JP4600712B2 - リニアモータ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば工作機械や半導体製造装置などのFA分野で、高速・高加減速の直線運動が要求されるリニアモータに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、工作機械や半導体製造装置などのFA分野で、高速・高加減速の直線運動が要求されるリニアモータは、モータ体格に対し大きな最大推力が得られるものが望まれている。例えば、このようなリニアモータとして、特公平5−34901号公報に開示されているものがある。図8は従来のリニアモータであって、(a)は、その側断面図を示したもの、(b)は(a)における磁極の拡大図を示したものである。なお、図中矢印の向き(↑↓)は各永久磁石の磁化方向を示している。
図において、1は固定子、2は誘導子、3は誘導子歯、10は可動子、11は電機子、12は電機子コア、13はティース、14は継鉄、15は電機子巻線、16は磁極、18は永久磁石である。
固定子1は、進行方向に所定間隔λで誘導子歯3が形成された磁性体からなる誘導子2によって構成され、例えば、この磁性体は、積層された電磁鋼板が用いられる。
可動子10は、3つのティース13とそれらをつなぐ継鉄14が一体となった電機子コア12、3つのティース13に集中巻された3相(U、V、W)の電機子巻線15、各ティース13先端に設けられた磁極16から成る電機子11によって構成される。例えば、電機子コア12の材料には積層された電磁鋼板が用いられる。6極から成る1個の磁極16は、そのピッチPmがλ/2となるように、隣接するものどうしが互いに異極になるように永久磁石18が6個配置されている。つまり、隣り合った永久磁石18の磁化方向の角度差θは180度で、1極当たりの磁極に使われる永久磁石数nは1である。隣接するティース13間の間隔は、ティース13の幅3×λとティース13間の幅λ+λ/3を足し合わせた4×λ+λ/3である。また、可動子10は図示しないリニアガイド等によって、その進行方向に移動自在に支持されている。
次に動作原理について説明する。
永久磁石18の磁束は、ティース13、継鉄14、空隙、誘導子歯3によって構成される磁気回路を流れる。各相のティース13の位相差が電気角で120度なので、可動子10を動かすと互いに電気角120度差の磁束が各相電機子巻線15に鎖交し、電機子巻線15には3相の誘起電圧が発生する。逆に各相の電機子巻線15に3相の正弦波電流を通電すると3相同期モータとして推力を発生し、可動子10が固定子1上を直線移動する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来技術のリニアモータでは、電機子巻線15に通電する電流と推力の関係において、電流が大きくなると、電流の増加に応じて推力が発生しなくなり所定の最大推力を得られない、いわゆる図2に示すごとく、推力が飽和する非線形の領域が存在する。この推力の飽和現象は、電機子巻線15の作る磁束に永久磁石18の磁束が重畳した磁束(発生推力に比例した磁束を意味し、以下、「主磁束」という。)が誘導子歯3で飽和するために起こる。電流が小さければ推力は線形性を確保するものの、誘導子歯3の飽和磁束密度を超える主磁束に相当した電流が流れると推力は非線形になる。さらに、電流を大きくすると誘導子歯3を通る磁束は完全に飽和し、電流を幾ら大きくしても推力が全く変わらなくなる。このため、従来技術のリニアモータの場合、上記の推力飽和の現象が原因となり、要求された加減速性能を出しきれず、モータ体格に対して充分な最大推力を得ることができないという問題があった。
そこで、リニアモータの推力の線形性を向上するには、誘導子歯3の磁気飽和を抑えるか、電機子11と誘導子2間における空隙の磁束密度を高める磁極構造を採用するかの何れかの対策が必要である。前者は、推力の線形性を向上する誘導子歯3の歯幅が検討され、すでに公知技術である。後者は、最近の希土類系高性能永久磁石により可能となるが、飛躍的な向上は見られず、別の改善策が必要な状況にある。
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、電機子と誘導子間における空隙の磁束密度を高め、従来に比べて最大推力を大幅に向上することが可能な磁極構造を有したリニアモータを提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記問題を解決するため、請求項1の本発明は、電磁鋼板を積層してなる電機子コアのティースに巻装された電機子巻線と前記ティース先端に配置された複数の磁極(1極当たりの長さを磁極ピッチPm)とを有する電機子と、前記磁極と空隙を介して対向配置されると共に磁性体からなる誘導子歯を有する誘導子とを備え、前記電機子と前記誘導子の何れか一方を可動子に、他方を固定子として相対移動を行うリニアモータにおいて、前記1極当たりの磁極内に前記永久磁石を2個配置したときに、一方の永久磁石の磁化方向η1を可動子の進行方向に対して、0°<η1<90°の角度だけずらすと共に、他方の永久磁石の磁化方向η2を可動子の進行方向に対して、η2=180°―η1の角度だけずらし、前記2個の永久磁石の磁極ピッチ方向における幅を等しくしたものである。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を図に基づいて説明する。
図1は本発明の第1の実施例を示すリニモータであって、(a)はその側断面図、(b)は(a)における磁極の拡大図である。なお、図中矢印の向き(↑↓等)は各永久磁石の磁化方向を示している。また、本発明の構成要素が従来技術と同じ構成要素については、同一符号を付してその説明を省略し、異なる点のみ説明する。
図において、17aは磁極ピッチ方向の幅をWaとする永久磁石、17bは磁極ピッチ方向の幅をWbとする永久磁石を示している。
本発明が従来技術と基本的に異なる点は、以下のとおりである。
1極当たりの磁極を交互に磁化方向が異なるようにn個(nは2以上の整数)の永久磁石を隣接して配置し、隣り合う永久磁石同志の磁化方向の角度差θを、互いにθ=180°/nずつずらした点である。
図1に1極当たりの磁極をn=2個の永久磁石17a、17bで構成し、磁化方向の角度差θを、90度に設定した場合を示している。具体的には、一方の永久磁石17aの磁化方向を可動子の進行方向と一致させると共に、他方の永久磁石17bの磁化方向を永久磁石17aの磁化方向に対して90°の角度だけずらし、磁極ピッチPmと永久磁石17bの幅Wbとの関係を、0.3≦Wb/Pm<1.0としたものである。
なお、リニアモータの動作については、従来技術と基本的に同じなので省略する。
【0006】
次に、本発明の実施例による推力特性の効果の確認を図2、図3を用いて以下に説明する。
図2は本発明と従来技術のリニアモータ電機子巻線に通電する電流と推力の関係を示した図である。図3は本発明の実施例による磁極と誘導子歯間における主磁束の流れを示した説明図であって、(a)は第1の実施例、(b)は従来技術の場合である。
従来技術における主磁束は、図3(b)に示すごとく誘導子歯3の側面と先端に分かれて流れ込む。誘導子歯3の先端に流れ込む主磁束は、その磁極構造から、可動子の進行方向に向いて流れる主磁束の分布が疎になっている。つまり、推力は小さいことを意味している。
これに対して、第1の実施例では、図3(a)に示すごとく磁化方向を可動子の進行方向となる永久磁石17aにより、誘導子歯3の側面と先端部に流れ込む主磁束の分布が密になっている。つまり、従来技術よりも大きな推力を得ることを意味している。したがって、本発明の第1の実施例は上記の磁極構造を採用することで、永久磁石17a、17bによる空隙の磁束密度を、図2に示すように、従来技術よりも各電流値における推力及び最大推力を大幅に向上することができる。
【0007】
また、次に、永久磁石の幅と最大推力の関係における効果の確認について説明する。
図4は、磁極ピッチPmに対する永久磁石17bのWbの比(Wb/Pm)と従来技術に対する本発明の最大推力比の関係をグラフに表したものである。
図において、Wb/Pm<0.3では従来技術よりも低下し、0.3≦Wb/Pm<1.0の範囲では従来技術よりも大きな最大推力を得ることを確認することができる。特に、Wb/Pm=0.6付近で最大推力は10%向上する。
【0008】
次に第2の実施例について説明する。図5は、本発明の第2の実施例における磁極の拡大図であって、第1の実施例の図1(b)に相当するものである。なお、図中矢印の向きは、第1の実施例と同様に各永久磁石の磁化方向を示している。第2の実施例が第1の実施例と異なる点は、1極当たりの磁極内に2個の永久磁石17c、17dを配置したときに、一方の永久磁石17cの磁化方向η1を可動子の進行方向に対して0°<η1<90°の角度だけずらすと共に、他方の永久磁石17dの磁化方向η2を可動子の進行方向に対してη2=180°―η1の角度だけずらし、永久磁石17c、17dの磁極ピッチ方向における幅Wc、Wdを等しくした点である。第2の実施例は、第1の実施例と同様に電機子と誘導子間における空隙の磁束密度が高まるため、従来技術よりも最大推力を向上することができる。また、第1の実施例で用いた永久磁石が、可動子の進行方向と同じ磁化方向を持つ一方の永久磁石17aおよびこの永久磁石17aと磁化方向を90°ずらした他方の永久磁石17bの2種類が必要であったのに対して、第2の実施例では可動子の進行方向に対して磁化方向が対称な1種類の永久磁石で構成できるので、部品点数を少なくでき、磁極の組み立てを容易にすることができる。なお、リニアモータの動作は従来例と同じであり、推力向上の理由は第1の実施例と基本的に同じなので説明を省略する。
【0009】
次に第3の実施例について説明する。
図6は、本発明の第3の実施例における磁極の拡大図であって、第1の実施例の図1(b)に相当するものである。なお、図中矢印の向きは、第1、2の実施例と同様に各永久磁石の磁化方向を示している。
第3の実施例が、第1および第2の実施例と異なる点は、1極あたりの磁極が、互いに磁化方向の異なる4個の永久磁石17e、17f、17g、17hを隣接して配置した点である。第3の実施例は、第1及び第2の実施例と同様に、電機子と誘導子間における空隙の磁束密度が高まるため、従来技術よりも最大推力を向上することができる。
また、第3の実施例は、第1の実施例において直交する磁化方向を有する永久磁石17aと17b間で起き易い逆磁界による不可逆的減磁作用の無い磁極構造となっている。第1の実施例では、隣接する永久磁石17aと17bの磁化方向が90度であるため、永久磁石17aが逆磁界起磁力源となり、永久磁石17bに部分的に逆磁界を与えている。そこで、第3の実施例では、永久磁石17eと17gの間に45°の傾斜方向を磁化方向とする永久磁石17fを挿入している。この結果、隣接する永久磁石の磁化方向は滑らかな変化となり、不可逆的減磁作用の無い磁極構造を構成することができる。
なお、リニアモータの動作は従来例と同じであり、推力向上の理由は第1の実施例と基本的に同じなので説明を省略する。
【0010】
次に第4の実施例について説明する。
図7は、本発明の第4の実施例における磁極の拡大図であって、第1の実施例の図1(b)に相当するものである。なお、図中矢印の向きは、第1〜3の実施例と同様に各永久磁石の磁化方向を示している。
第4の実施例が、第1〜第3の実施例と異なる点は、複数の磁極内に配置される永久磁石は、可動子の進行方向に向かって磁化方向が円弧状となるように多極着磁されたものであって、6極着磁した1個の永久磁石17iによって構成した点である。
第4の実施例は、第1〜第3の実施例と同様に従来技術に対し最大推力を向上させることができる。
また、第4の実施例では複数の磁極を1個の永久磁石で構成しているので、部品点数を大幅に少なくできると共に磁極の組み立てを容易にし、磁極の機械的強度も増す利点を備えている。
なお、リニアモータの動作は従来例と同じであり、推力向上の理由については、第1の実施例と基本的に同じなので省略する。
【0011】
なお、上記の実施例では可動子に電機子を配置させた構造としたが、これを固定子側とし、誘導子を可動子に配置させた構造としても、本発明の効果を同じく発揮できることは言うまでもない。
また、3つのティースで構成される電機子を示したが、それらを複数個つなげたり、1個の電機子において複数個のティースを持つものであっても同様の効果を得ることができる。
【0012】
【発明の効果】
以上のような構成により、以下の効果を得ることができる。
(1)第1の実施例によれば、1極当たりの磁極内に配置されるn個の隣り合う永久磁石同志の磁化方向の角度差θを、互いにθ=180°/nずつずらす構成にし。また、1極当たりの磁極内に永久磁石を2個配置したときに、磁極ピッチ方向の幅をWaとする一方の永久磁石の磁化方向を可動子の進行方向と一致させ、磁極ピッチ方向の幅をWbとする他方の永久磁石の磁化方向を一方の永久磁石の磁化方向に対して90°の角度だけずらしてあり、磁極ピッチPmと他方の永久磁石の幅Wbとの関係を、 0.3≦Wb/Pm<1.0 とした構成をとったため、磁化方向を可動子の進行方向に対して90°反転させた永久磁石により、誘導子歯の側面と先端部に流れ込む主磁束が増えることから、電機子と誘導子間における空隙の磁束密度を高め、従来技術よりも各電流値における推力及び最大推力を向上することができる。特に、他方の永久磁石の幅Wbが磁極ピッチの0.6倍の場合、従来技術に比べ最大推力を10%向上することができる。
(2)第2の実施例によれば、1極当たりの磁極内に2個の永久磁石を配置したときに、一方の永久磁石の磁化方向η1を可動子の進行方向に対して0°<η1<90°の角度だけずらすと共に、他方の永久磁石の磁化方向η2を可動子の進行方向に対して、η2=180°―η1の角度だけずらし、2個の永久磁石の磁極ピッチ方向における幅Wc、Wdを等しくしたため、第1の実施例と同様に電機子と誘導子間における空隙の磁束密度が高まることから、従来技術よりも最大推力を向上することができる。さらに、すべて同じ永久磁石によって構成できるため、部品点数を少なくし、磁極の組み立てを容易にすることができる。
(3)第3の実施例によれば、1極あたりの磁極を、互いに磁化方向の異なる4個の永久磁石を用いて隣接して配置したため、第1及び第2の実施例と同様に、電機子と誘導子間における空隙の磁束密度が高まるため、従来技術よりも最大推力を向上することができる。さらに、進行方向と垂直方向を磁化方向とする永久磁石間に起こる不可逆的減磁作用を防ぐ効果がある。
(4)第4の実施例によれば、複数の磁極内に配置される永久磁石は、可動子の進行方向に向かって磁化方向が円弧状となるように多極着磁された構成を取ったため、第1〜第3の実施例と同様に従来技術に対し最大推力を向上させることができる。さらに、複数の磁極を1個の永久磁石で構成しているため、部品点数を大幅に少なくできると共に磁極の組み立てを容易にし、磁極の機械的強度も増すことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例を示すリニモータであって、(a)はその側断面図、(b)は(a)における磁極の拡大図である。
【図2】本発明と従来技術のリニアモータ電機子巻線に通電する電流と推力の関係を示した図である。
【図3】本発明の実施例による磁極と誘導子歯間における主磁束の流れを示した説明図であって、(a)は本実施例、(b)は従来技術の場合である。
【図4】本発明の第1実施例における、磁極ピッチPmに対する永久磁石17bのWbの比(Wb/Pm)と従来技術に対する本発明の最大推力比との関係をグラフに表したものである。
【図5】本発明の第2の実施例における磁極の拡大図であって、第1の実施例の図1(b)に相当するものである。
【図6】本発明の第3の実施例における磁極の拡大図であって、第1の実施例の図1(b)に相当するものである。
【図7】本発明の第4の実施例における磁極の拡大図であって、第1の実施例の図1(b)に相当するものである。
【図8】従来技術のリニモータであって、(a)はその側断面図、(b)は(a)における磁極の拡大図である。
【符号の説明】
1 固定子
2 誘導子
3 誘導子歯
10 可動子
11 電機子
12 電機子コア
13 ティース
14 継鉄
15 電機子巻線
16 磁極
17a、17b、17c、17d、17e、17f、17g、17h、17i 永久磁石
Claims (1)
- 電磁鋼板を積層してなる電機子コアのティースに巻装された電機子巻線と前記ティース先端に配置された複数の磁極(1極当たりの長さを磁極ピッチPm)とを有する電機子と、
前記磁極と空隙を介して対向配置されると共に磁性体からなる誘導子歯を有する誘導子と、
を備え、前記電機子と前記誘導子の何れか一方を可動子に、他方を固定子として相対移動を行うリニアモータにおいて、
前記1極当たりの磁極内に前記永久磁石を2個配置したときに、一方の永久磁石の磁化方向η1を可動子の進行方向に対して、0°<η1<90°の角度だけずらすと共に、他方の永久磁石の磁化方向η2を可動子の進行方向に対して、η2=180°―η1の角度だけずらし、
前記2個の永久磁石の磁極ピッチ方向における幅を等しくしたことを特徴とするリニアモータ。
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