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JP4635399B2 - セルロースエステルフィルムの製造方法 - Google Patents

セルロースエステルフィルムの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、セルロースエステルをベースとするドープを、周回するエンドレスベルト状またはドラム状の金属支持体上にダイから流延する溶液流延法製膜法によるセルロースエステルフィルムの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶画像表示装置は、低電圧かつ低消費電力でIC回路への直結が可能であり、しかも薄型化が可能であるから、ワードプロセッサーやパーソナルコンピュータ等の表示装置として広く使用されている。液晶画像表示装置の基本的な構成は、液晶セルの両側に偏光板を設けたものである。偏光板は、一定方向の偏波面の光だけを通すので、液晶画像表示装置においては、電界による液晶表示装置の配向の変化を可視化させる重要な役割を担っており、偏光板の性能によって液晶画像表示装置の性能が大きく左右される。
【0003】
偏光板の保護フィルムはセルロースエステルからなり、表面をアルカリ鹸化して一軸延伸されかつヨウ素染色されたポリビニルアルコールフィルムからなる偏光膜の片面または両面に、ポリビニルアルコールのような粘着剤を介して貼り合わされる。
【0004】
一般に、セルロースエステルフィルムは、つぎのような溶液流延製膜法により製造される。まず、セルロースエステルをこれを溶解する良溶媒および溶解しない貧溶媒の混合溶媒に溶解し、これに紫外線吸収剤や可塑剤、さらにフィルムの滑り性改善用の微粒子を添加してセルローストリアセテート溶液(以下「ドープ」という)を調製し、鏡面処理された表面を有する周回ステンレス製エンドレス支持体上に該ドープをダイから流延してドープ膜(このように、ドープを支持体に流延して形成した膜を、以下「ウェブ」という)を得、これを支持体上で乾燥させた後これから剥離し、乾燥工程へ送ってさらに温風で乾燥し、得られたセルロースエステルフィルムを最終工程で巻取り機によってロール状に巻取る。
【0005】
近年、液晶画像表示装置は、その用途拡大、軽量化(薄小化)が進む傾向にあり、偏光板に使用せられるセルロースエステルフィルムもより薄手のフィルムが必要とされてきている。従来の偏光板用保護フィルムは、主に厚さ80μm程度のものであったが、徐々に薄膜化が進行している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このようにフィルム厚が薄くなってくるとフィルムの物理的強度が低下し、そのためフィルムの寸法変化が生じやすく、偏光板としての外観を損ねることが多々ある。
【0007】
従来、このような問題は、フィルムに含有させる可塑剤の種類や量の選択、フィルムの透湿量の最適化、フィルム屈折率の規定など、フィルム自体を改善する方法や、乾燥温度条件などの生産条件の最適化により改善する方法が検討された。しかし、このようなやり方では、特に薄膜品では効果が不充分であり、更なる改善が必要であった。また、得られたフィルムを放置すると、しわ、折れ、ゆがみが生じ、外観が著しく損なわれる場合があり、特に薄膜フィルムを用いた偏光板では寸法安定性の改善が求められていた。
【0008】
本発明の課題は、上記の点に鑑み、フィルム厚が薄くても、しわや折れ、ゆがみが生じることのないセルロースエステルフィルムを提供し、寸法安定性に優れた偏光板を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決すべく検討を重ねた結果、偏光板の寸法安定性は、ポリビニルアルコールフィルムからなる偏光膜の寸法安定性と、これを保護するセルロースエステルフィルムからなる保護フィルムの寸法安定性との関係に大きく関わること、およびセルロースエステルフィルムの寸法変化率と弾性率に左右されることが判った。
【0010】
特にポリビニルアルコールフィルムの寸法変化に対して、セルロースエステルフィルムを寸法変化させる力と、セルロースエステルフィルムの弾性率(寸法変化を抑えようとする力)とのバランスにより、最終的な偏光板としての寸法変化が支配されることが判った。
【0011】
本発明者は、また、セルロースエステルフィルムは製造時の乾燥工程において、乾燥初期段階に(すなわち溶媒残留率が高くてフィルムが柔らかい状態の時に)機械方向、および機械方向に対して垂直な方向、すなわち横方向に大きな張力をかけることによって、弾性率が高く、寸法変化率が小さくなることを見出した。
【0012】
本発明は、このような知見に基づいて完成されたものである。
【0013】
すなわち、本発明は、セルロースエステルを含むドープを回動する支持体上に流延し、得られたウェブを支持体から剥離し、次いで乾燥し、厚さ20〜60μmのセルロースエステルフィルムを作成するに当たり、ウェブ中の溶媒残留率を100%から10%に低減させる乾燥初期段階において、その所要時間を60秒以下(好ましくは30秒以上)とし、機械方向のフィルム張力を、溶媒残留率を10%より更に低減させる乾燥後期段階における機械方向のフィルム張力よりも大きくすることを特徴とするセルロースエステルフィルムの製造方法である。
【0014】
【発明の実施の形態】
まず、本発明によるセルロースエステルフィルムの製造方法に使用する原料について、説明をする。
【0015】
ドープのベースをなすセルロースエステルは、リンターパルプ、ウッドパルプおよびケナフパルプの群から選ばれ、セルロースに無水酢酸、無水プロピオン酸または無水酪酸を常法により反応して得られるものであってよい。なかでもセルロースの水酸基に対する全アシル基の置換度が2.5〜3.0であるセルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートおよびセルロースアセテートプロピオネートブチレートが好ましい。上記セルロースエステルのアセチル基の置換度は、少なくとも1.5であることが好ましい。セルロースエステルのアシル基の置換度の測定は、ASTMのD−817−91に準じて実施することができる。セルロースエステルの分子量は、数平均分子量として70,000〜300,000、とくに80,000〜200,000が、フィルムに成形した場合の機械的強度上好ましい。通常、セルロースエステルは反応後の水洗等処理後においてフレーク状であり、その形状で使用されるが、粒径を0.05〜2.0mmの粒状とすることにより溶媒への溶解を早めることができる。
【0016】
セルロースエステルフィルム中には、通常、紫外線吸収剤が含まれる。紫外線吸収剤としては、液晶の劣化防止の点から波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な液晶表示性の点から波長400nm以上の可視光の吸収が可及的に少ないものが好ましい。波長370nmでの透過率は好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下、さらに好ましくは2%以下に抑えられる。上記紫外線吸収剤の具体例としては、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等が挙げられ、着色の少ないベンゾトリアゾール系化合物が特に好ましい。市販のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の例は、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製のチヌビン109、チヌビン171、チヌビン326、チヌビン327、チヌビン328等がある。紫外線吸収剤は2種以上用いてもよい。紫外線吸収剤のドープへの添加方法は、アルコール、メチレンクロライド、酢酸メチル、ジオキソランなどの有機溶媒に紫外線吸収剤を溶解してから添加しても、直接ドープ組成中に添加してもよい。無機粉体のように有機溶剤に溶解しないものは、有機溶剤とセルロースエステルの混合物中にディゾルバーやサンドミルでこれを分散し、この分散液をドープに添加する。紫外線吸収剤の使用量は、セルロースエステルに対し0.5〜20質量%であってよく、好ましくは0.6〜5.0質量%、より好ましくは0.6〜2.0質量%である。
【0017】
セルロースエステルフィルム中には、滑り性ないしは耐ブロッキング性や耐傷性の改善のためにマット剤その他の微粒子が含まれる。このような微粒子の具体例としては、例えば、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム等の無機微粒子や架橋高分子微粒子が挙げられる。なかでも二酸化ケイ素はフィルムのヘイズを小さくできるので好ましい。微粒子の2次粒子の平均粒径は好ましくは0.01〜1.0μmで、その含有量はセルロースエステルに対して好ましくは0.005〜0.3質量%である。二酸化ケイ素のような微粒子は有機物により表面処理されている場合が多いが、このようなものはフィルムのヘイズを低下できるため好ましい。表面処理用の有機物としては、ハロシラン類、アルコキシシラン類、シラザン、シロキサンなどが挙げられる。微粒子の平均粒径は、大きい方がマット効果は大きく、反対に平均粒径の小さい方は透明性に優れる。微粒子の一次粒子の平均粒径は好ましくは5〜50nm、より好ましくは7〜14nmである。微粒子は、セルロースエステルフィルム中で通常凝集体として存在し、セルロースエステルフィルム表面に好ましくは0.01〜1.0μmの凹凸を生成させる。市販の二酸化ケイ素の微粒子の例は、アエロジル(株)製のAEROSIL 200、200V、300、R972、R972V、R974、R202、R812,OX50、TT600等であり、とくにAEROSIL 200V、R972、R972V、R974、R202、R812が好ましい。マット剤は2種以上併用してもよい。
【0018】
セルロースエステルフィルム中には、フタル酸エステル、リン酸エステルなどの可塑剤が含まれる。リン酸エステル系可塑剤としては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等、フタル酸エステル系としては、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート等、グリコール酸エステル系としては、トリアセチン、トリブチリン、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等が挙げられる。フタル酸エステル系やグリコール酸エステル系の可塑剤がとくに好ましい。2種類以上の可塑剤を併用してもよい。
【0019】
つぎに上記原料を含むドープの調製方法について述べる。セルロースエステルに対する良溶媒を主とする有機溶媒に溶解釜中でフレーク状のセルロースエステルを攪拌しながら溶解してドープを形成する。溶解方法としては、常圧で行う方法、主溶媒の沸点以下の加熱下で行う方法、主溶媒の沸点以上で加熱加圧して行う方法、特開平9−95544号、特開平9−95557号および特開平9−95538号の各公報に開示されているような冷却溶解法で行う方法、特開平11−21379号公報開示されているような高圧で行う方法等がある。溶解後ドープを濾材で濾過し、脱泡してポンプで次工程に送る。ドープ中のセルロースエステルの濃度は好ましくは10〜40質量%、より好ましくは15〜30質量%である。上述した添加剤のうち有機ポリマーをドープ中に含ませるには、予め有機溶媒に該ポリマーを溶解してから添加してもよいし、ドープに直接添加してもよい。この場合、ポリマーがドープ中で白濁したり、相分離したりしないようにする。
【0020】
ドープの調製に使用する有機溶媒としては、セルロースエステルの良溶剤と貧溶剤の混合物が生産効率の点で好ましい。良溶剤と貧溶剤の混合比率の好ましい範囲は良溶剤70〜98質量%、貧溶剤2〜30質量%である。良溶剤とは、使用するセルロースエステルを単独で溶解するものをいい、貧溶剤とは、単独では溶解しないものをいう。セルロースエステルに対する良溶媒としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、ギ酸エチル、アセトン、シクロヘキサノン、アセト酢酸メチル、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、塩化メチレン、ブロモプロパン等が挙げられる。なかでも酢酸メチル、アセトンまたは塩化メチレンが好ましいが、最近の環境問題から非塩素系の有機溶媒の方が好ましい。また、上記有機溶媒に、メタノール、エタノール、ブタノール等の低級アルコールを併用すると、セルロースエステルの有機溶媒への溶解性が向上したり、ドープ粘度が低減できるので好ましく、なかでも沸点が低く、毒性の少ないエタノールがとくに好ましい。貧溶剤としては、メタノール、エタノール、n−ブタノール、シクロヘキサン、アセトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。
【0021】
つぎに、セルロースエステルフィルムの製造工程のうち、ドープを周回金属製エンドレス支持体上に流延する工程、エンドレス支持体上での乾燥工程およびウェブをエンドレス支持体から剥離する剥離工程およびウェブを乾燥する工程について述べる。
【0022】
流延工程とは、ドープを加圧型定量ギヤポンプを通して加圧ダイに送液し、流延位置において、エンドレス支持体上に加圧ダイからドープを流延する工程である。その他の流延する方法としては、流延されたウェブの膜厚をブレードで調節するドクターブレード法および逆回転するロールで調節するリバースロールコーターによる方法等があるが、口金部分のスリット形状を調整できて膜厚を均一にし易い点で加圧ダイが好ましい。加圧ダイには、コートハンガーダイやTダイがあるが、いずれも好ましく用いられる。製膜速度を上げるためには、加圧ダイをエンドレス支持体上に2基以上設け、ドープ量を分割して重層してもよい。膜厚の調節には、所望の厚さになるように、ドープ濃度、ポンプの送液量、ダイの口金のスリット間隙、ダイの押し出し圧力およびエンドレス支持体の速度等をコントロールするのがよい。
【0023】
エンドレス支持体上での乾燥工程では、ウェブをエンドレス支持体上で加熱し、溶媒を蒸発させる。溶媒を蒸発させるには、ウェブ側およびエンドレス支持体の裏側から温風を送る方法、エンドレス支持体の裏側から加熱液体により加熱する方法、輻射熱によりウェブ側からとエンドレス支持体の裏側から加熱する方法、これらを組み合わせる方法等がある。
【0024】
剥離工程では、エンドレス支持体上で有機溶媒を蒸発させ、エンドレス支持体が一周する前に、剥離を助ける剥離ロールでウェブを剥離する。この工程の後、ウェブは乾燥工程に送られる。エンドレス支持体からウェブを剥離する剥離点でのウェブの残留溶媒量(下記式)があまり大き過ぎると剥離し難かったり、逆にエンドレス支持体上で充分に乾燥させてから剥離すると、途中でウェブの一部が剥がれたりすることがあるので、残留溶媒量10〜150質量%でウェブを剥離する。残留溶媒量が多い時点で剥離する場合、ウェブが柔らか過ぎると剥離時平面性を損なったり、剥離張力による縦すじが発生し易いので、経済速度と品質との兼ね合いで残留溶媒量が決められる。
【0025】
残留溶媒量は、下記の式で表せる。
【0026】
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
ここで、Mはウェブの任意時点での質量、NはMのものを110℃で3時間乾燥させたときの質量である。
【0027】
本発明では、溶液流延製膜法により厚さ20〜60μmのセルロースエステルフィルムを作成するに当たり、ウェブ中の溶媒残留率を100%から10%に低減させる乾燥初期段階において、その所要時間を60秒以下とし、機械方向のフィルム張力を、溶媒残留率を10%より更に低減させる乾燥後期段階における機械方向のフィルム張力よりも大きくする。
【0028】
なお、溶液流延製膜法により厚さ20〜60μmのセルロースエステルフィルムを作成するに当たり、ウェブ中の溶媒残留率を20〜10%から10〜5%に低減させる乾燥段階において、その所要時間を30秒以下とし、この時間内にフィルムを横方向に延伸する。ここで、延伸倍率は延伸工程の初期段階で最大とし、後期段階で最小とすることが好ましい。
【0029】
乾燥後、得られたセルロースエステルフィルムは最終工程で巻取り機によってロール状に巻取られる。
【0030】
本発明の方法により得られたセルロースエステルフィルムは、光学等方性に優れて汚れもないので、液晶表示装置の部材、例えば、偏光板用保護フィルム、位相差板、反射板、光学補償フィルム、視野角向上フィルム、防眩フィルム、無反射フィルムおよび帯電防止フィルムに使用せられる。なかでも偏光板用保護フィルムに適している。
【0031】
偏光板は、従来公知の方法により製造することができる。一例を挙げると、セルロースエステルフィルムを水酸化ナトリウム水溶液で表面鹸化処理し、水洗して乾燥させて表面鹸化した偏光板用保護フィルムを得る。別にポリビニルアルコールフィルムをヨウ素とホウ酸を含む水溶液に浸漬し、延伸して偏光膜を得る。この偏光膜の片面または両面に上記保護フィルムを完全鹸化型のポリビニルアルコール水溶液よりなる粘着剤により貼り合わせて偏光板となす。
【0032】
このようにして得られる偏光板において、偏光膜の下記定義の寸法変化率をaとし、保護フィルムの下記定義の寸法変化率をbとする時、b/a≦0.20、好ましくはb/a≦0.05なる関係が成立し、かつセルロースエステルフィルムの厚さが20〜60μmで、セルロースエステルフィルムの弾性率が3000Mpa以上であることが好ましい。
寸法変化率:110℃で3時間加熱したフィルムの加熱前後のフィルム寸法の変化率(%)
つぎに、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。
【0033】
実施例1
下記の成分;
アセチル置換度2.88のセルローストリアセテート
(数平均分子量150,000) 100質量部
可塑剤
トリフェニルホスフェート 10質量部
溶媒
メチレンクロライド 521質量部
エタノール 45質量部
を密閉容器に入れ、撹拌しながら溶解してドープを調製した。このドープを、鏡面処理された表面を有する周回ステンレス製エンドレス支持体上に、所定スリット幅に設定されたダイから流延してドープ膜を得、これを支持体上で乾燥させた後これから剥離し、乾燥工程へ送ってさらに温風で乾燥させた。
【0034】
この乾燥工程において、ウェブ中の溶媒残留率を100%から10%に低減させる乾燥初期段階において、その所要時間を50秒とし、機械方向のフィルム張力を200Nとし、溶媒残留率を10%より更に低減させる乾燥後期段階における機械方向のフィルム張力を130Nとした。乾燥工程全体におけるフィルムの横方向の延伸は103%行った。
【0035】
乾燥後、得られたセルロースエステルフィルムを最終工程で巻取り機によってロール状に巻取った。こうして、機械方向の弾性率3150Mpa、横方向の弾性率3050Mpa、厚さ40μmのセルロースエステルフィルムを得た。
【0036】
このセルロースエステルフィルムを40℃の2.5mol/lの水酸化ナトリウム水溶液で60秒間表面鹸化処理し、3分間水洗して乾燥させて表面鹸化した偏光板用保護フィルムを得た。
【0037】
別に120μmの厚さのポリビニルアルコールフィルムをヨウ素1質量部、ホウ酸4質量部を含む水溶液100質量部に浸漬し、50℃で4倍に縦方向に延伸して偏光膜を得た。
【0038】
この偏光膜の片面に上記保護フィルムを完全鹸化型のポリビニルアルコール5質量%水溶液よりなる粘着剤により貼り合わせて偏光板を得た。
【0039】
ポリビニルアルコールフィルムからなる偏光膜の寸法変化率(a)は、機械方向に3.00%、横方向に1.00%であった。保護フィルムの寸法変化率(b)は、機械方向に0.14%、横方向に0.04%であった。したがって、b/aの比は、機械方向に0.047、横方向に0.040であった。得られた偏光板の寸法変化率は、機械方向に0.40%、横方向に0.15%であった。
【0040】
実施例2〜3、比較例1〜2
乾燥初期段階における機械方向のフィルム張力、乾燥後期段階における機械方向のフィルム張力を表1に示すように変更した以外、実施例1と同様の操作を行い、セルロースエステルフィルムを得、これを用いて実施例1と同様の操作によって偏光板を得た。測定したセルロースエステルフィルムの弾性率および寸法変化率、寸法変化率の比、乾燥初期時間、および偏光板の寸法変化率をそれぞれ表1に示す。
【0041】
参考例1
実施例1と同じフィルム材料成分を密閉容器に入れ、撹拌しながら溶解してドープを調製した。このドープを、鏡面処理された表面を有する周回ステンレス製エンドレス支持体上に、所定スリット幅に設定されたダイから流延してドープ膜を得、これを支持体上で乾燥させた後これから剥離し、乾燥工程へ送ってさらに温風で乾燥させた。
【0042】
この乾燥工程において、ウェブ中の溶媒残留率を20〜10%から10〜5%に低減させる乾燥段階において、その所要時間を24秒とし、この時間内にフィルムを横方向に延伸した。延伸倍率は延伸工程の初期段階で最大(105%)とし、後期段階で最小(102%)とした。
こうして、機械方向および横方向の弾性率が共に3150Mpa、厚さ40μmのセルロースエステルフィルムのロールを得た。
【0043】
このセルロースエステルフィルムを保護フィルムとして用い、これを実施例1のものと同じ偏光膜に貼合せ、偏光板を得た。
【0044】
ポリビニルアルコールフィルムからなる偏光膜の寸法変化率(a)は、機械方向に3.00%、横方向に1.00%であった。保護フィルムの寸法変化率(b)は、機械方向に0.14%、横方向に0.04%であった。したがって、b/aの比は、機械方向に0.047、横方向に0.040であった。得られた偏光板の寸法変化率は、機械方向に0.43%、横方向に0.15%であった。
【0045】
参考例2〜3、比較参考例1〜2
延伸初期段階における延伸倍率、延伸後期段階における延伸倍率を表2に示すように変更した以外、参考例1と同様の操作を行い、セルロースエステルフィルムを得、これを用いて実施例1と同様の操作によって偏光板を得た。測定したセルロースエステルフィルムの弾性率および寸法変化率、寸法変化率の比、乾燥段階の時間、および偏光板の寸法変化率をそれぞれ表2に示す。
【0046】
実施例、比較例、参考例、および比較参考例の結果を表1および表2にまとめて示す。
【0047】
【表1】
Figure 0004635399
【表2】
Figure 0004635399
表1および表2中、MDは機械方向、TDは機械方向に垂直な方向すなわち横方向、寸法変化率は110℃で3時間加熱したフィルムの加熱前後のフィルム寸法の変化率(%)をそれぞれ意味する。
【0048】
フィルム張力の測定は生産工程における条件設定により行い、その設定値が実測値と等しいものとした。
【0049】
弾性率の測定はJIS K 7127の方法に従って行った。
【0050】
【発明の効果】
本発明のセルロースエステルフィルムの製造方法によれば、ウェブ中の溶媒残留率を100%から10%に低減させる乾燥初期段階において、その所要時間を60秒以下とし、機械方向のフィルム張力を、溶媒残留率を10%より更に低減させる乾燥後期段階における機械方向のフィルム張力よりも大きくすることによって、弾性率が高く、寸法変化率が小さくなり、フィルム厚が薄くても、しわや折れ、ゆがみが生じることのないセルロースエステルフィルムを提供し、寸法安定性に優れた偏光板を提供することができる。

Claims (1)

  1. セルロースエステルを含むドープを回動する支持体上に流延し、得られたウェブを支持体から剥離し、次いで乾燥し、厚さ20〜60μmのセルロースエステルフィルムを作成するに当たり、ウェブ中の溶媒残留率を100%から10%に低減させる乾燥初期段階において、その所要時間を60秒以下とし、機械方向のフィルム張力を、溶媒残留率を10%より更に低減させる乾燥後期段階における機械方向のフィルム張力よりも大きくすることを特徴とするセルロースエステルフィルムの製造方法。
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