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JP4609825B2 - 光ファイバおよびその光ファイバを用いた光部品 - Google Patents

光ファイバおよびその光ファイバを用いた光部品 Download PDF

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JP4609825B2 JP2001241058A JP2001241058A JP4609825B2 JP 4609825 B2 JP4609825 B2 JP 4609825B2 JP 2001241058 A JP2001241058 A JP 2001241058A JP 2001241058 A JP2001241058 A JP 2001241058A JP 4609825 B2 JP4609825 B2 JP 4609825B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば波長多重伝送される光から光透過阻止波長帯以外の光を選択的に透過させるフィルタ等を形成するために用いられる光ファイバおよびその光ファイバを用いた光部品に関するものである。
【0002】
【背景技術】
情報化社会の発展により、通信情報量が飛躍的に増大する傾向にあり、光ファイバ通信における高速大容量化は、必要かつ、不可欠の課題となっている。近年、この高速大容量化へのアプローチとして、異なる複数の波長の信号光を1本の光ファイバで伝送する波長多重伝送方式の検討が行なわれている。なお、現在のところ、波長分割多重伝送は、エルビウムドープ光ファイバ型光増幅器の利得帯域である波長1.55μm帯を中心として行なうことが検討されている。
【0003】
波長多重伝送方式の光通信システムにおいて、合分波フィルタや光増幅器の利得平坦化フィルタ、レーザー波長安定化用等として、光ファイバにグレーティングを形成してなる光部品が広く用いられるようになった。この光部品は、例えば波長多重伝送される光から予め定められた波長帯の光を選択的に反射させ、この波長帯以外の波長の光を選択的に透過させる機能を有している。
【0004】
周知の如く、光ファイバは、光を伝搬するコアの周りにクラッドを形成したものであり、光ファイバのコアは、一般に、ゲルマニウム(Ge)ドープ石英(SiO)ガラスにより形成されている。このゲルマニウムドープ石英ガラスは、石英ガラスにGeOを添加して形成されるものであり、ゲルマニウムドープ石英ガラスのコアを有する光ファイバに強い紫外光を照射すると、コア内のゲルマニウムの作用によりコアの屈折率が高まる。
【0005】
上記グレーティングは、この性質を利用して形成されるものであり、例えば光ファイバ上にフェイズマスクを介して紫外光の干渉縞を投影することにより、光ファイバのコア内に周期的な屈折率変化を起こさせ、光ファイバの長手方向に沿って周期的な屈折率変化を起こさせ、回折格子を形成したものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、一般に用いられているシングルモード光ファイバにグレーティングを形成した光部品は、例えば図6のAに示すように、透過波長帯域に大きな透過損失が存在する。そのため、光透過阻止波長帯以外の波長の光を選択的に透過させるフィルタ機能を良好に果たすことができないといった問題があった。
【0007】
なお、同図のAに示したような透過損失は、主にクラッドモード結合ロスに起因すると考えられている。クラッドモード結合ロスは、光ファイバのグレーティング形成部において、光がコアに閉じこもって伝搬しようとする伝搬モードと、グレーティングによって反射した光がクラッド側に染み出して伝搬する高次モードの反射モードとが結合することにより生じるロスである。
【0008】
そこで、このクラッドモード結合ロスを抑制し、グレーティングを形成した光部品のフィルタ機能特性を良好にするために、いくつかの方法が提案されている。
【0009】
例えばグレーティングを形成する光ファイバを高NA(開口数)の光ファイバとすることにより、クラッドモード結合ロスが発生する波長域をブラッグ波長(光透過阻止波長帯の中心波長)から大きくずらし、光部品によって透過しようとする波長に影響を与えないようにすることが提案されている。なお、高NAの光ファイバにグレーティングを形成すると、クラッドモード結合ロスが発生する波長域をブラッグ波長から15nm前後短波長側にずらすことが可能である。
【0010】
しかしながら、クラッドモード結合ロスが発生する波長域をブラッグ波長から15nm前後ずらしても、光伝送帯域の広帯域化に対応するには限界があり、また、高NAの光ファイバは、シングルモード光ファイバとの接続損失が大きいといった難点もある。
【0011】
また、光ファイバにグレーティングを形成した光部品のフィルタ機能特性にクラッドモード結合ロスが与える影響を抑制する別の方法として、マルチモード光ファイバ(MMF)にグレーティングを形成する方法も提案されている。
【0012】
マルチモード光ファイバにグレーティングを形成することにより、コア中心部にのみ電界分布を有する最低次のモードのみを励振することができ、クラッドモード結合ロスを抑制することが可能である。しかし、マルチモード光ファイバもシングルモード光ファイバとの接続損失が大きいといった問題がある。
【0013】
本発明は、上記従来の課題を解決するために成されたものであり、その目的は、グレーティングを形成したときにクラッドモード結合ロス等の透過波長帯域のロスを十分低いレベルまで抑制することができ、それにより、高品質なフィルタ機能を果たすことができ、しかもシングルモード光ファイバとの接続性が良好な光ファイバおよびその光ファイバを用いた光部品を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は次のような構成をもって課題を解決するための手段としている。すなわち、第1の発明の光ファイバは、石英ガラスにGeOを添加して形成されたコアの外周側を第1クラッド部で覆い、該第1クラッド部の外周側を第2クラッド部で覆い、前記コアの屈折率分布をほぼステップインデックス形状と成し、前記第1クラッド部は石英ガラスに前記コアのGeO添加濃度とほぼ同じ濃度のGeOを径方向にほぼ均一に添加し、かつ、屈折率を低下させるドーパントを添加して形成し、前記第1クラッド部の屈折率を前記第2クラッド部の屈折率とほぼ同一または第2クラッド部の屈折率より小さくし、前記第2クラッド部は純石英により形成し、前記コアの前記第2クラッド部に対する比屈折率差を0.45%以上0.53%以下、前記第1クラッド部の径は前記コアの径の4倍以上4.5倍以下とし、カットオフ波長を990nm〜1370nmとし、波長1550nmにおける伝送損失を1dB/km以下とし、波長1550nmにおける直径20mmでの曲げ損失を2dB/m以下とし、少なくともコアと第2クラッド部は同心円状に形成し、前記コアの偏心量を0.5μm以下した構成をもって課題を解決する手段としている。
【0015】
また、第2の発明の光ファイバは、上記第1の発明の構成に加え、前記第1クラッド部に添加した屈折率を低下させるドーパントをフッ素とした構成をもって課題を解決する手段としている。
【0020】
さらに、第の発明の光部品は、上記第1またはの発明の光ファイバのGeO添加領域にグレーティングを形成した構成をもって課題を解決する手段としている。
【0021】
なお、本明細書において、コアの第2クラッド部に対する比屈折率差は、この値をΔ1とすると、コアの屈折率をn、第2クラッド部の屈折率をnとして、以下の式(1)により定義している。
【0022】
Δ1={(n −n )/2n }×100・・・・・(1)
【0023】
上記構成の本発明の光ファイバは、例えば光ファイバにグレーティングを形成した光部品として用いられるものであり、本発明の光ファイバは、第1クラッド部にコアのGeO添加濃度とほぼ同じ濃度のGeOを径方向にほぼ均一に添加しているので、本発明の光ファイバに、例えばフェイズマスクの上から紫外光を照射すると、コアだけでなく第1クラッド部にもコアと同じ周期のグレーティングが形成される。
【0024】
また、本発明の光ファイバは、第1クラッド部に屈折率を低下させるドーパントを添加しているので、光がコアに閉じこもって伝搬しようとする伝搬モードは維持される。
【0025】
ところで、本発明者は、クラッドモード結合ロスのうち、グレーティング形成光ファイバの損失波長特性に最も大きな影響を与えるものが、リーキーモードロス(放射モードと、伝搬モードとの結合による損失)であると考え、このリーキーモードロスを低減することによってクラッドモード結合ロスを効率的に低減できると考えた。
【0026】
そして、様々な検討を行ったところ、カットオフ波長を光ファイバのモードフィールド径(MFD)が最小となる値の近傍(具体的には、MFDが最小値から最小値の1.02倍の範囲となるようなカットオフ波長)に設定することにより、リーキーモードロスを十分なレベルに低減できることを見いだした。なお、上記検討の詳細については後述する。
【0027】
本発明の光ファイバは、上記本発明者の検討に基づき、カットオフ波長を、光ファイバのモードフィールド径が最小となる波長1200nm近傍である990nm〜1370nmにしたものであるから、リーキーモードロスを非常に効率的に低減でき、クラッドモード結合ロスを抑制できる。
【0028】
なお、本発明のように、光ファイバのクラッド部にゲルマニウムと屈折率を低くするドーパントを共にドープした石英ガラスを適用してコドープ光ファイバとし、クラッド部にもグレーティングを形成する試みは、以前にも提案されており、この構成により、クラッド部に染み出した光がクラッド部に形成されているコアと同じ周期のグレーティングによってさらに反射され、理論的にはクラッドモード結合ロスを抑制できると考えられていた。
【0029】
しかしながら、従来提案されてきたコドープ光ファイバは、本実施形態例のようにカットオフ波長を設定した構成ではなく、モードフィールド径が最小値近傍とならないために、グレーティングによって反射した光が第1クラッド部側に染み出す量が多く、実際には、上記理論通りにクラッドモード結合ロスを十分に抑制することはできなかった。
【0030】
それに対し、本発明の光ファイバは、上記のように、カットオフ波長を決定することにより、グレーティングによって反射した光の第1クラッド部側への染み出しを抑制し、リーキーモードロスを抑制する構成としたので、クラッドモード結合ロスを十分低いレベルまで抑制することができる。
【0031】
また、本発明の光ファイバはマルチモード光ファイバ等と異なり、コアの屈折率分布をシングルモード光ファイバと同様にほぼステップインデックス形状としているので、シングルモード光ファイバとの接続性が良好な光ファイバとすることができる。
【0032】
以上のように、本発明の光ファイバは、グレーティングを形成したときに、クラッドモード結合ロスを十分に抑制でき、しかも、シングルモード光ファイバとの接続性も良好であるので、本発明の光ファイバを用いた光部品は、クラッドモード結合ロスを抑制して高品質なフィルタ機能を果たすことができ、かつ、シングルモード光ファイバとの接続性が良好な光部品を実現することができる。
【0033】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、本実施形態例の説明において、従来例と同一名称部分には同一符号を付し、その重複説明は省略する。図1の(a)には、本発明に係る光ファイバの一実施形態例の屈折率プロファイルが示されている。また、同図の(b)には、本実施形態例の光ファイバの断面構成が示されている。
【0034】
これらの図に示されるように、本実施形態例の光ファイバは、コア1の外周側を第1クラッド部2で覆い、該第1クラッド部2の外周側を第2クラッド部3で覆って形成されている。また、コア1と第1クラッド部2と第2クラッド部3は同心円状に形成されており、コア1の偏心量、すなわち、コア1の中心と前記第2クラッド部3の外周円の中心とのずれは0.5μm以下である。
【0035】
コア1は石英ガラスにGeOを添加して形成されており、コア1の屈折率分布はほぼステップインデックス形状である。前記第1クラッド部2は石英ガラスに前記コア1のGeO添加濃度とほぼ同じ濃度のGeOを径方向にほぼ均一に添加し、かつ、屈折率を低下させるドーパントを添加して形成されており、第2クラッド部3は純石英(石英ガラス)により形成されている。
【0036】
第1クラッド部2の屈折率を低下させるドーパントはフッ素としており、フッ素の濃度をコア1のGeO添加濃度とほぼ同じ濃度とすることにより、第1クラッド部2の屈折率を第2クラッド部3の屈折率とほぼ同一(若干小さい値)としている。
【0037】
前記コア1の第2クラッド部3に対する比屈折率差Δ1は0.45%以上であり、第1クラッド部2の外径bとコア1の外径aの比(b/a)は4程度である。
【0038】
本実施形態例の光ファイバは、上記屈折率プロファイル構成を有し、カットオフ波長を、光ファイバのモードフィールド径(MFD)が最小となる最小値から最小値の1.02倍の範囲となるようなカットオフ波長である990nm〜1370nmとしたことを特徴としている。
【0039】
また、本実施形態例の光ファイバは、光ファイバにグレーティングを形成して光部品とし、この光部品を波長1.55μm帯における波長分割多重伝送用として適用することを考慮し、波長1550nmにおける伝送損失を1dB/km以下、波長1550nmにおける直径20mmでの曲げ損失を2dB/m以下としている。
【0040】
ところで、本発明者は、本実施形態例の光ファイバの構成を決定し、光ファイバにグレーティングを形成したときに前記クラッドモード結合ロスを十分に抑制できる光ファイバを提供するために、様々な検討を行なった。
【0041】
この検討に際し、まず、本発明者は、コアの屈折率分布をステップインデックスとすると、伝搬光のコア1内への閉じ込め効果が最も強くなり、クラッドモードとの結合を効率的に抑制できると考え、本実施形態例では、上記のように、コア1の屈折率分布をほぼステップインデックス形状とした。
【0042】
そして、本発明者は、前記の如く、クラッドモード結合ロスのうち、グレーティング形成光ファイバの損失波長特性に最も大きな影響を与えるものが、前記リーキーモードロスであると考え、このリーキーモードロスを低減することによってクラッドモード結合ロスを効率的に低減できると考え、リーキーモードロスを低減できる構成を検討した。
【0043】
その結果、本発明者は、図2の◆に示すように、リーキーモードロスがカットオフ波長に依存して変化し、また、図2の特性線aに示すように、光ファイバのモードフィールド径(MFD)もカットオフ波長に依存して変化し、モードフィールド径が最小値となる波長1200nm付近におけるリーキーモードロスの値は非常に小さいことを見いだした。
【0044】
図2に示す関係は、光ファイバにおいて、コア1を伝搬する光のモード分布、つまりモードフィールド径を小さくすることにより、コア1を伝搬する光の第1クラッド部2への染み出しを抑制することができ、リーキーモードロスを十分に抑制できることを示していると考えられる。
【0045】
そして、本発明者は、モードフィールド径が最小となる波長1200nm近傍、具体的には、モードフィールド径が最小値から最小値の1.02倍の範囲になるようにカットオフ波長を決定することで、リーキーモードロスを0.1dB以下に抑制できることを見いだした。
【0046】
このように、リーキーモードロスを0.1dB以下に抑制できると、クラッドモードロスを十分に低減でき、多チャンネルの波長多重伝送信号を伝送させた場合でも、高品質の伝送特性を実現できる。
【0047】
そこで、本発明者は、上記のように、本実施形態例の光ファイバのカットオフ波長を990nm〜1370nmに設定した。
【0048】
なお、図2の特性線aに示した結果は、光ファイバの屈折率プロファイルをステップインデックスとし、コア1の第2クラッド部3に対する比屈折率差Δ1を0.5%、波長を1550nmとして数値計算により求めた結果であり、リーキーモードロスは実測値である。
【0049】
また、本発明者は、光ファイバの屈折率プロファイル形状を本実施形態例と同様とすれば、比屈折率差Δ1の値によらず、モードフィールド径が最小となるカットオフ波長は一定の値となることを確認している。
【0050】
さらに、本発明者は、コア径とモードフィールド径との関係から、第1クラッド部2への伝搬モードの染み出し量を考慮し、第1クラッド部2の径は、コア径に対して4倍程度以上であれば充分であり、この第1クラッド部2にコア1のGeO添加濃度とほぼ同じ濃度のGeOを径方向にほぼ均一に添加する必要があると考え、本実施形態例では、第1クラッド部2の外径をコア1の外径の約4倍とした。
【0051】
さらに、伝搬光のコア1内への閉じ込め効果を考慮し、本実施形態例では、上記のように、第1クラッド部2の屈折率を第2クラッド部3の屈折率とほぼ同程度(若干小さめ)に設定した。このように設定することで、コア1内への伝搬光の閉じ込めが強くなり、結果としてクラッドモード結合ロスをより一層低減できる。
【0052】
なお、本実施形態例において、第1クラッド部2にはコア1のGeO添加濃度とほぼ同じ濃度のGeOを径方向にほぼ均一に添加しているので、このGeO濃度とほぼ同様(比屈折率差Δ1に換算して0.45%以上)のフッ素を第1クラッド部2に均一に添加することにした。
【0053】
さらに、本発明者は、光ファイバのカットオフ波長を1200nm近傍にした場合に、波長1550nmにおける曲げ直径20mmφでの曲げ損失の値を、比屈折率差Δ1を変化させて測定した。その結果、図3に示すように、比屈折率差Δ1が約0.45%以下になると、曲げ損失が急激に増大することが分かった。
【0054】
そこで、本実施形態例では、上記のように、比屈折率差Δ1を0.45%以上に決定し、波長1550nmにおける直径20mmφでの曲げ損失値を2dB/m以下になるようにした。
【0055】
なお、本実施形態例の光ファイバは、光部品に用いられるものであり、光部品の小型化の要求から小さなパッケージに収容されることが考えられるため、曲げ損失特性は重要な特性であり、このように、曲げ損失特性を良好にすることにより、光部品への適用を良好にできる。
【0056】
さらに、本実施形態例の光ファイバは、光部品に用いることを考慮し、前記の如く、波長1550nmにおける伝送損失を1dB/m以下とした。
【0057】
さらに、本実施形態例の光ファイバは、シングルモード光ファイバとの接続性を考慮し、コア1の偏心量、すなわち、コアの中心と前記第2クラッド部の外周円の中心とのずれを0.5μm以下とした。
【0058】
本実施形態例は以上のように構成されており、以下、本実施形態例の光ファイバの製造方法を説明する。まず、本実施形態例の光ファイバの製造に際し、MCVD(改良化学蒸着)法を用いてシリカ多孔質体を形成した。具体的には、まず、石英ガラス管内に少なくともGeClとSiClとを含んだ原料ガスを流し、ガラス管の外側から加熱することで管の内壁に、ゲルマニウムを含んだシリカ多孔質体を設定厚さとなるように堆積した。
【0059】
その後、前記ガラス管内に、少なくともSiFあるいはSFを含むガスを流しながら、先の堆積温度よりも高い温度で加熱することで、シリカ多孔質体を透明ガラス化した。
【0060】
このとき、フッ素成分が先のゲルマニウムを含んだシリカ多孔堆積体に取り込まれ、ゲルマニウムとフッ素が共添加された第1クラッド部の母材が得られる。このように、ゲルマニウムを含んだシリカ多孔堆積体の堆積工程と、フッ素を添加するガラス化工程とを分離することで、ゲルマニウムとフッ素各々の添加濃度の制御を容易に行うことができる。
【0061】
また、このようにゲルマニウムを含んだシリカ多孔堆積体の堆積工程と、フッ素を添加するガラス化工程とを分離すると、ゲルマニウムとフッ素を含んだシリカ多孔堆積体を堆積させ、ガラス化する場合に比べ、フッ素の高濃度添加が可能となる。
【0062】
次に、上記のようにして形成した第1クラッド部の母材の内側にGeClとSiClとを含んだ原料ガスを流し、高温に加熱することにより、第1クラッド部の母材の内側にコアの母材を形成する。
【0063】
その後、ガラス管内の中実化を行って(ガラス管をバーナで収縮させて)コアの母材が設定径となるようにし、また、第1クラッド部の母材の外周側に第2クラッド部となる領域を形成して線引母材を得た。そして、この線引母材を、光ファイバ製造時に一般に行われる線引き方法によって線引きし、本実施形態例の光ファイバを製造した。
【0064】
表1には、本実施形態例の光ファイバにおいて、上記のようにして製造した具体例1、2の構成および特性が示されている。
【0065】
【表1】
Figure 0004609825
【0066】
なお、表1において、伝送損失、波長分散、分散スロープ、曲げ損失はいずれも波長1550nmにおける値であり、曲げ損失は直径20mmφに光ファイバを3ターン巻いたときの値である。
【0067】
そして、表1に示す各具体例の光ファイバに、例えば周知のフェイズマスク法と呼ばれるグレーティング形成方法を用いてグレーティングを形成し、グレーティングを有する光部品を形成した。
【0068】
図4、図5には、それぞれ、具体例1と具体例2の光ファイバにグレーティングを形成して得た光部品の損失波長特性が示されている。これらの図に示すように、上記光部品の損失波長特性は、従来の光ファイバにグレーティングを形成した光部品に見られた、図6のAに示したようなクラッドモード結合ロスに起因する損失を0.05dB以下に非常に小さく抑制することができた。
【0069】
特に、具体例1を適用した光部品においては、カットオフ波長をより一層1200nmに近づけることにより、クラッドモード結合ロスをほぼ完全に抑制することができた。
【0070】
さらに、具体例1、2の光ファイバは、いずれも、波長1.55μm(波長1550nm)における伝送損失と曲げ損失が共に小さいので、これらの光ファイバを適用して光部品を形成することにより、波長多重伝送に適した光部品を形成することができる。
【0071】
さらに、具体例1、2の光ファイバは、コア1の偏心量も小さく、また、光ファイバの屈折率プロファイルがシングルモード光ファイバと同様にほぼステップインデックス形状であるので、これらの光ファイバをシングルモード光ファイバに接続したときの損失は、シングルモード光ファイバ同士を融着接続したときと同程度の小さい損失になった。
【0072】
なお、本発明は上記実施形態例に限定されることはなく、様々な実施の態様を採り得る。例えば上記実施形態例では、光ファイバをMCVD法を用いて製造したが、光ファイバの製造方法は特に限定されるものではなく適宜設定されるものである。例えば光ファイバをVAD(気相軸付け)法、OVD(外付け化学蒸着)法、ロッドインチューブ法等の、光ファイバ製造方法として周知の適宜の方法により製造してもよい。
【0073】
また、上記実施形態例では、第1クラッド部2に、屈折率を低下させるドーパントとしてフッ素を添加したが、フッ素以外の例えばボロン等のドーパントを添加して第1クラッド部2を形成してもよい。
【0074】
さらに、本発明の光ファイバにグレーティングを形成して光部品を形成する際、上記例ではフェイズマスク法を用いたが、フェイズマスク法の代わりに周知のホログラフィック法を用いてグレーティングの形成を行ってもよい。
【0075】
さらに、上記実施形態例では、光ファイバを用いて、光透過阻止波長帯が波長1.55μm帯のグレーティングを有する光部品を形成したが、グレーティングによる光透過阻止帯域や光ファイバの使用波長帯は特に限定されるものではなく適宜設定されるものである。そして、本発明の光ファイバおよび光部品は、光ファイバの使用波長帯に対応させて、曲げ損失や伝送損失を低減できるように適宜形成されるものである。
【0076】
【発明の効果】
本発明の光ファイバは、コアとその外周側の第1クラッド部にGeOを添加し、本発明者の検討に基づいて、光ファイバにグレーティングを形成した場合に、リーキーモードロスを低減することができるように、カットオフ波長を光ファイバのモードフィールド径が最小となる値の近傍である990nm〜1370nmに設定したものであるから、リーキーモードロスを非常に効率的に低減でき、クラッドモード結合ロスを十分低いレベルまで抑制することができる。
【0077】
また、本発明の光ファイバはマルチモード光ファイバ等と異なり、コアの屈折率分布をシングルモード光ファイバと同様にほぼステップインデックス形状としているので、シングルモード光ファイバとの接続性が良好な光ファイバとすることができる。
【0078】
また、本発明の光ファイバにおいて、第1クラッド部に添加した屈折率を低下させるドーパントをフッ素とした構成においては、容易に、かつ、的確にフッ素ドープを行なうことができるので、上記優れた効果を奏する光ファイバを容易に、かつ、歩留まりよく得ることができる。
【0079】
さらに、本発明の光ファイバ、第1クラッド部の屈折率を第2クラッド部の屈折率とほぼ同一または第2クラッド部の屈折率より小さくしたことによ、伝搬光をコアに閉じ込める効果を効率的に発揮することができるので、光ファイバにグレーティングを形成した場合に、より一層確実にクラッドモード結合ロスを抑制できる。
【0080】
さらに、本発明の光ファイバ、波長1550nmにおける伝送損失を1dB/km以下と、波長1550nmにおける直径20mmでの曲げ損失を2dB/m以下としたことによ、本発明の光ファイバを用いて、例えば波長1.55μm帯における波長分割多重伝送用に好適な光部品を構成することができる。
【0081】
さらに、本発明の光ファイバ、少なくともコアと第2クラッド部は同心円状に形成、前記コアの偏心量を0.5μm以下としたことによ、シングルモード光ファイバとの接続性をより一層良好にすることができる。
【0082】
さらに、本発明の光部品によれば、上記いずれかの光ファイバのGeO添加領域にグレーティングを施したものであるから、クラッドモード結合ロスを十分に抑制できる高品質のフィルタ機能を有し、かつ、シングルモード光ファイバとの接続性も良好な光部品とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る光ファイバの一実施形態例を示す要部構成図である。
【図2】光ファイバのカットオフ波長とモードフィールド径およびリーキーモードロスとの関係を示すグラフである。
【図3】光ファイバのコアのクラッドに対する比屈折率差Δ1と曲げ損失との関係を示すグラフである。
【図4】本発明に係る光ファイバの具体例1にグレーティングを形成して得られる光部品の損失波長特性を示すグラフである。
【図5】本発明に係る光ファイバの具体例2にグレーティングを形成して得られる光部品の損失波長特性を示すグラフである。
【図6】従来のシングルモード光ファイバにグレーティングを形成して得られる光部品の損失波長特性を示すグラフである。
【符号の説明】
1 コア
2 第1クラッド部
3 第2クラッド部

Claims (3)

  1. 石英ガラスにGeOを添加して形成されたコアの外周側を第1クラッド部で覆い、該第1クラッド部の外周側を第2クラッド部で覆い、前記コアの屈折率分布をほぼステップインデックス形状と成し、前記第1クラッド部は石英ガラスに前記コアのGeO添加濃度とほぼ同じ濃度のGeOを径方向にほぼ均一に添加し、かつ、屈折率を低下させるドーパントを添加して形成し、前記第1クラッド部の屈折率を前記第2クラッド部の屈折率とほぼ同一または第2クラッド部の屈折率より小さくし、前記第2クラッド部は純石英により形成し、前記コアの前記第2クラッド部に対する比屈折率差を0.45%以上0.53%以下、前記第1クラッド部の径は前記コアの径の4倍以上4.5倍以下とし、カットオフ波長を990nm〜1370nmとし、波長1550nmにおける伝送損失を1dB/km以下とし、波長1550nmにおける直径20mmでの曲げ損失を2dB/m以下とし、少なくともコアと第2クラッド部は同心円状に形成し、前記コアの偏心量を0.5μm以下したことを特徴とする光ファイバ。
  2. 第1クラッド部に添加した屈折率を低下させるドーパントはフッ素としたことを特徴とする請求項1記載の光ファイバ。
  3. 請求項1または請求項2記載の光ファイバのGeO 添加領域にグレーティングを形成したことを特徴とする光部品。
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