JP4625115B2 - ランプ用ガラス組成物、ランプ用ガラス部品、ランプ及び照明装置 - Google Patents
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Description
電気絶縁性の高いガラスとして、従来はPbO(酸化鉛)を多量に含有するいわゆる鉛ガラスが多用されていた。ところが、鉛ガラスは、有害物質である鉛成分を含有していることから近年公的規制の対象となったため、鉛ガラスと同程度の電気絶縁性を有するガラスとして、電気絶縁性を高める機能を有するSrO(酸化ストロンチウム)を多量に添加したガラスが数多く提案されている(特許文献1)。さらに、SrOを多量に添加すると結晶が生じてガラスが失透することが分かってきたため、ガラスの失透を抑えるためにSrOの含有率を2.5wt%以下にしたガラスも提案されている(特許文献2)。
本発明は、上記の課題に鑑み、鉛成分を含有せず、照明用途に適した電気絶縁性を有し、かつ、失透がより起こりにくいランプ用ガラス組成物を提供することを主たる目的とする。本発明の他の目的は、そのようなガラス組成物を用いたランプ用ガラス部品、ランプ及び照明装置を提供することにある。
なお、本願で記載した数値範囲は下限値及び上限値を含む。例えば、数値範囲が65〜75wt%である場合は、その数値範囲に65wt%と75wt%とが含まれる。
Al2O3は、添加するとアルカリ溶出を抑制する成分であり、かつ、ガラスの網目構造を形成する成分であるため添加すると加工性が低下する成分でもある。その含有率は1〜5wt%の範囲内である。Al2O3の含有率が1wt%よりも低いと、アルカリ溶出を抑制する効果が十分に発揮されず、当該含有率が5wt%より高いと、ガラスに脈理不良を生じたり、ガラスの高温時の粘度が高くなって当該ガラスの加工性が低下したりする。ガラスバルブ用のガラスとしては、1〜3wt%の範囲内が好ましい。
Li2Oの含有率は、0.5〜5wt%の範囲内である。Li2Oの含有率が0.5wt%よりも低いと、前記混合アルカリ効果が得られずにアルカリ溶出量が多くなり、5wt%よりも高いと、ガラスの耐水性が悪くなり、アルカリ溶出量が多くなるだけでなく、比較的高価な原料であることからコストが嵩む。ガラスバルブ用のガラスとしては、1〜3wt%の範囲内が好ましい。
BaOの含有率は、7.1〜12wt%の範囲内である。上述したようにBaOはMgO、CaO及びSrOとともにガラスの電気絶縁性に影響を与えるものであるが、MgO、CaO及びSrOの含有率をガラスの化学的耐久性や失透性などの影響を鑑み一定以下に抑えており、これらの含有率との関係でBaOの含有率が7.1wt%よりも低いと、ガラスの電気絶縁性の確保が難しくなる。一方、その含有率が12wt%よりも高いとガラス溶融時の失透性傾向が強まるためランプ用として適さない。ガラスバルブ用のガラスとしては、7.1〜10wt%の範囲内が好ましい。
なお、ガラスに紫外線吸収機能を付加するために、CeO2、TiO2、SnOやSnO2などの紫外線吸収剤を、それぞれ1wt%を上限として加えても本発明に係るガラス組成物の特性は損なわれない。また、清澄剤として、Sb2O3、SO3、C、FやClなどを、それぞれ1wt%を上限として加えても本発明に係るガラス組成物の特性は損なわれない。また、Fe2O3などに代表される不純物が0.5wt%まで混入しても本発明に係るガラス組成物の特性は損なわれない。
アルカリ土類金属酸化物は前述したようにガラス中のSiO2の結合を切断するが、このことでガラスの網目が広がることになる。これは移動度の高いアルカリ金属、特にナトリウムの移動する経路が広く確保されることにつながる。しかしながら、アルカリ土類金属として、ナトリウムと原子半径がほぼ等しいマグネシウムや、ナトリウムよりは原子半径が大きいがアルカリ土類金属の中では比較的原子半径の小さいカルシウムが添加された場合の網目構造の広がりは、それらよりも原子半径の大きいバリウムやストロンチウムが添加される場合の広がりと比べて小さい。そのため、アルカリ土類金属酸化物として、MgOやCaOの重量比が大きいほどガラスのアルカリ溶出を抑えることができるといえる。
これらのバランスでアルカリ溶出の優れた範囲が決まることになる。そして、発明者は、0.76≦(MgO+CaO)/(SrO+BaO)≦1.19の範囲で十分な効果があることを見出した。
アルカリ金属酸化物すなわちLi2O、Na2O及びK2Oの総和が多いと作業点温度が低下する傾向にある。アルカリ金属酸化物の総和が15.8wt%以上の参考例4,5は作業点温度が1000℃を下回った。
さらに、アルカリ土類金属酸化物の中でも原子半径の大きいSrOとBaOの重量比が大きいものは作業点温度が低下する傾向にある。重量比で、0.76≧(MgO+CaO)/(SrO+BaO)の関係を満たす参考例6,9は作業点温度が1000℃を下回った。
本発明に係るガラス組成物の一態様では、軟化点温度が650〜720℃の範囲にあることを特徴とする。
本発明に係るランプ用ガラス部品は、上記ガラス組成物で形成されたことを特徴とする。
本発明に係るランプは、上記ランプ用ガラス部品を備えることを特徴とする。
本発明に係るランプ用ガラス部品は、上記ランプ用ガラス組成物で形成されているため、ガラスが失透しにくいことから歩留まり良く製造でき、また、電気絶縁性が確保されていることからランプ用として好適である。
本発明に係る照明装置は、上記ランプを備えているため、従来の照明装置よりも安価であり、また従来のランプと同程度の光束維持率を有する。
[ガラス組成物]
まず、本実施の形態に係るガラス組成物について説明する。図1は、本実施の形態に係るガラス組成物の組成及び特性を示す図である。本実施の形態に係るガラス組成物は、図1に示す実施例1,2および参考例1〜9の組成を有する。
各ガラス組成物の特性(アルカリ溶出量、膨張係数、軟化点温度、作業点温度、及び、失透性)は、それぞれ以下のような方法で評価した。
1.アルカリ溶出量
アルカリ溶出量を測定する方法としては、一般に、JISに基づく化学分析用ガラス器具の試験方法(日本工業規格JIS R 3502)が挙げられる。この方法を簡単に説明すると、まず、乳鉢などを用いてガラス試料を粉末状(粒径250〜420μm)に粉砕しガラス粉砕物を得て、次に、そのガラス粉砕物をエチルアルコールで洗浄してガラス粉砕物からガラス微粉末を取り除き、次に、洗浄後のガラス粉砕物を沸騰水浴中で60分間加熱して当該ガラス粉砕物からアルカリを溶出させてアルカリ溶出液を得る。その後、そのアルカリ溶出液を硫酸で中和滴定し、得られた滴定値からアルカリ溶出量を換算する。
図2は、本発明に係るアルカリ溶出量の測定方法を説明するための図である。図2を用いて本発明に係る測定方法の具体的な手順を説明する。
次に、図2に示すように、水槽1内に70〜80℃の蒸留水2を100ml溜めて、当該蒸留水2中に含湿処理を終えたガラス試料3を1時間浸漬させる。本発明に係る測定方法では、70〜80℃という比較的低温度の蒸留水2中でアルカリを溶出させるため、沸騰させた蒸留水中でアルカリを強制的に溶出させるJISに基づく試験方法よりも、より実際のガラスの使用形態に即したアルカリ溶出量を測定することができる。
好ましくは約5000mm2になるように調整し浸漬させる。例えば、約15×15×2
.5mmの直方体形状にカットしたガラス試料3を8個浸漬させる。
その後、蒸留水2からガラス試料3を取り除きアルカリ溶出液を得る。そして、当該アルカリ溶出液を25℃に安定させ、市販のハンディタイプのセンサー式液体浸漬形導電率測定機4(商品名:ツインコンド B−173)を用いて導電率を測定する。
本発明に係る測定方法は、ブロック状のガラス試料を用いるため、蒸留水に浸漬させるガラスの表面積の総和を制御し易い。したがって、JISによる試験方法よりも高い精度でアルカリ溶出量を測定することができる。また、本発明に係る測定方法は導電率によってアルカリ溶出量を測定するため、アルカリ溶出量が多くなっても測定精度が落ちるようなことはない。
膨張係数、軟化点温度及び作業点温度の測定は、次のような手順で作製したサンプルを用いて測定した。まず、ガラス原料としての化学試薬を所定の組成となるよう調合する。次に、調合物100gを白金るつぼに入れ電気炉で1500℃、3時間加熱し溶融させる。その後、ガラス化した溶融ガラスを金型に流し込んで成形し、さらに12時間かけて徐々に冷却(アニール)して歪をとる。このようにして得られたガラス塊を切削機等で所定の形状に加工しサンプルとして用いた。
ガラスバルブにリード線を気密封着するためには、ガラスバルブとリード線の熱膨張係数が近似していることが好ましい。リード線の封止部分(外部リード線)に用いられるジュメット線は熱膨張係数が94×10−7K−1であるため、ガラスの膨張係数は90〜100×10−7K−1の範囲であることが好ましい。
溶融しガラス化させた際にガラスに結晶が生じ失透するかどうかを目視で確認し、○:失透しない、×:失透するとの評価を行った。
<数値範囲の臨界的意義>
本発明に係るガラス組成物は、図1における実施例1,2および参考例1〜9に示す組成に限定されないが、ランプ用としての特性を保つためには、実質的に、酸化物換算で、SiO2:65〜75wt%、Al2O3:1〜5wt%、Li2O:0.5〜5wt%、Na2O:5〜12wt%、K2O:3〜7wt%、Li2O+Na2O+K2O:12〜18wt%、MgO:2.1〜7wt%、CaO:2〜7wt%、SrO:0〜0.9wt%、BaO:7.1〜12wt%を含有し、実質的にPbOを含有しないことが好ましい。また、重量比で、0.76≦(MgO+CaO)/(SrO+BaO)≦1.19、の関係を満たすことがより好ましい。さらに、酸化物換算で、Li2O、Na2O及びK2Oの総和が15.8wt%未満、かつ、MgO、CaO、SrO及びBaOの総和が15.6wt%未満であって、重量比で、0.76<(MgO+CaO)/(SrO+BaO)、の関係を満たすことがより好ましい。それらの理由を比較例と対比しながら以下に説明する。
実施例1,2および参考例1〜9と比較例1とを比較すると、失透が抑えられるSrOの含有率が分かる。SrOの含有率がいずれも0.9wt%以下である実施例1,2および参考例1〜9は、失透性の評価が○である。一方、SrOの含有率が0.9wt%を超えている(1.1wt%)比較例1は、失透性の評価が×である。このことから、失透を防止するためには、SrOの含有率を0.9wt%以下に限定しなければならないことが分かる。
次に、本実施の形態に係るランプ及びランプ用ガラス部品について説明する。
<第1の実施形態>
図5は、第1の実施形態に係る環状型蛍光ランプを示す一部破断平面図である。図5に示すように、第1の実施形態に係るランプ10は、環状型蛍光ランプ(FCL30ECW/28)であって、環状のガラスバルブ20と、当該ガラスバルブ20の両端部に封着されたステム30,30’と、それら両端部に跨って取り付けられた口金40とを備える。
図6は、ガラスバルブに封着前のステムを説明するための図であって、図6(a)はステムを構成する各部材を示す図、図6(b)はステムを示す断面図である。ステム30は、図6(a)に示すようなフィラメントコイル34、一対のリード線35,36、フレア管32’およびガラス細管33’を組み立てたものであって、図6(b)に示すように、電極31と、当該電極31が封着されたフレア32と、当該フレア32に融着された排気管33とで構成される。
フレア32は、本実施の形態に係るランプ用ガラス部品の一例であって、本発明に係るガラス組成物で形成されている。当該フレア32は、リード線35,36が封着されたマウント部37aと、当該マウント部37aからフィラメントコイル34と反対側に延出する筒状部37bと、当該筒状部37bから更にフィラメントコイル34と反対側に延出する鍔部38とからなる。
以上のような第1の実施形態に係るランプ10は、加工性のよいガラスでガラスバルブ20、フレア32及び排気管33が形成されているため製造歩留まりがよい。また、30〜380℃の膨張係数が90〜100×10−7K−1であるガラスでフレア32が形成されているため、ステム30にクラックが生じにくくランプ寿命が長い。
評価では、まず、各環状型蛍光ランプについてランプ点灯試験を行い一定時間毎の光束を測定し、その測定結果から1000時間後および3000時間後の光束維持率を、ランプ点灯時間100時間の光束を100%として算出した。なお、失透する比較例1のガラスについては、清浄な管ガラスが作製できないため環状型蛍光ランプを作製することができず、光束維持率の評価はできなかった。
<第2の実施形態に係るランプ>
図8は、第2の実施形態に係る冷陰極蛍光ランプの概略構成を示す一部破断平面図である。図8に示すように、第2の実施の形態に係る冷陰極蛍光ランプ60は、略円形横断面で直管状をしたガラスバルブ61を有する。
ガラスバルブ61の端部には、ビードガラス62を介してリード線63が封着されている。このリード線63は、例えば、タングステンからなる内部リード線と、ニッケルからなる外部リード線とからなる継線であり、内部リード線の先端部には冷陰極型の電極64が固着されている。
電極64は、有底筒状をしたいわゆるホロー型電極である。ホロー型の電極を採用することで、ランプ点灯時の放電によって生じる電極におけるスパッタリングを抑えている。
が用いられ、これらの比率は、Arが5%、Neが95%である。
ガラスバルブ61の内面には、保護層65が形成されており、さらに、この保護層65の表面(ガラスバルブの内面と反対側)に蛍光体層66が形成されている。保護層65は、例えば、酸化イットリウム(Y2O3)等の金属酸化物からなり、ガラスバルブ61内に封入されている水銀とガラスバルブ61とが反応するのを抑制する機能を有している。ただし、ガラスバルブのアルカリ溶出が大幅に抑制されている場合、必ずしも保護層65を形成する必要はない。
これらの蛍光体粒子は、アルミナを含まない希土類のものが使用され、具体例として、赤色蛍光体粒子にはY2O3:Eu3+が、緑色蛍光体粒子にはLaPO4:Tb3+が、青色蛍光体粒子には(SrCaBa)11(PO4)6Cl2:Eu2+が、それぞれ使
用されている。
図9は、冷陰極蛍光ランプの光束維持率を示す図である。冷陰極蛍光ランプ60と同じ構造の冷陰極蛍光ランプを、図1に示す参考例1,2,4〜6および実施例1のガラス、図4に示す比較例1〜2のガラス、及び、比較例4のガラスとしての冷陰極蛍光ランプに従来から用いられている硬質ガラスを用いて作製し、各冷陰極蛍光ランプの光束維持率を評価した。
<変形例>
以上、本発明に係るランプ及びランプ用ガラス部品を実施の形態に基づいて具体的に説明してきたが、本発明に係るランプ用ガラス部品およびランプは上記の実施の形態に限定されない。
[照明装置]
図10は、本実施の形態に係る照明装置の概略構成を示す斜視図である。図10に示すように、本実施の形態に係る照明装置80は、直下方式型のバックライトユニットであり、複数の冷陰極蛍光ランプ60と、これらの冷陰極蛍光ランプ60を収納する筐体81と、この筐体81の開口部を覆う前面パネル82とを備える。
本実施の形態では、14本の冷陰極蛍光ランプ60が、その軸心が水平に延伸する状態で、筐体81の短手方向に並列配置されている。なお、これらの冷陰極蛍光ランプ60は、図外の駆動回路により点灯される。
拡散板84及び拡散シート85は、冷陰極蛍光ランプ60から発せられた光を散乱・拡散させるものであり、レンズシート86は、当該レンズシート86の法線方向へ光を揃えるためのものであって、これらにより冷陰極蛍光ランプ60から発せられた光が前面パネル82の表面(発光面)の全体に亘り均一に前方を照射するように構成されている。
20,60 ランプ
80 照明装置
Claims (9)
- 酸化物換算で、
SiO2:65〜75wt%、
Al2O3:1〜5wt%、
Li2O:0.5〜5wt%、
Na2O:5〜12wt%、
K2O:3〜7wt%、
Li2O+Na2O+K2O:12〜18wt%、
MgO:3.3〜7wt%、
CaO:4.1〜7wt%、
SrO:0〜0.9wt%、
BaO:7.1〜12wt%を含有し、
実質的にPbOを含有しないことを特徴とするランプ用ガラス組成物。 - 酸化物換算で、
Al2O3:1〜3wt%、
Li2O:1〜3wt%、
Na2O:7〜10wt%、
K2O:3〜6wt%、
Li2O+Na2O+K2O:13〜17wt%、
MgO:3.3〜6wt%、
CaO:4.1〜6wt%、
BaO:7.1〜10wt%
を含有することを特徴とする請求項1記載のランプ用ガラス組成物。 - 重量比で、
0.76≦(MgO+CaO)/(SrO+BaO)≦1.19
の関係を満たすことを特徴とする請求項1または2に記載のランプ用ガラス組成物 - 酸化物換算で、Li2O、Na2O及びK2Oの総和が15.8wt%未満、かつ、
MgO、CaO、SrO及びBaOの総和が15.6wt%未満であって、
重量比で、
0.76<(MgO+CaO)/(SrO+BaO)
の関係を満たすことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のランプ用ガラス組成物 - 軟化点温度が650〜720℃の範囲にあることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のランプ用ガラス組成物。
- 30〜380℃の膨張係数が90〜100×10−7K−1であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のランプ用ガラス組成物。
- 請求項1から6いずれかに記載のガラス組成物を用いて形成されたことを特徴とするランプ用ガラス部品。
- 請求項7に記載のランプ用ガラス部品を備えることを特徴とするランプ。
- 請求項8に記載のランプを備えることを特徴とする照明装置。
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