JP4604385B2 - 光導波路の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光導波路の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、通信の分野では大容量で高速に信号が伝送できる光ファイバが金属製の電線に置き換わりつつあり、いわゆる幹線系ではすでに光ファイバが設置されている。光ファイバは屈折率の高いコア層と呼ばれる部分とその周辺部を被覆している屈折率の低いクラッド層と呼ばれる部分からなり、光信号はコアの中に閉じこめられながら低損失で伝搬される。
【0003】
光通信では、光信号の合分波、あるいは、波長分離、スイッチングなどの機能が必要になってくるが、現在では、機械的に合分波したりスイッチングを行う装置を用いている。このような装置では、小型化に対応することが難しく、今後の大容量伝送では、より集積化されたデバイスの要求が高まっている。
【0004】
このような要求に対し、光導波路を用い、より集積化されたデバイスを開発しようという試みがなされている。光導波路の構成は、光ファイバと同様に光信号が伝搬するコア層が、光信号を閉じこめるクラッド層に埋設されている。光導波路の構成材料としては、石英が用いられることが一般的ではあるが、最近では、大面積化が可能で、加工しやすく、低コストであるポリマー光導波路が注目されている。ポリマーの材料としては、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂等が実用化されている。
【0005】
コアパターンの形成方法は、フォトリソグラフィ技術により、メタルマスクを形成し、ドライエッチングで作製するか、コア材料に感光性が付与されている場合は、露光、現像処理にて作製できる。このため、フォトマスクのパターンを基にコア配線を形成できるため、その設計の自由度は高くなる。
【0006】
しかし、ドライエッチングは真空引きなども含めて時間と手間がかかる方法であり、量産には向かない。そこで、型を用いる方法が提案されている。例えば、特開平9-189818号には、第1の凹凸型としてフッ素化ポリイミドを用い、第2の凹凸型を金属で作製する方法が開示されている。これらの方法によって導波路の作製は可能であるが、複雑なパターンの形成は困難であった。それは、型の剛性があることと、導波路と型の熱膨張係数が著しく異なることに起因している。すなわち、型に剛性があることにより、剥離時に導波路材の変形を要し、また、熱膨張係数差により、剥離時に導波路材が収縮する。これらによって、導波路材が損傷を受けやすかった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、係る従来技術の欠点に鑑みなされたもので、剥離時に光導波路が損傷を受けにくい製造方法を提供することを課題とする。
【0008】
本発明において、上記の課題を達成するために、まず請求項1の発明は、コアをクラッドで挟持した光導波路の製造方法であって、斜め面を有する第1の凹型を露光により作製する工程と、該第1の凹型に樹脂を塗布、硬化させて第2の凸型を作製する工程と、該第2の凸型に樹脂を塗布、硬化させてコアパターンとなる凹部を有する第1のクラッドを形成する工程と、該第2の凸型を剥離する工程と、該コアパターンとなる凹部に樹脂を塗布、硬化させてコアを形成する工程と、更に樹脂を塗布、硬化させて第2クラッドを形成する工程と、を含み、前記斜め面を有する第1の凹型を露光により作成する工程は、露光時に使用するマスクの暗黒部を傾斜的に濃度変化させることによって斜め面を形成する工程を含むことを特徴とする光導波路の製造方法としたものである。
【0009】
請求項2の発明は、コアをクラッドで挟持した光導波路の製造方法であって、斜め面を有する第1の凸型を露光により作製する工程と、該第1の凸型に樹脂を塗布、硬化させて第2の凹型を作製する工程と、該第2の凹型に樹脂を塗布、硬化させてコアパターンを形成する工程と、更に樹脂を塗布、硬化させて第1のクラッドを形成する工程と、該第2の凹型を剥離する工程と、更に樹脂を塗布、硬化させて第2のクラッド層を形成する工程と、を含み、前記斜め面を有する第1の凸型を露光により作製する工程は、レーザー加工によって斜め面を形成する工程を含むことを特徴とする光導波路の製造方法としてものである。
【0011】
請求項3は、上記第2の型が、シリコーン又はフッ素系樹脂であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光導波路の製造方法としたものである。
【0012】
請求項4は、上記コア及び第1クラッドがエポキシであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の光導波路の製造方法としたものである。
【0013】
請求項5は、上記コア及び第1クラッドがフッ素化ポリイミドであることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の光導波路の製造方法としたものである。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態につき、図面を参照しながら説明する。
【0015】
最初に第1の型として、凹型を用いる場合について図1を用いて説明する。第1の凹型11は、コアパターンとなる凹部を有するものであり、金属凹型、樹脂凹型等が使用できる(図1(a))。また、斜めミラー部16を同時形成するために、斜め面を有している凹版の構造となる。金属凹型の代表例としては、凹型印刷に用いられるような金属型に彫刻や腐食させたものがある。樹脂凹型としては、金属凸型から樹脂凹版を写し取る方法やフォトマスクを介して感光性樹脂を硬化、現像して第1の凹型11を形成する方法などがある。
【0016】
この第1の凹型11を用いて、第2の凸型を形成する。第2の凸型12は、第1の凹型から写し取ることにより作製する(図1(b))。流動性を有する第2の凸型12の材料をドクターブレードコート、ロールプレス、平プレス、スクリーン印刷、ロールコート、スピンコートなどの方法により凹部に塗布し、これを蒸発硬化、2液硬化、熱硬化、紫外線硬化、電子線硬化、X線硬化などの方法により硬化し、これを剥離することにより作製することができる。真空中での塗布や、塗布後に真空脱泡するなどの方法により、気泡をなくすことも可能である。なお、第2の凸型12は、剛性が低く、第1の凹型11からの剥離性が良好であるシリコーン、フッ素系樹脂などの材質を用いることが好ましい。型の剛性を低くすることによっても、剥離性、転写性を高めることができる。剥離性を高めるために、第1の凹型11にスプレーなどの方法により、表面に、シリコーン系、フッ素系の樹脂をコーティングすることも行うことができる。
【0017】
次に、第2の凸型12に樹脂を塗布、硬化させてコアパターンとなる凹部を有する第1クラッド13を形成する(図1(c))。この方法として、前述した第1の凹型11から第2の凸型12を写し取る際に用いた方法と同様な方法をとることができる。すなわち、流動性を有する第1クラッド13の材料あるいはその前駆体をドクターブレードコート、ロールプレス、平プレス、スクリーン印刷、ロールコート、スピンコートなどの方法により凹部に塗布し、これを蒸発硬化、2液硬化、熱硬化、紫外線硬化、電子線硬化、X線硬化などの方法により硬化し、これを剥離することにより作製することができる。第1クラッドの材料としては、エポキシ、フッ素化ポリイミドを用いることが好ましい。
【0018】
ミラー部に金属を製膜した後、コアパターンとなる凹部を有する第1クラッド13に樹脂を塗布、硬化させてコア14を形成する(図1(d))。ここでも前述した第1の凹型11から第2の凸型12を写し取る際に用いた方法と同様な方法をとることができる。コアの材料としては、エポキシ樹脂、フッ素化ポリイミドを用いることが好ましい。
【0019】
更に、この上に第2クラッド15を形成する(図1(e))。これらのプロセスにより、コアをクラッドで狭持した光導波路を形成することができる。
【0020】
次に、第1型として、凸型を用いる場合について図2を用いて説明する。第1の凸型21は、コアパターンとなる凸部を有するものである(図2(a))。その材質、構造及び作製方法は、前述した第1の凹型と同様にすることができる。この第1の凸型21を用いて、第2の凹型を形成する。第2の凹型22は、第1の凸型から写し取ることにより作製することができる(図2(b))。その材質、構造及び作製方法においても、前述した第1の凹型と同様にすることができる。
【0021】
次に、第2の凹型22に樹脂を塗布、硬化させてコアを形成する(図2(c))。この方法として、前述した第1の凹型11から第2の凸型12を写し取る際に用いた方法と同様な方法をとることができる。すなわち、流動性を有するコア23の材料あるいはその前駆体をドクターブレードコート、ロールプレス、平プレス、スクリーン印刷、ロールコート、スピンコートなどの方法により凹部に塗布し、これを蒸発硬化、2液硬化、熱硬化、紫外線硬化、電子線硬化、X線硬化などの方法により硬化し、これを剥離することにより作製することができる。コアの材料としては、エポキシ、フッ素化ポリイミドを用いることが好ましい。
【0022】
コアを形成した後、樹脂を塗布、硬化させて第1クラッド24を形成する(図1(d))。第1クラッドは、コアを形成した第2の凹型22の上に、ベタ層を形成することにより作製する。この作製方法としては、今までと同様にドクターブレードコート、ロールプレス、平プレス、スクリーン印刷、ロールコート、スピンコートなどがある。第2の凹型22を剥離することにより、コアと第1クラッドを形成することができる。
【0023】
次にミラー部に金属を製膜した後、コアの上に、第2クラッド25を形成する(図1(e))。これらのプロセスにより、コアをクラッドで狭持した光導波路を形成することができる。
【0024】
【実施例】
以下に、具体的な実施例により本発明を説明する。なお、本発明は後述する実施例に何ら限定されるものではない。
【0025】
<実施例1>
最初に第1の凹型を作製した。第1の凹型は、ガラス基板上に25μm厚のドライフィルムレジスト(NIT225、日本合成化学(株)製)を熱ラミネーターにより貼り、これを150mJ/cm2で露光し、1wt%の炭酸ナトリウムにてスプレー現像することによって作製した。なお、斜めミラーに相当する部分は、露光時に使用するマスクの暗黒部を傾斜的に濃度変化させることによって作製した。次に、この第1の凹型にドクターブレードを用いて2液硬化型のシリコーンゴムを埋め込み、熱硬化させた。硬化後、第1の凹型から剥離することにより、第2の凸型を作製した。
【0026】
次に、第2の凸型上に第1クラッドの前駆体(ポリイミドOPI-N3305、日立化成工業(株)製)をスピンコートにより塗布した。これを200℃で仮硬化させた後、第2の凸型であるシリコーンゴム版を第1クラッド層から剥離し、350℃でイミド化させた。次に、ミラー部にCrをスパッタした後、第1クラッドの凹部にコア層の前駆体(ポリイミドOPI-N3405、日立化成工業(株)製)をスピンコート法により塗布し、熱硬化後に全体をアッシングすることで凹部以外の部分を除去した。第1クラッド層とコア層を形成した後、第2クラッド層をスピンコート法により塗布した。最後に、350℃にてイミド化することにより、光導波路を得た。
【0027】
<実施例2>
最初に第1の凹型を作製した。第1の凹型は、平板状の金属凹型を用いた。凹型は、銅板上にドライフィルムレジストでパターン形成し、これを塩化鉄溶液でエッチングすることによって作製した。版の強度を向上させるため、表面に、クロムメッキを施した。この第1の金属凹型にロールプレスにて2液硬化型のシリコーンゴムを埋め込み、常温硬化させた。硬化後、第1の凹型から剥離することにより、第2の凸型を作製した。
【0028】
次に、第2の凸型に第1クラッドとなる紫外線硬化型のエポキシ樹脂をスピンコート法により塗布した。これを2000 mJ/cm2の紫外線を照射することにより硬化させた後、第2の凸型であるシリコーンゴム版を第1クラッド層から剥離した。次に、第1クラッドの凹部にコア層となる紫外線硬化型のエポキシ樹脂をドクターブレード法及びUV照射により形成した。第1クラッド層とコア層を形成した後、第2クラッド層をスクリーン印刷法により塗布した。最後に、UV照射することにより、光導波路を得た。
【0029】
<実施例3>
最初に第1の凸型を作製した。第1の凸型は、ガラス基板上に25μm厚のドライフィルムレジスト(NIT225、日本合成科学(株)製)層を形成し、これを150mJ/cm2で露光し、1wt%の炭酸ナトリウムにてスプレー現像することによって作製した。なお、斜めミラーに相当する部分は、レーザー加工によって作製した。次に、この第1の凸型にスピンコートを用いてフッ素系樹脂(アフロン、旭硝子(株)製)を埋め込み、熱硬化させた。硬化後、第1の凸型から剥離することにより、第2の凹型を作製した。
【0030】
次に、第2の凹型にコア層となる紫外線硬化型のエポキシ樹脂をドクターブレードにより埋め込み、UV硬化した。その上に、スピンコート法により第1クラッドとなるUV硬化型エポキシ樹脂を塗布し、UV硬化した。次に、このコア層と第1クラッド層から第2の凹型であるフッ素系樹脂型を剥離した。ミラー部にCrをスパッタした後、この上に、第2クラッド層をスピンコート法により作製した。最後に、UV照射することにより、光導波路を得た。
【0031】
【発明の効果】
本発明による、光導波路の製造方法によれば、ドライエッチングなどの工程を用いずに光導波路層を形成することができる。更に、第2の型が樹脂からなるので剥離時の損傷を抑え、歩留りを向上させることができる。
【0032】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における最初に第1の型として、凹型を用いる場合の光導波路の製造一例を示す説明図である。
【図2】本発明における最初に第1の型として、凸型を用いる場合の光導波路の製造一例を示す説明図である。
【符号の説明】
11…第1の凹型
12…第2の凸型
13…第1クラッド層
14…コア層
15…第2のクラッド層
16…ミラー部
21…第1の凸型
22…第2の凹型
23…コア層
24…第1クラッド層
25…第2クラッド層
26・・・ミラー部
Claims (5)
- コアをクラッドで挟持した光導波路の製造方法であって、斜め面を有する第1の凹型を露光により作製する工程と、該第1の凹型に樹脂を塗布、硬化させて第2の凸型を作製する工程と、該第2の凸型に樹脂を塗布、硬化させてコアパターンとなる凹部を有する第1のクラッドを形成する工程と、該第2の凸型を剥離する工程と、該コアパターンとなる凹部に樹脂を塗布、硬化させてコアを形成する工程と、更に樹脂を塗布、硬化させて第2クラッドを形成する工程と、を含み、前記斜め面を有する第1の凹型を露光により作成する工程は、露光時に使用するマスクの暗黒部を傾斜的に濃度変化させることによって斜め面を形成する工程を含むことを特徴とする光導波路の製造方法。
- コアをクラッドで挟持した光導波路の製造方法であって、斜め面を有する第1の凸型を露光により作製する工程と、該第1の凸型に樹脂を塗布、硬化させて第2の凹型を作製する工程と、該第2の凹型に樹脂を塗布、硬化させてコアパターンを形成する工程と、更に樹脂を塗布、硬化させて第1のクラッドを形成する工程と、該第2の凹型を剥離する工程と、更に樹脂を塗布、硬化させて第2のクラッド層を形成する工程と、を含み、前記斜め面を有する第1の凸型を露光により作製する工程は、レーザー加工によって斜め面を形成する工程を含むことを特徴とする光導波路の製造方法。
- 上記第2の型が、シリコーン又はフッ素系樹脂であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光導波路の製造方法。
- 上記コア及び第1クラッドがエポキシであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の光導波路の製造方法。
- 上記コア及び第1クラッドがフッ素化ポリイミドであることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の光導波路の製造方法。
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