本発明を具体的に説明する前に、概要を述べる。本発明の実施例は、ふたつの無線装置(以下、便宜上、「第1無線装置」と「第2無線装置」という)によって構成されるMIMOシステムに関する。MIMOシステムにおける第1無線装置と第2無線装置は、共にアダプティブアレイ信号処理を実行する。また、MIMOシステムは、アンテナの本数、変調方式、誤り訂正の符号化率の各値を変えることによって、データレートを変更する。その際、送信側の無線装置は、受信側の無線装置に対してレート要求信号を送信する。例えば、第1無線装置が第2無線装置にデータを送信する場合、第1無線装置は、第2無線装置に対して、レート要求信号を送信する。
第2無線装置は、自らのレート情報を第1無線装置に通知するが、当該レート情報は、以下の場合に誤りを含む。ひとつ目は、第2無線装置がレート情報を決定してからある程度の期間を要している場合である。ふたつ目は、第2無線装置がレート情報を決定したときと、第1無線装置からのデータを受信するときにおいて、送信に使用される第1無線装置のアンテナの本数が異なる場合である。なお、これらの具体的な説明は、後述する。本実施例に係る第1無線装置は、第2無線装置から取得するレート情報を正確なものにするために、レート要求信号を送信する際に、トレーニング信号も付加する。その結果、第2無線装置は、トレーニング信号によってレート情報を更新できるので、レート情報が正確になる。
また、第1無線装置から第2無線装置にデータを送信する場合、第1無線装置は、トレーニング信号にもとづいて、送信ウエイトベクトルを予め導出してなければならない。そのために、第1無線装置は、第2無線装置にトレーニング信号の送信を要求する(以下、要求のための信号を「トレーニング要求信号」という)。第2無線装置は、トレーニング要求信号にしたがい、第1無線装置にトレーニング信号を送信する。その際、消費電力を低減するために、第2無線装置は、すべてのアンテナからトレーニング信号を送信するのではなく、第1無線装置からデータを受信すべきアンテナからトレーニング信号を送信する。
また、データを送信するアンテナの数よりも、トレーニング信号を送信するアンテナの数が大きい場合、受信側においてデータに誤りが生じたり、伝送路特性の推定精度が悪化する場合がある。トレーニング信号の電力に合わせて受信側がAGCの利得を設定した場合、データに対する増幅が不十分になって、データに誤りが生じる可能性がある。また、データの電力に合わせて受信側がAGCの利得を設定した場合、伝送路特性を推定する際にデータに歪みが生じる可能性がある。そのため、実施例に係る第1無線装置や第2無線装置(以下、これらを総称して「無線装置」という)では、トレーニング信号を送信するアンテナの数が、データを送信するアンテナの数よりひとつ多くなるように設定する。さらに、データを送信するアンテナの数を段階的に増加させることによって、トレーニング信号を送信するアンテナの数を増加させる。
図1は、本発明の実施例に係るマルチキャリア信号のスペクトルを示す。特に、図1は、OFDM変調方式での信号のスペクトルを示す。OFDM変調方式における複数のキャリアのひとつをサブキャリアと一般的に呼ぶが、ここではひとつのサブキャリアを「サブキャリア番号」によって指定するものとする。ここでは、IEEE802.11a規格と同様に、サブキャリア番号「−26」から「26」までの53サブキャリアが規定されている。なお、サブキャリア番号「0」は、ベースバンド信号における直流成分の影響を低減するため、ヌルに設定されている。それぞれのサブキャリアは、可変に設定された変調方式によって変調されている。変調方式には、BPSK(Binary Phase Shift Keying)、QSPK(Quadrature Phase Shift Keying)、16QAM(Quadrature Amplitude Modulation)、64QAMのいずれかが使用される。
また、これらの信号には、誤り訂正方式として、畳み込み符号化が適用されている。畳み込み符号化の符号化率は、1/2、3/4等に設定される。さらに、MIMOシステムにおいて使用されるアンテナの本数は、可変に設定される。その結果、変調方式、符号化率、アンテナ本数の値が可変に設定されることによって、データレートも可変に設定される。以下、前述のごとく、データレートに関する情報を「レート情報」というが、レート情報は、変調方式、符号化率、アンテナ本数のそれぞれの値を含む。ここでは、特に必要のない限り、変調方式、符号化率、アンテナ本数のそれぞれの値を説明しないものとする。
図2は、本発明の実施例に係る通信システム100の構成を示す。通信システム100は、無線装置10と総称される第1無線装置10a、第2無線装置10bを含む。また、第1無線装置10aは、アンテナ12と総称される第1アンテナ12a、第2アンテナ12b、第3アンテナ12c、第4アンテナ12dを含み、第2無線装置10bは、アンテナ14と総称される第1アンテナ14a、第2アンテナ14b、第3アンテナ14c、第4アンテナ14dを含む。第1無線装置10aと第2無線装置10bのうちの一方が、送信装置に対応し、他方が受信装置に対応する。また、第1無線装置10aと第2無線装置10bのうちの一方が基地局装置に対応し、他方が端末装置に対応する。
通信システム100の構成を説明する前に、MIMOシステムの概略を説明する。データは、第1無線装置10aから第2無線装置10bに送信されているものとする。第1無線装置10aは、第1アンテナ12aから第4アンテナ12dのそれぞれから、異なったデータを送信する。その結果、データレートが高速になる。第2無線装置10bは、第1アンテナ14aから第4アンテナ14dによって、データを受信する。さらに、第2無線装置10bは、アダプティブアレイ信号処理によって、受信したデータを分離して、第1アンテナ12aから第4アンテナ12dのそれぞれから送信されたデータを独立に復調する。
ここで、アンテナ12の本数は「4」であり、アンテナ14の本数も「4」であるので、アンテナ12とアンテナ14の間の伝送路の組合せは「16」になる。第iアンテナ12iから第jアンテナ14jとの間の伝送路特性をhijと示す。図中において、第1アンテナ12aと第1アンテナ14aとの間の伝送路特性がh11、第1アンテナ12aから第2アンテナ14bとの間の伝送路特性がh12、第2アンテナ12bと第1アンテナ14aとの間の伝送路特性がh21、第2アンテナ12bから第2アンテナ14bとの間の伝送路特性がh22、第4アンテナ12dから第4アンテナ14dとの間の伝送路特性がh44と示されている。なお、これら以外の伝送路は、図の明瞭化のために省略する。
第2無線装置10bは、アダプティブアレイ信号処理によって、第1アンテナ12aから第2アンテナ12bによってそれぞれ送信されたデータを独立して復調できるように動作する。さらに、第1無線装置10aも、第1アンテナ12aから第4アンテナ12dに対してアダプティブアレイ信号処理を実行する。このように送信側である第1無線装置10aにおいてもアダプティブアレイ信号処理を実行することによって、MIMOシステムにおける空間の分割を確実にする。その結果、複数のアンテナ12において送信される信号間の干渉が小さくなるので、データの伝送特性を向上できる。
第1無線装置10aは、第1アンテナ12aから第4アンテナ12dから、それぞれ異なったデータを送信する。また、送信すべきデータのレートや容量に応じて、第1無線装置10aは、使用すべきアンテナ12の本数を制御する。例えば、送信すべきデータの容量が大きければ、「4」本のアンテナ12を使用し、送信すべきデータの容量が小さければ、「2」本のアンテナ12を使用する。また、第1無線装置10aは、使用すべきアンテナ12の本数を決定する際に、第2無線装置10bにおけるレート情報を参照する。例えば、第2無線装置10bが「2」本のアンテナ14による受信を指示する場合に、第1無線装置10aは、「2」本のアンテナ12を使用する。さらに、第1無線装置10aは、データを送信する際に、アンテナ12に対してアダプティブアレイ信号処理を実行する。そのため、第1無線装置10aは、第2無線装置10bからトレーニング信号を予め受信し、トレーニング信号にもとづいて送信ウエイトベクトルを導出する。詳細は後述する。
なお、第1無線装置10aは、少なくともひとつのデータとして、少なくともひとつの系列を規定し、後述のステアリング行列によって、系列の数を複数のアンテナ12の数に拡張させつつ、複数のアンテナ12から送信を実行してもよい。ここで、ステアリング行列の処理対象となるデータを「系列」という。また、複数のアンテナ12にそれぞれ対応したデータ自体も「系列」と呼ぶものとする。さらに、系列には、トレーニング信号等の既知の信号が含まれてもよい。トレーニング信号に含まれる既知の信号のそれぞれが、「系列」として規定されてもよい。
第2無線装置10bは、第1アンテナ14aから第4アンテナ14dに対して、アダプティブアレイ信号処理を実行して、第1無線装置10aからのデータを受信する。また、前述のごとく、第2無線装置10bは、第1無線装置10aに対して、レート情報を通知したり、トレーニング信号を送信する。なお、第1無線装置10aと第2無線装置10bの動作が、反対になってもよい。
図3(a)−(b)は、通信システム100でのバーストフォーマットの構成を示す。図3(a)は、使用されるアンテナ12の数が「2」である場合のバーストフォーマットである。図の上段が、第1アンテナ12aから送信されるバースト信号を示し、図の下段が、第2アンテナ12bから送信されるバースト信号を示す。「Legacy STS(Short Training Sequence)」、「Legacy LTS(Long Training Sequence)」、「Legacy シグナル」は、IEEE802.11a規格に準拠した無線LANシステムのごとく、MIMOに対応していない通信システムと互換性を有する信号である。「Legacy STS」は、タイミング同期およびAGC(Automatic Gain Control)等に使用され、「Legacy LTS」は、伝送路推定に使用され、「Legacy シグナル」は、制御情報を含む。「MIMOシグナル」以降は、MIMOシステムに特有の信号であり、「MIMOシグナル」は、MIMOシステムに対応した制御情報を含む。「第1MIMO−STS」と「第2MIMO−STS」は、タイミング同期およびAGC等に使用され、「第1MIMO−LTS」と「第2MIMO−LTS」は、伝送路推定に使用され、「第1データ」と「第2データ」は、送信すべきデータである。
図3(b)は、図3(a)と同様に、データの送信のために「2」本のアンテナ12が使用される場合のバーストフォーマットである。しかしながら、前述のトレーニング信号が付加されている。トレーニング信号は、図中において、「第1MIMO−STS」、「第1MIMO−LTS」から「第4MIMO−STS」、「第4MIMO−LTS」に対応する。また、「第1MIMO−STS」、「第1MIMO−LTS」から「第4MIMO−STS」、「第4MIMO−LTS」は、第1アンテナ12aから第4アンテナ12dによってそれぞれ送信される。なお、前述のごとく、トレーニング信号が送信されるアンテナ12の数は、「4」より小さくなってもよい。「第1MIMO−STS」から「第4MIMO−STS」は、互いの干渉が小さくなるようなパターンによって構成されている。「第1MIMO−LTS」から「第4MIMO−LTS」も同様である。ここでは、これらの構成の説明を省略する。一般的に、「Legacy LTS」や図3(a)における「第1MIMO−LTS」等が、トレーニング信号といわれる場合もあるが、ここでは、トレーニング信号を前述のような図3(b)の信号に限定する。すなわち、「トレーニング信号」とは、通信対象の無線装置10に伝送路推定を実行させるために、送信すべきデータの数、すなわち系列の数にかかわらず、推定させるべき伝送路に応じた系列の数のMIMO−LTSに相当する。以下、「第1MIMO−STS」から「第4MIMO−STS」を「MIMO−STS」と総称し、「第1MIMO−LTS」から「第4MIMO−LTS」を「MIMO−LTS」と総称し、「第1データ」と「第2データ」を「データ」と総称する。
図4は、通信システム100での比較対象となる通信手順を示すシーケンス図である。ここでは、第1無線装置10aが、第2無線装置10bのレート情報を取得する動作を示す。説明を簡潔にするために、アダプティブアレイ信号処理の動作を省略する。第1無線装置10aは、第2無線装置10bに対して、レート要求信号を送信する(S10)。第2無線装置10bは、第1無線装置10aに対して、レート情報を送信する(S12)。第1無線装置10aは、レート情報にもとづいて、データレートを設定する(S14)。すなわち、レート情報を参照しながら、データレートを設定する。第1無線装置10aは、設定されたデータレートによって、データを送信する(S16)。第2無線装置10bは、データに対して、受信処理を実行する(S18)。
以上のような動作によれば、前述のごとく、第2無線装置10bにおけるレート情報は、以下の場合に誤りを含む。ひとつ目は、第2無線装置10bがレート情報を決定してからある程度の期間を要している場合である。すなわち、第1無線装置10aと第2無線装置10bとの間の伝送路の特性は、一般的に変動しており、それに応じてレート情報の内容も変動する。例えば、レート情報を決定したときに、50Mbpsでの受信が可能であったが、第1無線装置10aからデータを受信するときに、10Mbpsでの受信が限界となる場合がある。ふたつ目は、第2無線装置10bがレート情報を決定したときと、第1無線装置10aからデータを受信するときにおいて、使用される第1無線装置のアンテナの本数が異なる場合である。すなわち、第2無線装置10bがレート情報を決定する場合に、すべてのアンテナ12からのトレーニング信号を受けていなければ、未知の伝送路が存在し、正確なレート情報を導出できなくなる。例えば、第1アンテナ12aと第2アンテナ12bからの信号にもとづいてレート情報を導出すれば、第3アンテナ12cと第4アンテナ12dの影響が考慮されておらず、その結果、レート情報に誤差が含まれる。
図5は、通信システム100での比較対象となる別の通信手順を示すシーケンス図である。ここでは、MIMOによってデータが伝送される動作を示す。第1無線装置10aは、第2無線装置10bに対して、トレーニング要求信号を送信する(S20)。トレーニング要求信号は、図3(a)の「第1データ」や「第2データ」に含まれる。第2無線装置10bは、第1無線装置10aに対して、トレーニング信号を送信する(S22)。第1無線装置10aは、受信したトレーニング信号にもとづいて、送信ウエイトベクトルを導出し、これを設定する(S24)。第1無線装置10aは、送信ウエイトベクトルを使用しながら、データを送信する(S26)。第2無線装置10bは、受信したデータに対して、受信ウエイトベクトルを導出し、これを設定する(S28)。さらに、第2無線装置10bは、受信ウエイトベクトルにもとづいて、データの受信処理を実行する(S30)。
以上の動作によれば、第2無線装置10bは、すべてのアンテナ14からトレーニング信号を送信しているので、消費電力が増加する。一方、レート情報におけるデータレートがある程度低い場合に、使用すべきアンテナ14の数が少なくてもよい場合がある。その場合に、使用する予定のないアンテナ14からトレーニング信号を送信しなくても、伝送品質の悪化を抑えられる。特に、第2無線装置10bが端末装置であり、バッテリー駆動である場合には、消費電力の低減が望まれている。
図6は、第1無線装置10aの構成を示す。第1無線装置10aは、無線部20と総称される第1無線部20a、第2無線部20b、第4無線部20d、処理部22と総称される第1処理部22a、第2処理部22b、第4処理部22d、変復調部24と総称される第1変復調部24a、第2変復調部24b、第4変復調部24d、IF部26、選択部28、制御部30、レート情報管理部32を含む。また信号として、時間領域信号200と総称される第1時間領域信号200a、第2時間領域信号200b、第4時間領域信号200d、周波数領域信号202と総称される第1周波数領域信号202a、第2周波数領域信号202b、第4周波数領域信号202dを含む。なお、第2無線装置10bも同様の構成を有する。また、第1無線装置10aや第2無線装置10bが、基地局装置であるか、端末装置であるかによって、異なった構成が含まれるが、ここでは、説明を明確にするために、それらを省略する。
無線部20は、受信動作として、アンテナ12において受信した無線周波数の信号を周波数変換し、ベースバンドの信号を導出する。無線部20は、ベースバンドの信号を時間領域信号200として処理部22に出力する。一般的に、ベースバンドの信号は、同相成分と直交成分によって形成されるので、ふたつの信号線によって伝送されるべきであるが、ここでは、図を明瞭にするためにひとつの信号線だけを示すものとする。また、AGCやA/D変換部も含まれる。無線部20は、送信動作として、処理部22からのベースバンドの信号を周波数変換し、無線周波数の信号を導出する。ここで、処理部22からのベースバンドの信号も時間領域信号200として示す。無線部20は、無線周波数の信号をアンテナ12に出力する。また、PA(Power Amplifier)、D/A変換部も含まれる。時間領域信号200は、時間領域に変換したマルチキャリア信号であり、デジタル信号であるものとする。さらに、無線部20において処理される信号は、バースト信号を形成しており、そのバーストフォーマットは、図3(a)−(b)に示した通りである。
処理部22は、受信動作として、複数の時間領域信号200をそれぞれ周波数領域に変換し、周波数領域の信号に対してアダプティブアレイ信号処理を実行する。処理部22は、アダプティブアレイ信号処理の結果を周波数領域信号202として出力する。ひとつの周波数領域信号202が、図2におけるひとつのアンテナ14から送信された信号に対応し、これはひとつの伝送路に対応した信号に相当する。処理部22は、送信動作として、変復調部24から、周波数領域の信号としての周波数領域信号202を入力し、周波数領域の信号に対してアダプティブアレイ信号処理を実行する。さらに、処理部22は、アダプティブアレイ信号処理した信号を時間領域に変換し、時間領域信号200として出力する。送信処理において使用すべきアンテナ12の数は、制御部30によって指定されるものとする。ここで、周波数領域の信号である周波数領域信号202は、図1のごとく、複数のサブキャリアの成分を含むものとする。図を明瞭にするために、周波数領域の信号は、サブキャリア番号の順に並べられて、シリアル信号を形成しているものとする。
図7は、周波数領域の信号の構成を示す。ここで、図1に示したサブキャリア番号「−26」から「26」のひとつの組合せを「OFDMシンボル」というものとする。「i」番目のOFDMシンボルは、サブキャリア番号「1」から「26」、サブキャリア番号「−26」から「−1」の順にサブキャリア成分を並べているものとする。また、「i」番目のOFDMシンボルの前に、「i−1」番目のOMDMシンボルが配置され、「i」番目のOFDMシンボルの後ろに、「i+1」番目のOMDMシンボルが配置されているものとする。
図6に戻る。変復調部24は、受信処理として、処理部22からの周波数領域信号202に対して、復調および復号を実行する。なお、復調および復号は、サブキャリア単位でなされる。変復調部24は、復号した信号をIF部26に出力する。また、変復調部24は、送信処理として、符号化および変調を実行する。変復調部24は、変調した信号を周波数領域信号202として処理部22に出力する。送信処理の際に、変調方式および符号化率は、制御部30によって指定されるものとする。当該指定は、前述のレート情報にもとづいてなされる。
IF部26は、受信処理として、複数の変復調部24からの信号を合成し、ひとつのデータストリームを形成する。IF部26は、データストリームを出力する。また、IF部26は、送信処理として、ひとつのデータストリームを入力し、これを分離する。さらに、分離したデータを複数の変復調部24に出力する。
以上のような構成によって、要求信号を送信する場合を説明する。処理部22は、図3(a)あるいは(b)のごとく、複数のアンテナ12のうちの少なくともひとつから、各アンテナ12に対応したデータを送信する。使用すべきアンテナ12の数が「2」である場合、図3(a)あるいは(b)での「第1データ」と「第2データ」に相当する。データの送信に使用すべきアンテナ12の数は、制御部30によって指示されるものとする。さらに、処理部22は、図3(a)のような「Legacy STS」等のデータ以外の信号も付加する。また、データの送信に使用すべきアンテナ12の数が「4」になれば、図3(a)−(b)に示されていない「第3データ」と「第4データ」が付加される。このようなデータは、可変データレートに対応した第2無線装置10bに送信される。
制御部30は、第2無線装置10bでのレート情報を第2無線装置10bに提供させるための要求信号を生成する。さらに、制御部30は、生成した要求信号を変復調部24に出力する。処理部22は、要求信号を送信する際に、データを送信するためのアンテナ12以外のアンテナ12も含んだ複数のアンテナ12から、複数のアンテナ12のそれぞれに対応した既知信号も送信する。ここで、要求信号は、図3(b)の「第1データ」や「第2データ」に割り当てられる。また、既知信号は、図3(b)において、「第1MIMO−STS」、「第1MIMO−LTS」から「第4MIMO−STS」、「第4MIMO−LTS」に相当する。その結果、図3(b)のごとく、データを送信するためのアンテナ12の本数が「2」であっても、処理部22は、「4」つのアンテナ12から既知信号、すなわちトレーニング信号を送信する。このように、要求信号とトレーニング信号を組合せて送信することによって、第1無線装置10aは、第2無線装置10bに対して、トレーニング信号にもとづいてレート情報を生成させ、生成されたレート情報を取得できる。その結果、第1無線装置10aによって取得される第2無線装置10bのレート情報の精度が、向上する。
以上の説明に対応して、第2無線装置10bが、要求信号とトレーニング信号を受信する場合を説明する。制御部30は、受信したトレーニング信号にもとづいて、レート情報を生成する。レート情報の生成方法は、任意のものでよい。例えば、無線部20において受信した信号の信号強度を測定し、測定した信号強度をしきい値と比較することによって、レート情報を生成してもよい。あるいは、処理部22において導出した受信ウエイトベクトルにもとづいて、レート情報を生成してもよい。なお、レート情報の生成の一例は、後述する。さらに、変復調部24において復調した結果にもとづいて、レート情報を生成してもよい。決定したレート情報は、変復調部24、処理部22、無線部20を介して送信されるとともに、レート情報管理部32に保持される。また、レート情報管理部32は、通信対称の無線装置10におけるレート情報も保持する。
以上のような構成において、消費電力を低減するために、第1無線装置10aは、以下のように動作する。無線部20は、複数のアンテナ12によって、第2無線装置10bから、トレーニング信号を受信する。選択部28は、受信したトレーニング信号にもとづいて、複数のアンテナ12のうち、第2無線装置10bからのデータを受信する際に使用すべき少なくともひとつを選択する。より具体的には、以下の通りである。選択部28は、無線部20において受信したトレーニング信号をもとに、複数のアンテナ12のそれぞれに対応した信号強度を導出する。選択部28は、強度の大きいアンテナ12を優先的に選択する。例えば、データを受信する際に使用すべきアンテナ12の数が「3」である場合、選択部28は、強度の大きいアンテナ12から「3」つのアンテナ12を選択する。なお、選択されるべきアンテナ12の総数は、伝送すべきデータレートや消費電力の値にもとづいて、別途指定されるものとする。処理部22は、選択部28において選択されたアンテナ12を使用しながら、トレーニング信号を送信する。このように、トレーニング信号を送信すべきアンテナ12の数を削減することによって、消費電力を低減する。
また、以上の動作は、要求信号を送信しない場合においても実行可能である。すなわち、第2無線装置10bからトレーニング要求信号を受けつけた場合にも、適用できる。すなわち、選択部28は、複数のアンテナ12のうち、第2無線装置10bからのデータを受信する際に使用すべき少なくともひとつを選択する。その際、選択は、制御部30からの指示にもとづいてなされる。処理部22は、第2無線装置10bに対して、複数のアンテナ12のうちの少なくともひとつから、各アンテナ12に対応したデータを送信し、かつデータの送信の際に使用すべきアンテナ12の本数に関係なく、選択部28において選択された各アンテナ12に対応したトレーニング信号も送信する。例えば、データは、「2」つのアンテナ12から送信され、トレーニング信号は、「3」つのアンテナ12から送信される。
この構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされた通信機能のあるプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
図8は、第1処理部22aの構成を示す。第1処理部22aは、FFT(Fast Fourier Transform)部40、合成部42、参照信号生成部44、受信ウエイトベクトル計算部54、分離部46、送信ウエイトベクトル計算部52、IFFT部48、プリアンブル付加部50を含む。また、合成部42は、乗算部56と総称される第1乗算部56a、第2乗算部56b、第4乗算部56d、加算部60を含む。また、分離部46は、乗算部58と総称される第1乗算部58a、第2乗算部58b、第4乗算部58dを含む。
FFT部40は、複数の時間領域信号200を入力し、それぞれに対してフーリエ変換を実行して、周波数領域の信号を導出する。前述のごとく、ひとつの周波数領域の信号は、サブキャリア番号の順に、サブキャリアに対応した信号をシリアルに並べている。
乗算部56は、受信ウエイトベクトル計算部54からの受信ウエイトベクトルによって、周波数領域の信号を重み付けし、加算部60は乗算部56の出力を加算する。ここで、周波数領域の信号は、サブキャリア番号の順に配置されているので、受信ウエイトベクトル計算部54からの受信ウエイトベクトルもそれに対応するように配置されている。すなわち、ひとつの乗算部56は、サブキャリア番号の順に配置された受信ウエイトベクトルを逐次入力する。そのため、加算部60は、サブキャリア単位で、乗算結果を加算する。その結果、加算された信号も、図7のごとく、サブキャリア番号の順にシリアルに並べられている。また、加算された信号が、前述の周波数領域信号202である。
なお、以下の説明においても、処理対象の信号が周波数領域に対応している場合、処理は、基本的にサブキャリアを単位にして実行される。ここでは、説明を簡潔にするために、ひとつのサブキャリアにおける処理を説明する。そのため、複数のサブキャリアに対する処理には、ひとつのサブキャリアにおける処理をパラレルあるいはシリアルに実行することによって、対応される。
参照信号生成部44は、「Legacy STS」、「Legacy LTS」、「第1MIMO−STS」、「第1MIMO−LTS」期間中は予め記憶した「Legacy STS」、「Legacy LTS」、「第1MIMO−STS」、「第1MIMO−LTS」を参照信号として出力する。またこれらの期間以外は、予め規定しているしきい値によって、周波数領域信号202を判定し、その結果を参照信号として出力する。なお、判定は硬判定でなく、軟判定でもよい。
受信ウエイトベクトル計算部54は、FFT部40からの周波数領域の信号、周波数領域信号202、参照信号にもとづいて、受信ウエイトベクトルを導出する。受信ウエイトベクトルの導出方法は、任意のものでよく、そのひとつはLMS(Least Mean Squeare)アルゴリズムによる導出である。また、受信ウエイトベクトルは、相関処理によって導出されてもよい。その際、周波数領域の信号と参照信号は、第1処理部22aからだけではなく、図示しない信号線によって、第2処理部22b等からも入力されるものとする。第1処理部22aにおける周波数領域の信号をx1(t)、第2処理部22bにおける周波数領域の信号をx2(t)と示し、第1処理部22aにおける参照信号をS1(t)、第2処理部22bにおける参照信号をS2(t)と示せば、x1(t)とx2(t)は、次の式のように示される。
ここで、雑音は無視する。第1の相関行列R1は、Eをアンサンブル平均として、次の式のように示される。
参照信号間の第2の相関行列R2は、次の式のように計算される。
最終的に、第2の相関行列R2の逆行列と第1の相関行列R1を乗算することによって、受信応答ベクトルが導出される。
さらに、受信ウエイトベクトル計算部54は、受信応答ベクトルから受信ウエイトベクトルを計算する。
送信ウエイトベクトル計算部52は、受信ウエイトベクトルから、周波数領域信号202の重み付けに必要な送信ウエイトベクトルを推定する。送信ウエイトベクトルの推定方法は、任意とするが、最も簡易な方法として、受信ウエイトベクトルをそのまま使用すればよい。あるいは、受信処理と送信処理との時間差によって生じる伝搬環境のドップラー周波数変動を考慮し、従来の技術によって、受信ウエイトベクトルを補正してもよい。なお、ここでは、受信ウエイトベクトルをそのまま送信ウエイトベクトルに使用するものとする。
乗算部58は、送信ウエイトベクトルによって、周波数領域信号202を重み付けし、その結果をIFFT部48に出力する。また、IFFT部48は、乗算部58からの信号に対して逆フーリエ変換を実行して、時間領域の信号に変換する。プリアンブル付加部50は、図3(a)−(b)のごとく、バースト信号の先頭部分に、プリアンブルを付加する。ここでは、「Legacy STS」、「Legacy LTS」、「第1MIMO−STS」、「第1MIMO−LTS」を付加する。プリアンブル付加部50は、プリアンブルを付加した信号を時間領域信号200として出力する。なお、以上の動作は、図6の制御部30によって制御されるものとする。図8において、第1時間領域信号200a等は、2カ所に示されている。これらは、ひとつの方向の信号であり、これらが、図6における双方向の信号である第1時間領域信号200a等に対応する。
以上の構成による通信システム100の動作を説明する。図9は、通信システム100におけるデータレートの設定の手順を示すシーケンス図である。図9は、レート要求信号とトレーニング信号を送信する場合のシーケンス図であり、図4に対応する。第1無線装置10aは、第2無線装置10bに対して、図3(b)のごとく、レート要求信号とトレーニング信号を送信する(S40)。第2無線装置10bは、トレーニング信号にもとづいて、伝送路推定を行う(S42)。ここで、伝送路推定は、前述の受信ウエイトベクトルの導出に相当する。第2無線装置10bは、推定した伝送路にもとづいて、レート情報を更新する(S44)。ここで、レート情報の更新については、説明を省略する。第2無線装置10bは、第1無線装置10aに対して、レート情報を送信する(S46)。第1無線装置10aは、受けつけたレート情報を参照しながら、データレートを設定する(S48)。
図10は、第1無線装置10aにおけるデータレートの設定の手順を示すフローチャートである。図10は、図9での第1無線装置10aの動作に対応する。処理部22は、図3(b)に示したトレーニング信号のフォーマットにて、レート要求信号を送信する(S50)。アンテナ12、無線部20、処理部22、変復調部24を介して、IF部26がレート情報を受けつけなければ(S52のN)、受けつけるまで待ち続ける。一方、IF部26が、レート情報を受けつければ(S52のY)、制御部30がデータレートの設定を行う(S54)。また、レート情報管理部32は、レート情報を保持する。
図11は、通信システム100におけるデータレートの設定の別の手順を示すシーケンス図である。図11は、図9に対して、アダプティブアレイ信号処理を考慮し、かつ低消費電力化を目的とした処理のシーケンス図であり、図5に対応する。第1無線装置10aは、第2無線装置10bに対して、トレーニング要求信号を送信する(S60)。第2無線装置10bは、第1無線装置10aに対して、トレーニング信号を送信する(S62)。第1無線装置10aは、受信したトレーニング信号の強度にもとづいて、アンテナ12を選択する(S64)。第1無線装置10aは、第2無線装置10bに対して、図3(b)のごとく、レート要求信号とトレーニング信号を送信する(S66)。なお、トレーニング信号は、選択されたアンテナ12から送信される。
第2無線装置10bは、トレーニング信号にもとづいて、伝送路推定を行う(S68)。第2無線装置10bは、推定した伝送路にもとづいて、レート情報を更新する(S70)。また、第2無線装置10bは、送信ウエイトベクトルを導出し、これを設定する(S72)。第2無線装置10bは、第1無線装置10aに対して、レート情報を送信する(S74)。その際、送信ウエイトベクトルを使用することによって、アダプティブアレイ信号処理を実行する。第1無線装置10aは、レート情報を含んだバースト信号にもとづいて、受信ウエイトベクトルを設定する(S76)。さらに、受信ウエイトベクトルを使用しながら、レート情報を受信処理する(S78)。第1無線装置10aは、受けつけたレート情報を参照しながら、データレートを設定する(S80)。
図12は、第1無線装置10aにおけるデータレートの設定の別の手順を示すフローチャートである。図12は、図11での第1無線装置10aの動作に対応する。処理部22は、トレーニング要求信号を送信する(S90)。無線部20は、トレーニング信号を受信する(S92)。選択部28は、受信したトレーニング信号の強度をアンテナ12単位で測定し、測定した強度にもとづいて、アンテナ12を選択する(S94)。処理部22は、図3(b)に示したトレーニング信号のフォーマットにて、選択したアンテナ12からトレーニング信号を送信し、かつレート要求信号も送信する(S96)。
アンテナ12、無線部20、処理部22、変復調部24を介して、IF部26がレート情報を受けつけなければ(S98のN)、受けつけるまで待ち続ける。一方、IF部26が、レート情報を受けつければ(S98のY)、処理部22は、受信ウエイトベクトルを設定する(S100)。また、処理部22、変復調部24、IF部26は、受信処理を実行する(S102)。制御部30がデータレートの設定を行う(S104)。また、レート情報管理部32は、レート情報を保持する。
図13は、通信システム100での通信手順を示すシーケンス図である。図13は、トレーニング信号の送信において、低消費電力化を目的とした処理のシーケンス図である。第1無線装置10aは、第2無線装置10bに対して、トレーニング要求信号を送信する(S110)。第2無線装置10bは、データを受信するときに使用すべきアンテナ14を選択する(S112)。また、第2無線装置10bは、選択したアンテナ14から、第1無線装置10aに対して、トレーニング信号を送信する(S114)。第1無線装置10aは、受信したトレーニング信号の強度にもとづいて、送信ウエイトベクトルを設定する(S116)。第1無線装置10aは、送信ウエイトベクトルを使用しながら、第2無線装置10bに対して、データを送信する(S118)。第2無線装置10bは、データを含んだバースト信号から、受信ウエイトベクトルを導出し、これを設定する(S120)。第2無線装置10b、受信ウエイトベクトルにもとづいて、受信処理を実行する(S122)。
図14は、第2無線装置10bでの送信手順を示すフローチャートである。図14は、図13での第2無線装置10bの動作に対応する。アンテナ12、無線部20、処理部22、変復調部24を介して、IF部26がトレーニング要求信号を受けつけなければ(S130のN)、処理を開始しない。一方、IF部26がトレーニング要求信号を受けつければ(S130のY)、制御部30は、受信の際に使用すべきアンテナ14を選択する(S132)。処理部22は、選択したアンテナ14から、トレーニング信号を送信する(S134)。
これまでの実施例においては、トレーニング信号を送信する際に、第1無線装置10aは、アダプティブアレイ信号処理、すなわちビームフォーミングを実行していなかった。これは、第2無線装置10bに、アンテナの指向性が無指向性である状態において、伝送路推定を行わせるためである。すなわち、第2無線装置10bに対して、本来の伝送路に近い状態において、伝送路推定を行わせるためである。前述のごとく、トレーニング信号とレート要求信号を組合せる場合、第1無線装置10aは、以下の処理を実行することによって、第2無線装置10bにおいて決定されるレート情報を高速にできる。第1無線装置10aがビームフォーミングを実行すれば、実行しないときと比較して、第2無線装置10bにおける受信時のSNR(Signal to Noise Ratio)が改善される。第2無線装置10bがSNRにもとづいて、データレートを決定している場合、SNRの改善によって、決定されるデータレートも高くなる。そのため、ここでは、レート要求信号を送信する場合、第1無線装置10aは、少なくともトレーニング信号に対して、ビームフォーミングを実行する。
図15は、通信システム100におけるデータレートの設定のさらに別の手順を示すシーケンス図である。第2無線装置10bは、第1無線装置10aに対して、データを送信する(S140)。ここでは、第1無線装置10aと第2無線装置10bとの間において、通信が既に実行されており、データレートは所定の値に設定されているものとする。第1無線装置10aは、受信したデータにもとづいて、受信ウエイトベクトルを導出する(S142)。第1無線装置10aは、推定した受信ウエイトベクトルにもとづいて、送信ウエイトベクトルを導出し、これを設定する(S144)。なお、第1無線装置10aは、受信したデータに対して、受信処理を実行する。第1無線装置10aは、導出した送信ウエイトベクトルによって、ビームフォーミングを行いながら、第2無線装置10bに対して、図3(b)のごとく、レート要求信号とトレーニング信号を送信する(S146)。
第2無線装置10bは、トレーニング信号にもとづいて、伝送路推定を行う(S148)。第2無線装置10bは、推定した伝送路にもとづいて、レート情報を更新する(S150)。また、第2無線装置10bは、送信ウエイトベクトルを導出し、これを設定する(S152)。第2無線装置10bは、第1無線装置10aに対して、レート情報を送信する(S154)。その際、送信ウエイトベクトルを使用することによって、アダプティブアレイ信号処理を実行する。第1無線装置10aは、レート情報を含んだバースト信号にもとづいて、受信ウエイトベクトルを設定する(S156)。さらに、受信ウエイトベクトルを使用しながら、レート情報を受信処理する(S158)。第1無線装置10aは、受けつけたレート情報を参照しながら、データレートを再設定する(S160)。
図16は、第1無線装置10aにおけるデータレートの設定のさらに別の手順を示すフローチャートである。図16は、図15での第1無線装置10aの動作に対応する。無線部20は、データを受信する(S170)。処理部22は、受信ウエイトベクトルを計算し(S172)、送信ウエイトベクトルを設定する(S174)。処理部22は、図3(b)に示したトレーニング信号のフォーマットにて、送信ウエイトベクトルによってビームフォーミングを実行しつつ、アンテナ12からトレーニング信号を送信し、かつレート要求信号も送信する(S176)。
アンテナ12、無線部20、処理部22、変復調部24を介して、IF部26がレート情報を受けつけなければ(S178のN)、受けつけるまで待ち続ける。一方、IF部26が、レート情報を受けつければ(S178のY)、処理部22は、受信ウエイトベクトルを設定する(S180)。また、処理部22、変復調部24、IF部26は、受信処理を実行する(S182)。制御部30がデータレートの設定を行う(S184)。また、レート情報管理部32は、レート情報を保持する。
次に、レート情報の生成について説明する。レート情報の生成は、図9のステップ44においてなされ、また、第2無線装置10bによってなされる。レート要求信号の伝送の方向が、第2無線装置10bから第1無線装置10aであるとき、レート情報の生成は、第1無線装置10aにおいてもなされるが、ここでは、第2無線装置10bでの処理として説明する。その際、図6の構成は、アンテナ12からアンテナ14に変更される。図17は、制御部30の構成を示す。制御部30は、相関計算部70、電力比計算部72、処理対象決定部74、レート決定部76、記憶部78を含む。
制御部30における処理の前提として、前述のごとく、図6の無線部20、処理部22、変復調部24は、アンテナ14によって、第1無線装置10aからのトレーニング信号を受信する。トレーニング信号は、図3(b)のごとく、第1データや第2データを送信するための第1アンテナ12a、第2アンテナ12b以外のアンテナ12も含んだ複数のアンテナ12から送信される。トレーニング信号は、「MIMO−LTS」に相当する。また、トレーニング信号のそれぞれは、複数のアンテナ12のそれぞれに対応するように規定されている。受信ウエイトベクトル計算部54は、受信したトレーニング信号をもとに、複数のアンテナ12にそれぞれ対応した受信応答ベクトルを計算する。受信応答ベクトルの計算方法は、前述の通りであるので、説明を省略する。また、受信されるトレーニング信号には、前述のごとく、OFDM変調方式が適用されており、複数のサブキャリアが使用されている。そのため、受信応答ベクトルは、複数のサブキャリアのそれぞれに対して計算される。
相関計算部70は、受信応答ベクトルから、複数のアンテナ12にそれぞれ対応した受信応答ベクトル間の相関を計算する。図1において、第1アンテナ12aに対応した伝送路特性、すなわち受信応答ベクトルは、「h11」、「h12」、「h13」、「h14」と示されているが、ここでは、これらをまとめて「h1」と総称し、アンテナ12の数を「2」とする。以上のように想定すれば、相関計算部70は、次の通り、相関値Sを計算する。
このような相関値Sは、ひとつのサブキャリアに対応したものであり、相関計算部70は、複数のサブキャリアに対応した相関値Sをそれぞれ導出する。また、数5のうちの分子が、相関値Sであってもよい。
電力比計算部72は、受信応答ベクトルから、複数のアンテナにそれぞれ対応した受信応答ベクトル間の電力比を計算する。電力比計算部72は、次の通り、電力比Rを計算する。
このような電力比Rは、ひとつのサブキャリアに対応したものであり、電力比計算部72は、複数のサブキャリアに対応した電力比Rをそれぞれ導出する。
処理対象決定部74は、複数のサブキャリアのそれぞれに対応した複数の相関値Sと複数の電力比Rを入力する。処理対象決定部74は、複数の相関値Sと複数の電力比Rから、データレートを決定する際に使用する対象を決定する。決定方法のひとつは、複数のサブキャリアのいずれかに対する相関値Sと電力比Rを選択することである。その際、図示しない測定部が、サブキャリアのそれぞれに対する信号強度を測定し、処理対象決定部74は、信号強度の大きいサブキャリアを選択する。あるいは、複数の相関値Sと複数の電力比Rに対して、それぞれ統計処理、例えば平均を実行し、統計処理された相関値Sと統計処理された電力比Rを計算する。以下、処理対象決定部74によって決定された相関値Sと電力比Rも、相関値Sと電力比Rという。
レート決定部76は、処理対象決定部74からの相関値Sと電力比Rとをもとに、データに対するデータレートを決定する。その際、記憶部78に記憶された判定基準を参照する。図18は、記憶部78に記憶された判定基準の構造を示す。判定基準は、相関値と電力比によって二次元空間を形成するように規定されており、図示のごとく二次元空間は、複数の部分領域「A」、「B」、「C」、「D」によって分割されている。ここで、部分領域「A」から「D」のそれぞれは、所定のデータレートに対応している。例えば、アンテナ12の本数に対応させれば、「A」が「4本」に対応し、「B」が「3本」に対応し、「C」が「2本」に対応し、「D」が「1本」に対応する。
なお、変調方式と符号化率も同様に規定されてもよく、これらの組合せによって、二次元空間がさらに多くの部分領域によって分割されていてもよい。図17に戻る。レート決定部76は、入力した相関値Sと電力比Rを判定基準に対応させ、入力した相関値Sと電力比Rが含まれる部分領域を特定する。さらに、レート決定部76は、特定された部分領域から予め規定されたデータレートを導出する。なお、制御部30は、以上の処理をレート要求信号を受けつけたときに実行する。また、レート情報を送信する際に、決定したデータレートを含める。なお、レート決定部76は、処理対象決定部74からの相関値Sと電力比Rのいずれか一方をもとに、データに対するデータレートを決定してもよい。その際、処理を簡易にできる。
これまで、トレーニング信号を送信する際、データを送信すべきアンテナ12の数よりも多くのアンテナ12から「MIMO−LTS」が送信されていた。また、データを送信すべきアンテナ12の数にかかわらず、「MIMO−LTS」を送信すべきアンテナ12の数が設定されていた。例えば、図3(b)では、4つのアンテナ12から「MIMO−LTS」が送信され、ふたつのアンテナ12から「データ」が送信されていた。なお、図3(b)において、「MIMO−STS」を送信すべきアンテナ12の数は、「MIMO−LTS」を送信すべきアンテナ12の数に規定されていたが、「MIMO−STS」を送信すべきアンテナ12の数が、「データ」を送信すべきアンテナ12の数となるように規定されてもよい。すなわち、図3(b)では、第1アンテナ12aと第2アンテナ12bだけから「MIMO−STS」が送信されてもよい。
ここでは、データを送信すべきアンテナ12の数に応じて、「MIMO−LTS」を送信すべきアンテナ12の数が設定される場合を説明する。すなわち、ここでは、「データ」が配置される系列の数よりも所定の値だけ大きくなるように、「MIMO−LTS」が配置される系列の数を規定する。一例として、「MIMO−LTS」を送信すべきアンテナ12の数は、「データ」を送信すべきアンテナ12の数に「1」を加えた数によって規定されているものとする。なお、「1」以外の値であってもよい。例えば、「データ」を送信すべきアンテナ12の数が「2」であれば、第1無線装置10aは、「MIMO−LTS」を送信すべきアンテナ12の数を「3」に設定してから、送信を実行する。一方、トレーニング信号を受信する無線装置10は、「データ」が送信されたアンテナ12の数でなく、「MIMO−LTS」が送信されたアンテナ12の数の範囲において、レート情報を生成する。すなわち、アンテナ12の数「3」の範囲において実現可能なデータレートが、レート情報として生成される。
第1無線装置10aは、受けつけたレート情報にもとづいて、「データ」が送信されるアンテナ12の数を設定する。その際、設定されるアンテナ12の数が、それまでのアンテナ12の数よりも多ければ、以上の処理が繰り返されることによって、段階的に「データ」を送信すべきアンテナ12の数が増加する。それとともに、「MIMO−LTS」を送信すべきアンテナ12の数も増加される。
図19(a)−(c)は、通信システム100でのバーストフォーマットの別の構成を示す。図19(a)は、「データ」の系列の数が「1」である場合のバーストフォーマットを示す。図示のごとく、ひとつの系列の「データ」がバースト信号の後段に配置されている。また、「データ」の系列の数よりも多い系列の「MIMO−LTS」がその前段に配置されている。なお、「MIMO−STS」の系列の数は、「データ」の系列の数と同一になるように規定されている。ここで、図3(a)−(b)における「Legacy STS」等は、省略されている。図19(b)は、「データ」の系列の数が「2」である場合のバーストフォーマットを示す。図示のごとく、2つの系列の「データ」が配置されている。また、「MIMO−LTS」の系列の数と、「データ」の系列の数との関係は、図19(a)と同一である。図19(c)は、「データ」の系列の数が「3」である場合のバーストフォーマットを示す。以上のように、第1無線装置10aから送信されるバーツスト信号のフォーマットが、図19(a)から図19(c)に段階的に変化することによって、トレーニング信号の数も増加する。
第1無線装置10aにおいて、無線部20等は、図19(a)−(c)のように示されたバースト信号を第2無線装置10bに送信する。「データ」の系列の数は、それまで使用していた数を使用してもよい。制御部30は、無線部20等を介して、第2無線装置10bから、レート情報を受けつける。特に、レート情報には、受信可能なデータの系列の数に関する通知が含まれる。
さらに、制御部30は、レート情報をもとに、「データ」が配置される系列の数と、「MIMO−LTS」が配置される系列の数を決定する。すなわち、受信可能なデータの系列の数をもとに、制御部30は、「データ」が配置される系列の数を決定する。例えば、制御部30は、受信可能なデータの系列の数と等しくなるように、「データ」が配置される系列の数を決定する。また、前述のごとく、制御部30は、「MIMO−LTS」が配置される系列の数として、「データ」が配置される系列の数に「1」を加えた数を決定する。すなわち、制御部30では、「データ」が配置される系列の数の増減に応じて、「MIMO−LTS」が配置される系列の数も増減するように規定している。変復調部24、処理部22等は、制御部30での決定をもとにバースト信号を生成し、生成したバースト信号を送信する。
第2無線装置10bにおいて、無線部20等は、バースト信号を第1無線装置10aから受信する。制御部30では、バースト信号をもとに、「MIMO−LTS」が配置されている系列の数を取得する。これは、「データ」が配置されている系列の数に「1」を加えた数に相当する。
制御部30は、受信したバースト信号の品質を導出する。ここで、バースト信号の品質として、例えば、ビット誤り率を導出してもよい。また、図17に示した制御部30の構成によって、品質が導出されてもよい。さらに、制御部30は、取得された系列の数の範囲において、受信可能なデータの系列の数を決定する。すなわち、制御部30は、「MIMO−LTS」が配置されている系列の数を上限値として、品質をもとに、受信可能なデータの系列の数を決定する。これを決定するために、図18のごとく、判定基準が予め定められていてもよい。なお、決定された受信可能なデータの系列の数が、レート情報とされる。無線部20等は、決定部において決定したデータの系列の数を通信対象の無線装置10に通知する。
図20は、図19(a)−(c)のバーストフォーマットに対応したデータレートの設定の手順を示すシーケンス図である。第1無線装置10aは、第2無線装置10bに対して、レート要求信号とトレーニング信号を送信する(S200)。このとき、図19(a)のごとく、ひとつの系列の「データ」が送信されているものとする。第2無線装置10bは、トレーニング信号にもとづいて、伝送路推定を行う(S202)。ここで、伝送路推定は、前述の受信応答ベクトルの導出に相当する。第2無線装置10bは、推定した伝送路にもとづいて、レート情報を更新する(S204)。なお、第2無線装置10bは、ふたつの系列に配置された「MIMO−LTS」を検出するので、ふたつの系列を上限値としたレート情報が決定される。ここでは、ふたつの系列に対応したレート情報が決定されるものとする。第2無線装置10bは、第1無線装置10aに対して、レート情報を送信する(S206)。第1無線装置10aは、受けつけたレート情報を参照しながら、データレートを設定する(S208)。また、第1無線装置10aは、設定したデータレートをもとに、データを送信すべき系列の数を増加させる(S210)。すなわち、データを送信すべき系列の数が、「1」から「2」に増加される。
第1無線装置10aは、第2無線装置10bに対して、レート要求信号とトレーニング信号を送信する(S212)。このとき、2つの系列の「データ」が送信されているものとする。第2無線装置10bは、トレーニング信号にもとづいて、伝送路推定を行う(S214)。第2無線装置10bは、推定した伝送路にもとづいて、レート情報を更新する(S216)。なお、第2無線装置10bは、3つの系列に配置された「MIMO−LTS」を検出するので、3つの系列を上限値としたレート情報が決定される。ここでは、3つの系列に対応したレート情報が決定されるものとする。第2無線装置10bは、第1無線装置10aに対して、レート情報を送信する(S218)。第1無線装置10aは、受けつけたレート情報を参照しながら、データレートを設定する(S220)。
図21は、第2無線装置10bでのデータレートの設定の手順を示すフローチャートである。無線部20は、データを受信する(S240)。受信したデータがレート要求信号であれば(S242のY)、制御部30は、MIMO−LTSの系列数を取得する(S244)。制御部30は、受信したデータの品質を導出する(S246)。制御部30は、取得した系列数を上限値として、品質をもとにレート情報を生成する(S248)。無線部20は、レート情報を送信する(S250)。一方、受信したデータがレート要求信号でなければ(S242のN)、変復調部24は、データを処理する(S252)。
図22は、第1無線装置10aでのデータレートの設定の手順を示すフローチャートである。制御部30は、レート情報から、データの系列数を取得する(S260)と、「MIMO−LTS」の系列数を「データの系列数+1」に設定する(S262)。変復調部24等は、バースト信号を生成し(S264)、無線部20は、バースト信号を送信する(S266)。制御部30は、レート情報を受信し(S268のY)、データの系列数が変更されていれば(S270のY)、データの系列数を変更させてから設定する(S272)。データの系列数が変更させていなければ(S270のN)、制御部30は、現在の系列数を維持する(S274)。データの系列数が最大値でなければ(S276のN)、ステップ262に戻る。また、制御部30がレート情報を受信せず(S268のN)、あるいはデータの系列数が最大値であれば(S276のY)、処理を終了する。
これまでの説明では、系列の数がアンテナの数に等しいとしていた。さらに、図19(a)−(c)のバーストフォーマットの変形例を説明する。無線装置10は、図19(a)−(c)と同様に、複数の系列のうちの少なくともひとつに配置されるMIMO−STSと、複数の系列に配置されるMIMO−LTSと、MIMO−STSと同一の系列に配置されるデータとを含んだ複数の系列のバースト信号を生成する。さらに、無線装置10は、MIMO−STS、データにステアリング行列をそれぞれ乗算することによって、複数の系列の数までMIMO−STSとデータとを増加させる。また、送信装置は、MIMO−LTSに対してもステアリング行列を乗算する。以下、ステアリング行列を乗算した複数の系列のバースト信号も、これまでと区別せずに、「複数の系列のバースト信号」という。
なお、ステアリング行列には、系列単位に、循環的なタイムシフトを実行させる成分が含まれている。循環的なタイムシフトは、CDD(Cyclic Delay Diversity)と呼ばれるものであり、MIMO−STS等に対して、循環的なタイムシフトがなされる。MIMO−LTSとデータに対しても同様の処理がなされる。また、タイムシフト量は、複数の系列のバースト信号を単位にして異なっている。以上の処理のごとく、無線装置10は、複数の系列のバースト信号を変形させ、変形させた複数の系列のバースト信号を複数のアンテナ12からそれぞれ送信する。
以上のような実施例に対応した課題は、以下のように示されてもよい。すなわち、データの系列数が、アンテナ12の数に満たない場合であっても、MIMO−STS、MIMO−LTS、データをすべてのアンテナ12からまんべんなく送信したい。複数のアンテナ12にそれぞれ接続された複数の送信用アンプの負荷を均一化させたい。また、通信対象の無線装置における伝送路推定の精度が向上するようなバーストフォーマットによって、トレーニング信号を送信したい。また、通信対象の無線装置におけるレート情報の精度が向上するようなバーストフォーマットによって、トレーニング信号を送信したい。また、このようなトレーニング信号を送信する場合であっても、データの通信品質の悪化を抑えるようなバーストフォーマットによって、データを送信したい。また、データを受信させるために、トレーニング信号を有効に利用したい。
図23は、図19(a)−(c)のバーストフォーマットを変形させたバーストフォーマットを送信する送信装置300の構成を示す。ここで、図23の送信装置300は、図6の第1無線装置10aの一部に相当する。送信装置300は、誤り訂正部310、インターリーブ部312、変調部314、プリアンブル付加部316、空間分散部318、無線部20と総称される第1無線部20a、第2無線部20b、第3無線部20c、アンテナ12と総称される第1アンテナ12a、第2アンテナ12b、第3アンテナ12cを含む。
誤り訂正部310は、誤り訂正のための符号化をデータに行う。ここでは、畳込み符号化を行うものとし、その符号化率は予め規定された値の中から選択する。インターリーブ部312は、畳込み符号化したデータをインターリーブする。さらに、インターリーブ部312は、データを複数の系列に分離してから出力する。ここでは、図19(b)のように、ふたつの系列に分離する。ふたつの系列のデータは、互いに独立したデータといえる。
変調部314は、ふたつの系列のデータのそれぞれに対して、変調を実行する。プリアンブル付加部316は、変調されたデータに対してプリアンブルを付加する。そのため、プリアンブル付加部316は、プリアンブルとして、MIMO−STS、MIMO−LTS等を記憶する。プリアンブル付加部316は、複数の系列にそれぞれ配置されるMIMO−STSとMIMO−LTSと、複数の系列のうちの少なくともひとつに配置されるデータとを含んだ複数の系列のバースト信号を生成する。前述のごとく、データは、ふたつの系列によって形成されている。ここで、複数の系列の数を「3」とするので、3つの系列のバースト信号に、MIMO−LTSが配置され、3つの系列のバースト信号のうちのふたつに、MIMO−STSとデータがそれぞれ配置される。その結果、プリアンブル付加部316からは、3つの系列のバースト信号が出力される。ここで、3つの系列のバースト信号のバーストフォーマットは、図19(b)のように示される。
ここで、MIMO−STSの詳細については、説明を省略するが、例えば、少なくとも、複数の系列のバースト信号のうちのひとつに対応したMIMO−STSは、他の系列のバーストに対応したMIMO−STSに対して、少なくとも一部が異なったサブキャリアを使用するように規定されてもよい。また、MIMO−STSでは、MIMO−STSのそれぞれに使用されるべきサブキャリアの数が等しく、かつ互いに異なったサブキャリアを使用するように規定されてもよい。また、前述のごとく、複数の系列のバースト信号のそれぞれは、複数のサブキャリアを使用しており、複数の系列のバースト信号に配置されるMIMO−LTS間には、トーン・インターリーブがなされる。
空間分散部318は、複数の系列のバースト信号に対してステアリング行列をそれぞれ乗算することによって、ステアリング行列が乗算されたMIMO−LTSと、複数の系列の数まで増加させたMIMO−STSおよびデータとを生成する。ここで、空間分散部318は、乗算を実行する前に、入力したMIMO−STSおよびデータの次数を複数の系列の数まで拡張する。入力したMIMO−STSおよびデータの数は、「2」であり、ここでは、「Nin」によって代表させる。そのため、入力したデータは、「Nin×1」のベクトルによって示される。また、複数の系列の数は、「3」であり、ここでは、「Nout」によって代表させる。空間分散部318は、入力したデータの次数をNinからNoutに拡張させる。すなわち、「Nin×1」のベクトルを「Nout×1」のベクトルに拡張させる。その際、Nin+1行目からNout行目までの成分に「0」を挿入する。
また、ステアリング行列Sは、次のように示される。
ステアリング行列は、「Nout×Nout」の行列である。また、Wは、直交行列であり、「Nout×Nout」の行列である。直交行列の一例は、ウォルシュ行列である。ここで、lは、サブキャリア番号を示しており、ステアリング行列による乗算は、サブキャリアを単位にして実行される。さらに、Cは、以下のように示され、CDDのために使用される。
ここで、δは、シフト量を示す。すなわち、空間分散部318は、複数の系列のそれぞれに対応したシフト量によって、直交行列が乗算されたMIMO−LTS内での循環的なタイムシフトを系列単位に実行しつつ、複数の系列の数まで増加させたMIMO−STS内やデータ内での循環的なタイムシフトを系列単位に実行する。なお、シフト量は、系列を単位にして異なった値に設定される。以上の処理の結果、空間分散部318は、複数の系列のバースト信号を変形させる。
無線部20は、アンテナ12と同一の数だけ設けられる。無線部20は、変形された複数の系列のバースト信号を送信する。その際、無線部20は、変形された複数の系列のバースト信号を複数のアンテナ12に対応させながら送信する。また、無線部20は、図示しないIFFT部、GI部、直交変調部、周波数変換部、増幅部を含む。IFFT部は、IFFTを行い、複数のサブキャリアキャリアを使用した周波数領域の信号を時間領域に変換する。GI部は、時間領域のデータに対して、ガードインターバルを付加する。直交変調部は、直交変調を実行する。周波数変換部は、直交変調された信号を無線周波数の信号に周波数変換する。増幅部は、無線周波数の信号を増幅するパワーアンプである。なお、空間分散部318は、図示しないIFFT部の後段に設けられてもよい。
図24は、図19(a)−(c)のバーストフォーマットを変形させたバーストフォーマットの構成を示す。ここでは、特に、アンテナ12の数を「3」とし、図19(b)のバーストフォーマットを空間分散部318によって変形させた場合に対応する。図19(b)の「第1MIMO−STS」と「第2MIMO−STS」は、ステアリング行列の乗算の結果、3つの系列のMIMO−STSとなる。図24では、これを「第1MIMO−STS’」から「第3MIMO−STS’」として示す。また、MIMO−LTSは、ステアリング行列の乗算の結果、「MIMO−LTS’」となる。図24では、これを「第1MIMO−LTS(1)’」から「第3MIMO−STS(1)’」等として示す。図19(b)の「第1データ」と「第2データ」は、MIMO−STSと同様に、「第1データ’」から「第3データ’」として示される。
本発明の実施例によれば、通信対象の無線装置に対して要求信号を送信する際に、複数のアンテナからトレーニング信号を送信するので、通信対象の無線装置でのレート情報であって、かつトレーニング信号にもとづいて生成されたレート情報を取得でき、レート情報の精度を向上できる。また、トレーニング信号を使用することによって、様々な伝送路の影響を考慮しながらレート情報が決定されるので、レート情報の精度を向上できる。また、要求信号とトレーニング信号とを連続して送信するので、最新のレート情報を取得できる。また、最新のレート情報を取得できるので、伝搬路が変動する場合であっても、レート情報の誤差を小さくできる。また、通信対象の無線装置のレート情報が必要なときに、要求信号を送信することによって、レート情報が定期的に送信されない場合であっても、正確なレート情報を取得できる。また、レート情報の精度が向上することによって、データの誤りが低減し、データを伝送する際の制御の精度を向上できる。また、レート要求信号やトレーニング信号を組合せて送信するので、実効的なデータレートの低下を抑制できる。
また、トレーニング信号を送信すべきアンテナの数を削減するので、消費電力を低減できる。また、通信に使用すべきアンテナからはトレーニング信号を送信するので、特性の悪化を抑制できる。また、消費電力を低減できるので、バッテリー駆動の場合、動作期間を長くできる。また、消費電力を低減できるので、無線装置を小型化できる。また、信号強度の高いアンテナを優先的に選択するので、データの伝送品質の悪化を抑制できる。また、無線品質に応じてアンテナを選択するので、消費電力を低減しつつ、データの伝送品質の悪化を抑制できる。また、データを受信すべきアンテナから既知信号を送信するので、通信対象の無線装置において導出される送信ウエイトベクトルの悪化を抑制し、かつデータを受信すべきアンテナを選択するので、消費電力を低減できる。また、導出される送信ウエイトベクトルを正確にできるので、アンテナ指向性の悪化を抑制できる。
また、トレーニング信号を送信する際に、ビームフォーミングを実行することによって、通信対象の無線装置における信号強度を増加でき、より高速な値を有したレート情報を取得できる。また、実際にデータを送信する際もビームフォーミングを実行するので、データの送信の際に適合したデータレートを取得できる。また、データレートを決定する際に、受信応答ベクトル間の相関値と受信応答ベクトル間の強度比を考慮するので、複数のアンテナのそれぞれから送信された信号間の影響を反映できる。また、決定したレート情報の正確性を向上できる。また、MIMOシステムにおいて、相関値が小さくなれば伝送特性が向上し、また強度比が小さくなれば向上するので、このような特性を反映するようにデータレートを決定できる。また、相関値と強度比にもとづいたデータレートの決定は、複数のキャリアを使用するシステムに適用できる。また、トレーニングを受信する際に、レート要求信号も受信するので、決定したレート情報を通知でき、精度の高いレート情報を供給できる。
また、MIMO−LTSが配置されている系列の数の範囲において、レート情報、特に受信可能なデータの系列の数を決定するので、データの系列の数の急激な増加を抑制できる。また、データ系列の数の急激な増加を抑制できるので、データの系列数の増加が失敗になる可能性を抑制できる。また、データの系列の数をひとつずつ増加するので、電力の急激な変化を抑制できる。また、MIMO−LTSが配置される系列の数と、データが配置される系列の数とは、所定の関係を有するので、両方の信号の強度の差を小さくできる。また、MIMO−LTSとデータの強度の差を小さくするので、MIMO−LTSの系列の数に、MIMO−STSの系列の数を合わせる場合であっても、データの受信品質の悪化を抑制できる。また、MIMO−LTSとデータの強度の差を小さくするので、データの系列の数に、MIMO−STSの系列の数を合わせる場合であっても、伝送路推定の悪化を抑制できる。また、MIMO−LTSが配置されている系列の数を上限値にするので、受信可能なデータの系列の数の急激な増加を抑制できる。
また、データの系列の数がMIMO−LTSの系列の数よりも少なくても、直交行列による乗算と循環的なタイムシフト処理を実行するので、データの系列の数をMIMO−LTSの系列の数に一致できる。また、MIMO−LTSにも、データ系列と同様の処理を実行するので、通信対象となる無線装置に、データ受信の際に、MIMO−LTSを使用させられる。また、MIMO−LTSをすべてのアンテナから送信するので、受信側が、すべてのアンテナに対する伝送路を推定できる。また、データの系列の数がアンテナ数に等しくなくても、データにウォルシュ行列とCDDによる処理を実行することによって、すべてのアンテナから満遍なく信号を送信できる。また、データの電力をMIMO−LTSに合わせることができる。
以上、本発明を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
本発明の実施例において、選択部28は、受信した信号の強度の大きいアンテナ12を優先的に選択している。しかしながらこれに限らず例えば、アンテナ12単位に遅延スプレッドを導出し、遅延スプレッドの小さいアンテナ12を優先的に選択してもよい。本変形例によれば、遅延波の影響が小さいアンテナ12を優先的に選択できる。つまり、無線品質のよいアンテナ12を優先的に選択すればよい。
本発明の実施例において、第1無線装置10aは、トレーニング信号を送信する際に使用すべきアンテナ12の本数と、トレーニング信号を受信する際に使用すべきアンテナ12の本数とを同一になるように制御している。しかしながらこれに限らず例えば、これらが異なるように制御を行ってもよい。すなわち、処理部22は、複数のアンテナ12によって、第2無線装置10bから、受信用のトレーニング信号を受信し、選択部28は、複数のアンテナ12のうち、トレーニング信号を送信すべき少なくともひとつのアンテナ12を選択する。その際、選択部28は、受信した受信用のトレーニング信号をもとに、複数のアンテナ12のそれぞれに対応した無線品質を導出し、無線品質のよいアンテナ12を優先的に選択してもよい。本変形例によれば、送信用のアンテナ12の本数と、受信用のアンテナ12の本数を独立に設定できる。
10 無線装置、 12 アンテナ、 14 アンテナ、 20 無線部、 22 処理部、 24 変復調部、 26 IF部、 28 選択部、 30 制御部、 32 レート情報管理部、 40 FFT部、 42 合成部、 44 参照信号生成部、 46 分離部、 48 IFFT部、 50 プリアンブル付加部、 52 送信ウエイトベクトル計算部、 54 受信ウエイトベクトル計算部、 56 乗算部、 58 乗算部、 60 加算部、 100 通信システム。