JP4605135B2 - 加工装置 - Google Patents
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高速刃物台(以下、加工装置という)は、工具が固定された可動子を、比較的高速で水平方向に進退させるため、進退時に発生する反動力(可動子からの反動力)が大きい。この反動力は、加工装置に振動等を発生させる場合があり、加工装置の位置精度を悪化させ、加工精度を低下させる場合がある。
そこで、特許文献1に記載された従来技術では、下部アクチュエータユニット(下部可動子)の上に上部アクチュエータユニット(上部可動子)を載置し、上部アクチュエータユニットの水平方向の往復移動に対して、下部アクチュエータユニットを逆方向に駆動することで、上部アクチュエータの往復移動による反動力を相殺して振動の発生を防ぐ直動アクチュエータが提案されている。
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、水平方向に往復移動する可動子からの反動力を比較的単純な構造で抑制することが可能な反動抑制構造を備えた加工装置を提供することを課題とする。
請求項1に記載の加工装置は、基台と、前記基台上に載置され、X軸駆動装置を用いて前記基台に対して水平方向を示すX軸方向に可動する下部可動子と、前記下部可動子上に載置され、前記X軸方向に直交する水平方向を示すZ軸方向に、自由移動可能に設けられた上部可動子用台座と、前記上部可動子用台座上に載置され、Z軸駆動装置を用いて前記上部可動子用台座に対して前記Z軸方向に可動する上部可動子と、前記上部可動子に設けられ、前記上部可動子とともに前記Z軸方向に往復移動してワークを加工する工具と、前記Z軸方向に往復移動する前記工具のZ軸方向への延長線上に前記ワークを保持するワーク保持手段と、を備え、前記下部可動子には、当該下部可動子に対する前記上部可動子の前記Z軸方向の位置を検出可能な第1検出手段が設けられており、前記第1検出手段の検出信号に基づいて前記上部可動子の前記Z軸方向の位置が制御される。
そして、前記Z軸方向に振動する第1バネが、前記下部可動子に対して前記上部可動子用台座を前記Z軸方向に振動可能となるように接続されている。
更に、前記下部可動子の重心を通るとともに前記X軸に平行な垂直面に対して、前記工具とほぼ対称となる位置に、前記下部可動子に固定した擬似工具を設け、前記擬似工具の先端部における前記基台に対する前記Z軸方向の位置を検出する第2検出手段を前記基台に備え、前記工具におけるZ軸方向の制御位置を、前記第2検出手段の検出信号に基づいて補正する。
請求項2に記載の加工装置は、請求項1に記載の加工装置であって、前記Z軸駆動装置による前記上部可動子を前記Z軸方向に往復させる往復周波数に対して、前記上部可動子用台座と前記第1バネとで構成される上部可動子用台座振動系の共振周波数の方が小さくなるように、前記往復周波数と、前記上部可動子用台座の質量と、前記第1バネのバネ定数と、が選定されている。
請求項3に記載の加工装置は、請求項1または2に記載の加工装置であって、前記工具のZ軸方向の目標とする位置に対応する目標変位と、前記第1検出手段の検出信号に基づいた前記工具の実際の位置に対応する工具実変位と、前記第2検出手段の検出信号に基づいた前記擬似工具の実際の位置に対応する擬似工具実変位とを用い、前記目標変位から前記工具実変位を減算した偏差から更に前記擬似工具実変位を減算した偏差に基づいて前記Z軸駆動装置の制御量を求める。
これにより、比較的簡単な構造で反動抑制構造を備えた加工装置を実現できるので、加工装置の小型化、低コスト化をより促進することができる。
また、第1検出手段及び第2検出手段による検出信号にて工具の位置を制御することで、工具の位置を、より高精度に位置決めすることができる。
図1は、本発明の反動抑制構造を備えた加工装置10の一実施の形態における概略斜視図である。また、図2は、反動抑制構造の構成を説明する図である。なお、各図において、X軸、Y軸、Z軸は互いに直交する方向を示しており、X軸とZ軸は水平方向を、Y軸は垂直方向を示している。また、Z軸方向は、工具TがワークWに切り込む方向を示している。
加工装置10は、ベースとなる基台20に、ワーク保持手段80、下部可動子30が載置されている。
ワーク保持手段80は、ワーク旋回手段80aを備えており、保持されたワークWをZ軸に平行な中心軸に対して旋回可能である(図1中の80Rの方向に旋回可能である)。また、図1に示すワーク保持手段80は、基台20に対してZ軸方向(図1中の80Zの方向)に往復移動することが可能であるが、特にZ軸方向に移動しない構成であってもよい。
下部可動子30は、例えば、基台20に設けられたモータ30aと、当該モータ30aの軸に接続されたボールねじ30b等で構成されたX軸駆動装置(リニアモータ等で構成されていてもよく、各駆動装置の構成は、特に限定しない)にて、基台20に対してX軸方向(図1中の30Xの方向)に往復移動することが可能である。
上部可動子用台座40は、レールとベアリングブロック等の案内部材(図示省略)にて、下部可動子30に対してZ軸方向に自由移動可能に設けられている。
上部可動子50は、Z軸駆動装置(図示省略)にて下部可動子30に対してZ軸方向(図1、図2中の50Zの方向)に往復移動することが可能である。
また、工具Tは、ワークWに対向させてZ軸方向に突出するように上部可動子50に固定されている。また、ワーク保持手段80は、Z軸方向に往復移動する工具TのZ軸方向への延長線上にワークWを保持している。
なお、X軸駆動装置、Z軸駆動装置、ワーク保持手段80、ワーク旋回手段80aは、図示しない数値制御装置等によって制御される。例えば、数値制御装置等は、下部可動子30に対する上部可動子50の相対的な位置を検出可能な第1検出手段50sからの検出信号に基づいて上部可動子50の位置を検出し、検出した位置に基づいた制御信号にて、Z軸駆動装置を制御する。
そして、図2に示すように、Z軸方向に振動する第1バネS1が、下部可動子30(この場合、支持部30c)に対して上部可動子用台座40がZ軸方向に振動可能となるように接続されている。
また、下部可動子30は、静圧軸受けからなるガイドS2によってX軸方向に案内されるが、ガイドS2はバネ性を有しており、このバネ性のZ軸成分を仮想的に表すと、Z軸方向に振動する仮想第2バネS2a、S2bにて接続されている状態と考えることができる。
なお、下部可動子30は、ガイドS2の弾性的性質により揺動運動を行うが、ここでは簡略化のため、重心Gの仮想第2バネS2a、S2bによる並進振動(図5(A)中のFm)に置き換えて考える。
また、図2に示すように、下部可動子30の重心Gを通るX軸に平行な垂直面Mxyに対して、工具Tと反対となる側(面Mxyに対して工具Tとほぼ対称となる位置)に、擬似工具TDが設けられている。なお、工具TはZ軸方向に移動可能であるため、完全な対称位置に擬似工具TDを設けることができないが、例えば、工具Tを実加工上で往復移動させる際の移動中心等から対称となる位置に擬似工具TDを設ける。
そして、基台20には、基台20に対する擬似工具TDのZ軸方向の位置を検出可能な第2検出手段30s(静電容量式や光学式の位置センサ等)が設けられている。なお、第1検出手段50sと第2検出手段30sの検出精度(分解能)は同じであることが好ましい。
以下に、上部可動子50に作用する力をf0sin(ω1t)として、所定周波数でZ軸方向に移動させた場合の運動方程式を示す。なお、上部可動子50の質量(工具Tを含む)をM1、上部可動子用台座40の質量(第1検出手段50sを含む)をM2、下部可動子30の質量(擬似工具TDを含む)をM3とする。また、第1バネS1のバネ定数をK2、ガイドS2(仮想第2バネ)のバネ定数をK4とする。そして、上部可動子50のZ軸方向の移動距離をX1、上部可動子用台座40のZ軸方向の移動距離をX2、下部可動子30のZ軸方向の移動距離をX3とする。
以上の設定において、ダンピング要素を無視し、初期値を0(ゼロ)として以下に示す運動方程式を得ることができる。
M1(d2X1/dt2)=f0sin(ω1t)
M2(d2X2/dt2)+K2(X2−X3)=−f0sin(ω1t)
M3(d2X3/dt2)+K2(X3−X2)+K4X3=0
ここで、本対象では、K2<<K4、M2<<M3、K4/M3>>K2/M2であることと、下記の式を用いて、ωf1 2とωf2 2を、以下のように整理することができる。
図7中に示すωf1とωf2は、上記より求めた値となる。また、図7において、領域Aと領域Bの境界線の角周波数は、加工装置10における制御システム(図3及び図6参照)の応答限界の角周波数であり、制御システムによって決まっている。この境界線より低い角周波数の領域が領域Aであり、境界線以上の角周波数の領域が領域Bである。
ここで、外乱による振動が、図7に示す領域A及び領域Bに収まるように、ωf1、及びωf2を設定する。例えば、要求される表面粗さをReとすると、領域A、B内の振幅がRe以下となるように、第1バネS1のバネ定数K2、及び上部可動子用台座40の質量M2、下部可動子30の質量M3等を選定する。
ここで、ガイドS2の弾性的性質により、制御で位相遅れ等が発生し、追従できない周波数領域のゲインを問題ないレベルまで下げ、入力あるいは外乱等に高い周波数成分があっても、下部可動子30の振動レベルは著しく小さく、問題とならないように、各パラメータを調整することが重要である。
この条件で、第1検出手段50s及び第2検出手段30sからの検出信号に基づいて、制御装置からZ軸駆動装置を制御して工具TのZ軸方向への位置を制御すれば、高精度の反動制御が容易に得られる。以下にて、その制御方法について第1の実施の形態、及び第2の実施の形態について説明する。
次に、図3に示す制御ブロック図と、図4に示す制御フローを用いて、工具TのZ軸方向への位置決め制御の第1の実施の形態について説明する。
なお、図5は制御ブロック図3におけるノードN10、ノードN20の考え方を説明する図である。図5(A)は、工具TのZ軸方向の誤差について説明する図である。例えば、上部可動子50がZ軸方向に往復移動すると、下部可動子30にモーメントFm(ボールねじ30bを中心として回転する力)が印加される場合がある。この場合、例えば擬似工具TDの位置が、図5(A)中に点線で示す擬似工具TD´の位置に変位し、期待する位置から距離E1だけずれた位置となる。このずれは、工具Tも同様であるが、工具TはZ軸方向に往復移動しているため、ずれ量を検出することは非常に困難である。擬似工具TDは、基台20に対してZ軸方向に一定の距離が保たれているはずであり、第2検出手段30sにて、基台20に対するZ軸方向の位置を安定して検出することができる。
なお、図2にて説明したように、擬似工具TDは、面Mxyが重心を通り、面Mxyに対して、工具Tとほぼ対称となる位置に擬似工具TDが設けられているので、擬似工具TDのずれ量は、工具Tのずれ量とほぼ等しいものとなる。このような誤差は、下部可動子30がガイドS2の弾性的性質(仮想第2バネS2a、S2b)により、回転等する場合に発生すると考えられるからである。
なお、「目標変位」の正方向は図5(B)中のZ軸方向(この場合、左方向)であり、「工具Tの実変位」の正方向は図5(B)中のZ軸方向(この場合、左方向)であり、「擬似工具TDの実変位」の正方向は図5(B)中のZ軸と反対方向(この場合、右方向)である。
以上を踏まえて、図3に示す制御ブロック図の各ノード(ノードN10〜ノードN40)における処理内容を、図4に示す制御フローの各ステップ(ステップS6〜ステップS40)にて説明する。
ステップS7では、第2検出手段30sからの検出信号に基づいた擬似工具TDのZ軸方向の実変位を算出し、ステップS10に進む。
ステップS10(ノードN10に相当)では、ステップS6で求めた目標変位からステップS7で求めた擬似工具TDの実変位を減算して新目標変位を算出してステップS20に進む。
ステップS20(ノードN20に相当)では、ステップS10で求めた新目標変位から工具Tの実変位を減算して最終変位(目標変位量に対する実際の変位量の差)を求め、求めた最終変位から目標速度を算出してステップS30に進む。なお、工具Tの実変位は、図3に示すように、モータ(Z軸駆動装置のモータ)の加速度から求めた速度から求めることができる。
ステップS30(ノードN30に相当)では、ステップS20で求めた目標速度からモータの実際の速度を減算して速度偏差(目標速度に対する実際の速度との差)を求め、求めた速度偏差から目標電流を算出してステップS40に進む。
ステップS40(ノードN40に相当)では、ステップS30で求めた目標電流からモータの実際の電流を減算して電流偏差(目標電流に対する実際の電流との差)を求め、求めた電流偏差に基づいてモータ(Z軸駆動装置のモータ)に供給する電流を制御する。なお、モータには供給されている電流を検出可能な電流検出手段が設けられている。この電流検出手段からの検出信号に基づいて、制御装置は、モータに流れている電流を認識可能であり、当該電流からモータの加速度を求めることが可能である。
次に、図6に示す制御ブロック図を用いて、第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態は、第1の実施の形態に対して、制御ブロック図における点線B1の部分(ノードN12、ノードN22)が異なっており、他は同様である。
ここで、図6に示す制御ブロック図において、ノードN22から出力される「最終変位」は、図3に示すノードN20から出力される「最終変位」と同様、「最終変位」=「目標変位」−「工具の実変位(工具実変位に相当)」−「擬似工具TDの実変位(擬似工具実変位に相当)」である。従って、図6に示す制御ブロック図は、図3に示す制御ブロック図と比較すると、「最終変位」を求めるまでの、「目標変位」から「工具の実変位」と「擬似工具の実変位」を減算する順番が異なるのみである。
その他については第1の実施の形態と同様であるので説明を省略する。
図3及び図6の例に示すように、フィードバックコントロール外の下部可動子30の振動による工具Tの位置の誤差要因となる外乱を、擬似工具TDの振動から検出し、この擬似工具TDの変位を目標変位から差し引くように構成したことで、下部可動子30の振動を考慮した、より正確な工具Tの位置決め制御が可能となる。
また、下部可動子30の振動の検出(Z軸方向の変位の検出)は、同時に下部可動子30のヨーイングも検出して補正することができるので、加工精度をより向上させることができる。
更に、第1バネS1のフィルタ効果により、上部可動子用台座40から下部可動子30へ伝達される反動力を大幅に低減できるので、下部可動子30の振動による誤差の発生を大幅に低減することができ、より一層加工精度を向上させることができるとともに、誤差要因となる上部可動子50の往復周波数に対する2次、3次等、高次数の周波数の基台を経た振動の誘起を抑制することができる。
以上、本実施の形態にて説明した加工装置を用いれば、水平方向に往復移動する可動子からの反動力を比較的単純な構造で抑制することが可能な反動抑制構造を備えた加工装置を実現することができる。
20 基台
30 下部可動子
30a モータ
30b ボールねじ
40 上部可動子用台座
50 上部可動子
80 ワーク保持手段
80a ワーク旋回手段
S1 第1バネ
S2 ガイド(仮想第2バネ)
50s 第1検出手段
30s 第2検出手段
T 工具
TD 擬似工具
G 重心
W ワーク
Claims (3)
- 基台と、
前記基台上に載置され、X軸駆動装置を用いて前記基台に対して水平方向を示すX軸方向に可動する下部可動子と、
前記下部可動子上に載置され、前記X軸方向に直交する水平方向を示すZ軸方向に、自由移動可能に設けられた上部可動子用台座と、
前記上部可動子用台座上に載置され、Z軸駆動装置を用いて前記上部可動子用台座に対して前記Z軸方向に可動する上部可動子と、
前記上部可動子に設けられ、前記上部可動子とともに前記Z軸方向に往復移動してワークを加工する工具と、
前記Z軸方向に往復移動する前記工具のZ軸方向への延長線上に前記ワークを保持するワーク保持手段と、を備え、
前記下部可動子には、当該下部可動子に対する前記上部可動子の前記Z軸方向の位置を検出可能な第1検出手段が設けられており、前記第1検出手段の検出信号に基づいて前記上部可動子の前記Z軸方向の位置が制御され、
前記Z軸方向に振動する第1バネが、前記下部可動子に対して前記上部可動子用台座を前記Z軸方向に振動可能となるように接続されており、
前記下部可動子の重心を通るとともに前記X軸に平行な垂直面に対して、前記工具とほぼ対称となる位置に、前記下部可動子に固定した擬似工具を設け、
前記擬似工具の先端部における前記基台に対する前記Z軸方向の位置を検出する第2検出手段を前記基台に備え、
前記工具におけるZ軸方向の制御位置を、前記第2検出手段の検出信号に基づいて補正する、
ことを特徴とする加工装置。 - 請求項1に記載の加工装置であって、
前記Z軸駆動装置による前記上部可動子を前記Z軸方向に往復させる往復周波数に対して、前記上部可動子用台座と前記第1バネとで構成される上部可動子用台座振動系の共振周波数の方が小さくなるように、前記往復周波数と、前記上部可動子用台座の質量と、前記第1バネのバネ定数と、が選定されている、
ことを特徴とする加工装置。 - 請求項1または2に記載の加工装置であって、
前記工具のZ軸方向の目標とする位置に対応する目標変位と、
前記第1検出手段の検出信号に基づいた前記工具の実際の位置に対応する工具実変位と、
前記第2検出手段の検出信号に基づいた前記擬似工具の実際の位置に対応する擬似工具実変位とを用い、
前記目標変位から前記工具実変位を減算した偏差から更に前記擬似工具実変位を減算した偏差に基づいて前記Z軸駆動装置の制御量を求める、
ことを特徴とする加工装置。
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