JP4621648B2 - 耐熱性樹脂組成物 - Google Patents
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Description
本発明により得られる樹脂組成物及びシートは、電気・電子部品、OA部品、車両部品、機械部品などの幅広い分野に有利に使用することができる。特に、低線膨張と低吸水性を活かし、自動車の外装材に好ましく使用することができる。更に、本発明の樹脂組成物は、鉛フリーはんだ対応リフロー炉に耐えうる耐熱性を有し、SMTコネクター等に要求されるピン圧入時の割れの原因となるウェルド強度にも優れるため、SMT対応部品にも好ましく用いることができる。
このポリアミド−ポリフェニレンエーテルアロイに用いられるポリアミドとしては、主としてポリアミド6,6やポリアミド6といった比較的低耐熱のポリアミドが用いられてきていた。
しかしながら、これら低耐熱のポリアミドを用いたポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物は、吸水や熱による寸法変化が大きく、例えば、フェンダー等の外装材として用いる際に、ドアとの隙間を維持するため、フェンダー取り付けの方法を工夫しなければならないなど、種々の制限があった。
これにより、従来のポリアミド6,6等を用いたポリアミド−ポリフェニレンエーテル材料からなるコネクターでは、実装時の膨れ等の発生といった問題が顕在化してきており、改善が求められていた。
これら吸水性に起因する種々の課題を解決するために、例えば、特開2000−212433号公報、特開2000−212434号公報及び特開2004−083792号公報には、ポリアミド−ポリフェニレンエーテルとして用いるポリアミド材料として、特定の芳香族ポリアミドを使用する技術が開示されている。
しかしながら、これらの技術では、充分な流動性と耐衝撃性のバランスを維持することは困難であり、また、SMT対応コネクター等に要求されるピン圧入強度に直接影響を及ぼすウェルド強度も充分でないといった問題点があり、更なる改善が求められていた。
本発明の他の1つの目的は、上記の特性を兼ね備えたフィルムを提供することにある。
本発明の更に他の1つの目的は、上記の特性を保持した導電性樹脂組成物を製造するにあたり、加工時の樹脂温度を大幅に低下させることが可能な製造方法を提供することにある。
本発明は以下の通りである。
(1)テレフタル酸単位を60〜100モル%含有するジカルボン酸単位(a)と、1,9−ノナメチレンジアミン単位(b−1)及び/又は2−メチル−1,8−オクタメチレンジアミン単位(b−2)を60〜100モル%含有するジアミン単位(b)とからなる芳香族ポリアミド、ポリフェニレンエーテル、ポリアミドとポリフェニレンエーテルの相溶化剤、及び結晶造核剤を含む樹脂組成物であって、該芳香族ポリアミドの末端アミノ基濃度が5μモル/g以上、45μモル/g以下であり、前記芳香族ポリアミドのジアミン単位中において、1,9−ノナメチレンジアミン単位(b−1)と2−メチル−1,8−オクタメチレンジアミン単位(b−2)の合計量に対する1,9−ノナメチレンジアミン単位(b−1)の比率が75〜90質量%である、上記樹脂組成物。
(2)前記結晶造核剤の量が芳香族ポリアミドとポリフェニレンエーテルの合計100質量部に対して0.01〜1質量部である、(1)に記載の樹脂組成物。
(3)前記芳香族ポリアミドの末端アミノ基濃度が10μモル/g以上、35μモル/g以下である、(1)に記載の樹脂組成物。
(4)前記芳香族ポリアミドの末端封止率が、45%以上、85%以下である、(1)に記載の樹脂組成物。
(6) 前記芳香族ポリアミドとポリフェニレンエーテルの相溶化剤の量が、前記芳香族ポリアミドと前記ポリフェニレンエーテルの合計100質量部に対して0.05〜5質量部である、(1)に記載の樹脂組成物。
(7) 前記芳香族ポリアミドとポリフェニレンエーテルの相溶化剤がマレイン酸又はその無水物である、(1)に記載の樹脂組成物。
(8) 前記芳香族ポリアミドと前記ポリフェニレンエーテルの合計量に対して、前記芳香族ポリアミドの比率が40〜80質量%、前記ポリフェニレンエーテルの比率が20〜60質量%である、(1)に記載の樹脂組成物。
(9) 更に、導電性付与材を、樹脂組成物の全質量に対して0.1〜10質量%の量で含む、(1)に記載の樹脂組成物。
(11) 更に、強化無機フィラーを含む、(1)に記載の樹脂組成物。
(12) 前記強化無機フィラーがエポキシ化合物で集束されたガラス繊維である、(11)に記載の樹脂組成物。
(13) 前記強化無機フィラーの量が、樹脂組成物の全質量に対して10〜60質量%である、(11)に記載の樹脂組成物。
(14) 脂肪族ポリアミドを、前記芳香族ポリアミド100質量部に対して100質量部以下の量で含む、(1)に記載の樹脂組成物。
肪族ジカルボン酸からなる脂肪族ポリアミド、炭素数6〜8のラクタム類からなる脂肪族
ポリアミド、及びアミノカルボン酸からなる脂肪族ポリアミドからなる群から選ばれる1
種以上である、(14)に記載の樹脂組成物。
(16)前記脂肪族ポリアミドの末端アミノ基濃度が、前記芳香族ポリアミドの末端ア
ミノ基濃度より大きい、(15)に記載の樹脂組成物。
(17)芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックと共役ジエン化合物を主体と
する重合体ブロックとを含むブロック共重合体であって、ここで、該ブロック共重合体中
の、芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックのうちの一つのブロックの分子量が
15,000〜50,000の範囲内である上記ブロック共重合体である衝撃改良材を、
前記ポリフェニレンエーテル100質量部に対して10〜70質量部の量で、更に含む、
(1)に記載の樹脂組成物。
(18)(1)記載の樹脂組成物を含むSMT対応部品。
(19)(1)記載の樹脂組成物を含む、厚みが1〜200μmのフィルム。
(1)該芳香族ポリアミドの一部と該導電性付与材を溶融することなく両者の混合物を作成し、該混合物を、溶融した残余の芳香族ポリアミドに供給し、溶融混練して、芳香族ポリアミドと導電性付与材のマスターペレットを製造する工程、
(2)該マスターペレットを、該ポリフェニレンエーテルと、該ポリアミドとポリフェニレンエーテルの相溶化剤との溶融混合物と溶融混練して溶融混合物ペレットを得る工程、
及び
(3)該溶融混合物ペレットの水分を除去する工程。
本発明の上記及びその他の諸目的、諸特徴並びに諸利益は、以下の発明の詳細な説明及び請求の範囲の記載から明らかになる。
本発明において必須成分として使用されるポリアミドは、ジカルボン酸単位(a)とジアミン単位(b)から構成される芳香族ポリアミドである。
芳香族ポリアミドを構成するジカルボン酸単位(a)は、テレフタル酸単位を60〜100モル%含有する。ジカルボン酸単位(a)中におけるテレフタル酸単位の含有率は、75〜100モル%の範囲内であることが好ましく、90〜100モル%の範囲内であることがより好ましく、実質的にすべてのジカルボン酸単位がテレフタル酸単位であることが最も好ましい。実質的にすべてのジカルボン酸単位をテレフタル酸単位とすることにより、ポリアミド−ポリフェニレンエーテル組成物の線膨張係数を大幅に低減することが可能となる。
本発明の芳香族ポリアミドを構成するジアミン単位(b)は、1,9−ノナメチレンジアミン単位(b−1)及び2−メチル−1,8−オクタメチレンジアミン単位(bー2)を合計量として60〜100モル%含有している。
ジアミン単位(b)中における、1,9−ノナメチレンジアミン単位(bー1)及び2−メチル−1,8−オクタメチレンジアミン単位(b−2)の含有率は、75〜100モル%であることがより好ましく、90〜100モル%であることが更に好ましく、実質的にすべてのジアミン単位が、1,9−ノナメチレンジアミン単位(b−1)及び2−メチル−1,8−オクタメチレンジアミン単位(b−2)から構成されていることが、最も好ましい。実質的にすべてのジアミン単位を、1,9−ノナメチレンジアミン単位(b−1)及び2−メチル−1,8−オクタメチレンジアミン単位(b−2)で構成させることにより、リフロー炉の加熱時の発泡現象を大幅に抑制できるようになる。
本発明においては、末端カルボキシル基濃度はそれ単独で、組成物の特性に影響を及ぼすという関係は見い出されないが、末端アミノ基濃度と末端カルボキシル基濃度の比(末端アミノ基濃度/末端カルボキシル基濃度)は、機械的特性に大きな影響を及ぼすため、好ましい範囲が存在する。
これら芳香族ポリアミドの末端基濃度の調整方法としては、公知の方法を用いることができる。例えばポリアミド樹脂の重合時に所定の末端濃度となるように、ジアミン化合物、モノアミン化合物、ジカルボン酸化合物、モノカルボン酸化合物、酸無水物、モノイソシアネート、モノ酸ハロゲン化物、モノエステル類、モノアルコール類などの末端調整剤を添加する方法が挙げられる。
末端封止率(%)=[(α−β)/α]×100 (1)
(式中、αは分子鎖の末端基の総数(これは通常、ポリアミド分子の数の2倍に等しい)を表し、βは封止されずに残ったカルボキシル基末端及びアミノ基末端の合計数を表す。)
ここでいう固有粘度とは一般的に極限粘度と呼ばれている粘度と同意である。これを求める具体的な方法としては、96%濃硫酸中、30℃の温度条件下で、濃度の異なるいくつかの測定溶媒のηsp/cを測定し、そのそれぞれのηsp/cと濃度(c)の関係式を導き出し、濃度をゼロに外挿する方法である。このゼロに外挿した値が固有粘度である。
これらの詳細は、例えば、Polymer Process Engineering(Prentice−Hall,Inc 1994)の291ページ〜294ページ等に記載されている。
このとき濃度の異なるいくつかの測定溶媒の個数は、少なくとも4点とすることが精度の観点より望ましい。このときの推奨される濃度の異なる少なくとも4点の好ましい粘度測定溶液の濃度は、0.05g/dl,0.1g/dl、0.2g/dl、0.4g/dlの4点である。
まず、触媒、及び必要に応じて末端封止剤を、最初にジアミン及びジカルボン酸に一括して添加し、ポリアミド塩を製造した後、200〜250℃の温度及び一定圧下で、濃硫酸中30℃における固有粘度[η]が0.10〜0.60dl/gのプレポリマーを製造する。次いで、これをさらに固相重合するか、あるいは溶融押出機を用いて重合を行うことにより、容易に芳香族ポリアミドを得ることができる。ここで、プレポリマーの固有粘度[η]が好ましくは0.10〜0.60dl/gの範囲内にあると、後重合の段階においてカルボキシル基とアミノ基のモルバランスのずれや重合速度の低下が少なく、さらに分子量分布が小さく、成形流動性に優れた芳香族ポリアミドが得られる。重合の最終段階を固相重合により行う場合、減圧下又は不活性ガス流通下に行うのが好ましく、重合温度が200〜280℃の範囲内であれば、重合速度が大きく、生産性に優れ、着色やゲル化を有効に押さえることができるので好ましい。重合の最終段階を溶融押出機により行う場合、重合温度が370℃以下であるとポリアミドの分解がほとんどなく、劣化の無い芳香族ポリアミドが得られるので好ましい。
本発明において、芳香族ポリアミドは、粉末状であることにより予想外の効果を得ることができる。ここでいう粉末状とは、平均粒子径が200〜1000μmの範囲内にあるポリアミド粉体を指す。より好ましい平均粒子径は300〜800μmであり、更に好ましくは400〜700μmである。粉体状の芳香族ポリアミドを使用することにより、押出加工時の樹脂温度を大幅に低下させることができるという予想外の効果が得られる。
好ましい下限値は、芳香族ポリアミドとポリフェニレンエーテルの合計100質量部に対して0.001質量部である。より好ましい下限値は0.01質量部であり、更に好ましい下限値は0.02質量部であり、最も好ましくは0.03質量部である。
また好ましい上限値としては、芳香族ポリアミドとポリフェニレンエーテルの合計100質量部に対して5質量部であり、より好ましくは3質量部、更に好ましくは2質量部、最も好ましくは1質量部である。
この結晶造核剤が存在することで、樹脂組成物の吸水率を大幅に低下させることが可能となる。また、本発明の樹脂組成物からなるコネクター等の成形片を、吸水させ、リフロー炉中で加熱した際に起きる発泡現象も飛躍的に抑制することが可能となる。また、理由は判らないが、リフロー炉で過熱した際に起きる成形片の変色も抑制することができる。
成形機での滞留安定性を悪化させないためにはリン元素量を1ppm以上とすることが望ましく、樹脂組成物の流動性(ここではMVR等の溶融流動時の流動性)の悪化を抑制するためには、500ppm以下とすることが望ましい。
本発明でのリン元素は、1)リン酸類、亜リン酸類及び次亜リン酸類、2)リン酸金属塩類、亜リン酸金属塩類及び次亜リン酸金属塩類、及び3)リン酸エステル及び亜リン酸エステル類等の、リン酸化合物、亜リン酸化合物、及び次亜リン酸化合物から選ばれる1種以上を含むリン元素含有化合物として添加されることが好ましい。
上記2)のリン酸金属塩類、亜リン酸金属塩類及び次亜リン酸金属塩類としては、前記1)のリン化合物と周期律表第1族及び第2族の金属、マンガン、亜鉛、アルミニウム、アンモニア、アルキルアミン、シクロアルキルアミン、ジアミンとの塩を挙げることができる。上記3)のリン酸エステル及び亜リン酸エステル類は下記一般式で表される。
リン酸エステル;(OR)nPO(OH)3−n
亜リン酸エステル;(OR)nP(OH)3−n
ここで、nは1、2又は3を表し、Rはアルキル基、フェニル基、又はそれらの基の一部が炭化水素基などで置換されたアルキル基を表す。nが2以上の場合、前記一般式内の複数の(RO)基は同じでも異なっていてもよい。
これらの中でも、本発明で添加できる好ましいリン化合物は、リン酸金属塩類、亜リン酸金属塩類及び次亜リン酸金属塩類から選ばれる1種以上である。中でも、リン酸、亜リン酸、及び次亜リン酸から選ばれるリン化合物と、周期律表第1族及び第2族の金属、マンガン、亜鉛、及びアルミニウムから選ばれる金属との塩であることが好ましい。より好ましくは、リン酸、亜リン酸及び次亜リン酸から選ばれるリン化合物と周期律表第1族の金属とからなる金属塩であり、更に好ましくは亜リン酸又は次亜リン酸と周期律表第1族の金属とからなる金属塩であり、もっとも好ましくは次亜リン酸ナトリウム(NaH2PO2)又はその水和物(NaH2PO2・nH2O)である。
また、リン酸エステル類の中では、特にフェニルホスホン酸が特に好ましく使用することができる。
樹脂組成物中及び芳香族ポリアミド中におけるリン元素の定量は、例えば、測定装置としてThermoJarrellAsh製IRIS/IPを用いて、高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分析により、波長213.618(nm)で行うことが可能である。
また、本発明においてはポリアミドの耐熱安定性を向上させる目的で、特開平1−163262号公報に記載されているような金属系安定剤も、問題なく使用することができる。
これら銅化合物の好ましい配合量は、すべての樹脂組成物を100質量%としたとき、銅元素として1〜200ppm、より好ましくは1〜100ppm、さらに好ましくは1〜30ppmである。
銅元素の定量は、リン元素の定量同様に、例えば、装置はThermoJarrellAsh製IRIS/IPを用いて、高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分析により行うことができる。
また、ヨウ化カリウム、臭化カリウム等に代表されるハロゲン化アルキル金属化合物も好適に使用することができ、銅化合物とハロゲン化アルキル金属化合物を併用して添加することが好ましい。
ここで、添加しても構わない芳香族ポリアミド以外のポリアミドとしては、脂肪族ポリアミドが挙げられる。具体的には、炭素数4〜8の脂肪族ジアミンと炭素数4〜8の脂肪族ジカルボン酸からなる脂肪族ポリアミド、炭素数6〜8のラクタム類からなる脂肪族ポリアミド、又はアミノカルボン酸からなる脂肪族ポリアミドから選ばれる1種以上である脂肪族ポリアミドである。
これら脂肪族ポリアミドの好ましい配合量は、芳香族ポリアミド100質量部に対して、100質量部以下である。より好ましくは、80質量部以下、更に好ましくは50質量部以下、最も好ましくは30質量部以下である。
脂肪族ポリアミドを少量配合することにより、若干の耐熱性の低下は生じるが、機械的特性(衝撃強度及び引っ張り伸び)と流動性のバランスをより高いレベルに引き上げることができる。
本発明においては、更に、ポリアミドに添加することが可能な他の公知の添加剤等もポリアミド100質量部に対して10質量部未満の量で添加しても構わない。
本発明で使用可能なポリフェニレンエーテルとは、下記式(1)で表される繰り返し構造単位を有する、単独重合体及び/又は共重合体である。
また、2,6−ジメチル−1,4−フェノールと2,3,6−トリメチル−1,4−フェノールとの共重合体を使用する場合の各単量体ユニットの比率は、ポリフェニレンエーテル共重合体全量を100質量%としたときに10〜30質量%の2,3,6−トリメチル−1,4−フェノールを含む共重合体が好ましい。より好ましくは、15〜25質量%であり、最も好ましくは20〜25質量部である。
本発明で使用することのできるポリフェニレンエーテルの還元粘度(ηsp/c:0.5g/dl、クロロホルム溶液、30℃測定)は、0.15〜0.70dl/gの範囲であることが好ましく、さらに好ましくは0.20〜0.60dl/gの範囲、より好ましくは0.40〜0.55dl/gの範囲である。
また、ポリフェニレンエーテルの安定化のために公知の各種安定剤も好適に使用することができる。安定剤の例としては、酸化亜鉛、硫化亜鉛等の金属系安定剤、ヒンダードフェノール系安定剤、リン酸エステル系安定剤、ヒンダードアミン系安定剤等の有機安定剤が挙げられる。これらの好ましい配合量は、ポリフェニレンエーテル100質量部に対して5質量部未満である。
更に、ポリフェニレンエーテルに添加することが可能な他の公知の添加剤等も、ポリフェニレンエーテル100質量部に対して10質量部未満の量で添加しても構わない。
なお、本発明におけるPPE分散粒子の平均粒子径は、電子顕微鏡写真法により求めることができ、次のように算出した。すなわち、ペレット又は成型品から切り取った超薄切片の透過電子顕微鏡写真(5000倍)を撮影し、分散粒子径di、粒子数niを求め、PPE分散粒子の数平均粒子径(=Σdini/Σni)を算出する。
この場合、粒子形状を球形とみなせない場合には、その短径と長径を測定し、両者の和の1/2を粒子径とする。平均粒子径の算出には最低1000個の粒子径を測定する必要がある。
本発明においては、ポリアミドとポリフェニレンエーテルの相溶化剤は必須である。用いることのできる相溶化剤としては、国際公開WO01/81473号明細書中に詳細に記載されている。
これらの相溶化剤の中でも、マレイン酸、フマル酸、クエン酸及びこれらの混合物から選ばれる1種以上が好ましく挙げることができる。特に好ましいのがマレイン酸及び/又はその無水物である。特に相溶化剤としてマレイン酸及び/又はその無水物を選択することで、樹脂組成物のウェルド強度を飛躍的に向上させることが可能となるとともに、成形片表面の光沢度(グロス値)が向上するといった効果が見られるようになる。
ポリアミドとポリフェニレンエーテルの相溶化剤の量は、芳香族ポリアミドと、ポリフェニレンエーテルの合計100質量部に対して、0.01〜8質量部の範囲が好ましい。より好ましくは、0.05〜5質量部であり、更に好ましくは、0.1〜3質量部である。
また、本発明の樹脂組成物においては耐衝撃性を更に向上させる目的で、ポリフェニレンエーテル100質量部に対して10〜70質量部の量の衝撃改良剤を添加しても構わない。
本発明で使用できる衝撃改良剤としては、少なくとも1個の芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックと少なくとも1個の共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックからなるブロック共重合体及びその水素添加物、及びエチレン−α−オレフィン共重合体からなる群から選ばれる1種以上を挙げることができる。
また、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックにおける「主体とする」に関しても同様で、少なくとも50質量%以上が共役ジエン化合物であるブロックを指す。より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、最も好ましくは90質量%以上である。
芳香族ビニル化合物の具体例としてはスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等が挙げられ、これらから選ばれた1種以上の化合物が用いられるが、中でもスチレンが特に好ましい。
共役ジエン化合物の具体例としては、ブタジエン、イソプレン、ピペリレン、1,3−ペンタジエン等が挙げられる。これらから選ばれた1種以上の化合物が用いられるが、中でもブタジエン、イソプレン及びこれらの組み合わせが好ましい。
本発明におけるブロック共重合体は、芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロック[A]と共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック[B]が、A−B型、A−B−A型、又はA−B−A−B型から選ばれる結合形式を有するブロック共重合体であることが好ましく、これらの混合物であっても構わない。これらの中でもA−B−A型、A−B−A−B型、又はこれらの混合物がより好ましく、A−B−A型が最も好ましい。
これらブロック共重合体は水素添加されていないブロック共重合体と水素添加されたブロック共重合体の混合物としても問題なく使用可能である。
本発明に使用するブロック共重合体として、低分子量ブロック共重合体と高分子量ブロック共重合体との混合物が好ましく使用可能である。具体的には、数平均分子量120,000未満の低分子量ブロック共重合体と、数平均分子量120,000以上の高分子量ブロック共重合体の混合物である。より好ましくは、数平均分子量120,000未満の低分子量ブロック共重合体と、数平均分子量170,000以上の高分子量ブロック共重合体の混合物である。
また、該ブロック共重合体中の一つの芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックの分子量が15,000〜50,000の範囲内であるブロック共重合体であることがより望ましい。
Mn(a),n={Mn×a/(a+b)}/N(a) (3)
上式中において、Mn(a),nはブロック共重合体nの芳香族ビニル化合物を主体とする一つの重合体ブロックの数平均分子量、Mnはブロック共重合体nの数平均分子量、aはブロック共重合体n中の芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックの質量%、bはブロック共重合体n中の共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックの質量%、及びN(a)はブロック共重合体n中の芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックの数を表す。
これら低分子量ブロック共重合体と高分子量ブロック共重合体の質量比(低分子量ブロック共重合体/高分子量ブロック共重合体)は95/5〜5/95であり、好ましくは90/10〜10/90である。
特に、ブロック共重合体として芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックを55質量%以上90質量%未満の量で含有するブロック共重合体のみを用いた場合、高い衝撃性を有しつつ、透明性のある樹脂組成物が得られる。
ここでいう変性されたブロック共重合体とは、分子構造内に少なくとも1個の炭素−炭素二重結合又は三重結合、及び少なくとも1個のカルボン酸基、酸無水物基、アミノ基、水酸基、又はグリシジル基を有する、少なくとも1種の変性化合物で変性されたブロック共重合体を指す。
ここでいう分子構造内に少なくとも1個の炭素−炭素二重結合又は三重結合、及び少なくとも1個のカルボン酸基、酸無水物基、アミノ基、水酸基、又はグリシジル基を有する少なくとも1種の変性化合物とは、変性されたポリフェニレンエーテルで述べた変性化合物と同じものが使用できる。
さらに、本発明の樹脂組成物はスチレン系重合体を含んでいてもよい。本発明でいうスチレン系重合体としては、ホモポリスチレン、ゴム変性ポリスチレン(HIPS)、スチレン−アクリロニトリル共重合体(AS樹脂)、スチレン−ゴム質重合体−アクリロニトリル共重合体(ABS樹脂)等が挙げられる。スチレン系重合体を含むことで、本発明の課題を達成するほかに、耐候性を向上することができる。スチレン系重合体の好ましい配合量は、ポリアミド、ポリフェニレンエーテルの合計100質量部に対し、50質量部未満である。
本発明において使用することができるウォラストナイトについて詳細に説明する。
本発明で好適に使用可能なタルクとは、珪酸マグネシウムを成分とする天然鉱物を精製、粉砕及び分級したものである。また広角X線回折によるタルクの(0 0 2)回折面の結晶子径が570Å以上であることがより好ましい。
ここでいうタルクの(0 0 2)回折面は、広角X線回折装置を用いて、タルクMg3Si4O10(OH)2の存在が同定され、その層間距離がタルクの(0 0 2)回折面による格子面間隔である約9.39Åに一致することにより確認できる。また、タルクの(0 0 2)回折面の結晶子径は、そのピークの半値幅から算出される。
ここでいうタルクの平均粒子径及び粒子径分布は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置を用いて測定した体積基準の粒子径である。また、タルクの分散溶媒としてエタノールを用いて測定される値である。
また、これらの強化無機フィラーには、表面処理剤として、高級脂肪酸又はそのエステル、塩等の誘導体(例えば、ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸アミド、ステアリン酸エチルエステル等)やカップリング剤(例えば、シラン系、チタネート系、アルミニウム系、ジルコニウム系等)を必要により使用することができる。その使用量としては強化無機フィラーを100質量部としたとき、0.05〜5質量部である。より好ましくは0.1〜2質量部である。
これらの強化無機フィラーには、取り扱い性を高める目的で、又は樹脂との密着性を改善する目的で、集束剤で集束されていてもよい。この際の集束材としては、エポキシ系、ウレタン系、ウレタン/マレイン酸変性系、ウレタン/アミン変性系の化合物が好ましく使用できる。これら集束剤はもちろん併用してもよい。また、この集束剤として、分子構造内に複数のエポキシ基を有するエポキシ系化合物を用いたものが、上述の中では、特に好ましく使用可能である。エポキシ化合物の中でも、ノボラック型エポキシが特に好ましい。
本発明において強化無機フィラーは、ポリアミド又はポリフェニレンエーテルの重合段階から、樹脂組成物の成形段階までの任意の段階で添加することができるが、樹脂組成物の押出工程及び成形工程(ドライブレンドを含む)の段階で添加することが好ましい。
この場合の好ましい導電性付与材は、導電性カーボンブラック、グラファイト及びカーボンフィブリルからなる群から選ばれる1種以上である。
本発明において導電性付与材として導電性カーボンブラックを用いる場合の好ましい導電性カーボンブラックは、ジブチルフタレート(DBP)吸油量が250ml/100g以上のものである。より好ましくはDBP吸油量が300ml/100g以上、更に好ましくは350ml/100g以上の導電性カーボンブラックである。ここで言うDBP吸油量とは、ASTM D2414に定められた方法で測定した値である。
これら導電性付与材の添加方法に関しては特に制限はないが、芳香族ポリアミドとポリフェニレンエーテルの溶融混合物中に、導電性付与材を添加して溶融混練する方法、芳香族ポリアミドに導電性付与材を予め配合してなるマスターバッチの形態で添加する方法等が挙げられる。特に、芳香族ポリアミド中に導電性付与材を配合してなるマスターバッチの形態で添加することが好ましい。
これらマスターバッチ中の導電性付与材の量としては、マスターバッチを100質量%としたとき、導電性付与材の量が5〜25質量%であることが望ましい。導電性付与材として導電性カーボンブラックを使用する場合の好適なマスターバッチ中の導電性付与材の量は、5質量%〜15質量%であり、より好ましい量は8質量%〜12質量%である。また、導電性付与材として、グラファイト又はカーボンフィブリルを使用する場合の好適なマスターバッチ中の導電性付与材の量は、15質量%〜25質量%であり、より好ましくは18質量%〜23質量%である。
これらの中で最も好ましい態様は、(3)芳香族ポリアミドの一部と導電性付与材を溶融することなく両者の混合物を作成し、該混合物を溶融した残余の芳香族ポリアミド中に供給し、溶融混練する方法である。
(1)上流部に1箇所の供給口を有する二軸押出機を使用して、上流部供給口から芳香族ポリアミドと導電性付与材を混合した混合物を供給し、芳香族ポリアミドの融点以上の温度で溶融混練する方法。
(2)上流部に1箇所と下流部に1箇所の供給口を有する二軸押出機を使用して、上流部供給口から芳香族ポリアミドを供給し、芳香族ポリアミドの融点以上の温度で溶融混練した後、下流部供給口から導電性付与材を添加して更に溶融混練する製造方法、
(3)上流部に1箇所と下流部に1箇所の供給口を有する二軸押出機を使用して、上流部供給口から芳香族ポリアミドの一部を供給し、芳香族ポリアミドの融点以上の温度で溶融混練した後、下流部供給口から残りのポリアミドと導電性付与材を溶融することなく混合した混合物を添加して更に溶融混練する製造方法、
(4)上流部に1箇所、中流部に1箇所、下流部に1箇所の供給口を有する二軸押出機を使用して、上流部供給口から芳香族ポリアミドを供給し、芳香族ポリアミドの融点以上の温度で溶融混練した後、中流部供給口から導電性付与材を添加して更に溶融混練し、下流部供給口から芳香族ポリアミドを添加して更に溶融混練する方法が挙げられる。
また、これらマスターバッチを製造する際の加工機械のシリンダー設定温度として特に制限はなく、上述のように芳香族ポリアミドの融点以上の温度であれば問題ないが、好ましい範囲としては、290〜350℃の範囲であることが好ましく、より好ましくは300〜330℃の範囲である。
(1)芳香族ポリアミドの一部と導電性付与材を溶融することなく両者の混合物を作成し、該混合物を、溶融した残余の芳香族ポリアミドに供給し、溶融混練して、芳香族ポリアミドと導電性付与材のマスターペレットを製造する工程
(2)上記マスターペレットを、上記ポリフェニレンエーテルと、上記ポリアミドとポリフェニレンエーテルの相溶化剤との溶融混合物と溶融混練して溶融混合物ペレットを得る工程
(3)上記溶融混合物ペレットの水分を除去する工程
上述の工程をこの順に経ることにより、導電性樹脂組成物の射出成形時のMDの抑制とシルバーストリークス発生の抑制、及びシート押出時のダイリップ部への目やに生成の抑制効果が得られる。
この際に、芳香族ポリアミドとして粉体状の芳香族ポリアミドを使用することにより、これら効果がより高められることは既述のとおりである。
本発明の樹脂組成物には、難燃剤を添加しても構わない。好ましく使用可能な難燃剤としては、リン酸エステル化合物、ホスファゼン化合物、ホスフィン酸塩類等が挙げられる。これらの中で特に好ましいのは、ホスフィン酸塩類である。
本発明で好適に使用可能なホスフィン酸塩は、下式(I)及び/又は下式(II)で表されるジホスフィン酸塩、又はこれらの縮合物(本明細書中では、すべてにわたりホスフィン酸塩類と略記することがある)である。
これらホスフィン酸塩類は、本質的にモノマー性化合物であるが、反応条件に依存して、環境によっては縮合度が1〜3の縮合物であるポリマー性ホスフィン酸塩も含まれる。
本発明で使用可能なホスフィン酸塩類は、より高い難燃性の発現、及びMD発生の抑制の観点から、下式(I)で表されるホスフィン酸塩を90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、最も好ましくは98質量%以上含んでいることが好ましい。
また好ましく使用可能な金属成分としてはカルシウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、亜鉛イオン、ビスマスイオン、マンガンイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン及び/又はプロトン化された窒素塩基から選ばれる1種以上であり、より好ましくは、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、亜鉛イオンから選ばれる1種以上である。
本発明において、好ましいホスフィン酸塩類の量は、芳香族ポリアミド及びポリフェニレンエーテルの合計100質量部に対し、1〜50質量部であり、さらに好ましくは、2〜25質量部、特に好ましくは2〜15質量部、最も好ましくは3〜10質量部である。充分な難燃性を発現させるためにはホスフィン酸塩類の量は1質量部以上が好ましく、押出加工に適した溶融粘度にするにはホスフィン酸塩類の量は50質量部以下が好ましい。
ホスフィン酸塩類の数平均粒子径を0.1μm以上とすると、溶融混練等の加工時において、取扱い性や押出し機等への噛み込み性が向上し好ましい。また、平均粒子径を40μm以下とすることにより、樹脂組成物の機械的強度が発現し易くなり、かつ成形品の表面良外観が向上する。
また、本発明におけるホスフィン酸塩類は、本発明の効果を損なわなければ、未反応物又は副生成物が残存していても構わない。
具体的には、末端アミノ基濃度が5μモル/g以上、45μモル/g以下の芳香族ポリアミド80〜40質量部、ポリフェニレンエーテル20〜60質量部、ポリアミドとポリフェニレンエーテルの相溶化剤0.05〜5質量部を含む樹脂組成物であって、ポリフェニレンエーテルが分散相、芳香族ポリアミドが連続相であるモルフォロジーを有する樹脂組成物である。
このときの透明性の指標は、全光線透過率(JIS K7361−1)が10%以上であって、かつヘーズ(JIS K7136)が95%以下であるものである。
成形体の全光線透過率(JIS K7361−1)は、15%以上であることが好ましく、より好ましくは、20%以上である。全光線透過率は、成形体の厚みにより変化するものであるが、ここでの全光線透過率は、射出成形体やシートにおける厚みが2.5mmの部分の全光線透過率で表す。
本発明の透明性を有する成形体のヘーズ値(JIS K7136)の好ましい範囲は、92%以下であり、より好ましくは90%以下、さらに好ましくは85%以下、特に好ましくは80%以下である。
この場合においても、ヘーズ値は特に、射出成形体やシートにおける厚みが2.5mmの部分での測定結果である。
なお、本発明における全光線透過率の測定は、JIS K7361−1:1996に準拠し、ヘーズの測定は、JIS K7136:2000に準拠した。また一般に、ヘーズは、全光線透過率に対する拡散透過率の比として定義される。
また、本発明の透明性を有する成形体を構成する樹脂組成物には、透明性を損なわない範囲であれば、本発明の樹脂組成物に加えてよいとしているものはすべて添加可能である。
本発明の樹脂組成物、フィルム又は透明性を有する成形体では、上記した成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲で必要に応じて付加的成分を添加しても構わない。
難燃剤(ハロゲン化された樹脂、シリコーン系難燃剤、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ポリ燐酸アンモニウム、赤燐など)、滴下防止効果を示すフッ素系ポリマー、流動性改良材(オイル、低分子量ポリオレフィン、ポリエチレングリコール、脂肪酸エステル類等)、及び三酸化アンチモン等の難燃助剤、帯電防止剤、各種過酸化物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、染料、顔料、添着剤、等である。これら付加的成分のそれぞれの配合量は、ポリアミドとポリフェニレンエーテルの合計100質量部に対して、20質量部を超えない範囲であり、合計量としては50質量部を超えない範囲である。
この際の加工機械のシリンダー設定温度は特に限定されるものではなく、通常240〜360℃の中から好適な組成物が得られる条件を任意に選ぶことができるが、好ましい設定温度は300〜350℃の範囲である。
本発明の樹脂組成物は、多くの優れた特性を有するため、上述したような成形プロセスを経て、自動車部品、工業材料、産業資材、電気電子部品、機械部品、事務機器用部品、家庭用品、シート、フイルム、繊維、その他の任意の形状及び用途の各種成形品の製造に有効に使用することができる。
具体的には、本発明は、テレフタル酸単位を60〜100モル%含有するジカルボン酸単位(a)と、1,9−ノナメチレンジアミン単位(b−1)及び/又は2−メチル−1,8−オクタメチレンジアミン単位(b−2)を60〜100モル%含有するジアミン単位(b)とからなる芳香族ポリアミド80〜40質量部、ポリフェニレンエーテル20〜60質量部、ポリアミドとポリフェニレンエーテルの相溶化剤0.05〜5質量部を含む樹脂組成物からなる厚みが1〜200μmのフィルム又はシートを提供する。
また、フィルムに供される樹脂組成物には、本発明の樹脂組成物に加えてよいとしているものはすべて添加可能である。
本発明のフィルムは、本発明の樹脂組成物を原料とし、押出フィルム成形等により得ることもできるし、本発明の樹脂組成物を構成する各々の成分を押出フィルム成形機に直接投入し、混練とフィルム成形を同時に実施して得ることもできる。
また、本発明のフィルムは、Tダイ押出成形によっても製造することができる。この場合、無延伸のまま用いてもよいし、1軸延伸してもよいし、2軸延伸することによっても得られる。フィルムの強度を高めたい場合は、延伸することにより達成することができる。また、多層Tダイ押し出し成形方法により、本発明のポリアミド−ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物と他の樹脂との多層フィルムを得ることができる。
用途の例としては、例えば、プリント基板材料、プリント基板周辺部品、半導体パッケージ、データ系磁気テープ、APS写真フィルム、フィルムコンデンサー、絶縁フィルム、モーターやトランスなどの絶縁材料、スピーカー振動板、自動車用フィルムセンサー、ワイヤーケーブルの絶縁テープ、TABテープ、発電機スロットライナ層間絶縁材料、トナーアジテーター、リチウムイオン電池などの絶縁ワッシャー、などが挙げられる。
(用いた原料)
1.芳香族ポリアミド(ポリアミド9T)の製造
特開2000−103847号公報の実施例に記載されている方法に従い、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸、ジアミン成分として1,9−ノナメチレンジアミン及び2−メチル−1,8−オクタメチレンジアミン、末端封止剤としてオクチルアミン又は安息香酸、重合触媒として次亜リン酸ナトリウム一水和物、及び蒸留水を、オートクレーブに入れ密閉した(反応系における水分量25重量%)。オートクレーブを充分、窒素置換した後、撹拌しながら2時間かけて、内部温度を260℃まで昇温し、そのまま反応させた。この時の内部圧力は46気圧を示した。
更に、この粉末状一次重縮合物を、窒素雰囲気下で、攪拌しながら2時間かけて250℃まで昇温し、更にそのまま所定時間、固相重合を行った。
末端封止材の種類と量を適宜変更し、更に、固相重合の時間を調整することにより、種々の末端基濃度と固有粘度を有する芳香族ポリアミドを得た。
得られた芳香族ポリアミドの末端封止率と末端基濃度の測定は、特開平7−228689号公報の実施例に記載されている末端封止率の測定に従い実施し、リン元素の定量はThermoJarrellAsh製IRIS/IPを用いて、高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分析により、波長213.618(nm)で実施した。
PPE−1:還元粘度が0.52dl/g(0.5g/dl、クロロホルム溶液、30℃で測定)
PPE−2:還元粘度が0.41dl/g(0.5g/dl、クロロホルム溶液、30℃で測定)
SEBS−1:ポリスチレン−水素添加ポリブタジエン−ポリスチレンブロック共重合体
数平均分子量=246,000
スチレン成分合計含有量=33%
SEBS−2:ポリスチレン−水素添加ポリブタジエン−ポリスチレンブロック共重合体
数平均分子量=110,000
スチレン成分合計含有量=67%
MAH:無水マレイン酸 商品名:CRYSTALMAN−AB(日本油脂社製)
CA:クエン酸一水和物 (和光純薬社製)
FA:フマル酸 (和光純薬製)
5.結晶造核剤
タルク−1:平均粒子径2.5μmのタルク(表面処理なし)
タルク−2:平均粒子径5.0μmのタルク(表面処理なし)
GF−1:ノボラックエポキシ系化合物で集束された繊維径13μmのチョップドストランドガラス繊維
ECS03T−747 日本電気硝子社製
GF−2:アクリル系化合物で集束された繊維径13μmのチョップドストランドガラス繊維
ECS03T−297 日本電気硝子社製
7.導電性付与材
KB:ケッチェンブラック EC600JD
PA66:ポリヘキサメチレンアジパミド
固有粘度[η]:2.0
末端アミノ基濃度が33μmol/g、末端カルボキシル基濃度が39μmol/g
9.ジエチルホスフィン酸アルミニウム
DEP: Exolit OP930 (クラリアントジャパン社製) 平均粒子径5μm
押出機上流部に1カ所、中流部に1カ所の供給口を有する二軸押出機[ZSK−25:コペリオン社製(ドイツ)]を用いて、上流部供給口から下流部供給口の手前までを320℃、中流部供給口からダイまでを280℃に設定し、スクリュー回転数300rpm、吐出量15kg/hで、上流部供給口から40質量部のPPE−1、10質量部のSEBS−1、0.4質量部のMAHを供給し、溶融混練した後、中流部供給口から50質量部のPA9T、及び0.05質量部のタルク−1を供給して、溶融混練し、押出し、切断し、樹脂組成物ペレットを作製した。なお、SEBS、MAHはタンブラーで混合したものを用い、PPEはこれらとは別の供給装置を用いて押出機に供給した。また、PA9Tとタルク−1はヘンシェルミキサーを用いて、700rpmで3分間混合したものを用いた。
この得られたペレットは、押出した直後に80℃の熱風乾燥機中に入れ、付着水を蒸発させた後、吸水を防ぐため、アルミコート防湿袋に入れた。
<MVR>
樹脂ペレットをISO1133に準拠し、シリンダー温度310℃、荷重5kgでMVRを測定した。
<アイゾッド衝撃強度>
樹脂ペレットをIS−80EPN成形機(東芝機械社製)でシリンダー温度330℃金型温度130℃の条件で、ISO294−1に準拠した4mm厚みの多目的試験片及び50×90×2.5mmの平板状試験片を成形した。
<引張伸度>
得られた多目的試験片を用いて、ISO527−1に準拠し引張伸度を測定した。
50(流動方向)×90(流動直角方向)×2.5mm(厚み方向)の平板状試験片を、厚み方向はそのままとし、10mm(流動方向)×4mm(流動直角方向)の形状に精密カットソーを用いて切削を行い、直方体形状の試験片を得た。得られた試験片を用いて、TMA−7(パーキン・エルマー社製)を用いて、流動方向の線膨張係数を窒素雰囲気下で測定した。以下のような条件で測定を行い、−30℃〜120℃の範囲の線膨張係数を計算した。
測定温度範囲:−50℃〜150℃
昇温速度:5℃/分
プリロード荷重:10mN
得られた50×90×2.5mmの平板状試験片を用いて、グラフィックインパクトテスター(東洋精機社製)を用いて、ホルダ径φ40mm、ストライカー径12.7mm、ストライカー重量6.5kgを使用し、高さ128cmから衝撃試験を行い、全吸収エネルギーを23℃及び−30℃の2つの温度条件下で測定した。なお、測定温度は23℃と−30℃で測定した。−30℃の測定は、−30℃に設定した恒温槽中に少なくとも30分間温度調整を実施したものを素早く取り出し、面衝撃強度を測定した。
IS−80EPN成形機を用いてシリンダー温度340℃、金型温度140℃で、ウェルド強度測定用の成形片を成形した。ウェルド強度測定用の試験片は、長さ128mm、幅12.8mm、厚み0.8mmの試験片であり、樹脂流入のためのゲートが長さ方向の両端に存在するものであり、この両端より流入した樹脂が試験片中央部で衝突し、ウェルド部を形成するものである。なお、このときブランクとして、片方のゲートを閉じて、ウェルド部が生じない同寸法の試験片も成形した。
例5及び例6(比較)
例7(本発明)
N/I比が95/5であるPA9Tを用いた以外は、すべて例4と同様に実施した。例7で使用したPA9Tとここで使用したPA9Tは、N/I比が異なるという事を除くと、すべて同じである。得られた結果を表1に示す。
例8(本発明)
ポリアミド9Tを末端アミノ基濃度が10μmol/gのPA9Tと、30μmol/gのPA9Tの混合物とした以外は、すべて例3と同様に実施した。なお、このPA9T混合物の末端アミノ基濃度は、例3と同じになるよう配合比で調節した。得られた結果を表1に示す。
押出機上流部に1カ所、中流部に1カ所、下流部に更に1カ所の供給口を有する二軸押出機(ZSK−40MC:コペリオン社製(ドイツ))を用いて、シリンダー設定温度はすべて320℃に設定し、スクリュー回転数450rpm、吐出量150kg/hの条件で、上流部供給口より18質量部のPPE−2、0.3質量部のMAHを供給し溶融混練した後、中流部供給口より42質量部のPA9T、及び0.1質量部のタルク−1を供給し、下流部供給口から、40質量%のGF−1及び10質量%のDEP(質量%表記:全樹脂組成物を100質量%をベース)を供給して、溶融混練し、押出し、切断し、樹脂組成物ペレットを作製した。なお、PPEとMAHの混合物及びPA9Tとタルク−1の混合物は、ヘンシェルミキサーで700rpmで3分間混合したものをそれぞれ用いた。
この得られたペレットは、押出した直後に80℃の熱風乾燥機中に入れ、付着水を蒸発させた後、吸水を防ぐため、アルミコート防湿袋に入れた。
<荷重たわみ温度>
樹脂ペレットをIS−80EPN成形機(東芝機械社製)でシリンダー温度330℃金型温度130℃の条件で、ISO294−1に準拠した4mm厚みの多目的試験片を成形した。
得られた多目的試験片を用いてISO75に準拠し、0.45MPa荷重での荷重たわみ温度と1.8MPaでの荷重たわみ温度を測定した。
同じ成形機を用いてシリンダー温度340℃、金型温度140℃で、長さ128mm、幅12.8mm、厚み0.8mmの試験片を作成した。
得られた長さ128mm、幅12.8mm、厚み0.8mmの試験片を、80℃の水中に48時間浸漬し、取り出し、23℃、50%湿度の雰囲気中に240時間放置した。
このときの浸漬前の成形片の重量と、浸漬後240時間放置した成形片の重量から、成形片の吸水率を下式により計算した。
[(浸漬後240時間放置した後の成形片の重量)/(浸漬前の成形片の重量)−1]×100
吸水率測定で使用した、温水浸漬後240時間調湿した成形片を、熱風リフロー炉で加熱して、成形片におけるブリスター(発泡)の発生の有無と、変色の度合いを確認し、以下の基準で判定した。
++:ブリスターの発生なし。成形片の変色もなしか、ごくわずかな変色のみ。
+ :ブリスターの発生なし。成形片の明らかな変色が確認される。
− :部分的にブリスターが発生する。
−−:全面にブリスターが発生する。
なお、このとき使用した熱風リフロー炉としては、鉛フリーハンダ対応エアリフロー炉 RA−MS(松下電工社製)を用い、温度設定は、ヒーター1〜8までを181℃〜186℃、ヒーター9及び10を200℃、ヒーター11及び12を238℃、ヒーター13及び14を275℃に設定した。また、リフロー炉内のコンベア−ベルト速度は0.45m/分とした。この条件下において、炉内の温度プロファイルを確認したところ、140℃〜200℃の熱暴露時間が86秒、220℃以上の熱暴露時間が56秒、260℃以上の熱暴露時間が8秒であり、最高到達温度は、263℃であった。
UL94(米国Under Writers Laboratories Incで定められた規格)の方法を用いて、1サンプル当たり、それぞれ5本ずつ測定を行った。なお試験片(長さ127mm、幅12.7mm、厚み1.6mm)は射出成形機(東芝機械(株)製:IS−80EPN)を用いて成形した。成形はシリンダー温度330℃、金型
温度150℃で実施した。
分類方法の概要は以下の通りである。その他詳細はUL94規格に準ずる。
V−0:平均燃焼時間5秒以下 最大燃焼時間10秒以下 有炎滴下なし
V−1:平均燃焼時間25秒以下 最大燃焼時間30秒以下 有炎滴下なし
V−2:平均燃焼時間25秒以下 最大燃焼時間30秒以下 有炎滴下あり
タルク−1を配合しなかった以外はすべて例9と同様に実施した。結果を表2に示す。
例11(本発明)
PA9Tとして末端アミノ基濃度が30μmol/gのPA9Tを使用した以外はすべて例9と同様に実施した。結果を表2に示す。
例12(比較)
タルク−1を配合しなかった以外はすべて例11と同様に実施した。結果を表2に示す。
例13(本発明)
タルク−1をあらかじめ、PA9Tに溶融混練したマスターバッチとした以外はすべて例11と同様に実施した。結果を表2に示す。
なお、マスターバッチは、100質量部のPA9Tと、0.24質量部のタルク−1をヘンシェルミキサーで700rpmで3分間混合して、混合物を作成し、次いでその混合物を、押出機上流部に1カ所だけ供給口を有する二軸押出機を用いて、シリンダー設定温度はすべて320℃に設定し、スクリュー回転数300rpm、吐出量70kg/hの条件で溶融混練を実施した。
タルクをタルク−2に変更した以外はすべて例7と同様に実施した。結果を表2に示す。
例15(本発明)
タルク−1の配合量を0.01質量部とした以外はすべて例7と同様に実施した。結果を表2に示す。
例16(本発明)
N/I比が70/30であるPA9Tを用いた以外はすべて、例9と同様に実施した。例9で使用したPA9Tとここで使用したPA9Tは、N/I比が異なるということを除くと、すべて同じである。結果を表2に示す。
例17(本発明)
ガラス繊維をGF−2に変更した以外はすべて例11と同様に実施した。結果を表2に示す。
押出機上流部に1カ所、中流部に1カ所の供給口を有する二軸押出機(TEM58SS:東芝機械社製(日本))を用いて、シリンダー設定温度はすべて320℃に設定し、スクリュー回転数400rpm、吐出量450kg/hの条件で、上流部供給口から18質量部のPPE−1、18質量部のPPE−2、6質量部のSEBS−1、4質量部のSEBS−2、及び0.2質量部の相溶化剤(例18は、MAH、例19ではCA、例20は添加せず)を供給し、溶融混練した後、中流部供給口から52質量部のPA9T、0.1質量部のタルク−1、100ppmのヨウ化銅、2000ppmのヨウ化カリウム、及び2.0質量部のKBを供給し、押出し、切断し、樹脂組成物ペレットを作製した。なお、1質量部のPPE−1、SEBSー1、SEBS−2及び相溶化剤はタンブラーで混合したものを用い、残りのPPE−1及びPPE−2は、それぞれ別の供給装置を用いて押出機に供給した。また、PA9T、タルク−1、ヨウ化銅、ヨウ化カリウム及びKBの混合物は、ヘンシェルミキサーで700rpmで3分間混合したものを用いた。
この得られたペレットは、押出した直後に80℃の熱風乾燥機中に入れ、付着水を蒸発させた後、吸水を防ぐため、アルミコート防湿袋に入れた。
<アイゾッド衝撃強度>
例1で実施した要領で実施した。
<ウェルド強度保持率>
例1で実施した要領で実施した。
<分散粒子径>
ウルトラミクロトームを用いて、得られたペレットの樹脂の流動方向が観察できる方向で厚み80nmの超薄切片を作成し、それを透過型電子顕微鏡で観察した。その結果いずれのサンプルも、芳香族ポリアミドが連続相を形成し、ポリフェニレンエーテルが分散相を形成していることが確認された。また、5,000倍の観察倍率で写真を10枚撮影し、得られた電子顕微鏡写真を元に、PPE分散粒子の平均粒子径を求めた。具体的には、分散粒子径を恣意的ではなく任意に1000個の分散粒子について、その短径と長径を測定し、両者の平均を求め、それぞれの粒子径を特定し、その数平均粒子径(Σdi/ni)を算出した。
アイゾッド衝撃試験で用いた多目的試験片の中央部から両端方向に25mm離れた位置に、カッターナイフで約0.3〜0.5mmの切り込みを入れた後、ドライアイス/メタノールの冷却液中に試験片を約30分間浸漬した。その後、試験片を取り出し、両端を折り取り、長さ方向が50mmの直方体形状の破断サンプルを得た。この破断面に銀ペーストを塗布し、充分乾燥した後、その両端間の抵抗値をエレクトロメーター(アドバンテスト製、R8340A)を用いて、250Vの印加電圧で測定した。得られた抵抗値を下式により体積固有抵抗値として表した。得られた結果を表3に示す。
(体積固有抵抗)=(電圧計で測定した電圧)×(試験片の断面積)/(試験片の長さ)
例1と同じ二軸押出機を用いて、上流部供給口からダイまでを320℃設定し、スクリュー回転数300rpm、吐出量15kg/hで、上流部供給口から40質量部のPPE−2、6質量部のSEBS−1、4質量部のSEBS−2、0.4質量部のMAHを供給し、溶融混練した後、下流部供給口から50質量部のPA9T、及び0.08質量部のタルク−1を供給して、溶融混練し、押出し、切断し、樹脂組成物ペレットを作製した。
なお、この時1質量部のPPE−1、SEBS−1及びSEBS−2のすべて、及びMAHはタンブラーで混合したものを用い、他のPPEはこれらとは別の供給装置を用いて押出機に供給した。また、PA9Tとタルク−1はヘンシェルミキサーを用いて、700rpmで3分間混合したものを用いた。
この得られたペレットは、押出した直後に80℃の熱風乾燥機中に入れ、付着水を蒸発させた後、吸水を防ぐため、アルミコート防湿袋に入れた。
<MVR>
例1と同様に測定を実施した。
<アイゾッド衝撃強度>
例1と同様に測定を実施した。
<引張伸度>
例1と同様に測定を実施した。
<面衝撃強度>
例1と同様に測定を実施した。
<4.5Mpa荷重時の荷重たわみ温度>
例1と同様に測定を実施した。
例22(本発明)
例21で使用したPA9Tのうち、その20質量%をPA66に変更した以外は、すべて例21と同様に実施した。結果を表4に示す。
例23(本発明)
例21で使用したPA9Tのうち、その50質量%をPA66に変更した以外は、すべて例21と同様に実施した。結果を表4に示す。
例3で得られたペレットを用いて、単軸押出し成形機(ユニオンプラスチック(株)製、スクリュー径40mm、L/D28)とコートハンガーダイ(幅400mm、ダイリップ間隔0.8mm)を用い、シリンダー温度320℃にてフィルム状に押出した。スクリュー及び引き取りロールの回転数を調整して、一軸方向に延伸がかかるように引き取りを実施し、厚みが100μmになるように調整した。この時に得られたフィルムの耐引き裂き性、及びフィルム厚みの均一性を評価した。
また、得られたフィルムをフィルムの表面温度が320℃となるようにヒーターの設定温度を調節して、カップ型の成形体への真空成形を実施した。カップの形状は開口部直径が3cm、底部直径が2cm、深さが2cmの形状である。その結果、厚みの均一性に優れる真空成形体が得られた。
フィルムの一端に、はさみで約5mmの切れ込みを入れ、延伸方向と垂直の方向に手で引き裂いた。その際に、引き裂き容易性を評価した。引き裂きが容易でなく、延伸方向へ引き裂き方向が変化するものを「+」と評価し、引き裂き方向が変化しないものを「−」と評価した。
<フィルム厚みの均一性>
得られたフィルムの延伸方向に対して垂直方向で5カ所、厚みを実測し、厚み変動の幅を評価基準とした。厚み変動が少ない方が良好なフィルムと位置づけられる。
シート押出時のダイとダイから約15cm水平方向に離れた位置にある第一ローラーとの間での溶融シート状樹脂のたれ具合(ドローダウン性)を以下の基準に従い目視で評価した。
+++:シート全体が均等に水平状態を保ったままでローラーまで到達し、ダイラインの発生なし
++:シート全体が均等に水平状態を保ったままでローラーまで到達するがダイラインが発生
+:ドローダウンが激しく、シートとしてはまともに成形できない。
例25(比較)
例5で得られたペレットを用いた以外は、すべて例25と同様に実施した。結果を表5に示す。
また、真空成形性を評価したが、カップの底部に穴が開き、良好な成形体を得ることができなかった。
例26(比較)
例6で得られたペレットを用いた以外は、すべて例25と同様に実施した。結果を表5に示す。
また、真空成形性を評価したが、成形体の開口部付近にシワが発生し、良好な成形体を得ることはできなかった。
例1で用いた二軸押出機のシリンダー温度をすべて320℃に設定し、スクリュー回転数300rpm、吐出量15kg/hで、上流部供給口から50質量部のPPE−2、0.5質量部のMAHを供給し、溶融混練した後、下流部供給口から50質量部のPA9T、及び0.05質量部のタルク−1を供給して、溶融混練し、押出し、切断し、樹脂組成物ペレットを作製した。なお、PPEとMAHの混合物及びPA9Tとタルク−1の混合物は、ヘンシェルミキサーで700rpmで3分間混合したものをそれぞれ用いた。
このとき用いたすべてのPA9Tは、平均粒子径約500μmの粉体であり、N/I比が、85/15であり、固有粘度[η]はほぼ1.2であり、ポリアミド9T中のリン元素濃度は約300ppmであった。
得られたペレットを30mmφの単軸押出し成形機に供給し、幅400mmのシート状に押出した。シートの厚みを測定したところ約2.5mmであった。このシートの全光線透過率、ヘーズ及び面衝撃強度を評価した。結果は、全光線透過率は26%であり、ヘーズは91%であり、充分な半透明性を有していた。面衝撃強度は約10Jであった。
上流部供給口から40質量部のPPE−2、10質量部のSEBS−2、0.4質量部のMAHとした以外はすべて例28と同様に行った。全光線透過率は、27%、ヘーズは87%であり、面衝撃強度は約28Jであった。
<全光線透過率及びヘーズ>
得られた約2.5mm厚のシートを50×90mm角のサイズに切り出し、濁度計NDH2000(日本電色工業(株)製)を用いて、全光線透過率の測定は、JIS K7361−1:1996に準拠し、ヘーズの測定は、JIS K7136:2000に準拠して測定を行った。なお、ヘーズは、全光線透過率に対する拡散透過率の比(百分率)として算出した。
得られたシートを50×90の大きさに切削し、平板状試験片として得た。この平板状試験片を用いて、例1に記載した面衝撃強度の測定法に従い、面衝撃強度を測定した。
例29(本発明)
例9で用いた二軸押出機の中流部供給口と下流部供給口を塞ぎ、シリンダー設定温度はすべて320℃に設定した。スクリュー回転数300rpm、吐出量100kg/hの条件で、上流部供給口から90質量のPA9T及び10質量部のKBを供給し、溶融混練し、押出し、切断し、導電性マスターバッチを作製した。以下、このマスターバッチを、MB−1と略記する。
このマスターバッチの製造時の状況に関して以下の指標で評価を行った。得られた結果を表6に示す。
この得られたペレットは、押出した直後に80℃の熱風乾燥機中に入れ、付着水を蒸発させた後、吸水を防ぐため、アルミコート防湿袋に入れた。
得られたペレットを用いて、導電性と、面衝撃強度を実施し、結果を表6に示す。
<マスターバッチ製造時の樹脂温度>
押出機のダイスから出てくるストランドの温度を熱電対で実測した。
ストランドの外観を以下の基準で評価した。
+++:平滑な表面を有するストランド
++:ざらつきを有するストランド
+:毛羽だった表面を有するストランド
<導電性>
例18〜19で実施した方法と同様の方法により測定した。
<面衝撃強度>
例1〜例4で実施した方法と同様の方法により測定した。
例29で用いた二軸押出機の中流部供給口を使用可能として、上流部供給口から90質量のPA9T、中流部供給口から10質量部のKBを供給し、溶融混練し、押出し、切断し、導電性マスターバッチを作製した。以下、このマスターバッチを、MB−2と略記する。マスターバッチの製造に関するそれ以外はすべて例29と同様に行った。
MB−2を用いた以外は、例29と同様に樹脂組成物ペレットを作製して、同様の評価を行った。結果を表6に示す。
例30で用いた二軸押出機を用いて、上流部供給口から50質量のPA9T、中流部供給口より40質量部のPA9T及び10質量部のKBを異なる供給装置を用いて供給し、溶融混練し、押出し、切断し、導電性マスターバッチを作製した。以下、このマスターバッチを、MB−3と略記する。マスターバッチの製造に関するそれ以外はすべて例29と同様に行った。
MB−2を用いた以外は、例29と同様に樹脂組成物ペレットを作製して、同様の評価を行った。結果を表6に示す。
PA9Tとして例13で製造したタルク−1をあらかじめPA9Tに溶融混練した予備混合物を用いた以外はすべて例31と同様に行い、マスターバッチを作成した。このマスターバッチをMB−4と略記する。
この時用いたPA9Tは、平均粒子径約400μmの粉体であり、N/I比が、85/15であり、固有粘度[η]は0.95であり、末端アミノ基濃度は10μmol/g、ポリアミド9T中のリン元素濃度は約300ppmであった。
次に例29と同様の評価を実施した。結果を表6に示す。
Claims (21)
- テレフタル酸単位を60〜100モル%含有するジカルボン酸単位(a)と、1,9−ノナメチレンジアミン単位(b−1)及び/又は2−メチル−1,8−オクタメチレンジアミン単位(b−2)を60〜100モル%含有するジアミン単位(b)とからなる芳香族ポリアミド、ポリフェニレンエーテル、ポリアミドとポリフェニレンエーテルの相溶化剤、及び結晶造核剤を含む樹脂組成物であって、該芳香族ポリアミドの末端アミノ基濃度が5μモル/g以上、45μモル/g以下であり、前記芳香族ポリアミドのジアミン単位中において、1,9−ノナメチレンジアミン単位(b−1)と2−メチル−1,8−オクタメチレンジアミン単位(b−2)の合計量に対する1,9−ノナメチレンジアミン単位(b−1)の比率が75〜90質量%である、上記樹脂組成物。
- 前記結晶造核剤の量が芳香族ポリアミドとポリフェニレンエーテルの合計100質量部に対して0.01〜1質量部である、請求項1に記載の樹脂組成物。
- 前記芳香族ポリアミドの末端アミノ基濃度が10μモル/g以上、35μモル/g以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。
- 前記芳香族ポリアミドの末端封止率が、45%以上、85%以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。
- 前記芳香族ポリアミドが平均粒子径200〜1000μmの粉体状である、請求項1に記載の樹脂組成物。
- 前記芳香族ポリアミドとポリフェニレンエーテルの相溶化剤の量が、前記芳香族ポリアミドと前記ポリフェニレンエーテルの合計100質量部に対して0.05〜5質量部である、請求項1に記載の樹脂組成物。
- 前記芳香族ポリアミドとポリフェニレンエーテルの相溶化剤がマレイン酸又はその無水物である、請求項1に記載の樹脂組成物。
- 前記芳香族ポリアミドと前記ポリフェニレンエーテルの合計量に対して、前記芳香族ポリアミドの比率が40〜80質量%、前記ポリフェニレンエーテルの比率が20〜60質量%である、請求項1に記載の樹脂組成物。
- 更に、導電性付与材を、樹脂組成物の全質量に対して0.1〜10質量%の量で含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
- 前記導電性付与材として、導電性カーボンブラックを、前記芳香族ポリアミドと前記ポリフェニレンエーテルの合計100質量部に対して0.5〜5質量部含む、請求項9に記載の樹脂組成物。
- 更に、強化無機フィラーを含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
- 前記強化無機フィラーがエポキシ化合物で集束されたガラス繊維である、請求項11に記載の樹脂組成物。
- 前記強化無機フィラーの量が、樹脂組成物の全質量に対して10〜60質量%である、請求項11に記載の樹脂組成物。
- 脂肪族ポリアミドを、前記芳香族ポリアミド100質量部に対して100質量部以下の量で含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
- 前記脂肪族ポリアミドが、炭素数4〜8の脂肪族ジアミンと炭素数4〜8の脂肪族ジカルボン酸からなる脂肪族ポリアミド、炭素数6〜8のラクタム類からなる脂肪族ポリアミド、及びアミノカルボン酸からなる脂肪族ポリアミドからなる群から選ばれる1種以上である、請求項14に記載の樹脂組成物。
- 前記脂肪族ポリアミドの末端アミノ基濃度が、前記芳香族ポリアミドの末端アミノ基濃度より大きい、請求項15に記載の樹脂組成物。
- 芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックと共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックとを含むブロック共重合体であって、ここで、該ブロック共重合体中の、芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックのうちの一つのブロックの分子量が15,000〜50,000の範囲内である上記ブロック共重合体である衝撃改良材を、前記ポリフェニレンエーテル100質量部に対して10〜70質量部の量で、更に含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
- 請求項1記載の樹脂組成物を含むSMT対応部品。
- 請求項1記載の樹脂組成物を含む、厚みが1〜200μmのフィルム。
- テレフタル酸単位を60〜100モル%含有するジカルボン酸単位(a)と、1,9−ノナメチレンジアミン単位(b−1)及び/又は2−メチル−1,8−オクタメチレンジアミン単位(b−2)を60〜100モル%含有するジアミン単位(b)とからなる芳香族ポリアミド80〜40質量部、ポリフェニレンエーテル20〜60質量部、及びの合計100質量部に対し、ポリアミドとポリフェニレンエーテルの相溶化剤0.05〜5質量部、及び結晶造核剤0.001〜5質量部を含む樹脂組成物であって、該芳香族ポリアミドの末端アミノ基濃度が5μモル/g以上、45μモル/g以下であり、前記芳香族ポリアミドのジアミン単位中において、1,9−ノナメチレンジアミン単位(b−1)と2−メチル−1,8−オクタメチレンジアミン単位(b−2)の合計量に対する1,9−ノナメチレンジアミン単位(b−1)の比率が75〜90質量%であり、該ポリフェニレンエーテルが分散相であり、該芳香族ポリアミドが連続相であるモルフォロジーを有し、全光線透過率(JIS K7361−1)が10%以上であって、かつヘーズ(JIS K7136)が95%以下である、上記樹脂組成物を含むことを特徴とする半透明性成形体。
- テレフタル酸単位を60〜100モル%含有するジカルボン酸単位(a)と、1,9−ノナメチレンジアミン単位(b−1)及び/又は2−メチル−1,8−オクタメチレンジアミン単位(b−2)を60〜100モル%含有するジアミン単位(b)とからなる芳香族ポリアミド、ポリフェニレンエーテル、ポリアミドとポリフェニレンエーテルの相溶化剤、結晶造核剤及び導電性付与材を含み、該芳香族ポリアミドの末端アミノ基濃度が5μモル/g以上、45μモル/g以下であり、前記芳香族ポリアミドのジアミン単位中において、1,9−ノナメチレンジアミン単位(b−1)と2−メチル−1,8−オクタメチレンジアミン単位(b−2)の合計量に対する1,9−ノナメチレンジアミン単位(b−1)の比率が75〜90質量%である、上記樹脂組成物の製造方法であって、以下の工程をその順に経ることを特徴とする上記方法:
(1)該芳香族ポリアミドの一部と該導電性付与材を溶融することなく両者の混合物を作成し、該混合物を、溶融した残余の芳香族ポリアミドに供給し、溶融混練して、芳香族ポリアミドと導電性付与材のマスターペレットを製造する工程、
(2)該マスターペレットを、該ポリフェニレンエーテルと、該ポリアミドとポリフェニレンエーテルの相溶化剤との溶融混合物と溶融混練して溶融混合物ペレットを得る工程、
及び
(3)該溶融混合物ペレットの水分を除去する工程。
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