[第1実施形態]
[構成]
図1は本発明の第1実施形態に係る座標入力装置10の構成を示す図であり、図2は当該座標入力装置10の一部の構成を示す断面図である。この座標入力装置10は、適用される画像表示装置の構成を有効に利用して構成されている。このため、図1及び図2には、この画像表示装置の構成も示されている。なお、図2において、この画像表示装置により表示される画像を観察する人にとって、図中の上方が手前、下方が奥に相当する。
本座標入力装置10が適用される画像表示装置は、特許文献1に開示されているような、粒子移動方式の画像表示装置である。この画像表示装置は、図1に示すように、表示画像を眺める側から眺めると、行方向に延びた複数の透明電極101と列方向に延びた複数の電極102がマトリクス状に交差するように構成されている。これらの交点に当該画像表示装置の画素が存在する。なお、透明電極101は略透明なITO(Indium Tin Oxide)を用いて形成されている。
前記行方向に延びた複数の透明電極101は、行用電流印加スイッチ122と接続している。前記行用電流印加スイッチ122は、行用電極グランド123と接続しており、閉じられると、前記行方向に延びた複数の透明電極101の当該行用電流印加スイッチ122と接続している端の電位が所定の基準電位と等しくなるようになっている。同様に、列方向に延びた複数の電極102は、列用電流印加スイッチ124と接続している。前記列用電流印加スイッチ124は、列用電極グランド125と接続しており、閉じられると、前記列方向に延びた複数の電極102の当該列用電流印加スイッチ124と接続している端の電位が所定の基準電位と等しくなるようになっている。
図2に示すように、この画像表示装置の、画像が形成される部分は、基板103の上に、電極102、電極102を保護するための誘電体層104、リブ105、透明電極101を保護するための透明な誘電体層106、透明電極101、透明なガラス基板107を順に積層させた構成となっている。リブ105は誘電体層104と誘電体層106との間の間隙を画素毎に区切り、キャビティ(空洞)を画素毎に形成している。各キャビティには、乾燥した気体(例えば、空気または窒素)が充填されており、また、正極性黒色粒子108と負極性白色粒子109が封入されている。正極性黒色粒子108及び負極性白色粒子109は、好適には直径が5〜50μmの球状をなしている。正極性黒色粒子108は、その帯電極性が正極性であり、かつ、その色が黒色である。負極性白色粒子109は、その帯電極性が負極性であり、かつ、その色が白色である。これらの粒子としては、トナー粒子が好適である。
キャビティ内で誘電体層106側に存在する粒子の色は、ガラス基板107、透明電極101、及び誘電体層106を透して観察されるから、この画素の色となる。例えば、ある画素において誘電体層106側に存在する粒子が正極性黒色粒子108であれば当該画素の色は黒色となり、負極性白色粒子109であれば当該画素の色は白色となる。なお、黒色粒子と白色粒子とで帯電極性を入れ替え、後述の各種電位の正負を逆とした構成とすることもできる。また、画面に表示される画像のコントラストが低くてもよい場合には、正極性粒子および負極性粒子の色を任意の色とすることもできる。ただし、正極性粒子および負極性粒子の色は、互いに異なる色でなければならない。なお、画面とは、画像が表示される面であり、複数の画素により形成されている。ガラス基板107、透明電極101、誘電体層106、誘電体層104、電極102及び基板103は、この画面に略平行に設けられている。
図1及び図2に示すように、透明電極101には透明電極101に電気信号を印加するための行電極110が、電極102には電極102に電気信号を印加するための列電極111が接続されている。透明電極101と行電極110との対応関係と、電極102と列電極111との対応関係は、共に1対1である。また、この画像表示装置は、単純マトリクス駆動方式により画素を駆動するものであり、図1に示すように、出力端の電位を変動させて行用画素駆動信号を出力する行用画素駆動回路112と、出力端の電位を変動させて列用画素駆動信号を出力する列用画素駆動回路113と、行用画素駆動回路112から出力される行用画素駆動信号の印加先の行電極110を順に切り替える行用信号走査回路114と、列用画素駆動回路113から出力される列用画素駆動信号の印加先の列電極111を順に切り替える列用信号走査回路115とを有する。
この画像表示装置において、正極性黒色粒子108及び負極性白色粒子109にかかる電圧は、透明電極101の電位から電極102の電位を減算することで得られる。この電圧が負値であれば、正極性黒色粒子108が透明電極101(誘電体層106)側に、負極性白色粒子109が電極102側に引かれる。逆に、この電圧が正値であれば、負極性白色粒子109が透明電極101側に、正極性黒色粒子108が電極102(誘電体層104)側に引かれる。ただし、粒子は、引かれて直ぐに移動を開始する訳ではない。粒子が移動を開始するのは、透明電極101及び電極102間に印加される電圧とその印加時間の関係が所定の関係となったときである。このときの電圧を移動開始電圧、印加時間を移動開始時間という。
図3は、この画像表示装置において、画素の色を白色から黒色に変える場合の、正極性黒色粒子108の移動開始電圧と移動開始時間との関係を示す図である。この図に示されるように、移動開始電圧が高い場合には移動開始時間は短くなり、移動開始電圧が低い場合には移動開始時間は長くなる。例えば、移動開始時間が約20[ms]の場合、移動開始電圧は約−90[V]であり、移動開始時間が約30[ms]の場合、移動開始電圧は約−75[V]である。また、移動開始電圧がいくら高くても移動開始時間が零となることはなく、移動開始時間がいくら長くても移動開始電圧が零以下となることはない。
この画像表示装置は、移動開始電圧(絶対値)と移動開始時間との関係が一致する正極性黒色粒子108及び負極性白色粒子109を採用している。したがって、透明電極101と電極102間に印加される電圧とその印加時間との関係が、正極性黒色粒子108の移動開始電圧と移動開始時間との関係から定まる移動開始条件を満たす場合には、正極性黒色粒子108が移動する一方、負極性白色粒子109が正極性黒色粒子108と逆の方向に移動する。また、透明電極101と電極102間に印加される電圧とその印加時間との関係が移動開始条件を満たさない場合には、正極性黒色粒子108及び負極性白色粒子109は移動を開始せず、現在位置に留まる。
この画像表示装置は、移動開始電圧の絶対値を低くするために(移動開始時間を短くするために)、色を変更する画素について、透明電極101及び電極102間に、粒子が付着している誘電体層に当該粒子を引き寄せるための電圧を印加した後に、粒子が付着している誘電体層とは反対側の誘電体層に当該粒子を移動させるための電圧を印加する。このように移動のための電圧と正負が逆の電圧(以降、逆電圧という)をかけるステップを設けることにより、移動開始電圧の絶対値の低減(移動開始時間の短縮)を実現している。このステップにて印加される電圧とその印加時間との関係は、移動開始条件を満たさないように定められているから、このステップにおいて正極性黒色粒子108や負極性白色粒子109が移動してしまうことはない。なお、この画像表示装置は、画像の表示開始時に、全ての画素の色を白色または黒色に統一し、以降は、画面を走査する際に各画素の色を維持または変更する。この際、この画像表示装置は、走査に先立って、各画素においてどちらの誘電体層にどちらの粒子が付着しているかを把握しているから、透明電極101と電極102間に適切な電圧を印加することができる。
行用画素駆動回路112、列用画素駆動回路113、行用信号走査回路114、及び列用信号走査回路115は、行用画素駆動信号および列用画素駆動信号を用いて、画面を走査する。この走査において、行用画素駆動信号および列用画素駆動信号のうち、色を変更する画素の駆動に用いられる時間部分は、透明電極101と電極102間の電圧を、この画素において粒子が付着している誘電体層に当該粒子を引き寄せる電圧とし、次に、粒子が付着している誘電体層とは反対側の誘電体層に当該粒子を引き寄せる電圧とする信号であり、他の時間部分は、透明電極101と電極102間の電圧を零とする信号となる。
具体的には、画素の色を白色から黒色に変更する場合、この画素の駆動に用いられる一周期分(100[ms])の行用画素駆動信号の電位は、最初の5[ms]の期間では50[V]、次の95[ms]の期間では−50[V]となり、この一周期分の列用画素駆動信号の電位は、最初の5[ms]の期間では−50[V]、次の95[ms]の期間では50[V]となる。よって、この画素の駆動時には、透明電極101と電極102間の電圧は、最初の5[ms]の期間では100[V]、次の95[ms]の期間では−100[V]となる。透明電極101と電極102間に−100[V]の電圧が95[ms]の時間だけ連続して印加された場合、この電圧とその印加時間との関係は移動開始条件を満たすから、この95[ms]の期間にて、誘電体層104に付着していた正極性黒色粒子108が移動して誘電体層106に付着し、誘電体層106に付着していた負極性白色粒子109が移動して誘電体層104に付着する。
逆に、画素の色を黒色から白色に変更する場合、この画素の駆動に用いられる一周期分の行用画素駆動信号の電位は、最初の5[ms]の期間では−50[V]、次の95[ms]の期間では50[V]となり、この一周期分の列用画素駆動信号の電位は、最初の5[ms]の期間では50[V]、次の95[ms]の期間では−50[V]となる。よって、この画素の駆動時には、透明電極101と電極102間の電圧は、最初の5[ms]の期間では−100[V]、次の95[ms]の期間では100[V]となる。透明電極101と電極102間に100[V]の電圧が95[ms]の時間だけ連続して印加された場合、この電圧とその印加時間との関係は移動開始条件を満たすから、この95[ms]の期間にて、誘電体層104に付着していた負極性白色粒子109が移動して誘電体層106に付着し、誘電体層106に付着していた正極性黒色粒子108が移動して誘電体層104に付着する。
なお、画素の色が維持される場合、この画素の駆動に用いられる一周期分の行用画素駆動信号および列用画素駆動信号の電位は、共に0[V]一定となる。よって、この画素の駆動時には、誘電体層104と誘電体層106間の電圧は0[V]一定となる。この場合、正極性黒色粒子108も負極性白色粒子109も移動しない。
上述した画像表示装置に適用される本座標入力装置10は、図1に示すように、出力端の電位を変動させて行用座標信号を出力する行用座標信号駆動回路116、出力端の電位を変動させて列用座標信号を出力する列用座標信号駆動回路117、行用信号走査回路114に接続する出力端を行用画素駆動回路112と行用座標信号駆動回路116との間で切り替える行用信号切替回路118、行用信号走査回路114に接続する出力端を列用画素駆動回路113と列用座標信号駆動回路117との間で切り替える列用信号切替回路119、指示された位置の近傍の磁界の変化を検出する磁界検出装置120、及び、磁界検出装置120により検出された変化を用いて、指示された位置の画素の座標を示す値を求めて記憶し、記憶した値から定まる座標を出力する座標判別回路121を有する。また、行用信号走査回路114及び列用信号走査回路115は、上述した画像表示装置の構成要素であるだけでなく、本座標入力装置10の構成要素でもある。
行用信号切替回路118は、行用信号走査回路114に接続する出力端を、1画面分の画素駆動信号の出力の開始時に行用画素駆動回路112の出力端とし、この画素駆動信号の出力の終了時に行用座標信号駆動回路116の出力端とする。行用座標信号駆動回路116は、その出力端が行用信号走査回路114に接続されると、行用座標信号を予め定められた時間間隔で繰り返し出力する。また、列用信号切替回路119は、列用信号走査回路115に接続する出力端を、1画面分の画素駆動信号の出力の開始時に列用画素駆動回路113の出力端とし、この画素駆動信号の出力の終了時に列用座標信号駆動回路117の出力端とする。列用座標信号駆動回路117は、行用座標信号駆動回路116からの行用座標信号の1回目の出力が完了すると、列用座標信号を予め定められた時間間隔で繰り返し出力する。
また、行用座標信号駆動回路116は、行用回路グランド126と接続しており、行用座標信号駆動回路116の基準電位が所定の基準電位と同電位となるようになっている。同様に、列用座標信号駆動回路117は、列用回路グランド128と接続しており、列用座標信号駆動回路117の基準電位が所定の基準電位と同電位となるようになっている。
また、座標信号の振幅電位は、前記画素の移動開始電圧と移動開始時間との関係から定まる移動開始条件未満、即ち、図3における個々の移動開始条件を結んだ曲線より低い電位に設定するとなおよい。
図4は、行用画素駆動信号、列用画素駆動信号、行用座標信号および列用座標信号の出力タイミングを示す図である。この図では、全ての画素の色を変更する画素駆動信号が例示されている。この図において、区間T1の信号が画素駆動信号であり、区間T1の後の区間T2の信号が行用座標信号、区間T2の後の区間T3の信号が列用座標信号である。このように、行用座標信号の出力と列用座標信号の出力は、次に画素駆動信号の出力が開始されるまで、交互かつ排他的に行われる。よって、各信号の出力順序は、行用画素駆動信号、列用画素駆動信号、行用座標信号、列用座標信号、行用座標信号、列用座標信号、…、行用画素駆動信号、列用画素駆動信号、という順序となる。なお、行用座標信号および列用座標信号が連続して繰り返し出力される回数は複数回であるが、1回となるように本実施形態を変形してもよい。また、行用座標信号よりも先に列用座標信号が出力されるように本実施形態を変形してもよい。
行用座標信号は、行座標を表すパルス信号(高レベルが40[V]で低レベルが−40[V])を画素の行数だけ連ねた信号である。これらのパルス信号における最初の電位変化方向はマイナス方向である。自然数iを用いて表現すると、第i行の行座標を表すパルス信号Riは、周期が100[μs]のパルスをi+1周期分だけ連ねたパルス信号である。行用信号走査回路114は、行用座標信号の印加先の行電極110を順に切り替えることにより、パルス信号Riを第i行の行電極110に印加する。
また、列用座標信号は、列座標を表すパルス信号(高レベルが40[V]で低レベルが−40[V])を画素の列数だけ連ねた信号である。これらのパルス信号における最初の電位変化方向はプラス方向である。自然数jを用いて表現すると、第j列の列座標を表すパルス信号Cjは、周期が100[μs]のパルスをj+1周期分だけ連ねたパルス信号である。列用信号走査回路115は、列用座標信号の印加先の列電極111を順に切り替えることにより、パルス信号Cjを第j列の列電極111に印加する。これらの座標信号において、各パルス信号の間の電位は0[V]である。なお、パルス信号Riにおけるパルス数をi+1とし、パルス信号Cjにおけるパルス数をj+1としたのは、第1行用のパルス信号および第1列用のパルス信号とノイズ等の他の信号とを識別し易くするためである。
図5は、行用座標信号が行電極110へ、列用座標信号が列電極111に印加される様子を示す図である。この図に示すように、行用座標信号は、まず行用座標信号を構成するパルス信号R1が第1行の行電極110へ、次にパルス信号R2が第2行の行電極110へ、次に…、というように印加される。この間、列用信号走査回路115は、列電極111に列用画素駆動回路113も列用座標信号駆動回路117も接続しない。このため、行用座標信号が印加されている透明電極101と、これに対向する電極102との間の電圧は、行電極110に印加されているパルス信号の電位と一致する。そして、行用座標信号の行電極110への印加が完了すると、列用座標信号が列電極111に印加される。列用座標信号は、まず列用座標信号を構成するパルス信号C1が第1列の列電極111へ、次にパルス信号C2が第2列の列電極111へ、次に…、というように印加される。この間、行用信号走査回路114は、行電極110に行用画素駆動回路112も行用座標信号駆動回路116も接続しない。このため、列用座標信号が印加されている電極102と、これに対向する透明電極101との間の電圧は、行電極110に印加されているパルス信号の電位の正負を逆転させたものとなる。
前述のように、画素駆動信号のパルス周期は100[ms]であり、座標信号のパルス周期は100[μs]である。両者には大きな開きがあることから、図4では、画素駆動信号のパルスと座標信号のパルスは、タイムスケールを異ならせて描かれている。本実施形態では、行用座標信号と列用座標信号とでパルス信号の周期や高電位、負電位が一致しているが、これらを両者で異なるように変形してもよい。これらの具体的な値についても、座標の検出精度が低下しない範囲で任意に設定してよい。ただし、座標信号の波形(高電位の値、負電位の値、及びパルス周期)は、座標信号が印加された場合の透明電極101と電極102間の電圧とその印加時間が前述の移動開始条件を満たさないように定められるべきである。このように定めることにより、画素の色の変化が座標信号の印加により引き起こされることがないことが保証される。
磁界検出装置120は、指示された位置の近傍における磁界の変化を検出するものであり、ペン形のピックアップ1201と信号検出回路1202とを有する。ピックアップ1201は、位置を指示する人に持たれ、指示された位置の近傍における磁界の変化に応じて変化する電気信号を発生させるものであり、その先端部分に、導線をリング状に巻いたコイルFを内蔵している。コイルFは、その軸方向がピックアップ1201の長手方向と略一致するように固定されている。信号検出回路1202は、コイルFを流れる電流の変化を検出し、検出した変化を表す電気信号を座標判別回路121へ無線送信する。このように、コイルFは磁界の変化を検出するためのものであるから、ピックアップ1201の先端部分の材質は、磁力線を透過させる材質でなければならない。もちろん、コイルFが露出するようにピックアップ1201を構成すれば、そのような制限は無くなる。なお、ピックアップ1201と信号検出回路1202とを信号線で接続した例を図示したが、実際には、信号検出回路1202はピックアップ1201内に存在する。
座標判別回路121は、図示しないメモリを有し、本座標入力装置10において用いられる、行座標を表す全てのパルス信号および列座標を表す全てのパルス信号の各々について、波形パターンを予め記憶している。この座標判別回路121は、信号検出回路1202から送られてくる電気信号の波形と、予め記憶している波形パターンとを比較し、この電気信号に合致する波形パターンを特定し、特定した波形パターンに対応する値を求めてメモリの所定領域に書き込む。メモリに書き込まれる値は、行座標を表す値であれば行を表す正値をとり、列座標を表す値であれば列を表す負値をとる。例えば、「1」は第1行を表し、「−1」は第1列を表す。
もちろん、行座標/列座標を表す値の形式は任意であり、例えば、第1行を「X1」、第1列を「Y1」という文字列で表すようにしてもよい。なお、最初に行座標が得られ、次に列座標が得られることが判明しているのであれば、行座標/列座標を識別するための符号や文字列を使う必要はないが、本実施形態では、判明していないという立場を採り、行座標/列座標を識別するために正値/負値を用いるようにしている。また、特定した波形パターンから値を求める方法も任意である。例えば、波形パターンと行座標/列座標とを予め対応付けて記憶しておき、特定された波形パターンに対応する行座標/列座標を選択するようにしてもよいし、特定された波形パターンで示される信号の、パルス数(例えば2個)および最初の電位変化方向(例えばプラス方向)に基づいて、行座標/列座標を表す値(例えば「1」)を計算するようにしてもよい。
また、座標判別回路121は、一組の行座標および列座標を求めると、これらの値で表される座標を出力する。本実施形態では、座標判別回路121から出力される座標を入力するコンピュータ装置(図示略)は、行用座標信号駆動回路116及び列用座標信号駆動回路117を有する装置であってもよいし、行用座標信号駆動回路116及び列用座標信号駆動回路117を持たない装置であってもよい。このため、座標判別回路121は、以下のように動作する。座標判別回路121は、行座標を求めたときに、メモリの所定領域に列座標が記憶されていれば、これらの行座標および列座標で表される座標を出力し、求めた行座標を所定領域に上書きする。また、列座標を求めたときに、メモリの所定領域に行座標が記憶されていれば、これらの行座標および列座標で表される座標を出力し、求めた列座標を所定領域に上書きする。また、1画面分の行用画素駆動信号および列用画素駆動信号の出力が完了すると、所定領域を初期化する。
上記のメモリは、書き換え可能なメモリのみ、又は書き換え可能なメモリ及び書き換え不能なメモリから構成される。後者の構成では、所定領域は書き換え可能なメモリに確保され、波形パターンは書き換え不能なメモリ又は書き換え可能なメモリに記憶される。もちろん、座標判別回路121から行座標や列座標を個別に出力してよいのであれば、上記の所定領域は不要となるから、後者の構成において書き換え可能なメモリは不要となる。
ところで、図1では、ピックアップ1201と信号検出回路1202が信号線により接続されているように描かれているが、実際には、ピックアップ1201の操作性を向上させるために、信号検出回路1202をピックアップ1201内に設けた構成を採用している。また、本実施形態では、ピックアップ1201の操作性を向上させるために、信号検出回路1202が座標判別回路121へ電気信号を無線送信するようにしている。もちろん、信号検出回路1202及び座標判別回路121をピックアップ1201内に設けた構成とし、座標判別回路121が出力信号を図示しないコンピュータ装置へ有線または無線で送信し、これをコンピュータ装置が受信することにより、コンピュータ装置に座標を入力するようにしてもよい。なお、本明細書における「無線」には、電波や赤外線などが含まれる。
[動作]
上述した構成の座標入力装置10の動作について説明する。
まず、上記の画像表示装置が画面を走査して画像を表示する。この際、色が維持される画素では、透明電極101及び電極102の電位が共に0[V]一定となり、この画素のキャビティ内の正極性黒色粒子108及び負極性白色粒子109は移動しない。つまり、両粒子は静止し続ける。よって、画素の色が維持される。
ところで、ピックアップ1201の先端部分が、色が維持される画素の近傍に位置する場合、この画素の駆動期間において、この画素の透明電極101及び電極102間の電圧は0[V]一定となるから、現実にも仮想的にも両電極間に電流が流れることはない。したがって、両電極の周りに磁界が生じることはなく、ピックアップ1201の先端部分内のコイルFを流れる電流に変化が生じることもない。したがって、信号検出回路1202は座標判別回路121へ電気信号を送らない。よって、座標判別回路121により座標が求められることはない。
一方、色が変更される画素では、透明電極101及び電極102の電位が変動する。例えば、この画素の色が白色から黒色に変更される場合、この画素の駆動期間前では両電極101及び102の電位は共に0[V]であり、この駆動期間における最初の5[ms]の期間では透明電極101の電位が50[V]となるとともに電極102の電位が−50[V]となり、この駆動期間における次の95[ms]の期間では透明電極101の電位が−50[V]となるとともに電極102の電位が50[V]となり、この駆動期間が終了すると両電極101及び102の電位は共に0[V]となる。95[ms]の期間における透明電極101と電極102との間の電圧は−100[V]であり、この電圧と当該時間の関係は、図3の移動開始電圧および移動開始時間から定まる移動開始条件を満たすから、95[ms]の期間において、誘電体層104に付着していた正極性黒色粒子108が移動して誘電体層106に付着し、誘電体層106に付着していた負極性白色粒子109が移動して誘電体層104に付着する。誘電体層106側に存在する粒子の色が、ガラス基板107、透明電極101、及び誘電体層106を透して観察されるから、この画素の色は白色から黒色に変更されたことになる。
また、このとき、前記行用電流印加スイッチ122、及び前記列用電流印加スイッチ124は解放する。よって、行用画素駆動回路112から印加される行用画素駆動信号及び列用画素駆動回路113から印加される列用画素駆動信号の電位差は、正極性黒色粒子108及び負極性白色粒子109の移動開始電圧を上回ることが可能となり、粒子が移動して所望の画像を得られる。
ピックアップ1201の先端部分が、色が変更される画素の近傍に位置する場合、この画素の駆動期間において、この画素の透明電極101及び電極102間の電圧は−100[V]又は100[V]一定となるから、両電極間に電流が仮想的に流れる。この仮想的に流れる電流を変位電流という。なお、本明細書において、変位電流ではない電流は伝導電流である。当該変位電流が流れると、透明電極101及び電極102の周りに磁界が生じる。この磁界は、ガラス基板107の上空、すなわち図1及び図2においてピックアップ1201の先端部分が位置する空域に漏洩する。以降、ガラス基板107の外側に漏洩した磁界を漏洩磁界と呼ぶ。両電極間の電圧は一定であるから、上記の変位電流は変化しない。よって、この画素の上空の漏洩磁界は変化せず、この漏洩磁界内に位置するコイルFを流れる電流も変化しない。したがって、信号検出回路1202は座標判別回路121へ電気信号を送らない。よって、座標判別回路121により座標が求められることはなく、図示しないコンピュータ装置に座標は入力されない。
以上のように、画面の走査時には、座標は入力されない。座標が入力されるのは、画面の走査の完了後である。画面の走査が完了すると、行用信号切替回路118が行用座標信号駆動回路116の出力端を行用信号走査回路114に、列用信号切替回路119が列用座標信号駆動回路117の出力端を列用信号走査回路115に接続する。以後、行用座標信号駆動回路116及び列用座標信号駆動回路117は、行用座標信号および列用座標信号を交互に出力する。以降の説明では、ピックアップ1201を用いて、行用座標信号の1回目の出力開始前から第2行第3列の画素近傍の位置が指示され、行用座標信号の2回目の出力開始前から第1行第3列の画素近傍の位置が指示されるものとする。
図6は、本座標入力装置10による座標入力の様子を示す図であり、この図には、行用座標信号および列用座標信号の1回目の出力期間における様子が示されている。この図から明らかなように、行用座標信号を構成する、第1行の行座標を表すパルス信号R1、第2行の行座標を表すパルス信号R2、…が、行用信号走査回路114により行用座標信号から切り出され、対応する行電極110に印加される。また、列用座標信号を構成する、第1列の列座標を表すパルス信号C1、第2列の列座標を表すパルス信号C2、…が、列用信号走査回路115により列用座標信号から切り出され、対応する列電極111に印加される。以下、1回目に出力される座標信号におけるパルス信号R2及びパルス信号と2回目に出力される行用座標信号におけるパルス信号R1に着目して座標入力装置10の動作を説明する。
行用座標信号の1回目の出力において第2行の行電極110にパルス信号R2が印加されると、この行電極110の電位が、0[V]、−40[V]、40[V]、−40[V]、40[V]、−40[V]、40[V]、0[V]という順序で変化する。この間、第3列の列電極111は、列用画素駆動回路113及び列用座標信号駆動回路117のいずれにも接続されておらず、その電位は0[V]一定である。また、行電極110の電位が連続して−40[V]または40[V]となる期間は50[μs]である。つまり、第2行第3列の画素の透明電極101と電極102間の電圧と、その印加時間は、移動開始条件を満たさない。よって、この画素の色は変わらない。
この画素の透明電極101を流れる電流が変化するから、この変化に応じて画素の上空の漏洩磁界が変化する。この漏洩磁界が変化すると、この漏洩磁界内に位置するコイルFを流れる電流が変化する。信号検出回路1202は、この電流変化を検出し、検出した電流変化を波形で表す電気信号を座標判別回路121へ送る。当該画素の透明電極101に印加される電圧はパルス信号R2のみに応じて変化するから、この電気信号の波形は、座標判別回路121に予め記憶されている波形パターンのうち、第2行に関する波形パターンに合致する。こうして、ピックアップ1201により指示された位置の座標として、この画素の行座標が求められる。
第2行の行電極110にパルス信号R2が印加されると、コイルFを流れる電流が変化し、この変化を表す電気信号が、信号検出回路1202から座標判別回路121へ送られる。パルス信号R2の出力期間における第3列の列電極111の電位は0[V]一定であるから、この電気信号は行用座標信号のみに応じた波形の信号となる。したがって、この電気信号の波形は、座標判別回路121に予め記憶されている波形パターンのうち、第2行に関する波形パターンに合致する。よって、座標判別回路121は、この波形パターンから行座標を表す値「2」を求める。この時点では、メモリの所定領域には列座標を表す値(負値)が記憶されていないから、座標判別回路121は、座標を出力せず、求めた値「2」をメモリの所定領域に書き込む。
列用座標信号の1回目の出力において第3列の列電極111にパルス信号C3が印加されると、この列電極111の電位が、0[V]、40[V]、−40[V]、40[V]、−40[V]、40[V]、−40[V]、40[V]、−40[V]、0[V]という順序で変化する。この間、第2行の行電極110は、行用画素駆動回路112及び行用座標信号駆動回路116のいずれにも接続されておらず、その電位は0[V]一定である。また、列電極111の電位が連続して40[V]または−40[V]となる期間は50[μs]である。つまり、第2行第3列の画素の透明電極101と電極102間の電圧と、その印加時間は、移動開始条件を満たさない。よって、この画素の色は変わらない。
この画素に関する電極102を流れる電流が上述のように変化し、漏洩磁界が変化するから、この変化に応じて、この漏洩磁界内に位置するコイルFを流れる電流が変化する。第3列の列電極111にパルス信号C3が印加されると、コイルFを流れる電流が変化し、この変化を表す電気信号が、信号検出回路1202から座標判別回路121へ送られる。パルス信号C3の出力期間における第2行の行電極110の電位は0[V]一定であるから、この電気信号は列用座標信号のみに応じた波形の信号となる。したがって、この電気信号の波形は、座標判別回路121に予め記憶されている波形パターンのうち、第3列に関する波形パターンに合致する。よって、座標判別回路121は、この波形パターンから列座標を表す値「−3」を求める。この時点では、メモリの所定領域には行座標を表す値「2」が記憶されているから、座標判別回路121は、この値「2」と求めた値「−3」とで表される座標を出力し、求めた値「−3」をメモリの所定領域に書き込む。座標判別回路121から出力された座標は、第2行第3列を示す座標であり、図示しないコンピュータ装置に入力される。
行用座標信号の2回目の出力期間において第1行の行電極110にパルス信号R1が印加されると、この行電極110の電位が、0[V]、−40[V]、40[V]、−40[V]、40[V]、0[V]という順序で変化する。この間、第3列の列電極111の電位は0[V]一定であるから、第1行第3列の画素の色は変わらない。この画素の駆動期間においてコイルFは漏洩磁界内に位置しているから、信号検出回路1202は、行用座標信号のみに応じた波形の電気信号を座標判別回路121へ送る。この電気信号の波形は、座標判別回路121に予め記憶されている波形パターンのうち、第1行に関する波形パターンに合致するため、座標判別回路121は、この波形パターンから行座標を表す値「1」を求める。この時点では、メモリの所定領域には列座標を表す値「−3」が記憶されているから、座標判別回路121は、この値「−3」と求めた値「1」とで表される座標を出力し、求めた値「1」をメモリの所定領域に書き込む。座標判別回路121から出力された座標は、第1行第3列を示す座標であり、図示しないコンピュータ装置に入力される。このように、本実施形態では、行用座標信号と列用座標信号とが連続して交互に出力されている期間において、列座標に続いて行座標が検出された場合にも、座標判別回路121が座標を出力することができる。なお、次に列用画素駆動信号の出力が完了したときにメモリの所定領域は初期化されるから、2回目の画面走査直前に列座標の値が所定領域に書き込まれていても、この列座標と2回目の画面走査直後に検出される行座標とに基づいて座標判別回路121から座標が出力されることはない。
ところで、このとき、前記行用電流印加スイッチ122、及び前記列用電流印加スイッチ124は、閉じられる。即ち、透明電極101は、一方の端の電位が所定の基準電位と等しくなった状態で、他方の端から基準電位が所定の基準電位と同電位である行用座標信号駆動回路116が出力する座標信号が入力される。同様に、電極102は、一方の端の電位が所定の基準電位と等しくなった状態で、他方の端から基準電位が所定の基準電位と同電位である列用座標信号駆動回路117が出力する座標信号が入力される。
従って、行用座標信号駆動回路116及び列用座標信号駆動回路117の内部抵抗、透明電極101又は電極102の抵抗、及び行用座標信号駆動回路116及び列用座標信号駆動回路117の出力電位によって定まる電流が、透明電極101又は電極102を流れる。そのとき、流れる電流により磁界が発生し、当該磁界は磁界検出装置120によって検出可能となる。
仮に、行用電流印加スイッチ122及び列用電流印加スイッチ124を解放したままとすると、透明電極101又は電極102を流れる電流値は約1/10,000倍と非常に小さくなってしまう。すると、発生する磁界も非常に小さくなってしまい、磁界の検出は容易ではなくなる。即ち、精度よく磁界の検出を行うためには、座標信号が入力されるのとは逆側の透明電極101及び電極102の電位を、行用信号切替回路118及び列用信号切替回路119の基準電位と同電位とする必要がある。
以上、説明したように、本実施形態によれば、画素駆動用の行電極110に行用座標信号を印加して、画素における透明電極101の電圧を変化させることにより、電極を流れる電流を変化させて当該画素の上空の漏洩磁界を変化させることができる。このとき、ピックアップ1201のコイルFが当該漏洩磁界内に存在すれば、コイルFを用いて当該漏洩磁界の変化を電流変化に変換して間接的に検出し、検出結果を用いて行座標を求めることができる。一方、本実施形態によれば、画素駆動用の列電極111に列用座標信号を印加して、画素における電極102の電圧を変化させることにより、電極を流れる電流を変化させて当該画素の上空の漏洩磁界を変化させることができる。このとき、ピックアップ1201のコイルFが当該漏洩磁界内に存在すれば、コイルFを用いて当該漏洩磁界の変化を電流変化に変換して間接的に検出し、検出結果を用いて列座標を求めることができる。これらにより、本実施形態によれば、ピックアップ1201を用いて指示された、画面上の位置またはその近傍位置の座標を求めることができる。また、座標信号印加時の透明電極101と電極102との間の電位差と、印加時間は、移動開始条件を満たさないから、本実施形態によれば、座標を求める際に画素の色を変えることなく、画面上の指示された位置の座標を求めることができる。
なお、本実施形態に係る座標入力装置10は、検出対象を漏洩磁界の変化としているため、コイルFとガラス基板107との距離が遠く離れても座標を求めることができる、という利点がある。もちろん、本実施形態に係る座標入力装置10によれば、コイルFとガラス基板107とが接触したとしても、またコイルFの軸方向とガラス基板107とが垂直でなかったとしても、座標を求めることが可能である。
また、本実施形態によれば、位置の指示に用いられるピックアップ1201が画面に直接的に接触する構成となっており、粒子移動方式の画像表示装置の画面前面にタッチパネル等の層を形成する必要がないから、表示画像の明度やコントラストが低下しない。つまり、本実施形態によれば、表示画像の視認性を低下させることなく、画面上の指示された位置の座標を入力することができる。
また、本実施形態によれば、ピックアップ1201内の電流変化を検出して座標を求める構成を採っており、画面上に画面に並行な光路を確保する必要がないから、画面の上にピックアップ1201以外の物体があっても画面上の指示された位置の座標を確実に検出することができる。
また、本実施形態では、粒子移動方式の画像表示装置に座標入力装置10を適用する際に新設すべき手段は、行用座標信号駆動回路116、列用座標信号駆動回路117、行用信号切替回路118、列用信号切替回路119、磁界検出装置120及び座標判別回路121のみである。これらのうち、磁界検出装置120以外は全て回路であり、小型化や集積化が容易である。また、磁界検出装置120の機能は単純であり、その構成を簡素とすることは容易である。よって、本実施形態によれば、座標入力装置10の構成を小規模かつ簡素とすることができる。
また、タッチパネルを用いて座標を検出する座標入力装置10と比較すると、精度の低いアナログの検出回路を用いずに済むから、本実施形態によれば、座標を高い精度で検出することができる。
[第2実施形態]
[構成]
第1実施形態では、コイルFを用いて漏洩磁界の変化を検出するようにしたが、ホール素子を用いて検出するように変形してもよい。当該変形は、後述する第3実施形態においても同様に可能である。
図7は、ホール素子を用いて漏洩磁界の変化を検出する座標入力装置20を説明するための図である。磁界検出装置220はピックアップ2201及び信号検出回路2202を有する。ピックアップ2201は、先端部分にホール素子Gを内蔵している。ホール素子Gは、その長手方向がピックアップ2201の長手方向と直交するように設けられている。信号検出回路2202は、ホール素子Gに生じるホール電圧の変化を検出し、検出した変化を表す電信信号を座標判別回路(図示せず)へ送る。ただし、信号検出回路2202は、座標信号が印加される行電極110及び列電極111が同一であれば、信号検出回路2202と同一波形の電気信号を出力する。
このような構成の座標入力装置20において、ピックアップ2201を用いて画面上の位置が指示されたものとする。この場合、ピックアップ2201内のホール素子Gが特定の画素の近傍に位置する。この画素に対応する行電極110に行用座標信号が印加されると、この画素の上空の漏洩磁界が変化する。この変化は、この漏洩磁界内に位置するホール素子Gに生じるホール電圧に変化をもたらす。信号検出回路2202は、この電圧変化を検出し、検出した電圧変化を波形で表す電気信号を座標判別回路へ送る。そして、座標判別回路において行座標が求められる。列座標についても上述と同様の動作により求められる。以上より明らかなように、この座標入力装置20は、漏洩磁界の変化を、電流変化ではなく、電圧変化に変換して間接的に検出する。
[第3実施形態]
[構成]
図8は本発明の第3実施形態に係る座標入力装置30の構成を示す図であり、図9は当該座標入力装置30の一部の構成を示す断面図である。この座標入力装置30は、適用される画像表示装置の構成を有効に利用して構成されている。このため、これらの図には、この画像表示装置の構成も示されている。
本座標入力装置30が適用される画像表示装置は、特許文献2に開示されているような、粒子回転方式の画像表示装置である。この画像表示装置が粒子移動方式の画像表示装置と大きく異なる点は、画像が形成される部分の構成である。図9に示すように、本実施形態に係る画像表示装置の画像が形成される部分は、基板103の上に、電極102、電極102を保護するための誘電体層104、球状の空洞部306を有するシート材307、透明電極101を保護するための透明な誘電体層106、透明電極101、透明なガラス基板107を順に積層させた構成となっている。
シート材307は、空間に絶縁性物質を充填させて形成されている。ただし、空洞部306には、この絶縁性物質ではなく、比重の異なる2種類の高抵抗液体が充填されている。さらに、空洞部306には回転する粒子である表示球体(粒子)308が入れられている。表示球体308の材質は任意であるが、その比重は、一方の高抵抗液体の比重よりも高く、他方の高抵抗液体の比重よりも低い。よって、表示球体308は、空洞部306内で浮遊する。また、表示球体308を構成する一方の半球部分の帯電状態と他方の半球部分の帯電状態は異なっている。よって、透明電極101と電極102との間の電圧を制御することにより、表示球体308が存在する空間の電界を変化させ、空洞部306内で浮遊している表示球体308の向きを制御することができる。また、表示球体308を構成する一方の半球部分の表面の色(例えば黒色)と他方の半球部分の表面の色(例えば白色)は異なっている。表示球体308の、透明電極101に対向している面は、ガラス基板107、透明電極101、及び誘電体層106を透して観察されるから、この面の色が、この画素の色となる。つまり、この画像表示装置によれば、透明電極101と電極102間の電圧を制御することにより、画素の色を制御することができる。
このような、画像が形成される部分の構成における相異に起因して、本実施形態に係る画像表示装置は、第1実施形態における行用画素駆動回路112及び列用画素駆動回路113に代えて、行用画素駆動回路301及び列用画素駆動回路302を有する。また、本実施形態に係る座標入力装置30は、基本的には第1実施形態に係る座標入力装置30と同様の構成を採っているが、上記の相異に起因して、行用座標信号駆動回路116、列用座標信号駆動回路117及び座標判別回路121ではなく、行用座標信号駆動回路303、列用座標信号駆動回路304及び座標判別回路305を有する。
また、座標判別回路305が座標判別回路121と異なる点は、メモリに予め記憶している波形パターンのみである。
この画像表示装置は、単純マトリクス駆動方式により画素を駆動するものであり、行用画素駆動回路301は出力端の電位を変動させて行用画素駆動信号を出力し、列用画素駆動回路302は出力端の電位を変動させて列用画素駆動信号を出力する。行用画素駆動信号は、行用信号切替回路118、行用信号走査回路114を経て行電極110に印加され、列用画素駆動信号は、列用信号切替回路119、列用信号走査回路115を経て列電極111に印加される。両信号は、両信号の電位差に応じた強度の電界を表示球体308に印加するためのものであるから、両信号の電位は当該画素の色を何色とするのかに応じて異なる。ただし、本画像表示装置では、画素の色をいずれの色とするにしても、表示球体308に印加すべき電界の強度(絶対値)は等しい。
図10は、この画像表示装置において、外部から表示球体308に印加される電界の強度(絶対値)と、その強度の電界が印加された場合に表示球体308が回転を開始するまでの応答時間との関係を示す図である。この図に示す関係を満たす電界強度および応答時間に相当する、透明電極101および電極102間の電圧とその印加時間を回転開始電圧および回転開始時間という。この図に示されるように、例えば、5[KV/cm]以下の強度の電界を200[ms]以下の時間だけ印加しても、表示球体308は回転しない。なお、図に示す関係は、表示球体308の材質や直径、透明電極101と電極102との距離などのパラメータに応じて変わるが、パラメータが変わっても、印加電界が強くなれば応答時間が短くなり、弱くなれば応答時間が長くなるという特徴や、印加電界がいくら強くても応答時間が零となることはなく、応答時間がいくら長くても印加電界が零以下となることはないという特徴は維持される。
行用画素駆動回路301及び列用画素駆動回路302は、色が変更される画素を駆動する際には、回転開始電圧と回転開始時間との関係から定まる回転開始条件を満たす行用画素駆動信号および列用画素駆動信号を出力し、色が維持される画素を駆動する際には、回転開始条件を満たさない行用画素駆動信号および列用画素駆動信号を出力する。
本実施形態によれば、第1実施形態に係る座標入力装置10により得られる効果と同様の効果を得ることができる。なお、本実施形態により座標入力装置30の構成を小規模かつ簡素とすることができるのは、粒子回転方式の画像表示装置に座標入力装置30を適用する際に新設すべき手段が、行用座標信号駆動回路303、列用座標信号駆動回路304、行用信号切替回路118、列用信号切替回路119、磁界検出装置120及び座標判別回路305のみであるからである。
なお、コイルFとガラス基板107とが完全に平行でなくとも略平行であれば、座標検出は可能である。
ところで、第1実施形態、第2実施形態に係る座標入力装置10、20は、色を変更する画素の駆動時に、透明電極101と電極102間に粒子の移動を阻害する向きの電圧(例えば、100[V])を印加した後に移動を促す向きの電圧(例えば、−100[V])を印加する画像表示装置に適用されるものである。これらの座標入力装置10、20を、特開2001−312225号公報に示されるような、逆方向の電圧を印加しない粒子移動方式の画像表示装置に適用することができるように変形してもよい。
また、上述した各実施形態では、第1行の行電極110に第1行用のパルス信号を印加し、次に第2行の行電極110に第2行用のパルス信号を印加し、…、というように、各行電極110に時分割で信号を印加するようにしているが、複数行用のパルス信号を複数の行電極110に並行して同時に印加することができるように変形してもよい。これと同様のことが、列電極111にもあてはまる。
また、上述した各実施形態に係る座標入力装置10、20、30を、異なる行座標の行用座標信号の電位や周波数が異なるように変形してもよいし、行座標を表すパルス信号が当該行座標のビット表現に応じたパルス信号となるように変形してもよい。列用座標信号についても同様である。
また、上述した各実施形態に係る座標入力装置10、20、30を、行用座標信号の周波数と列用座標信号の周波数とが相異するように変形してもよい。
ところで、上述した各実施形態に係る座標入力装置10、20、30は、単純マトリクス駆動方式で画素を駆動する画像表示装置に適用されるものである。これらの座標入力装置10、20、30を、アクティブマトリクス駆動方式やスタティック駆動方式等の他の駆動方式で駆動される画像表示装置に適用することができるように変形してもよい。
また、上述した各実施形態によれば、画素の色の変化が座標信号の使用により引き起こされることがないことが保証されるが、このような保証が不要であれば、移動開始条件や回転開始条件を考慮せずに座標信号を定めてもよい。
また、上述した各実施形態に係る座標入力装置10、20、30では、透明電極101又は電極102を流れる電流の変化に応じて変化する画素の上空の磁界の変化を検出しているが、該電流の変化に応じて変化する画素の上空の電界の変化を検出するように変形してもよい。
また、上述した各実施形態に係る座標入力装置10、20、30は、粒子移動/回転方式の画像表示装置に適用されるものである。これらの座標入力装置10、20、30を、液晶ディスプレイ等の他の画像表示装置に適用することができるように変形してもよい。ただし、各実施形態に係る座標入力装置10、20、30は磁界の変化を検出して座標を検出するものであるから、適用可能な画像表示装置は、好適には、粒子移動/回転方式の画像表示装置のように、電磁気学的な場の変化が画面上の空域に現れ易い画像表示装置であり、少なくとも、画像が表示される画面を形成する画素を構成する一対の電極間の電圧を制御して当該画素の色を制御するような画像表示装置でなければならない。