸バリウムチタニルを回収した。
Figure 0004638766
Figure 0004638766
次いで、回収した蓚酸バリウムチタニルを純水でリパルプして入念に洗浄した。その後105℃で2時間乾燥して蓚酸バリウムチタニルの粉末を得た。得られた蓚酸バリウムチタニルの諸物性を表3に示す。BaとTiのモル比は蛍光X線で測定した。平均粒径は、レーザー回折・散乱法粒度分布測定装置で測定した。塩素含有量はイオンクロマトグラフィー法で測定した。また、BaとTiの反応率を求め、その結果を表3に併記した。反応率とは、反応終了時に溶出しているBaとTiをICPで測定し、その溶出分を未反応分とし、仕込量からその未反応分を差し引いたものを反応分とし、仕込みの百分率として表わしたものである。この反応率が高い方が未反応で残存するBa及びTiの成分が少なく反応効率及び収率が高いことを示す。
Figure 0004638766
表3の結果より、本発明の製造方法によれば、特に誘電体材料として有用な範囲のBa/Tiモル比を有する蓚酸バリウムチタニルが高反応率及び高収率で得られることが分かる。これに対して、比較例1では蓚酸バリウムチタニルにおけるBa/Tiモル比が1となってしまった。比較例2では、蓚酸バリウムチタニルにおけるBa/Tiモル比は1未満であるが、高反応率及び高収率を達成できなかった。
〔実施例4〜6及び比較例3:チタン酸バリウムの製造〕
実施例1〜3及び比較例1で得られた蓚酸バリウムチタニル試料の5gを、大気中、800℃で5時間又は1000℃で5時間仮焼した。冷却後、解砕してそれぞれチタン酸バリウムの粉末を得た。得られたチタン酸バリウムの諸物性を表4に示した。BaとTiのモル比、平均粒径は前記と同様な方法で求めた。比表面積はBET法で求めた。
Figure 0004638766
表4の結果より、Ba/Tiモル比が1の蓚酸バリウムチタニル(比較例1)を原料とするチタン酸バリウム(比較例3)は、仮焼温度に対する比表面積変化が大きくなっていることが分かる。これに対して本発明の蓚酸バリウムチタニル(実施例1〜3)を原料とするチタン酸バリウム(実施例4〜6)は、仮焼温度に対する比表面積変化が低く抑えられていることが分かる。

Claims (5)

  1. 四塩化チタン及び塩化バリウムを含む水溶液(A液)を、少なくとも蓚酸イオン及びアンモニウムイオンを含む水溶液(B液)に添加し反応を行うことを特徴とする蓚酸バリウムチタニルの製造方法。
  2. 前記B液のアンモニウムイオンの含有量は、蓚酸イオンに対するモル比で0より大きく5以下である請求項1記載の蓚酸バリウムチタニルの製造方法。
  3. 前記B液は蓚酸と、蓚酸アンモニウム又は蓚酸水素アンモニウムから調製された水溶液である請求項1又は2記載の蓚酸バリウムチタニルの製造方法。
  4. 反応により生成する蓚酸バリウムチタニル粒子の平均粒径が20〜300μmの範囲となるまで反応を行う請求項1乃至3の何れかに記載の蓚酸バリウムチタニルの製造方法。
  5. 四塩化チタン及び塩化バリウムを含む水溶液(A液)を、少なくとも蓚酸イオン及びアンモニウムイオンを含む水溶液(B液)に添加し反応を行い蓚酸バリウムチタニルを生成させ、生成した蓚酸バリウムチタニルを仮焼することを特徴とするチタン酸バリウムの製造方法。
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