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JP4605095B2 - 無電極放電ランプ及びその製造方法並びに照明器具 - Google Patents

無電極放電ランプ及びその製造方法並びに照明器具 Download PDF

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本発明は、無電極放電ランプ及びその製造方法並びに照明器具に関するものである。
従来より、バルブの内部に放電ガス及び水銀蒸気が封入された無電極放電ランプが提供されている。このような無電極放電ランプでは、バルブに近接配置された誘導コイルに高周波電流を流し、電磁誘導により高周波電磁界を発生させて、水銀蒸気を励起し、このとき放射された紫外線をバルブ内面に塗布された蛍光体により可視光に変換している(例えば特許文献1参照)。この無電極放電ランプは、内部に電極を持たない構造となっているため、電極の劣化による不点灯がなく、フィラメント電極を備えた一般の蛍光ランプに比べて長寿命である。
従来の無電極放電ランプには、水銀蒸気の供給源として、ビスマス−インジウム−水銀アマルガムを使用したものがある。このアマルガムは周囲温度が変化しても、広い温度範囲で高い光出力が得られるという利点がある。その一方で高い光出力を実現するためには高いアマルガム温度が必要であり、必要な温度に達するまでに時間がかかってしまう。つまりランプの立ち上がりが遅いという問題があり、ビスマス−インジウム−水銀アマルガムを使用した無電極放電ランプでは、安定点灯時の光出力に対して約60%の光出力を確保するのに1分程度の時間がかかるという実験結果が得られている。
そこで、ランプの立ち上がり時間を短縮するために、水銀蒸気の供給源として、純粋な水銀滴を使用した無電極放電ランプが提供されている(例えば、特許文献2参照)。水銀滴は、上述のビスマス−インジウム−水銀アマルガムに比べて、低い温度でも高い水銀蒸気圧を得ることができるため、必要な温度に達するまでの時間が短く、ランプの立ち上がり時間を短縮することができた。
しかしながら、水銀蒸気の供給源として純粋な水銀滴を使用する場合は封入量の管理が難しく、必要量以上の水銀がランプ内に封入される可能性がある。封入量が多いと、蒸発した水銀がバルブの内壁に付着して黒化の原因になるという問題があり、環境保護の点でも問題がある。一方、ランプを長期間使用すると、バルブ内に封入した水銀がナトリウムと合金を作ったり、酸化物になることで消費されるため、一定量以上の水銀滴を封入する必要がある。このように水銀の封入量はランプ性能に大きく影響するため、水銀の封入量を厳密に管理する必要があるが、水銀滴を封入する場合は封入量の管理が難しかった。
そこで、水銀蒸気の供給源として、供給量の管理が容易なZn−Hgアマルガムを使用した無電極放電ランプが提案されている。Zn−Hgアマルガムは、ビスマス−インジウムアマルガムに比べて、温度と水銀蒸気圧の関係がより水銀に近くなるという特性を有しており、水銀滴を使用する場合と同様にランプの立ち上がり時間を短縮することができる。また水銀滴を封入する場合に比べて、封入量の管理がしやすく、水銀の封入量を最適にすることができた。
このように水銀蒸気の供給源として、純粋な水銀滴やZn−Hgアマルガムを使用した場合は、ランプの立ち上がり時間を短縮することができるのであるが、バルブの体積に対して入力電力が大きい場合や周囲温度が高い場合には、バルブの温度が高くなるために、内部の水銀蒸気圧が高くなり過ぎて、逆に光出力が低下してしまう。そのため水銀滴やZn−Hgアマルガムを使用する場合には、水銀蒸気圧を制御するために、最冷点を確保する必要がある。最冷点とは、バルブの表面の中で最も温度が低くなる部位であり、その温度は35℃〜45℃程度とすることが好ましい。特許文献2に示された無電極放電ランプでは、バルブの表面に外側に向かって突出する突起部を設け、この突起部を最冷点としている。
特開平7−272688号公報(段落番号[0014]−[0017]、及び、第1図) 特開2005−346983号公報(段落番号[0011]−[0017]、及び、第1図)
上述した後者の無電極放電ランプでは、最冷点を確保するためにバルブの表面に突起部を設けているのであるが、突起部を含めてバルブの内面全体に蛍光体を塗布する際に、バルブの表面と突起部との境界部分の曲率半径が小さいと、境界部分に塗布される蛍光体が薄くなったり、境界部分に蛍光体が溜まるなどして、境界部分で蛍光体が斑になりやすく、外観の見栄えが悪くなるという問題があった。
本発明は上記問題点に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、外観を向上させた無電極放電ランプ及びその製造方法並びに照明器具を提供することである。
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、透光性材料により形成され、内面に紫外線を可視光に変換する蛍光体膜が少なくとも形成されるとともに、内部に放電ガス及び最冷点温度で制御される水銀が封入されたバルブを備え、バルブの表面に、外側に向かって突出する半球状の突起部が形成され、バルブの表面において、突起部の周りの部位と突起部との間の曲面部分の曲率半径5mm以上であることを特徴とする。
請求項2の発明は、請求項1記載の無電極放電ランプを製造するにあたり、バルブの内面に蛍光体を静電塗布して蛍光体膜を形成したことを特徴とする。
請求項3の発明は、照明器具であって、請求項1記載の無電極放電ランプと、無電極放電ランプに高周波電磁界を発生させる誘導コイルと、誘導コイルに高周波電流を供給する点灯回路とを備えることを特徴とする。
請求項1の発明によれば、突起部の周りの部位と突起部との間の曲面部分の曲率半径を5mm以上とすることで、突起部の周りの部位と突起部との間の曲面部分においてバルブの内面に形成された蛍光体膜の厚みが厚くなったり、薄くなったりするのを抑制でき、蛍光体膜が斑になるのを防止して、無電極放電ランプの外観の見栄えを向上させることができるという効果がある。
請求項2の発明によれば、蛍光体を静電塗布することで蛍光体膜を形成する場合でも、突起部の周りの部位と突起部との間の曲面部分において蛍光体膜の厚みが厚くなったり、薄くなるのを抑制して、蛍光体膜が斑になるのを防止でき、外観の見栄えが向上するという効果がある。
請求項3の発明によれば、請求項1記載の無電極放電ランプを用いることで、無電極放電ランプの外観の見栄えを向上させた照明器具を実現できるという効果がある。
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明に係る無電極放電ランプLaの断面図、図2は無電極放電ランプLaの要部拡大断面図であり、この無電極放電ランプLaは、透光性材料(例えば透明なガラス材料)により形成された気密容器2の内部に、放電ガスとして希ガス(アルゴン、クリプトンなど)と、最冷点温度で制御される水銀とを封入して構成されるバルブ1を備える。
気密容器2は、筒状部分の一端側が球状部分に連通するような電球形状に形成された外殻3と、外殻3の開口部に封着されて外殻3の内方に突出する有底円筒状のキャビティ4と、キャビティ4の底部5に溶着されてキャビティ4の開口部に向かって突出する排気細管6とを備え、後述するカプラ20によって支持されている。排気細管6の先端部(底部5と反対側の端部)は封止されており、気密容器2の内部空間が放電空間2aとなっている。
外殻3の頂部には外側に向かって突出する略半球状の突起部10が形成されており、外殻3の頂部を下向きにして点灯させた場合(この状態をベースアップ点灯と言う)には突起部10が最冷点となる。ここで、バルブ1の表面(すなわち外殻3の表面)と突起部10との境界部分10aの曲率半径は少なくとも5mm以上に設定されている。
また、排気細管6には鉄−ニッケル合金などで形成された金属容器7が納められ、この金属容器7の内部には水銀蒸気の供給源となるZn−Hgアマルガムなどの水銀合金8が封入されている。Zn−Hgアマルガムは、ビスマス−インジウムアマルガムに比べて、温度と水銀蒸気圧との関係が水銀滴により近いという特性を有している。なお、排気細管6には金属容器7の収納位置よりも底部5に近い側に窪み部9を設けてあり、窪み部9が金属容器7の抜け止めを行っている。
また外殻3の底部、すなわち筒状部分の先端側には、後述のカプラ20をバルブ1と嵌合させるための樹脂製の口金11が設けられている。
そして、突起部10を含めて外殻3の内面には、保護膜12と、紫外線を可視光に変換する蛍光体膜13とが塗布されている。またキャビティ4の周壁(放電空間2a側の面)にも、保護膜14と、紫外線を可視光に変換する蛍光体膜15とが塗布されている。ここで、蛍光体膜13,15には、蛍光体を結着させる結着剤として例えばAl等の金属酸化物が含まれているが、その添加量を増やすことでキャビティ4の蛍光体を保護し、蛍光体の劣化を防いでいる。保護膜12,14の材料として用いられる金属材料はSiやAlなどがあり、結着剤として用いる金属酸化物はAlのほかにYやMgOなどがある。尚、図1では図示を簡単にするために、外殻3及びキャビティ4からなる気密容器2の内面の一部分にしか、保護膜12,14および蛍光体膜13,15が形成されていないが、実際には外殻3及びキャビティ4の全体に保護膜12,14及び蛍光体膜13,15を形成してある。
図4は上述の無電極放電ランプを用いた照明器具の外観斜視図であり、この照明器具は、無電極放電ランプLaと、無電極放電ランプLaに高周波電磁界を発生させる誘導コイル(図示せず)を備えたカプラ20と(図1参照)、カプラ20が備える誘導コイルに高周波電流を供給する点灯回路23とを備える。
カプラ20は、バルブ1を保持するとともに、バルブ1と点灯回路23とを電気的に接続するものであり、点灯回路23から高周波電流が通電されて誘導電界を発生する誘導コイル(図示せず)と、誘導コイルが巻回されて誘導コイルが発生する磁束を通すコア21とを備え、コア21をキャビティ4内に挿入した状態で無電極放電ランプLaの口金11と嵌合する。またカプラ20は、図4に示すように放熱板22に固定されており、カプラ20と点灯回路23との間は出力線24を介して電気的に接続されている。
この照明器具では、カプラ20の備える誘導コイルに点灯回路23から高周波電流を供給すると、誘導コイルの周囲に高周波電磁界が発生する。この高周波電磁界によって、気密容器2内の電子が加速され、電子の衝突により電離が起こり、放電が発生する。放電中は放電ガスが励起され、励起された原子が基底状態に戻るときに紫外線を発生する。この紫外線は気密容器2の内面に塗布された蛍光体膜13,15により可視光に変換され、変換された可視光は気密容器2を透過して外部に放射されるのである。なおランプ点灯中は放電による熱で気密容器2が高温になるが、バルブ1(つまり気密容器2)の表面に突出形成された突起部10を最冷点とすることで、気密容器2内部の水銀蒸気圧を最適な蒸気圧に制御でき、光出力の低下を防止することができる。
ところで、外殻3の内部に蛍光体膜13を塗布する方法としては、スラリー塗布法や静電塗布法などの方法があり、図3(a)はスラリー塗布法の説明図、図3(b)は静電塗布法の説明図である。
先ずスラリー塗布法による蛍光体膜13の形成方法について説明する。スラリー塗布法は、外殻3の内部にスラリー状の蛍光体30を流し込み、外殻3の開口部を斜め上向きにした状態で外殻3を周方向に回転させることによって、外殻3の球状部分に蛍光体30を塗布する。次いで外殻3の開口部を斜め下向きにした状態で外殻3を回転させることによって、外殻3の筒状部分にも蛍光体30を塗布し、乾燥させて蛍光体膜を形成する方法である。
本実施形態では最冷点を確保するために、外殻3の表面に突起部10を突設しているので、スラリー塗布法によって外殻3の表面と突起部10との境界部分10aに蛍光体膜13を塗布した場合、この境界部分10aの蛍光体膜13の厚みが不均一になりやすく、蛍光体膜13の膜厚が厚くなったり、薄くなったりすることで突起部10に塗布された蛍光体膜13が斑になったり、外殻3において突起部10以外の部分の外観が悪化する可能性がある。これは蛍光体30を塗布、乾燥する際に突起部10に蛍光体30が溜まったり、流れたりするためである。
そこで、本発明者らは外殻3の表面と突起部10との境界部分10aの曲率半径が4.0mmから6.0mmまでの複数種類の外殻3を作製して、各々の外殻3の内面にスラリー塗布法を用いて同じ条件で蛍光体膜13を形成した場合に、外殻3の表面に発生する塗布むらを確認したところ、表1に示すような結果が得られた。尚、表1中の「R」とは、外殻3の表面と突起部10との境界部分10aの曲率半径、「偏差」とは、突起部10の周辺の4点において蛍光体膜13の膜厚を測定し、膜厚の最大値と最小値の差を求めた結果、「σ」とは分散を、「むら(斑)」とは目視により外殻3表面の塗布むらの有無を確認した結果である。
Figure 0004605095
表1に示す結果より、外殻3の表面と突起部10との境界部分10aの曲率半径Rを5mm以上とすれば、蛍光体30をスラリー塗布する際に境界部分10aの蛍光体膜13の厚みを略一様にして、蛍光体膜13の斑を目立たなくすることができ、消灯時は勿論のこと、点灯時であっても無電極放電ランプLaの外観の見栄えを損なわないことが確認できた。
次に静電塗布法による蛍光体膜13の形成方法について説明する。静電塗布法では、外殻3の開口部から内部に電極ノズル31を挿入し、電極ノズル31から噴出した蛍光体32を外殻3の内面に向かって放出させる。そして、外殻3の外側に配置した外部電極(図示せず)と電気的に接続されているバーナー(図示せず)から放射させた炎を外殻3の外表面に当て、電極ノズル31と外部電極との間に電圧を印加して外殻3の外表面を帯電させることで、外殻3の内面に蛍光体32を付着させて、蛍光体膜13を形成する。
ここで、静電塗布法により蛍光体膜13を形成する場合でも、外殻3の表面と突起部10との境界部分10aに形成された蛍光体膜13の膜厚が不均一になりやすく、突起部10に塗布された蛍光体膜13が斑になったり、外殻3において突起部10以外の部分の外観が悪化する可能性がある。
そこで、本発明者らは外殻3の表面と突起部10との境界部分10aの曲率半径が3.9mmから6.0mmまで複数種類の外殻3を作製して、各々の外殻3の内面に静電塗布法を用いて同じ条件で蛍光体膜13を形成した場合に、外殻3の表面に発生する塗布むらを確認したところ、表2に示すような結果が得られた。尚、表2中のR、偏差、σ、むら(斑)などの項目は、表1に示す項目と同様であるので、その説明は省略する。
Figure 0004605095
表2に示す結果より、外殻3の表面と突起部10との境界部分10aの曲率半径Rを5mm以上とすれば、蛍光体30を静電塗布する際に境界部分10aの蛍光体膜13の厚みを略一様にして、蛍光体膜13の斑を目立たなくすることができ、消灯時は勿論のこと、点灯時であっても無電極放電ランプLaの外観の見栄えを損なわないことが確認できた。
なお、本実施形態では外殻3の表面に突起部10を1カ所しか設けていないが、突起部10を複数設けても良く、何れの突起部10についても外殻3の表面との境界部分10aの曲率半径を5mm以上とすることで、外観の見栄えを良くできる。
また、本実施形態ではキャビティ4の内部に挿入された誘導コイルにより誘導電界を発生させる無電極放電ランプLaを例に説明を行ったが、バルブ1の外周に巻回された誘導コイルにより誘導電界を発生させる無電極放電ランプに本発明を適用しても良いことは言うまでもない。
なお、本発明の精神と範囲に反することなしに、広範に異なる実施形態を構成することができることは明白なので、この発明は、特定の実施形態に制約されるものではない。
本実施形態の無電極放電ランプの断面図である。 同上の要部拡大断面図である。 同上の製造方法の説明図であり、(a)はスラリー塗布法の説明図、(b)は静電塗布法の説明図である。 同上の無電極放電ランプを用いた照明器具の概略構成図である。
符号の説明
La 無電極放電ランプ
1 バルブ
2 気密容器
3 外殻
4 キャビティ
6 排気細管
10 突起部
10a 境界部分
12,14 保護膜
13,15 蛍光体膜

Claims (3)

  1. 透光性材料により形成され、内面に紫外線を可視光に変換する蛍光体膜が少なくとも形成されるとともに、内部に放電ガス及び最冷点温度で制御される水銀が封入されたバルブを備え、
    前記バルブの表面に、外側に向かって突出する半球状の突起部が形成され、
    前記バルブの表面において、前記突起部の周りの部位と前記突起部との間の曲面部分の曲率半径5mm以上であることを特徴とする無電極放電ランプ。
  2. 請求項1記載の無電極放電ランプを製造するにあたり、前記バルブの内面に蛍光体を静電塗布して蛍光体膜を形成したことを特徴とする無電極放電ランプの製造方法。
  3. 請求項1記載の無電極放電ランプと、無電極放電ランプに高周波電磁界を発生させる誘導コイルと、誘導コイルに高周波電流を供給する点灯回路とを備えて成ることを特徴とする照明器具。
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